β−アドレナリン受容体拮抗薬を含む持続放出眼内インプラントおよび眼の神経障害の治療方法
生体適合性眼内インプラントは、β−アドレナリン受容体拮抗薬、及び長期間にわたってβ−アドレナリン受容体拮抗薬の眼への放出を促進する、β−アドレナリン受容体拮抗薬に付随した生分解性ポリマーを含む。β−アドレナリン受容体拮抗薬は、2種の生分解性ポリマーのような生分解性ポリマーマトリックスに付随され得る。インプラントは、眼の神経障害、例えば種々の緑内障のような、1つ以上の眼症状を治療するために、眼に配置できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者の眼を治療する器具および方法に関し、より詳細には、インプラントが配置された眼に治療剤を長期間放出する眼内インプラントおよびそのようなインプラントを製造および使用する方法、例えば眼神経障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、中央抹消における視神経頭および視界喪失の窩によって特徴付けられる進行性視神経症である。網膜神経線維層上の網膜神経節細胞死、およびその結果としての軸策喪失は、緑内障に典型的な視神経乳頭陥凹および視界欠損を招く。
【0003】
緑内障における主要な危険因子は、統計的標準、すなわち21mmHgを超える眼圧(IOP)の上昇と考えられる。高いIOPは、線維柱帯網を通る房水の排出に対する増加した抵抗から起こる。
【0004】
異なる型の緑内障が知られているが、最も一般的な型は、年齢と関連する成人発症開放隅角緑内障(OAG)であり、開放隅角、21mmHgを超えるIOP、緑内障に典型的な視界欠損、および病理学的に掘削された視神経円板によって特徴付けられる。
【0005】
β−ブロッカーとしても知られているβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、緑内障治療の中心であり、最初の選択肢である。
【0006】
市販のβブロッカーは、通常、β1およびβ2−アドレナリン受容体の両方を抑制する非選択的(「非特異的」とも言う)、またはβ1−アドレナリン受容体を選択的に抑制するβ1選択的に分類される。
【0007】
マレイン酸チモロール、(−)−1−(t−ブチルアミノ)−3−[(4−モルフォリノ−1,2,5−チアジアゾ−3−イル)オキシ]−2−プロパノールマレエート(1:1)塩は、交感神経興奮活性または心筋抑制効果を持たない、非選択的β−アドレナリン(β1およびβ2)受容体ブロック剤である。マレイン酸チモロールを局所的に適用した場合、急性閉塞隅角および続発性緑内障を含む殆どの型の緑内障で、上昇した眼圧の低下に効果的である。
【0008】
マレイン酸チモロールは、約30年間にわたり、慢性OAGの治療のため、眼圧を低下するために臨床的に使用されてきている。低下は、房水生成を抑制することによってなされており、房水流出率を増加することによってではない。しかし、目薬の多くのタイプのように、1滴(TimopticXE(登録商標)0.5%q.d.、Merck社、Whitehouse Station、NJ)または2滴(Timoptic(登録商標)0.5%b.i.d.、Merck社、Whitehouse Station, NJ)という毎日の療法のうち約1%だけが、実際、眼の内部に吸収され、治療濃度を提供しているものと考えられる。調査試験では、増粘剤を点眼剤に加えて、前角膜領域における薬剤の滞留時間を長くすることによって、マレイン酸チモロールの生体利用率が向上することができ、点眼剤の治療効果を強める傾向があることが示されている。
【0009】
以下の特許文献および追加の刊行物は、本発明を理解する上で、関連のあるおよび/または有益な開示を含む。米国特許第4521210号、第4853224号、第4997652号、第5164188号、第5443505号、第5501856号、第5766242号、第5824072号、第5869079号、第6074661号、第6331313号、第6369116号および第6699493号、David L.Epstein, Chandler and Grant's Glaucoma, Lea & Febiger,(1986)129-181頁;Physician's Desk Reference for Ophthalmic Medicines, 30 Edition,(2002)285頁;Chiao-His Chiang, Jing-Ing Ho, and Jiin-Long Chen,Journal of Ocular Pharmacology and Therapeutics, Volume12, Number4, 471,(1996). Calbert I.Phillips, R.Shayle Bartholomew, Anthony M.Levy, Jeffrey Grove, and Roger Vegel, British Journal of Ophthalmology, Volume69, 217,(1985)。これらの各文献の全開示は、参照して本明細書に組み込まれる。
【0010】
例えば、治療剤の眼に対する生体利用率を高めるために、眼に対するβ−アドレナリン受容体拮抗薬、例えばマレイン酸チモロールのような、さらに効果的な製剤および治療薬を投与する技術の必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
長期間にわたって、かつ負の副作用をほとんどまたは全く生じずに、治療薬を持続的または制御的速度で放出することができる眼内移植可能な薬剤送達システム、例えば眼内インプラント、およびそのようなシステムを使用する方法を提供することが好都合である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、例えば1つまたはそれ以上の所望の治療効果を得るための、眼への長期間または持続的薬物放出用の新規薬剤送達システム、ならびにそのようなシステムの製造法および使用法を提供する。該薬剤送達システムは、眼に配置しうるインプラントまたはインプラント要素の形態である。本発明のシステムおよび方法は、好都合にも、1つまたはそれ以上の治療薬の長い放出時間を与える。従って、眼にインプラントを配置された患者は、薬剤の付加的投与を必要とせずに、長期間または延長された期間にわたって、治療量の薬剤を受ける。例えば、患者は、比較的長い期間にわたって、例えば、インプラントを配置されてから、少なくとも約1週間程度、例えば約2ヶ月〜約6ヶ月間にわたって、実質的に一貫したレベルの治療的活性剤を、一貫した眼の治療のために得ることができる。そのような長い放出時間は、優れた治療効果を得ることを促進する。
【0013】
本明細書の開示に従った眼内インプラントは、治療成分と、治療成分に付随する薬剤放出持続成分とを含む。本発明の好ましい態様によれば、治療成分は、β−アドレナリン受容体拮抗薬を含む、またはそれから本質的に成る、またはそれのみから成る。薬剤放出持続成分が、インプラントが配置された眼へのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるために、治療成分に付随する。β−アドレナリン受容体拮抗薬は、インプラントが眼に配置された後、約1週間よりも長い期間、眼に放出され、眼の血管障害、例えば血管閉塞を防止または軽減するのに有効である。
【0014】
1つの態様において、眼内インプラントは、β−アドレナリン受容体拮抗薬および生分解性ポリマーマトリックスを含む。β−アドレナリン受容体拮抗薬は、眼の血管閉塞を軽減または防止するのに十分な期間、インプラントからの拮抗剤の放出を持続するのに有効な速度で分解する生分解性ポリマーマトリックスに付随される。眼内インプラントは、生分解性または生体分解性であり、1週間を超える長期間、例えば、約3ヶ月間、または約6ヶ月以上の期間、β−アドレナリン受容体拮抗薬の持続的放出を可能にする。あるインプラントでは、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、約30〜35日間またはそれより短い期間、放出される。別のインプラントでは、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、約40日間またはそれより長い期間、放出される。
【0015】
上記インプラントの生分解性ポリマー成分は、少なくとも1種の生分解性ポリマーが64キロダルトン(kD)未満の分子量を有するポリ乳酸ポリマーである生分解性ポリマーの混合物であってよい。加えてまたは代えて、上記インプラントは、ポリ乳酸の第一生分解性ポリマーと、異なるポリ乳酸の第二生分解性ポリマーとの混合物を含んでもよい。更に、上記インプラントは、各生分解性ポリマーが約0.3dl/g〜約1.0dl/gの範囲の固有粘度を有する異なる生分解性ポリマーの混合物を含んでもよい。
【0016】
本明細書に開示されたインプラントのβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、β非特異性拮抗剤、β1選択的拮抗剤、β2選択的拮抗剤、または眼症状を治療するのに有効である他の拮抗剤を包含する。適当なβ非特異性拮抗剤の例には、チモロール、プロプラノロール、ナドロール、ピンドロールおよびこれらの誘導体が包含される。β1選択的拮抗剤の例には、メトプロロール、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、エスモロールおよびこれらの誘導体が包含される。β2選択的拮抗剤の例は、ブトキサミンである。加えて、本発明のインプラントの治療成分は、眼症状を治療するのに有効であり得る付加的な異なる1種以上の治療剤を含み得る。
【0017】
本発明のインプラントの製造法は、β−アドレナリン受容体拮抗薬と、1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーとを組み合わすかまたは混合することを含む。次に、該混合物を押し出すかまたは圧縮して、単一組成物を形成しうる。次に、単一組成物を処理して、患者の眼に配置するのに好適な個々のインプラントを形成しうる。
【0018】
インプラントは、眼の前眼房または(眼)後部に影響する眼の血管障害のような症状を含む種々の眼症状を治療するために、眼の領域に配置され得る。例えば、インプラントは、血管閉塞に関連する症状(これに限定されない)を含む多数の眼症状を治療するのに使用できる。
【0019】
本発明のキットは、1つまたはそれ以上の本発明のインプラント、およびインプラントの使用説明書を含んで成ってよい。例えば、使用説明書は、患者へのインプラントの投与の仕方、およびインプラントで治療しうる症状のタイプを説明しうる。
【0020】
本明細書に記載する個々のおよび全ての特徴、ならびにそのような特徴の2つまたはそれ以上の個々のおよび全ての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しないことを条件として、本発明の範囲に含まれる。さらに、任意の特徴または特徴の組合せは、本発明の任意の態様から特に除外しうる。
【0021】
本発明の付加的局面および利点は、特に添付の図面に関連して考慮する場合に、以下の説明および請求の範囲に示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本明細書に記載するように、1つまたはそれ以上の眼内薬剤送達システムまたはインプラントの使用による治療薬の制御および持続投与は、望ましくない眼症状の治療を向上させることができる。インプラントは、医薬的に許容されるポリマー組成物を含んで成り、1つまたはそれ以上の医薬的に活性な薬剤、例えばβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、長期間にわたって放出するように配合される。インプラントは、1つまたはそれ以上の望ましくない眼症状を、治療または予防するために、眼の領域に直接的に、治療有効量の1つまたはそれ以上の薬剤を与えるのに有効である。従って、患者を、繰り返しの注入、または自己投与点眼剤の場合の、単に限定されたバーストの活性剤への暴露による非効率的な治療に付すのではなく、単一投与によって、治療薬が、それらを必要とする部位で使用され、しかも長期間にわたって維持される。
【0023】
本明細書の開示による眼内インプラントは、治療成分、および治療成分に付随する薬剤放出持続成分を含んで成る。本発明の好ましい態様によれば、治療成分は、β−アドレナリン受容体拮抗薬を含んで成るか、またはそれから本質的に成るか、またはそれのみから成る。薬剤放出持続成分は、インプラントを配置した眼への治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるために、治療成分に付随している。治療量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、インプラントを眼に配置してから約1週間より長い期間にわたって眼に放出される。
【0024】
定義
本発明の説明のために、用語の文脈が異なる意味を示す場合を除いて、このセクションで定義されるように以下の用語を使用する。
【0025】
本明細書において使用する場合、「眼内インプラント」は、眼に配置されるように構成され、サイズ設定され、またはその他の設計を施された器具または要素を意味する。眼内インプラントは、一般に、眼の生理学的条件に生体適合性であり、不利な副作用を生じない。眼内インプラントは、視覚を損なわずに眼に配置しうる。
【0026】
本明細書において使用する場合、「治療成分」は、眼の医学的症状を治療するのに使用される1つまたはそれ以上の治療薬または物質を含んで成る眼内インプラントの部分を意味する。治療成分は、眼内インプラントの個別の領域であってもよく、またはインプラント全体に均一に分布させてもよい。治療成分の治療薬は、一般に、眼科的に許容され、インプラントを眼に配置した際に不利な反応を生じない形態で使用される。
【0027】
本明細書において使用する場合、「薬剤放出持続成分」は、インプラントの治療薬の持続放出を与えるのに有効な、眼内インプラントの部分を意味する。薬剤放出持続成分は、生分解性ポリマーマトリックスであってもよく、または治療成分を含んで成るインプラントのコア領域を覆う被覆物であってもよい。
【0028】
本明細書において使用する場合、「付随する」は、混合するか、分散するか、結合するか、覆うか、または包囲することを意味する。
【0029】
本明細書において使用する場合、「眼の領域」または「眼の部位」は、眼の前区および後区を含む眼球の任意領域を一般に意味し、かつ、眼球に見出される任意の機能的(例えば、視覚用)または構造的組織、または眼球の内部または外部に部分的にまたは完全に並んだ組織または細胞層を一般に包含するが、それらに限定されない。眼領域における眼球領域の特定の例は、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内隙、角膜上隙、強膜、毛様体輪、外科的誘導無血管領域、網膜黄斑および網膜である。
【0030】
本明細書において使用する場合、「眼の症状」は、眼、または眼の部分または領域の1つを冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。一般的に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成している組織および流体(体液)、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球の中かまたは眼球に近接した視神経の部分を包含する。
【0031】
前眼症状は、水晶体包の後壁または毛様体筋の前方に位置する、前眼(即ち、眼の前方)領域または部位、例えば、眼周囲筋、眼瞼または眼球組織または流体を冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体包、および前眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している。
【0032】
従って、前眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障も前眼症状と考えられるが、その理由は、緑内障治療の臨床目的が、前眼房における水性液の高圧を減少させる(即ち、眼内圧を減少させる)ことでありうるからである。
【0033】
後眼症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁全体にわたる平面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している疾患、不快または症状である。
【0034】
従って、後眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:急性斑状視神経網膜疾患;ベーチェット病;脈絡膜新生血管形成;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;感染症、例えば、真菌またはウイルスによる感染症;黄斑変性、例えば、急性黄斑変性、非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性;浮腫、例えば、黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫;多病巣性脈絡膜炎;後眼部位または領域を冒す眼の外傷;眼腫瘍;網膜障害、例えば、網膜中心静脈閉鎖、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉鎖性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患;交感性眼炎;フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼のレーザー治療によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光ダイナミック療法によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光凝固、放射線網膜症、網膜上膜疾患、網膜枝静脈閉鎖、前虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy)、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、色素性網膜炎および緑内障。緑内障は、その治療目標が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または欠損による視力低下を予防するか、または視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)であるので、後眼症状と考えることができる。
【0035】
本発明は、閉塞隅角緑内障、血管新生緑内障、開放隅角緑内障および水眼を含む、数種の異なるタイプの緑内障のいずれをも含む緑内障の治療に、特に有用である。
【0036】
用語「生分解性」および「生体分解性」は、通常どおり、本明細書では互換的に使用する。
【0037】
「生分解性ポリマー」という用語は、生体内で分解する1つまたはそれ以上のポリマーを意味し、1つまたはそれ以上のポリマーの侵食は、治療薬の放出と同時かまたはそれに続いて、経時的に起こる。厳密に言えば、ポリマーの膨潤によって薬剤を放出する作用をするメチルセルロースのようなヒドロゲルは、「生分解性ポリマー」という用語から特に除外される。「生分解性」および「生体内分解性」という用語は、同意義であり、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3種類以上のポリマー単位を有するポリマーであってよい。
【0038】
本明細書において使用する場合、「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、眼症状、眼の傷害または損傷の減少または回復または予防、または傷害または損傷を受けた眼組織の治癒を促進することを意味する。
【0039】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、眼または眼領域に有意な負のまたは不利な副作用を生じずに、眼症状を治療するか、眼傷害または損傷を減少させるかまたは予防するのに必要とされる薬剤のレベルまたは量を意味する。
【0040】
様々な期間にわたって薬剤装入量を放出することができる眼内インプラントが開発されている。これらのインプラントは、眼、例えば眼の硝子体に挿入された場合に、治療レベルのβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、長期間にわたって(例えば、約1週間またはそれ以上)与える。開示されるインプラントは、眼症状、例えば緑内障のような眼神経障害を治療するのに有効である。
【0041】
本発明の1つの態様において、眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤放出持続成分の1つのタイプである。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性眼内インプラントを形成するのに有効である。生分解性眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを伴うβ−アドレナリン受容体拮抗薬を含んで成る。好ましくは、マトリックスは、インプラントを眼の領域または眼の部位、例えば眼の硝子体に配置してから約1週間より長い期間にわたって、所定量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で分解する。
【0042】
インプラントのβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、β非特異性またはβ特異性であってよい。本発明の好ましい態様では、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、チモロール、ベクサトール、レボブノロール、カルテオロール、メチプレノロール、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される。例えば、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、マレイン酸チモロールを含む。通常、本明細書に開示されたインプラントのβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、β非特異性拮抗剤、β1選択的拮抗剤、β2選択的拮抗剤、または眼症状を治療するのに有効である他の拮抗剤を包含する。適当なβ非特異性拮抗剤の例には、チモロール、プロプラノロール、ナドロール、ピンドロールおよびこれらの誘導体が包含される。β1選択的拮抗剤の例には、メトプロロール、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、エスモロールおよびこれらの誘導体が包含される。β2選択的拮抗剤の例は、ブトキサミンである。
【0043】
これらのインプラントは、エストラジオール誘導体の塩を含有してもよい。本発明化合物の医薬的に許容される酸付加塩は、医薬的に許容される陰イオンを含有する非毒性付加塩を形成する酸から形成される酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩、硫酸塩または二硫酸塩、燐酸塩または酸性燐酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩である。
【0044】
従って、インプラントは、チモロール塩、例えば、マレイン酸チモロールを含んで成るか、それから本質的に成るか、またはそれのみから成る治療成分を含有しうる。
【0045】
β−アドレナリン受容体拮抗薬は、粒状または粉末形態であってよく、生分解性ポリマーマトリックスに閉じ込めうる。一般に、β−アドレナリン受容体拮抗薬粒子は、約3000ナノメートル未満の有効平均粒度を有する。あるインプラントにおいて、粒子は、約3000ナノメートル未満のオーダーの有効平均粒度を有しうる。例えば、粒子は、約500ナノメートル未満の有効平均粒度を有しうる。他のインプラントにおいて、粒子は、約400ナノメートル未満の有効平均粒度、さらに他の態様においては、約200ナノメートル未満の粒度を有しうる。
【0046】
インプラントのβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、好ましくは、インプラントの重量に対して約10%〜90%である。より好ましくは、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、インプラントの重量に対して約20%〜約80%である。好ましい態様において、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、インプラントの重量の約20%または約26%を占める。他の態様において、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、インプラントの重量の約50%までを占める。
【0047】
インプラントに使用される好適なポリマー材料または組成物は、眼に適合性、即ち生体適合性であり、それによって、眼の機能または生理機能に実質的障害を生じない材料を包含する。そのような材料は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは実質的に完全に生分解性または生体内分解性である。
【0048】
有用なポリマー材料の例は、有機エステルおよび有機エーテルから誘導され、かつ/またはそれらを含有する材料であって、分解した際に、生理学的に許容される分解生成物を生じる材料(モノマーを含む)であるが、それらに限定されない。無水物、アミド、オルトエスエル等から誘導され、かつ/またはそれらを含有するポリマー材料を、単独で、または他のモノマーと組み合わせて、使用してもよい。ポリマー材料は、付加または縮合重合体、好都合には縮合重合体であってよい。ポリマー材料は、架橋または非架橋、例えば軽架橋以下であってよく、例えば、ポリマー材料の約5%未満または約1%未満が架橋されている。多くの場合、炭素および水素の他に、ポリマーは、酸素および窒素の少なくとも1つ、好都合には酸素を含有する。酸素は、オキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えば非オキソ−カルボニル、例えばカルボン酸エステル等として存在しうる。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在しうる。制御薬剤送達のための被包形成を記載しているHeller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 第1巻, CRC Press, Boca Raton, FL 1987, p.39-90に示されているポリマーを、本発明のインプラントに使用しうる。
【0049】
他に関心がもたれるものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖類である。関心がもたれるポリエステルは、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せのポリマーを包含する。一般に、L−ラクテートまたはD−ラクテートを使用することによって、ゆっくり侵食されるポリマーまたはポリマー材料が得られ、一方、ラクテートラセミ体を使用することによって、侵食が実質的に促進される。
【0050】
有用な多糖類の例は、アルギン酸カルシウム、および官能化セルロース、特に、水不溶性であることを特徴とし、分子量が例えば約5kD〜500kDの、カルボキシメチルセルロースエステルであるが、それらに限定されない。
【0051】
関心がもたれる他のポリマーは、生体適合性であり、かつ生分解性および/または生体内分解性の場合もある、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組合せであるが、それらに限定されない。
【0052】
本発明に使用されるポリマーまたはポリマー材料のいくつかの好ましい特徴は、生体適合性、治療成分との適合性、本発明の薬剤送達システムの製造におけるポリマーの使い易さ、少なくとも約6時間の、好ましくは約1日より長い、生理環境における半減期、硝子体の粘度を有意に増加させないこと、および水不溶性を包含しうる。
【0053】
マトリックスの形成のために含有される生分解性ポリマー材料は、酵素的または加水分解的に不安定になりやすいことが望ましい。水溶性ポリマーを、加水分解的または生分解的に不安定な架橋で架橋させて、有用な水不溶性ポリマーが得られる。安定性の程度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーを使用するか、ポリマー混合物の使用、ポリマーが末端酸根を有するか、に依存して広く変化させることができる。
【0054】
インプラントに使用されるポリマー組成物の相対平均分子量も、ポリマーの生分解性、従ってインプラントの長時間放出プロフィールを調節するのに同じく重要である。種々の分子量の同じかまたは異なるポリマーの組成物を、インプラントに含有させて、放出プロフィールを調節しうる。特定のインプラントにおいて、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約64kD、一般に約10〜約54kD、より一般的には約12〜約45kDである。
【0055】
いくつかのインプラントにおいて、グリコール酸と乳酸のコポリマーを使用し、生分解速度をグリコール酸/乳酸の比率によって調節する。最も急速に分解されるコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を含有する。ホモポリマー、または等しくない比率を有するコポリマーは、分解に対してより抵抗性である。グリコール酸/乳酸の比率は、インプラントの脆性にも影響を与え、より大きい形状には、より柔軟性のインプラントが望ましい。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーにおけるポリ乳酸のパーセントは、0〜100%、好ましくは約15〜85%、より好ましくは約35〜65%にすることができる。いくつかのインプラントにおいて、50/50 PLGAコポリマーが使用される。
【0056】
眼内インプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、2つまたはそれ以上の生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。例えば、インプラントは、第一生分解性ポリマーおよび異なる第二生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーは、末端酸根を有してよい。
【0057】
分解性ポリマーからの薬剤放出は、いくつかのメカニズム、またはメカニズムの組合せの結果である。これらのメカニズムのいくつかは、インプラント表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔流路からの拡散、および侵食である。侵食は、本体侵食または表面侵食、またはその両方の組合せであることができる。本明細書に記載するように、眼内インプラントのマトリックスは、眼への移植から1週間より長い期間にわたって、所定量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で、薬剤を放出しうる。あるインプラントでは、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬が、移植後約30〜35日を超える期間、放出される。例えば、インプラントは、マレイン酸チモロールを含んでなり、インプラントのマトリックスは、眼に配置された後、約1ヶ月間、治療有効量のマレイン酸チモロールの放出を維持するのに有効な速度で薬剤を放出する。他の例として、インプラントは、マレイン酸チモロールを含んでなり、マトリックスは、40日を超える期間、例えば約6ヶ月間、治療有効量のチモロールの放出を維持するのに有効な速度で分解する。
【0058】
生分解性眼内インプラントの一例は、異なる生分解性ポリマーの混合物からなる生分解性ポリマーマトリックスに付随したβ−アドレナリン受容体拮抗薬を含む。生分解性ポリマーの少なくとも1種は、約63.3kDの分子量を有するポリラクチドである。第二生分解性ポリマーは、約14kDの分子量を有するポリラクチドである。そのような混合物は、インプラントが眼に配置された時点から約1ヶ月を超える期間、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を維持するのに効果的である。
【0059】
生分解性眼内インプラントの別の例は、各生分解性ポリマーが約0.16dl/g〜約1.0kDの固有粘度を有する異なる生分解性ポリマーの混合物からなる生分解性ポリマーマトリックスに付随したβ−アドレナリン受容体拮抗薬を含む。例えば、生分解性ポリマーの1つは、約0.3dl/gの固有粘度を有し得る。第二生分解性ポリマーは、約1.0dl/gの固有粘度を有し得る。固有粘度は、25℃において、0.1%クロロホルム溶液で測定することができる。
【0060】
ある種のインプラントは、2種の異なるポリラクチドポリマーの組み合わせに付随したマレイン酸チモロールを含む。マレイン酸チモロールは、インプラントの約20重量%の量で存在する。1つのポリラクチドポリマーは約14kDの分子量と約0.3dl/gの固有粘度を有し、他方のポリラクチドポリマーは約63.3kDの分子量と約1.0dl/gの固有粘度を有する。2種のポリラクチドポリマーは、1:1の比でインプラント中に存在する。そのようなインプラントは、本明細書に記載されているように、インビトロで2ヶ月を超える期間、チモロールを放出することができる。インプラントは、押出法で製造されたロッドまたはフィラメントの形状で供給される。
【0061】
生分解性ポリマーマトリックスを含有する眼内インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出は、初期放出バースト、次に、放出されるβ−アドレナリン受容体拮抗薬の量の漸増を含む場合があり、または該放出は、β−アドレナリン受容体拮抗薬の初期放出遅延、次に、放出増加を含む場合もある。インプラントが実質的に完全に分解した場合、放出されたβ−アドレナリン受容体拮抗薬のパーセントは、約100である。既存のインプラントと比較して、本明細書に開示するインプラントは、眼に配置してから約1週間後までは、β−アドレナリン受容体拮抗薬を完全には放出しないか、または約100%を放出しない。
【0062】
インプラントの寿命にわたって、インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の比較的定速の放出を与えることが望ましい場合がある。例えば、β−アドレナリン受容体拮抗薬が、インプラントの寿命にわたって、1日当たり約0.01μg〜約2μgの量で放出されることが望ましい場合がある。しかし、放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスの配合に依存して変化して、増加するかまたは減少する場合もある。さらに、β−アドレナリン受容体拮抗薬の放出プロフィールは、1つまたはそれ以上の直線部分および/または1つまたはそれ以上の非直線部分を含みうる。一旦、インプラントが分解または侵食しはじめたら、放出速度はゼロより大きいことが好ましい。
【0063】
インプラントは、モノリシックである(即ち、1つまたはそれ以上の活性剤がポリマーマトリックス全体に均一に分散されている)か、または被包され、その場合、活性剤の貯留部がポリマーマトリックスによって被包されている。製造容易性により、モノリシックインプラントが、被包形態より一般に好ましい。しかし、被包された貯留部型インプラントによって得られるより優れた調節は、薬剤の治療レベルが狭い幅内にあるいくつかの状況において有利な場合もある。さらに、β−アドレナリン受容体拮抗薬を含有する治療成分を、マトリックス中に不均質に分散させてもよい。例えば、インプラントは、インプラントの第二部分に対してより高い濃度のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を有する部分を含有してよい。
【0064】
本明細書に開示する眼内インプラントは、針での投与用に、約5μm〜約2mm、または約10μm〜約1mmの大きさ、外科的移植による投与用に、1mmより大、または2mmより大、例えば3mm〜10mmの大きさであってよい。ヒトの硝子体腔は、例えば1〜10mmの長さを有する種々の形状の比較的大きいインプラントを収容することができる。インプラントは約2mm×0.75mm直径の寸法を有する円筒形ペレット(例えばロッド)であってよい。または、例えば、インプラントは、長さ約7mm〜約10mm、直径約0.75mm〜約1.5mmの円筒形ペレットであってもよい。
【0065】
インプラントは、眼、例えば硝子体へのインプラントの挿入、およびインプラントの収容の両方を容易にするように、少なくとも幾分柔軟性であってもよい。インプラントの全重量は、一般に約250〜5000μg、より好ましくは約500〜1000μgである。例えば、インプラントは約500μg、または約1000μgであってよい。非ヒト個体に関しては、インプラントの寸法および全重量は、個体の種類に依存してより大きいかまたはより小さくてよい。例えば、ウマの約30mLおよびゾウの約60〜100mLと比較して、ヒトは約3.8mLの硝子体容量を有する。ヒトに使用される大きさのインプラントを、他の動物に応じて大きくするかまたは小さくし、例えばウマ用のインプラントは約8倍大きくし、または、例えばゾウ用のインプラントは26倍大きくしうる。
【0066】
例えば、中心が1つの材料で形成され、表面が同じかまたは異なる組成物の1つまたはそれ以上の層を有し、層が架橋しているか、または異なる分子量、異なる密度または多孔率等であるインプラントを製造することができる。例えば、薬剤の初期ボーラスを急速に放出することが望ましい場合、中心が、ポリラクテート−ポリグリコレートコポリマーで被覆されたポリラクテートであってよく、それによって初期分解速度を増加しうる。または、中心が、ポリラクテートで被覆されたポリビニルアルコールであってもよく、それによって、外側のポリラクテートの分解時に、中心が溶解し、眼から急速に流れ出るようにしうる。
【0067】
インプラントは、繊維、シート、フィルム、微小球、球体、円板、プラク等を包含する任意の形状であってよい。インプラントの大きさの上限は、インプラントに関する許容性(toleration for the implant)、挿入時の大きさ制限、取扱い容易性等のような要因によって決定される。シートまたはフィルムを使用する場合、シートまたはフィルムは、取扱い容易性のために、少なくとも約0.5mm×0.5mm、一般に約3〜10mm×5〜10mm、厚さ約0.1〜1.0mmである。繊維を使用する場合、繊維の直径は、一般に約0.05〜3mmであり、繊維の長さは一般に約0.5〜10mmである。球体は、直径0.5μm〜4mmであり、他の形状の粒子に匹敵する容量を有しうる。
【0068】
インプラントの大きさおよび形は、放出速度、治療期間、および移植部位における薬剤濃度を調節するために使用することもできる。より大きいインプラントは、比例的により高い投与量を送達するが、表面積/質量比に依存して、より遅い放出速度を有する場合もある。移植部位に適合させるために、インプラントの特定の大きさおよび形状を選択する。
【0069】
β−アドレナリン受容体拮抗薬、ポリマーおよび任意の他の調節剤の比率は、変化する比率においていくつかのインプラントを処方することによって経験的に決定しうる。USP承認の溶解または放出試験方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798)。例えば、無限沈下法(infinite sink method)を使用して、秤量したインプラント試料を、水中に0.9%NaClを含有する測定容量の溶液に添加すると、該溶液容量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%未満であるような容量になる。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌して、インプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々方法、例えば、分光光度的に、HPLC、質量分析等によって、吸収が一定になるまでか、または90%を超える薬剤が放出されるまで、追跡しうる。
【0070】
本明細書に開示される眼内インプラントに含有されるβ−アドレナリン受容体拮抗薬に加えて、眼内インプラントは、1つまたはそれ以上の付加的な眼科的に許容される治療剤も含有しうる。例えば、インプラントは、1つまたはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1つまたはそれ以上の抗生物質、1つまたはそれ以上のα−アドレナリン受容体アゴニスト、1つまたはそれ以上のステロイド、1つまたはそれ以上の抗新生物薬、1つまたはそれ以上の免疫抑制薬、1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬、1つまたはそれ以上の酸化防止剤、およびそれらの混合物を含有しうる。
【0071】
本発明のシステムに使用しうる薬理学的または治療的薬剤は、米国特許第4474451号第4〜6欄、および同第4327725号第7〜8欄に開示されている薬剤を包含するが、それらに限定されない。
【0072】
抗ヒスタミン薬の例は、ロラダチン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニルアミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリメプラジン、ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、キオルシクリジン、トンジラミン、ならびにそれらの誘導体であるが、それらに限定されない。
【0073】
抗生物質の例は、セファゾリン、セフラジン、セファクロール、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム(cefutoxime)、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシム、アンピシリン、アモキシリン、シクラシリン、アンピリシン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、塩酸シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメテート、コリスチン、アジスロマイシン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、およびそれらの誘導体であるがそれらに限定されない。
【0074】
α−アドレナリン受容体アゴニストの例は、キノキサリン、(2−イミドゾリン−2−イルアミド)キノキサリン、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、これらの誘導体およびこれらの混合物である。
【0075】
ステロイドの例は、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール(loteprednol)、フルアザコート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、リアムシノロンヘキサカトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、トリアムシノロン、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0076】
抗新生物薬の例は、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ジュアノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミド、およびフルタミド、ならびにそれらの誘導体である。
【0077】
免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体である。
【0078】
抗ウイルス薬の例は、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バルシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノ蟻酸、ガンシクロビルおよびそれらの誘導体である。
【0079】
酸化防止剤の例は、アスコルベート、α−トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタザンチン(astazanthin)、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、γ−グルタミルシステイン、ケルセチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、イチョウエキス、茶カテキン、ビルベリーエキス、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、レチニルパルミテート、およびそれらの誘導体である。
【0080】
他の治療薬は、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害薬、プロスタミド、プロスタグランジン、駆虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体を包含する。
【0081】
個々にまたは組み合わせてインプラントに使用される1つまたはそれ以上の活性剤の量は、必要とされる有効投与量、およびインプラントからの所望放出速度に依存して広く変化する。通常、薬剤は、インプラントの少なくとも約1wt%、より一般的には少なくとも約10wt%であり、かつ、一般に約80wt%以下、より一般的には約40wt%以下である。
【0082】
本明細書に開示する眼内インプラントは、治療成分に加えて、有効量の緩衝剤、防腐剤等も含有しうる。好適な水溶性緩衝剤は、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、燐酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、硼酸塩、酢酸塩、琥珀酸塩等、例えば、燐酸、クエン酸、硼酸、酢酸、炭酸水素、炭酸等を包含するが、それらに限定されない。これらの緩衝剤は、システムのpHを約2〜約9、より好ましくは約4〜約8に維持するのに充分な量で存在するのが好都合である。従って、緩衝剤は、全インプラントの約5wt%もの量で存在する場合もある。好適な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルベート、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硼酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール等、およびそれらの混合物を包含する。これらの防腐剤は、0.001〜約5wt%、好ましくは0.01〜約2wt%の量で存在しうる。本発明のインプラントの少なくとも1つにおいて、例えばβ−アドレナリン受容体拮抗薬がチモロールである場合に、purite 防腐剤がインプラントに供給される。すなわち、そのようなインプラントは、治療有効量のAlphagan P(登録商標)を含み得る。
【0083】
ある場合には、同じかまたは異なる薬理学的物質を使用して、インプラントの混合物を使用しうる。この場合、単一投与によって二相または三相放出を与える放出プロフィールの組み合わせが得られ、放出のパターンがかなり変化しうる。
【0084】
さらに、米国特許第5869079号に記載されているような放出調節剤もインプラントに含有させてよい。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下のβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、インプラントに含有させてよい。緩衝剤または促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、薬剤粒子を囲んでいる材料のより速い溶解(これは、露出した薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤の生体内分解速度を増加させる)によって、放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤の生体内分解速度を遅くする。
【0085】
あるインプラントでは、インプラントはチモロールまたはマレイン酸チモロールを含み、生分解性ポリマーマトリックスは、眼へのインプラントの移植後、約3〜6ヶ月にわたり、約0.1mg〜約0.5mgの間の量のチモロールを放出または送達することができる。インプラントは、ロッドまたはウエハの形状にされる。ロッド状インプラントは、720μmのノズルから押し出したフィラメントを1mgに切断して、得ることができる。ウエハ状インプラントは、約2.5mmの直径、約0.127mmの厚さおよび約1mgの重さを有する円板であってよい。
【0086】
提案される3ヶ月放出製剤は、PLAマトリックスまたはPOEマトリックス内にマレイン酸チモロールを含むロッド、ウエハまたは微小球の形状で、滅菌され、生体分解性であり得る。インプラントは、薬剤の消費を遅延し、繰り返し移植の必要性を3ヶ月間抑制し、それにより合併症の危険を小さくするように、設計される。
【0087】
種々の方法を使用して、本明細書に開示するインプラントを製造しうる。有用な方法は、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、同時押出法、カーバープレス(carver press)法、ダイ打抜き法、熱圧縮法、それらの組合せ等であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0088】
特定の技術および方法が、Wongによる米国特許第4997652号に記載されている。押出法を使用して、製造における溶媒の必要性を回避しうる。押出法を使用する場合、ポリマーおよび薬剤は、製造に必要とされる温度(一般に、低くとも約85℃)において安定であるように選択される。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を使用する。インプラントは、薬剤/ポリマー混合のために、約0〜1時間、0〜30分間、または5〜15分間にわたって、温度を約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることによって製造しうる。例えば、時間は、約10分間、好ましくは約0〜5分間であってよい。次に、インプラントを、約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度で押し出す。
【0089】
さらに、インプラントを同時押出してもよく、それによってインプラントの製造の間に、コア領域に被膜を形成しうる。
【0090】
圧縮法を使用してインプラントを製造してもよく、圧縮法は、一般に、押出法より速い放出速度のインプラントを生じる。圧縮法は、約50〜150psi、より好ましくは約70〜80psi、さらに好ましくは約76psiの圧力を使用し、約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用する。
【0091】
本発明のインプラントは、2〜3mmの強膜切開後の鉗子またはトロカールによる配置を包含する種々の方法によって、眼、例えば眼の硝子体腔に挿入しうる。インプラントを眼に挿入するのに使用しうる器具の1つの例は、米国特許出願公開第2004/0054374号である2002年9月18日出願の米国特許出願第10/246884号に開示されており、同開示の全てを引用してここに組み込む。配置方法は、治療成分または薬剤放出速度論に影響を与えうる。例えば、トロカールでのインプラントの送達は、鉗子による配置より、硝子体内に深くインプラントを配置し、それによって、インプラントを硝子体の縁により近づけうる。インプラントの位置は、要素の周囲の治療成分または薬剤の濃度勾配に影響を与える場合があり、従って、放出速度に影響を与えうる(例えば、硝子体の縁の近くに配置するほど、より遅い放出速度を生じうる)。
【0092】
開放隅角緑内障のような眼神経障害を最小限にする時間、眼内にβ−アドレナリン受容体拮抗薬のある量を放出するように、本発明のインプラントを構成する。アドレナリン受容体拮抗薬含有インプラントを眼の硝子体に移植することによって、拮抗薬が効果的に眼のIOPを下げると考えられる。
【実施例】
【0093】
実施例1
チモロールおよび生分解性ポリマーマトリックスを含有するインプラントの製造
本発明による生分解性薬剤送達システムまたはインプラントを、マレイン酸チモロールまたはチモロール遊離塩基と生分解性ポリマー組成物を組み合わせることによって製造した。
【0094】
より詳細には、インプラントを錠剤およびウエハの形態で製造した。例えば、通常円柱状である、薬剤送達システム錠剤成分を、サイズおよび重さが1.8mmL×直径約0.72mm、重量900μg〜1100μgの錠剤、またはサイズおよび重さが1.2mmL×直径0.38mm、重量216〜264μgの錠剤として製造した。薬剤送達システムウエハ成分は、通常、サイズおよび重さが厚さ0.13mm×直径2.5mm、重量900μg〜1100μgの円形ウエハとして製造した。
【0095】
そのような錠剤成分およびウエハ成分の異なる製剤を、本明細書に記載するように製造し、試験した。各製剤において、医薬品有効成分(API)であるマレイン酸チモロールを、ポリマーと組み合わせた。
【0096】
製剤作業のための選択されたポリマーは、ベーリンガーインゲルハイムから得た。ポリマーは、Resomer RG502、RG502H、RG503、RG504、RG505、RG506、RG752、RG755、RG756、RG858、R202H、R203およびR206であった。Resomer RG502、RG502H、RG503、RG504、RG505およびRG506は、それぞれ、固有粘度が0.2、0.2、0.4、0.5、0.7および0.8dL/gの50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG752、RG755およびRG756は、それぞれ固有粘度が0.2、0.6および0.8dL/gの75:25ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG858は、固有粘度が1.4dL/gの85:15ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R203およびR206は、それぞれ固有粘度が0.3および1.0dL/gのポリ(D,L−ラクチド)である。最後に、R202Hは、固有粘度が0.2で酸末端を有するポリ(D,L−ラクチド)である。
【0097】
各製剤に関し、薬剤およびポリマーをステンレス鋼乳鉢中で組み合わせ、96RPMに設定したターブラシェーカで15分間混合した。粉末混合物を乳鉢の壁から引き剥がし、次いで、さらに15分間再混合した。混合粉末混合物をテフロンビーカーに移し、95℃で、3〜6分間隔で10回、合計30〜60分間、溶融状態まで加熱し、均質なポリマー/薬剤溶融物を形成した。
【0098】
次いで、ポリマー/薬剤溶融物を錠剤およびウエハにした。より詳細には、溶融物を9ゲージポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チュービングを用いて錠剤化した。錠剤は、ピストン押出機のバレルに載せ、所定のコア押出温度で押出して、フィラメントとし、次いで1mgサイズの錠剤に切断した。溶融物を、Carverプレスによって所定の温度および圧力を利用してウエハとし、その後圧縮されたポリマー/薬剤シートを切断して、各重さが約1mgのウエハとした。
【0099】
チモロールおよび生分解性ポリマーマトリックスを含有するインプラントの試験
インビトロ薬剤放出速度試験を以下のようにして行った。
【0100】
各インプラント、すなわち錠剤またはウエハを、それぞれ、10mLの0.9%生理食塩水で満たされた40mLスクリューキャップ付バイアルに入れ、このバイアルを37℃/50rpmで振盪されている水浴中に置いた。所定の時点で、8mLのアリコートを取り出し、等体積の新しい媒体で置き換えた。薬剤分析を、通常、2690分離モジュール(または2696分離モジュール)と、2996フォトダイオードアレイ検出器とを含むWatersHPLCシステムからなるHPLCによって行った。Metachem Inertsil、RPC-18、5μm;4.6×250mmカラムを分離のために使用し、検出は295nmに設定した。移動相は、(25:75)アセトニトリル−0.01MのKH2PO4、pH=2.8、流速1mL/分で、合計作動時間は1サンプル当たり6分であった。放出速度は、時間とともに、所定の体積の媒体中に放出される薬剤の量μg/日を計算することによって決定した。
【0101】
インビボサンプルについての薬剤分析は、移動相を(20:80)アセトニトリル−0.01MのKH2PO4、pH=2.8としたこと以外はインビトロサンプルの条件と同じHPLC条件で行った。
【0102】
50%薬剤量および種々のポリマーを含有するインプラントをスクリーニングした。製剤スクリーニング作業は、重量平均分子量(Mw)がそれぞれ8,400、28,300、na、14,000、11,200、40,000および6500ドルトンのRG502、RG503、RG504、R203、RG752、RG755およびR202Hから始めた。図1を参照すると、これらの異なるポリマーで製造された50%薬剤が装填されたインプラントのマレイン酸チモロール放出速度特性を示すグラフが示されている。
【0103】
データから、全ての50%薬剤装填製剤は、1日の放出が非常に速いことを示し、図1に示すように、製剤の半分が1日目に約90%を超える放出に達し、一方、他の半分の製剤は1日目に40%と85%との間のマレイン酸チモロールを放出した明らかにしたことが明らかになた。
【0104】
この初期高薬剤放出速度は、1つには、水性媒体中のマレイン酸チモロールの高い溶解性のためである。いかなる特定の理論にも拘束される意図はないが、一度インプラントが溶解媒体に接触すれば、インプラントの表面上のマレイン酸チモロールが素早く溶解し、マトリックスから拡散し、それによって、インプラント内により多くの溶媒媒体を入れる溝が残され、より多くのマレイン酸チモロールが溶けることになると考えられる。
【0105】
チモロール遊離塩基(マレイン酸チモロールの非塩形態)は、同じ溶解媒体に殆ど溶解しない。これを考慮して、その場で遊離塩基を生成し、チモロールの放出速度を減速するために、マレイン酸チモロールインプラントの3種の異なる製剤を、RG502、別にR203に加えられた等量の炭酸ナトリウムで製造した。これらのインプラントの放出速度は、表1に示すように、その場で生成するチモロール遊離塩基がないような挙動が観察された。
【0106】
【表1】
【0107】
示されるように、製剤9、10および11は、それぞれ約79%、61%および94%の放出をた。1日後、この特異な放出実験は中止した。
【0108】
薬剤量と薬剤放出プロフィールとの間の相関関係を測定するために、試験を行った。RG502およびR206中に25%および50%のマレイン酸チモロールの薬剤量を有するインプラントを製造した。薬剤放出プロフィールのグラフを図2に示す。
【0109】
薬剤量を半分まで減らすことによって、1日目の放出が2倍を超える量減らされることがわかった。50%薬剤装填サンプルの約66%に比べ、RG502中の25%マレイン酸チモロールの1日目放出は約13.7%であり、50%薬剤装填サンプルの約88.4%に比べ、R206の25%マレイン酸チモロールの1日目放出は約20.0%であった。
【0110】
より少ない薬剤量で放出速度が低下すると、放出期間は、RG502中の25%マレイン酸チモロールについては、1日放出(RG502あるいはR206中の50%マレイン酸チモロール)から28日放出に、R206中の25%マレイン酸チモロールについては、60日までに延びたことが観察された。
【0111】
所望の6ヶ月放出が薬剤量を減らすことによって達成できるかどうかを判断するために、10%薬剤量でインプラントを製造した。得られたデータから、RG502中の10%マレイン酸チモロールについては、合計放出は7日目で約10.7%であったが、その後、全てのインプラントが崩壊し、非結晶状の濁りだけがサンプルバイアル中に残ったことが明らかになった。したがって、この放出実験は中止した。しかし、R206中10%マレイン酸チモロールを含有する製剤の薬剤放出は、比較的遅かった。この放出実験は、図3に示すように、98日後に合計放出約29.1%で中止された。
【0112】
また、ウエハの薬剤放出を同じ製剤で造られたロッドの薬剤放出と比べると、図3は、ウエハ形態における10%マレイン酸チモロール製剤(ロット241-192)の放出プロフィールを反映していることが分かる。データは、ウエハからの薬剤放出が、初期はロッドより遅いが、63日後にクロスオーバーが起こり、それからはウエハからの薬剤放出がロッドからの薬剤放出より速いことを示した。
【0113】
RG502中の10%マレイン酸チモロール(ロット241-178)およびR206中の10%マレイン酸チモロール(ロット241−792)の製剤化中、先の製剤の全てで使用した380μmノズルの変わりに、720μmノズルを使用して、フィラメントを押出した。さらに、10%マレイン酸チモロール製剤用のインプラントサイズは、先の製剤においては240μgであったが、1mgとした。
【0114】
別の試験では、インプラントサイズの変更がどのように薬剤放出の速度に影響するかを決定するために行われた。単一のポリマーRG502H'と2つの異なるノズルサイズ、380μmおよび720μmを使用して、4種の製剤を製造した。インプラントを、720μmノズルから押出されたフィラメントに関して重さ1mg±10%に、380μmノズルから押出されたフィラメントに関して重さ0.24mg±10%に切断した。異なるサイズのこれらのインプラントの放出プロフィールを図4に示す。
【0115】
小さな直径のフィラメントから切断されたインプラントは、大きな直径のフィラメントからの薬剤放出より速い薬剤放出を示す(241-185対241-184および241-187対241-186)ことが観察された。しかし、10%と25%との薬剤量のインプラントの間で実質的な差は観察されなかった。発明のどのような特定の理論にも拘束される意図はないが、10%および25%薬剤量インプラントにおける薬剤放出の、この実質的な差もないのは、全放出が12日しか続かなないという事実があり、放出があまりにも速すぎて、いかなる有意のまたは意味のある相違も起こりえないという可能性があると考えられる。さらに、Resomer RG502Hの使用が、明らかに差がないことに影響した可能性も考えられる。薬剤量およびポリマー組成または種類は、それぞれ、薬剤放出期間および薬剤の初期バースト効果を調整するための重要なパラメーターであると考えられる。この理論を試験するために、種々のポリマーマトリックスと比較して、Resomer RG503、RG504、RG505、RG506、RG752、RG755、RG756、RG858、R203、R206およびR208を使用して、それぞれ10%薬剤量で、一連の製剤を製造した。異なる種類のポリマーに基づく放出プロフィールを、図5A、5Bおよび5Cに示す。
【0116】
表5A、5Bおよび5Cに示すように、通常、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーは、約1ヶ月放出であり、75:25ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、85:15ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)は約2ヶ月放出であり、ポリ(D,L−ラクチドs)は約3ヶ月以上の放出であった。
【0117】
この放出実験の間、ある製剤は、実験の終わりで理論値の100%を超える薬剤放出をしたようであることが分かる。これらの実験において、100%を超える見かけの合計%放出が得られることがあるのは珍しいことではない。これは以下のように説明できる。マレイン酸チモロールは塩であり、実際のチモロール重量含有率は塩の重量の73.16%である。HPLC基準は、マレイン酸チモロール塩(Mw432)の重量に基づいて、またはチモロール遊離塩基(Mw316)の重量に基づいて作ることができ、マレイン酸チモロールの重量は、それに従って再計算できる。したがって、マレイン酸チモロールの1μg/mL溶液を製剤化するために、5mgのマレイン酸チモロールを計量し、ついでこれを5リットルの媒体に溶解する。しかし、この1μg/mLマレイン酸チモロール溶液は、実際は、0.73μg/mLのチモロール遊離塩基しか含有しない。一方、1μg/mLチモロール遊離塩基溶液を製剤化するために、5mgの変わりに6.835mgのマレイン酸チモロール塩を計量し、次いでこれを5リットルの媒体に溶解する。
【0118】
追加の放出プロフィールを図6に示す。
【0119】
示されるように、R206中に20%薬剤量で製剤化されたマレイン酸チモロール(ロット295-13)は、106日目に78%までの安定した放出を示し、次いで僅かに遅くなった放出で134日目に89%に達し、最後に徐々に横ばい状態になり177日目に92%になった。R206中の26%薬剤量で製剤化されたマレイン酸チモロール(ロット295-12)は、ロット295-13より速い、106日目で91%までの安定した放出を示し、ついで、僅かに遅くなった放出で134日目に92%に達し、本質的に変化なく177日目に93%に達した。対照的に、R203中20%薬剤量で製剤化されたマレイン酸チモロール(ロット295-15)は、遅い放出を示し、106日目に28%にしか達せず、134日目までに39%に達し、しかし次いで速度が増し、177日目に全放出の99%に達した。
【0120】
ポリマーの種類が、本発明によるインプラント中の活性剤の放出速度に影響を持つであろうから、マトリックス材料としての2種以上のポリマーを活性剤と組み合わせることによって、薬剤送達システムインプラントが所望の放出速度を持つように製剤化することが企画された。ポリマーは、好ましくは、インプラントからの活性生物の所望の放出速度を達成するように選択される。
【0121】
例えば、相補放出プロフィールを利用することがで、例えば、1つのポリマーが、所望の放出において上限を示す高速放出プロフィールを持ち、もう一方のポリマーが所望の放出で下限をしめす低速放出プロフィールを持つ、2種のポリマーを組み合わせることができる。例えば、マレイン酸チモロールを含むポリマーR203およびR206の両ポリマーを用いて、R203またはR206の一方より望ましい放出速度を達成することができる。言い換えれば、もし、R206中の20%マレイン酸チモロール(295-13)が、達成したいと思う上限であり、一方R203中の20%マレイン酸チモロールが下限であると考えられれば、両ポリマーを種々の比率で組み合わせて2つの間のどこかでより望ましい放出プロフィールを達成することができることは理解しえる。
【0122】
実施例2
チモロールおよび生分解性ポリマーマトリックスを含む眼内インプラントのインビボ試験
最初のインビボ実験は、チモロール製剤で行い、両方10%薬剤量およびポリマーR206を持つ2種の異なるタイプのインプラントを試験した。インプラントは図3に示す放出プロフィールを持つ同じインプラント製剤であった。両タイプとも、R206ポリマー中の10%マレイン酸チモロールで製剤化した。インプラントの第一のタイプは、錠剤またはロッドの形態で、第二のタイプはウエハの形態であった。
【0123】
初期実験を2匹の動物で行った。ロット241−179からのロッドを、第一動物の右目の前眼房と左眼の結膜の下に外科的に移植した。ロット241−192からのウエハを、第二動物の右目の前眼房(「AC」)と左眼の結膜の下に外科的に移植した。前眼房の検体採取の日は、1、4、7、12、28日およびこの後は隔週であった。47日まで両ロットで検出可能濃度のチモロールは見つからなかった。47日目、2本のロッドおよび2つのウエハを動物から抽出し、合計含有量分析を行った。結果を表2にまとめる。
【0124】
【表2】
【0125】
インプラントを両動物から抽出し、残余物の合計含有量分析は、殆どのマレイン酸チモロールが未だインプラント中にあったことを示し、これはマレイン酸チモロールのほんの少しの量しかインプラントから放出されなかったことを意味する。これは、図3に関連して先に記載したように、ロット241-179については35日後に20.2%の放出を、ロット24-192についてはて35日後に15.8%の放出を示した、インビトロデータとは著しく対照的であった。これら2つのロットから放出が観察されなかったことの可能な説明として、特に約200〜300Lの房水を含有する前眼房または結膜下に移植する場合、おそらく、ロッドまたはウエハはサイズが大きすぎた、という可能性がある。したがって、比較的高含有量の薬剤を持つ比較的小さなインプラントを次のインビボ実験では用いた。
【0126】
第二チモロールインビボ実験は、R206中に25%マレイン酸チモロール(w/w)を持つロット241-173で行われた。実験は1匹の動物で行われ、両目の前眼房にインプラント(240μg)を外科的に移植し、AC検体採取を、1時間、6時間、48時間、7日、71日および75日後に行うように計画した。インビボデータを表3に示す。
【0127】
【表3】
【0128】
濃度は、最初、約2.65μg/mLと高く、おそらく、インプラント製剤のバースト効果によるものと考えられ、次いで、濃度は、6時間、24時間、48時間および7日間で、それぞれ、約0.29μg/mL、約0.15μg/mL、約0.07μg/mLおよび約0.00μg/mLと安定的に下がっていった。インビトロデータ(図2)は、7日までに約30%、約18μgのチモロール放出を示したので、インプラントは、7日目に薬剤の放出を単純に止めたのかは明らかではなかった。1つの可能な説明として、ウサギの眼における、マレイン酸チモロールの速いクリアランス速度がある。仮説としては、もし眼におけるマレイン酸チモロールのクリアランス速度が、ポリマーマトリックスからのマレイン酸チモロールの放出速度と等しければ、分析した時、房水は濃度0を示し得る。2つのインプラントは、75日後に動物から抽出し、その合計含有量を測定した。結果を表4にまとめる。合計含有量は75日後に、約89%のマレイン酸チモロールが右目のインプラントから放出し、約88%が左眼のインプラントから放出した。
【0129】
【表4】
【0130】
クリアランス速度が可能な説明になるかどうか判断するために、マレイン酸チモロール溶液のボーラス注射の公知の量(25μL中1.5mg)を、10匹のウサギの、5匹には前眼房に、残りの5匹には後眼部に注射した。1時間、3時間、6時間、12時間および24時間後に最初の5匹の動物の前眼房から検体採取を行い、1時間、3時間、6時間、24時間および48時間後に残りの動物の前眼房および後部から検体採取を行なった。1動物を各時点で使用した。最初の5匹の動物のデータを表5Aに、残りの5匹の動物のデータを表5Bおよび5Cに示す。
【0131】
【0132】
【表5B】
【0133】
【表5C】
【0134】
濃度は、最初の1時間後約838μg/mLと、初期は高かった。しかし、これらは3時間、6時間、12時間および24時間後に、それぞれ、約49.67μg/mL、約1.16μg/mL、約0.07μg/mLおよび約0.03μg/mLと、劇的に下がった。6時間後の濃度は、1時間後の濃度の約0.13%だけであった。この結果を、チモロールインプラント(295-173、表2)の同じ時点での濃度と比べ、前眼房内におけるマレイン酸チモロールのクリアランス速度は、濃度測定において重大な要素である可能性があると結論付けた。このインビボ実験から、マレイン酸チモロールのクリアランス速度は、任意の2つの時点の間の濃度における差を取得することによって計算し、それを時間における差、すなわち0時間目から1時間目の間で割る。クリアランス速度は、約661μg/時間であると計算され、1時間目と3時間目の間は、クリアランス速度は約394μg/時間、などと計算された。これらから、ウサギ前眼房における半減期は、約1.43時間と計算された。
【0135】
同じボーラス注射後の後部における濃度は、表5Bに示すように、1時間点で比較的遅いクリアランス速度を示し、それに続く時間点では、非常に遅い速度を示した。
マレイン酸チモロールの検出可能な濃度は、表5Cに示すように、濃度は低く、有意でないと考えられるものの、後部ボーラス注射から前眼房において見られた。
【0136】
ボーラス注射を行っても、ウサギ眼におけるチモロール濃度を測定することは困難であったので、インプラントの有効性を証明するために、眼圧(IOP)の測定に焦点をあてた。
【0137】
これによって、9匹の動物で計画された第四のインビボ実験を行った。動物は、3匹ずつの3つのグループに分けた。チモロールインプラントを3つの異なる領域、前眼房、後部および結膜に配置した。各動物の右眼だけにインプラントを配置し、左眼はコントロールとしてそのままにした。各ウサギの両目の眼圧を、バックグランドとして、手術の1週間前に測定し、手術から1、2、3、4、7および6ヶ月まで1週間に1度測定した。選択した製剤は、ロット295-16(図6参照)であり、これはR203中の26%マレイン酸チモロールであった。この製剤は、放出の21日まで一見0オーダーである放出プロフィールのため、選んだ。手術の前に、9匹の動物すべてのIOPを測定し、動物ベースラインを得た。動物のベースラインIOPデータを表6に示す。
【0138】
【表6】
【0139】
予想されたように、各動物のIOPは日によって変動したが、8日を過ぎると、標準偏差が0.3の低い値から2.1の高い値の範囲で、ハイティーン群で平衡化する傾向である。15日目、1匹が病気であることがわかり、したがって17日目に殺し、残ったものを合計含有量分析のために回収した。35日目、動物#1693(結膜)、動物#1697(前眼房)および動物#1698(後部)を殺し、69日目、残った5匹の動物を殺し、残ったものを合計含有量分析のために取り除いた。結果を表7に示し、回収した残ったものに基づく、各時点での放出プロフィールを図7に示す。
【0140】
【表7】
【0141】
図7に示すように、データは、3つの位置、前眼房、後部および結膜全てで類似の放出プロフィールを示した。
図8示すインビボ特性とインビトロ特性との比較で、放出プロフィールの間で良好な相関関係が確認できる。
9匹の動物の右および左眼の眼圧を、表8に示す日に測定した。
【0142】
【表8】
【0143】
各動物の眼によるIOP変動を補正するために、術前および術後にデータを集めた。
【数1】
(式中、ΔIOP治療およびΔIOP対照は、それぞれ、治療した(右)眼のIOPおよびコントロール(左)眼のIOPを示す。ΔIOPベースラインは、時間0の両眼のIOPの差である。)
前眼房、後部および結膜におけるマレイン酸チモロールのIOP減少効果を、図9A、9Bおよび9Cに示す。ガイドラインとしては、IOP変化が、比較してより負の値ほどより良好な治療効果があるとし、0の値は測定可能な治療効果がないとして記載する。
【0144】
データは、本発明によるマレイン酸チモロールインプラントを眼の前眼房に外科的に移植した場合、得られたIOP減少効果は、眼内の3つの位置のそれぞれの中で最も顕著であることを示した。さらに、後部への移植が、IOPを減らすのに、2番目に効果的であるようで、結膜へのインプラントは、IOPを減少させる効果の点で3つの位置の中では最も効果がなかったようであると結論付けられた。前眼房、後部および結膜の平均IOP減少を計算した。この計算を図10に示す。
【0145】
この実験では、本発明によるチモロール薬剤送達システムまたはインプラントのための移植の最も効果的な位置は、前眼房であると示唆しているようである。
【0146】
どのような平均IOP減少が、チモロールの治療的濃度を持つ眼のためであるかを判断するために、市販のチモロール点眼剤を使用し、以下に記載するような推奨療法を得る。
【0147】
最後である第五のインビボ実験では3匹の動物を使用した。各動物の右眼に、午前、0.5%チモロール点眼剤の2滴差し、左眼はコントロールとし、両目のIOPを1時間、3時間および6時間後に測定した。これを2日間繰り返した。同じ式(1)および(2)を使用して、ΔIOPおよびΔΔIOPを計算した。3匹の動物の平均IOP減少を図11に示す。
同図に示されているように、著しいIOP減少が、第一日目の点眼の約6時間後に観察されたが、そのような減少は、第二日目には観察されなかった。平均IOP減少は、約−2mmHg付近に局在しているようで、これは、R203ポリマー中に約26%のマレイン酸チモロール(ロット295−16)を含む、本発明のインプラント製剤で観察されたものと類似していた。
【0148】
結論
ポリ(D,L−ラクチド)Resomer R206および/またはResomer R203(ロット295-15)で製剤化された、本発明によるマレイン酸チモロールインプラントは、約6ヶ月のインビトロ放出プロフィールを提供した。その高い溶解性の故に、マレイン酸チモロールは、種々の粘度のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を使用して、非常に速い放出プロフィールを示す。薬剤量は、水性媒体において、マレイン酸チモロールの高速放出を促進する主な影響因子であることがわかった。薬剤量を50%から10〜20%の範囲に減少させた場合、放出を3〜6ヶ月持続させる効果を達成することができた。
【0149】
動物実験のために選択された第一チモロール製剤は、R203中の10%マレイン酸チモロールのロッド(ロット241-179)およびウエハ(ロット241-192)であった。残念なことに、合計含有量測定を行った後、チモロールが検出され、全マレイン酸チモロールが薬剤送達インプラント中に残り、検出可能な濃度は放出されなかったことがわかった。これは、約35日後にロッドで約20.2%の放出、ウエハで約15.8%の放出を示した、インビトロ放出プロフィールとは異なっていた。おそらく、インプラントのサイズ(1300μg)が大きすぎ、前眼房に移植されたとき、効果がなかったものと判断される。より小さなインプラントを使用して、次のインビボ実験では、R203中、約26%のマレイン酸チモロール(ロット295-16)を利用し、インプラントサイズは、約240μmに縮小した。
【0150】
さらに、インビボ実験で、眼の前眼房に移植した本発明によるポリマー/チモロールインプラントは、より負のIOP減少値に示されるように、眼の後部あるいは結膜のどちらに移植された同じインプラントより、良好な治療濃度を示すことを実証した。
【0151】
さらに、これらの減少した値は、R203中の26%マレイン酸チモロール(ロット295-16)を使用して製剤化したインプラントで得た値と類似していた。これから、R203中の26%マレイン酸チモロール(ロット295-16)は、おそらく、IOPを効果的に下げる治療的な濃度を提供するものと推論した。
【0152】
実施例3
72歳の女性は、悪化し始めた加齢性開放隅角緑内障と診断される。彼女の眼圧は約26mmHgと約28mmHgとの間の範囲である。等量(1:1比)の生分解性ポリマー(R203およびR206)を含むマトリックス中に15%マレイン酸チモロールを含有するインプラントを女性の両目の硝子体にトロカールを使用して配置する。その後数日にわたり、医者は、眼圧を測定して、眼圧が下がりつつあり、約20mmHgで安定し始めることを見出す。また、女性は、眼の不快感が軽減されるのに気づいたと報告する。インプラントは、比較的定常な有効用量のチモロールを次の4ヶ月にわたって眼に提供し続ける。約5ヵ月後、医者が眼圧を測定し、インプラントは、女性の眼の中で所望の眼圧を維持していないようだと判断する。インプラントは完全に分解してしまったと推測される。医者は、この手順を5ヶ月おきに、女性のそれ以後の生涯にわたり繰り返す。本発明によるインプラントは、女性の視界をさらに有意に消失させることを阻止する。
【0153】
本明細書に開示するインプラントは、下記のような疾患または症状の治療に有効でありうる前記の他の治療薬を放出するように構成してもよい。
【0154】
黄斑症/網膜変性:
非滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性斑状視神経網膜疾患、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫。
【0155】
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:
急性多発性斑状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット(Birdshot)網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(Multiple Evanescent White Dot Syndrome)(MEWDS)、眼類肉腫症、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群。
【0156】
血管疾患/滲出性疾患:
コーツ病、傍中心窩(parafoveal)毛細管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症。
【0157】
外傷性/外科性:
交感神経性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、手術時低灌流、放射線性網膜症、骨髄移植性網膜症。
【0158】
増殖性疾患:
増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症。
【0159】
感染性疾患:
眼ヒストプラスマ症候群、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片側性亜急性視神経網膜炎、ハエウジ病。
【0160】
遺伝性疾患:
網膜色素変性、網膜ジストロフィー関連全身性疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、スタルガルト病、黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー(Pattern Dystrophy of the Retinal Pigmented Epithelium)、X染色体性網膜分離、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、ビエッティ結晶性ジストロフィー(Bietti's Crystalline Dystrophy)、弾性線維性仮性黄色腫。
【0161】
網膜断裂/円孔:
網膜剥離、斑状円孔、巨大網膜断裂。
【0162】
腫瘍:
腫瘍、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ系腫瘍。
【0163】
その他:
点状内脈絡膜症、急性後多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎等。
【0164】
本明細書に引用されている全ての文献、論文、刊行物、特許および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0165】
本発明を、種々の特定の実施例および態様に関して記載したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲内において様々に実施しうるものと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】各システムが50%薬剤用量を有する、マレイン酸チモロールおよびポリマーを含む、本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフである。
【図2】各システムが50%薬剤用量を有する、マレイン酸チモロールおよびポリマーを含む、本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフである。
【図3】各システムが10%薬剤用量を有する、マレイン酸チモロールおよびポリマーを含む、本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフである。
【図4】本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフであり、マレイン酸チモロールおよびポリマーの2種の異なる寸法のフィラメントを比較する。
【図5A】本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフであり、種々の薬剤用量および種々のポリマー材料を含むシステムの放出プロフィールを比較する。
【図5B】本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフであり、種々の薬剤用量および種々のポリマー材料を含むシステムの放出プロフィールを比較する。
【図5C】本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフであり、種々の薬剤用量および種々のポリマー材料を含むシステムの放出プロフィールを比較する。
【図6】マレイン酸チモロールおよびポリマーを含む、本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフであり、製剤は、マレイン酸チモロールの重量ではなくチモロールの重量に基づいた薬剤含有量で調製されている。
【図7】移植後に得られる薬剤送達システム中の合計薬剤含有量に基づくインビボマレイン酸チモロール放出を示すグラフである。
【図8】各システムが26%薬剤用量を有する、マレイン酸チモロールおよびポリマーを含む、本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフである。
【図9A】眼の前房に配置した、本発明のマレイン酸チモロール薬剤送達システムの、眼圧(IOP)低下効果を示すグラフである。
【図9B】眼の後区に配置した、本発明のマレイン酸チモロール薬剤送達システムの、眼圧(IOP)低下効果を示すグラフである。
【図9C】眼の結膜下に配置した、本発明のマレイン酸チモロール薬剤送達システムの、眼圧(IOP)低下効果を示すグラフである。
【図10】眼の後区、前房および結膜下に配置した、本発明のマレイン酸チモロール薬剤送達システムの、眼圧(IOP)低下効果を示すグラフである。
【図11】チモロール点眼薬の滴下後の平均IOP低下(N=3)を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者の眼を治療する器具および方法に関し、より詳細には、インプラントが配置された眼に治療剤を長期間放出する眼内インプラントおよびそのようなインプラントを製造および使用する方法、例えば眼神経障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、中央抹消における視神経頭および視界喪失の窩によって特徴付けられる進行性視神経症である。網膜神経線維層上の網膜神経節細胞死、およびその結果としての軸策喪失は、緑内障に典型的な視神経乳頭陥凹および視界欠損を招く。
【0003】
緑内障における主要な危険因子は、統計的標準、すなわち21mmHgを超える眼圧(IOP)の上昇と考えられる。高いIOPは、線維柱帯網を通る房水の排出に対する増加した抵抗から起こる。
【0004】
異なる型の緑内障が知られているが、最も一般的な型は、年齢と関連する成人発症開放隅角緑内障(OAG)であり、開放隅角、21mmHgを超えるIOP、緑内障に典型的な視界欠損、および病理学的に掘削された視神経円板によって特徴付けられる。
【0005】
β−ブロッカーとしても知られているβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、緑内障治療の中心であり、最初の選択肢である。
【0006】
市販のβブロッカーは、通常、β1およびβ2−アドレナリン受容体の両方を抑制する非選択的(「非特異的」とも言う)、またはβ1−アドレナリン受容体を選択的に抑制するβ1選択的に分類される。
【0007】
マレイン酸チモロール、(−)−1−(t−ブチルアミノ)−3−[(4−モルフォリノ−1,2,5−チアジアゾ−3−イル)オキシ]−2−プロパノールマレエート(1:1)塩は、交感神経興奮活性または心筋抑制効果を持たない、非選択的β−アドレナリン(β1およびβ2)受容体ブロック剤である。マレイン酸チモロールを局所的に適用した場合、急性閉塞隅角および続発性緑内障を含む殆どの型の緑内障で、上昇した眼圧の低下に効果的である。
【0008】
マレイン酸チモロールは、約30年間にわたり、慢性OAGの治療のため、眼圧を低下するために臨床的に使用されてきている。低下は、房水生成を抑制することによってなされており、房水流出率を増加することによってではない。しかし、目薬の多くのタイプのように、1滴(TimopticXE(登録商標)0.5%q.d.、Merck社、Whitehouse Station、NJ)または2滴(Timoptic(登録商標)0.5%b.i.d.、Merck社、Whitehouse Station, NJ)という毎日の療法のうち約1%だけが、実際、眼の内部に吸収され、治療濃度を提供しているものと考えられる。調査試験では、増粘剤を点眼剤に加えて、前角膜領域における薬剤の滞留時間を長くすることによって、マレイン酸チモロールの生体利用率が向上することができ、点眼剤の治療効果を強める傾向があることが示されている。
【0009】
以下の特許文献および追加の刊行物は、本発明を理解する上で、関連のあるおよび/または有益な開示を含む。米国特許第4521210号、第4853224号、第4997652号、第5164188号、第5443505号、第5501856号、第5766242号、第5824072号、第5869079号、第6074661号、第6331313号、第6369116号および第6699493号、David L.Epstein, Chandler and Grant's Glaucoma, Lea & Febiger,(1986)129-181頁;Physician's Desk Reference for Ophthalmic Medicines, 30 Edition,(2002)285頁;Chiao-His Chiang, Jing-Ing Ho, and Jiin-Long Chen,Journal of Ocular Pharmacology and Therapeutics, Volume12, Number4, 471,(1996). Calbert I.Phillips, R.Shayle Bartholomew, Anthony M.Levy, Jeffrey Grove, and Roger Vegel, British Journal of Ophthalmology, Volume69, 217,(1985)。これらの各文献の全開示は、参照して本明細書に組み込まれる。
【0010】
例えば、治療剤の眼に対する生体利用率を高めるために、眼に対するβ−アドレナリン受容体拮抗薬、例えばマレイン酸チモロールのような、さらに効果的な製剤および治療薬を投与する技術の必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
長期間にわたって、かつ負の副作用をほとんどまたは全く生じずに、治療薬を持続的または制御的速度で放出することができる眼内移植可能な薬剤送達システム、例えば眼内インプラント、およびそのようなシステムを使用する方法を提供することが好都合である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、例えば1つまたはそれ以上の所望の治療効果を得るための、眼への長期間または持続的薬物放出用の新規薬剤送達システム、ならびにそのようなシステムの製造法および使用法を提供する。該薬剤送達システムは、眼に配置しうるインプラントまたはインプラント要素の形態である。本発明のシステムおよび方法は、好都合にも、1つまたはそれ以上の治療薬の長い放出時間を与える。従って、眼にインプラントを配置された患者は、薬剤の付加的投与を必要とせずに、長期間または延長された期間にわたって、治療量の薬剤を受ける。例えば、患者は、比較的長い期間にわたって、例えば、インプラントを配置されてから、少なくとも約1週間程度、例えば約2ヶ月〜約6ヶ月間にわたって、実質的に一貫したレベルの治療的活性剤を、一貫した眼の治療のために得ることができる。そのような長い放出時間は、優れた治療効果を得ることを促進する。
【0013】
本明細書の開示に従った眼内インプラントは、治療成分と、治療成分に付随する薬剤放出持続成分とを含む。本発明の好ましい態様によれば、治療成分は、β−アドレナリン受容体拮抗薬を含む、またはそれから本質的に成る、またはそれのみから成る。薬剤放出持続成分が、インプラントが配置された眼へのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるために、治療成分に付随する。β−アドレナリン受容体拮抗薬は、インプラントが眼に配置された後、約1週間よりも長い期間、眼に放出され、眼の血管障害、例えば血管閉塞を防止または軽減するのに有効である。
【0014】
1つの態様において、眼内インプラントは、β−アドレナリン受容体拮抗薬および生分解性ポリマーマトリックスを含む。β−アドレナリン受容体拮抗薬は、眼の血管閉塞を軽減または防止するのに十分な期間、インプラントからの拮抗剤の放出を持続するのに有効な速度で分解する生分解性ポリマーマトリックスに付随される。眼内インプラントは、生分解性または生体分解性であり、1週間を超える長期間、例えば、約3ヶ月間、または約6ヶ月以上の期間、β−アドレナリン受容体拮抗薬の持続的放出を可能にする。あるインプラントでは、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、約30〜35日間またはそれより短い期間、放出される。別のインプラントでは、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、約40日間またはそれより長い期間、放出される。
【0015】
上記インプラントの生分解性ポリマー成分は、少なくとも1種の生分解性ポリマーが64キロダルトン(kD)未満の分子量を有するポリ乳酸ポリマーである生分解性ポリマーの混合物であってよい。加えてまたは代えて、上記インプラントは、ポリ乳酸の第一生分解性ポリマーと、異なるポリ乳酸の第二生分解性ポリマーとの混合物を含んでもよい。更に、上記インプラントは、各生分解性ポリマーが約0.3dl/g〜約1.0dl/gの範囲の固有粘度を有する異なる生分解性ポリマーの混合物を含んでもよい。
【0016】
本明細書に開示されたインプラントのβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、β非特異性拮抗剤、β1選択的拮抗剤、β2選択的拮抗剤、または眼症状を治療するのに有効である他の拮抗剤を包含する。適当なβ非特異性拮抗剤の例には、チモロール、プロプラノロール、ナドロール、ピンドロールおよびこれらの誘導体が包含される。β1選択的拮抗剤の例には、メトプロロール、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、エスモロールおよびこれらの誘導体が包含される。β2選択的拮抗剤の例は、ブトキサミンである。加えて、本発明のインプラントの治療成分は、眼症状を治療するのに有効であり得る付加的な異なる1種以上の治療剤を含み得る。
【0017】
本発明のインプラントの製造法は、β−アドレナリン受容体拮抗薬と、1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーとを組み合わすかまたは混合することを含む。次に、該混合物を押し出すかまたは圧縮して、単一組成物を形成しうる。次に、単一組成物を処理して、患者の眼に配置するのに好適な個々のインプラントを形成しうる。
【0018】
インプラントは、眼の前眼房または(眼)後部に影響する眼の血管障害のような症状を含む種々の眼症状を治療するために、眼の領域に配置され得る。例えば、インプラントは、血管閉塞に関連する症状(これに限定されない)を含む多数の眼症状を治療するのに使用できる。
【0019】
本発明のキットは、1つまたはそれ以上の本発明のインプラント、およびインプラントの使用説明書を含んで成ってよい。例えば、使用説明書は、患者へのインプラントの投与の仕方、およびインプラントで治療しうる症状のタイプを説明しうる。
【0020】
本明細書に記載する個々のおよび全ての特徴、ならびにそのような特徴の2つまたはそれ以上の個々のおよび全ての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しないことを条件として、本発明の範囲に含まれる。さらに、任意の特徴または特徴の組合せは、本発明の任意の態様から特に除外しうる。
【0021】
本発明の付加的局面および利点は、特に添付の図面に関連して考慮する場合に、以下の説明および請求の範囲に示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本明細書に記載するように、1つまたはそれ以上の眼内薬剤送達システムまたはインプラントの使用による治療薬の制御および持続投与は、望ましくない眼症状の治療を向上させることができる。インプラントは、医薬的に許容されるポリマー組成物を含んで成り、1つまたはそれ以上の医薬的に活性な薬剤、例えばβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、長期間にわたって放出するように配合される。インプラントは、1つまたはそれ以上の望ましくない眼症状を、治療または予防するために、眼の領域に直接的に、治療有効量の1つまたはそれ以上の薬剤を与えるのに有効である。従って、患者を、繰り返しの注入、または自己投与点眼剤の場合の、単に限定されたバーストの活性剤への暴露による非効率的な治療に付すのではなく、単一投与によって、治療薬が、それらを必要とする部位で使用され、しかも長期間にわたって維持される。
【0023】
本明細書の開示による眼内インプラントは、治療成分、および治療成分に付随する薬剤放出持続成分を含んで成る。本発明の好ましい態様によれば、治療成分は、β−アドレナリン受容体拮抗薬を含んで成るか、またはそれから本質的に成るか、またはそれのみから成る。薬剤放出持続成分は、インプラントを配置した眼への治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるために、治療成分に付随している。治療量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、インプラントを眼に配置してから約1週間より長い期間にわたって眼に放出される。
【0024】
定義
本発明の説明のために、用語の文脈が異なる意味を示す場合を除いて、このセクションで定義されるように以下の用語を使用する。
【0025】
本明細書において使用する場合、「眼内インプラント」は、眼に配置されるように構成され、サイズ設定され、またはその他の設計を施された器具または要素を意味する。眼内インプラントは、一般に、眼の生理学的条件に生体適合性であり、不利な副作用を生じない。眼内インプラントは、視覚を損なわずに眼に配置しうる。
【0026】
本明細書において使用する場合、「治療成分」は、眼の医学的症状を治療するのに使用される1つまたはそれ以上の治療薬または物質を含んで成る眼内インプラントの部分を意味する。治療成分は、眼内インプラントの個別の領域であってもよく、またはインプラント全体に均一に分布させてもよい。治療成分の治療薬は、一般に、眼科的に許容され、インプラントを眼に配置した際に不利な反応を生じない形態で使用される。
【0027】
本明細書において使用する場合、「薬剤放出持続成分」は、インプラントの治療薬の持続放出を与えるのに有効な、眼内インプラントの部分を意味する。薬剤放出持続成分は、生分解性ポリマーマトリックスであってもよく、または治療成分を含んで成るインプラントのコア領域を覆う被覆物であってもよい。
【0028】
本明細書において使用する場合、「付随する」は、混合するか、分散するか、結合するか、覆うか、または包囲することを意味する。
【0029】
本明細書において使用する場合、「眼の領域」または「眼の部位」は、眼の前区および後区を含む眼球の任意領域を一般に意味し、かつ、眼球に見出される任意の機能的(例えば、視覚用)または構造的組織、または眼球の内部または外部に部分的にまたは完全に並んだ組織または細胞層を一般に包含するが、それらに限定されない。眼領域における眼球領域の特定の例は、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内隙、角膜上隙、強膜、毛様体輪、外科的誘導無血管領域、網膜黄斑および網膜である。
【0030】
本明細書において使用する場合、「眼の症状」は、眼、または眼の部分または領域の1つを冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。一般的に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成している組織および流体(体液)、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球の中かまたは眼球に近接した視神経の部分を包含する。
【0031】
前眼症状は、水晶体包の後壁または毛様体筋の前方に位置する、前眼(即ち、眼の前方)領域または部位、例えば、眼周囲筋、眼瞼または眼球組織または流体を冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体包、および前眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している。
【0032】
従って、前眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障も前眼症状と考えられるが、その理由は、緑内障治療の臨床目的が、前眼房における水性液の高圧を減少させる(即ち、眼内圧を減少させる)ことでありうるからである。
【0033】
後眼症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁全体にわたる平面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している疾患、不快または症状である。
【0034】
従って、後眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:急性斑状視神経網膜疾患;ベーチェット病;脈絡膜新生血管形成;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;感染症、例えば、真菌またはウイルスによる感染症;黄斑変性、例えば、急性黄斑変性、非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性;浮腫、例えば、黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫;多病巣性脈絡膜炎;後眼部位または領域を冒す眼の外傷;眼腫瘍;網膜障害、例えば、網膜中心静脈閉鎖、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉鎖性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患;交感性眼炎;フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼のレーザー治療によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光ダイナミック療法によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光凝固、放射線網膜症、網膜上膜疾患、網膜枝静脈閉鎖、前虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy)、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、色素性網膜炎および緑内障。緑内障は、その治療目標が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または欠損による視力低下を予防するか、または視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)であるので、後眼症状と考えることができる。
【0035】
本発明は、閉塞隅角緑内障、血管新生緑内障、開放隅角緑内障および水眼を含む、数種の異なるタイプの緑内障のいずれをも含む緑内障の治療に、特に有用である。
【0036】
用語「生分解性」および「生体分解性」は、通常どおり、本明細書では互換的に使用する。
【0037】
「生分解性ポリマー」という用語は、生体内で分解する1つまたはそれ以上のポリマーを意味し、1つまたはそれ以上のポリマーの侵食は、治療薬の放出と同時かまたはそれに続いて、経時的に起こる。厳密に言えば、ポリマーの膨潤によって薬剤を放出する作用をするメチルセルロースのようなヒドロゲルは、「生分解性ポリマー」という用語から特に除外される。「生分解性」および「生体内分解性」という用語は、同意義であり、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3種類以上のポリマー単位を有するポリマーであってよい。
【0038】
本明細書において使用する場合、「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、眼症状、眼の傷害または損傷の減少または回復または予防、または傷害または損傷を受けた眼組織の治癒を促進することを意味する。
【0039】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、眼または眼領域に有意な負のまたは不利な副作用を生じずに、眼症状を治療するか、眼傷害または損傷を減少させるかまたは予防するのに必要とされる薬剤のレベルまたは量を意味する。
【0040】
様々な期間にわたって薬剤装入量を放出することができる眼内インプラントが開発されている。これらのインプラントは、眼、例えば眼の硝子体に挿入された場合に、治療レベルのβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、長期間にわたって(例えば、約1週間またはそれ以上)与える。開示されるインプラントは、眼症状、例えば緑内障のような眼神経障害を治療するのに有効である。
【0041】
本発明の1つの態様において、眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤放出持続成分の1つのタイプである。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性眼内インプラントを形成するのに有効である。生分解性眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを伴うβ−アドレナリン受容体拮抗薬を含んで成る。好ましくは、マトリックスは、インプラントを眼の領域または眼の部位、例えば眼の硝子体に配置してから約1週間より長い期間にわたって、所定量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で分解する。
【0042】
インプラントのβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、β非特異性またはβ特異性であってよい。本発明の好ましい態様では、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、チモロール、ベクサトール、レボブノロール、カルテオロール、メチプレノロール、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される。例えば、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、マレイン酸チモロールを含む。通常、本明細書に開示されたインプラントのβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、β非特異性拮抗剤、β1選択的拮抗剤、β2選択的拮抗剤、または眼症状を治療するのに有効である他の拮抗剤を包含する。適当なβ非特異性拮抗剤の例には、チモロール、プロプラノロール、ナドロール、ピンドロールおよびこれらの誘導体が包含される。β1選択的拮抗剤の例には、メトプロロール、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、エスモロールおよびこれらの誘導体が包含される。β2選択的拮抗剤の例は、ブトキサミンである。
【0043】
これらのインプラントは、エストラジオール誘導体の塩を含有してもよい。本発明化合物の医薬的に許容される酸付加塩は、医薬的に許容される陰イオンを含有する非毒性付加塩を形成する酸から形成される酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩、硫酸塩または二硫酸塩、燐酸塩または酸性燐酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩である。
【0044】
従って、インプラントは、チモロール塩、例えば、マレイン酸チモロールを含んで成るか、それから本質的に成るか、またはそれのみから成る治療成分を含有しうる。
【0045】
β−アドレナリン受容体拮抗薬は、粒状または粉末形態であってよく、生分解性ポリマーマトリックスに閉じ込めうる。一般に、β−アドレナリン受容体拮抗薬粒子は、約3000ナノメートル未満の有効平均粒度を有する。あるインプラントにおいて、粒子は、約3000ナノメートル未満のオーダーの有効平均粒度を有しうる。例えば、粒子は、約500ナノメートル未満の有効平均粒度を有しうる。他のインプラントにおいて、粒子は、約400ナノメートル未満の有効平均粒度、さらに他の態様においては、約200ナノメートル未満の粒度を有しうる。
【0046】
インプラントのβ−アドレナリン受容体拮抗薬は、好ましくは、インプラントの重量に対して約10%〜90%である。より好ましくは、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、インプラントの重量に対して約20%〜約80%である。好ましい態様において、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、インプラントの重量の約20%または約26%を占める。他の態様において、β−アドレナリン受容体拮抗薬は、インプラントの重量の約50%までを占める。
【0047】
インプラントに使用される好適なポリマー材料または組成物は、眼に適合性、即ち生体適合性であり、それによって、眼の機能または生理機能に実質的障害を生じない材料を包含する。そのような材料は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは実質的に完全に生分解性または生体内分解性である。
【0048】
有用なポリマー材料の例は、有機エステルおよび有機エーテルから誘導され、かつ/またはそれらを含有する材料であって、分解した際に、生理学的に許容される分解生成物を生じる材料(モノマーを含む)であるが、それらに限定されない。無水物、アミド、オルトエスエル等から誘導され、かつ/またはそれらを含有するポリマー材料を、単独で、または他のモノマーと組み合わせて、使用してもよい。ポリマー材料は、付加または縮合重合体、好都合には縮合重合体であってよい。ポリマー材料は、架橋または非架橋、例えば軽架橋以下であってよく、例えば、ポリマー材料の約5%未満または約1%未満が架橋されている。多くの場合、炭素および水素の他に、ポリマーは、酸素および窒素の少なくとも1つ、好都合には酸素を含有する。酸素は、オキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えば非オキソ−カルボニル、例えばカルボン酸エステル等として存在しうる。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在しうる。制御薬剤送達のための被包形成を記載しているHeller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 第1巻, CRC Press, Boca Raton, FL 1987, p.39-90に示されているポリマーを、本発明のインプラントに使用しうる。
【0049】
他に関心がもたれるものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖類である。関心がもたれるポリエステルは、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せのポリマーを包含する。一般に、L−ラクテートまたはD−ラクテートを使用することによって、ゆっくり侵食されるポリマーまたはポリマー材料が得られ、一方、ラクテートラセミ体を使用することによって、侵食が実質的に促進される。
【0050】
有用な多糖類の例は、アルギン酸カルシウム、および官能化セルロース、特に、水不溶性であることを特徴とし、分子量が例えば約5kD〜500kDの、カルボキシメチルセルロースエステルであるが、それらに限定されない。
【0051】
関心がもたれる他のポリマーは、生体適合性であり、かつ生分解性および/または生体内分解性の場合もある、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組合せであるが、それらに限定されない。
【0052】
本発明に使用されるポリマーまたはポリマー材料のいくつかの好ましい特徴は、生体適合性、治療成分との適合性、本発明の薬剤送達システムの製造におけるポリマーの使い易さ、少なくとも約6時間の、好ましくは約1日より長い、生理環境における半減期、硝子体の粘度を有意に増加させないこと、および水不溶性を包含しうる。
【0053】
マトリックスの形成のために含有される生分解性ポリマー材料は、酵素的または加水分解的に不安定になりやすいことが望ましい。水溶性ポリマーを、加水分解的または生分解的に不安定な架橋で架橋させて、有用な水不溶性ポリマーが得られる。安定性の程度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーを使用するか、ポリマー混合物の使用、ポリマーが末端酸根を有するか、に依存して広く変化させることができる。
【0054】
インプラントに使用されるポリマー組成物の相対平均分子量も、ポリマーの生分解性、従ってインプラントの長時間放出プロフィールを調節するのに同じく重要である。種々の分子量の同じかまたは異なるポリマーの組成物を、インプラントに含有させて、放出プロフィールを調節しうる。特定のインプラントにおいて、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約64kD、一般に約10〜約54kD、より一般的には約12〜約45kDである。
【0055】
いくつかのインプラントにおいて、グリコール酸と乳酸のコポリマーを使用し、生分解速度をグリコール酸/乳酸の比率によって調節する。最も急速に分解されるコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を含有する。ホモポリマー、または等しくない比率を有するコポリマーは、分解に対してより抵抗性である。グリコール酸/乳酸の比率は、インプラントの脆性にも影響を与え、より大きい形状には、より柔軟性のインプラントが望ましい。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーにおけるポリ乳酸のパーセントは、0〜100%、好ましくは約15〜85%、より好ましくは約35〜65%にすることができる。いくつかのインプラントにおいて、50/50 PLGAコポリマーが使用される。
【0056】
眼内インプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、2つまたはそれ以上の生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。例えば、インプラントは、第一生分解性ポリマーおよび異なる第二生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーは、末端酸根を有してよい。
【0057】
分解性ポリマーからの薬剤放出は、いくつかのメカニズム、またはメカニズムの組合せの結果である。これらのメカニズムのいくつかは、インプラント表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔流路からの拡散、および侵食である。侵食は、本体侵食または表面侵食、またはその両方の組合せであることができる。本明細書に記載するように、眼内インプラントのマトリックスは、眼への移植から1週間より長い期間にわたって、所定量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で、薬剤を放出しうる。あるインプラントでは、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬が、移植後約30〜35日を超える期間、放出される。例えば、インプラントは、マレイン酸チモロールを含んでなり、インプラントのマトリックスは、眼に配置された後、約1ヶ月間、治療有効量のマレイン酸チモロールの放出を維持するのに有効な速度で薬剤を放出する。他の例として、インプラントは、マレイン酸チモロールを含んでなり、マトリックスは、40日を超える期間、例えば約6ヶ月間、治療有効量のチモロールの放出を維持するのに有効な速度で分解する。
【0058】
生分解性眼内インプラントの一例は、異なる生分解性ポリマーの混合物からなる生分解性ポリマーマトリックスに付随したβ−アドレナリン受容体拮抗薬を含む。生分解性ポリマーの少なくとも1種は、約63.3kDの分子量を有するポリラクチドである。第二生分解性ポリマーは、約14kDの分子量を有するポリラクチドである。そのような混合物は、インプラントが眼に配置された時点から約1ヶ月を超える期間、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を維持するのに効果的である。
【0059】
生分解性眼内インプラントの別の例は、各生分解性ポリマーが約0.16dl/g〜約1.0kDの固有粘度を有する異なる生分解性ポリマーの混合物からなる生分解性ポリマーマトリックスに付随したβ−アドレナリン受容体拮抗薬を含む。例えば、生分解性ポリマーの1つは、約0.3dl/gの固有粘度を有し得る。第二生分解性ポリマーは、約1.0dl/gの固有粘度を有し得る。固有粘度は、25℃において、0.1%クロロホルム溶液で測定することができる。
【0060】
ある種のインプラントは、2種の異なるポリラクチドポリマーの組み合わせに付随したマレイン酸チモロールを含む。マレイン酸チモロールは、インプラントの約20重量%の量で存在する。1つのポリラクチドポリマーは約14kDの分子量と約0.3dl/gの固有粘度を有し、他方のポリラクチドポリマーは約63.3kDの分子量と約1.0dl/gの固有粘度を有する。2種のポリラクチドポリマーは、1:1の比でインプラント中に存在する。そのようなインプラントは、本明細書に記載されているように、インビトロで2ヶ月を超える期間、チモロールを放出することができる。インプラントは、押出法で製造されたロッドまたはフィラメントの形状で供給される。
【0061】
生分解性ポリマーマトリックスを含有する眼内インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出は、初期放出バースト、次に、放出されるβ−アドレナリン受容体拮抗薬の量の漸増を含む場合があり、または該放出は、β−アドレナリン受容体拮抗薬の初期放出遅延、次に、放出増加を含む場合もある。インプラントが実質的に完全に分解した場合、放出されたβ−アドレナリン受容体拮抗薬のパーセントは、約100である。既存のインプラントと比較して、本明細書に開示するインプラントは、眼に配置してから約1週間後までは、β−アドレナリン受容体拮抗薬を完全には放出しないか、または約100%を放出しない。
【0062】
インプラントの寿命にわたって、インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の比較的定速の放出を与えることが望ましい場合がある。例えば、β−アドレナリン受容体拮抗薬が、インプラントの寿命にわたって、1日当たり約0.01μg〜約2μgの量で放出されることが望ましい場合がある。しかし、放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスの配合に依存して変化して、増加するかまたは減少する場合もある。さらに、β−アドレナリン受容体拮抗薬の放出プロフィールは、1つまたはそれ以上の直線部分および/または1つまたはそれ以上の非直線部分を含みうる。一旦、インプラントが分解または侵食しはじめたら、放出速度はゼロより大きいことが好ましい。
【0063】
インプラントは、モノリシックである(即ち、1つまたはそれ以上の活性剤がポリマーマトリックス全体に均一に分散されている)か、または被包され、その場合、活性剤の貯留部がポリマーマトリックスによって被包されている。製造容易性により、モノリシックインプラントが、被包形態より一般に好ましい。しかし、被包された貯留部型インプラントによって得られるより優れた調節は、薬剤の治療レベルが狭い幅内にあるいくつかの状況において有利な場合もある。さらに、β−アドレナリン受容体拮抗薬を含有する治療成分を、マトリックス中に不均質に分散させてもよい。例えば、インプラントは、インプラントの第二部分に対してより高い濃度のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を有する部分を含有してよい。
【0064】
本明細書に開示する眼内インプラントは、針での投与用に、約5μm〜約2mm、または約10μm〜約1mmの大きさ、外科的移植による投与用に、1mmより大、または2mmより大、例えば3mm〜10mmの大きさであってよい。ヒトの硝子体腔は、例えば1〜10mmの長さを有する種々の形状の比較的大きいインプラントを収容することができる。インプラントは約2mm×0.75mm直径の寸法を有する円筒形ペレット(例えばロッド)であってよい。または、例えば、インプラントは、長さ約7mm〜約10mm、直径約0.75mm〜約1.5mmの円筒形ペレットであってもよい。
【0065】
インプラントは、眼、例えば硝子体へのインプラントの挿入、およびインプラントの収容の両方を容易にするように、少なくとも幾分柔軟性であってもよい。インプラントの全重量は、一般に約250〜5000μg、より好ましくは約500〜1000μgである。例えば、インプラントは約500μg、または約1000μgであってよい。非ヒト個体に関しては、インプラントの寸法および全重量は、個体の種類に依存してより大きいかまたはより小さくてよい。例えば、ウマの約30mLおよびゾウの約60〜100mLと比較して、ヒトは約3.8mLの硝子体容量を有する。ヒトに使用される大きさのインプラントを、他の動物に応じて大きくするかまたは小さくし、例えばウマ用のインプラントは約8倍大きくし、または、例えばゾウ用のインプラントは26倍大きくしうる。
【0066】
例えば、中心が1つの材料で形成され、表面が同じかまたは異なる組成物の1つまたはそれ以上の層を有し、層が架橋しているか、または異なる分子量、異なる密度または多孔率等であるインプラントを製造することができる。例えば、薬剤の初期ボーラスを急速に放出することが望ましい場合、中心が、ポリラクテート−ポリグリコレートコポリマーで被覆されたポリラクテートであってよく、それによって初期分解速度を増加しうる。または、中心が、ポリラクテートで被覆されたポリビニルアルコールであってもよく、それによって、外側のポリラクテートの分解時に、中心が溶解し、眼から急速に流れ出るようにしうる。
【0067】
インプラントは、繊維、シート、フィルム、微小球、球体、円板、プラク等を包含する任意の形状であってよい。インプラントの大きさの上限は、インプラントに関する許容性(toleration for the implant)、挿入時の大きさ制限、取扱い容易性等のような要因によって決定される。シートまたはフィルムを使用する場合、シートまたはフィルムは、取扱い容易性のために、少なくとも約0.5mm×0.5mm、一般に約3〜10mm×5〜10mm、厚さ約0.1〜1.0mmである。繊維を使用する場合、繊維の直径は、一般に約0.05〜3mmであり、繊維の長さは一般に約0.5〜10mmである。球体は、直径0.5μm〜4mmであり、他の形状の粒子に匹敵する容量を有しうる。
【0068】
インプラントの大きさおよび形は、放出速度、治療期間、および移植部位における薬剤濃度を調節するために使用することもできる。より大きいインプラントは、比例的により高い投与量を送達するが、表面積/質量比に依存して、より遅い放出速度を有する場合もある。移植部位に適合させるために、インプラントの特定の大きさおよび形状を選択する。
【0069】
β−アドレナリン受容体拮抗薬、ポリマーおよび任意の他の調節剤の比率は、変化する比率においていくつかのインプラントを処方することによって経験的に決定しうる。USP承認の溶解または放出試験方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798)。例えば、無限沈下法(infinite sink method)を使用して、秤量したインプラント試料を、水中に0.9%NaClを含有する測定容量の溶液に添加すると、該溶液容量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%未満であるような容量になる。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌して、インプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々方法、例えば、分光光度的に、HPLC、質量分析等によって、吸収が一定になるまでか、または90%を超える薬剤が放出されるまで、追跡しうる。
【0070】
本明細書に開示される眼内インプラントに含有されるβ−アドレナリン受容体拮抗薬に加えて、眼内インプラントは、1つまたはそれ以上の付加的な眼科的に許容される治療剤も含有しうる。例えば、インプラントは、1つまたはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1つまたはそれ以上の抗生物質、1つまたはそれ以上のα−アドレナリン受容体アゴニスト、1つまたはそれ以上のステロイド、1つまたはそれ以上の抗新生物薬、1つまたはそれ以上の免疫抑制薬、1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬、1つまたはそれ以上の酸化防止剤、およびそれらの混合物を含有しうる。
【0071】
本発明のシステムに使用しうる薬理学的または治療的薬剤は、米国特許第4474451号第4〜6欄、および同第4327725号第7〜8欄に開示されている薬剤を包含するが、それらに限定されない。
【0072】
抗ヒスタミン薬の例は、ロラダチン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニルアミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリメプラジン、ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、キオルシクリジン、トンジラミン、ならびにそれらの誘導体であるが、それらに限定されない。
【0073】
抗生物質の例は、セファゾリン、セフラジン、セファクロール、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム(cefutoxime)、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシム、アンピシリン、アモキシリン、シクラシリン、アンピリシン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、塩酸シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメテート、コリスチン、アジスロマイシン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、およびそれらの誘導体であるがそれらに限定されない。
【0074】
α−アドレナリン受容体アゴニストの例は、キノキサリン、(2−イミドゾリン−2−イルアミド)キノキサリン、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、これらの誘導体およびこれらの混合物である。
【0075】
ステロイドの例は、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール(loteprednol)、フルアザコート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、リアムシノロンヘキサカトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、トリアムシノロン、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0076】
抗新生物薬の例は、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ジュアノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミド、およびフルタミド、ならびにそれらの誘導体である。
【0077】
免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体である。
【0078】
抗ウイルス薬の例は、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バルシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノ蟻酸、ガンシクロビルおよびそれらの誘導体である。
【0079】
酸化防止剤の例は、アスコルベート、α−トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタザンチン(astazanthin)、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、γ−グルタミルシステイン、ケルセチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、イチョウエキス、茶カテキン、ビルベリーエキス、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、レチニルパルミテート、およびそれらの誘導体である。
【0080】
他の治療薬は、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害薬、プロスタミド、プロスタグランジン、駆虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体を包含する。
【0081】
個々にまたは組み合わせてインプラントに使用される1つまたはそれ以上の活性剤の量は、必要とされる有効投与量、およびインプラントからの所望放出速度に依存して広く変化する。通常、薬剤は、インプラントの少なくとも約1wt%、より一般的には少なくとも約10wt%であり、かつ、一般に約80wt%以下、より一般的には約40wt%以下である。
【0082】
本明細書に開示する眼内インプラントは、治療成分に加えて、有効量の緩衝剤、防腐剤等も含有しうる。好適な水溶性緩衝剤は、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、燐酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、硼酸塩、酢酸塩、琥珀酸塩等、例えば、燐酸、クエン酸、硼酸、酢酸、炭酸水素、炭酸等を包含するが、それらに限定されない。これらの緩衝剤は、システムのpHを約2〜約9、より好ましくは約4〜約8に維持するのに充分な量で存在するのが好都合である。従って、緩衝剤は、全インプラントの約5wt%もの量で存在する場合もある。好適な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルベート、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硼酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール等、およびそれらの混合物を包含する。これらの防腐剤は、0.001〜約5wt%、好ましくは0.01〜約2wt%の量で存在しうる。本発明のインプラントの少なくとも1つにおいて、例えばβ−アドレナリン受容体拮抗薬がチモロールである場合に、purite 防腐剤がインプラントに供給される。すなわち、そのようなインプラントは、治療有効量のAlphagan P(登録商標)を含み得る。
【0083】
ある場合には、同じかまたは異なる薬理学的物質を使用して、インプラントの混合物を使用しうる。この場合、単一投与によって二相または三相放出を与える放出プロフィールの組み合わせが得られ、放出のパターンがかなり変化しうる。
【0084】
さらに、米国特許第5869079号に記載されているような放出調節剤もインプラントに含有させてよい。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下のβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、インプラントに含有させてよい。緩衝剤または促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、薬剤粒子を囲んでいる材料のより速い溶解(これは、露出した薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤の生体内分解速度を増加させる)によって、放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤の生体内分解速度を遅くする。
【0085】
あるインプラントでは、インプラントはチモロールまたはマレイン酸チモロールを含み、生分解性ポリマーマトリックスは、眼へのインプラントの移植後、約3〜6ヶ月にわたり、約0.1mg〜約0.5mgの間の量のチモロールを放出または送達することができる。インプラントは、ロッドまたはウエハの形状にされる。ロッド状インプラントは、720μmのノズルから押し出したフィラメントを1mgに切断して、得ることができる。ウエハ状インプラントは、約2.5mmの直径、約0.127mmの厚さおよび約1mgの重さを有する円板であってよい。
【0086】
提案される3ヶ月放出製剤は、PLAマトリックスまたはPOEマトリックス内にマレイン酸チモロールを含むロッド、ウエハまたは微小球の形状で、滅菌され、生体分解性であり得る。インプラントは、薬剤の消費を遅延し、繰り返し移植の必要性を3ヶ月間抑制し、それにより合併症の危険を小さくするように、設計される。
【0087】
種々の方法を使用して、本明細書に開示するインプラントを製造しうる。有用な方法は、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、同時押出法、カーバープレス(carver press)法、ダイ打抜き法、熱圧縮法、それらの組合せ等であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0088】
特定の技術および方法が、Wongによる米国特許第4997652号に記載されている。押出法を使用して、製造における溶媒の必要性を回避しうる。押出法を使用する場合、ポリマーおよび薬剤は、製造に必要とされる温度(一般に、低くとも約85℃)において安定であるように選択される。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を使用する。インプラントは、薬剤/ポリマー混合のために、約0〜1時間、0〜30分間、または5〜15分間にわたって、温度を約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることによって製造しうる。例えば、時間は、約10分間、好ましくは約0〜5分間であってよい。次に、インプラントを、約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度で押し出す。
【0089】
さらに、インプラントを同時押出してもよく、それによってインプラントの製造の間に、コア領域に被膜を形成しうる。
【0090】
圧縮法を使用してインプラントを製造してもよく、圧縮法は、一般に、押出法より速い放出速度のインプラントを生じる。圧縮法は、約50〜150psi、より好ましくは約70〜80psi、さらに好ましくは約76psiの圧力を使用し、約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用する。
【0091】
本発明のインプラントは、2〜3mmの強膜切開後の鉗子またはトロカールによる配置を包含する種々の方法によって、眼、例えば眼の硝子体腔に挿入しうる。インプラントを眼に挿入するのに使用しうる器具の1つの例は、米国特許出願公開第2004/0054374号である2002年9月18日出願の米国特許出願第10/246884号に開示されており、同開示の全てを引用してここに組み込む。配置方法は、治療成分または薬剤放出速度論に影響を与えうる。例えば、トロカールでのインプラントの送達は、鉗子による配置より、硝子体内に深くインプラントを配置し、それによって、インプラントを硝子体の縁により近づけうる。インプラントの位置は、要素の周囲の治療成分または薬剤の濃度勾配に影響を与える場合があり、従って、放出速度に影響を与えうる(例えば、硝子体の縁の近くに配置するほど、より遅い放出速度を生じうる)。
【0092】
開放隅角緑内障のような眼神経障害を最小限にする時間、眼内にβ−アドレナリン受容体拮抗薬のある量を放出するように、本発明のインプラントを構成する。アドレナリン受容体拮抗薬含有インプラントを眼の硝子体に移植することによって、拮抗薬が効果的に眼のIOPを下げると考えられる。
【実施例】
【0093】
実施例1
チモロールおよび生分解性ポリマーマトリックスを含有するインプラントの製造
本発明による生分解性薬剤送達システムまたはインプラントを、マレイン酸チモロールまたはチモロール遊離塩基と生分解性ポリマー組成物を組み合わせることによって製造した。
【0094】
より詳細には、インプラントを錠剤およびウエハの形態で製造した。例えば、通常円柱状である、薬剤送達システム錠剤成分を、サイズおよび重さが1.8mmL×直径約0.72mm、重量900μg〜1100μgの錠剤、またはサイズおよび重さが1.2mmL×直径0.38mm、重量216〜264μgの錠剤として製造した。薬剤送達システムウエハ成分は、通常、サイズおよび重さが厚さ0.13mm×直径2.5mm、重量900μg〜1100μgの円形ウエハとして製造した。
【0095】
そのような錠剤成分およびウエハ成分の異なる製剤を、本明細書に記載するように製造し、試験した。各製剤において、医薬品有効成分(API)であるマレイン酸チモロールを、ポリマーと組み合わせた。
【0096】
製剤作業のための選択されたポリマーは、ベーリンガーインゲルハイムから得た。ポリマーは、Resomer RG502、RG502H、RG503、RG504、RG505、RG506、RG752、RG755、RG756、RG858、R202H、R203およびR206であった。Resomer RG502、RG502H、RG503、RG504、RG505およびRG506は、それぞれ、固有粘度が0.2、0.2、0.4、0.5、0.7および0.8dL/gの50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG752、RG755およびRG756は、それぞれ固有粘度が0.2、0.6および0.8dL/gの75:25ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG858は、固有粘度が1.4dL/gの85:15ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R203およびR206は、それぞれ固有粘度が0.3および1.0dL/gのポリ(D,L−ラクチド)である。最後に、R202Hは、固有粘度が0.2で酸末端を有するポリ(D,L−ラクチド)である。
【0097】
各製剤に関し、薬剤およびポリマーをステンレス鋼乳鉢中で組み合わせ、96RPMに設定したターブラシェーカで15分間混合した。粉末混合物を乳鉢の壁から引き剥がし、次いで、さらに15分間再混合した。混合粉末混合物をテフロンビーカーに移し、95℃で、3〜6分間隔で10回、合計30〜60分間、溶融状態まで加熱し、均質なポリマー/薬剤溶融物を形成した。
【0098】
次いで、ポリマー/薬剤溶融物を錠剤およびウエハにした。より詳細には、溶融物を9ゲージポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チュービングを用いて錠剤化した。錠剤は、ピストン押出機のバレルに載せ、所定のコア押出温度で押出して、フィラメントとし、次いで1mgサイズの錠剤に切断した。溶融物を、Carverプレスによって所定の温度および圧力を利用してウエハとし、その後圧縮されたポリマー/薬剤シートを切断して、各重さが約1mgのウエハとした。
【0099】
チモロールおよび生分解性ポリマーマトリックスを含有するインプラントの試験
インビトロ薬剤放出速度試験を以下のようにして行った。
【0100】
各インプラント、すなわち錠剤またはウエハを、それぞれ、10mLの0.9%生理食塩水で満たされた40mLスクリューキャップ付バイアルに入れ、このバイアルを37℃/50rpmで振盪されている水浴中に置いた。所定の時点で、8mLのアリコートを取り出し、等体積の新しい媒体で置き換えた。薬剤分析を、通常、2690分離モジュール(または2696分離モジュール)と、2996フォトダイオードアレイ検出器とを含むWatersHPLCシステムからなるHPLCによって行った。Metachem Inertsil、RPC-18、5μm;4.6×250mmカラムを分離のために使用し、検出は295nmに設定した。移動相は、(25:75)アセトニトリル−0.01MのKH2PO4、pH=2.8、流速1mL/分で、合計作動時間は1サンプル当たり6分であった。放出速度は、時間とともに、所定の体積の媒体中に放出される薬剤の量μg/日を計算することによって決定した。
【0101】
インビボサンプルについての薬剤分析は、移動相を(20:80)アセトニトリル−0.01MのKH2PO4、pH=2.8としたこと以外はインビトロサンプルの条件と同じHPLC条件で行った。
【0102】
50%薬剤量および種々のポリマーを含有するインプラントをスクリーニングした。製剤スクリーニング作業は、重量平均分子量(Mw)がそれぞれ8,400、28,300、na、14,000、11,200、40,000および6500ドルトンのRG502、RG503、RG504、R203、RG752、RG755およびR202Hから始めた。図1を参照すると、これらの異なるポリマーで製造された50%薬剤が装填されたインプラントのマレイン酸チモロール放出速度特性を示すグラフが示されている。
【0103】
データから、全ての50%薬剤装填製剤は、1日の放出が非常に速いことを示し、図1に示すように、製剤の半分が1日目に約90%を超える放出に達し、一方、他の半分の製剤は1日目に40%と85%との間のマレイン酸チモロールを放出した明らかにしたことが明らかになた。
【0104】
この初期高薬剤放出速度は、1つには、水性媒体中のマレイン酸チモロールの高い溶解性のためである。いかなる特定の理論にも拘束される意図はないが、一度インプラントが溶解媒体に接触すれば、インプラントの表面上のマレイン酸チモロールが素早く溶解し、マトリックスから拡散し、それによって、インプラント内により多くの溶媒媒体を入れる溝が残され、より多くのマレイン酸チモロールが溶けることになると考えられる。
【0105】
チモロール遊離塩基(マレイン酸チモロールの非塩形態)は、同じ溶解媒体に殆ど溶解しない。これを考慮して、その場で遊離塩基を生成し、チモロールの放出速度を減速するために、マレイン酸チモロールインプラントの3種の異なる製剤を、RG502、別にR203に加えられた等量の炭酸ナトリウムで製造した。これらのインプラントの放出速度は、表1に示すように、その場で生成するチモロール遊離塩基がないような挙動が観察された。
【0106】
【表1】
【0107】
示されるように、製剤9、10および11は、それぞれ約79%、61%および94%の放出をた。1日後、この特異な放出実験は中止した。
【0108】
薬剤量と薬剤放出プロフィールとの間の相関関係を測定するために、試験を行った。RG502およびR206中に25%および50%のマレイン酸チモロールの薬剤量を有するインプラントを製造した。薬剤放出プロフィールのグラフを図2に示す。
【0109】
薬剤量を半分まで減らすことによって、1日目の放出が2倍を超える量減らされることがわかった。50%薬剤装填サンプルの約66%に比べ、RG502中の25%マレイン酸チモロールの1日目放出は約13.7%であり、50%薬剤装填サンプルの約88.4%に比べ、R206の25%マレイン酸チモロールの1日目放出は約20.0%であった。
【0110】
より少ない薬剤量で放出速度が低下すると、放出期間は、RG502中の25%マレイン酸チモロールについては、1日放出(RG502あるいはR206中の50%マレイン酸チモロール)から28日放出に、R206中の25%マレイン酸チモロールについては、60日までに延びたことが観察された。
【0111】
所望の6ヶ月放出が薬剤量を減らすことによって達成できるかどうかを判断するために、10%薬剤量でインプラントを製造した。得られたデータから、RG502中の10%マレイン酸チモロールについては、合計放出は7日目で約10.7%であったが、その後、全てのインプラントが崩壊し、非結晶状の濁りだけがサンプルバイアル中に残ったことが明らかになった。したがって、この放出実験は中止した。しかし、R206中10%マレイン酸チモロールを含有する製剤の薬剤放出は、比較的遅かった。この放出実験は、図3に示すように、98日後に合計放出約29.1%で中止された。
【0112】
また、ウエハの薬剤放出を同じ製剤で造られたロッドの薬剤放出と比べると、図3は、ウエハ形態における10%マレイン酸チモロール製剤(ロット241-192)の放出プロフィールを反映していることが分かる。データは、ウエハからの薬剤放出が、初期はロッドより遅いが、63日後にクロスオーバーが起こり、それからはウエハからの薬剤放出がロッドからの薬剤放出より速いことを示した。
【0113】
RG502中の10%マレイン酸チモロール(ロット241-178)およびR206中の10%マレイン酸チモロール(ロット241−792)の製剤化中、先の製剤の全てで使用した380μmノズルの変わりに、720μmノズルを使用して、フィラメントを押出した。さらに、10%マレイン酸チモロール製剤用のインプラントサイズは、先の製剤においては240μgであったが、1mgとした。
【0114】
別の試験では、インプラントサイズの変更がどのように薬剤放出の速度に影響するかを決定するために行われた。単一のポリマーRG502H'と2つの異なるノズルサイズ、380μmおよび720μmを使用して、4種の製剤を製造した。インプラントを、720μmノズルから押出されたフィラメントに関して重さ1mg±10%に、380μmノズルから押出されたフィラメントに関して重さ0.24mg±10%に切断した。異なるサイズのこれらのインプラントの放出プロフィールを図4に示す。
【0115】
小さな直径のフィラメントから切断されたインプラントは、大きな直径のフィラメントからの薬剤放出より速い薬剤放出を示す(241-185対241-184および241-187対241-186)ことが観察された。しかし、10%と25%との薬剤量のインプラントの間で実質的な差は観察されなかった。発明のどのような特定の理論にも拘束される意図はないが、10%および25%薬剤量インプラントにおける薬剤放出の、この実質的な差もないのは、全放出が12日しか続かなないという事実があり、放出があまりにも速すぎて、いかなる有意のまたは意味のある相違も起こりえないという可能性があると考えられる。さらに、Resomer RG502Hの使用が、明らかに差がないことに影響した可能性も考えられる。薬剤量およびポリマー組成または種類は、それぞれ、薬剤放出期間および薬剤の初期バースト効果を調整するための重要なパラメーターであると考えられる。この理論を試験するために、種々のポリマーマトリックスと比較して、Resomer RG503、RG504、RG505、RG506、RG752、RG755、RG756、RG858、R203、R206およびR208を使用して、それぞれ10%薬剤量で、一連の製剤を製造した。異なる種類のポリマーに基づく放出プロフィールを、図5A、5Bおよび5Cに示す。
【0116】
表5A、5Bおよび5Cに示すように、通常、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーは、約1ヶ月放出であり、75:25ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、85:15ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)は約2ヶ月放出であり、ポリ(D,L−ラクチドs)は約3ヶ月以上の放出であった。
【0117】
この放出実験の間、ある製剤は、実験の終わりで理論値の100%を超える薬剤放出をしたようであることが分かる。これらの実験において、100%を超える見かけの合計%放出が得られることがあるのは珍しいことではない。これは以下のように説明できる。マレイン酸チモロールは塩であり、実際のチモロール重量含有率は塩の重量の73.16%である。HPLC基準は、マレイン酸チモロール塩(Mw432)の重量に基づいて、またはチモロール遊離塩基(Mw316)の重量に基づいて作ることができ、マレイン酸チモロールの重量は、それに従って再計算できる。したがって、マレイン酸チモロールの1μg/mL溶液を製剤化するために、5mgのマレイン酸チモロールを計量し、ついでこれを5リットルの媒体に溶解する。しかし、この1μg/mLマレイン酸チモロール溶液は、実際は、0.73μg/mLのチモロール遊離塩基しか含有しない。一方、1μg/mLチモロール遊離塩基溶液を製剤化するために、5mgの変わりに6.835mgのマレイン酸チモロール塩を計量し、次いでこれを5リットルの媒体に溶解する。
【0118】
追加の放出プロフィールを図6に示す。
【0119】
示されるように、R206中に20%薬剤量で製剤化されたマレイン酸チモロール(ロット295-13)は、106日目に78%までの安定した放出を示し、次いで僅かに遅くなった放出で134日目に89%に達し、最後に徐々に横ばい状態になり177日目に92%になった。R206中の26%薬剤量で製剤化されたマレイン酸チモロール(ロット295-12)は、ロット295-13より速い、106日目で91%までの安定した放出を示し、ついで、僅かに遅くなった放出で134日目に92%に達し、本質的に変化なく177日目に93%に達した。対照的に、R203中20%薬剤量で製剤化されたマレイン酸チモロール(ロット295-15)は、遅い放出を示し、106日目に28%にしか達せず、134日目までに39%に達し、しかし次いで速度が増し、177日目に全放出の99%に達した。
【0120】
ポリマーの種類が、本発明によるインプラント中の活性剤の放出速度に影響を持つであろうから、マトリックス材料としての2種以上のポリマーを活性剤と組み合わせることによって、薬剤送達システムインプラントが所望の放出速度を持つように製剤化することが企画された。ポリマーは、好ましくは、インプラントからの活性生物の所望の放出速度を達成するように選択される。
【0121】
例えば、相補放出プロフィールを利用することがで、例えば、1つのポリマーが、所望の放出において上限を示す高速放出プロフィールを持ち、もう一方のポリマーが所望の放出で下限をしめす低速放出プロフィールを持つ、2種のポリマーを組み合わせることができる。例えば、マレイン酸チモロールを含むポリマーR203およびR206の両ポリマーを用いて、R203またはR206の一方より望ましい放出速度を達成することができる。言い換えれば、もし、R206中の20%マレイン酸チモロール(295-13)が、達成したいと思う上限であり、一方R203中の20%マレイン酸チモロールが下限であると考えられれば、両ポリマーを種々の比率で組み合わせて2つの間のどこかでより望ましい放出プロフィールを達成することができることは理解しえる。
【0122】
実施例2
チモロールおよび生分解性ポリマーマトリックスを含む眼内インプラントのインビボ試験
最初のインビボ実験は、チモロール製剤で行い、両方10%薬剤量およびポリマーR206を持つ2種の異なるタイプのインプラントを試験した。インプラントは図3に示す放出プロフィールを持つ同じインプラント製剤であった。両タイプとも、R206ポリマー中の10%マレイン酸チモロールで製剤化した。インプラントの第一のタイプは、錠剤またはロッドの形態で、第二のタイプはウエハの形態であった。
【0123】
初期実験を2匹の動物で行った。ロット241−179からのロッドを、第一動物の右目の前眼房と左眼の結膜の下に外科的に移植した。ロット241−192からのウエハを、第二動物の右目の前眼房(「AC」)と左眼の結膜の下に外科的に移植した。前眼房の検体採取の日は、1、4、7、12、28日およびこの後は隔週であった。47日まで両ロットで検出可能濃度のチモロールは見つからなかった。47日目、2本のロッドおよび2つのウエハを動物から抽出し、合計含有量分析を行った。結果を表2にまとめる。
【0124】
【表2】
【0125】
インプラントを両動物から抽出し、残余物の合計含有量分析は、殆どのマレイン酸チモロールが未だインプラント中にあったことを示し、これはマレイン酸チモロールのほんの少しの量しかインプラントから放出されなかったことを意味する。これは、図3に関連して先に記載したように、ロット241-179については35日後に20.2%の放出を、ロット24-192についてはて35日後に15.8%の放出を示した、インビトロデータとは著しく対照的であった。これら2つのロットから放出が観察されなかったことの可能な説明として、特に約200〜300Lの房水を含有する前眼房または結膜下に移植する場合、おそらく、ロッドまたはウエハはサイズが大きすぎた、という可能性がある。したがって、比較的高含有量の薬剤を持つ比較的小さなインプラントを次のインビボ実験では用いた。
【0126】
第二チモロールインビボ実験は、R206中に25%マレイン酸チモロール(w/w)を持つロット241-173で行われた。実験は1匹の動物で行われ、両目の前眼房にインプラント(240μg)を外科的に移植し、AC検体採取を、1時間、6時間、48時間、7日、71日および75日後に行うように計画した。インビボデータを表3に示す。
【0127】
【表3】
【0128】
濃度は、最初、約2.65μg/mLと高く、おそらく、インプラント製剤のバースト効果によるものと考えられ、次いで、濃度は、6時間、24時間、48時間および7日間で、それぞれ、約0.29μg/mL、約0.15μg/mL、約0.07μg/mLおよび約0.00μg/mLと安定的に下がっていった。インビトロデータ(図2)は、7日までに約30%、約18μgのチモロール放出を示したので、インプラントは、7日目に薬剤の放出を単純に止めたのかは明らかではなかった。1つの可能な説明として、ウサギの眼における、マレイン酸チモロールの速いクリアランス速度がある。仮説としては、もし眼におけるマレイン酸チモロールのクリアランス速度が、ポリマーマトリックスからのマレイン酸チモロールの放出速度と等しければ、分析した時、房水は濃度0を示し得る。2つのインプラントは、75日後に動物から抽出し、その合計含有量を測定した。結果を表4にまとめる。合計含有量は75日後に、約89%のマレイン酸チモロールが右目のインプラントから放出し、約88%が左眼のインプラントから放出した。
【0129】
【表4】
【0130】
クリアランス速度が可能な説明になるかどうか判断するために、マレイン酸チモロール溶液のボーラス注射の公知の量(25μL中1.5mg)を、10匹のウサギの、5匹には前眼房に、残りの5匹には後眼部に注射した。1時間、3時間、6時間、12時間および24時間後に最初の5匹の動物の前眼房から検体採取を行い、1時間、3時間、6時間、24時間および48時間後に残りの動物の前眼房および後部から検体採取を行なった。1動物を各時点で使用した。最初の5匹の動物のデータを表5Aに、残りの5匹の動物のデータを表5Bおよび5Cに示す。
【0131】
【0132】
【表5B】
【0133】
【表5C】
【0134】
濃度は、最初の1時間後約838μg/mLと、初期は高かった。しかし、これらは3時間、6時間、12時間および24時間後に、それぞれ、約49.67μg/mL、約1.16μg/mL、約0.07μg/mLおよび約0.03μg/mLと、劇的に下がった。6時間後の濃度は、1時間後の濃度の約0.13%だけであった。この結果を、チモロールインプラント(295-173、表2)の同じ時点での濃度と比べ、前眼房内におけるマレイン酸チモロールのクリアランス速度は、濃度測定において重大な要素である可能性があると結論付けた。このインビボ実験から、マレイン酸チモロールのクリアランス速度は、任意の2つの時点の間の濃度における差を取得することによって計算し、それを時間における差、すなわち0時間目から1時間目の間で割る。クリアランス速度は、約661μg/時間であると計算され、1時間目と3時間目の間は、クリアランス速度は約394μg/時間、などと計算された。これらから、ウサギ前眼房における半減期は、約1.43時間と計算された。
【0135】
同じボーラス注射後の後部における濃度は、表5Bに示すように、1時間点で比較的遅いクリアランス速度を示し、それに続く時間点では、非常に遅い速度を示した。
マレイン酸チモロールの検出可能な濃度は、表5Cに示すように、濃度は低く、有意でないと考えられるものの、後部ボーラス注射から前眼房において見られた。
【0136】
ボーラス注射を行っても、ウサギ眼におけるチモロール濃度を測定することは困難であったので、インプラントの有効性を証明するために、眼圧(IOP)の測定に焦点をあてた。
【0137】
これによって、9匹の動物で計画された第四のインビボ実験を行った。動物は、3匹ずつの3つのグループに分けた。チモロールインプラントを3つの異なる領域、前眼房、後部および結膜に配置した。各動物の右眼だけにインプラントを配置し、左眼はコントロールとしてそのままにした。各ウサギの両目の眼圧を、バックグランドとして、手術の1週間前に測定し、手術から1、2、3、4、7および6ヶ月まで1週間に1度測定した。選択した製剤は、ロット295-16(図6参照)であり、これはR203中の26%マレイン酸チモロールであった。この製剤は、放出の21日まで一見0オーダーである放出プロフィールのため、選んだ。手術の前に、9匹の動物すべてのIOPを測定し、動物ベースラインを得た。動物のベースラインIOPデータを表6に示す。
【0138】
【表6】
【0139】
予想されたように、各動物のIOPは日によって変動したが、8日を過ぎると、標準偏差が0.3の低い値から2.1の高い値の範囲で、ハイティーン群で平衡化する傾向である。15日目、1匹が病気であることがわかり、したがって17日目に殺し、残ったものを合計含有量分析のために回収した。35日目、動物#1693(結膜)、動物#1697(前眼房)および動物#1698(後部)を殺し、69日目、残った5匹の動物を殺し、残ったものを合計含有量分析のために取り除いた。結果を表7に示し、回収した残ったものに基づく、各時点での放出プロフィールを図7に示す。
【0140】
【表7】
【0141】
図7に示すように、データは、3つの位置、前眼房、後部および結膜全てで類似の放出プロフィールを示した。
図8示すインビボ特性とインビトロ特性との比較で、放出プロフィールの間で良好な相関関係が確認できる。
9匹の動物の右および左眼の眼圧を、表8に示す日に測定した。
【0142】
【表8】
【0143】
各動物の眼によるIOP変動を補正するために、術前および術後にデータを集めた。
【数1】
(式中、ΔIOP治療およびΔIOP対照は、それぞれ、治療した(右)眼のIOPおよびコントロール(左)眼のIOPを示す。ΔIOPベースラインは、時間0の両眼のIOPの差である。)
前眼房、後部および結膜におけるマレイン酸チモロールのIOP減少効果を、図9A、9Bおよび9Cに示す。ガイドラインとしては、IOP変化が、比較してより負の値ほどより良好な治療効果があるとし、0の値は測定可能な治療効果がないとして記載する。
【0144】
データは、本発明によるマレイン酸チモロールインプラントを眼の前眼房に外科的に移植した場合、得られたIOP減少効果は、眼内の3つの位置のそれぞれの中で最も顕著であることを示した。さらに、後部への移植が、IOPを減らすのに、2番目に効果的であるようで、結膜へのインプラントは、IOPを減少させる効果の点で3つの位置の中では最も効果がなかったようであると結論付けられた。前眼房、後部および結膜の平均IOP減少を計算した。この計算を図10に示す。
【0145】
この実験では、本発明によるチモロール薬剤送達システムまたはインプラントのための移植の最も効果的な位置は、前眼房であると示唆しているようである。
【0146】
どのような平均IOP減少が、チモロールの治療的濃度を持つ眼のためであるかを判断するために、市販のチモロール点眼剤を使用し、以下に記載するような推奨療法を得る。
【0147】
最後である第五のインビボ実験では3匹の動物を使用した。各動物の右眼に、午前、0.5%チモロール点眼剤の2滴差し、左眼はコントロールとし、両目のIOPを1時間、3時間および6時間後に測定した。これを2日間繰り返した。同じ式(1)および(2)を使用して、ΔIOPおよびΔΔIOPを計算した。3匹の動物の平均IOP減少を図11に示す。
同図に示されているように、著しいIOP減少が、第一日目の点眼の約6時間後に観察されたが、そのような減少は、第二日目には観察されなかった。平均IOP減少は、約−2mmHg付近に局在しているようで、これは、R203ポリマー中に約26%のマレイン酸チモロール(ロット295−16)を含む、本発明のインプラント製剤で観察されたものと類似していた。
【0148】
結論
ポリ(D,L−ラクチド)Resomer R206および/またはResomer R203(ロット295-15)で製剤化された、本発明によるマレイン酸チモロールインプラントは、約6ヶ月のインビトロ放出プロフィールを提供した。その高い溶解性の故に、マレイン酸チモロールは、種々の粘度のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を使用して、非常に速い放出プロフィールを示す。薬剤量は、水性媒体において、マレイン酸チモロールの高速放出を促進する主な影響因子であることがわかった。薬剤量を50%から10〜20%の範囲に減少させた場合、放出を3〜6ヶ月持続させる効果を達成することができた。
【0149】
動物実験のために選択された第一チモロール製剤は、R203中の10%マレイン酸チモロールのロッド(ロット241-179)およびウエハ(ロット241-192)であった。残念なことに、合計含有量測定を行った後、チモロールが検出され、全マレイン酸チモロールが薬剤送達インプラント中に残り、検出可能な濃度は放出されなかったことがわかった。これは、約35日後にロッドで約20.2%の放出、ウエハで約15.8%の放出を示した、インビトロ放出プロフィールとは異なっていた。おそらく、インプラントのサイズ(1300μg)が大きすぎ、前眼房に移植されたとき、効果がなかったものと判断される。より小さなインプラントを使用して、次のインビボ実験では、R203中、約26%のマレイン酸チモロール(ロット295-16)を利用し、インプラントサイズは、約240μmに縮小した。
【0150】
さらに、インビボ実験で、眼の前眼房に移植した本発明によるポリマー/チモロールインプラントは、より負のIOP減少値に示されるように、眼の後部あるいは結膜のどちらに移植された同じインプラントより、良好な治療濃度を示すことを実証した。
【0151】
さらに、これらの減少した値は、R203中の26%マレイン酸チモロール(ロット295-16)を使用して製剤化したインプラントで得た値と類似していた。これから、R203中の26%マレイン酸チモロール(ロット295-16)は、おそらく、IOPを効果的に下げる治療的な濃度を提供するものと推論した。
【0152】
実施例3
72歳の女性は、悪化し始めた加齢性開放隅角緑内障と診断される。彼女の眼圧は約26mmHgと約28mmHgとの間の範囲である。等量(1:1比)の生分解性ポリマー(R203およびR206)を含むマトリックス中に15%マレイン酸チモロールを含有するインプラントを女性の両目の硝子体にトロカールを使用して配置する。その後数日にわたり、医者は、眼圧を測定して、眼圧が下がりつつあり、約20mmHgで安定し始めることを見出す。また、女性は、眼の不快感が軽減されるのに気づいたと報告する。インプラントは、比較的定常な有効用量のチモロールを次の4ヶ月にわたって眼に提供し続ける。約5ヵ月後、医者が眼圧を測定し、インプラントは、女性の眼の中で所望の眼圧を維持していないようだと判断する。インプラントは完全に分解してしまったと推測される。医者は、この手順を5ヶ月おきに、女性のそれ以後の生涯にわたり繰り返す。本発明によるインプラントは、女性の視界をさらに有意に消失させることを阻止する。
【0153】
本明細書に開示するインプラントは、下記のような疾患または症状の治療に有効でありうる前記の他の治療薬を放出するように構成してもよい。
【0154】
黄斑症/網膜変性:
非滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性斑状視神経網膜疾患、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫。
【0155】
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:
急性多発性斑状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット(Birdshot)網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(Multiple Evanescent White Dot Syndrome)(MEWDS)、眼類肉腫症、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群。
【0156】
血管疾患/滲出性疾患:
コーツ病、傍中心窩(parafoveal)毛細管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症。
【0157】
外傷性/外科性:
交感神経性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、手術時低灌流、放射線性網膜症、骨髄移植性網膜症。
【0158】
増殖性疾患:
増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症。
【0159】
感染性疾患:
眼ヒストプラスマ症候群、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片側性亜急性視神経網膜炎、ハエウジ病。
【0160】
遺伝性疾患:
網膜色素変性、網膜ジストロフィー関連全身性疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、スタルガルト病、黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー(Pattern Dystrophy of the Retinal Pigmented Epithelium)、X染色体性網膜分離、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、ビエッティ結晶性ジストロフィー(Bietti's Crystalline Dystrophy)、弾性線維性仮性黄色腫。
【0161】
網膜断裂/円孔:
網膜剥離、斑状円孔、巨大網膜断裂。
【0162】
腫瘍:
腫瘍、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ系腫瘍。
【0163】
その他:
点状内脈絡膜症、急性後多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎等。
【0164】
本明細書に引用されている全ての文献、論文、刊行物、特許および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0165】
本発明を、種々の特定の実施例および態様に関して記載したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲内において様々に実施しうるものと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】各システムが50%薬剤用量を有する、マレイン酸チモロールおよびポリマーを含む、本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフである。
【図2】各システムが50%薬剤用量を有する、マレイン酸チモロールおよびポリマーを含む、本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフである。
【図3】各システムが10%薬剤用量を有する、マレイン酸チモロールおよびポリマーを含む、本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフである。
【図4】本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフであり、マレイン酸チモロールおよびポリマーの2種の異なる寸法のフィラメントを比較する。
【図5A】本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフであり、種々の薬剤用量および種々のポリマー材料を含むシステムの放出プロフィールを比較する。
【図5B】本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフであり、種々の薬剤用量および種々のポリマー材料を含むシステムの放出プロフィールを比較する。
【図5C】本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフであり、種々の薬剤用量および種々のポリマー材料を含むシステムの放出プロフィールを比較する。
【図6】マレイン酸チモロールおよびポリマーを含む、本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフであり、製剤は、マレイン酸チモロールの重量ではなくチモロールの重量に基づいた薬剤含有量で調製されている。
【図7】移植後に得られる薬剤送達システム中の合計薬剤含有量に基づくインビボマレイン酸チモロール放出を示すグラフである。
【図8】各システムが26%薬剤用量を有する、マレイン酸チモロールおよびポリマーを含む、本発明に従った薬剤送達システムのマレイン酸チモロール放出プロフィールを示すグラフである。
【図9A】眼の前房に配置した、本発明のマレイン酸チモロール薬剤送達システムの、眼圧(IOP)低下効果を示すグラフである。
【図9B】眼の後区に配置した、本発明のマレイン酸チモロール薬剤送達システムの、眼圧(IOP)低下効果を示すグラフである。
【図9C】眼の結膜下に配置した、本発明のマレイン酸チモロール薬剤送達システムの、眼圧(IOP)低下効果を示すグラフである。
【図10】眼の後区、前房および結膜下に配置した、本発明のマレイン酸チモロール薬剤送達システムの、眼圧(IOP)低下効果を示すグラフである。
【図11】チモロール点眼薬の滴下後の平均IOP低下(N=3)を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントが配置されている眼の眼圧を下げるのに有効な期間、前記インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する生分解性ポリマーマトリックスに付随したβ−アドレナリン受容体拮抗薬を含み、前記期間がインプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間である、生分解性薬剤送達インプラント。
【請求項2】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、チモロール、ベタキソール、レボブノロール、カルテオロール、メチプラノロール、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記アドレナリン受容体拮抗薬が、β−非選択的アドレナリン拮抗薬である請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、チモロール、その塩およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、マレイン酸チモロールである請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、生分解性ポリマーマトリックス内に分散されている請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記マトリックスが、第一生分解性ポリマーと異なる第二生分解性ポリマーとの混合物を含む請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、インプラントの約50wt%までの量で供給される請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、インプラントの約30wt%までの量で供給される請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、インプラントの約10wt%までの量で供給される請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、マレイン酸チモロールであり、インプラントの約26wt%までの量で供給される請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
前記マトリックスが、インプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間、インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のインプラント。
【請求項13】
前記マトリックスが、インプラントを眼に配置してから少なくとも約1ヶ月間、インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
前記マトリックスが、インプラントを眼に配置してから少なくとも約3ヶ月間、インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のインプラント。
【請求項15】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬がチモロールであり、前記マトリックスが、治療有効量のチモロールの放出を約3ヶ月持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のインプラント。
【請求項16】
前記インプラントが、眼の前眼房に配置されるように構成されている請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、インプラントの約20wt%の量で供給されたマレイン酸チモロールであり、前記生分解性ポリマーマトリックスが、2種の異なるポリラクチドポリマーの組み合わせを含む請求項1に記載のインプラント。
【請求項18】
フィラメントの形状である請求項1に記載のインプラント。
【請求項19】
請求項1に記載のインプラントである、患者の眼の眼圧を下げるための医薬品であって、前記医薬品を患者の眼の中に配置することによって、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、少なくとも約1週間、患者に供給する医薬品。
【請求項20】
請求項3に記載のインプラントである、患者の眼の眼圧を下げるための医薬品であって、前記医薬品を患者の眼の中に配置することによって、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、少なくとも約1週間、患者に供給する医薬品。
【請求項21】
請求項6に記載のインプラントである、患者の眼の眼圧を下げるための医薬品であって、前記医薬品を患者の眼の中に配置することによって、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、少なくとも約1週間、患者に供給する医薬品。
【請求項22】
請求項11に記載のインプラントである、患者の眼の眼圧を下げるための医薬品であって、前記医薬品を患者の眼の中に配置することによって、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、少なくとも約1週間、患者に供給する医薬品。
【請求項23】
生分解性眼内インプラントを製造する方法であって、β−アドレナリン受容体拮抗薬と生分解性ポリマー成分との混合物を押出して、インプラントが配置される眼の眼圧を下げるのに有効な期間であってインプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間である期間、インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続的に放出するのに有効な速度で分解する生分解性材料を形成する工程を含んでなる方法。
【請求項24】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、チモロール、ベタキソール、レボブノロール、カルテオロール、メチプラノロール、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記βアドレナリン受容体拮抗薬が、チモロール、その塩およびそれらの混合物から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマー成分が、異なる生分解性ポリマーの混合物である請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記インプラントが、眼の前眼房に配置される請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記インプラントが、眼の後部に配置される請求項23に記載の方法。
【請求項29】
β−アドレナリン受容体拮抗薬に加えて、さらに、治療剤を患者に投与する工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載のインプラントである、緑内障を治療するための医薬品であって、前記医薬品を患者の眼部領域に配置することによって、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を患者の眼に少なくとも約1週間供給し、それによって緑内障を治療する医薬品。
【請求項1】
インプラントが配置されている眼の眼圧を下げるのに有効な期間、前記インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する生分解性ポリマーマトリックスに付随したβ−アドレナリン受容体拮抗薬を含み、前記期間がインプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間である、生分解性薬剤送達インプラント。
【請求項2】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、チモロール、ベタキソール、レボブノロール、カルテオロール、メチプラノロール、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記アドレナリン受容体拮抗薬が、β−非選択的アドレナリン拮抗薬である請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、チモロール、その塩およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、マレイン酸チモロールである請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、生分解性ポリマーマトリックス内に分散されている請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記マトリックスが、第一生分解性ポリマーと異なる第二生分解性ポリマーとの混合物を含む請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、インプラントの約50wt%までの量で供給される請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、インプラントの約30wt%までの量で供給される請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、インプラントの約10wt%までの量で供給される請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、マレイン酸チモロールであり、インプラントの約26wt%までの量で供給される請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
前記マトリックスが、インプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間、インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のインプラント。
【請求項13】
前記マトリックスが、インプラントを眼に配置してから少なくとも約1ヶ月間、インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
前記マトリックスが、インプラントを眼に配置してから少なくとも約3ヶ月間、インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のインプラント。
【請求項15】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬がチモロールであり、前記マトリックスが、治療有効量のチモロールの放出を約3ヶ月持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のインプラント。
【請求項16】
前記インプラントが、眼の前眼房に配置されるように構成されている請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、インプラントの約20wt%の量で供給されたマレイン酸チモロールであり、前記生分解性ポリマーマトリックスが、2種の異なるポリラクチドポリマーの組み合わせを含む請求項1に記載のインプラント。
【請求項18】
フィラメントの形状である請求項1に記載のインプラント。
【請求項19】
請求項1に記載のインプラントである、患者の眼の眼圧を下げるための医薬品であって、前記医薬品を患者の眼の中に配置することによって、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、少なくとも約1週間、患者に供給する医薬品。
【請求項20】
請求項3に記載のインプラントである、患者の眼の眼圧を下げるための医薬品であって、前記医薬品を患者の眼の中に配置することによって、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、少なくとも約1週間、患者に供給する医薬品。
【請求項21】
請求項6に記載のインプラントである、患者の眼の眼圧を下げるための医薬品であって、前記医薬品を患者の眼の中に配置することによって、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、少なくとも約1週間、患者に供給する医薬品。
【請求項22】
請求項11に記載のインプラントである、患者の眼の眼圧を下げるための医薬品であって、前記医薬品を患者の眼の中に配置することによって、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を、少なくとも約1週間、患者に供給する医薬品。
【請求項23】
生分解性眼内インプラントを製造する方法であって、β−アドレナリン受容体拮抗薬と生分解性ポリマー成分との混合物を押出して、インプラントが配置される眼の眼圧を下げるのに有効な期間であってインプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間である期間、インプラントからのβ−アドレナリン受容体拮抗薬の放出を持続的に放出するのに有効な速度で分解する生分解性材料を形成する工程を含んでなる方法。
【請求項24】
前記β−アドレナリン受容体拮抗薬が、チモロール、ベタキソール、レボブノロール、カルテオロール、メチプラノロール、これらの誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記βアドレナリン受容体拮抗薬が、チモロール、その塩およびそれらの混合物から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマー成分が、異なる生分解性ポリマーの混合物である請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記インプラントが、眼の前眼房に配置される請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記インプラントが、眼の後部に配置される請求項23に記載の方法。
【請求項29】
β−アドレナリン受容体拮抗薬に加えて、さらに、治療剤を患者に投与する工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載のインプラントである、緑内障を治療するための医薬品であって、前記医薬品を患者の眼部領域に配置することによって、治療有効量のβ−アドレナリン受容体拮抗薬を患者の眼に少なくとも約1週間供給し、それによって緑内障を治療する医薬品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−535539(P2007−535539A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510849(P2007−510849)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/014021
【国際公開番号】WO2005/110380
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/014021
【国際公開番号】WO2005/110380
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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