説明

ごみ処理方法及びごみ処理システム

【課題】エネルギー消費が少なく、ごみ分別の手間が少なく、ランニングコストを削減できるごみ処理技術を提供する。
【解決手段】ごみを粉砕する破砕装置、破砕されたごみを受け入れる受入れ装置、受入れ装置から引き渡されたごみを攪拌、酵素分解、消毒乾燥を行う処理槽及び処理生成物を掻出す掻出し装置とから構成され、ごみ成分を事前に分析してその成分に応じて酵素を選択して酵素分解処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみを代替エネルギー材料などとして利用できる有価生成物にするごみ処理方法及びごみ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ごみの処理は、資源の有効活用、CO削減、環境対策などの社会的な要請があって、例えば、生ごみの場合には、コンポスト型、消滅型、乾燥型、炭化型、焼却型などの処理方法及びシステムが実用化されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンポスト型の生ごみ処理方法は、特殊な微生物により分解発酵処理し、15時間程度でリサイクル有機肥料を作り出す方法であるが、生ごみのみが対象となり、投入時の完全分別が必須条件であり、ごみに含まれる塩分の塩害が問題となり、高価な微生物の定期的な投入が必要であるためランニングコストが高くなり、処理に時間を要すため連続投入タイプにすると大型の設備になるなどの欠点がある。
【0004】
消滅型生ごみ処理方法は、ごみを培養処理機に入れ特殊な微生物によりごみを水とCOに分解し70%程度消滅させるもので、消滅できなかった残渣を堆肥にできる。しかし、ごみ投入時の完全分別が必要で、金属類混入された時には処理機の故障になりやすい。また、ごみを100%消滅することはできない。投入されたごみによっては、消滅出来なかった残渣を可燃物として焼却処理するしかない。その場合には、収集・運搬・焼却という過程を経るためランニングコストが高くなる。コンポスト型と同様に微生物を使用するため、微生物の活動温度、微生物への酸素供給に制約があり、微生物が高価でランニングコストが高くなり、しかも処理に時間を要する為に、連続投入に不向きであり、連続投入タイプにすると大型の設備になる。
【0005】
乾燥型生ごみ処理方法は、温風ヒーターまたはマイクロ波を使ってごみを乾燥させるものである。温風ヒーター式乾燥型生ごみ処理方法は、ごみの水分を温風ヒーターで蒸発させて乾燥することにより、雑菌の繁殖を抑えごみを1/7以下に減量するもので、ごみによっては乾燥した残渣を堆肥にすることができる。しかし、この場合、いったん土に埋めて微生物で分解する必要があり、しかも堆肥の塩害が問題となる。従って、ごみによっては、乾燥した残渣を可燃物として焼却処理するしかない場合もある。この処理方法では、ごみ処理物の芯まで乾燥させるには時間がかかり、ランニングコストが高くなる。また、脱臭装置の排気温度が高く、周囲温度上昇対策の換気設備が必要である。さらに、可燃物として焼却処理する場合は、収集・運搬にコストがかかる。この乾燥型生ごみ処理には、時間を要するために、連続投入に不向きであり、連続投入タイプにすると大型の設備になる。
【0006】
マイクロ波による乾燥型生ごみ処理方法は、ごみを電子レンジで使用しているマイクロ波で加熱し、乾燥させて減量するものである。投入されたごみによっては、乾燥した残渣を堆肥にできる。問題点としては、ごみ投入時の完全分別が必要で、金属類混入時には機器故障になりやすい。投入されたごみによっては、乾燥した残渣を可燃物として焼却処理するほかない。一度に10kg程度が限度で大量の処理ができなく、かつ、連続投入出来ない。その他は、温風ヒーター式の生ごみ処理方法と同じ問題がある。
【0007】
炭化型生ごみ処理方法は、生ごみを加熱してガスを発生させ、そのガスを燃焼してごみを炭化し、燃料又は土壌改良剤等に利用する。問題点としては、機械自体が高温になるため、専用の換気設備及び処理室が必要となる。そのために、処理機を断熱構造にする必要があり、大型で機器本体も高額であるため、ランニングコストも掛かる。消防署への届出が必要で、消防設備も必要となる。また、排気ガスの成分分析結果の報告義務が有り、分析費用も必要となる。さらに、残った灰の産廃処理にコストが掛かる。
【0008】
焼却型生ごみ処理方法は、ごみを燃やして灰にし、埋め立て処分するものである。問題点としては、処理機自体が高温になるために、専用の換気設備及び処理室が必要となり、処理機を断熱構造にするなどにより大型で機器本体も高額になって、ランニングコストも掛かる。また、消防署への届出が必要で、消防設備も必要となる。所管官庁へ排気ガスの成分分析結果の報告義務があるため、分析費用も必要となる。さらに、残った灰の産廃処理にコストが掛かり、燃やす過程でダイオキシンが発生する可能性もある。塩分や水分量の多いごみを焼却すると環境ホルモンの構成成分である塩素の供給源になる。塩分や水分量の多いごみを焼却すると燃焼温度ムラを起こし焼却炉の寿命が短くなる。
【0009】
本発明は、上述した生ごみを含むごみの処理方法及びごみの処理システムの問題点を解決するためになされたもので、事前に排出ごみの重量、容積、成分などの調査を行って、分別方法、処理機の制御や機能、使用する酵素の配合及び処理生成物を含めて最適化プログラムを設定して、エネルギー消費が少なく、使用環境に適合するごみ処理方法及びごみ処理システムを提供する。
【0010】
本発明は、さらに、ごみ分別の人件費を抑え、かつ、リサイクル率が向上できるごみ処理方法及びごみ処理システムを提供する。
【0011】
本発明は、さらに、建物における衛生環境の改善や臭気対策の問題を解決し、しかも働く人にとっても良い環境のもとでごみ処理作業が行われるごみ処理方法及びごみ処理システムを提供する。
【0012】
本発明は、さらに、処理生成物を加工して資源価値のある代替エネルギー源として使用できるように処理し、しかも、ランニングコストを削減し得るごみ処理方法及びごみ処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1のごみ処理方法は、ごみを破砕する破砕装置と、この破砕装置で破砕されたごみを受入れ一時貯蔵し移送する受入れ装置と、前記受入れ装置から引き渡されたごみを攪拌して均一化し、酵素を使って前記ごみを分解し、さらに消毒と乾燥を行う処理槽と、前記処理槽から処理生成物を掻出す?出し装置とを一体的に組み合わせたごみ処理機を用い、ごみを事前に分析して、そのごみ成分に応じて酵素を選択し、水分量、温度及び給排気などの制御パラメータを決めて、前記ごみ処理機によってごみ処理を実行する。
【0014】
本発明の請求項2のごみ処理方法は、ごみを破砕する破砕装置と、この破砕装置で破砕されたごみを受入れ一時貯蔵し移送する受入れ装置と、前記受入れ装置から引き渡されたごみを攪拌して均一化し、酵素を使って前記ごみを分解し、さらに消毒と乾燥を行う処理槽と、前記処理槽から処理生成物を掻出す?出し装置とを一体的に組み合わせたごみ処理機を用い、処理するごみを事前に分析し、前記処理生成物を選択し、事前に分析し処理するごみの成分に選択した前記処理生成物に応じて酵素を選択し、水分量、温度及び給排気量などの制御パラメータを決めて、前記ごみ処理機によってごみ処理を実行する。
【0015】
本発明の請求項3のごみ処理方法は、請求項1または請求項2のごみ処理方法において、前記ごみ処理機は更に前記処理生成物の消臭処理を行う。
【0016】
本発明の請求項4のごみ処理システムは、ごみを破砕する破砕装置と、この破砕装置で破砕されたごみを受入れ一時貯蔵し移送する受入れ装置と、前記受入れ装置から引き渡されたごみを攪拌して均一化し、酵素を使って前記ごみを分解し、さらに消毒と乾燥を行う処理槽と、前記処理槽から処理生成物を掻出す?出し装置とを一体的に組み合わせたごみ処理機であって、処理するごみを事前に分析して、そのごみ成分に応じて酵素を選択し、水分量、温度及び給排気量などの制御パラメータをきめて、前記ごみ処理機によってごみ処理を実行する。
本発明の請求項5のごみ処理システムは、請求項4のごみ処理システムにおいて、前記受入れ装置と、前記処理槽と、前記掻出し装置が、共通の回転シャフトで結合され、それぞれの機能を実行するために種類の異なるパドルが前記シャフトに取り付けられている。
【0017】
本発明の請求項6のごみ処理システムは、請求項4のごみ処理システムにおいて、前記破砕装置が、ごみを押し込みまたは引きずり込む一次ロータと破砕を行う二次ロータから構成されている。
【0018】
本発明の請求項7のごみ処理システムは、請求項6のごみ処理システムにおいて、前記破砕装置に破砕ごみの水分を除去する水切り装置を更に備えられている。
【0019】
本発明の請求項8のごみ処理システムは、請求項6のごみ処理システムにおいて、前記破砕装置に、破砕したごみのうち、前記処理槽の処理になじまない固形物を除去する除害装置が更に備えられている。
【0020】
本発明の請求項9のごみ処理システムは、請求項6のごみ処理システムにおいて、前記破砕装置に、破砕ごみを前記受入れ槽に移送する移送装置が設けられている。
【0021】
本発明の請求項10のごみ処理システムは、請求項6のごみ処理システムにおいて、破砕ごみを前記受入れ槽に移送する移送装置が前記破砕装置の下部に設けられ、前記受入れ槽の下部に破砕ごみが移送される。
【0022】
本発明の請求項11のごみ処理システムは、請求項5のごみ処理システムにおいて、前記受入れ装置は、前記処理槽との間に上部が開放した隔壁を備え、前記受入れ装置のパドルは先端部に移送プレートを有し、前記パドルが前記隔壁の上部にある開口に来た時にごみを前記処理槽に移送するように構成されている。
【0023】
本発明の請求項12のごみ処理システムは、請求項5のごみ処理システムおいて、前記処理槽のパドル先端部に攪拌プレートを有し、前記攪拌プレートと前記シャフトとの間に攪拌突起を有しするように構成されている。
【0024】
本発明の請求項13のごみ処理システムは、請求項12のごみ処理システムにおいて、前記処理槽の前記攪拌突起を形状が異なる複数種類設け、ごみの攪拌に適する形状を持ったパドルを前記シャフトに取り付けられるように構成されている。
【0025】
本発明の請求項14のごみ処理システムは、請求項4のごみ処理システムにおいて、前記処理槽の前記掻出し装置の近傍で消毒を行うように構成されている。
【0026】
本発明の請求項15のごみ処理システムは、請求項4のごみ処理システムの前記掻出し装置は、前記処理槽で消毒され、かつ、脱臭されたものを掻出すように構成されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明のごみ処理方法及びごみ処理システムは、次のような顕著な効果がある。
(1)3000種類の酵素の組合せで種々のごみの処理ができる。
(2)酵素により処理をするので処理槽の温度が低くヒーター等による電気エネルギーを低く抑えることができる。
(3)酵素を使用することにより微生物やバイオ菌を使用するときに比べ臭気の低減ができ、処理槽の温度を低くすることができる。
(4)安定化処理で、消毒や脱臭まで行うので、ショッピングモールや駅などのユーザー直近の場所で実施できる。
(5)ごみを安定化処理することにより得られる生成物は、代替エネルギーの前処理物として付加価値をもつことができる。また、有価生成物は、衛生的で運搬も容易にできる。例えば、後処理で炭化するだけで最終製品の炭化物ができる。
(6)破砕装置を設けることによりビニール及び金属系のごみも処理可能である。従って、従来焼却処理だけが行われていた汚染ごみを有価生成物にすることができる。
(7)消滅型(バイオ)ごみ処理機の処理槽で行われていた摺り潰し機能が不要になり、菌床も不要とすることができる。
(8)菌床を使用しないことにより、処理槽の板強度を低く抑えことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明のごみ処理方法及びごみ処理システムのオペレーションフォローチャートであり、図2は、ごみの分類表の一例である。これらの図を使って本発明の基本的な考え方を説明する。
【0029】
本発明で重要なコンセプトは、ごみの事前実態調査と、そのデータに基づいて、効率よく、付加価値の高い処理生成物(有価生成物)をどのようにして作るかのソリューションを求めることである。
【0030】
ごみの事前調査のステップS1においては、ユーザーがどのようなごみをどの程度(重量、容量)、どんな内容のものをいつ頃排出すかをできる限り詳細に把握することが重要である。図2は、ごみ分類表の一例を示すものである。ごみ分類表から明らかなように、生ごみ類は通常の生ごみと汚染ごみに分類される。本発明のごみ処理方法及びごみ処理システムは、そのいずれをも処理できることを特長としている。
【0031】
本発明のごみ処理方法及びごみ処理システムによると、通常の生ごみについて、例えば、コーヒーかすや割りばしのみであれば、処理生成物として、活性炭用の素材を生み出すことができる。また、汚染廃プラスチック、汚染廃ビニール、汚染発泡スチロール、汚染紙ごみ、吸殻などの汚染ごみは、従来、焼却処理のみが行われ、焼却にコストが掛っていたが、本発明のごみ処理方法及びごみ処理システムは、これを価値ある素材に変えることができる。例えば、これらの汚染ごみを処理して、石炭代替えエネルギー材用の処理生成物とすることができる。
【0032】
このような生ごみの排出は、店舗の種類、時刻、曜日、月、季節などによって変化するが、経時変化のデータを把握するためにも、この事前調査は、少なくとも1週間は続ける必要がある。そして、衛生環境の改善から見た最適分別方法、リサイクル率の向上から見た最適分別方法、COの削減から見た最適分別方法、コストパフォーマンスから見た最適分別方法、スペース効率から見た最適分別方法、破砕機性能から見た最適分別方法などを吟味して、最も有効な分別方法を、ユーザーに提案し周知するとともに、ごみ処理機の設定をする。
【0033】
次にごみ事前調査の分析結果にもとづいて、ステップS2において、ごみ処理機で使用する酵素プログラムを決める。本発明で使用するごみ処理機においては、微生物を使ってごみを分解し、または、化学反応によって変質させるのではなく、成分を安定化して処理生成物を取り出すことから、酵素は、そのような安定化を促進助長する役目を担っている。ここで、ごみの安定化処理は、ごみの均一化、酵素による分解、消毒及び乾燥をいい、更に、脱臭を含んでもよい。均一化は、攪拌により、混ぜ合わされることにより、組成が均一になることによって達成される。
【0034】
酵素は、約3000種類の中から、分析されたごみ成分に適したものを1種類または複数種類の組み合わせを選択する。その中で、例えば、ごみが生ごみの場合、再資源化及びエネルギー材としての利用を考慮して、食品工業用酵素の植物系酵素を中心に構成する。特に、パパイア酵素は、蛋白質、炭水化物、脂肪を分解する特性を備え、パイナップル酵素は、蛋白質を分解する。分解後は、蛋白質はアミノ酸に、炭水化物は糖に、脂肪はグリセリンになる。
【0035】
酵素によるごみ成分の分解を最大限にするためには、温度条件(酵素の至適温度)、分解時間、ごみの投入量に合わせた分解能力を持った酵素の投下量と、最適な酵素の選択と共に、処理機の入口の破砕装置及び処理槽からごみ投入量に合わせた酵素を投下する配合プログラムが重要である。このように安定化のために酵素を使用するため、微生物によるごみの分解と異なり、処理機内の温度は数十度に抑えることができる。電熱ヒーターなどでの加熱が不要となり、その分エネルギー消費は削減できる。
【0036】
生ごみの消毒は、80℃程度の高温で約10分間、例えば、熱水または熱風消毒を処理機内で行うとよい。この消毒処理によって、芽胞を除くほとんどの栄養型細菌、結核菌、真菌、ウイルスを感染可能な水準以下に死滅または不活性化することができる。
【0037】
生ごみの乾燥処理は、処理槽内に吹き出したフレシュヒーター及び脱臭装置の廃熱により、ごみの余分な水分を蒸発し排気することによって実行する。
【0038】
生ごみの脱臭は、酵素による脱臭と脱臭装置による脱臭を適用することができる。前者は、酵素の分解により、悪臭を発生する菌(枯草菌や腐敗菌など)の増殖をおさえ、また、酵母菌、麺菌、乳酸菌、放射菌などを配合すると、腐敗を抑えることができる。後者は、白金触媒や光触媒を使うことができる。白金触媒の場合には、高温で臭気を除去できる。また、前者の酵素の機能と併せて適用すると、より効果的に脱臭ができ、ランニングコストを低減できる。
【0039】
上述した脱臭用を含む酵素をごみ処理機内で活性化させごみを処理安定化させるために、水分量の制御、温度制御、給排気量制御などの制御パラメータをステップ3で実行する。このようにしてごみ処理機の最適プログラムが決まる。次いで、ごみ処理機がステップ4でそのプログラムを実行する。それと同時に、リアルタイムでステップS2のごみ成分に応じた酵素プログラムS2と制御プログラムS3にデータをフィードバックして微調整を繰り返す。
【0040】
更に、最適プログラムとごみ処理機の運用のデータはステップS5のメンテナンスプログラムにも情報が与えられ、それに応じてメンテナンスプログラムが立ち上がり、ごみ処理機の運用に使われる。
【0041】
次に、上述のごみ処理システムに使用するごみ処理機を説明する。図3は、ごみ処理機10の構成を示す概略図である。このごみ処理機10は、空気圧縮機1、破砕装置2、及び処理機本体3が一体的に構成されている。処理機本体3は、受入れ装置4、処理槽5及び掻き出し装置6を有している。この図には示されていないが、ごみ処理機10には、さらに、温度、湿度、ガスなどのセンサー、制御装置や動力源などの付帯設備が設けられている。
【0042】
空気圧縮機1は、複数の配管でノズル11,12,13に圧縮空気を送り、受入れ槽41のパドルの先端に取り付けられた移送プレート及び掻出し装置6のパドル先端に取り付けられた掻出しプレートに付着したごみを自動的に圧縮空気で吹き飛ばし、各プレートに付着した余分な破砕ごみを清浄化するために設けられている。
【0043】
破砕装置2は、処理機本体3に取り付けられる。受入れ装置4は、破砕装置2の取り付け部の下部に破砕装置2で破砕したごみを受入れる開閉自在の開口部を有し、処理槽5との間に上部が開口した隔壁を有している。破砕装置2は、投入されたごみを破砕、水切り及び除害を行い、処理機本体3に移送する。
【0044】
処理機本体3の受入れ装置4、処理槽5及び掻出し装置6は、共通の回転シャフト31に攪拌・移送用のパドルが取り付けられ、さらにパドルの先端にプレートが設けられている。受入れ装置4は、破砕装置2から移送されたごみを貯蔵するとともに、攪拌して処理槽5に送る。
【0045】
処理槽5は、送られてきたごみを更に攪拌し、酵素を用いてごみを安定化させる。酵素は約3000種類あり、ごみの成分及び処理生成物の具備すべき要件から、最適な酵素の組み合わせが決定される。安定化された処理生成物は、掻出し装置6により処理機本体3から取り出される。この処理生成物は、直ちに代替エネルギー源として使える炭化物やさらに加工して肥料や代替エネルギー素材用中間材として使用することができる。つまり、本発明のごみ処理方法及びごみ処理システムによる処理生成物は、価値のある素材(有価生成物)に変換される。
【0046】
次に、各部の構成と機能を詳細に説明する。図4に示すように、破砕装置2は、全体が漏斗状の匡体21、上部に位置するごみの投入ハッチ22、中間部に位置する破砕機23、下方に位置する水切り装置24、移送装置25及び最下段に設けられた除害装置26から構成されている。
【0047】
投入ハッチ22は蓋で仕切られ蓋が開状態では破砕機が起動しないように設けられて、負圧回路により臭気が漏れないようにされている。破砕機23は、モータ駆動の一次ローター23aと二次ローター23bからなり、汚染された紙及びビニール類を含めたごみ、スプーン、フォークなどの金属ごみも破砕する。一次及び二次ローター23a、23bの回転センサーにより過負荷の場合ローターの反転ができ、破砕刃の汚染防止用洗浄機能を設けることもできる。
【0048】
水切り装置24は、含水量の多いごみの水分を除去し、減量をする。移送装置25は、ベルト駆動装置25aにより押し出しプレート25bを圧縮プレート25cに移動させるように構成されており、水切りされたごみを押し出しプレート25bによって圧縮プレート25cに押し付け、圧縮プレート25cを上方または下方に退避させることによって、破砕されたごみを前記受入れ装置4の受入れ口を介して受入れ槽に移送することができる。除害装置26は、粗目フィルター、細目フィルター、沈殿槽からなり、破砕ごみを絞って出た水分中のごみを除去する。
【0049】
図4は受入れ装置4の斜視図、図5はその横断面図である。受入れ装置4は、受入れ槽41、時計方向と反時計方向に回転できるシャフト31に取り付けられた複数の移送パドル43、44、それらの先端に取り付けられた破砕ごみ移送プレート45、46、破砕ごみ取り入れ口が設けられた破砕装置2側の隔壁(図示していない)及び上部にごみ移送用の開口がある受入れ槽隔壁42、ノズル11,12から構成されている。移送パドル43、44は、回転シャフト31から取り外しができ、また、移送プレート45は、移送パドル43、44から取り外しができるように設けられている。
【0050】
受入れ槽41は、移送された破砕ごみを一時的に貯留し、処理槽5でごみの攪拌運転がされている時でもごみの連続投入ができ、また、破砕ごみが処理機本体3の外へ漏洩するのを防ぐために設けられたものである。
【0051】
受入れ槽41で貯留した破砕ごみは、図4に示すように移送パドル44が反時計方向に回転し、その先端に取り付けられた移送プレート45が受入れ槽隔壁上部の開口部に到来した時に処理槽5に移送され、ノズル11から噴出する圧縮空気で清浄される。移送パドル43が時計方向に回転した場合も同様に、その先端に取り付けられた移送プレート45が受入れ槽隔壁上部の開口部に到来した時に処理槽5に移送され、ノズル11から噴出する圧縮空気で清浄される。
【0052】
次に図6の斜視図、図7の横断面図及び図8の縦断面図を参照して処理槽5の詳細を説明する。この処理槽5には、回転シャフト31、攪拌パドル51,52、53とそれらの先端に取り付けられた攪拌プレート54と攪拌突起部材55が設けられている。処理槽5においては、攪拌パドル51,52、53と攪拌プレート54,55によって移送されてきたごみを攪拌し、ごみの成分に応じて選択される酵素を利用して減容及び減量処理し、処理の過程が終了した後に高温で滅菌乾燥し、攪拌して更に安定化を図っている。
【0053】
酵素を利用する処理と高温による安定化により臭気を低減し、攪拌により処理及び安定化の効率を上げると共に、ごみの分布を均一化し代替燃料の第一段階物質として性質の良い物質にすることができる。攪拌パドル51、52、53には若干の角度があり、攪拌と同時に時計方向の回転とその逆回転で槽内のごみを左右に移動しごみの均一化をする。パドル先端の攪拌プレート54と側面の設けられた攪拌突起部材55により、堆積しているごみの内部に空気が混合し易くする。
【0054】
攪拌パドル51、52、53は、攪拌プレート54、攪拌突起部材55は、回転シャフト31から取りはずして、交換できるようにする。また、処理槽5のごみ成分に応じて、他の形状の攪拌突起部材55と取り換えるようにすることもできる。
【0055】
例えば、水分の多い野菜・果物が多く、粘度の高いご飯・麺類が少ないごみで含水率が高く粘度が低いごみの場合は、攪拌突起部材55が破砕ごみを掻き上げるときに、水分を一緒に掻き上げないように受入れ槽隔壁の接触面にブラシを装着した形状(ブラシレードル型攪拌突起)とする。あるいは、攪拌突起部材55が破砕ごみを攪拌するときに、多くの水分蒸発をさせるために、多量の空気を混入させるようにアンテナのような複数の枝を装着した形状の部材(アンテナ型攪拌突起)としてもよい。
【0056】
水分の多い野菜・果物が少なく、粘度の高いご飯・麺類が多いごみで含水率が低く粘度が高いごみの場合は、攪拌突起部材55が破砕ごみを掻き上げるときに、粘度の高いごみの抵抗に対応するように下面の形状を櫛形にした部材(スキンマーレードル型攪拌突起)とする。あるいは、粘度の高いごみの抵抗に対応し、かつ多くの空気を混入させるように飛行機の翼のような形状にした部材(ウイング型攪拌突起)としてもよい。
【0057】
紙ごみ、汚染廃プラスチック、汚染ビニールが多いごみで含水率及び粘度が低い場合は、攪拌突起部材55が破砕ごみを掻き上げるときに、全てのごみを掻き上げるように受入れ槽隔壁の接触面にブラシを装着した形状の部材(ブレードレードル型攪拌突起部材)とする。あるいは、攪拌突起部材55が破砕ごみを攪拌するときに、破砕ごみと酵素が均等に混ざる機能のみのシンプルな形状の部材(スティック型攪拌突起)としてもよい。
【0058】
前記掻出し装置6は、図3左側(つまり、処理ごみの排出側)に位置し、処理槽5で処理し安定化された生成物を掻出すもので、処理槽5の向かって左側に掻出し口61が設けられ、回転シャフト31に取り換え可能に取付けられた掻出しパドル62とその先端部に取付けられた掻出しプレート63で掻出し口より掻出すものである。
【0059】
次に、本発明のごみ処理方法及びごみ処理システムにおける運用の一実施例について図9をも参照に加えて説明する。運転モードは、業種、業態、種類、時刻、曜日、月、季節などによる変化に応じて設定できる。その運転モードは、次の7種類のモードがあり、ごみ処理の状況に応じて適宜切り替えることができる。
【0060】
まず、故障時などを想定して、ごみが処理槽内にある時の脱臭ヒーターの温度が上がるまでのオープンエアー100%の運転をするスタートモード(START)、時間当たりのごみ投入量が少量の時に酵素を適量注入して少量の風量で処理槽内を35℃にする運転を行う処理レギュラーモード(REGULAR)、時間当たりのごみ投入量が多量の時に大量の風量及び熱でごみと処理槽内を35℃にする運転を行う処理高デマンドモード(HI−DEMAND)、処理槽内を80℃にし、0.5−1時間継続して滅菌消毒し、脱臭装置の熱を利用して乾燥処理する安定化レギュラーモード(STABLE)、処理生成物を貯蓄槽に掻出し前のごみを冷却するまでオープンエアー100%の運転をするクリーンモード(CLEAN)、処理生成物を貯蓄槽に掻出す運転をするブローモード(BLOW)、及び脱臭装置で一定の換気のみを行うオフモード(OFF)がある。
【0061】
図9はある1日の運転モードタイムフローを示すものである。時間の経過とともにごみの発生量が変化し、それに応じて上述した7種類の運転モードを適宜切り換える。このような運転モードを蓄積しデータベース化して、最適制御を実施する。
【0062】
上述したことから、明らかなように、本発明のごみ処理方法及びごみ処理システムは、次の構造的特徴を持っている。
【0063】
(1)攪拌及び処理槽の低温加熱方法により、処理槽上部空間を抑え処理機全高が同容量処理機に比べ低い。
(2)ごみ類投入に伴う投入口の高さが、受入れ槽を設けることで従来の処理機に比べ低く、平均的なごみ置場の天井高さでも設置できる。従来の処理機の破砕ごみの搬送方法は、バケットタイプもしくはコンベアタイプを使用しており処理機上部から投入されている。その結果、破砕ごみを受入れる上部空間が処理機本体より更に必要となり、処理機本体の寸法が高くなり通常のごみ置場の天井高さでは無理が有り、設置場所が限定される。受入れ槽を設けることにより、破砕機を横に設置することが出来た。これにより通常の天井高さのごみ置場で設置可能となり、設置場所が限定されることが無くなった。
(3)破砕機を処理機本体と一体化したため、臭気低減及びスペース効率が向上した。受入れ槽及び破砕ごみ移送装置の機能を開発する事により、従来別置きだった破砕機を処理機本体の横に設置する事によって一体化する事ができスペース効率が向上した。処理機本体と一体にする事により処理機本体の脱臭装置と破砕装置が連携でき、臭気低減が出来た。
(4)処理生成物をある程度の高さで、自動で排出する機能を付加し、作業効率性を向上させた。従来では生成した残渣を、排出する機能が処理機の下部から人が掻出すか、搬送装置を使用して掻出していた。本機では、処理生成物掻出しパドルに粘度の高い処理生成物と粘度の低い処理生成物の二通りの性状に適合した掻出しプレートを装着し、運転モードを設定する事により自動で処理生成物を掻出す機能を付加した。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のごみ処理システムのオペレーションフローチャート。
【図2】処理対象となる生ごみの分類表
【図3】本発明のごみ処理機の破砕装置の一実施例について、その概略を示す斜視図。
【図4】本発明のごみ処理機の受入れ装置の一実施例について、その概略を示す斜視図。
【図5】本発明のごみ処理機における受入れ装置の一実施例の横断面図。
【図6】本発明のごみ処理機における処理槽の一実施例の斜視図。
【図7】本発明のごみ処理機における処理槽の一実施例の横断面図。
【図8】本発明のごみ処理機における処理槽の一実施例の縦断面図。
【図9】運転モードタイムフローを示す表。
【符号の説明】
【0065】
1:空気圧縮機
2:破砕装置
3:処理機本体
4:受入れ装置
5:処理槽
6:掻出し装置
11:ノズル
12:ノズル
13:ノズル
21:漏斗状匡体
22:投入ハッチ
23:破砕機
23a:一次ローター
23b:二次ローター
24:水切り装置
25:移送装置
25a:ベルト駆動装置
25b:押出しプレート
25c:圧縮プレート
26:除害装置
31:回転シャフト
41:受入れ槽
42:受入れ槽隔壁
43:移送パドル
44:移送パドル
45:移送プレート
46:移送プレート
51:攪拌パドル
52:攪拌パドル
53:攪拌パドル
54:攪拌プレート
55:攪拌突起部材
61:掻出し口
62:掻出しプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみを破砕する破砕装置と、この破砕装置で破砕されたごみを受入れ一時貯蔵し移送する受入れ装置と、前記受入れ装置から引き渡されたごみを攪拌して均一化し、酵素を使って前記ごみを分解し、さらに消毒と乾燥を行う処理槽と、前記処理槽から処理生成物を掻き出す?き出し装置とを一体的に組み合わせたごみ処理機を用い、ごみを事前に分析して、そのごみ成分に応じて酵素を選択し、水分量、温度及び給排気などの制御パラメータを決めて、前記ごみ処理機によってごみ処理を実行することを特徴とするごみ処理方法。
【請求項2】
ごみを破砕する破砕装置と、この破砕装置で破砕されたごみを受入れ一時貯蔵し移送する受入れ装置と、前記受入れ装置から引き渡されたごみを攪拌して均一化し、酵素を使って前記ごみを分解し、さらに消毒と乾燥を行う処理槽と、前記処理槽から処理生成物を掻き出す?き出し装置とを一体的に組み合わせたごみ処理機を用い、処理するごみを事前に分析し、前記処理生成物を選択し、事前に分析し処理するごみの成分に選択した前記処理生成物に応じて酵素を選択し、水分量、温度及び給排気量などの制御パラメータを決めて、前記ごみ処理機によってごみ処理を実行することを特徴とするごみ処理方法。
【請求項3】
前記ごみ処理機は更に前記処理生成物の消臭処理を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載のごみ処理方法。
【請求項4】
ごみを破砕する破砕装置と、この破砕装置で破砕されたごみを受入れ一時貯蔵し移送する受入れ装置と、前記受入れ装置から引き渡されたごみを攪拌して均一化し、酵素を使って前記ごみを分解し、さらに消毒と乾燥を行う処理槽と、前記処理槽から処理生成物を掻出す?出し装置とを一体的に組み合わせたごみ処理機であって、処理するごみを事前に分析して、そのごみ成分に応じて酵素を選択し、水分量、温度及び給排気量などの制御パラメータをきめて、前記ごみ処理機によってごみ処理を実行することを特徴とするごみ処理システム。
【請求項5】
前記受入れ装置と、前記処理槽と、前記掻出し装置は、共通の回転シャフトで結合され、それぞれの機能を実行するために種類の異なるパドルを前記シャフトに取り付けたことを特徴とする請求項4記載のごみ処理システム。
【請求項6】
前記破砕装置は、ごみを押し込みまたは引きずり込む一次ローターと破砕を行う二次ローターから構成することを特徴とする請求項4記載のごみ処理システム。
【請求項7】
前記破砕装置は破砕したごみの水分を除去する水切り装置を更に備えることを特徴とする請求項6記載のごみ処理システム。
【請求項8】
前記破砕装置は破砕したごみのうち、前記処理槽の処理になじまない固形物を除去する除害装置を更に備えることを特徴とする請求項6記載のごみ処理システム。
【請求項9】
前記破砕装置は破砕ごみを前記受入れ槽に移送する移送装置を有することを特徴とする請求項6記載のごみ処理システム。
【請求項10】
前記破砕装置は破砕ごみを前記受入れ槽に移送する移送装置を破砕装置の下部に設け、前記受入れ槽の下部に破砕ごみを移送することを特徴とする請求項6記載のごみ処理システム。
【請求項11】
前記受入れ装置は、前記処理槽との間に上部が開放した隔壁を備え、前記受入れ装置のパドルは先端部に移送プレートを有し、前記パドルが前記隔壁の上部にある開口に来た時にごみを前記処理槽に移送することを特徴とする請求項5記載のごみ処理システム。
【請求項12】
前記処理槽のパドル先端部に攪拌プレートを有し、前記攪拌プレートと前記シャフトとの間に攪拌突起を有することを特徴とする請求項5記載のごみ処理システム。
【請求項13】
前記処理槽の前記攪拌突起を形状が異なる複数種類設け、ごみの攪拌に適する形状を持ったパドルを前記シャフトに取り付けることを特徴とする請求項12記載のごみ処理システム。
【請求項14】
前記処理槽の前記掻出し装置の近傍で消毒を行うことを特徴とする請求項4記載のごみ処理システム。
【請求項15】
前記掻出し装置は、前記処理槽で消毒され、かつ、脱臭されたごみを掻出すことを特徴とする請求項4記載のごみ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−82800(P2009−82800A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254118(P2007−254118)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(595154203)株式会社太平エンジニアリング (1)
【出願人】(505295570)株式会社シンキングジャパン (4)
【Fターム(参考)】