説明

α−(3−アリールチオ)アセトフェノンを製造する方法

本発明は、一般式I(式中、置換基RおよびRは互いに独立にC〜C−アルキルまたは置換されたまたは置換されていないフェニル基またはベンジル基を表す)のα−(3−アリールチオ)アセトフェノンを製造する方法に関する。本発明の方法は、A)一般式II(式中、置換基Rは前記のものを表わす)のアセトフェノンを、塩化スルフリルと反応させ、引き続き加水分解し、かつB)こうして得られた反応混合物を、一般式III(式中、置換基Rは前記のものを表わす)のチオフェノールと反応させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式I:
【0002】
【化1】

(式中、置換基RおよびRは互いに独立にC〜C−アルキルまたは置換されたまたは置換されていないフェニルまたはベンジル基を表す)のα−(3−アリールチオ)アセトフェノンを製造する改良された方法に関する。
【0003】
一般式Iの化合物は製薬活性物質の合成での中間生成物である。1−(4−メトキシフェニル)−2−[(3−メトキシフェニル)チオ]エタノンは抗骨粗鬆症活性成分、ラロキシフェンを製造するための成分である。
【0004】
一般式Iの化合物の製造は特にWO02/42261号に記載されている。この思想により相当するアセトフェノンおよびハロゲン化剤からα−クロロ−またはα−ブロモアセトフェノンを製造し、単離する。引き続き水に混合しない溶剤中でアルカリ水溶液中の適当なチオフェノールと反応させ、ハロゲン原子をチオレートアニオンにより求核置換する。
【0005】
しかしこの方法はα−クロロまたはα−ブロモ化合物を単離しなければならないことが欠点である。これはまず反応混合物の処理および引き続く価値ある生成物の精製でのかなりの収率の損失を生じる。他方で化合物が激しく涙を起こし、過敏にし、従って汚染のないやり方で移送しなければならないので、工業的規模での単離は費用がかかり、不便である。
【0006】
本発明の課題は、α−クロロまたはα−ブロモアセトフェノンの単離、精製、乾燥および移送が不要である、一般式Iの化合物の製造方法を見出すことである。
【0007】
前記課題は、冒頭に記載の方法により解決されることが見出され、前記方法は
A)一般式II
【0008】
【化2】

(式中、置換基Rは前記のものを表わす)のアセトフェノンを、塩化スルフリルと反応させ、引き続き加水分解し、かつ
B)こうして得られた反応混合物を、一般式III:
【0009】
【化3】

(式中、置換基Rは前記のものを表わす)のチオフェノールと反応させる
ことからなる。
【0010】
本発明の方法は一般式Iの化合物、有利に1−(4−メトキシフェニル)−2−[(3−メトキシフェニル)チオ]エタノンを製造するために用いる。
【0011】
有利な出発化合物は、置換基RがC〜C−アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、またはイソブチル、フェニル、またはベンジルであり、フェニル基およびベンジル基が反応条件下で不活性である置換基、例えばハロゲン、またはオキシアルキルを有することができる一般式IIのアセトフェノンである。Rは有利に短鎖アルキル基、特にメチルである。
【0012】
反応工程A)で一般式IIのアセトフェノンを、塩化スルフリルSOClと反応させる。この反応で一般に塩化スルフリルの過剰のモル量、有利にアセトフェノン1モル当たり塩化スルフリル1.1〜2モル、より有利にアセトフェノン1モル当たり塩化するフリル1.7〜1.8モルを使用する。
【0013】
脂肪族アルコールの存在で塩素化を行うことが有利である。飽和した非分枝または分枝状アルコールが有利であり、特に1〜10個の炭素原子を有するアルコール、特にメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、および2−ブタノールが有利である。アルコールは単独の物質としてまたは混合物として前記方法に使用することができる。
【0014】
脂肪族アルコールは一般に一般式IIのアセトフェノン1モル当たり0.1〜10モル、有利に2〜6モルの量で使用する。
【0015】
有利な付加的な溶剤は不活性有機溶剤、例えば飽和した、脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタンまたはオクタン、および環状脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサンである。更に塩素化脂肪族炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロメタンを使用できる。芳香族溶剤、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、例えばo−キシレン、ハロゲン芳香族化合物、例えばクロロベンゼンおよびジクロロベンゼンを使用することもできる。
【0016】
芳香族溶剤、有利にトルエンおよび脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、および1−ブタノール、有利に1ーブタノールの溶剤混合物が有利である。過剰の質量のアルコールが有利であり、芳香族溶剤1質量部と脂肪族アルコール2〜20質量部、有利に8〜12質量部の混合比が特に有利であると示された。
【0017】
通常は一般式IIのアセトフェノンをこの溶剤または溶剤混合物に予め入れ、塩化スルフリルを添加する。反応は、例えば攪拌容器中で実施することができる。反応は気圧および0〜50℃の温度で実施し、これより高い温度では反応の選択性が低下し、これより低い温度では選択性、収率および処理技術性に関して著しい利点を生じない。
【0018】
塩化スルフリルを添加後、しばらくの間混合物の攪拌を継続する。引き続き過剰の塩化スルフリルが反応するまで反応混合物を加水分解する。1つの有利な実施態様において混合物を加水分解後に弱塩基性にし、pH値を5.0〜6.0に調節する。これは塩基、例えば炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、または有利に水酸化ナトリウムの添加により行う。
【0019】
反応工程B)において、反応工程A)でその場で製造したα−クロロアセトフェノンを、置換基RがC〜C−アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、またはイソブチル、フェニルまたはベンジルであり、フェニルおよびベンジル基が反応条件下で不活性である置換基、例えばハロゲンまたはオキシアルキルを有することができる、一般式IIIのチオフェノールと反応させる。Rは有利に短鎖アルキル基、特にメチルである。
【0020】
一般式IIIのチオフェノールは工程A)からの反応混合物に添加する。チオフェノールの量は一般に、一般式IIのアセトフェノン1モル当たりチオフェノール0.8〜2.0モルであり、有利に一般式IIのアセトフェノン1モル当たりチオフェノール0.90〜1.05モルである。
【0021】
1つの有利な実施態様において、一般式IIIのチオフェノールの添加後にpH値を6.0〜9.0に調節し、このために塩基、例えば炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、または有利に水酸化ナトリウムを使用することができる。
【0022】
反応の終了をガスクロマトグラフィーにより監視することができる。
【0023】
反応生成物は自体公知方法で単離することができる。この目的にために反応混合物を有利に0〜5℃に冷却し、生成物結晶を接種し、更に約30分焼結する。生成物を濾過し、水、引き続きメタノールで蒸解し、洗浄し、乾燥する。
【0024】
本発明の方法は一般式Iのα−(3−アリールチオ)アセトフェノンの製造を良好な収率および高い純度で可能にする。技術水準の欠点が処理技術的観点から予測されない簡単なやり方で回避され、特に中間生成物との接触を回避するための複雑な手段をかなり減少できる。
【0025】
例1、1−(4−メトキシフェニル)−2−[(3−メトキシフェニル)チオ]エタノンの製造
4−メトキシアセトフェノン48.1g(0.32モル)をトルエン11mlおよび1−ブタノール117mlに予め入れた。25〜30℃で、塩化スルフリル74.62g(0.55モル)を、氷冷しながら滴下した(アセトフェノン:塩化スルフリルモル比1:1.7)。30分間継続して攪拌した後に反応混合物を水210mlで加水分解し、温度が30℃を上回らずに濃い水酸化ナトリウム溶液40mlを使用してpH値を6.0に調節した。
【0026】
引き続き3−メトキシチオフェノール44.80(0.32モル)を添加し、濃い水酸化ナトリウム溶液を使用してpH値を8.5に調節した。1時間継続して攪拌した後に混合物を0〜5℃に冷却し、生成物結晶を接種し、更に30分間攪拌した。結晶を濾過し、水200mlで蒸解し、引き続き水200mlで洗浄し、メタノール75mlで蒸解し、メタノール75mlで洗浄した。結晶を30℃で乾燥した。
【0027】
収量:1−(4−メトキシフェニル)−2−[(3−メトキシフェニル)チオ]エタノン64.8g(0.225モル)、70%。
純度(GC):99.5%。
【0028】
例2、1−(4−メトキシフェニル)−2−[(3−メトキシフェニル)チオ]エタノンの製造
4−メトキシアセトフェノン48.1g(0.32モル)をトルエン11mlおよび1−ブタノール117mlに予め入れた。25〜30℃で、塩化スルフリル74.62g(0.55モル)を、氷冷しながら滴下した(アセトフェノン:塩化スルフリルモル比1:1.7)。30分間継続して攪拌した後に反応混合物を水210mlで加水分解し、温度が30℃を上回らずに濃い水酸化ナトリウム溶液40mlを使用してpH値を6.0に調節した。
【0029】
引き続き3−メトキシチオフェノール44.80(0.32モル)を添加し、濃い水酸化ナトリウム溶液を使用してpH値を7.0に調節した。1時間継続して攪拌した後に混合物を0〜5℃に冷却し、生成物結晶を接種し、更に30分間攪拌した。結晶を濾過し、水200mlで蒸解し、引き続き水200mlで洗浄し、メタノール75mlで蒸解し、メタノール75mlで洗浄した。結晶を30℃で乾燥した。
【0030】
収量:1−(4−メトキシフェニル)−2−[(3−メトキシフェニル)チオ]エタノン63.6g(0.221モル)、69%。
純度(GC):97.5%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】

(式中、置換基RおよびRは互いに独立にC〜C−アルキルまたは置換されたまたは置換されていないフェニルまたはベンジル基を表す)のα−(3−アリールチオ)アセトフェノンを製造する方法において、
A)一般式II
【化2】

(式中、置換基Rは前記のものを表わす)のアセトフェノンを、塩化スルフリルと反応させ、引き続き加水分解し、かつ
B)こうして得られた反応混合物を、一般式III:
【化3】

(式中、置換基Rは前記のものを表わす)のチオフェノールと反応させる
ことを特徴とするα−(3−アリールチオ)アセトフェノンを製造する方法。
【請求項2】
1−(4−メトキシフェニル)−2−[(3−メトキシフェニル)チオ]エタノンを製造する請求項1記載の方法。
【請求項3】
反応工程A)を芳香族溶剤および脂肪族アルコールの溶剤混合物中で実施する請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
加水分解後におよび一般式IIIのチオフェノールの添加の前にpH値を5.0〜6.0に調節する請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
反応工程B)を6.0〜9.0のpH値で実施する請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2006−519794(P2006−519794A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504444(P2006−504444)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001676
【国際公開番号】WO2004/078705
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】