説明

β−グルカン含有ゲル及びその製造方法

【課題】 食品素材として使用可能な新規のβ−グルカン含有ゲル及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 β−1,3−1,4−グルカンと水とを含有する混合物を40〜100℃で加熱する加熱工程を含み、混合物に含有されるβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量が20万Da以上である、β−グルカン含有ゲルの製造方法を提供する。また、この製造方法により得ることができるβ−グルカン含有ゲルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β−グルカン含有ゲル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の機能性成分としてβ−グルカンが注目され、β−グルカンを含有する食品素材が開発されている。例えば、特許文献1には、β−グルカン及びガムを含有する水性溶液が高い粘性を示し、食品に利用可能であることが開示されている。
【特許文献1】国際公開第2006/002539号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ゲルは、成形性、保水性、食感等の点で食品素材として有用である。β−グルカンを含有するゲル状食品素材に対する需要は高いと考えられるが、そのような食品素材に関しては、未だ、消費者の多様な需要を満たすのに十分な選択肢が存在するとはいえないのが実情である。
【0004】
そこで、本発明は、食品素材として使用可能な新規のβ−グルカン含有ゲル及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、β−1,3−1,4−グルカンと水とを含有する混合物を40〜100℃で加熱する加熱工程を含み、前記混合物に含有されるβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量が20万Da以上である、β−グルカン含有ゲルの製造方法を提供する。ここで、「ゲル」とは、水を分散媒とする分散系であって、流動性を失ったものをいう。
【0006】
本発明の方法に従えば、重量平均分子量20万Da以上のβ−1,3−1,4−グルカンと水とを混合し、これを40〜100℃で加熱することによって、均質なβ−グルカン含有ゲルを得ることができる。
【0007】
本発明の方法は、加熱工程の後に、上記混合物を冷却する冷却工程を含むことが好ましい。冷却工程を実施することにより、β−グルカン含有ゲルをより迅速に得ることが可能となる。
【0008】
上記混合物中のβ−1,3−1,4−グルカンの濃度は1%(w/v)以上であることが好ましい。
【0009】
また、上記混合物はタンパク質を含有することが好ましい。含有されるタンパク質としては、例えば、動物由来又は植物由来のタンパク質が挙げられる。動物由来のタンパク質としては、例えば、牛乳タンパク質が挙げられ、植物由来のタンパク質としては、例えば、大豆タンパク質、エンドウタンパク質が挙げられる。
【0010】
本発明はまた、上記製造方法により得ることができるβ−グルカン含有ゲルを提供する。
【0011】
本発明のゲルに含有されるβ−グルカンは、イネ科植物(特に大麦、オート麦)に多く含有されるβ−1,3−1,4−グルカンであり、生体に対する安全性は確立されている。本発明のゲルは、生体に対して安全であり、また、成形性、保水性、耐熱性、耐冷凍性、弾性(食感)等の点で優れていることから、食品素材として使用するのに好適である。
【0012】
すなわち、本発明はまた、上記ゲルを含む食品を提供する。本発明の食品は、β−グルカンの機能性が付与され、かつ保水性、耐熱性、耐冷凍性、弾性(食感)等の点で優れた食品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、食品素材として使用可能な新規のβ−グルカン含有ゲル及びその製造方法が提供される。また、そのようなゲルを含む食品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0015】
〔β−グルカン含有ゲルの製造方法〕
本発明のβ−グルカン含有ゲルの製造方法は、β−1,3−1,4−グルカンと水とを含有する混合物を40〜100℃で加熱する加熱工程を含む。
【0016】
上記混合物の加熱温度は40〜100℃であればよいが、より均質なゲルを得るという観点から、混合物の加熱温度は、例えば、50〜95℃が好ましく、60〜90℃がより好ましく、70〜90℃が更に好ましい。
【0017】
また、より均質なゲルを得るという観点から、上記混合物は、加熱開始直前に攪拌等により均質化しておくのが好ましい。
【0018】
加熱工程の後には、上記混合物を冷却する冷却工程を実施することが好ましい。冷却工程を実施することにより、β−グルカン含有ゲルをより迅速に得ることが可能となる。冷却後の温度は通常10〜40℃(10℃以上40℃未満)であるが、この範囲に限定されるものではない。冷却方法としては、例えば、混合物を10〜40℃の雰囲気下に放置する方法、混合物が入った容器を10〜40℃の水中に浸漬する方法が挙げられる。
【0019】
上記混合物に含有されるβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量は20万Da以上である。このようなβ−1,3−1,4−グルカンは、例えば、イネ科植物(特に大麦、オート麦)を粉砕し、これをα−アミラーゼで処理し、得られたシロップを遠心分離、透析、HPLC等で分画・精製することにより得ることができる。また、市販のものを使用してもよい。
【0020】
上記混合物中のβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量は、例えば、30万Da以上が好ましく、40万Da以上がより好ましく、50万Da以上が更に好ましい。
【0021】
上記混合物中のβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量は、公知の方法(例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、ゲル濾過クロマトグラフィー(GFC))により測定することができる。また、重量平均分子量の決定に用いる検量線は、例えばプルランの標準品を用いて作成することができる。
【0022】
上記混合物中のβ−1,3−1,4−グルカンの濃度は、例えば、1%(w/v)以上が好ましく、2%(w/v)以上がより好ましく、3%(w/v)以上が更に好ましい。
【0023】
上記混合物はタンパク質を含有することが好ましい。混合物中のタンパク質の濃度は、例えば、1%(w/v)以上が好ましく、2%(w/v)以上がより好ましく、3%(w/v)以上が更に好ましく、4%(w/v)以上が更に好ましい。
【0024】
上記タンパク質としては、動物由来又は植物由来のタンパク質が挙げられる。動物由来のタンパク質としては、例えば、牛乳タンパク質[例えば、カゼイン、乳清タンパク質(β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、ラクトフェリン等)]が挙げられ、植物由来のタンパク質としては、例えば、大豆タンパク質、エンドウタンパク質が挙げられる。また、上記混合物に含有されるタンパク質としては、例えば、等電点3.0〜6.0のもの[例えば、カゼイン(等電点:約4.6)、大豆タンパク質(等電点:約4.5)、エンドウタンパク質(等電点:約4.0)]が好ましい。
【0025】
上記混合物のpHは通常2〜11であり、好適なpHとしては、例えば、3〜10が挙げられ、より好適なpHとしては、例えば、3〜9、3〜8、4〜9が挙げられ、更に好適なpHとしては、例えば、4〜8、4〜7、4〜6、5〜8、5〜7、5〜6が挙げられる。
【0026】
〔β−グルカン含有ゲル〕
上記製造方法によりβ−グルカン含有ゲルを得ることができる。本発明のゲルは、β−1,3−1,4−グルカンを含有し、場合により、タンパク質を更に含有する。
【0027】
本発明のゲルは、生体に対して安全であり、また、成形性、保水性、耐熱性、耐冷凍性、弾性(食感)等の点で優れていることから、食品(特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品、健康食品、機能性食品等)又は食品添加物の材料として使用することができる。そのような食品としては、例えば、水産模造品(鯨ベーコン、カニ風味かまぼこ等)、加工豆腐、ゼリー等が挙げられる。なお、食品は、ヒト用食品に限らず、非ヒト動物用食品であってもよい。
【0028】
本発明のゲルはまた、医薬品(ゲル剤等)又は医薬品添加物(賦形剤、結合剤、崩壊剤等)の材料として使用することもできる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「%」は「%(w/v)」を表すものとする。また、「室温」は10〜40℃を意味するものとする。
【0030】
〔実施例1〕
大麦全粒粉10gを蒸留水250mLに溶解し、耐熱性α−アミラーゼ1.25gを添加して、100℃で90分間保持した。次いで、8000rpmで20分間遠心分離し、得られた上清に4倍量のメタノールを加えて、室温で1時間保持した。最後に、8000rpmで10分間遠心分離し、得られた沈殿を凍結乾燥してβ−1,3−1,4−グルカンを得た。
【0031】
β−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約100万Daであった。β−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。GPCの条件は下記の通りである。ポンプは2台(ポンプA、B)使用し、ポンプA、Bには、それぞれ溶離液A、Bを流した。サンプルとしては、上記β−1,3−1,4−グルカン10mgを水10mLに溶解した溶液を0.45μmのフィルターで濾過して得た濾液を使用した。重量平均分子量の決定は、プルランの標準品(Shodex社)を用いて作成した検量線に基づいて行った。
【0032】
・オーブン温度:40℃
・カラム:Shodex OHPak SB−805HQ(分子量400万排除)
+ Shodex OHPak SB−804HQ(分子量100万排除)
+ Shodex OHPak SB−803HQ(分子量10万排除)
・ミキシングコイル:内径0.5mm,空寸体積0.5mLのステンレスチューブ
・溶離液A:超純水
流量:1mL/分
・溶離液B:超純水(RI分析時);カルコフロー溶液(FL分析時)
流量:1mL/分
・HPLC装置:島津製作所 LC−10 Series
システムコントローラー:SCL−10Avp
ポンプ:LC−10ATvp
オーブン:CTO−10ACvp
オートサンプラー:SIL−10ADvp
検出器:RID−10A,RF−10AxL
・解析ソフトウェア:Class−VP,Class−VP用GPC解析ソフトウェア
・検出器:示差屈折率(RI)検出器(温度:40℃);蛍光(FL)検出器(励起波長360nm,蛍光波長420nm)
・注入量:100μL
・分析時間:40分
【0033】
得られたβ−1,3−1,4−グルカン0.3gと、無調整豆乳(マルサンアイ社、有機豆乳)10mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、無調整豆乳は4.7%の大豆タンパク質を含有していた。また、混合物のpHは6.4であった。
【0034】
〔実施例2〕
大麦全粒粉10gを蒸留水250mLに溶解し、耐熱性α−アミラーゼ1.25gを添加して、100℃で90分間保持した。次いで、60℃に冷却した後、β−グルカナーゼ800μLを添加して、8000rpmで20分間遠心分離し、得られた上清に4倍量のメタノールを加えて、室温で1時間保持した。最後に、8000rpmで10分間遠心分離し、得られた沈殿を凍結乾燥してβ−1,3−1,4−グルカンを得た。実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。
【0035】
得られたβ−1,3−1,4−グルカン0.3gと、無調整豆乳(マルサンアイ社、有機豆乳)10mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、無調整豆乳は4.7%の大豆タンパク質を含有していた。また、混合物のpHは6.4であった。
【0036】
〔比較例1〕
実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンを得、このβ−1,3−1,4−グルカン2gを80℃の水200mLに溶解した。そして、60℃に冷却した後、β−グルカナーゼ0.2mLを添加し、凍結乾燥して低分子化β−1,3−1,4−グルカンを得た。実施例1と同様にして低分子化β−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約10万Daであった。
【0037】
得られた低分子化β−1,3−1,4−グルカン0.3gと、無調整豆乳(マルサンアイ社、有機豆乳)10mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゾル(高粘性液体)を得た。なお、無調整豆乳は4.7%の大豆タンパク質を含有していた。また、混合物のpHは6.4であった。
【0038】
〔実施例3〕
実施例2と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンを得た。実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。
【0039】
得られたβ−1,3−1,4−グルカン0.3gと、無脂肪牛乳(森永乳業社、「おいしい無脂肪乳」)10mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、無脂肪牛乳は4.4%の牛乳タンパク質を含有していた。また、混合物のpHは6.7であった。
【0040】
〔実施例4〕
実施例2と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンを得た。実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。
【0041】
得られたβ−1,3−1,4−グルカン0.3gと、カゼイン1.5gと、蒸留水10mLと、硫酸カルシウム1.5gと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、混合物のpHは5.0であった。
【0042】
〔実施例5〕
実施例2と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンを得た。実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。
【0043】
得られたβ−1,3−1,4−グルカン0.3gと、カゼイン1.5gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)10mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、混合物のpHは5.0であった。
【0044】
〔実施例6〕
実施例2と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンを得た。実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。
【0045】
得られたβ−1,3−1,4−グルカン0.3gと、エンドウタンパク質0.9gと、蒸留水10mLと、硫酸カルシウム1.5gと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、混合物のpHは5.4であった。
【0046】
〔実施例7〕
実施例2と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンを得た。実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。
【0047】
得られたβ−1,3−1,4−グルカン0.3gと、エンドウタンパク質0.9gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)10mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、混合物のpHは5.6であった。
【0048】
〔実施例8〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)4.2mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.3であった。
【0049】
〔比較例2〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)4.2mLと、を室温で混合し、混合物をそのまま室温で放置してβ−グルカン含有ゾル(高粘性液体)を得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.3であった。
【0050】
〔実施例9〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、カゼイン0.075gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)4.2mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.2であった。
【0051】
〔比較例3〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、カゼイン0.075gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)4.2mLと、を室温で混合し、混合物をそのまま室温で放置してβ−グルカン含有ゾル(高粘性液体)を得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.2であった。
【0052】
〔実施例10〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、カゼイン0.15gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)4.2mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.1であった。
【0053】
〔比較例4〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、カゼイン0.15gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)4.2mLと、を室温で混合し、混合物をそのまま室温で放置してβ−グルカン含有ゾル(高粘性液体)を得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.1であった。
【0054】
〔実施例11〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)2.5mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.3であった。
【0055】
〔比較例5〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)2.5mLと、を室温で混合し、混合物をそのまま室温で放置してβ−グルカン含有ゾル(高粘性液体)を得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.3であった。
【0056】
〔実施例12〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、カゼイン0.075gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)2.5mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.2であった。
【0057】
〔比較例6〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、カゼイン0.075gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)2.5mLと、を室温で混合し、混合物をそのまま室温で放置してβ−グルカン含有ゾル(高粘性液体)を得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.2であった。
【0058】
〔実施例13〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、カゼイン0.15gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)2.5mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.1であった。
【0059】
〔比較例7〕
β−1,3−1,4−グルカン(Sigma Aldrich社)0.1gと、カゼイン0.15gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)2.5mLと、を室温で混合し、混合物をそのまま室温で放置してβ−グルカン含有ゾル(高粘性液体)を得た。なお、実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約50万Daであった。また、混合物のpHは5.1であった。
【0060】
〔比較例8〕
カゼイン0.15gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)2.5mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゾル(高粘性液体)を得た。なお、混合物のpHは5.1であった。
【0061】
〔比較例9〕
カゼイン0.15gと、100mMリン酸緩衝液(pH5.3)2.5mLと、を室温で混合し、混合物をそのまま室温で放置してβ−グルカン含有ゾル(高粘性液体)を得た。なお、混合物のpHは5.1であった。
【0062】
〔実施例14〕
大麦シロップ(大麦粉砕物を液化・糖化して得たシロップ)100gを蒸留水700mLに分散させた分散液を80℃で60分間加熱し、100%トリクロロ酢酸350mLを加えて、18000rpmで30分間遠心分離した。得られた上清にアセトン1050mLを加えて、8000rpmで30分間遠心分離した。得られた沈殿に熱水200mLを加え、これを、透析膜(Wako社、ダイアライシスメンブラン27)を用いて一昼夜透析した後、凍結乾燥してβ−1,3−1,4−グルカンを得た。実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約75万Daであった。
【0063】
得られたβ−1,3−1,4−グルカン0.6gと、無調整豆乳(マルサンアイ社、有機豆乳)10mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、無調整豆乳は4.7%の大豆タンパク質を含有していた。また、混合物のpHは6.5であった。
【0064】
〔実施例15〕
実施例14と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンを得た。実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約75万Daであった。
【0065】
得られたβ−1,3−1,4−グルカン0.3gと、無調整豆乳(マルサンアイ社、有機豆乳)10mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、無調整豆乳は4.7%の大豆タンパク質を含有していた。また、混合物のpHは6.5であった。
【0066】
〔実施例16〕
実施例14と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンを得た。実施例1と同様にしてβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量は約75万Daであった。
【0067】
得られたβ−1,3−1,4−グルカン0.6gと、蒸留水10mLと、を室温で混合し、混合物を80℃で加熱した。加熱後、混合物を室温で放置してβ−グルカン含有ゲルを得た。なお、混合物のpHは6.7であった。
【0068】
以上の実施例により、本発明の方法を使用すればβ−グルカン含有ゲルが得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のβ−グルカン含有ゲル及びその製造方法は、種々の食品の製造に利用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−1,3−1,4−グルカンと水とを含有する混合物を40〜100℃で加熱する加熱工程を含み、
前記混合物に含有されるβ−1,3−1,4−グルカンの重量平均分子量が20万Da以上である、β−グルカン含有ゲルの製造方法。
【請求項2】
加熱工程の後に、前記混合物を冷却する冷却工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物中のβ−1,3−1,4−グルカンの濃度が1%(w/v)以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物がタンパク質を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物が、動物由来又は植物由来のタンパク質を含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が牛乳タンパク質を含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が大豆タンパク質又はエンドウタンパク質を含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるβ−グルカン含有ゲル。
【請求項9】
請求項8に記載のゲルを含む食品。


【公開番号】特開2010−63407(P2010−63407A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232614(P2008−232614)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)
【Fターム(参考)】