説明

ε−カプロラクタムの製造方法

【課題】ε−カプロラクタムを、極めて高い収率で、長期間にわたり安定に且つ効率よく、製造するための方法の提供。
【解決手段】気相反応条件の下に、シクロヘキサノンオキシムを、固体酸触媒と接触させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応により、ε−カプロラクタムを製造する方法において、R−O−R−OH(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)で表される多価アルコール誘導体の共存下に行うことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロヘキサノンオキシムから、6−ナイロンなどの原料として有用なε−カプロラクタムを製造する方法に関する。更に詳しくは、本発明は、シクロヘキサノンオキシムから、ε−カプロラクタムを製造する方法であり、気相反応条件の下に、シクロヘキサノンオキシムを、固体酸触媒と接触させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応を行う際に、特定の多価アルコール誘導体の共存の下に該反応を行い、ε−カプロラクタムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ε−カプロラクタムは、6−ナイロンなどの原料として用いられる非常に重要な基幹化学原料である。現在、主流となっているε−カプロラクタムの工業的製造方法は、触媒として発煙硫酸を用い、液相反応条件の下で、シクロヘキサノンオキシムの転位反応により、ε−カプロラクタムを製造する方法である。しかし、上記の方法では、副生物として硫安が多量に生成する点や、発煙硫酸による装置の腐食などの問題が未だ解決されていない。
【0003】
一方、シクロヘキサノンオキシムを固体酸触媒と気相接触させ、ε−カプロラクタムを製造する方法について、多くの報告がある。
特許文献1には、シリカ対アルミナの比が少なくとも12で、かつ、拘束指数(constraintindex)が1〜12であるゼオライト(ZSM−5を中心とする群)を固体酸触媒として使用する方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、拘束指数1〜12の結晶性ゼオライト触媒として、Si/Al原子比が500以上かつ細孔外酸量(結晶表面に出た酸性点の量)が5μ当量/g以下である結晶性ゼオライト触媒を使用する方法が記載されている。
しかし、これらの方法に共通する欠点として、活性種であるゼオライトが単独で用いられていることを挙げることができる。
【0005】
ゼオライト触媒を用いる工業的規模の気相反応プロセスにおいては、ゼオライトが単独で用いられることは極めて稀で、ほとんどの場合は、シリカ、シリカアルミナ、アルミナなどの公知の結合剤(バインダー)とゼオライトとを混合し、適切な形態に成形して用いられている。これは、ゼオライトが多結晶体であり、ゼオライト単独では、成形性に極めて乏しいためである。
【0006】
しかし、ε−カプロラクタムを製造するためのシクロヘキサノンオキシムの転位反応に上記した様なシリカ、シリカアルミナ、アルミナなどの公知のバインダーで成形したゼオライト触媒を用いた場合には、これらのバインダーが反応に不活性ではないために、タールやピッチの生成などの副反応を促進する結果、触媒寿命を短くし、活性、及び、選択性を著しく損なうという問題がある。
【0007】
この問題を解決するために、特許文献3には、オキシムのアミドへの転位反応に適したMFI型ゼオライトとケイ質リガンドとをベースとする触媒の製造法であって、ゼオライトのサブミクロン粒子を、シリコンアルコキシドの酸水解(酸性溶液下での加水分解)により得たリガンドに結合させる触媒の製造法が記載されている。しかし、pHやゼオライトの分散度など、触媒調製条件を厳密にコントロールすることが必要であり、製造工程が複雑になるという欠点がある。
【0008】
特許文献4には、無機バインダーを用いずに成形したペンタシル型ゼオライト成形体を温度30℃〜100℃でpH9〜13のアルカリ水溶液と接触させる後処理に付すことにより、ゼオライト成形体の強度を向上させた触媒を用いる方法が記載されている。しかし、上記の様な、無機バインダーを含まない触媒を長期に使用した場合には、機械的強度の不足から、触媒が紛化してしまう懸念がある。また、無機バインダーを用いず成形した触媒に、更に、強度を向上させるための後処理を施す場合には、製造工程が複雑になるという欠点がある。
【0009】
その他の、気相反応条件下でのε−カプロラクタムの製法として、触媒としてゼオライトを用いて、特定の化合物の共存下で反応を実施する方法も開示されている。
例えば、特許文献5には、固体酸触媒を用いて、気相反応により、シクロヘキサノンオキシムからε−カプロラクタムを製造するにあたり、式R−O−R(Rはフッ素で置換されていても良い低級アルキル基、そして、Rは水素原子、低級アルキル基、または、フェニル基)で表される化合物の存在下に反応を行う方法が記載されている。(すなわち、エーテル化合物、低級アルコールを共存させる方法。)
【0010】
また、特許文献6には、シクロヘキサノンオキシムを、炭素数7以上の脂肪族アルコールの存在下で、Si/Al原子比が100より小さいZSM−5型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、Y型ゼオライトと気相接触させる方法が記載されている。
しかし、これらに記載されているいずれの触媒も、ゼオライトを単独で用いており、適切なバインダーで成形された実用的な形態の触媒を用いた記載はない。
【0011】
更に、ε−カプロラクタムを製造するためのシクロヘキサノンオキシムの転位反応を行う場合には、ほとんどの場合、原料と触媒との接触を促進させるため、キャリアーガスが用いられている。実際のプロセスを考えた場合には、このキャリヤーガスと反応に共存させる上記の化合物との分離が必要になる。
しかし、エーテル化合物や、低級アルコールでは、一般に沸点が低いために、キャリアーガスとの分離が困難となる欠点がある。
また、高級アルコールでは、一般に沸点が高すぎるために、シクロヘキサノンオキシムの沸点と近づき、シクロヘキサノンオキシムとの分離が困難となる欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭57−139062号公報(米国特許第4,359,421号に対応)
【特許文献2】特開昭62−123167号公報(米国特許第4,709,024号に対応)
【特許文献3】特開2000−202296号公報(EP 1 002 577 A1に対応)
【特許文献4】特許第3023581号公報(米国特許第5,407,881号に対応)
【特許文献5】欧州特許出願公開第0 380 364号明細書
【特許文献6】特開平10−87611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような状況下にあって、本発明者らは、気相反応条件の下に、シクロヘキサノンオキシムを固体酸触媒と接触させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応を行うことにより、ε−カプロラクタムを製造する方法において、従来技術での上記した種々の欠点がなく、極めて高い収率で、長期間にわたり安定に且つ効率よく、ε−カプロラクタムを製造すべく鋭意研究を行った。
【0014】
その結果、気相反応条件の下に、シクロヘキサノンオキシムを固体酸触媒と接触させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応を行うことにより、ε−カプロラクタムを得る方法において、該反応を、次式で表される多価アルコール誘導体の共存の下に行うことにより、触媒の活性劣化を抑制し、更にε−カプロラクタムの選択性を向上できることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
−O−R−OH
(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
本発明の上記及び他の諸目的、諸特徴並びに諸利益は、添付の図面を参照しながら行う以下の詳細な説明及び請求範囲の記載から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、気相反応条件の下に、シクロヘキサノンオキシムを固体酸触媒と接触させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応を行って、ε−カプロラクタムを製造する方法において、該転位反応を、次式で表される多価アルコール誘導体の共存の下に行うことを特徴とする方法が提供される。
−O−R−OH
(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
【0016】
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的な諸特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.気相反応条件の下に、シクロヘキサノンオキシムを固体酸触媒と接触させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応を行って、ε−カプロラクタムを製造する方法において、該転位反応を、次式で表される多価アルコール誘導体の共存の下に行うことを特徴とする方法。
−O−R−OH
(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
2.該固体酸触媒が、ゼオライト又はゼオライトを含有する触媒であることを特徴とする、前項1に記載の方法。
3.該ゼオライトが、Si/Al原子比が10以上のアルミノシリケート、Si/金属原子比が10以上のメタロシリケート及びシリカライトよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前項2に記載の方法。
4.該ゼオライトが、MFI型ゼオライトであることを特徴とする、前項2又は3に記載の方法。
5.該多価アルコール誘導体が、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノエチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前項1〜4のいずれかに記載の方法。
6.該多価アルコール誘導体が、エチレングリコールモノメチルエーテルであることを特徴とする、前項1〜4のいずれかに記載の方法。
7.該シクロヘキサノンオキシムの該転位反応を、反応温度が200〜500℃、反応圧力が0.01〜1MPa及びシクロヘキサノンオキシムの重量空間速度が0.01〜100hr−1の条件下で行うことを特徴とする、前項1〜6のいずれかに記載の方法。
8.該転位反応を、流動床型反応方式で行うことを特徴とする、前項1〜7のいずれかに記載の方法。
9.該転位反応に使用した触媒の一部を、該転位反応のための反応器より連続的又は断続的に抜き出し、酸素含有ガス、又は、不活性ガス雰囲気下で触媒を再生し、得られる再生触媒を該反応器に戻すことを特徴とする、前項1〜8のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法により、ε−カプロラクタムが高選択率、及び、高収率で得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例5と比較例5における、それぞれのシクロヘキサノンオキシムの転化率を比較して示すグラフである。
【図2】実施例5と比較例5における、それぞれのε−カプロラクタムの選択率を比較して示すグラフである。
【図3】実施例6と比較例6における、それぞれのシクロヘキサノンオキシムの転化率を比較して示すグラフである。
【図4】実施例6と比較例6における、それぞれのε−カプロラクタムの選択率を比較して示すグラフである。
【図5】結晶質粘土鉱物の分類を示し、点線の枠内に触媒の焼成前の乾燥前駆体に含まれる結晶質粘土鉱物成分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、固体酸触媒には、シリカアルミナ、シリカマグネシア、アルミナボリアなどの無定形の非晶質固体酸、MCM−41(米国特許第5,098,684号、J.Am.Chem.Soc、114、P10834〜P10843、1992)に代表される規則的なメソ細孔構造をもつ非晶質固体酸、及び、ゼオライトなどの結晶質固体酸などを用いることができる。
【0020】
ゼオライトとは、多孔質結晶性ケイ酸塩(シリケート)であり、アルミノシリケート、メタロシリケート及びシリカライトよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、本発明においては、SAPO−5、SAPO−11等の、ゼオライトと同様な構造を持つリン酸塩系多孔質結晶もゼオライトに包含される。
【0021】
アルミノシリケートとは、構造の基本単位が(SiO4−および(AlO5−であり(共にO原子を頂点とした四面体構造(tetrahedral)であるため、T原子の4酸化物という意味から“TO”で表す。)、1つのTO単位が4つの頂点の酸素をそれぞれ隣の4つのTO単位と共有することにより、3次元的に連結し結晶を形成したものである。この結晶は多孔性であって、細孔の入口径は、0.4〜0.8nm程度であり、分子ふるい作用を持つ。
【0022】
メタロシリケートとは、アルミノシリケートと同様の多孔質結晶構造を有し、Si、Al原子以外にも、他の金属原子をT原子としたTO単位を含む結晶構造を有するものである。その金属原子には、例えば、Ti、B、Fe、Zn、Ga、Cr、Co、Zr、V、Cu、Nb、Beなどが挙げられる。Bは一般には金属ではないが、上記の他の金属原子と同様に、結晶格子中に導入することができる。
【0023】
シリカライトとは、アルミノシリケートと同様の多孔質結晶構造を有し、実質的にAl又はその他の上記した金属原子をT原子としたTO単位を含まないで、Si原子をT原子としたTO単位のみを含む結晶構造を有するものである。
【0024】
リン酸塩系多孔質結晶とは、(AlO5−及び(PO3−の両者が構造の基本単位であり、それらがTO単位を構成し、交互に連結することにより、3次元結晶構造を形成したものである。通常、AlPO−n(nは構造により異なる正の整数。)と表し、一部にSiをT原子としたTO単位を含むものをSAPO−nと表し、Ga、Mg、Mn、Fe、Co、ZnなどをT原子としたTO単位含むものを総称してMeAPOと表す。この結晶は、上記のゼオライトと同様な構造を持つ多孔質結晶である。
【0025】
これらのうち、好ましくは、アルミノシリケート、メタロシリケート及びシリカライトである。
より好ましくは、Si/Al原子比が10以上のアルミノシリケート、Si/金属原子比が10以上のメタロシリケート、及びシリカライトである。更に好ましくは、Si/Al原子比が100以上のアルミノシリケート、Si/金属原子比が100以上のメタロシリケート、及びシリカライトである。特に好ましくは、Si/Al原子比が250以上のアルミノシリケート、Si/金属原子比が250以上のメタロシリケート、及びシリカライトである。更に特に好ましくは、Si/Al原子比が500以上のアルミノシリケート、Si/金属原子比が500以上のメタロシリケート、及びシリカライトであり、最も好ましくは、Si/Al原子比が1000以上のアルミノシリケート、Si/金属原子比が1000以上のメタロシリケート、及びシリカライトである。
【0026】
次にこれらのゼオライトについて、具体例を示す。
例えば、アルミノシリケートには、A型、X型、Y型、L型、オフレタイト、モルデナイト、フェリエライト、ZSM−5(日本国特公昭46−10064号公報(カナダ国公開特許第902,334号に対応))、ZSM−11(日本国特公昭53−23280号公報(米国特許第3,709,979号に対応))、ZSM−12(日本国特公昭52−16079号公報(米国特許第3,832,449号に対応))、ZSM−23(A.C.RohrmanJr.ら著,”Zeolites”,5,P352〜P354,1985)、β型(米国特許第3,308,069号)、MCM−22(米国特許第4,954,325号)などが挙げられる。
【0027】
メタロシリケートには、チタノシリケート(米国特許第4,410,501号)、ホウ素シリケート(ヨーロッパ特許第7,081号(米国特許第4,456,582号に対応))などが挙げられる。
シリカライトには、米国特許第4,061,724号に記載されたシリカライトが挙げられる。
ゼオライトと類似構造を持つリン酸塩系多孔質結晶には、SAPO−5(日本国特開昭59−35018号公報(米国特許第4,440,871号に対応))、SAPO−11(日本国特開昭59−35018号公報(米国特許第4,440,871号に対応))などが挙げられる。
【0028】
上記した各種ゼオライトについて挙げた文献のそれぞれには、X線回折パターン及びその製法の記載がある。
また、A型、X型、Y型、L型、オフレタイト、モルデナイト、フェリエライト、ZSM−5、ZSM−11については、A.Dyer著”An Introductionto Zeolite Molecular Sieves”1988、英国 P12〜P37に、組成及び構造の記載がある。
これらのうち、より好ましくは、シリカライト、ZSM−5、チタノシリケート、ホウ素シリケート、β型、フェリエライトであり、更に好ましくは、MFI型シリカライト、ZSM−5、MFI型チタノシリケートなどの、MFI型構造を有するゼオライトである。
【0029】
「MFI」とは、ゼオライトの構造を規定するIUPACコード名である。そのコード名に対応する構造の情報は、Ch.Baerlocher,W.M.Meierand D.H.Olson著”ATLAS OF ZEOLITEFRAMEWORKTYPES”5th Ed.P13.(2001)に記載がある。また、X線回折パターンは、R.v.Ballmoos and J.B.Higgins著”COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNSFOR ZEOLITES”(ZEOLITES vol.10、NO.5、JUNE、1990)P442S〜P445Sに記載がある。
最も好ましいゼオライトは、Si/Al原子比が1000以上のMFI型アルミノシリケート、Si/金属原子比が1000以上のMFI型メタロシリケート、及びMFI型シリカライトである。
【0030】
これらのゼオライトはイオン交換法、含浸法、吸着法など、公知の方法で水素イオンや各種の金属イオン、金属化合物などを、イオン交換させたり、又は担持させることができる。好ましくはイオン交換法が用いられる。
本反応に悪影響をおよぼさない範囲であれば、ゼオライトにイオン交換させたり、又は担持させる金属種、金属量に、特に制限はない。本発明者らが行ったところによると、周期律表の11族に属する金属(Cu、Ag、Au)を、上記のいずれかの方法で交換させたり、又は担持させた場合に、触媒寿命を延長できる好ましい効果が得られており、特に好ましくはAgであった。
また、この場合には、ゼオライトのみからなる触媒であってもよいし、公知のバインダー(結合剤)で成形された触媒であってもよい。
【0031】
本発明の態様において、例えば、固体酸触媒としてゼオライトを無機バインダーで成形して用いる場合には、結晶質粘土鉱物や、周期律表の4族、13及び14族から選ばれる少なくとも1つの元素を含有する無機酸化物又は焼成により該酸化物を形成することができる化合物などを用いることが、大変有効である。
すなわち、第1成分としてのゼオライト及び第2成分としての結晶質粘土鉱物を含み、更に、無機酸化物と焼成により該無機酸化物を形成することができる化合物とからなる群より選ばれる少なくとも1つの物質である第3成分を含んでなる乾燥触媒前駆体を焼成して得られる触媒であって、該無機酸化物は、周期律表の4族、13族及び14族から選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物であり、且つゼオライト及び結晶質粘土鉱物中に結晶構造物の形で含まれる酸化物類以外の無機酸化物である、上記触媒を該固体酸触媒として用いることが好ましい。ここでいう「周期律表とは、1989年に、国際純粋及び応用化学連合(IUPAC)で定められた周期律表を意味する。
【0032】
結晶質粘土鉱物の例は、図5の点線の枠内に示されている、結晶質粘土鉱物である。
粘土鉱物の基本単位は、Si4+に4つのO2−が配位したSiO四面体と、Al3+に6つのOHまたはO2−が配位したAl(OH)八面体(Mg2+、Fe2+も同様の八面体構造をとる)の2つが存在する。そして、SiO四面体が平面的につながったものを四面体シート、Al(OH)八面体が平面的につながったものを八面体シートという。
これらの四面体シート及び八面体シートが積み重なることにより、層を形成している。
シートの積み重なり方により、1:1型粘土鉱物、2:1型粘土鉱物、混合層鉱物の3種が存在する。
【0033】
1:1型粘土鉱物とは、1枚の四面体シートに1枚の八面体シートが結合し、これが積み重なってできる構造(1:1構造)をもつ粘土鉱物である。2:1型粘土鉱物とは、1枚の八面体シートに2枚の四面体シートが結合し、これが積み重なってできる構造(2:1構造)をもつ粘土鉱物である。また、混合層鉱物とは、上記の構造を持つ2つ以上の異なった粘土鉱物が、組み合わさってできている粘土鉱物である。
具体的には、1:1型粘土鉱物としては、AlSi(OH)の理論化学組成をもつカオリン鉱物、及びMgSi(OH)の理論化学組成をもつ蛇紋石鉱物が挙げられる。カオリン鉱物には、カオリナイト、デイッカイト、ナクライト、層間に水分子をもつハロイサイトなどが含まれる。蛇紋石鉱物には、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライトなどが含まれる。
【0034】
2:1型粘土鉱物としては、AlSi10(OH)の理論化学組成をもつパイロフィライト、MgSi10(OH)の理論化学組成をもつタルク、他にモンモリロナイトに代表されるスメクタイト、バーミキュライト、雲母粘土鉱物、緑泥石などが挙げられる。また、SiO四面体シートが、周期的に逆転し空孔を形成した構造をもつ、セピオライト、パリゴルスカイトなども含まれる。
混合層鉱物としては、雲母とスメクタイトによる混合層鉱物、カオリン鉱物とモンモリロナイトによる混合層鉱物などが挙げられる。
【0035】
一般的に、天然に産出される粘土鉱物は、結晶質粘土鉱物以外の、例えば非晶質シリカなどの非晶質成分を含む場合がある。
ここで、本発明の好ましい態様の方法に用いられる触媒に含まれる第2成分としての結晶質粘土鉱物に含有されるSiO、Alなどの酸化物は、結晶構造を構成する成分であるため、それらが結晶中に規則的に配置された構造を持つ。これに対し、後で説明する第3成分としての無機酸化物であるSiO、Alなどは、それらが規則的に配置された構造を持っていない。このような点から、第2成分に含有される酸化物と第3成分である無機酸化物とを区別することができる。即ち、第3成分の無機酸化物は、ゼオライト及び結晶質粘土鉱物中に規則的に配置された結晶構造の形の結晶質酸化物以外の無機酸化物である。
【0036】
本発明において用いる粘土鉱物は、好ましくは結晶質粘土鉱物の割合が50重量%以上、より好ましくは結晶質粘土鉱物の割合が90重量%以上の粘土鉱物である。用いる粘土鉱物中に存在する、結晶質粘土鉱物以外の無機酸化物は、第3成分としての無機酸化物に属するものとして計算され、第2成分の量比の計算において勘案される。
上記した結晶質粘土鉱物類は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいし、天然物だけではなく人工的な合成物であってもよい。
また、これらは焼成、イオン交換、酸処理などの前処理を行った後、触媒に用いることができる。
これらのうちより好ましくは、カオリン鉱物、パイロフィライト、タルク、モンモリロナイトであり、特に好ましくは、カオリン鉱物である。更に好ましくはカオリナイトである。
【0037】
これらの結晶質粘土鉱物は、本来、触媒成形体の強度向上、耐熱性向上のために添加されるが、本ε−カプロラクタムの製造をするためのシクロヘキサノンオキシムの転位反応(以下、単に「本反応」という。)に用いる触媒を構成する成分の第2成分として使用した場合には、結晶質粘土鉱物を添加しない、すなわち、ゼオライトと周期律表の4、13及び14族から選ばれる少なくとも1つの元素を含有する無機酸化物とだけからなる場合より、選択性ならびに触媒寿命の向上、とりわけ選択性の向上に著しい効果を持つ。
特に、本反応にとって、アルミニウムの存在は副成物の生成を促進し、不利な効果を与える。それにも係わらず、例えば、アルミナ約40重量%から構成されるカオリン鉱物を存在させた方が良好な効果をもたらすことは、予想し得ない意外な事実である。
【0038】
一方、ゼオライトと結晶性粘土鉱物だけでは、十分な強度の成形体が得られない。
本発明の好ましい態様の方法に用いられる触媒を得るための、焼成前の乾燥前駆体の第3成分の無機酸化物と焼成により該無機酸化物を形成することができる化合物とからなる群より選ばれる少なくとも1つの物質(以下、「無機酸化物又は/及び酸化物形成化合物」と称す)は、バインダーとして本発明の方法に用いる触媒成形体の強度を向上する目的で添加される。該酸化物は、周期律表の4族、13族及び14族から選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物である。ここで、4族に属する元素は、Ti、Zr、Hhであり、13族に属する元素はB、Al、Ga、In、Tlであり、14族に属する元素はC、Si、Ge、Sn、Pbである。これらの元素の酸化物のうち、好ましくは、Si、Al及びTiの酸化物である。具体的には、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、シリカチタニア、チタニア、シリカジルコニア、ジルコニアであり、より好ましくはシリカ、シリカアルミナ、アルミナであり、特に好ましくはシリカである。これらは1種又は2種以上を混合して用いることもできる。前述したように、第3成分の無機酸化物は、ゼオライト及び結晶質粘土鉱物中に規則的に配置された結晶構造の形の結晶質酸化物以外の無機酸化物である。
【0039】
焼成により該酸化物を形成することができる化合物としては、Al(OH)、Ti(OH)、Zr(OH)などの水酸化物、Al(NOなどの塩を挙げることができる。
又、本発明の好ましい態様に使用される触媒の製造方法が、前述した日本国特開2000−202296号公報の、シリコンアルコシキドを酸水解することによって得たケイ質リガンドを、ゼオライトのバインダーとして使用する方法と異なる点は、日本国特開2000−202296号公報の方法が、シリコンアルコキシドを酸水解することを必須としているのに対し、本発明の方法に使用される無機酸化物やその原料は、塩基性であっても全く問題なく実施できる点にある。そのため、原料の選択肢が広く、より安価な原料を選択でき、また、pHの厳密なコントロールを必要としないため、調製法も簡便となる。
【0040】
第1成分であるゼオライト、第2成分である結晶質粘土鉱物、第3成分である無機酸化物又は/及び酸化物形成化合物の配合組成については、好ましくは、前記した乾燥触媒前駆体の第1成分、第2成分及び第3成分の合計重量に対して、第1成分であるゼオライトが20〜80重量%、第2成分である結晶質粘土鉱物が5〜50重量%、第3成分である無機酸化物又は/及び酸化物形成化合物が15〜30重量%の範囲であり、より好ましくは、第1成分としてのゼオライトが30〜70重量%、第2成分としての結晶質粘土鉱物が15〜35重量%、第3成分としての無機酸化物又は/及び酸化物形成化合物が15〜35重量%の範囲である。第3成分である無機酸化物又は/及び酸化物形成化合物が15重量%未満の場合には、成形体の機械的強度が劣る傾向があり、第2成分である結晶質粘土鉱物が5重量%未満では、選択率の向上の効果が現れにくい傾向がある。
【0041】
次に、本発明の好ましい態様の方法に用いる触媒の製造方法について説明する。触媒の製造方法は、特に限定されないが、(1)第1成分であるゼオライト、第2成分である結晶質粘土鉱物、第3成分である無機酸化物又は/及び酸化物形成化合物を含有する触媒原料混合物を提供する工程と、(2)該触媒原料混合物を成形、乾燥、及び、焼成する工程とよりなる。
【0042】
次に、上記(1)及び(2)の各工程について説明する。
(1)触媒原料混合物を提供する工程
触媒原料混合物の基本的な成分は、第1成分であるゼオライト、第2成分である結晶質粘土鉱物、及び第3成分である無機酸化物又は/及び酸化物形成化合物である。
ゼオライトは、ヨーロッパ特許公開公報EP 0 380 364などに記載の公知の方法で水熱合成したゼオライト又は市販のゼオライトなどを用いることができる。
水熱合成したゼオライトが、有機テンプレート(ゼオライトの骨格を形成するために用いたテトラプロピルアンモニウムヒドロキシドなどの有機化合物)を含有する場合には、電気炉、管状炉などの炉中で、400〜700℃で1〜24時間、酸素含有雰囲気下、または、窒素雰囲気下で加熱処理することにより、有機テンプレートを焼成、分解したゼオライトを用いることが好ましい。
【0043】
ゼオライトは、必要に応じて、NHNO、NHCl、AgNOなどの無機塩水溶液で処理して、所望するイオンにイオン交換して用いることができる。イオン交換は、無機塩水溶液に対してゼオライト1〜30重量%を添加し、15〜90℃で1〜10時間イオン交換することが好ましく、ゼオライトを一旦ろ過後、同様の操作を1〜3回繰り返すことが好ましい。更に、アンモニウムイオンを水素イオンに変換するには、上記と同様の炉中で、400〜600℃で1〜10時間、空気雰囲気下で加熱処理することが好ましい。
結晶質粘土鉱物は、市販の結晶質粘土鉱物をそのまま用いても良いし、必要に応じて500〜1200℃での焼成を施した後、用いても良い。
【0044】
無機酸化物は、その出発原料として、該無機酸化物の成分を含むゾル、ゲルなどを用いることが好ましい。その出発原料としてはケイ酸ソーダ水溶液、シリカゾル、シリカゲル(例えば、ケイ酸ソーダ水溶液に硫酸、塩酸、硝酸の様な酸を添加して得られる。)、シリカアルミナゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾルなどを用いることもできる。より好ましくは、ケイ酸ソーダ水溶液、シリカゾル、シリカアルミナゾル、アルミナゾルであり、特に好ましくは、ケイ酸ソーダ水溶液、シリカゾルである。
【0045】
それら無機酸化物の原料であるシリカゾル、アルミナゾルなどは、通常不純物としてナトリウムなどの微量の金属を含有している。従って、それらを乾燥して得られる乾燥前駆体中の無機酸化物は、微量金属を含有するが、含有する微量金属種又は金属量に特に制限はない。ただし、含有する金属量は、少ない方が目的の反応への悪影響が少なく好ましい。
また、微量金属は、焼成前の乾燥前駆体を、酸で処理することにより、触媒から除去することもできる。使用できる酸に特に制限はないが、硝酸、硫酸、塩酸などが好ましい。
触媒原料混合物は、これらを含有し、均一に分散させた形態にすることが好ましい。
【0046】
その配合方法の好ましい例は、上記の無機酸化物又は/及び焼成により該酸化物を形成することができる化合物の原料に、所定量の水を添加し、好ましくはホモジナイザーなどを用いて2,000〜10,000回転/分で15分〜1時間、室温で撹拌する。その液に、ゼオライトと結晶質粘土鉱物とを添加し、更に、同様な条件で撹拌、混合することが好ましい。
【0047】
この際の水は、添加しなくても良いが、各成分の分散性を向上させる目的で添加し、水の添加量は、触媒原料混合物に含まれる固形分、すなわち、ゼオライト、結晶質粘土鉱物、無機酸化物(シリカゾルの様な場合、或いは焼成により無機酸化物を形成することができる化合物の場合には、無機酸化物の量に換算する。)の合計に対し、0.5〜20重量倍、好ましくは1〜10重量倍添加する。また、ゼオライトと結晶質粘土鉱物とを予め水に分散させ、同様の条件でホモジナイザーなどを用いて撹拌、混合したスラリーを添加することもできる。
ケイ酸ソーダ水溶液の場合には、予め10〜15重量%の硫酸水溶液に所定量のケイ酸ソーダ水溶液を添加し、SiOをゲル化させ、得られた溶液に上記のゼオライトと結晶性粘土鉱物の混合液を添加する方法が好ましい。
いずれにしても、ゼオライト、結晶質粘土鉱物、無機酸化物又は焼成により該酸化物を形成することができる化合物を均一に分散させることが重要である。
【0048】
(2)触媒原料混合物を成形、乾燥及び焼成する工程
上記工程で得られた原料混合物を成形、乾燥、焼成することによって、本発明に用いる触媒を得ることができる。その際には、本発明の転位反応を実施する様式により、適切な成形方法、乾燥方法、及び、焼成方法を選択できる。次に代表的な好ましい例を示す。
【0049】
(流動床反応に用いる場合)
この場合の触媒の製造工程は、上記の原料混合物を噴霧乾燥法により乾燥する工程(その際に流動床反応に適した球形に成形した触媒前駆体粉末を得ることができる。)と、それを焼成する工程を包含する。
噴霧乾燥法における原料混合物の噴霧化は、遠心方式、二流体ノズル方式、高圧ノズル方式を採用することができる。乾燥熱源は、スチーム、電気ヒーターなどによって加熱された空気を用いることができる。この時の熱風の乾燥機入口温度は150〜500℃が好ましい。この熱風を向流または並流に原料混合物と接触させることにより、原料混合物中の水分を蒸発させ、20〜150μm程度の球形に成形された乾燥触媒前駆体粉末を得ることができる。得られた乾燥触媒前駆体粉末は、電気炉、管状炉などの炉中で、500〜1,000℃で1〜48時間、好ましくは600〜800℃で1〜10時間、空気雰囲気下で焼成する。
【0050】
(固定床反応に用いる場合)
この場合の触媒の製造工程は、上記の触媒原料混合物を乾燥または半乾燥した後に、押し出し成形法、打錠成形法、圧縮成形法などにより円柱状、円筒状、粒状などに触媒を成形する工程と、成形物を焼成する工程を包含する。
【0051】
押し出し成形法の場合には、上記の触媒原料混合物を押し出し成形に適する程度(含水率10〜40重量%程度)まで加熱により水を除去し、その半乾燥した原料混合物を押し出し成形機を用いて、直径1〜5mmに押し出し、長さ2〜10mmに切断することにより、円柱状の成形体を得ることができる。それを、乾燥機で80〜200℃、1〜48時間乾燥し、得られた乾燥触媒前駆体を上記と同様な条件で焼成する。
【0052】
また、打錠成形法または圧縮成形法の場合には、100〜200℃に加熱した鉄板上に触媒原料混合物を噴霧して、水分を蒸発させ乾燥粉末を得た後、その粉末を打錠成形機または圧縮成形機で打錠(打錠成形機の杵部と臼部により押し固める操作のこと。)または圧縮して成形した、乾燥触媒前駆体を得ることができる。この際、触媒の成形性を改良するために、グラファイトなどを乾燥粉末に対して、1〜5重量%、好ましくは2〜3重量%添加しても良い。打錠成形法の場合には、直径2〜5mm、長さ3〜10mmの円柱状や、場合によっては、円筒状に成形することができ、圧縮成形法の場合には、成形体を所望の粒度になるように、粉砕、分級して、例えば、0.3〜3mmの粒状に成形することができる。このようにして得られた触媒前駆体を、上記と同様な条件で焼成する。
【0053】
上記のようにして得られる第1成分としてのゼオライト、第2成分としての結晶質粘土鉱物、及び第3成分としての無機酸化物又は/及び酸化物形成化合物を含んでなる乾燥触媒前駆体を焼成して得られる触媒を用いる態様においては、触媒成形体に十分な機械的強度を持たせながら、尚且つ、高いε−カプロラクタムの選択性を得ることができる。
【0054】
本発明において、反応に共存させる多価アルコール誘導体は、次式で表すことができる。
−O−R−OH
(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノールなどが挙げられる。
【0055】
より好ましくは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルであり、特に好ましくは、エチレングリコールモノメチルエーテルである。これらは1種又は2種以上を混合して用いることもできる。また、Rの水素原子の一部がフッ素原子に置換されていても良い。これらは工業的にも常用される溶媒であり、入手も容易である。
これらの多価アルコール誘導体を反応系に共存させることにより、触媒の活性劣化を抑制し、更に、ε−カプロラクタム選択性の向上にも大きく寄与する効果がある。
【0056】
これらを反応系に供給する様式は、シクロヘキサノンオキシムと多価アルコール誘導体とを別々に反応系に供給しても良いし、シクロヘキサノンオキシムを多価アルコール誘導体に溶解させて供給しても良い。多価アルコール誘導体はシクロヘキサノンオキシムに対し良好な溶媒であるため、シクロヘキサノンオキシムを多価アルコール誘導体に溶解させて供給する方法がより好ましい。
【0057】
本発明の方法において、多価アルコール誘導体を反応系に共存させる量に、特に制限はない。好ましくはシクロヘキサノンオキシムに対して重量比で、0.1〜30倍が適当であり、より好ましくは0.5〜20倍の範囲であり、特に好ましくは1〜10倍の範囲である。
【0058】
また、必要ならば他の有機化合物を反応系に共存させても良い。他の有機化合物とは、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族化合物や、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノールなどの脂肪族アルコールなどである。その他、ニトリル系、アミド系、エーテル系、ケトン系有機化合物なども用いられる。なお、これらを共存させる場合の量は、多価アルコール誘導体の同量以下にする。
【0059】
また、水、メチルアミン類などの塩基性物質、生成物であるε−カプロラクタムなどを原料と共に供給しても良い。これらの物質を添加することにより、触媒の劣化を抑制することができる。この場合、水の添加量は、シクロヘキサノンオキシム1モルに対し0.05〜1.0モルが好ましく、メチルアミン類などのアミン類、ε−カプロラクタムの添加量は、それぞれシクロヘキサノンオキシム1モルに対し0.05〜0.5モルが好ましい。
シクロヘキサノンオキシムは多価アルコール誘導体と共存させると、タールやピッチを生成する副反応を抑制し、触媒寿命を顕著に延ばし、ε−カプロラクタムを長期間にわたり、安定して高収率で得ることができる点で好ましい。
【0060】
次に、固体酸触媒を用いて、本発明の方法を用いて、シクロヘキサノンオキシムの気相反応によりε−カプロラクタムを製造する方法及び反応に使用した触媒を再生する方法について述べる。
反応は、固定床、移動床、流動床などの反応器に充填した固体酸触媒に、原料気化器又は反応器内で気化させたシクロヘキサノンオキシムを、気相で適切な反応条件の下で、接触させることにより行われる。
この時、ゼオライト、結晶質粘土鉱物、及び無機酸化物又は/及び酸化物形成化合物を含む固体酸触媒を用い、多価アルコール誘導体の共存の下に反応を行うことが、最も望ましい反応様式である。
【0061】
以下に述べる反応温度とは、シクロヘキサノンオキシムを気相転位によりε−カプロラクタムを製造する本発明の反応時の温度であり、反応圧力とは反応時の圧力である。
反応温度は、200〜500℃の範囲が好ましく、300〜450℃の範囲がより好ましい。更に好ましくは330〜380℃の範囲である。200℃未満では反応速度が十分ではない傾向があり、500℃を越えるとシクロヘキサノンオキシムが熱分解してしまう傾向がある。
反応圧力は0.01〜1MPaの範囲が好ましく、0.03〜0.5MPaの範囲がより好ましい。更に好ましくは0.06〜0.3MPaの範囲である。
【0062】
原料シクロヘキサノンオキシムの重量空間速度(W.H.S.V.)は、0.01〜100hr−1の範囲が好ましく、0.1〜10hr−1の範囲がより好ましい。
上記の重量空間速度は以下の式で算出される。
重量空間速度=F/C(hr−1
F=シクロヘキサノンオキシム供給量(Kg/hr)
C=触媒重量(Kg)
【0063】
キャリヤーガスは、用いなくとも良いが、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス、水素ガスなどを用いる方がより好ましい。キャリヤーガスの供給量には、特に制限はないが、キャリヤーガスを含めた原料ガス中のシクロヘキサノンオキシムの濃度が、1〜20容量%程度になる様に供給することが好ましい。
【0064】
反応に使用した触媒は、賦活処理により再生し、活性を回復することができる。
この再生処理は、空気、空気を不活性ガス(窒素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガスなどであり、好ましくは窒素ガス。)で所望の酸素濃度(1〜10容量%程度)になる様に希釈したガス、不活性ガスを流通させながら、触媒上に蓄積したタール、ピッチ、炭素質物質が燃焼、分解、揮発するのに十分な温度と時間、保持することによって行われる。その際の温度は、400〜700℃が好ましい。また、保持する時間は、通常0.5〜48時間である。
【0065】
本発明の反応を実施する反応器には、上述した様に、固定床、移動床、流動床などの反応器を用いることができる。本反応は反応に伴い触媒上に炭素質物質が蓄積し、徐々に触媒活性が低下するため、周期的に触媒活性を賦活させる上記の再生操作が可能な反応器形式とすることが好ましい。例えば、固定床反応器の場合、2基以上の反応器を設置し、反応と再生を交互に切り替えて実施することが好ましい。
【0066】
又、流動床反応器の場合には、反応器から触媒の一部を連続的もしくは断続的に抜き出し、これを触媒再生器にて上記した適切な温度の下で酸素含有ガス、不活性ガスを流通させながら、付着した炭素質物質を燃焼、分解、揮発除去し、触媒を再生する。再生触媒は再び連続的もしくは断続的に反応器へ戻すことが好ましい。特に、シクロヘキサノンオキシムのε−カプロラクタムへの転位反応は、発熱反応であるため、反応温度の制御が比較的容易な流動床反応器が最も好ましい反応器である。
【0067】
反応生成物からの、ε−カプロラクタムの分離精製は、反応ガスを冷却凝縮し回収した後、抽出、蒸留、晶析などをすることにより行うことができる。
本反応に共存させた多価アルコール誘導体は、反応生成物から分離され、再使用することができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例、及び、比較例によって、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例、及び、比較例において行われた種々の測定は以下のように行った。
【0069】
(1)ゼオライトの粉末X線回折パターンの測定
ゼオライト粉末を下記の装置にて、粉末X線回折解析を行い、得られた回折パターンより、ゼオライトの結晶構造を同定する。
ゼオライトの同定には、R.v.Ballmoos and J.B.Higgins著”COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNSFOR ZEOLITES”(ZEOLITES vol.10、NO.5、JUNE、1990)を参照した。
装置:日本国理学電機製、粉末X線回折測定装置RAD−IIIA
測定条件:CuKα線
X線管球電圧 40kV
X線管球電流 30mA
測定角度 2θ 5〜45°
【0070】
(2)ゼオライトのSi/Al原子比、Si/Ti原子比の測定
ゼオライト0.2gと5N水酸化ナトリウム水溶液50gをテフロン(登録商標)製マイクロボンベに移し、マイクロボンベを密封する。これをオイルバス中で、150℃で12〜70時間保持することにより、ゼオライトを完全に溶解させる。得られたゼオライトの溶解水溶液を、イオン交換水で希釈する。(下記、ICP装置を用いた測定に適する希釈度に関しては、ゼオライト組成などにより異なるため、約5〜100倍の内から適宜選択する。)得られた希釈液中のケイ素、アルミニウム、及び、チタン濃度を、下記のICP(プラズマ発光分光分析)装置にて下記の条件にて測定し、その結果からゼオライトのSi/Al原子比、Si/Ti原子比を計算する。
ICP装置、及び、測定条件
装置:日本国理学電機製JOBIN YVON (JY138 ULTRACE)
測定条件:ケイ素測定波長 251.60nm
アルミニウム測定波長 396.152nm
チタン測定波長 334.94nm
プラズマパワー 1.0kw
ネブライザーガス 0.28リットル/min
シースガス 0.3〜0.8リットル/min
クーラントガス 13リットル/min
【0071】
(3)ガスクロマトグラフィーによる反応生成物の分析
反応によって生成したε−カプロラクタムを含有する反応液は、下記のガスクロマトグラフィーにて、下記の条件にて測定し、その結果から反応成績(シクロヘキサノンオキシム転化率、ε−カプロラクタム選択率)を計算する。
ガスクロマトグラフィー分析装置、及び、分析条件
装置:日本国島津製作所製GC−17A
カラム:キャピラリーカラムHR−20M
(内径0.25mm、長さ50m、膜厚さ0.25μm)
分析サンプル前処理:反応液1gに反応溶媒に用いた試薬3g、内標としてエチルベンゼン0.15gを加えたものを分析する。(各重量は精秤する。)
分析サンプル注入量:1マイクロリットル
昇温プログラム:100℃で5分保持し、次いで10℃/分で240℃まで昇温した後、240℃で42分保持する。
スプリット比:100:1
キャリアガス(窒素)全流量:200ml/min
FID検出器:エアー供給圧 50kPa(約500ml/min)、水素供給圧 60kPa(約50ml/min)
【0072】
(4)成形触媒のアトリッションインデックスの測定
アトリッションインデックスとは、流動床反応に使用される様な、粒子状触媒の機械的強度を表す指標である。これは、ある特定の条件で粒子状触媒の摩耗テストを行ない、その際の触媒中の19μm以下の粒子の増加率で定義される。アトリッションインデックスの小さい方が、耐摩耗性が高いことを表す。
以下に、摩耗テスト及びアトリッションインデックス測定の具体的方法について述べる。
粒子状触媒25gに予め水を10重量%含有させ、円筒空状のアトリッション測定装置(円筒部長さ27.5インチ、内径1.5インチ、上部長さ22インチ、内径5インチ、塔頂に微粉末捕集容器を持つ。)に仕込み、吸湿させた空気425リットル/hrを円筒底部の1/64インチ細孔(3ヶ所)より吹き出しながら装置内で5時間触媒を循環流動させ、粒子状触媒を摩耗させた。循環前後の粒子状触媒を光学式粒度分布計で測定し、19μm以下の粒子量の変化を測定した。
アトリッションインデックス(I.D.)は以下の式で計算される。
I.D.=(A−B)/(C−B)×100
A:5時間循環後の触媒中の19μm以下の触媒量(g)
B:仕込み触媒中の19μm以下の触媒量(g)
C:仕込み触媒量(g)
【0073】
次に、実施例及び比較例で用いる触媒の調製方法として、下記する参考例1〜19を挙げる。
以下に、下記の参考例に用いる結晶質粘土鉱物の組成、特徴を列挙する。
【0074】
(1)カオリナイト
含水カオリンASP072(商品名、米国ENGELHARD社製)
カオリナイト含有率:約100重量%
組成:Al 38.5重量%
SiO 45.4重量%
TiO 1.6重量%
その他の微量金属成分 0.9重量%
結晶水 13.6重量%
平均粒径:0.3μm
【0075】
(2)カオリナイト
焼成カオリンSATINTONE SP33(商品名、米国ENGELHARD社製)
焼成温度:800℃
カオリナイト含有率:約100重量%
組成:Al 44.3重量%
SiO 52.2重量%
TiO 1.8重量%
その他の微量金属成分 1.2重量%
結晶水 0.5重量%
平均粒径:1.4μm
【0076】
(3)パイロフィライト
5M(商品名、日本国土屋カオリン社製)
パイロフィライト含有率:約60重量%(残りは主に非晶質のシリカから成る)
組成:Al 17.0重量%
SiO 78.0重量%
その他の微量金属成分 0.4重量%
結晶水 4.6重量%
平均粒径:0.3μm
【0077】
(4)カオリナイト
含水カオリンASP600(商品名、米国ENGELHARD社製)
カオリナイト含有率:約100重量%
組成:Al 38.5重量%
SiO 45.4重量%
TiO 1.6重量%
その他の微量金属成分 0.9重量%
結晶水 13.6重量%
平均粒径:0.6μm
【0078】
(5)タルク
ミクロエースK−1(商品名、日本国日本タルク社製)
タルク含有率:約100重量%
組成:MgO 30.7重量%
SiO 60.1重量%
微量金属 1.6重量%
結晶水 5.3重量%
【0079】
参考例1 触媒(A)の調製
オルト珪酸テトラエチル130gにエタノール278gを添加後、10重量%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液291gを添加した。その溶液をホモジナイザーで5000回転/分で30分撹拌した後、1Lオートクレーブに移し105〜110℃で150時間、500回転/分で撹拌しながら水熱合成を行った。合成されたスラリーをろ過器でろ過後、ほぼ中性まで水洗し、120℃で12時間乾燥し白色結晶を得た。この結晶を500〜550℃で6時間電気炉中、空気下で焼成し、上述の粉末X線回折法により分析した。
分析の結果、面間隔(d)の値(Å)で表して、10.99、9.87、3.83、3.79、3.73、3.69で特徴的なピークが見られた。
【0080】
一方、R.v.Ballmoos and J.B.Higgins著”COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNSFOR ZEOLITES”(ZEOLITES vol.10,NO.5,JUNE,1990)P444Sに記載のMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターンは、d値で表して、11.1±0.2、10.0±0.2、3.85±0.07、3.80±0.05、3.73±0.05、3.71±0.05で特徴的なピークが示されている。
このd値は上記の分析結果と一致することから、得られたゼオライトはMFI型であると同定した。
このゼオライトのSi/Al原子比を上述の方法で測定したところ、このゼオライトのAl含有量は10ppm以下であり、Si/Al原子比は4.5万以上であった。(これは事実上、Alを含有していないと判断できる。)この結果より、このゼオライトはシリカライトであると同定した。
【0081】
このゼオライトを、7.5重量%の硝酸アンモニウム水溶液に添加して10重量%スラリーとし、80℃で2時間イオン交換した。ろ過後、この操作を2回繰り返し、水洗後、120℃で12時間乾燥し、更に500℃で4時間焼成して、H型シリカライトを得た。(ここでいう「H型」とは、上記の硝酸アンモニウム水溶液でイオン交換し、焼成して、水素イオンに交換処理を施したことを意味する。以降、「H型シリカライト」とは、参考例1の方法で合成、及び、調製したゼオライトのことを意味する。)
【0082】
シリカゾル(日本国日産化学製スノーテックスSTN30、30重量%SiO含有、SiO当たりナトリウム700重量ppm以下、pH10強塩基性。)33.3gに、純水137g、H型シリカライト20g、カオリナイト(商品名:ASP072)10gを添加し十分撹拌した後、このスラリーを小型噴霧器にて200℃に加熱したホットプレート上に吹き付け、乾燥触媒前駆体粉末を得た。この粉末を800℃で6時間焼成し、触媒(A)を得た。触媒(A)の成分は、H型シリカライト50重量%、SiO25重量%、カオリナイト25重量%である。
尚、触媒のこの組成は焼成前の乾燥触媒前駆体の組成であり、このことは、以下の参考例(2)〜(19)で得られた触媒の全てについて同様である。
【0083】
参考例2 触媒(B)(結晶質粘土鉱物を含まない触媒)の調製
シリカゾル(スノーテックスSTN30、日本国日産化学製)66.7g、純水113g、H型シリカライト20gを用いた以外は、参考例1と同様にして触媒(B)を得た。触媒(B)の成分は、H型シリカライト50重量%、SiO50重量%である。
【0084】
参考例3 触媒(C)の調製
不純物として含有する微量金属の少ないシリカゾル[これは、日本国特開平4−231319号公報の実施例記載の方法に従って調製したもの(以降、「高純度シリカゾル」と称す。)であって30重量%SiO含有、SiO当たりナトリウム120重量ppm以下、pH10強塩基性。]を用いた以外は、参考例1と同様にして触媒(C)を得た。触媒(C)の成分は、H型シリカライト50重量%、SiO25重量%、カオリナイト25重量%である。
【0085】
参考例4 触媒(D)(結晶質粘土鉱物を含まない触媒)の調製
高純度シリカゾル66.7g、純水113g、H型シリカライト20gを用いた以外は、参考例1と同様にして触媒(D)を得た。触媒(D)の成分は、H型シリカライト50重量%、SiO50重量%である。
【0086】
参考例5 触媒(E)の調製
高純度シリカゾル25.0gに、アルミナゾル(日本国日産化学製アルミナゾル200、10.5重量%Al含有、pH4〜6弱酸性。)23.8g、純水121g、H型シリカライト20g、カオリナイト(商品名:ASP072)10gを用い、又、焼成温度を700℃とした以外は、参考例1と同様にして触媒(E)を得た。触媒(E)の成分は、H型シリカライト50重量%、SiO19重量%、Al6重量%、カオリナイト25重量%である。
【0087】
参考例6 触媒(F)(結晶質粘土鉱物を含まない触媒)の調製
高純度シリカゾル50.0g、アルミナゾル(日本国日産化学製アルミナゾル200)を47.6g、純水82g、H型シリカライト20gを用いた以外は、参考例5と同様にして触媒(F)を得た。触媒(F)の成分は、H型シリカライト50重量%、SiO38重量%、Al12重量%である。
【0088】
参考例7 触媒(G)の調製
アルミナゾル(日本国日産化学製アルミナゾル200)95.2g、純水275g、H型シリカライト20g、カオリナイト(商品名:ASP072)10gを用いた以外は、参考例5と同様にして触媒(G)を得た。触媒(G)の成分は、H型シリカライト50重量%、Al25重量%、カオリナイト25重量%である。
【0089】
参考例8 触媒(H)(結晶質粘土鉱物を含まない触媒)の調製
アルミナゾル(日本国日産化学製アルミナゾル200)を190g、純水190g、H型シリカライト20gを用いた以外は、参考例5と同様にして触媒(H)を得た。触媒(H)の成分は、H型シリカライト50重量%、Al50重量%である。
【0090】
参考例9 触媒(I)の調製
結晶質粘土鉱物の含有量の異なる本発明の触媒の調製例。
高純度シリカゾル53.3g、純水123g、H型シリカライト20g、カオリナイト(商品名:ASP072)4gを用いた以外は、参考例1と同様にして触媒(I)を得た。触媒(I)の成分は、H型シリカライト50重量%、SiO40重量%、カオリナイト10重量%である。
【0091】
参考例10 触媒(J)の調製
高純度シリカゾル33.3gに、純水137g、H型シリカライト20g、タルク(商品名:ミクロエースK−1、日本国日本タルク社製)10gを用いた以外は、参考例1と同様にして、触媒(J)を得た。触媒(J)の成分は、H型シリカライト50重量%、SiO25重量%、タルク25重量%である。
【0092】
参考例11 触媒(K)の調製
高純度シリカゾル33.3gに、純水137g、H型シリカライト20g、モンモリロナイト(商品名:K−10、米国アルドリッチ社製)10gを用いた以外は、参考例1と同様にして、触媒(K)を得た。触媒(K)の成分は、H型シリカライト50重量%、SiO25重量%、モンモリロナイト25重量%である。
【0093】
参考例12 触媒(L)の調製
特3号ケイ酸ソーダ(日本国富士化学社製、SiO25.2重量%含有、Al0.01重量%含有、SiO/NaO=3.3モル比、強塩基性)47.4g、純水71g、硫酸6.0gの溶液に、カオリナイト(商品名:ASP072)10g、H型シリカライト18gを添加し、ホモジナイザーで5000回転/分で十分撹拌した後、このスラリーを小型噴霧器にて200℃に加熱したホットプレート上に吹き付け、乾燥触媒前駆体粉末を得た。これを1モル濃度の硝酸水溶液中(10重量%スラリー)で25℃、1Hr処理した。これを水洗、乾燥して、最後に600℃で5時間焼成して触媒(L)を得た。触媒(L)の成分は、H型シリカライト45重量%、SiO30重量%、カオリナイト25重量%である。
【0094】
参考例13 触媒(M)の調製
カオリナイト(商品名:SATINTONE SP33)10gを用いた以外は、参考例12と同様にして、触媒(M)を得た。触媒(M)の成分は、H型シリカライト45重量%、SiO30重量%、カオリナイト25重量%である。
【0095】
参考例14 触媒(N)の調製
パイロフィライト(商品名:5M)10gを用いた以外は、参考例12と同様にして、触媒(N)を得た。触媒(N)の成分は、H型シリカライト45重量%、SiO40重量%、パイロフィライト15重量%である。
【0096】
参考例15 触媒(O)の調製
カオリナイト(商品名:ASP600)10gを用いた以外は、参考例12と同様にして、触媒(O)を得た。触媒(O)の成分は、H型シリカライト45重量%、SiO30重量%、カオリナイト25重量%である。
【0097】
参考例16 触媒(P)の調製
オルト珪酸テトラエチル130gにエタノール78gを添加後、純水65gにチタンイソプロポキシド0.0886gを添加した溶液を加え、10重量%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液291gを添加した。その溶液を参考例1と同様に水熱合成、後処理を行い白色結晶を得た。この結晶を参考例1と同様に焼成した後、粉末X線回折法により分析した。
分析の結果、粉末X線回折パターンから、面間隔(d)の値(Å)で表して、10.99、9.87、3.83、3.79、3.73、3.69で特徴的なピークが見られた。
このd値は上記の文献に記載されたMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターンと一致することから、得られたゼオライトはMFI型であると同定した。
このゼオライトのSi/Ti原子比を測定したところ、Si/Ti原子比は1900であった。この結果より、このゼオライトはチタノシリケートであると同定した。このゼオライトを、参考例1と同様にイオン交換して、H型チタノシリケートを得た。
H型シリカライトの代わりにH型チタノシリケートを用いた以外は、参考例3と同様にしてカオリナイト(商品名:ASP072)、高純度シリカゾルと混合し、調製して、触媒(P)を得た。触媒(P)の成分は、H型チタノシリケート50重量%、SiO25重量%、カオリナイト25重量%である。
【0098】
参考例17 触媒(Q)の調製
オルト珪酸テトラエチル130gにエタノール278gを添加後、純水13gに溶解した硫酸アルミニウム・14〜18水塩0.197gを加え、10重量%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液291gを添加した。その溶液を参考例1と同様に水熱合成、後処理を行い白色結晶を得た。この結晶を参考例1と同様に焼成した後、粉末X線回折法により分析した。
分析の結果、の位置に特徴的な粉末X線回折パターンから、面間隔(d)の値(Å)で表して、10.99、9.87、3.83、3.79、3.73、3.69で特徴的なピークが見られた。
このd値は上記の文献に記載されたMFI型ゼオライトの粉末X線回折パターンと一致することから、得られたゼオライトはMFI型であると同定した。
このゼオライトのSi/Al原子比を測定したところ、1000であった。
この結果より、このゼオライトがZSM−5であると同定した。このゼオライトを参考例1と同様にイオン交換して、H型ZSM−5(Si/Al原子比=1000)を得た。
H型シリカライトの代わりにH型ZSM−5(Si/Al原子比=1000)を用い、又、焼成温度を600℃とした以外は、参考例3と同様にしてカオリナイト(商品名:ASP072)、高純度シリカゾルと混合、調製し、触媒(Q)を得た。触媒(Q)の成分は、H型ZSM−5(Si/Al原子比=1000)50重量%、SiO25重量%、カオリナイト25重量%である。
【0099】
参考例18 触媒(R)の調製
β型ゼオライト(商品名:CP814B−50、米国ZEOLYST社製、Si/Al原子比=25)を粉末X線回折法により分析した結果、面間隔(d)の値(Å)で表して、11.58、6.56、4.16、3.94、3.01に特徴的なピークが見られた。
一方、米国特許第3,308,069に記載のβ型ゼオライトの特徴的な粉末X線回折パターンは、d値で表して、11.4±0.2、6.7±0.2、4.25±0.1、3.97±0.1、3.0±0.1で特徴的なピークが示されている。
このd値は上記の分析結果と一致することからこのゼオライトはβ型ゼオライトであると同定した。
このゼオライトを1モル濃度の塩化アンモニウム水溶液に添加して10重量%スラリーとし、70℃で3時間イオン交換した。ろ過水洗後、120℃で12時間乾燥し、更に500℃で4時間焼成して、H型β型ゼオライトを得た。
H型ZSM−5(Si/Al原子比=1000)の代わりにH型β型ゼオライトを用いた以外は、参考例17と同様にして、カオリナイト(商品名:ASP072)、高純度シリカゾルと混合、調製し、触媒(R)を得た。触媒(R)の成分は、H型β型ゼオライト50重量%、SiO25重量%、カオリナイト25重量%である。
【0100】
参考例19 触媒(S)の調製
フェリエライト(CP914、米国ZEOLYST社製、Si/Al原子比=28)を粉末X線回折法により分析した結果、面間隔(d)の値(Å)で表して、9.38、5.62、3.97、3.53、3.45に特徴的なピークが見られた。
一方、R.v.Ballmoos and J.B.Higgins著”COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNSFOR ZEOLITES”(ZEOLITES vol.10,NO.5,JUNE,1990)P398Sに記載のフェリエライトの粉末X線回折パターンは、d値で表して、9.58±0.2、5.82±0.2、4.00±0.1、3.53±0.05、3.49±0.05で特徴的なピークが示されている。
このd値は上記の分析結果と一致することから、このゼオライトはフェリエライトであると同定した。
このゼオライトを参考例18と同様にイオン交換して、H型フェリエライトを得た。
H型ZSM−5(Si/Al原子比=1000)の代わりにH型フェリエライトを用いた以外は、参考例17と同様にして、カオリナイト(商品名:ASP072)、高純度シリカゾルと混合、調製し、触媒(S)を得た。触媒(S)の成分は、H型フェリエライト50重量%、SiO25重量%、カオリナイト25重量%である。
【0101】
参考例20
触媒(A)を圧縮成形後粉砕し0.5〜1.5mmに整粒した後、1.5gを固定床反応装置である石英ガラス製反応管(長さ40cm、内径12mm)に充填し、窒素ガスを200Ncc/minで流し、400℃1時間保持した[Nccとは、0℃1気圧の標準状態下での体積(cc)を示す]。次いで窒素ガスを70Ncc/min流しながら350℃に保持し、メタノールにシクロヘキサノンオキシム35.7重量%溶解させた原料溶液を8.4g/hrで供給し、常圧下で反応させた。この時の重量空間速度は、2.0hr−1(ゼオライト基準4.0hr−1)であった。この反応ガスを約3℃に保たれた冷却管を通過させ凝縮させた後、氷冷又はドライアイスエタノールで冷却したトラップに反応液を回収し、上述の方法でガスクロマトグラフィーにより反応液を分析した。この時の反応結果の一部を表1に示す。
シクロヘキサノンオキシムの転化率、ε−カプロラクタムの選択率は、以下の様に計算する。
シクロヘキサノンオキシム転化率(%)=[(O−R)/O]×100
ε−カプロラクタム選択率(%)=[L/(O−R)]×100
O=シクロヘキサノンオキシム供給量(mol/hr)
R=未反応シクロヘキサノンオキシム量(mol/hr)
L=ε−カプロラクタム生成量(mol/hr)
【0102】
比較例1
触媒(B)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表1に示す。
参考例21
触媒(C)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表1に示す。参考例20と比較すると、高純度シリカゾルを用いた場合には、選択性に優れることがわかる。
比較例2
触媒(D)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表1に示す。
【0103】
参考例22
触媒(E)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表1に示す。
アルミナを無機酸化物の一部として含有する触媒(E)は、アルミナを含有しない触媒(C)より選択性は低下したが、触媒成形体の機械的強度は向上した。(機械的強度の測定は、各々の触媒を直径3mm、長さ4mmの円柱状に同一の圧力で圧縮成形し、木屋式硬度計を用いて硬度を測定した。)これは工業触媒として有益な特性である。
比較例3
触媒(F)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表1に示す。
【0104】
参考例23
触媒(G)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表1に示す。
触媒(G)は触媒(E)より選択性は低下したが、触媒(E)よりアルミナ含有量が多いため成形触媒の機械的強度は、触媒(E)より更に向上した。(参考例22と同様に硬度を測定した。)これは工業触媒として有益な特性である。
【0105】
比較例4
触媒(H)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表1に示す。
参考例24
触媒(I)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表1に示す。
参考例25
触媒(J)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表2に示す。
参考例26
触媒(K)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表2に示す。
【0106】
実施例1
触媒(L)1.50gを用いて、原料として、エチレングリコールモノメチルエーテルにシクロヘキサノンオキシム35.7重量%溶解させた原料溶液を8.4g/hrで供給し、窒素ガスを106Ncc/minに変更した以外は、参考例20と同一条件で反応させた。この時の重量空間速度は、2.0hr−1(ゼオライト基準4.5hr−1)であった。この時の反応結果の一部を表3に示す。
【0107】
実施例2
触媒(M)を用いて実施例1と同一条件で反応した結果の一部を表3に示す。
実施例3
触媒(N)を用いて実施例1と同一条件で反応した結果の一部を表3に示す。
実施例4
触媒(O)を用いて実施例1と同一条件で反応した結果の一部を表3に示す。
参考例27
触媒(P)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表4に示す。
参考例28
触媒(Q)を用いて参考例20と同一条件で反応した結果の一部を表4に示す。
【0108】
参考例29
触媒(R)1.2gを用いて、窒素ガスを20Ncc/min流しながら、1−ヘキサノールにシクロヘキサノンオキシムを9.0重量%溶解させた原料溶液を4.4g/hrで供給した以外は参考例20と同一条件で反応を行った。この時の重量空間速度は、0.33hr−1(ゼオライト基準0.66hr−1)であった。この時の反応結果の一部を表4に示す。
【0109】
参考例30
触媒(S)1.5gを用いて、窒素ガスを50Ncc/min流しながら、1−ヘキサノールにシクロヘキサノンオキシムを5.0重量%溶解させた原料溶液を5.0g/hrで供給した以外は、参考例20と同一条件で反応を行った。この時の重量空間速度は、0.17hr−1(ゼオライト基準0.33hr−1)であった。この時の反応結果の一部を表4に示す。
【0110】
実施例5
参考例1で調製したH型シリカライトを圧縮成形後粉砕し、0.5〜1.5mmに整粒した、ゼオライトのみからなる触媒0.375gを用いて、窒素ガスを53Ncc/min流しながら、エチレングリコールモノメチルエーテルにシクロヘキサノンオキシムを35.7重量%溶解させた原料溶液を4.2g/hrで供給し、それ以外の条件は、参考例20と同様にして反応を行った。この時のゼオライト基準の重量空間速度は、4.0hr−1であり、全原料ガス中のシクロヘキサノンオキシム濃度は7.0容量%であった。この時の反応結果の一部を表5、及び、図1、2に示す。
【0111】
比較例5
実施例5と同一の触媒0.375gを用いて、窒素ガスを49Ncc/min流しながら、1−プロパノールにシクロヘキサノンオキシムを35.7重量%溶解させた原料溶液を4.2g/hrで供給し、それ以外の条件は、参考例20と同様にして反応を行った。この時のゼオライト基準の重量空間速度は、4.0hr−1であり、全原料ガス中のシクロヘキサノンオキシム濃度は7.0容量%であった。この時の反応結果の一部を表5、及び、図1、2に示す。
尚、本比較例は、実施例5の反応条件で、本発明の多価アルコール誘導体と、同一炭素数のアルコールとの比較を行ったものである。
【0112】
実施例6
実施例5と同一の触媒0.375gを用いて、窒素ガスを57Ncc/min流しながら、エチレングリコールモノメチルエーテルにシクロヘキサノンオキシムを45.0重量%溶解させた原料溶液を3.3g/hrで供給し、それ以外の条件は、参考例20と同様にして反応を行った。この時のゼオライト基準の重量空間速度は、4.0hr−1であり、全原料ガス中のシクロヘキサノンオキシム濃度は6.9容量%であった。この時の反応結果の一部を表5、及び、図3、4に示す。
【0113】
比較例6
実施例5と同一の触媒0.375gを用いて、窒素ガスを54Ncc/min流しながら、アルコールとエーテルの1:1モル混合溶液(27重量%メタノール、73重量%メチル−tert−ブチルエーテル)に、シクロヘキサノンオキシムを45.0重量%溶解させた原料溶液を3.3g/hrで供給し、それ以外の条件は、参考例20と同様にして反応を行った。この時のゼオライト基準の重量空間速度は、4.0hr−1であり、全原料ガス中のシクロヘキサノンオキシム濃度は7.2容量%であった。この時の反応結果の一部を表5、及び、図3、4に示す。
尚、本比較例は、実施例6の反応条件で、本発明の多価アルコール誘導体と、アルコールとエーテルの等モルの物理的な混合物との比較を行ったものである。
【0114】
実施例7
実施例5と同一の触媒0.375gを用いて、窒素ガスを42Ncc/min流しながら、エチレングリコールモノエチルエーテルにシクロヘキサノンオキシムを20.0重量%溶解させた原料溶液を7.5g/hrで供給し、それ以外の条件は、参考例20と同様にして反応を行った。この時のゼオライト基準の重量空間速度は、4.0hr−1であり、全原料ガス中のシクロヘキサノンオキシム濃度は6.9容量%であった。この時の反応結果の一部を表5に示す。
【0115】
比較例7
実施例5と同一の触媒0.375gを用いて、窒素ガスを44Ncc/min流しながら、1−ヘキサノールにシクロヘキサノンオキシムを20.0重量%溶解させた原料溶液を7.5g/hrで供給し、それ以外の条件は、参考例20と同様にして反応を行った。この時のゼオライト基準の重量空間速度は、4.0hr−1であり、全原料ガス中のシクロヘキサノンオキシム濃度は7.0容量%であった。この時の反応結果の一部を表5に示す。
【0116】
実施例8
流動床反応に用いる触媒の調製例、及び、反応例を示す。
特3号ケイ酸ソーダ(日本国富士化学社製、SiO25.2重量%含有、Al0.01重量%含有、SiO/NaO=3.3モル比、強塩基性)2370gに、純水3570g、硫酸300gを氷冷下に十分混合し、その溶液にカオリナイト(商品名:ASP072)500g、H型シリカライト900gを添加し、ホモジナイザーで5000回転/分で1時間撹拌した。このスラリーを、スプレードライヤー(日本国ニロジャパン社製、モービルマイナ)で噴霧乾燥成形し乾燥触媒前駆体の成形粉末を得た。噴霧乾燥条件は、二流体ノズルを用いて、熱風入口温度250℃、出口温度100℃、スラリーフィード量2Kg/hrで行った。この成形粉末の一部を110℃で乾燥後、1モル濃度の硝酸水溶液中(10重量%スラリー)で25℃、1hr処理した。これを水洗、110℃で12時間乾燥して、最後に600℃で5時間焼成して触媒(T)を得た。触媒(T)の成分は、H型シリカライト45重量%、SiO30重量%、カオリナイト25重量%であった。光学顕微鏡で観察したこの粉末の粒子径は、主には50〜100μmの範囲の球状粒子であった。
この触媒(T)の上述した方法で測定したアトリッションインデックスは0.2重量%であった。すなわち、触媒は、耐摩耗性に極めて優れ、流動床反応触媒として実用的な形状、及び、機械的強度を有していることがわかった。
【0117】
次に、触媒(T)40.0gを、流動床反応用の石英製ガラス管(長さ60cm、内径25mm)に充填し、窒素ガスを393Ncc/min流しながら触媒を流動させ350℃で1時間保持した。次いで、エチレングリコールモノメチルエーテルにシクロヘキサノンオキシムを35.7重量%溶解させた原料溶液を30.8g/hrで供給し、常圧下で反応させた。この時の重量空間速度は、0.27hr−1(ゼオライト基準0.61hr−1)であった。この時の反応結果の一部を表6に示す。
特定の多価アルコール誘導体を共存させる本発明の方法により、本発明の反応に好ましい反応形態である流動床反応様式を用いる場合においても、非常に優れた触媒性能を示すことがわかった。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0124】
固体酸触媒を用いて、気相反応条件の下に、シクロヘキサノンオキシムの転位反応により、シクロヘキサノンオキシムから、ε−カプロラクタムを製造するに際し、特定の多価アルコール誘導体を共存させる本発明の方法により、高い選択率と収率で、シクロヘキサノンオキシムから所望のε−カプロラクタムを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相反応条件の下に、シクロヘキサノンオキシムを固体酸触媒と接触させて、シクロヘキサノンオキシムの転位反応を行って、ε−カプロラクタムを製造する方法において、該転位反応を、次式で表される多価アルコール誘導体の共存の下に行うことを特徴とする方法。
−O−R−OH
(ただし、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
【請求項2】
該固体酸触媒が、ゼオライト又はゼオライトを含有する触媒であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該ゼオライトが、Si/Al原子比が10以上のアルミノシリケート、Si/金属原子比が10以上のメタロシリケート及びシリカライトよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該ゼオライトが、MFI型ゼオライトであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
該多価アルコール誘導体が、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノエチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該多価アルコール誘導体が、エチレングリコールモノメチルエーテルであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該シクロヘキサノンオキシムの該転位反応を、反応温度が200〜500℃、反応圧力が0.01〜1MPa及びシクロヘキサノンオキシムの重量空間速度が0.01〜100hr−1の条件下で行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該転位反応を、流動床型反応方式で行うことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該転位反応に使用した触媒の一部を、該転位反応のための反応器より連続的又は断続的に抜き出し、酸素含有ガス、又は、不活性ガス雰囲気下で触媒を再生し、得られる再生触媒を該反応器に戻すことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−114219(P2009−114219A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51764(P2009−51764)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【分割の表示】特願2002−564493(P2002−564493)の分割
【原出願日】平成14年2月14日(2002.2.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】