説明

いびき防止具

【課題】口蓋垂の振動および軟口蓋の下垂を防ぎ、いびきを防止することのできるいびき防止具を提供する。
【解決手段】いびき防止具1は、本体2と通気部3からなり、本体2は、両端部よりも中心が大きな径を有する断面楕円形の椎の実状であり、横断面は長方形の4つの角をカーブ状に切り落とした角丸長方形になっている。本体2の大きさは、人の口腔内上下の歯、舌、硬口蓋および軟口蓋に囲まれた空間に無理なく嵌まる大きさである。また、楕円形の弧で構成される本体2の外周面は、硬口蓋を傷つけないよう、滑らかな曲面で構成されている。本体2は、長尺方向の長さが前歯の裏側から口蓋垂までの長さより短く、前歯の裏側から軟口蓋に達し、一端が口蓋垂と舌根の間に配置され、口蓋垂が気道に沈下するのを防ぐ程度の長さに設定されている。また、通気部3は本体2の中心を一端部から他端部まで貫通して形成された孔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いびき防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠中は、筋の緊張が緩み、軟口蓋が下垂したり、舌根が咽頭に落ち込むことにより、気道が狭くなることがある。いびきは、この狭くなった気道を呼気が通るときに、周辺の粘膜が振動して生じる音である。
従来、いびきの防止器具としては、特許文献1および2に記載されているように、下口蓋を前下歯茎付近で支えることにより、下口蓋が下がることを防止する器具が知られている。これらの器具は、睡眠中に下口蓋が下がり、その結果舌根が下がって気道を塞ぐことを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−174697号公報
【特許文献2】特開平11−262500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの方法では気道を塞ぐもう一方の原因である、軟口蓋の下垂は防ぐことが出来ず、いびきの直接的原因である口蓋垂の振動は十分に防ぐことができなかった。
【0005】
そこで本発明の目的は、口蓋垂の振動および軟口蓋の下垂を防ぎ、いびきを防止することのできるいびき防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいびき防止具は、口腔内に装着され、いびきを防止するいびき防止具であって、外形が椎の実状とされ、弾性を有する本体を備え、この本体は、喉側に向いて配置されるとともに、口蓋垂と舌根との間に配置されて口蓋垂の沈下を阻止する一端部と、口側に向いて配置される他端部とを有し、前記一端部と前記他端部とには呼吸を可能にする通気部が貫通して形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明では、使用者が当該いびき防止具を口腔内に含むだけで容易に装着できる。当該いびき防止具は、外形が椎の実状であり、舌と上口蓋および上下の歯に囲まれた空間に配置され、一端部は口蓋垂と舌根との間に配置され、他端部は口側に向いて配置される。使用者の軟口蓋は当該本体に当接することにより、押し上げられるようにして支えられ、その結果、口蓋垂の振動を抑えることができ、同時に軟口蓋の下垂、ひいては口蓋垂の沈下を防ぐことができる。
本発明のいびき防止具は一端部から他端部へ貫通する通気部を備えるので、口腔内が本体で占有されても通気が確保され、呼吸が可能である。また、本体は球状ではなく断面楕円形なので、口腔内で向きが変化し難く、通気部の向きを保ちやすい。
また、本体が弾性を有するので、個人の口腔内の形状に合わせて、本体が弾性変形し、快適に装着することができる。
【0008】
本発明では、前記本体は、空気注入・排出部を備えたバルーンであることが好ましい。
本発明によれば、前記本体は、空気注入・排出部を備えるので、本体の形状および大きさを空気の充填量により調節することが可能である、従って、使用者の口の大きさや使用感に基づいて、使用者が任意にその形状を決定できる。また、使用しない場合は、空気を排出することで小さな形状とすることができ、収納や携帯に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るいびき防止具。
【図2】口腔内の正面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るいびき防止具を装着した口腔内の横断面図。
【図4】本発明の第二実施形態に係るいびき防止具。
【図5】本発明の変形例に係るいびき防止具。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるいびき防止具の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係るいびき防止具1が示されており、(A)正面図、(B)横断面図、(C)側面図をそれぞれ示している。図2は口腔内の略図であり、図3は本発明の一実施形態に係るいびき防止具1の使用例を横断面図で示している。
【0011】
いびき防止具1は、本体2と通気部3からなり、本体2は、両端部よりも中心が大きな径を有する断面楕円形の椎の実状であり、横断面は長方形の4つの角をカーブ状に切り落とした角丸長方形になっている。本体2の大きさは、人の口腔内上下の歯、舌、硬口蓋および軟口蓋に囲まれた空間に無理なく嵌まる大きさである。また、楕円形の弧で構成される本体2の外周面は、硬口蓋を傷つけないよう、硬口蓋の形状に沿っていることが好ましく、滑らかな曲面で構成されている。ここで、本体2は、長尺方向の長さが前歯の裏側から口蓋垂までの長さより短く、前歯の裏側から軟口蓋に達し、一端が口蓋垂と舌根の間に配置され、口蓋垂が気道に沈下するのを防ぐ程度の長さに設定されている。また、通気部3は本体2の中心を一端部から他端部まで貫通して形成された孔である。この通気部3は呼吸を妨げないよう、本体2の外形と剛性を保てる程度にできるだけ大きな径で設けるのが好ましい。
【0012】
本体2は、シリコン樹脂の射出成形により製造されるが、その他にも、口腔内を傷つけることがない柔軟性および弾力性のある素材であって、口腔内に含んで健康状の問題がない素材であれば使用できる。これらの性質を発揮するよう、樹脂を積層したり、表面をコーティングしたものであってもよい。
尚、いびき防止が必要とされるのは成人であり、成人の口腔の大きさにはそれほど違いがないので、基準となる大きさを作製しておけばよい。本体が弾性を有するので、使用者の口腔内の形状に合わせて弾性変形が可能であるが、本体を削って調整するものでもよい。また、子供等、小さい人向けに小型のタイプを用意してもよい。
【0013】
次に、本いびき防止具1の使用方法について説明する。図2は人の口腔内を正面から見た図である。いびき防止具1は、上歯列5、下歯列6、舌7、硬口蓋8、軟口蓋9、および口蓋垂10に囲まれた空間に装着するものであり、図中に破線で示されている。図3に示すように、使用者は、楕円形の長径が左右になり、通気部3の一端部が口蓋垂10と舌根11の間に位置し、他端部が口側に向き、口から通気部3を通じて、空気と呼気の出入りが可能であるよう咥える。すると、軟口蓋9は本いびき防止具1の本体2に当接し、支えられ、それに伴い、口蓋垂10も支えられて、呼気による振動を抑えることができ、同時に、咽頭12に沈下し気道が狭くなるのを防ぐことができる。
【0014】
この実施形態によれば、通気部3を設けたので、呼吸が容易で、本体1の形状を椎の実状としたので、回転などし難く、通気部3の方向を装着時のまま保ちやすく、通気部3への通気を確実に確保できる。さらに、着脱用の留め具等、複雑な構成を備える必要がないため、製造が簡単であり、使用者個人に合わせた精密な型取り等が必要ない。また、装着は使用者が本体2を口に含むだけでよく、容易である。
また、本体2をシリコン樹脂製としたので、使用後は水などで洗浄し、清潔に保つことができる。
【0015】
次に、本発明の第2実施形態を図4に基づいて説明する。図4には、本発明の第2実施形態に係るいびき防止具1Aが示されており、第1実施形態のいびき防止具1とは、本体2Aをバルーンとし、空気注入・排出部4を設けた点で相違する。
いびき防止具1Aはバルーン状の本体2A、本体2Aの中心を長尺方向に貫く通気部3Aを備え、本体2Aの表面上で、装着時に口側に配置される一端部で、通気部3Aの開口部に隣接した位置に空気注入・排出部4を備えている。ここで、バルーンとは、中空であることを意味し、本体2Aの内部には空気の充填が可能であることを意味している。
【0016】
空気注入・排出部4は、本体2Aの表面に備えられ本体2Aの内部に通じるノズル41とノズル41を封止するキャップ42からなり、ノズル41は本体2A内部に押し込んで格納することが可能である。
【0017】
いびき防止具1Aを使用する際には、キャップ42を開放し、風船を膨らませる要領で、ノズル41部分から、使用者が息を吹き込むなどして、本体2A内部に空気を送り込んで膨らませ、第1実施形態同様、口腔内に含んで使用する。
【0018】
この実施形態によれば、前述の第1実施形態で得られる効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本体2Aの形状および大きさは充填する空気の量により変化する。従って、個人の口腔内空間の大きさや使用感を勘案し、使用者が任意で決定でき、快適な装着感が得られる。また、不使用時にはキャップ42を開放し、空気を抜くことで省スペース化でき、携帯や収納にも便利である。
さらに空気注入・排出部4は本体1Aを口腔内に含んだ際、口側に向けて装着することができるので、キャップ42が本体2Aの表面に突出していても、装着中に口腔内で引っ掛かるなどの違和感はない。
【0019】
次に、本発明の第3実施形態を図5に基づいて説明する。図5には、本発明の第3実施形態に係るいびき防止具1Bが示されており、(A)正面図、(B)横断面図、(C)側面図をそれぞれ示している。本発明の第3実施形態のいびき防止具1Bと第1実施形態のいびき防止具1は、通気管を複数設けた点において相違する。
いびき防止具1Bは本体2B、本体2Bの中心を長尺方向に貫く通気部3Bの他に、本体2Bの中心(通気部3Bの中心)で、この3Bに直交する通気部3B’を備える。
【0020】
この第3実施形態によると、使用中にいびき防止具1Bの向きが変化し、通気部3Bの一部が塞がれるようなことがあっても、通気管を2つ設けたので、呼吸がしにくいといった状況を防ぐことができ、快適に使用することができる。特に、2つの通気管の方向を互いに直交する方向として、大きく変えたので、あらゆる向きへの変化に対応できる。
【0021】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述の実施形態において、通気部3は長尺方向に複数本が平行に設けられていてもよいし、第2実施形態の通気部3Bと3B’は垂直に交わるものでなくても、本体2Bの中心を通って、本体2Bを貫通するよう設けられていればよい。
また、本体2は椎の実状としたが、この椎の実状の本体の端部に口側に向いて配置される傘状部を一体に形成し、この傘状部を唇の外に配置する、いわゆるおしゃぶりのような形状としてもよい。この場合には、本体2の向きが一定に保たれ、通気部3への通気が確実になる上、軟口蓋や口蓋垂に対する本体2の位置もより適切に保ちやすい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、いびき防止器具として用いることができる。
【符号の説明】
【0023】
1,1A,1B…いびき防止具
2,2A,2B…本体
3,3A,3B,3B’…通気部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に装着され、いびきを防止するいびき防止具であって、
外形が椎の実状とされ、弾性を有する本体を備え、
この本体は、喉側に向いて配置されるとともに、口蓋垂と舌根との間に配置されて口蓋垂の沈下を阻止する一端部と、口側に向いて配置される他端部とを有し、前記一端部と前記他端部とには呼吸を可能にする通気部が貫通して形成されることを特徴とするいびき防止具。
【請求項2】
請求項1に記載のいびき防止具であって、
前記本体は、空気注入・排出部を備えたバルーンであることを特徴とするいびき防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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