説明

こびり付きをはがれ易くする金網

【課題】魚焼網や餅焼網などの金網において、網に焼け付いた食材を剥しやすくする事を課題とする。従来の金網では、焼いた食材が網に焼き付いてしまい、食材を裏返す時に食材を崩しがちであった。
【解決手段】縦向きの針金と横向きの針金を交差させて格子網を構成し、この格子網の外縁で接する針金同士を網の平面方向で回動自在になる連結手段で連結して、金網を構成する。この金網は、バイアス生地のように伸縮変形可能な状態となる。焼き付いた食材を剥がしたい場合には、金網をバイアス生地のように伸縮変形させると、網に焼け付いた食材は剥離し易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理等に用いる金網に関する。魚焼き網,焼肉網,餅焼き網,蒸焼き網,バーベキュー用の焼き網や、オーブンの焼き網、食品製造機械で用いられる焼き網、魚の干物を干す金網,燻製網、鰹節の製造工程の焙乾用金網などの金網全般を含むものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、調理用の金網は焼いた素材が網にこびり付いて、はがれ難いという課題を抱えていた。その解決として、焼く前に網にお酢を塗っておくという方法があるが、その効果は薄かった。また特許文献1のように、針金をフッ素加工する構成もあるが、フッ素加工は汚れを洗う時に剥がれ落ち易すく、耐久性が乏しいという難点があった。またテフロン等は高温になると有害物質がでる危惧を指摘する研究者もいた。(テフロンは登録商標です)
【特許文献1】特開平10−165315号,焼き網
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、調理用金網で焼いた素材をはがし易くする事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
懸かる課題解決の為、調理用金網をバイアス布地のように伸縮自在に構成することを解決手段とする。
具体的には、縦向き平行に並べた針金群と横向き平行に並べた針金群とを形成し、この針金群を溶接したりせずに交差させて重ねて格子網を形成し、格子網の外縁で接する針金同士を網の平面方向で回動自在になる連結手段で連結して金網を構成する事を、解決手段とする。
ここでいう針金とは、直線状の針金や図5のような波打ち針金や、図1のような細板などの総称である。
ここでいう格子網とは、網目が格子模様となる網であるが、格子は正方形のみならず方形であれば構わないし、等間隔でなくともよい。格子網であれば、網目は方形となり、網を右傾斜に変形させれば、網目も右傾斜の菱形もしくは平行四辺形になる。そして網を左傾斜に変形させれば、網目も左傾斜の平行四辺形になり、金網がバイアス布地の様に伸縮可能となるわけである。一方の針金群の本数が2本だけという構成も、格子網に含むものとする。他方の交差させる針金群の本数が多ければ金網として充分に機能するからである。
【0005】
ここでいう針金同士の連結とは、通常の回動自在な連結手段ならば何でも良く、交差する針金で形成した輪に他方の輪を通す構成や、一方の針金に形成した軸穴に他方の針金を通す構成や、双方の針金に形成した軸穴に軸を通す構成などである。回動自在な連結手段なので、軸が網面に垂直な場合は軸穴の余裕は不要だが、軸が網面に平行な場合の軸穴は軸の交差角度が変化できるだけの余裕のある内径であることを要する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の金網がもたらす効果は、焼いた食材が金網にこびり付いても、金網をバイアス布地の様に伸縮させる事によって、食材がはがれ易くなるという効果である。はがれ易くなる過程を説明すると、金網をバイアス布地の様に伸縮させると、金網にこびり付いた食材も同様に伸縮させられるので、食材中心付近を基準にして、他のこびり付き点に押し引きの力が加わり、周辺のこびり付きは引き剥がされ、食材がはがれ易くなる訳である。最後に残る中心付近にこびり付いた点も金網伸縮を繰返すことで食材に回転する力が加わるので、剥がれ易い状態になる。
図1図2で説明すると、仮に図1の魚の頭と胴と尾が網にこびり付いたとする。各部とこびり付いた金網の接着点を頭着点、胴着点、尾着点と記すこととする。図2のように網を変形させると、頭着点と胴着点の距離、および胴着点と尾着点の距離は2倍になり、引っ張られるので魚の頭と頭着点とは引き剥がされる。尾着点も同じである。最後に残った胴着点も、図1の状態では魚に対して約26度の針金が、図2で約63度になるので、37度のねじる力が働く。さらに網の伸縮を繰返していけば、剥がれ易くなるわけである。
【0007】
また本案金網での食材の剥がし方は、食材に過度の力を与えないので、きれいに剥がれる効果をもつ。たとえば従来の焼き網で焼いた魚をヒックリ返そうと尾を引っ張った場合は、頭着点、胴着点、尾着点の接着力の合計という大きな力が反力となって働くので、魚の片面の皮や身を剥がしてしまう事になりがちであった。本案金網での食材の剥がし方ならば、頭着点の接着力と、尾着点の接着力とで互いに引っ張り合わせるので、魚の頭に働く力は頭着点の接着力のみとなる。魚の尾に働く力も、尾着点の接着力のみとなる。このように魚にかかる負担はとても軽減され、身や皮をきれいに剥がす事となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1を参照として本発明の最良の形態を説明する。金属の細板1に等間隔に5つの穴2とその両端にやや間隔を大きく開けた軸穴3を開けたものを2本作り、この2本の細板1を平行に並べ、その穴2に針金4を平行に通し付けて、網上段を形成する。同様に金属の細板5に等間隔に4つの穴6とその両端にやや間隔を大きく開けた軸穴7を開けたものを2本作り、この2本の細板5を平行に並べ、その穴6に針金4を平行に通し付けて、網下段を形成する。そして網下段の上に網上段を重ね、4隅で重なる細板1,5の軸穴3,7に軸8を通して軸固定して、金網9を構成する。
左上辺が5マス、右上辺が6マスの網目となる。図1の様に縦長の略菱形のまま、コンロに置いて魚10を焼く。魚10の片面が焼けて裏返したくなったら、図2の様に網上端と網下端を押し縮める。縦斜め方向だった金網9の全てが、横斜めに変形するので、魚10と金網9の接触点が伸縮および回転し、魚の皮が網から剥がれる。金網9の上下端はコンロから離れて熱くないので、そのまま素手で触れるし、多少熱ければ鍋掴みを用いればよい。
【実施例1】
【0009】
図3を参照として本発明の第1の実施例を説明する。金属の細板11に等間隔に7つの穴12を開けたものを2本作る。この2本の細板11を平行に並べ、その穴12に針金13を平行に通し付けて、金網14を構成する。伸縮変形させると、図4の様になる。細板11の左端のやや余分に長くなっている部分は取っ手の代わりである。取っ手をもっと伸ばす等は設計の自由である。
簡素な構成であり、小さな物は網目から落ちてしまうが、サンマやブリであればその心配もない。簡素ゆえに金網14の汚れをこそげ落したり洗浄し易い利点がある。またこの金網14を2枚直交して重ねれば、小さな物が網目から落ちる欠点も解消される。金網14は2枚重ねたままでも伸縮変形は可能である。
【実施例2】
【0010】
図5を参照として本発明の第2の実施例を説明する。細かく上下に波打たせた針金15を、図5の様に左右に段差をつけた金網形状に組合せる。組合せ方は、布地を織るように、網目交点毎に交差する針金15の上と下を交互に通していく。1つの網目の長さに対して、針金15の波打ち波長を(整数+0.5)波長に形成しておく。すると網合わせたときの針金交点では、針金波打ち形状の谷と山が噛み合い、ずれ難くなる。網の左端と右端は等間隔に穴16の開いた金属棒17とし、針金15の上下端を通し付ける。針金15の左右端は、接する縦向き針金15と巻き付け合わせて、金網18を構成する。この金網18の利点は金網18を縮めた状態にしても、上下寸法が伸びないので、オーブン内に納め易い。図6の様に伸縮変形させれば、左右寸法が大きく伸びるので、それだけ剥がす効果も大きくなる。
以上3つの形態または実施例を示したが、これら以外にも様々な構成をしうる。例えば焼き網では2重構造の物も多々ある。金網を上段とし、下段にセラミック網とか耐熱鋼板(FCHw2)とかホーロー鋼板の2重構造の物である。それらの上段の金網に本案の金網を用いて、下段構造物と着脱可能に係合する構成も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本案の金網は、家庭用の金網のみならず、飲食店の厨房用や食品工場での製造ラインにおいても、金網を用いている部分には適用可能なものである。例えば魚の干物を干す金網、燻製網、食品製造機械で用いられる焼き網、鰹節の製造工程の焙乾用金網などの金網である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】最良の形態の例を縦伸ばしにした正面図である。
【図2】最良の形態の例を横伸ばしにした正面図である。
【図3】第1の実施例の正面図である。
【図4】第1の実施例を横伸ばしにした正面図である。
【図5】第2の実施例の金網を縮めた斜視図である。
【図6】第2の実施例の金網を伸ばした斜視図である。
【符号の説明】
【0013】
1 細板
2 穴
3 軸穴
4 針金
5 細板
6 穴
7 軸穴
8 軸
9 金網
10 魚
11 細板
12 穴
13 針金
14 金網
15 針金
16 穴
17 金属棒
18 金網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向き平行に並べた針金群と横向き平行に並べた針金群とを形成し、この針金群を溶接したりせずに交差させて重ねて格子網を形成し、格子網の外縁で接する針金同士を網の平面方向で回動自在になる連結手段で連結してなることを特徴とする、調理等に用いる金網。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−119544(P2010−119544A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295116(P2008−295116)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【特許番号】特許第4341854号(P4341854)
【特許公報発行日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000160810)
【Fターム(参考)】