説明

ε型銅フタロシアニン顔料及びそれを用いたカラーフィルタ用顔料組成物

【課題】 高いコントラスト、高い輝度を有し、更に230℃以上の高温で焼成処理を行なった後でもこれらの特性を損なわないε型銅フタロシアニン顔料、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 広角X線回折スペクトルに基づき(式1)により算出されるε化率が65〜75であり、且つ、ブラッグ角2θが7.7°における半値幅が0.56°〜0.75°であり、且つブラッグ角2θが9.3°における半値幅が0.66°〜0.85°であることを特徴とするε型銅フタロシアニン顔料。


(式1)
(式中、Aは、ブラッグ角2θ=6.8°±0.1°におけるピークの絶対強度、Bはブラッグ角2θ=7.6°±0.1°におけるピークの絶対強度を表す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細化されたε型銅フタロシアニン顔料、それを用いたカラーフィルタ用顔料組成物及びカラーフィルタ、並びに該顔料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のカラーフィルタは、赤色画素部(R)、緑色画素部(G)及び青色画素部(B)を有する。これらの各画素部は、いずれも有機顔料を分散させた樹脂の薄膜が基板上に設けられた構造であり、有機顔料としては、赤、緑及び青の各色の有機顔料が用いられている。
【0003】
これら画素部のうち、青色画素部を形成するための青色有機顔料としては、一般に、ε型銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)が用いられており、必要に応じて調色のために、これに紫色有機顔料のジオキサジンバイオレット顔料(C.I.ピグメントバイオレット23)が少量併用されている。
【0004】
カラーフィルタを作成する際の有機顔料は、従来の汎用用途とは全く異なる特性、具体的には、液晶表示装置の表示画面がよりハッキリ見える様にする(高コントラスト化)、或いは、同じく表示画面がより明るくなる様にする(高輝度化)等の要求がある。この様な要求に応じるため、平均一次粒子径が100nm以下となる様に微細化された粉体の有機顔料が多用されている。また、カラーフィルタ作成においては、一般的に、230℃以上の高温で焼成処理を行うため、使用する有機顔料は230℃以上の耐熱性が要求され、焼成後においてもコントラスト、輝度が低下しない有機顔料が要求されている。
【0005】
ε型銅フタロシアニン顔料を用いたカラーフィルタ用組成物としては特許文献1の技術が知られている。この技術は、α型銅フタロシアニンを含むε型銅フタロシアニンクルード等を100℃以下でソルベントソルトミリングすることにより、窒素吸着法におけるBET比表面積が95〜150mのε型銅フタロシアニン顔料を製造する方法に関するものである。このε型銅フタロシアニン顔料を用いたカラーフィルタは、鮮明性(コントラスト)と明度(輝度)に優れているが、最近はより高い性能が求められている。
【0006】
上記技術以外にも、ε型銅フタロシアニン顔料を用いたインキ等の光沢や着色力を向上させるため、顔料を微細化する多くの技術が知られている。例えば、有機顔料と水溶性無機塩と水溶性有機液体との混合物を、混合機内で70℃以上、150℃以下の範囲内で摩砕混練を行い結晶転移させた後、0℃以上、70℃未満の範囲内で摩砕混練を行うことにより微細有機顔料の製造する方法がある。そして、その実施例ではα型銅フタロシアニンを含むε型銅フタロシアニンを微細化する例が開示されている(特許文献2)。また、第1の混練工程における混練温度が80〜150℃であり、第2の混練工程における混練温度が30〜80℃である、ε型銅フタロシアニン粒子の製造方法が開示されている(特許文献3)。
【0007】
しかしながら、上記のいずれの技術でも、現在求められている高いコントラストを有し、且つ高い輝度をも有するε型銅フタロシアニン顔料を用いたカラーフィルタ用顔料組成物は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−121420
【特許文献2】特開2008−19367
【特許文献3】特表2011−503313
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、高いコントラストを有し、且つ高い輝度をも有するε型銅フタロシアニン顔料、及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の他の課題は、230℃以上の高温で焼成処理を行なった後でも上記の特性を損なわず、高いコントラスト及び高い輝度を示すε型銅フタロシアニン顔料、及びその製造方法を提供することである。
更に、本発明の他の課題は、上記ε型銅フタロシアニン顔料を用いたカラーフィルタ用顔料組成物及びカラーフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、銅フタロシアニン顔料と水溶性無機塩と水溶性有機液体との混合物を80℃以上、90℃以下でソルベントソルトミリングし、その後内容物を90℃以上、110℃以下の高温に保って摩砕を継続することにより、ε化率が高い銅フタロシアニン微細顔料を製造でき、これを用いてカラーフィルタを作成すると、従来よりも高コントラスト、高輝度のカラーフィルタが得られることを見出した。そして、そのような製造工程により製造されたε型銅フタロシアニン顔料のε化率は高く、また、ブラッグ角2θが7.7°及び9.3°であるときの半値幅が特定の範囲であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
従来、カラーフィルタ用微細顔料を製造するためには、できるだけ低温でニーダー摩砕することで結晶成長を抑制し、高コントラストの微細顔料を得ていた。一方、ε型銅フタロシアニン微細顔料においては、摩砕温度を低くするとε型からα型への結晶変換が進み、ε化率が低下し、輝度が下がるという問題があった。実際に高温摩砕後に低温摩砕を行うと、微細化できコントラストは上がるものの輝度が低下する。本発明は、低温摩砕により微細化を進めることで高コントラストの微細顔料とし、その後2〜4時間90℃以上、110℃以下の高温に保って摩砕を行うことにより、ε型の含有量を高め、ε化率を高めることで高コントラストを維持しながら高輝度化を図ることに成功したものである。
【0012】
即ち本発明は、広角X線回折スペクトルに基づき(式1)により算出されるε化率が65〜75であり、且つ、ブラッグ角2θが7.7°における半値幅が0.56°〜0.75°であり、且つブラッグ角2θが9.3°における半値幅が0.66°〜0.85°であることを特徴とするε型銅フタロシアニン顔料を提供する。

(式1)
(式中、Aは、ブラッグ角2θ=6.8°±0.1°におけるピークの絶対強度、Bはブラッグ角2θ=7.6°±0.1°におけるピークの絶対強度を表す。)。
【0013】
また、本発明は、上記のε型銅フタロシアニン顔料を用いたことを特徴とするカラーフィルタ用顔料組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記のカラーフィルタ用顔料組成物を用いたことを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0015】
また、本発明は、銅フタロシアニン顔料と水溶性無機塩と水溶性有機液体との混合物を、混合機内で80℃〜90℃の範囲内で摩砕混練を行なった後、95℃〜110℃の範囲内で摩砕混練を行うことを特徴とする上記のε型銅フタロシアニンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のε型銅フタロシアニン顔料は、広角X線回折スペクトルに基づき(式1)により算出されるε化率が65〜75であり、且つ、ブラッグ角2θが7.7°における半値幅が0.56°〜0.75°であり、且つブラッグ角2θが9.3°における半値幅が0.66°〜0.85°を有するので、従来のε型銅フタロシアニン顔料に比べて、微細化と高いε化率を両立するという格別顕著な効果を奏する。このε型銅フタロシアニン顔料をカラーフィルタ用途で用いると、鮮高いコントラストを有し、且つ高い輝度をも有する青色のカラーフィルタが得られるという格別顕著な効果を奏する。本発明の製造方法では、80℃〜90℃の範囲内で摩砕混練を行なった後、95℃〜110℃の範囲内で摩砕混練を行うので、微細化と高いε化率を両立するε型銅フタロシアニン顔料が容易に製造できるという格別顕著な効果を奏する。
【0017】
特に、230℃以上の高温で焼成処理を行なった後でも上記の特性を損なわず、高いコントラスト及び高い輝度を示すカラーフィルタとすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、
(1)銅フタロシアニン顔料と水溶性無機塩と水溶性有機液体との混合物を製造し、
(2)該混合物を混合機内で80℃〜90℃の範囲内で第一の摩砕混練を行ない、
(3)第一の摩砕混練後、95℃〜110℃の範囲内で第二の摩砕混練を行う
ことを特徴とするε型銅フタロシアニンの製造方法である。
【0019】
(銅フタロシアニン顔料)
混合物を製造する際の銅フタロシアニン顔料としては、種々の結晶形を有する銅フタロシアニンを用いることができる。例えば、α型、β型、δ型、ε型の銅フタロシアニン、またはそのクルード、セミクルード等を用いることができる。中でも、ε型銅フタロシアニンを用いることが好ましい。
【0020】
また、本発明で用いる銅フタロシアニンがε型銅フタロシアニンクルードである場合、一次粒子の平均粒子径が50〜0.1μmのε型銅フタロシアニンであることが好ましく、α型銅フタロシアニンを含むε型銅フタロシアニンセミクルードである場合、一次粒子の平均粒子径0.02〜0.001μmの粒子が凝集したα型銅フタロシアニンとε型銅フタロシアニンとの混合物であることが好ましい。
【0021】
ここで、ε型銅フタロシアニンクルードの製造方法としては、金属フタロシアニン誘導体の存在下または不存在下で銅フタロシアニンを製造する公知慣用の製造方法をいずれも採用できるが、フタロシアニン誘導体の少量の存在下で銅フタロシアニンを製造する方法は、ε型銅フタロシアニンの含有率が高くなるので好ましい。なお、フタロシアニン誘導体については追って詳述する。
【0022】
この様な製造方法としては、例えば、ニトロベンゼン溶剤中、無水フタル酸と尿素と銅塩及び反応触媒を銅フタロシアニンスルホクロリドとデヒドロアビエチルアミンとの縮合反応物の存在下に加熱攪拌して合成する方法(特開昭53−39325号公報)や、アルキルベンゼン溶媒中で、無水フタル酸と尿素と銅塩及び反応触媒を銅フタロシアニンスルホアミド誘導体とシード結晶としてのε型銅フタロシアニン存在下に加熱攪拌して合成する方法(特開昭57−149358号公報)等を用いることができる。
【0023】
α型銅フタロシアニンを含むε型銅フタロシアニンセミクルードは、例えばε型銅フタロシアニンクルードを摩砕することにより得ることが出来るが、通常は、ε型銅フタロシアニンクルードを粉砕媒体の存在下で乾式摩砕することにより得られる。
【0024】
また、特開2009−13300号公報のように、α型銅フタロシアニン顔料を、少量のフタルイミドアルキル化銅フタロシアニン誘導体とシードとなるε型銅フタロシアニン、食塩等の磨砕助剤と共に有機溶剤の存在下、ニーダー等の混練設備で機械的磨砕を行うソルベントソルトミリング処理により得ることもできる。
【0025】
(混合物)
前記混合物としては、銅フタロシアニン顔料85部に対し、水溶性無機塩を800部以上3000部以下、より好ましくは900部以上2000部以下、水溶性有機液体を180部〜240部を、より好ましくは190部以上230部以下を含む混合物であることが好ましい。
【0026】
前記混合物は、さらに顔料誘導体を含有することが好ましい。顔料誘導体としては、例えば、フタルイミドメチル誘導体、同スルホン酸誘導体、同N−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、同N−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体等を挙げることが出来る。もちろん、これら誘導体は、異なる種類のものを二種以上併用することも出来る。
【0027】
顔料誘導体の使用量は、銅フタロシアニン顔料85部に対して、4部以上17以下が好ましく、6部以上13部以下がより好ましい。
【0028】
前記混合物は、さらに樹脂を含有することが好ましい。樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フルオレン系樹脂、ロジン、ロジン誘導体、ロジン変性マレイン酸系樹脂、ロジン変性フェノール系樹脂、ゴム誘導体、タンパク誘導体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、マレイン酸樹脂、スチレン樹脂、スチレン−マレイン酸共重合系樹脂、ブチラール系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ゴム系樹脂、セルロース類、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、および上記樹脂のオリゴマー、モノマー類を挙げることができるが、これらに限らない。中でも、(メタ)アクリル酸ベンジル−(メタ)アクリル酸共重合体であるアクリル樹脂は、カラーフィルタに用いられる樹脂と同じであり、屈折率も同じであるため高いコントラストのカラーフィルタが得られることから、好ましい。ソルベントソルトミリング時に銅フタロシアニン顔料に含めることが出来る樹脂は、通常、銅フタロシアニン顔料1質量部当たり0.01〜0.3質量部である。
【0029】
(水溶性無機塩)
本発明で使用する水溶性無機塩としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。この様な無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
【0030】
(水溶性有機液体)
本発明で使用する水溶性有機液体としては、結晶成長を抑制し得るものが好適に使用でき、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1-メトキシ-2-プロパノール等を用いることができるが、エチレングリコール又はジエチレングリコールが好ましい。
【0031】
(混練方法)
本発明では、種々の混練装置を用いることができる。例えば、ニーダー、ミックスマーラー、特開2007−100008号公報に記載のプラネタリー型ミキサーである井上製作所株式会社製のトリミックス(商標名)や、特開平4−122778号公報に記載の連続式二軸押出機や、特開2006−306996号公報に記載の連続式一軸混練機である浅田鉄工株式会社製のミラクルKCK等を用いることができる。中でもバッチ式ニーダーにて混練することが好ましい。具体的には、井上製作所株式会社製ソルトミリングニーダー等がある。
【0032】
ソルベントソルトミリング時の温度は、80℃〜90℃の範囲内で第一の摩砕混練を行ない、第一の摩砕混練後、95℃〜110℃の範囲内で第二の摩砕混練を行うことが好ましい。ソルベントソルトミリングの時間は、第一の摩砕混練は、5時間から20時間が好ましく、8〜18時間がより好ましく、第二の摩砕混練は、0.5時間から6時間が好ましく、1時間から4時間がより好ましい。
【0033】
こうして、広角X線回折スペクトルに基づき(式1)により算出されるε化率が65〜75であり、且つ、ブラッグ角2θが7.7°における半値幅が0.56°〜0.75°であり、且つブラッグ角2θが9.3°における半値幅が0.66°〜0.85°を有する本発明のε型銅フタロシアニン顔料、無機塩、有機溶剤を主成分として含む混合物が得られるが、この混合物から有機溶剤と無機塩を除去し、必要に応じてε型銅フタロシアニン微細顔料を主体とする固形物を洗浄、濾過、乾燥、粉砕等をすることにより、ε型銅フタロシアニン微細顔料粉体を得ることが出来る。洗浄としては、水洗、湯洗のいずれも採用できる。洗浄回数は、1〜5回の範囲で繰り返すことも出来る。水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を用いた前記混合物の場合は、水洗することで容易に有機溶剤と無機塩を除去することが出来る。
【0034】
本発明のε型銅フタロシアニン顔料は、遊離金属、遊離金属イオン源を含んでいても良いが、それは出来るだけ少ない方が好ましい。例えば、有機顔料が銅フタロシアニン顔料の場合の本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、銅や銅イオン源の含有量が出来るだけ少ない方が、液晶表示特性に悪影響が出難くなるので好ましい。含まれる遊離銅は、銅フタロシアニンを合成する際の残存する遊離銅である場合や、合成後の銅フタロシアニンの分解によって生成したものである場合がある。
【0035】
この様な、遊離金属、遊離金属イオン源は、特開2008−308605に記載されているように酸類で洗浄を行うことができる。使用される酸類は、例えば、塩酸、硫酸を挙げることができ、塩酸や硫酸の濃度は、0.5%〜4%が好ましい。また、洗浄時の温度は、50〜90℃が好ましい。また、水を用いて洗浄してもよい。
【0036】
カラーフィルタの耐熱性低下が少ない点で、有機顔料としてε型銅フタロシアニン顔料を含む本発明のカラーフィルタ用顔料組成物の場合は、遊離銅の含有率は、顔料組成物中に900質量ppm以下であることが好ましい。
【0037】
上記した濾別、洗浄後の乾燥としては、例えば、乾燥機に設置した加熱源による80〜120℃の加熱等により、顔料の脱水及び/又は脱溶剤をする回分式あるいは連続式の乾燥等が挙げられ、乾燥機としては一般に箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等がある。また、乾燥後の粉砕は、比表面積を大きくしたり一次粒子の平均粒子径を小さくするための操作ではなく、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機を用いた乾燥の場合のように顔料がランプ状等のとなった際に顔料を解して粉末化するために行うものであり、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等による粉砕等が挙げられる。
【0038】
こうして、広角X線回折スペクトルに基づき(式1)により算出されるε化率が65〜75であり、且つ、ブラッグ角2θが7.7°における半値幅が0.56°〜0.75°であり、且つブラッグ角2θが9.3°における半値幅が0.66°〜0.85°を有する本発明のε型銅フタロシアニン微細顔料を主成分として含む顔料粉末が得られる。本発明の特定の広角X線回折スペクトルのε型銅フタロシアニン顔料は、公知慣用の用途にいずれも使用できるが、この広角X線回折スペクトルが達成されたことにより、着色すべき合成樹脂等への分散性がより良好となる。
【0039】
また、カラーフィルタ分野においては、カラーフィルタ用レジストインキを硬化する際に多用される365nmにおける遮光性は低下し、レジストの光硬化感度の低下がなく、現像時の膜へりやパターン流れも起こり難くなるので好ましい。
【0040】
尚、本発明における広角X線回折スペクトルは、JIS K 0131に従って測定される。
【0041】
カラーフィルタを製造する場合は、本発明の微細顔料は、広角X線回折スペクトルに基づき(式1)により算出されるε化率が65〜75であり、且つ、ブラッグ角2θが7.7°における半値幅が0.56°〜0.75°であり、且つブラッグ角2θが9.3°における半値幅が0.66°〜0.85°を有することが好ましい。上記範囲であると、顔料凝集も比較的弱く、カラーフィルタ用レジストインキへの顔料分散が容易であり、近年要求されているコントラストと輝度とのいずれもが高いカラーフィルタがより簡便に得られる。
【0042】
なお、本発明においては、青色カラーフィルタ用として、赤味つけのためにジオキサジン系化合物顔料を併用することも出来る。ジオキサジン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 23、同37、C.I.ピグメントブルー80等が挙げられる。本発明では、従来の小さい比表面積のε型銅フタロシアニン顔料をジオキサジン系化合物顔料と併用していた場合における、液晶ディスプレイとした時の輝度の低下がより小さくなるし、青色領域の光透過量もより大きくなる。
【0043】
本発明のε型銅フタロシアニン顔料は、従来公知の方法でカラーフィルタ画素部の形成に使用することができる。本発明にかかる組成物の分散方法で代表的な方法としては、フォトリソグラフィー法であり、これは、後記する光硬化性組成物を、カラーフィルタ用の透明基板のブラックマトリックスを設けた側の面に塗布、加熱乾燥(プリベーク)した後、フォトマスクを介して紫外線を照射することでパターン露光を行って、画素部に対応する箇所の光硬化性化合物を硬化させた後、未露光部分を現像液で現像し、非画素部を除去して画素部を透明基板に固着させる方法である。この方法では、光硬化性組成物の硬化着色皮膜からなる画素部が透明基板上に形成される。
【0044】
赤色、緑色、青色の色ごとに、後記する光硬化性組成物を調製して、前記した操作を繰り返すことにより、所定の位置に赤色、緑色、青色の着色画素部を有するカラーフィルタを製造することができる。有機顔料として本発明のε型銅フタロシアニンを含む本発明のカラーフィルタ用顔料組成物からは、青色画素部を形成することができる。尚、赤色画素部および緑色画素部を形成するための光硬化性組成物を調製するには、公知慣用の赤色顔料と緑色顔料を使用することができる。
【0045】
赤色画素部を形成するための顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177、同209、同242、同254等が、緑色画素部を形成するための顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、同10、同36、同47、同58等が挙げられる。これら赤色画素部と緑色画素部の形成には、黄色顔料を併用することもできる。その後、必要に応じて、未反応の光硬化性化合物を熱硬化させるために、カラーフィルタ全体を加熱処理(ポストベーク)することもできる。
【0046】
後記する光硬化性組成物をガラス等の透明基板上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等が挙げられる。
【0047】
透明基板に塗布した光硬化性組成物の塗膜の乾燥条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常、50〜150℃で、1〜15分間程度である。また、光硬化性組成物の光硬化に用いる光としては、200〜500nmの波長範囲の紫外線、あるいは可視光を使用するのが好ましい。この波長範囲の光を発する各種光源が使用できる。
【0048】
現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、スプレー法等が挙げられる。光硬化性組成物の露光、現像の後に、必要な色の画素部が形成された透明基板は水洗いし乾燥させる。こうして得られたカラーフィルタは、ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、90〜280℃で、所定時間加熱処理(ポストベーク)することによって、着色塗膜中の揮発性成分を除去すると同時に、光硬化性組成物の硬化着色皮膜中に残存する未反応の光硬化性化合物が熱硬化し、カラーフィルタが完成する。
【0049】
カラーフィルタの青色画素部を形成するための光硬化性組成物は、有機顔料としてε型銅フタロシアニンを含む本発明のカラーフィルタ用顔料組成物と、分散剤と、光硬化性化合物と、有機溶剤とを必須成分とし、必要に応じて熱可塑性樹脂を用いて、これらを混合することで調製することができる。青色画素部を形成する着色樹脂皮膜に、カラーフィルタの実生産で行われるベーキング等に耐え得る強靱性等が要求される場合には、前記光硬化性組成物を調製するに当たって、光硬化性化合物だけでなく、この熱可塑性樹脂を併用することが不可欠である。熱可塑性樹脂を併用する場合には、有機溶剤としては、それを溶解するものを使用するのが好ましい。
【0050】
前記光硬化性組成物の製造方法としては、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物と、有機溶剤と分散剤とを必須成分として使用し、これらを混合し均一となる様に攪拌分散を行って、まずカラーフィルタの画素部を形成するための顔料分散液を調製してから、そこに、光硬化性化合物と、必要に応じて熱可塑性樹脂や光重合開始剤等を加えて前記光硬化性組成物とする方法が一般的である。
【0051】
ここで分散剤としては、例えば、ビックケミー社のディスパービック130、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2020、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2096、ディスパービック2150、ディスパービックLPN21116、ディスパービックLPN6919エフカ社のエフカ46、エフカ47、エフカ452、エフカLP4008、エフカ4009、エフカLP4010、エフカLP4050、LP4055、エフカ400、エフカ401、エフカ402、エフカ403、エフカ450、エフカ451、エフカ453、エフカ4540、エフカ4550、エフカLP4560、エフカ120、エフカ150、エフカ1501、エフカ1502、エフカ1503、ルーブリゾール社のソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13240、ソルスパース13650、ソルスパース13940、ソルスパース17000、18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース36000、ソルスパース37000、ソルスパース38000、ソルスパース41000、ソルスパース42000、ソルスパース43000、ソルスパース46000、ソルスパース54000、ソルスパース71000、味の素株式会社のアジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB814、アジスパーPN411、アジスパーPA111等の分散剤や、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキッド系樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジン等の天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジン等の変性ロジン、ロジンアミン、ライムロジン、ロジンアルキレンオキシド付加物、ロジンアルキド付加物、ロジン変性フェノール等のロジン誘導体等の、室温で液状かつ水不溶性の合成樹脂を含有させることが出来る。これら分散剤や、樹脂の添加は、フロッキュレーションの低減、顔料の分散安定性の向上、分散体の粘度特性を向上にも寄与する。
【0052】
有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1-メトキシ-2-プロパノール等を用いることができるが、エチレングリコール又はジエチレングリコールが好ましい。
【0053】
光硬化性組成物の調製に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等が挙げられる。
【0054】
光硬化性化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチルロールプロパトントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の比較的分子量の小さな多官能モノマー、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート等の様な比較的分子量の大きな多官能モノマーが挙げられる。
【0055】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン−2’−スルホン酸、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸等が挙げられる。市販の光重合開始剤としては、たとえば、チバスペシャルティーケミカルズ社製「イルガキュア(商標名)−184」、「イルガキュア(商標名)−369」、「ダロキュア(商標名)−1173」、BASF社製「ルシリン−TPO」、日本化薬社製「カヤキュアー(商標名)DETX」、「カヤキュアー(商標名)OA」、ストーファー社製「バイキュアー10」、「バイキュアー55」、アクゾー社製「トリゴナールPI」、サンド社製「サンドレー1000」、アップジョン社製「デープ」、黒金化成社製「ビイミダゾール」などがある。
【0056】
また上記光重合開始剤に公知慣用の光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、たとえば、アミン類、尿素類、硫黄原子を有する化合物、燐原子を有する化合物、塩素原子を有する化合物またはニトリル類もしくはその他の窒素原子を有する化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0057】
光重合開始剤の配合率は、特に限定されるものではないが、質量基準で、光重合性あるいは光硬化性官能基を有する化合物に対して0.1〜30%の範囲が好ましい。0.1%未満では、光硬化時の感光度が低下する傾向にあり、30%を超えると、顔料分散レジストの塗膜を乾燥させたときに、光重合開始剤の結晶が析出して塗膜物性の劣化を引き起こすことがある。
【0058】
前記した様な各材料を使用して、質量基準で、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物100部当たり、300〜1000部の有機溶剤と、1〜100部の分散剤とを、均一となる様に攪拌分散して前記顔料分散液を得ることができる。次いでこの顔料分散液に、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物1部当たり、熱可塑性樹脂と光硬化性化合物の合計が3〜20部、光硬化性化合物1部当たり0.05〜3部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルタ画素部を形成するための光硬化性組成物を得ることができる。
【0059】
現像液としては、公知慣用の有機溶剤やアルカリ水溶液を使用することができる。特に前記光硬化性組成物に、熱可塑性樹脂または光硬化性化合物が含まれており、これらの少なくとも一方が酸価を有し、アルカリ可溶性を呈する場合には、アルカリ水溶液での洗浄がカラーフィルタ画素部の形成に効果的である。
【0060】
顔料分散法のうち、フォトリソグラフィー法によるカラーフィルタ画素部の製造方法について詳記したが、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物を使用して調製されたカラーフィタ画素部は、その他の電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(PhotovoltaicElectrodeposition)法、インクジェット法、反転印刷法、熱硬化法等の方法で青色画素部を形成して、カラーフィルタを製造してもよい。
【0061】
カラーフィルタは、有機顔料として、赤色顔料、緑色顔料、青色顔料を含む本発明のカラーフィルタ用顔料組成物を使用して得た各色の光硬化性組成物を使用し、平行な一対の透明電極間に液晶材料を封入し、透明電極を不連続な微細区間に分割すると共に、この透明電極上のブラックマトリクスにより格子状に区分けされた微細区間のそれぞれに、赤、緑および青のいずれか1色から選ばれたカラーフィルタ着色画素部を交互にパターン状に設ける方法、あるいは基板上にカラーフィルタ着色画素部を形成した後、透明電極を設ける様にすることで得ることができる。
【0062】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、鮮明性と明度に優れる着色顔料分散体を提供でき、カラーフィルタ用途の他、塗料、プラスチック(樹脂成型品)、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、静電荷像現像用トナー、インクジェット記録用インク、熱転写インキ等の着色にも適用することができる。
【0063】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、もとより本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」、「%」及び「ppm」はいずれも質量基準である。
【0064】
(実施例1)
平均粒子径80nmのε型銅フタロシアニン顔料(FASTOGEN(登録商標) Blue AE−8(DIC株式会社製ε型銅フタロシアニン顔料、粉末X線回折の7.7°の半値幅は0.35°、9.3°の半値幅は、0.42°で、ε化率は81であった。))85部、銅フタロシアニンフタルイミドメチル誘導体5部、アクリル系樹脂10部、粉砕した塩化ナトリウム1000部、およびジエチレングリコール210部をニーダー中で、内容物の温度を80〜90℃に保って10時間湿式摩砕を行った。その後、内容物の温度を100℃として湿式摩砕を2時間行い、完了した。得られた内容物を大過剰の水で洗浄、濾過し、ろ液の比電導度が原水の比電導度+20μS/cm以下となるまで水洗することによって、ε型銅フタロシアニン顔料組成物のウエットケーキを得た。得られたウエットケーキをビーカーに移し、60〜70℃の水4300部を加え、攪拌分散してスラリーとした。引き続き、425部の20%塩酸を前記顔料スラリー中に添加し、液温60℃を保ちながら1時間攪拌した。その後、濾過、温水洗浄、乾燥、粉砕し、ε型銅フタロシアニン顔料を得た。粉末X線回折の7.7°の半値幅は0.668°、9.3°の半値幅は、0.802°で、ε化率は70%であった。
【0065】
このようにして得られたε型銅フタロシアニン顔料10部をポリビンに入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55部、BYK(商標名)LPN21116(ビックケミー株式会社製)7.0部、0.3−0.4mmφセプルビーズを加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で4時間分散し、顔料分散液を得た。この顔料分散液75.00部とポリエステルアクリレート樹脂(アロニックス(商標名)M7100、東亜合成化学工業株式会社製)5.50部、ジぺンタエリストールヘキサアクリレート(KAYARAD(商標名)DPHA、日本化薬株式会社製)5.00部、ベンゾフェノン(KAYACURE(商標名)BP−100、日本化薬株式会社製)1.00部、ユーカーエステルEEP13.5部を分散撹拌機で撹拌し、孔径1.0μmのフィルターで濾過し、カラーレジストを得た。このカラーレジストは50mm×50mm、1mmの厚ガラスに乾燥膜厚が2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、その後90℃で20分間予備乾燥して塗膜を形成させた。次いで、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を0.5%の炭酸ナトリウム水溶液中で洗浄し、230℃で90分間焼成することでカラーフィルタとした。
【0066】
(実施例2)
実施例1における10時間湿式摩砕後の100℃での湿式摩砕を4時間に変えたこと以外は同様にして、カラーフィルタを作成した。
【0067】
(実施例3)
実施例1における10時間湿式摩砕後の92℃での湿式摩砕を2時間に変えたこと以外は同様にして、カラーフィルタを作成した。
【0068】
(比較例1)
実施例1の10時間湿式摩砕後の100℃での2時間湿式摩砕を無しにして、他は同様にしてカラーフィルタを作成した。ε型銅フタロシアニン顔料の粉末X線回折の7.7°の半値幅は0.618°、9.3°の半値幅は、0.735°、ε化率は64と低く、コントラスト・輝度とも実施例に比べて低かった。
【0069】
(評価例)
実施例、比較例で作成したカラーフィルタの230℃焼成前後のコントラスト、輝度の値を下表に記載した。
本発明のε型銅フタロシアニン顔料で作成したカラーフィルタは、従来よりもコントラスト、輝度の値を向上させることができることは明らかである。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
広角X線回折スペクトルに基づき(式1)により算出されるε化率が65〜75であり、且つ、ブラッグ角2θが7.7°における半値幅が0.56°〜0.75°であり、且つブラッグ角2θが9.3°における半値幅が0.66°〜0.85°であることを特徴とするε型銅フタロシアニン顔料。

(式1)
(式中、Aは、ブラッグ角2θ=6.8°±0.1°におけるピークの絶対強度、Bはブラッグ角2θ=7.6°±0.1°におけるピークの絶対強度を表す。)。
【請求項2】
請求項1記載のε型銅フタロシアニン顔料を用いたことを特徴とするカラーフィルタ用顔料組成物。
【請求項3】
請求項2記載のカラーフィルタ用顔料組成物を用いたことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項4】
銅フタロシアニン顔料と水溶性無機塩と水溶性有機液体との混合物を、混合機内で80℃〜90℃の範囲内で摩砕混練を行なった後、95℃〜110℃の範囲内で摩砕混練を行うことを特徴とする請求項1記載のε型銅フタロシアニンの製造方法。
【請求項5】
前記銅フタロシアニン顔料がε型銅フタロシアニンである請求項4記載のε型銅フタロシアニンの製造方法。
【請求項6】
前記混合物が、銅フタロシアニン顔料85部に対し、水溶性無機塩を800部以上3000部以下、水溶性有機液体を180部〜240部を含む混合物である請求項4又は5記載のε型銅フタロシアニンの製造方法。
【請求項7】
前記混合物が、さらに顔料誘導体を含有する請求項4〜6のいずれかに記載のε型銅フタロシアニンの製造方法。
【請求項8】
前記混合物が、さらに樹脂を含有する請求項4〜7のいずれかに記載のε型銅フタロシアニンの製造方法。
【請求項9】
バッチ式ニーダーにて混練する請求項4〜8のいずれかに記載のε型銅フタロシアニンの製造方法。

【公開番号】特開2013−60487(P2013−60487A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198219(P2011−198219)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】