説明

がいしの打音点検装置

【課題】現地へ携帯して現地の設備を停電させることなくその場でがいしのヒビ割れ等の表面の損傷の有無を点検でき、また、がいしからの騒音や発熱がない場合でもがいしに発生している細かなヒビ割れを発見できるがいしの打音点検装置を提供する。
【解決手段】打音点検装置1は、被検がいし50に打撃を与える打撃機構と、この打撃機構による打撃によって被検がいし50から発生する打撃音を集音する集音機構(マイク5)と、集音機構で集音された打撃音から得られるがいし表面の破損の有無で変化する物理量が、正常がいしで予め得られた同物理量と所定の許容範囲で一致するか否かを判定し、被検がいし50から得られた物理量が正常がいしで予め得られた同物理量と所定の許容範囲で一致すると判定された場合に良品判定表示を行い(LED42を点灯させ)、所定の許容範囲で一致しないと判定された場合に不良品判定表示を行う(LED43を点灯させる)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送配電設備などに設けられるがいしの破損(ヒビ割れ等)の有無を打音点検するための打音点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送配電設備に設けられるがいしは、襲雷等に起因して破損する場合があることから、従来においては、がいしの破損の有無を作業員が巡視して目視により確認し、破損があるがいしについては取替えを実施している。しかし、がいしに細かいヒビ割れが入った状態は、目視による確認は困難であり、また、このようなヒビ割れを放置しておくと、遮断器が保護動作しないような短時間の地絡事故(短時間事故)や微地絡の状態が継続する不都合がある。
【0003】
そこで、目視では確認しにくい被検がいしの破損(ヒビ割れ)の有無を検査するために、被検がいしに打撃を与え、その際に生じる打撃音を分析して破損の有無を判断する点検手法が有用となる。
このような打撃音によって被検体を点検する装置としては、従来、例えば、下記する特許文献1及び2の構成が公知となっている。
【0004】
このうち、特許文献1は、びんのワレ発生の有無を自動的に検出する装置に関するもので、同文献1には、びんに打撃を与える機構と、打音を検出する機構と、打音の減衰及び特定周波数の成分を分析する機構とを備え、被検査びんの打音と正常びんの打音とを比較して、びんのワレ発生の有無を検知する構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献2は、打撃時に発生する音響信号からセラミック製品等のクラックや割れの有無を診断する方法に関し、同文献2には、音響信号をアナログからデジタルに変換し、周波数分析し、所定の周波数領域の最大値を抽出し、最大値と正常品セラミックあるいはプラスチックまたは金属の音響信号である基準最大値との差を計算して、セラミック製品等のクラックや割れの有無を診断する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−224659号公報
【特許文献2】特開2006−322823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の装置を用いて被検がいしを点検するためには、送配電設備を停電させて被検がいしを取り外し、点検装置がある場所へ持ち運ぶ必要がある。このような送配電設備に取り付けられているがいしを取り外して個別に打音点検することは、検査精度を高める上で好ましいが、送配電線が充電状態にある場合に停電状態を形成して被検がいしを外し、点検装置へ移して検査を行うことは、現実的でないのみならず現地での作業に即応できない不都合がある。
【0008】
また、がいし表面に発生したヒビ割れに起因してがいしの騒音または発熱が生じていれば、発見は容易となるが、騒音や発熱が発生しない細かなヒビ割れについて発見することは、非常に困難であった。
【0009】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、現地へ携帯して現地の設備を停電させることなくその場で実装されているがいしに対してヒビ割れ等の表面の損傷の有無を容易に点検でき、また、がいしからの騒音や発熱がない場合でもがいしに発生している細かなヒビ割れを発見することが可能ながいしの打音点検装置を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明に係るがいしの打音点検装置は、操作棒に着脱自在に取り付けられる装置であって、被検がいしに打撃を与える打撃機構と、この打撃機構による打撃により前記被検がいしから発生する打撃音を集音する集音機構と、前記集音機構で集音された打撃音から得られるがいし表面の破損の有無で変化する物理量が、正常がいしで予め得られた同物理量と所定の許容範囲で一致するか否かを判定する判定手段と、この判定手段により前記被検がいしについて得られた前記物理量が前記正常がいしで予め得られた同物理量と所定の許容範囲で一致すると判定された場合に良品として表示する良品判定表示を行い、前記所定の許容範囲で一致しないと判定された場合に不良品として表示する不良品判定表示を行う表示手段とを具備することを特徴としている。
【0011】
したがって、操作棒に着脱させた打音点検装置を被検がいしに近づけ、打撃機構により被検がいしに打撃を与えると、集音機構によりその打撃によって得られた打撃音が集音され、判定手段により、集音された打撃音から得られるがいし表面の破損の有無で変化する物理量が正常がいしで予め得られた同物理量と所定範囲で一致しているか否かが判定され、表示手段により、所定範囲で一致していると判定された場合には良品判定表示がなされ、所定範囲で一致していないと判定された場合には不良品判定表示がなされる。
【0012】
したがって、上述の構成によれば、打音点検装置を現地へ携帯して、その場でがいしの良否判定を行うことができるので、充電状態にある設備に実装されたがいしに対しても良品判定を容易に行うことができ、また、騒音や発熱が発生しない細かなヒビ割れの有無をも探査することが可能となる。
【0013】
ここで、打撃機構としては、例えば、打点球をバネ力を利用して勢いよく突出させてがいし表面に打撃させる構成としてもよく、また、表示手段としては、LEDを用い、良品判定表示を良品を表す色(例えば、緑)のLEDを発光させるものとし、不良品判定表示を不良品を表す色(例えば、赤)のLEDを発光させるようにしてもよい。
【0014】
また、がいしの打音点検作業が周囲の環境にできるだけ依存しないようにするために、集音機構は、マイクと、このマイクを覆うように設けられると共に被検がいしの開口部に臨むように配設可能となるパラボラ型の集音板とを有して構成するようにしてもよい。ここで、パラボラ型の集音板は、常時パラボラ型を形成している非伸縮のものであっても、点検作業を行う際に拡げてパラボラ型に形成する伸縮可能なものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明の打撃点検装置によれば、操作棒に着脱自在に取り付けられるので、現地へ携帯して実装されているがいしを取り外すことなく良品判定を行うことが可能となり、また、打撃点検装置を、被検がいしに打撃を与える打撃機構と、この打撃機構による打撃により被検がいしから発生する打撃音を集音する集音機構とを備え、集音機構で集音された打撃音から得られるがいし表面の破損の有無で変化する物理量が、正常がいしで予め得られた同物理量と所定の許容範囲で一致するか否かを判定し、その判定結果に応じて表示手段により判定表示を行うようにしたので、充電状態にある架線に対しても停電させることなく良品判定を容易に行うことができ、また、打撃音から得られるがいし表面の破損の有無で変化する物理量に基づき良否判定が行えるので、ヒビ割れに起因する騒音や発熱が無い場合や通常では発見しにくい細かなヒビ割れが発生している場合でも、ヒビ割れの有無を正確に探査することが可能となる。
【0016】
また、集音機構を、マイクと、このマイクを覆うように設けられると共に被検がいしの開口部と対峙するように配置可能となるパラボラ型の集音板とを有して構成すれば、がいしの点検作業を行う現場の環境に依存せずに正確に点検結果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る打音点検装置の外観を示す図であり、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその側面図である。
【図2】図2は、本発明に係る打音点検装置の内部構造を示す図であり、(a)はばね力に抗して打点球をケース内に収容した状態を示す断面図、(b)はばね力により打点球をケースの表面から突出させた状態を示す断面図、(c)は打音点検装置の回路構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明に係る打音点検装置の制御回路による制御動作例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明に係る打音点検装置を用いて送配電設備に実装されている耐張がいしの点検を行う状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明に係る打音点検装置の他の構成例を示す外観図である。
【図6】図6は、図5に示す打音点検装置を用いて送配電設備に実装されている耐張がいしの点検を行う状態を示す図である。
【図7】図7は、本発明に係る打音点検装置のさらに他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1及び図2において、本発明に係る打音点検装置1が示されている。この打音点検装置1は、打撃機構2が収容された例えば円筒形状のケース3と、このケース3の径方向に取り付けられた集音機構4を構成するマイク5と、表示部6と、ケースの下端に設けられた取付部7とから構成されている。
【0020】
取付部7は、その先端部に菊座構造により連結接続して取り付ける菊座部8が設けられ、この菊座部8は絶縁操作棒10の先端に取り付けられる菊座アダプタ11のヘッド部12に角度調整可能に取り付けられる。
【0021】
即ち、絶縁操作棒10の先端に取り付けられる菊座アダプタ11は、先端にヘッド部12が配置され、他端に、絶縁操作棒10の先端部に連結接続するジョイント部13が配置されたそれ自体周知のもので、菊座アダプタ11のヘッド部12は、円盤形状に形成されており、中心に蝶雌ネジ15の螺合する雄ネジ16が立設され、この雄ネジ16から放射状に突出して周方向に配設された複数の突起17が形成されている。
【0022】
これに対して、打音点検装置1の取付部7に設けられた菊座部8は、菊座アダプタ11の円盤状に形成されたヘッド部12と対面可能な円盤形状に形成されており、先端から内方に向かって切り欠かれたU字形状の連結溝18を有し、この連結溝18の底部を中心として放射状に突出する突起19が周方向に複数形成されている。
【0023】
したがって、菊座アダプタ11のヘッド部12は、打音点検装置1の取付部7に形成された菊座部8の連結溝18内に、雄ネジ16を差し込んでヘッド部12と菊座部8との互いの突起17,19を相手部材の突起間に形成される凹部に嵌合させて(互いの突起17,19同士を噛み合い係合させて)、円盤形状が互いに対面接触する状態として蝶雌ネジ15を雄ネジ16に螺合させて締め付けることにより、打音点検装置1を菊座アダプタ11に対して任意の相対角度で連結させ、絶縁操作棒10に対して打音点検装置が所望の姿勢となるようにしている。
【0024】
打撃機構2は、打点球21とこの打点球21にロッド22を介して連結されたカム部材23と、このカム部材23を下方へ断続的に付勢する付勢手段24と、前記打点球21を上方へ常時付勢するスプリング25とを有して構成され、ケース3の内部は、図2に示されるように、第1及び第2の隔壁27,28により、打点球21を収納可能とする打点球収容部30と、スプリング25を収納するスプリング収容部31と、カム部材23と付勢手段24とを収納するカム収容部32とに区画され、打点球21とカム部材23とを連結するロッド22は、それぞれの収容部を移動できるように第1及び第2の隔壁27,28に形成された通孔27a,28aを介して挿通させるようにしている。
【0025】
また、ケース3の上端面3a、即ち、打点球21と対峙する部位には、打点球21を挿通させる打点球挿通孔33が形成され、スプリング収容部31に収納されるスプリング25は、ロッド22の中程に固装されたバネ受け34と第2の隔壁28との間に弾装されて打点球21を常時上方へ付勢するようにしている。
【0026】
カム部材23は、その側面に、下方へ行くほど径方向に深く削り込まれた係合溝35が形成され、この係合溝35の下端に、モータ36の回転動力により回転する回転板37の周縁に設けられた係止ピン38が回転板37の所定の回動範囲で係止可能となる係止面35aが形成されている。
【0027】
係止ピン38がカム部材23の係止面35aに当接されてカム部材23を下方へ付勢すると、スプリング25がバネ受け34によって圧縮されると共に打点球21がケース3内に入り込み、係止ピン38が係止面35aから離れる直前においては、スプリング25が最も圧縮され、打点球21は、第1の隔壁27に緩く接触しているか、少し浮いている状態にあり、また、カム部材23は、ケースの底面から少し離れた状態となる。また、係止ピン38が係止面35aから外れると、スプリングのばね力により、バネ受け34が一気に押し上げられ、打点球21が通孔33から飛び出した状態となる。この際、スプリング受け34は、第1の隔壁27に当接し、カム部材は第2の隔壁に当節するか第2の隔壁と少し離れた状態となる
【0028】
したがって、モータ36が回転して回転板37が回転すると、この回転板37に取り付けられた係止ピン38が回動し、係合溝35の係止面35aに係止ピン38が差し掛かると、以後カム部材23は、スプリング25のバネ力に抗して下方へ押し下げられ、これに伴って打点球21もケース3内に収容される。その後、係止ピン38がカム部材23の係止面35aから外れると、スプリング25が自身の復元力により一揆に伸び、バネ受け34を第1の隔壁27に当接させ、打点球21の一部を通孔33を介してケース3の上端面より突出させる。
【0029】
集音機構を構成するマイク5は、ケース3の径方向に突設されると共に上方へ屈曲してその先端をケースの上端よりも上方へ延設させたアーム部40の先端に設けられている。
【0030】
また、表示部6は、ケース3の側方に突設されると共にアーム部40の下方に配された表示ブロック41に2つのLED42,43を配して構成されており、一方のLED42を良品判定表示用として用い、他方のLED43を不良品判定表示用として用いるようにしている。ここで、良否判定表示用のLED42は緑色に発光し、不良品判定表示用のLED43は赤色に発光するようになっている。
【0031】
また、ケース3又は表示ブロック41の内部には、制御回路45を搭載した図示しない制御基板や電池46が収納され、また、表示ブロック41の側面には制御回路45への電力供給をオンオフするスイッチ47が設けられている。制御回路45には、図2(c)に示されるように、マイク5、モータ36、LED42,43が結線されて、スイッチ47の導通状態(ON)の形成により、電池46から制御回路45やマイク5、LED42,43を動作させる電力が供給されると共に、モータ36に電力が供給されて、モータ36の回転により打撃機構2が駆動するようになっている。
【0032】
図3において、制御回路45での制御動作例がフローチャートとして示され、以下、このフローチャートに基づき、制御動作例を説明する。
制御回路45は、スイッチ47が投入されると、モータ36に通電してモータ36を駆動させ、これにより打撃機構2を駆動させる(ステップS1)。モータ36の駆動により回転板37が回動するが、回転板37の係止ピン38がカム部材23から外れるタイミングとマイク5の集音を開始するタイミングとは同期しており、打点球21がケース3から飛び出して被検体(被検がいし)に打撃した直後から所定時間(例えば2sec)の間、マイク5を介して打撃音を集音記録する(ステップS2)。
【0033】
その後、制御回路45は、集音された打撃音から、がいし表面の破損の有無で変化する物理量、例えば打撃音の周波数と減衰時間を演算し(ステップS3)、その演算された周波数f1と減衰時間t1が正常がいしについて予め測定された打撃音の周波数t0と減衰時間t0に対して所定の許容範囲で一致するか否かを比較する。
【0034】
具体的には、ステップS4において、被検がいしの打撃音の周波数と正常がいしの打撃音の周波数との差(|f1−f0|)を演算すると共に、被検がいしの打撃音の減衰時間t1と正常がいしの打撃音の減衰時間t0との差(|t1−t0|)を演算し、ステップS5において、被検がいしの打撃音の周波数と正常がいしの打撃音の周波数との差(|f1−f0|)が所定値α以内であり、また、被検がいしの打撃音の減衰時間と正常がいしの打撃音の減衰時間との差(|t1−t0|)が所定値β以内であるか否かを判定し、周波数の差が所定値α以内であり、且つ、減衰時間の差(|t1−t0|)が所定値β以内であると判定された場合に良品と判定して、良品判定表示としてのLED42を点灯させ(ステップS6)、周波数の差が所定値αより大きく(許容範囲を超え)、又は、減衰時間の差が所定値βより大きい(許容範囲を超えている)場合に不良品と判定して、不良品判定表示としてのLED43を点灯させる(ステップS7)。
【0035】
尚、上述の一連の判定動作は、例えば、スイッチ47が投入(ON)されている間に10秒のインターバルで継続して行われるようになっている。
【0036】
以上の構成において、送配電設備に実装されている例えば耐張がいし50を点検する場合には、図4に示されるように、絶縁操作棒10に装着された菊座アダプタ11に打音点検装置1の取付部7を菊座部8を介して所望の角度に取り付け、スイッチ47をONにした後に、耐張がいし50の下方から打音点検装置1を近づけ、ケース3の上端面を耐張がいし50の側面に軽く押し当てるように対峙させると共に、マイク5を耐張がいし50の開口部50aと対峙する位置に配置させる。
【0037】
すると、ケース3の上端面3aに形成された通孔33を介して飛び出した打点球21が被検がいし(耐張がいし)50の側面を打撃し、この被検がいし50から打撃音を発生させる。その打撃音は、周囲に広がるが、開口部50aを介して伝播さえた打撃音はマイク5で所定時間集音される。打音点検装置1は、この集音された打撃音から周波数と減数時間を演算し、正常がいしのデータと比較し、所定の許容範囲で一致すると判定した場合には、良品と判定してLED42を点灯させ、また、所定の許容範囲で一致しないと判定した場合には、不良品と判定してLED43を点灯させる。
【0038】
したがって、点検者は、打音点検装置1を現地へ携帯し、絶縁操作棒10に取り付けて上述した動作を行い、表示部6で発光されるLEDの色を確認するだけで、被検がいし50の破損(ヒビ割れ)の有無を確認することができるので、現地の設備を停電させることなくその場で実装されているがいしに対してヒビ割れ等の表面の損傷の有無を容易に確認することが可能となる。また、目視による確認ではなく、打撃音から得られるがいし表面の破損の有無で変化する物理量(周波数、減衰時間)から被検がいしの状態を点検しているので、がいしからの騒音や発熱がない場合でも、がいしに発生している目視では確認しにくい細かなヒビ割れを発見することが可能となる。
【0039】
図5に、上述した打音点検装置の変形例が示されている。この例では、前述した構成に加えて、マイク5を覆うように設けられた集音板51がさらに取り付けられている。即ち、この例では、集音機構4が、マイク5と、このマイク5を覆うように設けられると共に被検がいし50の開口部50aに臨むように配設可能となるパラボラ型の集音板51とから構成されているもので、集音板51は、アーム部40に固定された所定の碗形状をなす非伸縮のもので、連結ピン52を中央に配置するためのスリット54が略中央から上端にかけて径方向に形成されている。
【0040】
このような構成の打音点検装置1を用いて、設備に実装された例えば耐張がいしから成る被検がいし50を点検する場合には、図6に示されるように、絶縁操作棒10に装着された菊座アダプタ11に打音点検装置1の取付部7を菊座部8を介して所望の角度に取り付け、スイッチ47をONにした後に、被検がいし50の下方から打音点検装置1を近づけ、連結ピン52を集音板51のスリットに挿入して集音板の中央に位置させて集音板51を被検がいし50の開口部50aと対峙するように(開口部50aを塞ぐように)配置し、また、ケース3の上端面を耐張がいし50の側面に軽く押し当てるように対峙させる。
【0041】
このような構成においては、被検がいし50から発生する打撃音を集音しやすくなり、点検箇所の雑音などの環境に依存することなく、被検がいしを正確に点検することが可能となる。
【0042】
尚、上述した構成例では、集音板51として非伸縮のパラボラ型のものを用いた例を示したが、点検時に必要に応じてパラボラ型に形成する伸縮可能な集音板51を用いるようにしてもよい。
例えば、図6に示されるように、マイクの後方でパラボラ状に展開可能な集音分割板51aを束ねておき、この集音分割板51aを点検時に展開させてパラボラ状にするとよい。その際、各集音分割板51aは、左右で対称に形成されて連動させるようにしておき、一方の側の集音分割板51aを持ち上げると他方の側の集音分割板51aも上がり、上方で両側の集音分割版が突き合わされ、突き合わされた集音分割板同士を一方に設けられた係合片53aを他方に設けられた係合ピン53bに係合させて連結させるようにしてもよい。尚、付き合わされる集音分割板51aの側縁には、被検がいし50の連結ピン52との干渉を避ける凹部55が形成されている。
【0043】
このような構成においては、点検作業をしないときには、集音板51を束ねておくことができるので、打音点検装置1の大型化を回避できると共に、携帯しやすいものとなる。
【0044】
尚、上述の例では、被検がいし50として耐張がいしを用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、ジャンパー線60を固定するためのピンがいし61の点検においても同様の打音点検装置1を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 打音点検装置
2 打撃機構
4 集音機構
5 マイク
6 表示手段
10 絶縁操作棒
42,43 LED
50 被検がいし
50a 開口部
51 集音板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作棒に着脱自在に取り付けられる打音点検装置であって、
被検がいしに打撃を与える打撃機構と、
この打撃機構による打撃によって前記被検がいしから発生する打撃音を集音する集音機構と、
前記集音機構で集音された打撃音から得られるがいし表面の破損の有無で変化する物理量が、正常がいしで予め得られた同物理量と所定の許容範囲で一致するか否かを判定する判定手段と、
この判定手段により前記被検がいしから得られた前記物理量が前記正常がいしで予め得られた同物理量と所定の許容範囲で一致すると判定された場合に良品として表示する良品判定表示を行い、前記所定の許容範囲で一致しないと判定された場合に不良品として表示する不良品判定表示を行う表示手段と
を具備することを特徴とするがいしの打音点検装置。
【請求項2】
前記集音機構は、マイクと、このマイクを覆うように設けられると共に前記被検がいしの開口部に臨むように配設可能となるパラボラ型の集音板とを有して構成されることを特徴とする請求項1記載のがいしの打音点検装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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