説明

β−ヒドロキシエーテル類の製造方法

【課題】工業的に有利なβ−ヒドロキシエーテル類の製造方法を提供すること。
【解決手段】式(1)


(式中、RおよびRは、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。YおよびZは相異なる1価のアニオンを表す。また、0≦x≦1である。)
で示されるアルキル置換イミダゾリウム塩の存在下に、エポキシ化合物とフェノール類とを反応させることを特徴とするβ−ヒドロキシエーテル類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β−ヒドロキシエーテル類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
β−ヒドロキシエーテル類は、医農薬中間体や高分子材料(例えばPET等)をはじめとする各種化学品等として重要な化合物である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
β−ヒドロキシエーテル類を合成する方法としては、エポキシ化合物とフェノール類とを反応せしめる方法が知られており、一般的には酸触媒や塩基触媒の存在下に実施するが、かかる触媒を用いる方法は、副生物が多く生成したり、酸や塩基に不安定な化合物には適用できなかったりするという点で問題があった(例えば、非特許文献1参照。)。そのため、中性に近い条件下での合成法として、例えば、ポリエチレングリコールを触媒とする方法(例えば、非特許文献2参照。)、フッ化セシウムを触媒とする方法(例えば、非特許文献3参照。)、特定の溶媒存在下にフッ素の塩を触媒とする方法(例えば、特許文献2参照。)等が報告されている。しかしながら、ポリエチレングリコールを用いる方法では収率が充分ではないという点で、フッ化セシウム等のフッ素の塩を用いる方法では使用可能なエポキシ化合物が限定されたり、回収の困難な非プロトン性極性溶媒が必要であったりする点で、いずれも工業的に満足できるものとはいえなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平3−34951号公報
【特許文献2】特許第3376896号公報
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,73,1881(1951)
【非特許文献2】Tetrahedron,50,10483(1994)
【非特許文献3】Terahedron Lett.,31,1723(1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、工業的により有利なβ−ヒドロキシエーテル類の製造方法を開発すべく、鋭意検討したところ、エポキシ化合物とフェノール類との反応を、アルキル置換イミダゾリウム塩の存在下に実施すれば、β−ヒドロキシエーテル類が効率よく生成することを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、式(1)
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。YおよびZは相異なる1価のアニオンを表す。また、0≦x≦1である。)
で示されるアルキル置換イミダゾリウム塩の存在下に、エポキシ化合物とフェノール類とを反応させることを特徴とするβ−ヒドロキシエーテル類の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、原料として広範なエポキシ化合物が使用可能であり、また、回収の困難な非プロトン性極性溶媒を用いることなく、β−ヒドロキシエーテル類を効率よく製造することができるため、工業的に有利である。また、本発明のアルキル置換イミダゾリウム塩は、それ自体がイオン性液体の性質も有しているため回収・リサイクル使用が容易であり、さらに、上記式(1)においてxを適宜選択することにより融点を室温以下にすることもできるため幅広い温度条件で反応を実施可能である等、工業的な取り扱いや環境の面においても有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、上記式(1)で示されるアルキル置換イミダゾリウム塩(以下、イミダゾリウム塩(1)と略記する。)について説明する。
【0009】
式中、RおよびRは、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。
【0010】
ここでアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。かかるアルキル基上に有していてもよい置換基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜20の置換されていてもよいアルコキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基などの炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等の炭素数6〜20の置換されていてもよいアリールオキシ基;フッ素原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜20の置換されていてもよいアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアリールカルボニル基;カルボキシ基;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基、フェナシル基、2−カルボキシエチル基等が挙げられる。
【0011】
およびZは相異なる1価のアニオンを表し、それぞれ、例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;テトラフルオロホウ酸アニオン等のホウ酸イオン類;ヘキサフルオロリン酸アニオン等のリン酸イオン類;ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン等のアンチモン酸イオン類;トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等のスルホン酸イオン類;炭酸水素イオン;酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン等のカルボン酸イオン類;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオン等のアミドイオン類;硝酸イオン;等が挙げられる。後述するエーテル化の反応性および回収の容易さの観点から、YまたはZとしてハロゲン化物イオンが含まれていることが好ましく、フッ化物イオンが含まれていることがより好ましく、Yがフッ化物イオンであり、Zがフッ化物イオンを除くハロゲン化物イオンであることがさらに好ましい。
【0012】
xは、イミダゾリウム塩(1)に含まれる全アニオンに対する、Yで示される1価のアニオンの比率を表し、0≦x≦1の範囲で任意に選択できる。
【0013】
かかるイミダゾリウム塩(1)を構成するアルキル置換イミダゾリウムカチオンとしては、例えば1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4,5−ペンタメチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(n−プロピル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(n−ペンチル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(n−ヘキシル)イミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−2−(n−プロピル)イミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−2−(n−ブチル)イミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−2−メチル−3−ドデシルイミダゾリウムカチオン、1−エトシキシメチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−トリフルオロメチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−(n−ドデシル)−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
【0014】
イミダゾリウム塩(1)は、例えば水や極性溶媒等の、本発明のエーテル化反応に不活性な化合物と錯体を形成していてもよい。
【0015】
かかるイミダゾリウム塩(1)は、上記式(1)においてx=0またはx=1の場合は市販の化合物を用いることができる。所望の1価のアニオンを有するイミダゾリウム塩(1)が市販されていない場合は、塩交換の常法を用いて調製することができる。この際、調製条件によって、上記式(1)におけるxを0<x≦1の範囲で任意の値に調製することができる。例えば、Yがフッ化物イオンであるイミダゾリウム塩(1)は、フッ化銀やフッ化カリウム等のフッ化物と、上記式(1)においてx=0でありZが塩化物イオンであるアルキル置換イミダゾリウム塩との塩交換反応などの方法を用いて製造することができ、用いるフッ化物の量により、上記式(1)におけるxを0<x≦1の範囲で任意の値に調製することができる。また、上記式(1)においてx=0であるアルキル置換イミダゾリウム塩とx=1であるアルキル置換イミダゾリウム塩とを混合することにより調製してもよい。
【0016】
次に、イミダゾリウム塩(1)の存在下における、エポキシ化合物とフェノール類とのエーテル化反応について説明する。
【0017】
エポキシ化合物としては、その分子内に1または2以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば式(2)
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子または水素原子を表す。また、R〜Rのうち任意の二つが一緒になって環構造の一部を形成していてもよい。)
で示されるエポキシ化合物(以下、エポキシ化合物(2)と略記する。)が挙げられる。
【0018】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。かかるアルキル基上に有していてもよい置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜20の置換されていてもよいアルコキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等の炭素数6〜20の置換されていてもよいアリールオキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜20の置換されていてもよいアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアリールカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、2−メチルフェノキシカルボニル基、4−メチルフェノキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基;カルボキシ基;水酸基;アミノ基;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアルキル基の具体例としては、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、ヒドロキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、1−エトキシカルボニル−2,2−ジメチル−3−シクロプロピル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−フェノキシベンジル基等が挙げられる。
【0019】
置換されていてもよいアルコキシ基としては、前記置換されていてもよいアルキル基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メンチルオキシ基、クロロメトキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−クロロベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、3−フェノキシベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0020】
アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。かかるアリール基上に有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、ベンジル基等の炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜20の置換されていてもよいアルコキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等の炭素数6〜20の置換されていてもよいアリールオキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜20の置換されていてもよいアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアリールカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、2−メチルフェノキシカルボニル基、4−メチルフェノキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基;カルボキシ基;アミノ基;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアリール基の具体例としては、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基等が挙げられる。
【0021】
置換されていてもよいアリールオキシ基としては、前記置換されていてもよいアリール基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0022】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0023】
置換されていてもよいアルキルカルボニル基としてはカルボニル基と前記置換されていてもよいアルキル基とから構成される置換基が、置換されていてもよいアリールカルボニル基としてはカルボニル基と前記置換されていてもよいアリール基とから構成される置換基が、それぞれ挙げられ、アセチル基、プロピオニル基、フェニルアセチル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等が例示される。
【0024】
置換されていてもよいアルコキシカルボニル基としてはカルボニル基と前記置換されていてもよいアルコキシ基とから構成される置換基が、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基としてはカルボニル基と前記置換されていてもよいアリールオキシ基とから構成される置換基が、それぞれ挙げられ、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、2−メチルフェノキシカルボニル基、4−メチルフェノキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基等が例示される。
【0025】
かかる置換基が一緒になって環構造の一部を形成する場合の環構造としては、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等が挙げられる。
【0026】
かかるエポキシ化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、3,3−ジメチル−1,2−エポキシブタン、シクロペンチルエチレンオキシド、シクロヘキシルエチレンオキシド、スチレンオキシド、4−(tert−ブチル)スチレンオキシド、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、4−メトキシスチレンオキシド、サフロールオキシド、2,3−エポキシブタン、2−メチル−1,2−エポキシプロパン、2−メチル−1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシペンタン、2,3−エポキシヘキサン、9,10−エポキシ−1−デカン酸メチル、1,2−エポキシ−3−メトキシプロパン、1,2−エポキシ−3−エトキシプロパン、1,2−エポキシ−3−プロポキシプロパン、1、2−エポキシ−3−ブトキシプロパン、1,2−エポキシ−3−フェノキシプロパン、1−ブトキシ−2,3−エポキシプロパン、
【0027】
シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、4−メチルシクロヘキセンオキシド、シクロヘプテンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロデセンオキシド、シクロドデセンオキシド、β−メチルスチレンオキシド、スチルベンオキシド、イソサフロールオキシド、β−ピネンオキシド、ノルボルネンオキシド、2,5−ジメチル−2,3−エポキシヘキサ−4−エン、1−メチル−1,2−エポキシシクロペンタン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、1−(tert−ブチル)−1,2−エポキシシクロヘキサン、1−イソプロピル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2−カレンオキシド、3−カレンオキシド、α−ピネンオキシド、2,3−ジメチル−2,3−エポキシブタン等が挙げられる。
【0028】
これらは市販の化合物を用いてもよいし、例えば、対応するアルケンからエポキシ化の常法により合成したものを用いてもよい。
【0029】
フェノール類としては、置換されていてもよい芳香族化合物もしくは置換されていてもよい複素芳香族化合物上の1または2以上の水素原子が−OH基または−SH基で置換された芳香族化合物もしくは複素芳香族化合物であれば、特に限定されず、例えば式(3)
【化3】

(式中、Arは置換されていてもよい芳香族基または置換されていてもよい複素芳香族基を表し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す。)
で示されるフェノール類(以下、フェノール類(3)と略記する。)が挙げられる。
【0030】
芳香族化合物としては、例えばベンゼン、ナフタレン等の炭化水素系芳香族化合物が挙げられ、複素芳香族化合物としては、例えばピリジン、キノリン等の複素芳香族化合物が挙げられる。かかる芳香族化合物もしくは複素芳香族化合物上に有していてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシ基、ホルミル基、スルホンアミド基、アルコキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、水酸基、メルカプト基等が挙げられる。なお、これら置換基のうち、隣接する置換基同士が結合して、その結合炭素原子とともに環を形成していてもよい。
【0031】
ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシル基および置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基としては、エポキシ化合物(2)においてR〜Rとして例示したものと同様の置換基が挙げられる。
【0032】
アルコキシスルホニル基としてはスルホニル基と上記置換されていてもよいアルコキシ基とから構成される置換基が、アルキルスルホニル基としてはスルホニル基と上記置換されていてもよいアルキル基とから構成される置換基が、アリールスルホニル基としてはスルホニル基と上記置換されていてもよいアリール基とから構成される置換基が、それぞれ挙げられ、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基等が例示される。
【0033】
かかるフェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2−フルオロフェノール、3−フルオロフェノール、4−フルオロフェノール、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、4−ブロモフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,5−ジクロロフェノール、3,5−ジクロロフェノール、2,4、6−トリクロロフェノール、2,4−ジフルオロフェノール、3,5−ジフルオロフェノール、2,4、6−トリフルオロフェノール、2−クロロ−4−フルオロフェノール、4−トリフルオロメチルフェノール、4−トリフルオロメチル−2−クロロフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、2,6−ジヒドロキシ安息香酸ベンジル、6−アセチルサリチル酸メチル、4−フェニルフェノール、4−フェノキシフェノール、3−フェノキシフェノール、バニリン、チオフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、1−チオナフトール、2−メチルチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2−フルオロチオフェノール、2−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−クロロ−2−ヒドロキシピリジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、4−ヒドロキシキナゾリンなどが挙げられる。これらは、市販の化合物を用いてもよいし、任意の方法により合成して用いてもよい。
【0034】
フェノール類として、−OH基または−SH基を2以上有するフェノール類を用いる場合には、反応条件により1つの−OH基または−SH基のみが反応することもあるし、2以上の−OH基または−SH基の全てまたはその一部のみが反応することもある。
【0035】
フェノール類の使用量は、エポキシ化合物に対して、フェノール類上の反応を所望する官能基基準で1モル倍程度用いれば、通常、本発明の目的を達成できるが、反応性や経済性等の観点により、溶媒を兼ねて、どちらか一方を過剰量用いてもよい。好ましいフェノール類の使用量の範囲は、反応を所望する官能基基準で、エポキシ化合物に対して0.5〜2モル倍程度である。エポキシ化合物またはフェノール類のうち一方を過剰に用いる場合は、反応終了後、必要に応じて蒸留操作、抽出操作等を実施することにより、過剰に用いたエポキシ化合物またはフェノール類を回収・リサイクル使用することも可能である。
【0036】
本反応は通常、不活性溶媒を必要としないが、溶媒の存在下において実施してもよい。
【0037】
かかる溶媒としては、例えばメチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;等が挙げられる。
【0038】
溶媒を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、イミダゾリウム塩(1)に対して、通常100重量倍以下である。反応温度は、通常−20〜200℃の範囲である。
【0039】
イミダゾリウム塩(1)の使用量は通常、エポキシ化合物に対し、0.001モル倍以上用いれば本発明の目的は達成され、その上限は特に無いが、好ましくは0.01〜0.5モル倍の範囲である。
【0040】
反応試剤の混合順は、特に限定されず、全ての反応試剤を混合した後に反応温度を調整することにより実施してもよいが、必要に応じて溶媒を共存させたフェノール類とイミダゾリウム塩(1)との混合物に、反応温度条件下でエポキシ化合物を加えていくことが好ましい。
【0041】
本反応は、常圧条件下で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0042】
本反応により、β−ヒドロキシエーテル類が得られる。例えば、エポキシ化合物(2)とフェノール類(3)とを反応させれば、式(4)
【化4】

(式中、R〜R、ArおよびQは、それぞれ前記と同一の意味を表す。)
で示されるβ−ヒドロキシエーテル類が得られる。
【0043】
反応終了後、晶析処理や蒸留処理等を行ったり、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理したりすることにより、β−ヒドロキシエーテル類を単離することができる。得られたβ−ヒドロキシエーテル類は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段により、さらに精製してもよい。
【0044】
ここで、水に不溶の有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;などが挙げられる。
【0045】
かくして得られるβ−ヒドロキシエーテル類としては、2−フェノキシエタノール、2−(4−ピリジニロキシ)エタノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、1−(4−フェノキシフェノキシ)−2−プロパノール、1−(4−メチルフェノキシ)−2−プロパノール、1−(3−メチルフェノキシ)−2−プロパノール、1−(2−メチルフェノキシ)−2−プロパノール、1−(3−フェノキシフェノキシ)−2−プロパノール、1−(4−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール、1−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール、1,2−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゼン、1−(4−クロロフェノキシ)−2−プロパノール、1−(2−フルオロフェノキシ)−2−プロパノール、1−(2−ナフチロキシ)−2−プロパノール、1−(フェニルチオ)−2−プロパノール、2−フェノキシ−1−プロパノール、4、4’−ジ(2−ヒドロキシプロポキシ)ビフェニル、1−フェノキシ−2−ブタノール、1−フェノキシ−2−ペンタノール、1−フェノキシ−2−ヘキサノール、1−フェノキシ−2−ヘプタノール、1−フェノキシ−2−オクタノール、1−フェノキシ−2−ノナノール、1−フェノキシ−2−デカノール、1−フェノキシ−3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−フェノキシ−3,3−ジメチル−1−ブタノール、2−フェノキシ−1−シクロペンチル−1−エタノール、2−フェノキシ−2−シクロペンチル−1−エタノール、2−フェノキシ−1−シクロヘキシル−1−エタノール、2−フェノキシ−2−シクロヘキシル−1−エタノール、2−フェノキシ−1−フェニルエタノール、2−フェノキシ−2−フェニルエタノール、2−フェノキシ−1−(4−tert−ブチルフェニル)エタノール、2−フェノキシ−2−(4−tert−ブチルフェニル)エタノール、1−フェノキシ−3−フェニル−2−プロパノール、2−フェノキシ−3−フェニル−1−プロパノール、2−フェノキシ−1−(4−メトキシフェニル)エタノール、2−フェノキシ−2−(4−メトキシフェニル)エタノール、1−フェノキシ−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−プロパノール、2−フェノキシ−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−1−プロパノール、3−フェノキシ−2−ブタノール、1−フルオロ−2−メチル−2−プロパノール、3−フェノキシ−2−メチル−2−ブタノール、3−フェノキシ−2−ペンタノール、2−フェノキシ−3−ペンタノール、3−フェノキシ−2−ヘキサノール、2−フェノキシ−3−ヘキサノール、10−フェノキシ−9−ヒドロキシ−1−デカン酸メチル、9−フェノキシ−10−ヒドロキシ−1−デカン酸メチル、1−フェノキシ−3−メトキシ−2−プロパノール、1−(フェニルチオ)−3−メトキシ−2−プロパノール、1−(4−メチルフェノキシ)−3−メトキシ−2−プロパノール、1−(3−メチルフェノキシ)−3−エトキシ−2−プロパノール、1−(4−クロロフェノキシ)−3−プロポキシ−2−プロパノール、1、3−ジフェノキシ−2−プロパノール、1、3−ジ(4−メチルフェノキシ)−2−プロパノール、1、3−ジ(2−フルオロフェノキシ)−2−プロパノール、
【0046】
2−(4−メチルフェノキシ)シクロペンタノール、2−フェノキシシクロヘキサノール、4−メチル−2−フェノキシシクロヘキサノール、2−フェノキシシクロヘプタノール、2−フェノキシシクロオクタノール、2−フェノキシシクロデカノール、2−フェノキシシクロドデカノール、2−フェノキシ−1−フェニル−1−プロパノール、1−フェノキシ−1−フェニル−2−プロパノール、2−フェノキシ−1,2−ジフェニルエタノール、2−ヒドロキシ−2−フェノキシメチル−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、2−フェノキシ−3−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ジメチル−2−ヒドロキシ−3−フェノキシ−4−エン、1−(tert−ブチル)−2−フェノキシシクロヘキサノール、1−イソプロピル−2−フェノキシシクロヘキサノール、3,7,7−トリメチル−ビシクロ[4.1.0]ヘプタン−2−フェノキシ−3−オール、3,7,7−トリメチル−ビシクロ[4.1.0]ヘプタン−4−フェノキシ−3−オール、2,6,6−トリメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−フェノキシ−2−オール、3−フェノキシ−2,3−ジメチル−2−ブタノール等が挙げられる。
【0047】
反応後は、イミダゾリウム塩(1)を回収できる。反応液からろ過処理、分液処理等により回収されたイミダゾリウム塩(1)は、そのまま、あるいは必要に応じて、濃縮処理などをすることにより、イミダゾリウム塩(1)としてリサイクル使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0049】
参考例1(x=1のイミダゾリウム塩(1)の製造例)
3角フラスコに、1−メチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムクロライド22gと水200gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコに、フッ化銀(I)16.1gと水120gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル24.5gを得た。このオイルは、室温で放置すると結晶化した。元素分析の結果、得られた結晶は1−メチル−3−n−ブチルイミダゾリウムフルオライドの2水和物と同定された。収率:100%。
【0050】
元素分析値: C:49.5、H:9.9、N:14.5、F:9.2
計算値 : C:49.5、H:9.9、N:14.4、F:9.8
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.90(t、3H)、1.25(m、2H)、1.72(m、2H)、3.88(s、3H)、4.19(t、2H)、7.79(d、2H)、10.1(bs、1H)
【0051】
参考例2(0<x<1のイミダゾリウム塩(1)の製造例)
3角フラスコに、1−メチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムクロライド5.0gと水50gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコに、フッ化銀(I)1.72gと水30gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル5.8gを得た。このオイルは、0℃でも液体であった。元素分析の結果、得られたオイルはフッ化物イオン47.5モル%、塩化物イオン52.5モル%の混合アニオンと1−メチル−3−n−ブチルイミダゾリウムカチオンとからなる塩の2水和物と同定された。
収率:100%。
【0052】
元素分析値: C:48.2、H:9.5、N:14.1、F:4.6、Cl:9.5
計算値 : C:47.4、H:9.5、N:13.8、F:4.5、Cl:9.2
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.88(t、3H)、1.25(m、2H)、1.78(m、2H)、3.90(s、3H)、4.19(t、2H)、7.85(d、2H)、10.0(bs、1H)
【0053】
実施例1
還流冷却管を付した50mLフラスコに、フェノール990mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)200mgを仕込み、混合した後、シクロヘキセンオキシド 980mgを仕込み、120℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、2−フェノキシシクロヘキサノールの収率は98%(シクロヘキセンオキシド基準)であり、その異性体比は、トランス:シス=99.7:0.3であった。
【0054】
実施例2
50mLフラスコに、実施例1で分液した下層を仕込み、水を留去した。さらに、フェノール990mgとシクロヘキセンオキシド980mgを仕込み、実施例1と同様に反応、処理した。2−フェノキシシクロヘキサノールの収率は97%(シクロヘキセンオキシド基準)であった。
【0055】
実施例3
実施例1において、シクロヘキセンオキシドに代えて、1,2−エポキシヘキサン1000mgを用いる以外は、実施例1と同様に反応、処理した。
1−フェノキシ−2−ヘキサノールの収率は94%、
2−フェノキシ−1−ヘキサノールの収率は4%
であった(いずれも1,2−エポキシヘキサン基準)。
【0056】
実施例4
実施例1において、シクロヘキセンオキシドに代えて、1,2−エポキシヘキサン1000mgを用い、参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)に代えて、市販のイミダゾリウムクロライド200mgを用いる以外は、実施例1と同様に反応、処理した。
1−フェノキシ−2−ヘキサノールの収率は85%、
2−フェノキシ−1−ヘキサノールの収率は5%
であった(いずれも1,2−エポキシヘキサン基準)。
【0057】
実施例5
還流冷却管を付した50mLフラスコに、4−フェノキシフェノール317mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)300mgを仕込み、混合した後、プロピレンオキシド200mgを仕込み、60℃で2時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、
1−(4−フェノキシフェノキシ)−2−プロパノールの収率は93%、
2−(4−フェノキシフェノキシ)−1−プロパノールの収率は7%
であった(いずれも4−フェノキシフェノール基準)。
【0058】
実施例6
還流冷却管を付した50mLフラスコに、カテコール1500mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)100mgを仕込み、混合した後、プロピレンオキシド950mgを仕込み、100℃で2時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、1−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノールの収率は73%(カテコール基準)であった。
【0059】
実施例7
実施例1において、フェノール990mgに代えて、チオフェノール1100mgを用いる以外は、実施例1と同様に反応、処理した。2−フェニルチオシクロヘキサノールの収率は99%(シクロヘキセンオキシド基準)であり、その異性体比は、トランス:シス=97:3であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。YおよびZは相異なる1価のアニオンを表す。また、0≦x≦1である。)
で示されるアルキル置換イミダゾリウム塩の存在下に、エポキシ化合物とフェノール類とを反応させることを特徴とするβ−ヒドロキシエーテル類の製造方法。
【請求項2】
式(1)において、Yで示される1価のアニオンがフッ化物イオンであり、Zで示される1価のアニオンがフッ化物イオンを除くハロゲン化物イオン、ホウ酸イオン類、リン酸イオン類、アンチモン酸イオン類、スルホン酸イオン類、炭酸水素イオン、カルボン酸イオン類、アミドイオン類または硝酸イオンである請求項1に記載のβ−ヒドロキシエーテル類の製造方法。
【請求項3】
式(1)において、x=1である請求項2に記載のβ−ヒドロキシエーテル類の製造方法。
【請求項4】
式(1)において、x=0であり、Zで示される1価のアニオンがフッ化物イオンを除くハロゲン化物イオンである請求項2に記載のβ−ヒドロキシエーテル類の製造方法。
【請求項5】
エポキシ化合物が、式(2)
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子または水素原子を表す。また、R〜Rのうち任意の二つが一緒になって環構造の一部を形成していてもよい。)
で示されるエポキシ化合物であり、
フェノール類が、式(3)
【化3】

(式中、Arは置換されていてもよい芳香族基または置換されていてもよい複素芳香族基を表し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す。)
で示されるフェノール類であり、
β−ヒドロキシエーテル類が、式(4)
【化4】

(式中、R〜R、ArおよびQは、それぞれ前記と同一の意味を表す。)
で示されるβ−ヒドロキシエーテル類である請求項1に記載のβ−ヒドロキシエーテル類の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製造方法において、β−ヒドロキシエーテル類の製造後に、式(1)で示されるアルキル置換イミダゾリウム塩を回収し、該アルキル置換イミダゾリウム塩をリサイクル使用する方法。

【公開番号】特開2006−241139(P2006−241139A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10826(P2006−10826)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】