説明

〔1,2〕−ジチオラン部分を含有する抗酸化剤重合体およびその使用

本発明は、フリーラジカル、金属および活性酸素種の捕捉剤としての役割を果たすことができる1,2−ジチオランを含む重合体を記載する。抗酸化剤1,2−ジチオラン誘導体を合成する方法および生分解性の抗酸化剤重合体を作り出すその重合の方法も記載される。本発明の抗酸化剤重合体は、酸化的ストレスおよび他のフリーラジカル媒介状態によって引き起こされる疾患または状態を処置するために用いられてよい。本抗酸化剤重合体は、処置薬剤の抗酸化剤粒子送達デバイスの調製のためにも用いられてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、フリーラジカル、金属および活性酸素種(ROS)の捕捉剤としての役割を果たすことができ、および/またはROSを捕捉する内因性抗酸化剤または実体の再生を可能にすることができるジチオラン誘導体およびジチオラン部分を含む抗酸化剤重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
本明細書においては、それぞれの個別の刊行物または特許出願が参照によって具体的にかつ個別に組み込まれたと同じ程度に、すべての刊行物が参照によって組み込まれる。以下の記載は、本発明を理解する上で有用となり得る情報を含む。本明細書中に提供される情報のいずれもが従来技術であるかまたは本特許請求の発明に関連すると認めるものではなく、具体的にまたは非明示的に参照されたいずれの刊行物が従来技術であると認めるものでもない。
【0003】
ジチオラン部分を含む分子は、それらの抗酸化剤特性のために広く研究されている。分子内にジチオラン環を有するα−リポ酸(チオクト酸、1,2−ジチオラン−3−ペンタン酸)は、もとは成長因子として発見された広く分布する天然物質である。それは、生理学的にはα−ケトカルボン酸(例えばピルベート類)の酸化的脱炭酸反応の補酵素としての役割および抗酸化剤としての役割を果たし、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオンおよび補酵素Q10を再生させることができる。病態においては、リポ酸は、糖尿病性多発性神経障害、肝硬変および金属中毒の処置において利用されている。
【0004】
【化1】

リポ酸およびジヒドロリポ酸は、脂質環境中および水性環境中の両方で多くのラジカルを捕捉することができる。リポ酸およびジヒドロリポ酸は、直接ラジカル捕捉および/または金属キレート化によるだけでなく、他の抗酸化剤(例えばビタミンC、ビタミンE)をリサイクルさせることによって、およびそれ自身がビタミンEをリサイクルさせるグルタチオンを還元することによっても、抗酸化剤としての役割を果たす。[1,2]−ジチオラン環系に存在する2つのチオール基は、固有の抗酸化剤としての能力を授ける。リポ酸などの環状5員環を有するジスルフィドは、シスチンまたはグルタチオンなどの非環式誘導体よりも還元攻撃および/または求核攻撃においてより効果的であることが見いだされている。
【0005】
化合物の抗酸化剤としての能力は、(1)フリーラジカル捕捉作用の特異性、(2)他の抗酸化剤との相互作用、(3)金属キレート化活性、(4)遺伝子発現への効果、(5)吸収および生物利用可能性、(6)所在(水性ドメイン中にあるかまたは膜ドメイン中にあるか、あるいはその両方の中にあるか)、および(7)酸化的損傷を修復する能力などの特性にもとづいて評価され得る(Packer et al.,FREE RADICAL BIOLOGY & MEDICINE,19(2):227〜250,1995)。上記の基準(criteria)により、[1,2]−ジチオラン含有リポ酸/ジヒドロリポ酸酸化還元系は、普遍的な抗酸化剤とみなされてきた。
【0006】
抗酸化剤活性を有するリポ酸誘導体または複合体を開発する多数の試みがあった。米国特許第6,090,842号、第6,013,663号、第6,117,899号、第6,127,394号、第6,150,358号、第6,204,288号,第6,235,772号、第6,288,106号、第6,353,011号、第6,369,098号、第6,387,945号、第6,605,637号、第6,887,891号、第6,900,338号、および第6,936,715号がいくつかの例である。
【0007】
多数の他の米国特許において、皮膚の老化の予防における使用、および炎症性疾患、増殖性疾患、神経変性疾患、代謝性疾患および感染性疾患を含むフリーラジカル媒介疾患の処置における使用のための天然および合成リポ酸誘導体ならびにそれらの代謝物が開示されている。
【0008】
NOシンターゼに対する阻害活性および活性酸素種(ROS)の捕捉
さまざまな状態または疾患状態が、一酸化窒素(NO)およびROSならびにそれらの生理病理学におけるグルタチオンの代謝の、潜在的な役割を示した。一酸化窒素、およびグルタチオンの代謝ならびにチオール基の酸化還元状態が関与する状態または疾患状態は、心臓血管および脳血管の障害(例えばアテローム性動脈硬化症、片頭痛、動脈性高血圧、敗血症性ショック、虚血性または出血性の心または脳の梗塞、虚血および血栓症);中枢または末梢神経系の障害(例えば神経変性性の神経系);脳梗塞、くも膜下出血、老化、老人性痴呆(例えばアルツハイマー病)、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、プリオン病(例えばクロイツフェルトヤコブ病)、筋萎縮性側索硬化症、疼痛、脳および脊髄の外傷、阿片類、アルコールおよび依存性物質への中毒、勃起および生殖障害、認識力障害、脳障害、ウイルスまたは毒物起源の脳障害、うつ、不安、精神分裂病、てんかん、睡眠障害、摂食障害(例えば食欲不振、過食症)を含む神経変性疾患;骨格筋および神経筋節合部の障害(例えば筋障害、筋炎)、皮膚病;増殖性および炎症性疾患(例えばアテローム性動脈硬化症)、肺高血圧症、呼吸困難、糸球体腎炎、白内障、門脈圧亢進症、乾癬および関節リウマチ、線維症、アミロイド症、胃腸系統の炎症(例えば大腸炎、クローン病)または肺系統および気道の炎症(例えば喘息、副鼻腔炎、鼻炎)ならびに接触過敏症または遅延型過敏症、臓器移植;自己免疫疾患およびウイルス性疾患(例えば狼瘡、AIDS、寄生生物感染およびウイルス感染)、糖尿病およびその合併症(例えば網膜障害、腎症および多発性神経障害、多発性硬化症、筋障害);癌;常染色体遺伝病(例えばUnverricht−Lundborg病);中毒と関連した神経性疾患(例えば、カドミウム中毒、n−ヘキサン、殺虫剤、除草剤の吸入)、処置(例えば放射線治療)と関連した神経性疾患または遺伝起源の障害(例えばウィルソン病);および糖尿病に関連した不能症を含むがそれらに限定されない。
【0009】
これらの状態および疾患状態は、一酸化窒素および/またはグルタチオンの代謝およびチオール基の酸化還元状態の過剰産生または機能障害を特徴とする(Duncan and Heales,Nitric Oxide And Neurological Disorders,MOLECULAR ASPECTS OF MEDICINE.26:67〜96,2005、Kerwin et al.,Nitric Oxide:A New Paradigm For Second Messengers,J.MED.CHEM.38:4343〜4362,1995、Packer et al.,FREE RADICAL BIOLOGY & MEDICINE.19:227〜250,1995)。米国特許第6,605,637号明細書、第6,887,891号明細書および第6,936,715号明細書は、リポ酸誘導体が一酸化窒素NOを産生するNOシンターゼ酵素の活性を阻害し、ROSを捕捉し、チオール基の酸化還元状態においてより一般的な様式で介入する内因性抗酸化剤を再生することを開示している。米国特許第5,693,664号明細書、第5,948,810号明細書、第6,884,420号明細書は、I型およびII型の真性糖尿病の処置のための薬物の合成のためのラセミのα−リポ酸またはそれらの代謝物、塩、アミドまたはエステルの使用を開示している。米国特許第5,925,668号明細書は、抗酸化剤活性を有し還元形または酸化形の1,2−ジチオランを含む化合物によって、フリーラジカル媒介疾患を処置し、および/またはそのような疾患に関連する症状を軽減する方法を開示している。米国特許第6,251,935号明細書は、ラセミのα−リポ酸、それらのエナンチオマーおよび薬学的に許容される塩、アミド、エステルまたはチオエステルからなる群から選ばれた活性成分の投与を含む片頭痛の予防または処置のための方法を開示している。米国特許第6,472,432号明細書および第6,586,472号明細書は、リポ酸および/またはリポ酸誘導体を含む組成物の適用による慢性炎症性障害、酒さの処置を開示している。リポ酸およびジヒドロリポ酸の神経保護効果が抗酸化剤およびフリーラジカル捕捉機序によって媒介されるという強力な証拠もある(Packer et al.,FREE RADICAL BIOLOGY & MEDICINE.22:359〜378,1997)。
【0010】
局所適用および化粧品調製物
紫外線は、皮膚を損傷し、皮膚の早発の老化をもたらす活性酸素種(ROS)を作り出すことができる。ROSは、一重項酸素、スーパーオキシドラジカル、過酸化水素およびヒドロキシルラジカル、ならびにこれらのフリーラジカルによって作り出される反応生成物を含む、酸素分子から作り出された反応性フリーラジカルの集まりである。これらのROSは、他の分子と反応し、皮膚において有害なフリーラジカル反応のカスケードを発生させる。
【0011】
米国特許第5,709,868号明細書および第6,752,999号明細書は、リポ酸/またはリポ酸誘導体を含む組成物を皮膚の患部に局所適用することにより、皮膚の損傷、特に炎症および老化の予防および/または処置のための方法を開示している。米国特許第5,965,618号明細書および第6,955,816号明細書は、リポ酸および/またはリポ酸誘導体を含む組成物の瘢痕への、および創傷皮膚の部位への局所適用にもとづく瘢痕組織の処置および抑制のための組成物および方法を開示している。米国特許第6,365,623号明細書は、リポ酸および/またはリポ酸誘導体を含む組成物の局所適用による活性ざ瘡およびざ瘡様の瘢痕の処置を開示している。
【0012】
癌治療
米国特許第5,035,878号明細書および第5,294,430号明細書は、抗酸化剤特性を有するジチオカーバメートが抗腫瘍剤による処置によって引き起こされる骨髄の造血機能への損傷(骨髄抑制(myelesupression))を反転させることができることを開示している。米国特許第6,284,786号明細書、第6,448,287号明細書および第6,951,887号明細書は、アスコルビン酸と組み合わされて投与される治療薬剤としてリポ酸を用いる癌治療の方法を開示している。米国特許第7,071,158号明細書は、抗酸化剤が異常に増殖する細胞に対する抗腫瘍薬剤の細胞傷害性を増加させ、正常細胞に対する抗腫瘍薬剤の毒性を低下させることを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
しかし、現在利用可能な経口調合物の多くは、不完全な吸収および初回通過代謝のために生体利用性が低い。体液中での抗酸化剤の急速な分解および抗酸化剤の体からの除去が抗酸化剤の薬効をさらに減少させる。さらに、抗酸化剤のあるものは、化学量論量によって限定され、例えば、CおよびEなどのビタミンの抗酸化剤効力は、これらのビタミンが既存の過剰な活性種(reactive species)の捕捉剤として働くので限定されるものとされてきた(Johanse et al.Oxidative stress and the use of antioxidants in diabetes:Linking basic science to clinical practice,CARDIOVASCULAR DIABETOLOGY.4:5,2005)。従って、当分野においてはこれらの制約の1つ以上を克服する求めがある。生理病理学においてNOおよびROSならびにグルタチオンの代謝の潜在的な役割が示された状態または疾患状態の処置のための有用な化合物への求めもある。本明細書に記載されている本発明の[1,2]−ジチオラン誘導体、それらのオリゴマーおよび/または重合体はそのような処置のために有用になり得る。本発明の[1,2]−ジチオラン誘導体ならびにそれらのオリゴマーおよび/または重合体は、酸化的損傷によって引き起こされる状態および疾患状態(例えば皮膚老化、しわ形成)の発生を処置するかまたは遅延させるために、紫外線放射および乾燥によって引き起こされる損傷からの皮膚の保護のために、および癌治療のために有用になり得る。酸性環境に敏感である本発明の重合体は、浸食の速度が、分子構造によって制御され得る治療薬剤の放出の速度に関連付けられることを可能にする。
【0014】
参照される図には例となる実施態様が示されている。本明細書に開示されている実施態様および図は、限定するものではなく例を示すものであるとみなされることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明のさまざまな実施態様による重合体の加水分解を示す。
【図1B】本発明のさまざまな実施態様による重合体の加水分解を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の説明)
本明細書中で引用されるすべての参考文献は、参照によって全体が示されたと同じように全体として組み込まれる。特に他に定義されない限り、本明細書中で用いられる技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普通に理解されると同じ意味を有する。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 2001)、March,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure 5th ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 2001)、およびSambrook and Russel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,NY 2001)は、本出願中で用いられる用語の多くに関する一般的な指針を当業者に提供する。
【0017】
すべて2007年3月1日出願の米国特許仮出願番号第60/892,360号明細書、第60/892,370号明細書、第60/892,376号明細書および第60/892,383号明細書の内容が、参照によって全体が示されたと同じように、全体として本明細書に組み込まれる。
【0018】
当業者は、本発明の実施において用いることができる、本明細書に記載されているものと同様なまたは等価な多くの方法および材料を認識する。実際、本発明は、記載されている方法および材料に少しも限定されない。本発明の目的のために、以下の用語が下記に定義される。
【0019】
本明細書中で用いられる「状態」および「疾患状態」は、生理病理学においてNO、ROSまたはグルタチオンの代謝の潜在的役割が示された状態または疾患状態、酸化的損傷、および悪性であろうと良性であろうと任意の形の腫瘍性の細胞成長および増殖、前癌および癌の細胞および組織によって引き起こされた状態または疾患状態を含んでよいがそれらに少しも限定されない。
【0020】
本明細書中で用いられる「医薬品」および「薬物」は、疾患または障害の処置、治癒または予防がたとえ最終的に不成功であったとしても、疾患または障害の処置、治癒または予防のための薬として体内または体外で用いられる任意の物質を指す。
【0021】
本明細書で用いられる「重合体の抗酸化剤」は、[1,2]−ジチオラン部分をモノマーの繰り返し単位として含む重合体、または重合体主鎖に共有結合によって結合し、生理的条件下で酸化可能な化合物の酸化を減らす[1,2]−ジチオラン部分を含む重合体を指す。
【0022】
本明細書中で用いられる「抗腫瘍剤」は、異常な細胞増殖を減少させる任意の物質を指す。
【0023】
本明細書中で用いられる「治療として有効な量」は、処置が求められる状態または疾患状態を有する患者において有益な結果を実現することができる量を指す。処置として有効な量は、個人基準(individual basis)で定めることができ、少なくとも部分的に哺乳類の生理的特性、用いられ送達システムまたは治療技法の型および疾患の進行に対する投与の時間を基とする。
【0024】
本明細書で用いられる「処置」および「処置する」は、治療的処置および予防手段または防止手段を指し、目的は、処置が最終的に不成功であるとしても、疾患を予防し、遅らせ、および/または軽減することである。
【0025】
本明細書で用いられる「アセタール」は、エーテル酸素原子が両方とも同じ炭素に結合しているジエーテルを指す。
【0026】
本発明のさまざまな実施態様は、[1,2]−ジチオラン部分を含む抗酸化剤重合体を提供する。一実施態様では、本発明の抗酸化剤重合体は、フリーラジカルの捕捉剤としての役割を果たすことができる。別の実施態様では、本発明の抗酸化剤重合体は、医薬品および生物治療剤の送達のためのビヒクルとして用いることができる。
【0027】
一実施態様では、本発明は、抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体を提供する。別の実施態様では、本発明は、2つ以上の抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体を含むオリゴマーを提供する。別の実施態様では、本発明は、抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体を含む重合体を提供する。[1,2]−ジチオラン誘導体、そのオリゴマーまたはその重合体は生分解性であってよい。
【0028】
本発明のまた別の実施態様は、本発明の抗酸化剤重合体を合成する方法を提供する。
【0029】
本発明のさらなる実施態様は、本発明の抗酸化剤重合体を使用する方法を提供する。一実施態様では、抗酸化剤重合体は、酸化的ストレスによって引き起こされる状態または疾患状態、あるいは他のフリーラジカル媒介疾患または疾患状態を処置するために用いられる。
【0030】
特定の実施態様では、抗酸化剤重合体は、フリーラジカルによって媒介される皮膚の炎症または老化を処置するために用いられる。この方法は、[1,2]−ジチオラン誘導体、そのオリゴマー、その重合体またはそれらの組み合わせを含む組成物を提供する工程、および治療として有効な量の組成物を処置が必要な皮膚の区域に投与する工程を含む。一実施態様では、組成物は、薬学的に許容されるまたは皮膚科学的に許容されるキャリアをさらに含む。
【0031】
別の実施態様では、抗酸化剤重合体は、治療薬剤のための抗酸化剤微粒子送達ビヒクルの調製において用いられる。特定の実施態様では、抗酸化剤重合体は、遺伝物質を被検者に運び、送達するための遺伝子送達ビヒクルとして用いられる。遺伝物質は、DNAまたはRNAであってよい。抗酸化剤重合体は、例えばワクチン接種治療に用いるためのペプチドまたは蛋白質のためのキャリアとしても用いられてよい。
【0032】
別の実施態様では、抗酸化剤重合体は、治療剤のキャリアとしても用いられてよい。一実施態様では、治療剤は、癌処置のために有用である化学療法剤である。
【0033】
本発明の別の実施態様は、異常な細胞増殖の疾患の処置のための抗腫瘍薬物の細胞傷害性を強める方法を提供する。この方法は、[1,2]−ジチオラン誘導体、そのオリゴマー、その重合体またはそれらの組み合わせを含む組成物を提供する工程、治療として有効な量の抗腫瘍薬物を処置が必要な被検者に投与する工程、および治療として有効な量の組成物を投与する工程を含む。一実施態様では、抗腫瘍薬物は、組成物内にカプセル封入される。抗腫瘍薬物は、当業者に既知である。例は、パクリタキセル、カンプトテシン、オキサリプラチンおよびテモゾロマイドを含むがそれらに限定されない。
高分子抗酸化剤としての重合体
本発明の一局面は、重合して生分解性の抗酸化剤重合体となるモノマーとしての、ジチオラン環を含む化合物の合成および使用に関する。モノマーは、加水分解されやすい生分解性のエステル結合またはアセタール結合を介して重合されてよい。モノマーの改変によって、さまざまな疎水性を有する重合体が調製され得る。注射可能な医薬調合物の高分子抗酸化剤成分として水溶性重合体が用いられてよい。投与されると、長期間にわたって体内を循環し、従って小分子抗酸化剤の制御された、持続的な放出を提供する抗酸化剤ナノ粒子または微粒子の調製のために疎水性重合体が用いられ得る。これらの抗酸化剤は、組織、脳および細胞を含むがそれらに限定されない体の区域に送達され得る。
送達デバイスとしての重合体
本発明の生分解性の抗酸化剤重合体は、小分子、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、蛋白質、抗原、化学療法剤などを組織、器官および細胞に送達するための医薬品および/または薬物の供給ビヒクルとして用いられてよい。
【0034】
本発明の抗酸化剤重合体は、普遍的な抗酸化剤特性を有する複数の[1,2]−ジチオラン基を含む。一実施態様では、重合体は、インビボ条件下で適当な期間にわたって分解され、カプセル封入され、埋め込まれ、および/または共有結合によって結合した医薬品および/または薬物が微粒子物重合体キャリアから放出されて治療効果を提供する。重合体自体もインビボで分解されて自体の治療利点を提供する。
抗腫瘍薬物としての抗酸化剤重合体
抗酸化剤が細胞周期停止を誘導し、従って異常な細胞増殖の処置のための抗腫瘍薬物の効力を増強するために有用であることが発見された。抗酸化剤が異常な増殖細胞に対する抗腫瘍剤の細胞傷害性を増加させるだけでなく正常細胞に対する抗腫瘍剤の毒性も低下させることも発見された(米国特許第5,035,878号明細書および第5,294,430号明細書参照)。
【0035】
約40,000ダルトンより大きな重合体が増強された透過性および保持(「EPR」)効果によって腫瘍部位に選択的に蓄積する(Maeda et al.,J.CONTROLLED RELEASE 65,271,2000)ことは、当業者に自明である。従って、本発明は、異常に増殖する細胞の処置のために投与された抗腫瘍剤の毒性を低下させ、および/または正常な細胞に対する抗腫瘍剤の毒性を低下させる方法を提供する。この方法は、抗腫瘍処置の前に、同時に、またはその後に、本発明の抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体、それらのオリゴマーまたはそれらの重合体を投与する工程、ならびに本発明の抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体、それらのオリゴマーまたはそれらの重合体をそれらを必要とする被検者に投与するための方法を含んでよい。
【0036】
本発明の一局面は、抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体の合成、および重合して生分解性の抗酸化剤ポリアセタールおよびポリエステルとなるモノマーとしてのこれらの化合物の使用に関する。本発明の別の局面は、ポリカルボン酸、多糖、ポリアミン、ポリオールおよび樹枝状重合体を含むがそれらに限定されない多様な機能性重合体への抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体の共有結合による結合による抗酸化剤重合体の合成に関する。
抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体のポリアセタールおよびポリエステルへの重合
本発明の一実施態様は、分解性の抗酸化剤ポリアセタールおよびポリエステルを作製する方法に向けられる。ポリアセタールは反復アセタール結合を含む重合体であり、ポリエステルは反復エステル結合を含む重合体である。アセタール結合を含む加水分解によって分解可能な重合体が報告されている(Tomlinson et al.,MACROMOLECULES.35:473〜480,2002)。
【0037】
本発明のポリアセタールおよびポリエステルは、例えば以下の式によって表される繰り返し単位を含んでよい。
【0038】
【化2】

式中、AおよびBは、分岐および非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含んでよく、Rは、本明細書に記載されている抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体から選ばれる。
【0039】
モノマーは、加水分解されやすい(図1Aおよび1B参照)生分解性のエステル結合またはアセタール結合を介して重合されてよい。モノマーの改変によって、さまざまな疎水性を有する重合体が調製されてよい。注射可能な医薬調合物の高分子抗酸化剤成分として水溶性重合体が用いられてよい。投与されると、長期間にわたって体内を循環し、従って小分子抗酸化剤の制御された持続性の放出を提供する抗酸化剤ナノ粒子または微粒子の調製のために疎水性重合体が用いられてよい。これらの抗酸化剤は、組織、脳および細胞を含むがそれらに限定されない体の区域に送達されてよい。
【0040】
[1,2]−ジチオラン誘導体
本発明においては、抗酸化剤ポリアセタールおよびポリエステルの調製のために以下のようにさまざまな種類のモノマー[1,2]−ジチオラン誘導体が設計される。
I型 1,2−ジチオラン(ジオール)の構造
【0041】
【化3−1】

II型 4−(アミノ)−1,2−ジチオランの構造
【0042】
【化3−2】

【0043】
【化4】

式中、R、R,RおよびRは、それぞれ独立に、分岐および非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含んでよい。
【0044】
モノマー[1,2]−ジチオラン誘導体は、以下のようにI型ジチオラン誘導体とアクリロイルクロリドとの結合によっても調製される。
【0045】
【化5】

複合モノマーの例は、以下の式を有する化合物を含む。
III型 1,2−ジチオラン−ビス(アクリレートエステル)の構造
【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

上記に記載されたモノマー[1,2]−ジチオラン誘導体に加えて、市販のI型およびII型のジビニルエーテルならびにビス(アクリレートエステル)が用いられてよく、1つ以上の[1,2]−ジチオラン誘導体がそれらと結合させられてよい。アセタールおよびジビニルエーテルは、ポリマー骨格としての役を果たす。
ジビニルエーテルI型
【0048】
【化8】

式中、R基は、炭化水素基、例えばアルキル基、アリール基、脂環基またはアラルキル基であってよく、飽和または不飽和であってよい。R基は、ヘテロ原子(例えば窒素、酸素、硫黄等)を含んでよい。
ジビニルエーテルII型
【0049】
【化9】

式中、nは2から100までであってよい。
ビス(アクリレートエステル)
【0050】
【化10】

式中、Bは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれてよく、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む。
【0051】
ビス(アクリレートエステル)は、以下のように、当業者に周知の有機反応を用いて調製されてよい。
【0052】
【化11】

式中、Rは、広範で多様な置換基の任意のものであってよく、例えば、Rは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれてよく、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む。
【0053】
本発明の重合体において有用であるジオールは、以下の市販のものを含むが、それらに限定されない。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

市販されているかまたは当業者に周知の有機反応を用いて調製され得るジビニルエーテルの例が下記に示されている。本発明の重合体において有用であるジビニルエーテルは、以下の市販のものを含むがそれらに限定されない。
【0056】
【表3】

本発明の重合体において有用であるビス(アクリレートエステル)は、以下の市販のジアクリレートを含むがそれらに限定されない。
【0057】
【表4】

【実施例】
【0058】
以下の実施例は、本請求の発明をより良好に説明するために提供され、本発明の範囲を限定すると解釈されないものとする。特定の材料が言及される程度に応じて、それは単に説明を目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、本発明の能力を行使することなくおよび本発明の範囲から逸脱することなく等価の手段または反応物を開発してよい。本明細書に示される反応方式が単純化され、必要以上の実験なしで化学量論比が容易に決定されることは当業者に自明である。本発明の重合体は、当分野において知られている任意の方法によっても調製されてよい。
【0059】
(実施例1)
重合体−I型
一実施態様では、I型ジチオラン繰り返し単位(repeating unit)はジビニルエーテルと重合して以下の重合体を作り出す。
【0060】
【化12】

重合体の合成−テトラヒドロフラン中での代表的な重合
モレキュラーシーブ(1.0g、3Å、10〜20メッシュビーズ、Fluka)を有するテトラヒドロフラン(THF)(20mL)中でI型[1,2]−ジチオランモノマー単位(5ミリモル、1.0当量)およびジビニルエーテル(5.2ミリモル、1.04当量)が室温で混合される。反応混合物は20分間撹拌され、p−トルエンスルホン酸一水和物(TSA、0.15ミリモル、0.03当量)が加えられる。混合混合物は、室温で2日間撹拌され、反応混合物にNaHCO水溶液(8重量/体積%、2.0ml)が加えられる。有機相は酢酸エチル(3×20mL)で抽出され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、溶媒の体積は、室温で回転蒸発(rotary evaporation)によって減らされる(約20mL)。有機溶液は、撹拌されたヘキサン中に滴下して加えられ、ポリアセタールが集められ、ヘキサンの新しい溶液中に入れられ、さらに10分間撹拌される。ポリアセタールは再び集められ、次に、真空中室温で4時間乾燥されて重合体が得られる。
【0061】
これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0062】
【化13】

【0063】
【化14】

式中、Aは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含んでよい。
【0064】
特定の実施態様では、Aは、−CHCH−、−CHCHCHCH−、−CHCHCHCHCHCH−、−CHCHOCHCH−および−CHCHOCHCHOCHCH−からなる群から選ばれる。
【0065】
(実施例2)
重合体−II型
別の実施態様では、II型ジチオラン繰り返し単位がビス(アクリレートエステル)と重合して以下の重合体を作り出す。
【0066】
【化15】

重合体の合成−メタノール中での代表的な重合
重合体は、ジアクリルエステルへのアミンのMichael付加によって合成される。実験例では、無水メタノール(100ml)中にジアクリレート(40ミリモル、1当量)および[1,2]−ジチオランアミン(40ミリモル、1当量)が溶解される。反応混合物は室温で2日間撹拌される。反応混合物は、撹拌されたヘキサンまたはジエチルエーテル中に滴下して加えられる。ポリアセタールは集められ、真空中室温で4時間乾燥されて重合体が得られる。
【0067】
これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0068】
【化16】

【0069】
【化17】

式中、Bは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、RおよびRは、独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む。
【0070】
特定の実施態様では、Bは、市販のビス(アクリレート)から選ばれる。本発明の重合体において有用であるビス(アクリレートエステル)は、市販の1,2−エタンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートおよび2,5−ヘキサンジオールジアクリレートを含むがそれらに限定されない。これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0071】
【化18】

(実施例3)
重合体−III型
一実施態様では、本発明の重合体は、ともにジチオランを含む2つのモノマーの結合によって調製される。2型ジチオランモノマーは第一アミンを含み、ジチオランモノマーはビス(アクリレートエステル)を含む。重合体は、ビス(アクリレートエステル)への第一アミンの結合付加によって調製される。下に反応図式が示される。
【0072】
【化19】

重合体の合成−メタノール中での代表的な重合
実験例では、無水メタノール(100ml)中に[1,2]−ジチオランジアクリレート(40ミリモル、1当量)および[1,2]−ジチオランアミン(40ミリモル、1当量)が溶解される。反応混合物は室温で2日間撹拌される。反応混合物は、撹拌されたヘキサンまたはジエチルエーテル中に滴下して加えられる。ポリアセタールは集められ、真空中室温で4時間乾燥されて重合体が得られる。
【0073】
これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0074】
【化20】

【0075】
【化21】

【0076】
【化22】

【0077】
【化23】

【0078】
【化24】

【0079】
【化25】

【0080】
【化26】

式中、Xは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、R、R、RおよびRならびにRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む。
【0081】
(実施例4)
重合体−IV型
別の実施態様では、本発明の重合体は、ジチオランモノマーへの第一アミンの付加によって調製される。下に反応図式が示される。
【0082】
【化27】

重合体の合成−メタノール中での代表的な重合
上記に記載されているのと同様の方法で、無水メタノール(100ml)中に[1,2]−ジチオランジアクリレート(40ミリモル、1当量)および第一アミン(40ミリモル、1当量)が溶解される。反応混合物は室温で2日間撹拌される。反応混合物は、撹拌されたヘキサンまたはジエチルエーテル中に滴下して加えられる。ポリアセタールは集められ、真空中室温で4時間乾燥されて重合体が得られる。
【0083】
これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0084】
【化28】

【0085】
【化29】

式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む。
【0086】
代替の実施態様では、Rは市販の第一アミンから選ばれる。これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0087】
【化30】

式中、mは、少なくとも2の整数である。
【0088】
(実施例5)
重合体−V型
別の実施態様では、本発明の重合体は、ジチオランモノマーへのジアミンの付加によって調製される。下に反応図式が示される。
【0089】
【化31】

重合体の合成−メタノール中での代表的な重合
上記に記載されているのと同様の方法で、無水メタノール(100ml)中に[1,2]−ジチオランジアクリレート(40ミリモル、1当量)およびジアミン(40ミリモル、1当量)が溶解される。反応混合物は室温で2日間撹拌される。反応混合物は、撹拌されたヘキサンまたはジエチルエーテル中に滴下して加えられる。ポリアセタールは集められ、真空中室温で4時間乾燥されて重合体が得られる。
【0090】
これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0091】
【化32】

【0092】
【化33】

特定の実施態様では、ジアミンは市販の第一アミンから選ばれる。これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0093】
【化34】

【0094】
【化35】

(実施例6)
重合体−VI型
別の実施態様では、本発明の重合体は、ジチオランモノマーへのビス(第二アミン)の付加によって調製される。下に反応図式が示される。
【0095】
【化36】

重合体の合成−メタノール中での代表的な重合
上記に記載されているのと同様の方法で、無水メタノール(100ml)中に[1,2]−ジチオランジアクリレート(40ミリモル、1当量)およびN,N′−ジメチルエチレンジアミン(40ミリモル、1当量)が溶解される。反応混合物は室温で2日間撹拌される。反応混合物は、撹拌されたヘキサンまたはジエチルエーテル中に滴下して加えられる。ポリアセタールは集められ、真空中室温で4時間乾燥されて重合体が得られる。
【0096】
これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0097】
【化37】

【0098】
【化38】

特定の実施態様では、ビス(第二アミン)は市販の第一アミンから選ばれる。これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0099】
【化39】

【0100】
【化40】

(実施例7)
重合体−VII型
別の実施態様では、本発明の重合体は、ジチオランモノマーへの環状ビス(第二アミン)の付加によって調製される。下に反応図式が示される。
【0101】
【化41】

重合体の合成−メタノール中での代表的な重合
上記に記載されているのと同様の方法で、無水メタノール(100ml)中に[1,2]−ジチオランジアクリレート(40ミリモル、1当量)およびピペラジン(40ミリモル、1当量)が溶解される。反応混合物は室温で2日間撹拌される。反応混合物は、撹拌されたヘキサンまたはジエチルエーテル中に滴下して加えられる。ポリアセタールは集められ、真空中室温で4時間乾燥されて重合体が得られる。
【0102】
これらの実施態様における重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0103】
【化42】

多様な重合体への抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体の共有結合付加による抗酸化剤重合体の 調製
別の局面では、抗酸化剤重合体は、機能性重合体への抗酸化剤[1,2]−ジチオラン誘導体の共有結合付加によって調製される。
【0104】
アミドまたはエステル結合を介した重合体への抗酸化剤[1.2]−ジチオラン誘導体の付加は、当分野において公知の任意の適切な方法によって実行されてよい。一実施態様では、出発材料の重合体は、張り出しているカルボン酸側基を含み、[1,2]−ジチオラン誘導体は生分解性のエステルまたはアミド結合を介して共有結合によって重合体に結合している。[1,2]−ジチオラン誘導体は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0105】
【化43】

式中、R基およびR基は炭化水素基、例えばアルキル基、アリール基、脂環基またはアラルキル基であってよく、飽和または不飽和であってよい。R基およびR基は、ヘテロ原子(例えば窒素、酸素、硫黄等)を含んでよい。
【0106】
出発材料の重合体は、天然起源であっても合成起源であってもよく、ホモポリマーでもブロック共重合体でもカルボン酸末端デンドリマーを有するデンドリマーであってもよい。リポロール(lipolol)合成については、Journal of Pharmaceutical Sciences,85,1996,496〜504が当業者に指針を提供し得る。モノヒドロキシジチオラン誘導体の合成については、European Journal of Medicine Chemistry 38,2003,1〜11が当業者に指針を提供し得る。
【0107】
ポリカルボン酸は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0108】
【化44】

【0109】
【化45】

本発明の抗酸化剤重合体の例は、以下を含むがそれらに限定されない。
【0110】
【化46】

【0111】
【化47】

別の実施態様では、出発材料の重合体は、張り出している第一アミンまたは第二アミン基を含み、1,2−ジチオラン−3−ペンタン酸(チオクト酸、α−リポ酸)はアミド結合を介して共有結合によって重合体に結合している。出発材料の重合体は、天然起源であっても合成起源であってもよく、ホモポリマーでもブロック共重合体でもデンドリマーであってよい。出発材料のポリアミンは、以下を含むがそれらに限定されない:ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリリシン、キトサン、ポリ(アミドアミド(amido amide))(PAMAM)デンドリマー、ポリ(プロピレンイミン)デンドリマー、オクタアミンデンドリマーおよびヘキサデカアミンデンドリマーを含むがそれらに限定されない第一アミン末端デンドリマー。
【0112】
本発明の抗酸化剤重合体の例は、以下の式のものを含むがそれらに限定されない。
【0113】
【化48】

【0114】
【化49】

デンドリマーとは、中心の炭素原子主鎖に沿う多数の分岐および細分岐(subbranch)の中に原子が配置されている超分岐重合体である(例えばZeng,F and Zimmerman,S.C,Chem.Rev.1997,97,1681〜1712、Matthews et al.,Prog.Polym.Sci.,23,1〜56,1998参照)。
【0115】
別の実施態様では、出発材料の重合体は、張り出しているヒドロキシル基を含み、1,2−ジチオラン−3−ペンタン酸(チオクト酸、α−リポ酸)は、エステル結合を介して共有結合によって重合体に結合している。出発材料の重合体は、天然起源であっても合成起源であってもよく、ホモポリマーでもブロック共重合体でも、プルラン、アミロース、マンナン、アミロペクチン、デキストランおよびシクロデキストリンを含むがそれらに限定されない多糖でもよく、ヒドロキシル末端デンドリマーであってもよい。ポリオールは、以下を含むがそれらに限定されない。
【0116】
【化50】

【0117】
【化51】

本発明の抗酸化剤重合体の例は、以下の式のものを含むがそれらに限定されない。
【0118】
【化52】

【0119】
【化53】

さまざまな化合物の調製
1,2−ジチオラン誘導体の合成のためのすべての反応は、Merck 60 F254からのシリカゲルプレート薄層クロマトグラフィー(TLC)によって監視され、化合物は紫外線による刺激によって、および/または200mLのHO中の1.5gのKMnO、10gのKCOおよび1.25mLの10%NaOHの溶液による処理とそれに続く穏やかな加熱によって可視化される。アミン官能基を有する化合物は、ニンヒドリン試験によって可視化される。
【0120】
(実施例8)
1,2−ジチオラン(ジオール)の調製
【0121】
【化54】

100mLジクロロメタン中にα−リポ酸(15ミリモル)およびセリノール(15ミリモル)が溶解され、続いて1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、20ミリモル)およびTEA(30ミリモル)が加えられる。反応混合物は0℃に冷却され、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl、20ミリモル)が少しずつ加えられる。混合物は室温で5時間撹拌される。反応混合物は脱イオン水(3×200mL)で洗浄され、MgSOで乾燥され、溶媒は真空下で蒸発させられる。粗生成物は、CHCl:MeOH(45:5)で溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィー(250mL)によって精製された。
【0122】
(実施例9)
1,2−ジチオラン(ジオール)の調製
【0123】
【化55】

工程1 リポ酸ベンジリデングリセロールエステルの合成
100mLジクロロメタン中にα−リポ酸(15ミリモル)および1,3−O−ベンジリデングリセロール(15ミリモル)が溶解され、続いて4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、20ミリモル)が加えられる。反応混合物は室温で10分間撹拌され、EDC・HCl(20ミリモル)が少しずつ加えられた。混合物は室温で5時間撹拌される。反応混合物は脱イオン水(3×200mL)で洗浄され、MgSOで乾燥され、溶媒は真空下で蒸発させられた。粗生成物は、CHCl:MeOH(95:1)で溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィー(250mL)によって精製される。
【0124】
工程2 リポ酸グリセロールエステルの合成
0.6mlの濃塩酸を含む20mlのメタノール中にα−リポ酸ベンジリデングリセロールエステル(10ミリモル)が溶解され、4時間還流される。250mlの水が加えられ、固体NaOHでpHが6に調節され、メタノールは真空下で蒸発させられる。約10%までNaClが加えられ、生成物はジクロロメタン(3×100mL)で抽出される。ジクロロメタン抽出物は一緒にされ、NaSO上で乾燥され、ろ過され、蒸発させられる。残留物は真空下で乾燥され、生成物は酢酸エチルで溶出されるシリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって精製される。
【0125】
(実施例10)
1,2−ジチオラン(ジオール)の調製
【0126】
【化56】

工程1
文献(例えばOrganic Syntheses,Coll.Vol.4,p.679;Vol.38,p.65参照)に記載されている手順によってペンタエリスリトールモノベンズアルデヒドが合成された。
【0127】
工程2 モノベンザルペンタエリスリトールのビス−(メタンスルホン酸エステル)の合成
ジクロロメタン(115ml)中のモノベンザルペンタエリスリトール(0.028モル)およびトリエチルアミン(56ml)の撹拌された溶液にメタンスルホニルクロリド(20.7g、0.18モル)が5℃で加えられた。混合物は5℃で5時間および20℃で20時間撹拌された。ジクロロメタン(200ml)が加えられ、混合物は炭酸水素ナトリウムの水溶液で洗浄され、NaSOで乾燥され、真空下で濃縮乾固された。ヘキサン/酢酸エチル(50:50)で溶出させるシリカゲル(1.2L)上の残留物のクロマトグラフィーによってモノベンザルペンタエリスリトールのビス−(メタンスルホン酸エステル)が得られる。
【0128】
工程3 モノベンザルペンタエリスリトールのジメルカプトアセチルの合成(アルゴン雰囲気下)
ジメチルホルムアミド(50ml)中にモノベンザルペンタエリスリトールのビス−(メタンスルホン酸エステル)(0.015モル)が溶解された。50mLのDMF中のチオ酢酸カリウム(0.06モル)が滴下して加えられた。反応混合物は室温で一夜撹拌され、次に真空下で濃縮され、ブライン(brine)(300mL)中に投入され、酢酸エチル(3×200mL)で抽出された。有機層は水(3×300mL)で洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、真空下で蒸発させられた。ヘキサンと酢酸エチルとの混合物(50:50)で溶出させるシリカゲル上の残留物のクロマトグラフィーによってモノベンザルペンタエリスリトールの1,2−ジチオランが得られる。
【0129】
工程4 モノベンザルペンタエリスリトールの1,2−ジチオランの合成
EtOH(20ml)中のジメルカプトアセチルモノベンザルペンタエリスリトール(4.1ミリモル)の溶液が10mlの1N NaOH水溶液によって室温で1時間処理される。混合物はCHCl(100ml)で希釈され、次に0.1Mヨウ素(4.5ミリモル)の水溶液が滴下して加えられる。反応混合物は室温で2時間撹拌され、1ミリモルのNa(1M水溶液)が反応混合物に加えられた。有機相は分離され、水(3(200mL)で洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥され、室温で蒸発させられた。粗生成物は、ヘキサンと酢酸エチルとの溶媒混合物(40:20)を溶離剤として用いてシリカゲル(200mL)上でクロマトグラフィーされてモノベンザルペンタエリスリトールの1,2−ジチオランが得られる。
【0130】
工程5 1,2−ジチオランペンタエリスリトールの合成
0.6mlの濃塩酸を含む20mlのメタノール中にモノベンザルペンタエリスリトールの1,2−ジチオラン(10ミリモル)が溶解され、4時間還流された。250mlの水が加えられ、固体NaOHでpHが6に調節され、メタノールが真空下で蒸発させられた。約10%までNaClが加えられ、生成物はジクロロメタン(3×100mL)で抽出された。ジクロロメタン抽出物は一緒にされ、NaSO上で乾燥され、ろ過され、蒸発させられた。残留物は真空下で乾燥され、生成物は酢酸エチルで溶出されるシリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって精製される。
【0131】
(実施例11)
III型の1,2−ジチオラン(ジオール)の調製
【0132】
【化57】

工程1 ジブロモモノベンザルペンタエリスリトールの合成
150mLのシクロヘキサン中に2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール(100ミリモル)、ベンズアルデヒド(100ミリモル)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(3ミリモル)が溶解される。撹拌された混合物は加熱され、水の共沸除去が行われる。溶液は室温まで冷却され、次に真空下室温で蒸発させられる。残留物は100mLのジエチルエーテルに溶解され、飽和重炭酸カリウム水溶液(50mL)、および水(2×50mL)で洗浄される。エーテル層は硫酸マグネシウム上で乾燥され、ろ過される。溶媒は真空下室温で蒸発させられる。固体粗生成物はろ過によって集められる。粗固体生成物は50mLのヘキサンでほぐされ、精製された生成物はろ過によって集められる。
【0133】
工程2 ビス−(マロン酸ジエチル)モノベンザルペンタエリスリトールの合成
20分間を超える時間をかけてエタノール(100mL)にナトリウム(100ミリモル)が加えられてナトリウムエトキシドが得られる。マロン酸ジエチルエステル(100ミリモル)が加えられ、混合物は10分間撹拌され、真空下で濃縮乾固される。残留物はトルエンを用いて回収され、この懸濁液は真空下で濃縮乾固される。残留物はジメチルホルムアミド(200mL)に溶解され、ジブロモモノベンザルペンタエリスリトール(0.50ミリモル)が加えられ、混合物は20℃で4日間撹拌され、真空下で濃縮乾固される。残留物はエーテルに溶解され、炭酸水素ナトリウムおよび塩化リチウムの水溶液で順次洗浄され、乾燥され(NaSO)、溶媒は蒸発させられて乾固される。過剰量のマロン酸ジエチルは減圧下で残留物から蒸留されてビス−(マロン酸ジエチル)モノベンザルペンタエリスリトールが得られる。
【0134】
工程3 ビス−(プロパン−1,3−ジオール)モノベンザルペンタエリスリトールの合成
ジエチルエーテル(100mL)中の水素化アルミニウムリチウム懸濁液にジエチルエーテル(100mL)に溶解されたビス−(マロン酸ジエチル)モノベンザルペンタエリスリトール(100ミリモル)が滴下して加えられる。この混合物は還流温度で2時間および20℃で20時間撹拌される。5℃における冷却の後、水(5mL)、2N水酸化ナトリウム水溶液(10mL)および水(5mL)が順次加えられる。懸濁液はろ過され、固体はジエチルエーテルで洗浄され、一緒にされたろ液は乾燥され(NaSO)、真空下で濃縮される。粗生成物は、溶媒酢酸エチルを溶出剤として用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーされて生成物が得られる。
【0135】
工程4〜工程7
工程4〜工程7は、1,2−ジチオランペンタエリスリトールの調製に関する実施例に記載されているのと同様の方法で実行された。
【0136】
(実施例12)
II型の1,2−ジチオラン(ジオール)の調製
【0137】
【化58】

これらの化合物は、上記に記載されているのと同様の方法で調製される。
【0138】
(実施例13)
4−ブロモ−[1,2]−ジチオラン(I型)の調製
(例えばMorera et.al.Org.Lett.4,1139〜1142,2002参照)
【0139】
【化59】

工程1および2 2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオールの合成
新たに蒸留したTHF(100mL)中に水素化ナトリウム(1g、鉱油中60%、42ミリモル、1.67g)が懸濁され、この混合物は氷/HO浴中で冷却される。1,3−O−ベンジリデングリセロール(28ミリモル)が少しずつ加えられ、混合物は15分間撹拌される。注射器を介して臭化ベンジル(40ミリモル)が加えられ、反応は0℃から室温で一夜撹拌される。減圧下でTHFのおおよそ半分が蒸発させられ、20mLのHOおよび60mLの10%HCl水溶液が加えられる。混合物は2時間還流され、室温に冷却され、10mlの飽和NaCO水溶液中に投入される。溶液は、酢酸エチル(20mLで3回)で抽出される。抽出物はNaSO上で乾燥され、蒸発させられ、カラムクロマトグラフィー(溶出剤:ヘキサン/酢酸エチル(50/50)から酢酸エチル100%)によって精製される。
【0140】
工程3
乾燥CHCl(50mL)中の2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール(20ミリモル)の溶液に乾燥TEA(90ミリモル)が添加され、次に0℃で30分間メタンスルホニルクロリド(65ミリモル)で処理される(0℃で滴下して加えられる)。反応混合物は室温で2時間撹拌される。混合物は50mM重炭酸ナトリウムで洗浄され(300mLで6〜7回)、硫酸マグネシウム上で乾燥され、溶媒は減圧下で蒸発させられる。生成物はヘキサンを加え、CHClをゆっくり蒸発させることによって沈殿させられ、黄色がかった生成物はヘキサンで洗浄され、乾燥される。
【0141】
工程4
DMF(180mL)中に2−ベンジルオキシ−1,3−ジメタンスルホニルプロパンジオール(45ミリモル)が溶解され、硫黄(1.5g)および硫化ナトリウム一水和物(11g)が加えられる。反応混合物は85℃で4時間撹拌され、ジエチルエーテル(500mL)が加えられる。反応混合物はブラインで洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥され、真空下で蒸発させられる。粗生成物は、カラムクロマトグラフィー(溶出剤:ヘキサン/酢酸エチル、95/5)によって精製される。
【0142】
工程5
1,2−ジクロロエタン(20mL)中に4−(ベンジルオキシ)−[1,2]ジチオラン(7.06ミリモル)が溶解される。ジクロロメタン(20mL)中の三臭化ホウ素−メチルスルフィド複合体の1M溶液が加えられ、混合物は20℃で2時間撹拌され、炭酸水素ナトリウムの水溶液中に投入され、ジエチルエーテルで抽出される。有機層は一緒にされて乾燥され(NaSO)、室温で蒸発させられる。粗生成物は、カラムクロマトグラフィー(溶出剤:100%CHCl)によって精製される。
【0143】
工程6 4−ブロモ−[1,2]−ジチオランの合成
(例えばSaah et al.Journal of Pharmaceutical Sciences 85,496〜504,1996参照)
15mLの無水テトラヒドロフラン(THF)中に4−ヒドロキシ−[1,2]−ジチオラン(3ミリモル)およびトリフェニルホスフィン(9ミリモル)が溶解される。10mLのTHF中の臭化亜鉛(3ミリモル)が加えられ、続いて5mLのTHF中のジエチルアジドジカルボキシレート(DEADC)(9ミリモル)が加えられる。この混合物は、4−ヒドロキシ−[1,2]−ジチオランが消失するまで窒素雰囲気下室温で撹拌される。次に、反応混合物にメタノール(2.0mL)が加えられ、5分後、混合物はエーテル(20mL)で抽出され、有機層は12mLの水、飽和NaCOおよびブラインで順次洗浄され、有機溶媒は真空下室温で蒸発させられる。粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル、95/5)によって精製される。
【0144】
(実施例14)
ジオール(I型)からのα−ブロモ−ω−[1,2]−ジチオランの調製
【0145】
【化60】

Guillonneau et al.European Journal of Medicinal Chemistry 38,1〜11,2003およびMorera et.al.Org.Lett.4,1139〜1142,2002がこの特定の化合物を調製する指針を当業者に提供する。
【0146】
(実施例15)
[1,2]−ジチオラン−3−ペンタノール(リポロール)の調製
[1,2]−ジチオラン−3−ペンタノール(リポロール)は、4−ブロモ−[1,2]−ジチオランの調製に関する実施例に記載されているのと同様の方法で調製される。
【0147】
(実施例16)
1,2−ジチオラン(ジオール)の調製
【0148】
【化61】

工程1 boc−セリノールのビス−(メタンスルホン酸エステル)の合成
撹拌されたジクロロメタン(100ml)中のboc−セリノール(40モル)およびトリエチルアミン(25ml)の溶液に5℃でメタンスルホニルクロリド(130ミリモル)が加えられた。混合物は5℃で5時間および20℃で20時間間撹拌された。ジクロロメタン(200ml)が加えられ、混合物は炭酸水素ナトリウムの水溶液(50mM)で洗浄され、乾燥され(NaSO)、真空下で濃縮乾固された。ヘキサン/酢酸エチル(50:50)で溶出させるシリカゲル(1.2L)上の残留物のクロマトグラフィーによってboc−セリノールのビス−(メタンスルホン酸エステル)が得られた。
【0149】
工程3 boc−セリノールのジメルカプトアセチルの合成
ジメチルホルムアミド(50ml)中にboc−セリノールのビス−(メタンスルホン酸エステル)(0.015モル)が溶解された。50mLのDMF中のチオ酢酸カリウム(0.06モル)が滴下して加えられた。反応混合物は室温で一夜撹拌され、次に真空下で濃縮され、ブライン(300mL)中に投入され、酢酸エチル(3×200mL)で抽出された。有機層は水(3×300mL)で洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、真空下で蒸発させられた。ヘキサンと酢酸エチルとの混合物(50:50)で溶出させるシリカゲル上の残留物のクロマトグラフィーによってboc−セリノールの1,2−ジチオランが得られた。
【0150】
工程4 boc−セリノールの1,2−ジチオランの合成
EtOH(20ml)中のジメルカプトアセチルboc−セリノール(4.1ミリモル)の溶液が室温で1時間10mlの1N NaOH水溶液で処理された。混合物はCHCl(100ml)で希釈され、次に0.1Mヨウ素(4.5ミリモル)の水溶液が滴下して加えられる。反応混合物は室温で2時間撹拌され、1ミリモルのNa(1M水溶液)が反応混合物に加えられた。有機相は分離され、水(3×200mL)で洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥され、室温で蒸発させられた。粗生成物は、ヘキサンと酢酸エチルとの溶媒混合物(40:20)を溶出剤として用いてシリカゲル(200mL)上でクロマトグラフィーされてboc−セリノールの1,2−ジチオランが得られた。
【0151】
工程5 1,2−ジチオランセリオノールの合成
2.5mlのジクロロメタン中にboc−セリノールの1,2−ジチオラン(1ミリモル)が溶解され、0℃で2.5mLのTFAが加えられた。反応混合物は0℃で30分間撹拌され、真空下で蒸発させられた。残ったTFAはエーテルおよびトルンを用いて共沸によって除去され、高真空下室温で乾燥された。粗生成物は、CHCl:MeOH(45:5)で溶出されるシリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって精製された。
【0152】
(実施例17)
α−アミノ−ω−[1,2]−ジチオラン−4−イル−アルカンの調製
【0153】
【化62】

工程1
20分間を超える時間をかけてエタノール(400mL)にナトリウム(11g、0.48モル)が加えられてナトリウムエトキシドが得られる。マロン酸ジエチルエステル(80g、0.5モル)が加えられ、混合物は10分間撹拌され、真空下で濃縮乾固される。残留物はトルエンを用いてとかし、懸濁液は真空下で濃縮乾固される。残留物はジメチルホルムアミド(1L)中に溶解され、(boc−アミノ)アルキルブロミド(0.48モル)が加えられ、混合物は20℃で4日間撹拌され、真空下で濃縮乾固される。残留物はエーテルに溶解され、炭酸水素ナトリウムおよび塩化リチウムの水溶液で順次洗浄され、乾燥され(NaSO)、濃縮され、減圧下で蒸留される。次に、粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製される。
【0154】
工程3 ビス−(プロパン−1,3−ジオール)モノベンザルペンタエリスリトールの合成
ジエチルエーテル(100mL)中の水素化アルミニウムリチウムの懸濁液にジエチルエーテル(100mL)中に溶解されたビス−(マロン酸ジエチル)(100ミリモル)が滴下して加えられる。混合物は還流温度で2時間および20℃で20時間撹拌される。5℃で冷却した後、水(5mL)、水酸化ナトリウムの2N水溶液(10mL)および水(5mL)が順次加えられる。懸濁液はろ過され、固体はジエチルエーテルで洗浄され、一緒にされたろ液は乾燥され(NaSO)、真空下で濃縮される。粗生成物は溶媒酢酸エチルを溶離剤として用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーされて生成物が得られる。
【0155】
工程4〜工程6
工程4〜工程6は、1,2−ジチオランセリノールの調製に関する実施例に記載されているのと同様の方法で実行される。
【0156】
(実施例18)
4−ブロモ−[1,2]−ジチオランからのジアミノ−N,N−ジ[4−(1,2−ジチオラン)]アルカンの調製
【0157】
【化63】

アセトニトリル(20ml)中のモノ−boc−ジアミノアルカン(5ミリモル)の溶液に4−ブロモ−[1,2]−ジチオラン(10ミリモル)が室温で加えられる。混合物は50℃に暖められ、2時間撹拌され、さらに室温で2日間撹拌され、次に、水中に投入される。CHClによる抽出の後、有機抽出物はNaSO上で乾燥される。溶媒は蒸発させられ、粗生成物はシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出剤:酢酸エチル)によって精製される。生成物の脱保護および精製は、1,2−ジチオランセリオノールの調製に関して実施例に記載されているのと同様の方法で実行される。
【0158】
(実施例19)
4−ブロモ−[1,2]−ジチオランからのジアミノ−N,N−ジ[(1,2−ジチオラン)]ペンチルの調製
【0159】
【化64】

調製は、上記に記載されているのと同様の方法で実行される。
【0160】
(実施例20)
1,2−ジチオランの調製
【0161】
【化65】

アセトニトリル(20ml)中のセリノール(5ミリモル)の溶液に室温で4−ブロモ−[1,2]−ジチオラン(10ミリモル)が加えられる。混合物は50℃に暖められ、2時間撹拌され、さらに室温で2日間撹拌され、次に水中に投入される。CHClによる抽出の後、有機抽出物はNaSO上で乾燥される。溶媒は蒸発させられ、粗生成物はシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出剤:酢酸エチル)によって精製される。
【0162】
(実施例21)
1,2−ジチオランの調製
【0163】
【化66】

この化合物は、上記に記載されているのと同様の方法で調製される。
【0164】
(実施例22)
1,2−ジチオランの調製
【0165】
【化67】

この化合物は、上記に記載されているのと同様の方法で調製される。
【0166】
(実施例23)
1,2−ジチオラン(ビス−アクリラテル(bis−acrylatel))の調製
【0167】
【化68】

15mLの無水CHCl中のリポ酸/セリノール(3.6ミリモル)の溶液に炭酸カリウム(18ミリモル)が加えられ、混合物は0℃に冷却される。続いて、塩化アクリロイル(18ミリモル)が15分間以内に滴下して加えられる。混合物は0℃で1時間および室温で48時間撹拌された後、反応混合物は脱イオン水(3×50mL)で洗浄され、MgSOで乾燥され、真空下で体積が減らされる(5mL)。粗生成物はCHCl:MeOH(95:1)で溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィー(100mL)によって精製される。
【0168】
(実施例24)
重合体の合成
本発明の重合体は、当分野において公知の任意の方法によって調製されてよい。好ましくは、重合体は、市販の出発原料から調製される。別の実施態様では、重合体は、容易におよび/または安価に調製される出発原料から調製される。
【0169】
合成された重合体は、沈殿、結晶化、クロマトグラフィー等を含む、当分野において公知の任意の技法によって精製されてよい。
【0170】
(実施例25)
粒子の調製
本発明のナノ粒子および微粒子は、スプレードライイング、単一および二重エマルジョン溶媒蒸発、溶媒抽出、および当業者に周知の他の方法を含む当分野において公知の任意の方法を用いて調製されてよい。
【0171】
本発明の重合体を用いて調製された粒子の表面電荷は、第三アミン含有セグメントの量によって制御され得る。
【0172】
【化69】

正の電荷を有する粒子とリソソーム内の膜との相互作用が強められ、その結果、膜が撹乱され、粒子が細胞質中へ放出され得る。
【0173】
【化70】

ジチオラン硫黄原子のチオスルフィナートへの酸化によって、ジチオラン含有重合体の疎水性が低くなり、従って、重合体の水溶性が高くなり、粒子の不安定化が起こる。すると、保持されていた薬物/治療薬剤は、調節された方式で酸化的ストレスの環境中に放出される。
【0174】
【化71】

上記「発明を実施するための形態」中に本発明のさまざまな実施態様が記載されている。これらの記載は、上記の実施態様を直接記載するが、当業者は、本明細書に示され、記載されている特定の実施態様の改変形および/または変化形を着想し得ると理解される。本記載の範囲内に属するそのような改変形または変化形もすべて本記載に含まれるものとする。特に断らない限り、本発明者らは、本明細書および請求項中の語および句には当業者にとっての通常の意味および慣用の意味が付与されると意図する。
【0175】
本出願を出願する時点において本出願人に知られている本発明のさまざまな実施態様の上述の記載を提示しており、例示および説明の目的が意図される。本記載は、網羅的であることを意図したものもなく、本発明を開示した形そのものに限定するものでもなく、上記の教示に照らして多くの改変形および変化形が可能である。記載されている実施態様は、本発明の原理およびその実際的な適用を説明し、他の当業者がさまざまな実施態様においておよび企図される特定の使用に適するさまざまな改変を施して本発明を利用することを可能にする役を果たす。従って、本発明は、本発明を実行するために開示した特定の実施態様に限定されないものとする。
【0176】
本発明の特定の実施態様が示され記載されたが、本明細書中の教示にもとづけば本発明およびそのより広い局面から逸脱することなく変化形および改変形が作られることが可能であり、従って添付の請求項が、すべてのそのような変化形および改変形を本発明の真の技術思想および範囲の内にあるとして請求項の範囲内に包含することは、当業者には理解される。全体として、本明細書中で用いられている用語は、一般に、「開かれた」用語(例えば用語「を含んでいる」は、「を含んでいるがそれらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「を有する」は、「少なくとも〜を有する」と解釈されるべきであり、用語「を含む」は、「を含むがそれらに限定されない」と解釈されるべきである等)であるものとすることは当業者には自明であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式
【化72】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
Pは、1から2の間の整数であり、ならびに
AおよびBは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項2】
下式
【化73】

を有する化合物であって
nは、少なくとも2の整数であり、ならびに
AおよびBは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項3】
下式
【化74】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
は、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびに
Bは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項4】
下式
【化75】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
、RおよびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびに
Bは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項5】
下式
【化76】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、ならびに
、R、BおよびXは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項6】
下式
【化77】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
、R、BおよびYは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびに
は、水素および、分岐および非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基またはアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項7】
下式
【化78】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
Xは、−O−および−NH−からなる群から選ばれ、ならびに
Aは、−(CH−および−CHCH(OCHCH−からなる群から選ばれ、該式中のaは2から18までの整数であり、bは1から100の整数である
化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の化合物であって、Aは−(CH−であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項9】
請求項7に記載の化合物であって、Aは−(CH−であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項10】
請求項7に記載の化合物であって、Aは−CHCHOCHCH−であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項11】
請求項7に記載の化合物であって、Aは−CHCH(OCHCH−であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項12】
下式
【化79】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
Aは、−(CH−および−CHCH(OCHCH−からなる群から選ばれ、該式中のaは2から18までの整数であり、bは1から100までの整数である
化合物。
【請求項13】
請求項12に記載の化合物であって、Aは−(CH−であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項14】
請求項12に記載の化合物であって、Aは−(CH−であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項15】
請求項12に記載の化合物であって、Aは−CHCHOCHCH−であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項16】
請求項12に記載の化合物であって、Aは−CHCH(OCHCH−であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項17】
下式
【化80】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
Bは、ジチオラン誘導体および分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基またはアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびに
は、1個から6個までの炭素原子のアルキル基である
化合物。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物であって、Bは約200から約5,000ダルトンまでの分子量を有するポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテルである化合物。
【請求項19】
下式
【化81】

を有する請求項17に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項20】
下式
【化82】

を有する請求項17に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項21】
下式
【化83】

を有する請求項17に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項22】
下式
【化84】

を有する請求項17に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項23】
下式
【化85】

を有する請求項17に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項24】
下式
【化86】

を有する請求項17に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項25】
請求項17に記載の化合物であって、Bは約200から約5,000ダルトンまでの分子量を有するポリ(エチレングリコール)であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項26】
請求項17に記載の化合物であって、Bは約200から約5,000ダルトンまでの分子量を有するポリ(プロピレングリコール)であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項27】
下式
【化87】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
は、1個から6個までの炭素原子のアルキル基であり、ならびに
Xは、−O−および−NH−からなる群から選ばれる
化合物。
【請求項28】
下式
【化88】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、ならびに
は、1個から6個までの炭素原子のアルキル基である
化合物。
【請求項29】
下式
【化89】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
Bは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項30】
下式
【化90】

を有する請求項29に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項31】
下式
【化91】

を有する請求項29に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項32】
下式
【化92】

を有する請求項29に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項33】
下式
【化93】

を有する請求項29に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項34】
下式
【化94】

を有する請求項29に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項35】
下式
【化95】

を有する請求項29に記載の化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項36】
請求項29に記載の化合物であって、Bは約200から約5,000ダルトンまでの分子量を有するポリ(エチレングリコール)であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項37】
請求項29に記載の化合物であって、Bは約200から約5,000ダルトンまでの分子量を有するポリ(プロピレングリコール)であり、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項38】
下式
【化96】

を有する化合物であって、
nは、3から100の間の整数であり、ならびに
Xは、−O−および−NH−からなる群から選ばれる
化合物。
【請求項39】
下式
【化97】

を有する化合物であって、
nは、3から100の間の整数である
化合物。
【請求項40】
下式
【化98】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
Xは、−O−および−NH−からなる群から選ばれ、ならびに
は、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項41】
請求項40に記載の化合物であって、Rは2個から18個までの炭素原子のアルキル基である化合物。
【請求項42】
請求項40に記載の化合物であって、Rは約200から約5,000ダルトンまでの分子量を有するポリ(エチレングリコール)であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項43】
下式
【化99】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、ならびに
は、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項44】
請求項43に記載の化合物であって、Rは2個から18個までの炭素原子をもつアルキル基である化合物。
【請求項45】
請求項43に記載の化合物であって、Rは最大5,000ダルトンの分子量を有するポリ(エチレングリコール)であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項46】
下式
【化100】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
Xは、−O−および−NH−からなる群から選ばれ、
Yは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびに
およびRは、それぞれ独立に、水素、および分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基またはアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項47】
請求項46に記載の化合物であって、Yは2個から18個までの炭素原子をもつアルキル基であり、RおよびRは水素であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項48】
請求項46に記載の化合物であって、Yは2個から18個までの炭素原子をもつアルキル基であり、RおよびRはメチル基であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項49】
請求項46に記載の化合物であって、Yは2個から18個までの炭素原子をもつアルキル基であり、RおよびRはエチル基であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項50】
請求項46に記載の化合物であって、Yは2個から18個までの炭素原子をもつアルキル基であり、RおよびRはヒドロキシエチル基であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項51】
請求項46に記載の化合物であって、RおよびRは水素であり、Yは最大5,000ダルトンの分子量を有するポリ(エチレングリコール)であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項52】
下式
【化101】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
Yは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびに
およびRは、それぞれ独立に、水素、および分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基またはアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項53】
請求項52に記載の化合物であって、Yは2個から18個までの炭素原子をもつアルキル基であり、RおよびRは水素であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項54】
請求項52に記載の化合物であって、Yは2個から18個までの炭素原子をもつアルキル基であり、RおよびRはメチル基であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項55】
請求項52に記載の化合物であって、Yは2個から18個までの炭素原子をもつアルキル基であり、RおよびRはエチル基であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項56】
請求項52に記載の化合物であって、Yは2個から18個までの炭素原子をもつアルキル基であり、RおよびRはヒドロキシエチル基であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項57】
請求項52に記載の化合物であって、RおよびRは水素であり、Yは最大5,000ダルトンまでの範囲にある分子量を有するポリ(エチレングリコール)であり、ならびにnは3から100の間の整数である化合物。
【請求項58】
下式
【化102】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、ならびに
Xは、−O−および−NH−からなる群から選ばれる
化合物。
【請求項59】
請求項58に記載の化合物であって、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項60】
下式
【化103】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数である
化合物。
【請求項61】
請求項60に記載の化合物であって、nは3から100の間の整数である化合物。
【請求項62】
下式
【化104】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
、RおよびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、および任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項63】
下式
【化105】

を有するポリビニルアルコール−(α−リポ酸)結合体を含む化合物であって、
PVAはポリビニルアルコール重合体であり、α−リポ酸は、エステル結合を介してPVAのモノマー単位のヒドロキシル基に結合している
化合物。
【請求項64】
下式
【化106】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、ならびに
Aは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項65】
下式
【化107】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
およびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびに
Xは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項66】
下式
【化108】

を有する化合物であって、
nは、少なくとも2の整数であり、
およびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、
は、水素、および分岐および非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基またはアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびに
Yは、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み得る
化合物。
【請求項67】
下式
【化109】

を有するポリ−α−アスパラギン酸−(1,2−ジチオラン誘導体)結合体を含む化合物であって、
PAは、ポリ−α−アスパラギン酸重合体であり、ならびに
Xは、
【化110】

【化111】

からなる群から選ばれる1,2−ジチオラン誘導体であり、
、RおよびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含む
化合物。
【請求項68】
請求項67に記載の化合物であって、Rは2個から18個までの炭素原子をもつアルキル基である、化合物。
【請求項69】
請求項67に記載の化合物であって、前記重合体は約750から約100,000ダルトンまでの分子量を有する化合物。
【請求項70】
請求項67に記載の化合物であって、前記PAに対する前記1,2−ジチオラン誘導体の重量%比は、少なくとも10%である化合物。
【請求項71】
下式
【化112】

を有するポリ−α−グルタミン酸−(1,2−ジチオラン誘導体)結合体を含む化合物であって、
aGAは、ポリ−α−グルタミン酸重合体であり、ならびに
Xは、
【化113】

からなる群から選ばれる1,2−ジチオラン誘導体であり、
、RおよびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびにエステル結合またはアミド結合を介して該aGAのモノマー単位のカルボニル基に結合している
化合物。
【請求項72】
請求項71に記載の化合物であって、前記重合体は約750から約100,000ダルトンまでの分子量を有する化合物。
【請求項73】
請求項71に記載の化合物であって、前記aGAに対する前記1,2−ジチオラン誘導体の重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項74】
下式
【化114】

を有するポリ−γ−グルタミン酸−(1,2−ジチオラン誘導体)結合体を含む化合物であって、
gGAは、ポリ−γ−グルタミン酸重合体であり、ならびに
Xは、
【化115】

からなる群から選ばれる1,2−ジチオラン誘導体であり、
、RおよびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびにエステル結合またはアミド結合を介して該gGAのモノマー単位のカルボニル基に結合している
化合物。
【請求項75】
請求項74に記載の化合物であって、前記重合体は約750から約100,000ダルトンまでの範囲にある分子量を有する化合物。
【請求項76】
請求項74に記載の化合物であって、前記gGAに対する前記1,2−ジチオラン誘導体の重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項77】
下式
式241
【化116】

を有するポリ−β−リンゴ酸−(1、2−ジチオラン誘導体)結合体を含む化合物であって、
bMAは、ポリ−β−リンゴ酸重合体であり、ならびに
Xは、
【化117】

【化118】

からなる群から選ばれる1,2−ジチオラン誘導体であり、
、RおよびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびにエステル結合またはアミド結合を介して該bMAのモノマー単位のカルボニル基に結合している
化合物。
【請求項78】
請求項77に記載の化合物であって、前記重合体は約750から約100,000ダルトンまでの範囲にある分子量を有する化合物。
【請求項79】
請求項77に記載の化合物であって、前記bMAに対する前記1,2−ジチオラン誘導体の重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項80】
下式
【化119】

を有するポリアクリル酸−(1,2−ジチオラン誘導体)結合体を含む化合物であって、
AAは、ポリアクリル酸重合体であり、ならびに
Xは、
【化120】

からなる群から選ばれる1,2−ジチオラン誘導体であり、
、RおよびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびにエステル結合またはアミド結合を介して該AAのモノマー単位のカルボニル基に結合している
化合物。
【請求項81】
請求項80に記載の化合物であって、前記重合体は約750から約100,000ダルトンまでの分子量を有する化合物。
【請求項82】
請求項80に記載の化合物であって、前記AAに対する前記1,2−ジチオラン誘導体の重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項83】
下式
【化121】

を有するポリメタクリル酸−(1,2−ジチオラン誘導体)結合体を含む化合物であって、
MAAは、ポリメタクリル酸重合体であり、ならびに
Xは、
【化122】

からなる群から選ばれる1,2−ジチオラン誘導体であり、
、RおよびRは、それぞれ独立に、分岐または非分岐のアルキル基、アリール基、脂環基およびアラルキル基からなる群から選ばれ、飽和または不飽和であり、任意選択としてヘテロ原子を含み、ならびにエステル結合またはアミド結合を介して該MAAのモノマー単位のカルボニル基に結合している
化合物。
【請求項84】
請求項83に記載の化合物であって、前記重合体は約750から約100,000ダルトンまでの分子量を有する化合物。
【請求項85】
請求項83に記載の化合物であって、前記MAAに対する前記1,2−ジチオラン誘導体の重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項86】
下式
【化123】

を有する直鎖ポリエチレンイミン−(α−リポ酸)結合体を含む化合物であって、
LPEIは、直鎖ポリエチレンイミン重合体であり、前記α−リポ酸はアミド結合を介して該LPEIのモノマー単位のアミン基に結合している
化合物。
【請求項87】
請求項86に記載の化合物であって、前記重合体は約750から約100,000ダルトンまでの分子量を有する化合物。
【請求項88】
請求項86に記載の化合物であって、前記LPEIに対する前記α−リポ酸の重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項89】
下式
【化124】

を有するキトサン−(α−リポ酸)結合体を含む化合物であって、
CTSはキトサン重合体であり、ならびに前記α−リポ酸はアミド結合を介して該CTSのモノマー単位のアミン基に結合している
化合物。
【請求項90】
請求項89に記載の化合物であって、前記重合体は約750から約100,000ダルトンまでの分子量を有する化合物。
【請求項91】
請求項89に記載の化合物であって、前記CTSに対する前記α−リポ酸の重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項92】
ポリ(アミドアミド)(PAMAM)−(α−リポ酸)デンドリマー結合体を含む化合物であって、前記α−リポ酸はアミド結合を介して該PAMAMデンドリマーの表面第一アミンリンカー単位に結合している化合物。
【請求項93】
請求項92に記載の化合物であって、前記PAMAMデンドリマーは、0世代デンドリマー、1世代デンドリマー、2世代デンドリマー、3世代デンドリマー、4世代デンドリマーおよび5世代デンドリマーからなる群から選ばれる、化合物。
【請求項94】
請求項92に記載の化合物であって、前記PAMAMデンドリマーに対する前記α−リポ酸の重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項95】
ポリ(アミドアミド)(PAMAM)−(α−リポロール)結合体を含む化合物であって、α−リポ酸はエステル結合を介して前記PAMAMデンドリマーの前記表面カルボン酸リンカー単位に結合している化合物。
【請求項96】
請求項95に記載の化合物であって、前記PAMAMデンドリマーは、0世代デンドリマー、1世代デンドリマー、2世代デンドリマー、3世代デンドリマー、4世代デンドリマーおよび5世代デンドリマーからなる群から選ばれる化合物。
【請求項97】
請求項95に記載の化合物であって、前記PAMAMデンドリマーに対する前記α−リポロールの重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項98】
請求項95に記載の化合物であって、前記重合体は約750から約100,000ダルトンまでの範囲にある分子量を有する化合物。
【請求項99】
請求項95に記載の化合物であって、前記PVAに対する前記α−リポ酸の重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項100】
多糖−(α−リポ酸)結合体を含む化合物であって、α−リポ酸はエステル結合を介して多糖のモノマー単位のヒドロキシル基に結合している化合物。
【請求項101】
請求項100に記載の化合物であって、前記多糖はデキストラン、プルラン、アミロース、マンナン、アミロペクチンおよびシクロデキストリンからなる群から選ばれる化合物。
【請求項102】
請求項100に記載の化合物であって、前記多糖に対する前記α−リポ酸の重量%比は少なくとも10%である化合物。
【請求項103】
【化125】

からなる群から選ばれる化合物。
【請求項104】
1つ以上の[1,2]−ジチオラン誘導体を含む抗酸化剤重合体を用いてそれを必要とする被検者における状態を処置する方法であって、
該抗酸化剤重合体と薬学的に許容されるキャリアとを含む組成物を提供する工程、ならびに
治療として有効な量の該組成物を該被検者に投与して該状態を処置する工程
とを含み、
該状態は、酸化的ストレス、活性酸素種によって引き起こされる皮膚状態、および癌からなる群から選ばれる
方法。
【請求項105】
請求項104に記載の方法であって、前記状態は癌であり、前記組成物は癌化学療法剤の細胞傷害性を増加させる方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate


【公表番号】特表2010−520333(P2010−520333A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551871(P2009−551871)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/055465
【国際公開番号】WO2008/106640
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(398062149)セダーズ−シナイ メディカル センター (34)
【Fターム(参考)】