説明

β−グルカンの処理方法

本発明は、閉じられた空間において、圧力下、酸溶液により、上昇した温度において加水分解を行うことにより、植物ベースのβ−グルカンを、制御された分子サイズに分解する方法に関する。本発明は、分解されたβ−グルカン産物にも関する。得られたβ−グルカン産物は、飲料のような食品への適用において有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、植物ベースのβ−グルカンを制御された態様で望ましい分子サイズに分解することに関し、前記分子サイズの分布は、典型的に、狭い範囲内にある。本発明の方法は、β−グルカンの分子量の制御された調節を可能にし、それにより、飲料のような種々の食品中におけるβ−グルカンの溶解性および安定性の改善を可能にする。本発明の方法において使用されるβ−グルカンは、典型的に、穀物ベースのβ−グルカンである。本発明は、分解されたβ−グルカン産物にも関する。本発明はさらに、飲料のようなβ−グルカン含有食品を製造するための、前記方法を用いて得られるβ−グルカン産物の使用にも関する。
【0002】
β−グルカンは、ヨーグルト、ベーカリー製品(例えばスナック)および種々の飲料のような多くの食品に、健康に作用する成分として添加される。β−グルカン飲料の製造において出発物質として使用されるβ−グルカン濃縮物は、例えば、一般的に、水で抽出し、β−グルカンから作られる水に可溶性の繊維画分と水に不溶性の繊維とを分離することにより製造される。
【0003】
β−グルカンの対費用効果の高い製造は、β−グルカンが、至適に高い量で、固相から液相に溶解し得ることを必要とする。血中コレステロール含量の低下のような望ましい生理的効果を有するβ−グルカンを提供するために、飲料中のその含量は十分であるべきであり、すなわち、約3〜5g/用量である。これは、穀物原料中の天然のβ−グルカンの高い分子量(1〜2×10g/mol)を、制御された態様で、5,000〜360,000g/molのレベルまで低くできることを必要とする。そのような分子サイズを用いると、飲料を飲みにくくする原因である粘度を非常に高くすることなく、望ましいβ−グルカン含量を達成することができる。
【0004】
いくつかの研究が、β−グルカンの分解についてなされている。一般的に、試験は、穀物基材から抽出される精製されたβ−グルカンを使用することにより行われ、加水分解は、塩酸のような酸の水溶液中で行われる(Tosh et al., 2003)か、または酵素的に行われ(Roubroeks et al., 2001)、分子構造を決定することを目的とする。酸加水分解により得られる分解されたβ−グルカンの分子量Mは、70,000〜40,000g/molであり(Tosh et al.)、酵素加水分解により得られる産物の分子量Mは、2,200〜213,900g/molであった(Roubroeks et al.)。刊行物Johansson et al. (2006)は、分析的な意味で、オートムギから単離した純粋なβ−グルカンの酸加水分解(HCl、TFAおよびHSO)と、リケナーゼ酵素を用いた酵素加水分解とを比較している。
【0005】
公報WO 2004/086878(Zheng, G-H et al., Gargill Incorporated, 2004)には、β−グルカンを含有する粉末を酵素水溶液が添加された大量の水中で分解することにより(例えば10g/l)、β−グルカンの分子量を低下させる方法が開示されている。β−グルカンは、その後、92%のエタノールを用いて、大量の水から沈殿させる。得られたβ−グルカンの分子量Mは、50,000〜1,000,000g/mol、例えば120,000〜170,000g/molで変化した。
【0006】
公報US 2004/0001907 A1(Vasanthan, T. et al., 2004)には、β−グルカンを含有する粉末およびアルコールを混合して、粉末/アルコールスラリーとし、アルコールから繊維含有残渣を分離し、繊維含有残渣をアルコール中に再抽出し、そのようにして得られるスラリーを超音波処理およびプロテアーゼまたはアミラーゼによる処理に供し、望ましいβ−グルカン産物を得る、β−グルカン産物の製造方法が開示されている。前記公報には、水/アルコール比を変化させることにより、水/アルコール溶液中での超音波処理を用いてβ−グルカンの細分化の程度を調節する方法も開示されている。
【0007】
公報WO 2005/120251(Lov, J. et al., Oy Glubikan Ab)には、湿った穀物のpHを酸を用いて5.2未満に調節し、圧力(5bar未満)下、100〜130℃の温度で、閉じられた空間において穀物を処理し、固体物質から水相を分離し、水相からβ−グルカンを分離することによる、穀物からβ−グルカンを抽出する方法が開示されている。抽出物中の乾燥物質含量は、好ましくは7〜10%であり、処理時間は、典型的に10〜20分である。処理される穀物材料は、粉砕されてよく、または完全な粒子の形態であってよい。
【0008】
公報US 6,210,722(Wullschleger, R.D. et al., Kellog Company, 2001)には、湿式押し出し(例えば25〜45%の湿度)と同時に、可溶性繊維原料および不溶性繊維原料を含有する混合物を煮沸し、そのように得られた押し出し物を水含量3〜12%まで乾燥することによる、繊維含有産物の製造方法が開示されている。可溶性繊維は、例えば、β−グルカンまたはサイリウム(psyllium)であってよい。乾燥押し出し物は、粉砕され、飲料等に混合された。
【0009】
公報WO 2006/040395 A1(Laakso, S. et al., Ravintoraisio Oy, 2006)には、繊維物質を水性媒質と混合することおよび粘度を低下させるために混合物をホモジナイズすることにより、穀物ベースの食物繊維を含有する液体繊維組成物を製造する方法が開示されている。そのようにして得られる同種混合物は、さらに加熱されてもよい。前記混合物の繊維物質は、可溶性成分および不溶性成分の両方を含有し、可溶性成分は、例えばβ−グルカンであってよい。
【0010】
本発明の目的は、制御された態様で分解された安定なβ−グルカンを産生する態様において、β−グルカンの分解を改善することであり、従来の方法よりも優れた含有量で例えば飲料中に溶解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、可溶性β−グルカン画分のプロトンNMRスペクトルである。(A)本明細書において記載したように調製したβ−グルカン画分、(B)主要な供給業者から得たβ−グルカン画分。両方の画分は、β−グルカン粉末の水溶性部分をアミログルコシダーゼで処理し、その後透析して過剰なデンプンを除去することにより得られた。スペクトルは、バリアンユニティ分光計を用いて、500MHz、10℃において、内部標準として微量のアセトン(2.225ppm)を含有する重水中で測定された。β−グルカン鎖残渣(Glcβ1,4およびGlcβ1,3)に当たるシグナルを、図中に示す。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、植物ベースのβ−グルカンを、制御された再現可能な態様で望ましい分子サイズに分解する方法に関し、分解されたβ−グルカンを含有する産物を提供し、β−グルカンの分子量の分布は典型的に狭い。本発明は、飲料のようなβ−グルカン含有食品の製造における、前記方法により得られるβ−グルカン含有産物の使用にも関する。出発物質として使用されるβ−グルカンは、典型的に、オオムギまたはオートムギのような穀物から単離された濃縮β−グルカンである。
【0013】
本発明はさらに、天然のβ−グルカンにおけるGlcβ1,4:Glcβ1,3比と同じGlcβ1,4:Glcβ1,3比を有する分解されたβ−グルカンにも関する。
【0014】
本発明の方法は、植物ベースの天然のβ−グルカンを、粉末またはこね粉塊の形態で、閉じられた空間において、圧力下、酸溶液の存在下、上昇した温度での加水分解に供し、温度および加水分解の時間および酸溶液の濃度を調節することによりβ−グルカンの分子量を調節することを可能にする。
【0015】
本発明の方法は、得られたβ−グルカンの飲料のような食品における溶解性および安定性を改善することも可能にする。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本発明は、植物ベースのβ−グルカンの低減した分子サイズへの制御された分解方法に関し、前記β−グルカンを、粉末様形態またはこね粉塊の形態で、閉じられた空間において、圧力下、酸溶液の存在下、上昇した温度での加水分解に供し、その後冷却することにより、分解されたβ−グルカンを含有する産物を得る。
【0017】
得られた分解されたβ−グルカン産物におけるβ−グルカンの分子量の多分散性M/M(分子量分布を説明する)は、典型的には10未満であり、好ましくは8未満であり、特に5未満である。多分散性の値が低くなるほど、分子量分布が低くなる。
【0018】
分解されたβ−グルカンの平均分子量Mは、5,000〜360,000g/molであり、好ましくは10,000〜100,000g/molであり、特に20,000〜50,000g/molの範囲内である。
【0019】
本発明に関して、上述した分子量MおよびMは、分子の重量に関して重点が置かれる平均分子量(M)および分子の数に関して重点が置かれる平均分子量(M)を意味する。
【0020】
本発明において原料として使用される植物ベースのβ−グルカン(天然のβ−グルカン)は、いずれかの植物ベースのβ−グルカン配合物であってよい。典型的に、β−グルカンは、穀物ベースのβ−グルカン、好ましくはオートムギベースまたはオオムギベースのβグルカンである。特に好ましくは、使用される原料は、10%より高いβ−グルカン含量を有するオートムギベースまたはオオムギベースのような穀物ベースのβ−グルカン濃縮物である。例えば、粉砕、ふるいおよび空気分級のような機械的な乾燥方法は、そのような穀物に由来するβ−グルカン濃縮物の調製のために使用することができる。従って、原料は、例えば、前記乾燥方法を用いて粗画分として得られる粉状のオートムギまたはオオムギ繊維濃縮物であってよく、例えば15〜50%のβ−グルカン含量、1〜8%の脂質含量および15〜30%のタンパク質含量を有する。
【0021】
β−グルカンは、交互にβ3−およびβ4−結合するグルコース(D−Glc)残基の直鎖状ポリマーを意味する。好ましいβ−グルカン構造は、式[Glcβ4]t{Glcβ3[Glcβ4]n}m[Glcβ3]l[Glcβ4]kGlcに従い、式中のnは2〜4の整数であり、好ましくh2〜3であり、mは繰り返し単位の数を示す1〜2000の整数であり、tは非還元末端Glcβ4残基を示す0〜4の整数であり、lは還元末端に最も近いGlcβ3を示す0〜1の整数であり、kは還元末端に最も近いGlcβ4単位を示す0〜4の整数であり、好ましくは0〜3であり、最も好ましくは0〜2である。好ましい実施形態において、還元末端のGlcは、水溶液中でαおよびβアノマー形態を有する還元形態であり、[Glcβ4]単位の長さにおいて局在性の変化があるため、nは、直鎖の各位置において異なる値であってもよい。
【0022】
低減された分子サイズを有するβ−グルカンは、分解されたβ−グルカンを意味する。
【0023】
本発明は、特に、本発明による条件下で酸加水分解により好ましくは作られる、分解されたβ−グルカンに向けられている。これらの条件が、特別な任意の加水分解を与え、酵素的に分解されたグルカンよりも異なる組成物を有し、典型的に、Glcβ3Glc単位に対して離れている特別なGlcβ4Glc結合が分解される。それ故、本発明は、Glcβ1,4:Glcβ1,3比が天然のβ−グルカンにおけるGlcβ1,4:Glcβ1,3比と同じである分解されたβ−グルカンも提供する。酸加水分解は、グリコシド結合をランダムに分解するため、保存されたグリコシド結合比を有する分解されたβ−グルカンが得られる。β−グルカンの分解がβ−グルカンの構造的な特性を変化させないことは好都合である。グリコシド結合比のような構造的特性が変化する場合、β−グルカンの健康によい特性が減少し、または完全に喪失さえし得る。それ故、溶解性のような生理学的特性が改善され、構造的特性が変化しない分解されたβ−グルカンが提供される。
【0024】
原料として使用されるβ−グルカン配合物は、典型的に、β−グルカンのみならず例えば不溶性の穀物繊維を含む。
【0025】
そのような粉状の穀物ベースのβ−グルカン濃縮物において、β−グルカンは、分級またはふるいにより得られる粗画分のアリューロンおよびサブアリューロン組織の細胞壁ならびに胚乳に存在し、食品適用のための溶液に抽出されるべきである。本発明による処理において、穀物マトリックス中の天然のβ−グルカンの細胞壁構造は、熱および/またはサーモメカニカルエネルギーを用いた閉鎖系において修飾され、天然のβ−グルカンの分子量は、熱触媒の酸加水分解により分解される。
【0026】
本発明によると、β−グルカンの脱重合は、酸水溶液を用いてβ−グルカン含有粉末を効果的に湿らせること、およびオートムギのふすま濃縮物を望ましい保持時間の間、上昇した温度に維持することにより行われる。
【0027】
水分含量を約25〜40%に上昇させるためにβ−グルカン含有粉末に水を加える場合、粉末様の特性は維持され、自由に流動し、高い空隙率を有し、粒子の凝集はほとんどない。このタイプの材料を、ここでは粉末様形態と呼ぶ。水含量が約40〜70%に上昇する場合、粉末は、高い粘度を有する可塑化塊を作り、自由に流動せず、より高い密度を有し、粉末様形態における粉末よりも低い空隙率になるであろう。このタイプの材料を、ここでは、こね粉塊の形態と呼ぶ。
【0028】
前記酸は、食品加工産業において使用するのに適したいずれの酸であってもよく、好ましくは塩酸またはリン酸である。前記酸は、酸と濃縮物を効率的に混合することによりβ−グルカン含有粉末中に混合され、酸性溶液の濃度は、繊維粒子に均一に吸収される程度である。このステップを、ここでは、前処理(preconditioning)と呼ぶ。前処理された材料は、その後、予め設定された水分含量を維持しながら、温度を上昇させた閉鎖容器中で加熱される。このステップを、ここでは熱処理と呼ぶ。β−グルカンの分子量の減少は、酸の濃度および閉鎖系での選択温度における保持時間に依存する。適切な反応時間の後、粉末を、流動床乾燥機またはハンドドライヤーで乾燥する。
【0029】
前処理のステップにおいて粉末に添加される酸水溶液の量は、材料の全量に基づいて計算した場合に25%〜40%である。
前処理において使用される水溶液の酸濃度は、塩酸の場合は0.3〜1.5%であり、リン酸の場合は1〜4%である。
【0030】
本発明の熱処理方法は、混合しながらまたは混合せず、加熱および圧力調節手段が提供される異なるタイプの閉じられた装置において行うことができる。前記方法が連続的な工程として実施される場合、前記装置は、該装置に異なる試薬を導入する手段および装置から反応生成物を除去する手段を提供されてもよい。適切な装置には、例えば、加圧容器、エキスパンダーおよび押し出し機が含まれる。前処理された粉末が押し出し機または同様の装置中で加熱処理された場合、粉末は、押し出し工程の間、1kgの粉末当り0.3kgの酸水溶液を添加することによりさらに湿らされた。
【0031】
好ましい実施形態において、前記方法は、押し出し装置において押し出すことにより実施される。この場合、適切な加水分解反応器は、例えば二軸スクリュー押し出し機であり、そのパラメータは調節するのが容易である。二軸スクリュー押し出し機のスクリュー構造は、混合ディスクおよび遮断スクリュー部分を具備する。これらは、装置に導入される試薬、すなわちβ−グルカンおよび酸溶液を混合し、それを可塑性の、均質なこね粉塊に圧縮する。混合ディスクおよび遮断スクリュー部分は、好ましくは、押し出し機の充填の程度および、結果的に、可塑性の、均質なこね粉塊と加熱チューブとの間の熱移動ができるだけ効率的であるような態様で配置される。押し出し機のチューブは、加熱だけでなく冷却を含む独立の熱部分を供給されるべきであり、それにより適切な温度プロフィールに調節することができる。
【0032】
原料として使用されるβ−グルカンは、押し出し装置のような加水分解装置に、典型的には乾燥または前処理された粉末形態の供給材料として導入される。前記方法は、好ましくは連続的な方法として行われ、それにより、原料は一定速度(g/分)で装置中に導入される。
【0033】
本発明の加水分解において使用するための適切な酸は、例えばリン酸である。リン酸は、水溶液として加水分解装置に導入され、リン酸の量は、典型的に、2〜15%、好ましくは3〜10%(w/w)の範囲内である。原料の乾燥供給材料、すなわちβ−グルカン濃縮物の後、酸溶液は、連続的な方法で、典型的には一定速度(g/分)で、加水分解装置に導入される。加水分解装置の混合手段は、β−グルカン粉末と酸溶液とを混合し、それを可塑性の、均質なこね粉塊に圧縮する。
【0034】
押し出しとしての加水分解処理は、典型的に、80〜150℃、例えば145℃の温度で行われる。例えば押し出し装置における加熱は、押し出し装置の熱チューブ部分により達成されてよく、混合の間に、熱がチューブ部分から可塑性の塊に移動する。前記塊の粘度は低下し、デンプンはゼラチン化または加水分解され、酵素は不活性になり、タンパク質は変性し、β−グルカンは加水分解される。押し出し機において、加水分解度は、典型的に、機械特異的なエネルギーを用いて制御され得る。
【0035】
加水分解時間、すなわち加水分解装置における滞留時間は、押し出し装置の場合、短く、典型的には0.5〜3分であり、例えば約1分である。滞留時間は、加水分解装置に導入されたマスフローにより調節することができ、前記フローは、乾燥物質材料および酸溶液材料で構成される。加水分解は、典型的に、30〜60%の水含量、好ましくは30〜50%(w/w)の水含量で行われる。この水含量において、穀物マトリックス中に濃縮された天然のβ−グルカンの分子量は、好ましくは、制御された態様で、適切なレベルまで低下させることができる。30〜50%の好ましい水含量が使用される場合、β−グルカンの酵素的脱重合工程の分野で通常使用されるより低い。
【0036】
同様に、押し出し塊の乾燥物質含量は高く、すなわち、30〜70%、好ましくは50〜70%(w/w)の範囲内である。
【0037】
加水分解において使用される圧力は、典型的に、1.5〜10barの範囲内である。
【0038】
加水分解反応は、温度および時間に高度に依存し、結果として、反応の制御は、よい温度および反応器の滞留時間の調節を必要とする。
【0039】
加水分解反応は、停止するか、または冷却することによりその伝播速度を大きく低下させる。冷却は、典型的に、40℃未満の温度まで行われる。加水分解が押し出し機において行われる場合、冷却は、典型的に、特異的な冷却ダイ(cooling die)と共に押し出し機に存在する可塑性のこね粉を冷却することにより行われる。これは、例えば、ダイとして役立つチューブ熱交換体であり、ダイのジャケット中を循環する冷水が冷媒の役割を果たす。
【0040】
加水分解が加圧容器中で行われる場合、加水分解時間は0.5〜48時間である。
【0041】
本発明の方法は、処理時間を短くし、β−グルカンの量を改善する。前記方法は、処理においてコストを生じさせ得る酵素を使用しない。
【0042】
加水分解反応は高度に温度に依存するため、滞留時間を長くすることにより、より低い温度において一定の加水分解度を得ることができ、より短い滞留時間の場合はより高い温度を必要とする。同様に、滞留時間を長くすることにより、より低い酸濃度においても望ましい加水分解効果が達成され得る。
【0043】
加水分解により、分解されたβ−グルカンを含有する産物は、可塑性のこね粉塊の形態で得られ、β−グルカンの分子量の多分散性は、典型的に10未満、好ましくは8未満、特に5未満である。分解されたβ−グルカンの平均分子量Mは、5,000〜360,000g/mol、好ましくは10,000〜100,000g/mol、特に20,000〜50,000g/molの範囲内である。そのように得られた産物は、そのままで、または乾燥した後に、さらなる適用のために使用され得る。β−グルカンに加えて、前記産物は、中でも、加水分解において使用される酸(例えばリン酸または塩酸)および穀物マトリックスの成分を含有する。
【0044】
さらなる処理ステップにおいて、加水分解により得られるβ−グルカン産物は、望ましい順番で、例えば以下に示す手順の1以上に供されてよい:酸溶液を混合すること、塩基で中和すること、乾燥すること、水で抽出すること、乾燥物質を分離すること、活性炭処理を行うこと、新規の酸加水分解を行うこと、熱安定化を行うことおよび/またはエタノールで沈殿させること。この態様において、異なるβ−グルカン産物が得られ、処理方法に依存して固体または液体形態であり、酸加水分解において使用されるリン酸を含有してよく、または中和されてよく、穀物マトリックスの不溶性繊維を含有してよく、または前記不溶性繊維は除去されてよく、そこに含まれるβ−グルカンの分子サイズは、新たな酸加水分解またはエタノール沈殿を用いることによりさらに低減されてよい。そのように得られたβ−グルカン産物は、食品において有用であり、例えば、異なる飲料に混合される飲料成分である。同時に、価値のある副産物が得られ、例えば、動物の飼料または肥料において使用するのに有用である。
【0045】
本発明の実施形態において、塩基での中和は、加水分解反応の後、冷却ステップの前に装置に塩基を導入することにより、加水分解装置中で既に行われてよい。例えば水酸化カルシウムは、塩基として使用され得る。この方法は、特に、例えば加水分解が押し出し機中で行われる場合によく適合する。分解されたβ−グルカンを含有する中和産物が得られ、β−グルカンの平均分子量は上述した範囲内である。前記産物は、穀物の不溶性繊維および他の原料の不溶性成分も含有する。
【0046】
本発明のさらなる実施形態において、加水分解により得られるβ−グルカン産物(中和されてよい)は乾燥され、それにより乾燥されたβ−グルカン産物が得られ、β−グルカンの分子量は上述した範囲内である。得られた産物は、異なる食品への適用に対して有用なβ−グルカンを含有する半完成品である。この産物は、不溶性の穀物繊維、ならびに出発物質として使用される穀物(例えばオオムギ)の固有のフレーバーおよび明るい色が産物中に残っている。
【0047】
本発明の他の実施形態において、加水分解により得られるβ−グルカン産物は、水での抽出に供され、例えば5〜20%の乾燥物質含量である。前記抽出は、典型的に、低い温度(例えば60℃以下)で、強い剪断力のもとで同時に混合することにより行われる。穀物の不溶性繊維を含有する乾燥物質は、中でも、抽出混合物から分離される。分離は、例えば遠心分離またはろ過により行われてよい。β−グルカン溶液が得られ、β−グルカンの平均分子量は上述した範囲内であり、不溶性の繊維を含有しない。分離された不溶性の乾燥物質は、例えば飼料として使用するのに有用である。
【0048】
前記抽出により得られる溶液は、望ましい場合、清澄および活性炭での処理に供されてよい。
【0049】
前記抽出により得られる(任意に清澄された)溶液は、加水分解に使用されるリン酸のような酸を含有し、例えば水酸化カルシウムのような塩基で中和されてよい。中和において、溶液のpHは例えば6.5の最終値まで上昇される。乾燥物質は、例えばろ過により中和混合物から分離される。加水分解酸としてリン酸が使用される場合、得られる乾燥物質は、主にリン酸カルシウムである。分離されたリン酸カルシウムは、回収され、例えば肥料として使用されてよい。乾燥物質のろ過の後に得られるβ−グルカン溶液は、例えばUHT処理により安定化されてよい。中和され、安定化されたβ−グルカン溶液が得られ、β−グルカンの分子量は上述した範囲内であり、不溶性繊維を含有しない。前記溶液は、例えば異なる飲料中に混合される飲料成分として有用である。
【0050】
本発明のさらなる実施形態において、前記方法はさらに、β−グルカンの平均分子量Mを、例えば5,000〜50,000g/mlの範囲にさらに低減するための第2の酸加水分解を含んでよい。この第2の酸加水分解は、通常、上述した水抽出および乾燥物質(不溶性繊維)の分離の後に行われる。前記第2の酸加水分解は、一般的に、上昇した温度(例えば90℃)において、通常の酸加水分解として行われる。加水分解時間は、例えば1時間であってよい。加水分解において使用される酸は、第1の加水分解ステップで使用したものと同じであってよい。
【0051】
そのように得られたさらに加水分解されたβ−グルカン産物は、清澄、中和および固体物質の分離により、上記と同様の方法でさらに処理されてよい。これは、例えばフィルムろ過または蒸発による脱水を伴ってよく、その後に、得られる濃縮物質を、例えばUHT処理で安定化してよい。中和されたβ−グルカン産物が得られ、β−グルカンの平均分子量Mは、典型的に5,000〜50,000g/molの範囲内であり、不溶性繊維を含有しない。前記産物は、例えば異なる飲料中に混合される飲料成分として有用である。
【0052】
そのように得られたβ−グルカン産物において、β−グルカンの平均分子量Mは、例えば20,000g/molのオーダーであり、β−グルカンは、エタノール処理により沈殿させてよい。沈殿は、例えば約80%のエタノールを用いて、同時に混合しながら行われてよい。固体の沈殿物は、溶液から分離され、加熱しながら水で抽出され、不溶性の固体物質が分離される(例えば飼料として使用される)。得られたβ−グルカン含有溶液は、安定化され、β−グルカン溶液を産生し、β−グルカンの平均分子量Mは、典型的に2,000〜20,000g/molの範囲内である。前記産物は、例えば異なる飲料中に混合される飲料成分として有用である。
【0053】
本発明は、加工食品、ベーカリー製品(例えばスナック)、乳製品(例えばヨーグルト)スプレッドならびに健康飲料およびベリージュースのような飲料等の食品の製造における、機能的な補助剤としての本発明の方法により得られるβ−グルカンの使用にも関する。本発明の方法により得られるβ−グルカン産物を機能的な補助剤として使用することによる飲料および他の食品の製造は、既知の態様で実施される。
【0054】
分子量を含むβ−グルカンの特徴は、本発明の方法により製造されるβ−グルカン配合物が飲料のような食品に混合された場合にも不変のままであることが分かった。β−グルカンの溶解性が改善されたこと、すなわち、本発明の方法により製造されるβ−グルカン配合物を使用することにより、より多くのβ−グルカンを飲料中に溶解させることができることも分かった。それ故、本発明の方法を使用した場合、多量の植物ベースのβ−グルカンを溶解形態にすることができる。β−グルカン含量が5%まで上昇した飲料が製造された。
【0055】
本発明はさらに、5,000〜360,000g/molの範囲内の平均分子量Mを有する分解されたβ−グルカンを提供し、そのGlcβ1,4:Glcβ1,3比は、天然のβ−グルカンのGlcβ1,4:Glcβ1,3比と同じであり、好ましくは、Glcβ1,4:Glcβ1,3比は2〜3:1である。分解されたβ−グルカンは、好ましくは、10,000〜100,000g/molの範囲内の平均分子量Mを有し、好ましくは20,000〜50,000g/molの範囲内であり、分解されたβ−グルカンの分子量の多分散性M/Mは10未満であり、好ましくは8未満であり、特に5未満である。
【0056】
以下の実施例は、説明することを意図しており、本発明を限定するものではない。
以下の出発物質、装置および一般的な方法は、実施例において使用された。
【0057】
試験は、APV19/25二軸スクリュー押し出し機(製造者APV)において行われた。4つの異なるβ−グルカン濃縮物が、押し出し機に導入された:(1)22%のβ−グルカン含量を有するβ−グルカン含有粉末(製造者Raisio Group)、(2)VTT方法(WO/2008/096044に記載されている)により製造された33%のβ−グルカン含量を有するβ−グルカン含有粉末、(3)50%のβ−グルカン含量を有するビスコファイバー(Viscofiber)繊維濃縮物(製造者Cevena)、(4)22%のβ−グルカン含量を有するポリセル(Polycell)オオムギ繊維(製造者Polycell)。押し出し機における滞留時間は、1.1〜3.3分であった。
【0058】
押し出し機から得られるβ−グルカンの分子量は、分子の重量に関して重点を置いた平均分子量Mおよび分子の数に関して重点を置いた平均分子量Mとして評価された。これらは、特に言及しない限り、プルラン標準に基づいて、サイズ排除クロマトグラフィーにより評価された。
【0059】
飲料製品は、押し出し機により得られた加水分解されたβ−グルカン含有繊維塊を、水または0.4重量%リン酸に7〜20重量%の濃度で懸濁することにより製造された。抽出における水溶液のpHは、2.5〜4であった。
【0060】
そのように得られた混合物は、剪断刃を具備する混合機で15〜30秒間混合された。β−グルカン画分は、遠心力(2,000〜3,000G)により、不溶性の殻等の物質から分離された。得られた水溶液画分は、紙フィルター等を通してろ過することにより、例えば、ワットマン3フィルターペーパーを通した水吸引でろ過することにより、浄化された。溶液中のリン酸は、Ca(OH)を用いて沈殿させ、遠心分離またはろ過により溶液から分離された。
【0061】
ろ過されたβ−グルカン溶液の量は、押し出された繊維塊の1.5〜5倍であった。可溶性の乾燥物質のβ−グルカンの割合は約50%であり、溶液中のその濃度は1〜5%であってよい。
【実施例】
【0062】
例1
Raisio Yhtymaから入手した22%のβ−グルカン含量を有するオートムギ繊維を、出発物質として使用した。粉末を押し出し機に導入する速さは、前処理しない試験において20 g/分であった。オートムギ繊維は、オートムギ繊維1 kg当り0,3 kgの8% H3PO4を用いて40℃で1時間、Auran Metalli LTD.により製造されたVTT前処理装置において前処理された。チューブの供給ポイントにおける加熱要素の温度は85℃であり、注入口からダイへの次の3つの加熱要素の温度は変化させた。全ての試験において、押し出し機のスクリューの回転速度は75rpmとした。押し出し物は、熱交換体ダイで冷却した。
【0063】
試験条件は、表1に示す。温度T1→T4は、ダイから開始する押し出し機のチューブ加熱領域である。押し出し物における乾燥物質含量は、約50〜57%であった。前処理されたオートムギ繊維の供給は、28g/分であり、8% H3PO4溶液の量は12 g/分であった。
【0064】
表1は、押し出しパラメータの関数として得られる押し出し物のβ−グルカンの分子量分布を示す。
【表1】

【0065】
例2
以下の加水分解産物は、VTT法(WO/2008/096044)により製造されたβ−グルカン含有粉末を使用した。そのβ−グルカン含量は33%であり、β−グルカンの分子量(M)950 000 g/molであった。結果は表2に示し、β−グルカン含有粉末は、はじめに8% H3PO4 溶液で前処理され、0.3 g / g繊維濃縮物の量で添加された。前処理されたオートムギの供給は24 g /分であり、8% H3PO4溶液12 g/分の量であった。
【表2】

【0066】
β−グルカンの分子量をさらに減少させるために、前処理されたβ−グルカン含有粉末(33%β−グルカン)を前処理し(1 gのオートムギ繊維当り0.3 gの8% H3PO4、40℃、1時間)、表3において説明するようにより濃縮された酸で押し出した。前処理されたオートムギ繊維の供給は、24 g /分であった。H3PO4溶液の量および濃度は、12〜3 ml/分および8%〜32%までそれぞれ変化させ、温度は130または155℃とした。
【表3】

【0067】
例3
加水分解される第3のβ−グルカン含有物質は、50%のβ−グルカン含量の商業的なCevene Viscofiber繊維であった。2つの試験は、前記繊維を用いて行った。粉状の繊維原料は、20 g/分の速さで押し出し機に導入され、酸溶液の供給は20 ml/分であった(8%リン酸)。押し出しは、前処理なしで行った。
【0068】
以下の表4において、温度T1→T4は、ダイから開始する押し出し機のチューブ加熱領域である。押し出し物中の乾燥物質含量は、約50%であった。
【表4】

【0069】
値は、プルラン標準に基づいて、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定した。
【0070】
例4
加水分解される第4の繊維は、22%のβ−グルカン含量を有し、200,000のMを有するPolycellオオムギ繊維であった。
【0071】
粉状の繊維原料を20 g/分の速さで押し出し機に導入し、4%リン酸の供給速度は20 ml/分とした。前処理は行わなかった。
【0072】
以下の表5において、温度T1→T4は、ダイから開始する押し出し機のチューブ加熱領域である。押し出し物における乾燥物質含量は、約50%であった。
【0073】
表4の分子量は、カラムの後に蛍光検出器と共にカルコフロール染色(calco-fluor coloring)を用いることによるサイズ排除クロマトグラフィーにより決定した。分子量決定のための検量線は、既知のβ−グルカン標準を用いることにより行い、その分子サイズは、レーザー光散乱により決定した。
【表5】

【0074】
例5
VTT法(WO/2008/096044)により製造されたオートムギ繊維は、酸溶液で前処理し、加圧した容器中において、温度を上昇させ、機械的なエネルギーなく、可塑化させることなく、粉末として熱処理した。
【表6】

【0075】
例6
β−グルカン試料のNMR分析
15 kDのβ−グルカン画分は、本発明の方法に従って調製した。予備的な分析は、かなりの量のデンプンを含有することを示した。可溶性の成分のNMR分析を単純化するために、デンプンはアミログルコシダーゼを用いた消化により除去され、その後、透析により低いMW産物を除去し、以下に示すように得た:100 mgのβ−グルカンは10 mlの50 mM Na-酢酸塩にpH 5.0において溶解された。16 Uのアミログルコシダーゼ(Aspergillus niger, Calbiochem)が添加され、+37℃で一晩反応を行った。反応は、5分間煮沸することにより停止させた。低分子量物質は、MWCO 2000透析チューブを用いて水に対して透析することにより除去された。NMR分析の前に、試料は、BondElut C18 (Varian, Inc.)における固相抽出によりさらに精製された。
【0076】
主要なブランドのβ−グルカン試料は、比較物質を調製するために同様に処理された。このβ−グルカンは、セルロース型のエンドグルカナーゼを用いた酵素加水分解により調製された。
【0077】
β−グルカン画分のNMRスペクトルを図1に示す。β−グルカン鎖残基(Glcβ1,4およびGlcβ1,3)は、図に示されているような特徴的な位置において共鳴する。シグナル強度を比較することにより、β−グルカン画分における単位の相対的な量を見積もることが可能である。このタイプの分析は、酸加水分解された物質(パネルA)が約2.5:1のGlcβ1,4:Glcβ1,3比を示す一方で、酵素処理により製造された主要なブランドのβ−グルカンは、1:1に近いGlcβ1,4:Glcβ1,3比を示すことを示す。
【0078】
図1における帰属は、二次元のNMR分析により検証した。COSY試験は、4.75ppmにおけるGlcβ1,3 H-1 シグナルが3.37 ppm (Glcβ1,3 H-2シグナル)においてクロスピークを有することを示した。しかしながら、Glcβ1,4 H-1シグナルは、3.51 ppmおよび3.35 ppmに2つのクロスピークを示し、2つの同一でないH-2単位を示す。これらは、Glcβ1,4またはGlcβ1,3単位により置換されるGlcβ1,4残基から生じる。Glcβ1,3Glcβ1,4 配列において、Glcβ1,4残基は3.51ppmにH-2シグナルを示し、一方、4-置換Glcβ1,4単位 H-2 シグナル残基は3.35 ppmであった。
【0079】
両方のスペクトルにおいて、Glcβ1,4 H-1シグナルと部分的に重なっている主要なシグナルは、キシランに帰属した。これらの画分におけるキシロースの存在は、物質の酸全体の加水分解により検証され、続いて、高pH陰イオン交換クロマトグラフィーによる単糖分析により検証された。
【0080】
参考文献
Tosh, S.M. et al., Gelation characteristics of acid-hydrolyzed oat β-glucan solutions solubilized at a range of temperatures, Food Hydrocolloids, Vol. 17, No 4., 523-527, 2003.
Roubroeks, J.P. et al., Molecular weight, structure and shape of oat (1→3),(1→4)-β-D-glucan fractions obtained by enzymatic degradation with (1→4)-β-D-glucan 4-glucanohydrolase from Trichoderma reesei. Carbohydrate Polymers, Vol. 46, No 3., p. 275-285, 2001.
Johansson, L., et al., Hydrolysis of β-glucan, Food Chemistry, Vol. 97, No 1., p. 71-79, 2006.
WO 2004/086878 A2, Improved dietary fiber containing materials comprising low molecular weight glucan, Zheng, G-H. et al., Cargill Incorporated, publ. 14 October 2004.
WO 2005/12051 A1, Method for extracting a cereal constituent, Lov, J. et al., Oy Glubikan Ab, publ. 22 December 2005.
US 6 210 722 B1, Extruded intermediates containing a soluble fiber and food products containing same, Wullschleger, R. D. et al., Kellog Company, granted 3 April 2001.
US 2004/0001907 A1, Preparation of high viscosity β-glucan concentrates, Vasanthan et al., publ. 1 January 2004.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物ベースのβ−グルカンを、制御された態様で減少した分子サイズに分解する方法であって、β−グルカンを、粉末様形態またはこね粉塊の形態で、閉じられた空間において、圧力下、酸溶液の存在下、上昇した温度での加水分解に供し、その後冷却することにより、分解されたβ−グルカン産物を得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記分解されたβ−グルカンの分子量の多分散性M/Mは10未満であり、好ましくは8未満であり、特に5未満であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記分解されたβ−グルカンの平均分子量Mは、5,000〜360,000g/molの範囲内であり、好ましくは10,000〜100,000g/molの範囲内であり、特に20,000〜50,000g/molの範囲内であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記β−グルカンは、植物ベースであり、好ましくはオートムギベースまたはオオムギベースのβ−グルカンであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記β−グルカンは、10%より高いβ−グルカン含量を有するβ−グルカン濃縮物の形態であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、押し出しによる加水分解または加圧容器中での加水分解を行うことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、前記酸溶液はリン酸溶液であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記酸の濃度は2〜15%、好ましくは3〜10%であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法であって、前記上昇した温度は80〜150℃であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法であって、前記加水分解の時間は、押し出しの場合0.5〜3分であり、加圧容器の場合0.5〜48時間であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記加水分解は30〜70%、好ましくは40〜60%の乾燥物質含量で行うことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法であって、前記加水分解は30〜60%、好ましくは30〜50%の水含量で行うことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法であって、前記圧力は1.5〜10barの範囲内であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法であって、前記冷却は40℃未満の温度まで行うことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法であって、前記方法は、冷却の前に塩基で中和し、中和され且つ分解されたβ−グルカン産物を得ることをさらに含んでなることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、得られたβ−グルカンを、望ましい順序で以下の方法の1以上にさらに供することを特徴とする方法:酸溶液を混合すること、塩基で中和すること、乾燥すること、水で抽出すること、固体物質を分離すること、分級すること、活性炭処理を行うこと、新たな酸加水分解を行うこと、熱安定化を行うことおよび/またはエタノールで沈殿させること。
【請求項17】
請求項15または16に記載の方法であって、得られたβ−グルカン産物を乾燥することにより、分解されたβ−グルカンを含有する乾燥産物を得ることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15または16に記載の方法であって、得られたβ−グルカン産物を水での抽出に供し、固体物質を分離することにより、分解されたβ−グルカンを含有し、不溶性繊維を含有しない溶液を得ることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記β−グルカン溶液を乾燥することにより、分解されたβ−グルカンを含有し、不溶性繊維を含有しない乾燥産物を得ることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項16および19に記載の方法であって、前記β−グルカン溶液を塩基での中和に供し、固体物質を分離することにより、不溶性繊維を含有しない中和されたβ−グルカン溶液を得ることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法であって、前記得られた産物中の分解されたβ−グルカンの平均分子量Mは、5,000〜360,000g/molの範囲内であり、好ましくは10,000〜100,000g/molの範囲内であり、特に20,000〜50,000g/molの範囲内であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項18または20に記載の方法であって、前記β−グルカン溶液を、酸溶液を用いた新たな加水分解に供することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記加水分解により得られたβ−グルカン産物を、塩基での中和および固体物質の分離に供することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記中和により得られたβ−グルカン溶液を脱水に供することを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項18、20または23に記載の方法であって、前記得られた産物を熱安定化することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項20、24または25に記載の方法であって、前記β−グルカン産物をエタノールで沈殿させ、沈殿したβ−グルカンを分離し、それを水中で抽出することを特徴とする方法。
【請求項27】
食品の製造における機能的な補助剤としての、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法により得られるβ−グルカン産物の使用。
【請求項28】
請求項27に記載の使用であって、前記食品は飲料であることを特徴とする使用。
【請求項29】
5,000〜360,000g/molの範囲内の平均分子量Mを有する分解されたβ−グルカンであって、Glcβ1,4:Glcβ1,3比は、天然のβ−グルカンにおけるGlcβ1,4:Glcβ1,3比と同じであることを特徴とする分解されたβ−グルカン。
【請求項30】
請求項29に記載の分解されたβ−グルカンであって、前記Glcβ1,4:Glcβ1,3比は2〜3:1であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項29または30に記載の分解されたβ−グルカンであって、前記平均分子量Mは、10,000〜100,000g/molの範囲内であり、好ましくは20,000〜50,000g/molの範囲内であることを特徴とする分解されたβ−グルカン。
【請求項32】
請求項29〜31のいずれか1項に記載の分解されたβ−グルカンであって、分子量の多分散性M/Mが10未満であり、好ましくは8未満であり、特に5未満であることを特徴とする分解されたβ−グルカン。

【図1】
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【公表番号】特表2011−506736(P2011−506736A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538820(P2010−538820)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050768
【国際公開番号】WO2009/077659
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(501374390)バルティオン テクニリーネン トゥトキムスケスクス (16)
【出願人】(510172996)
【氏名又は名称原語表記】Glykos Finland Oy
【住所又は居所原語表記】Viikinkaari 6, FI−00790 Helsinki, Finland
【Fターム(参考)】