説明

さび止め油組成物

【課題】さび止め油組成物において樹脂相溶性の向上が要求される。
【解決手段】15℃における密度が0.7〜0.8g/cmであり、n−パラフィン分が10〜90%、芳香族分が0〜3%、ナフテン分が0〜20%である炭化水素油を含有するさび止め油組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はさび止め油に関するものであり、より詳しくは、鋼板、軸受等の金属製部材に用いる場合に有用なさび止め油に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より鋼板、軸受等の金属製部材の分野では、通常、さびの発生を防止するために製造後の部材にさび止め油が塗布される。
【0003】
さび止め油としては、単にさびの発生を防止するためのみに用いられるものの他、洗浄作用を有する洗浄防錆油、中間製品におけるさびの発生の防止作用とその後の加工工程における潤滑作用とを併せ持つ防錆兼加工油等の多機能型さび止め油が知られている。これらのさび止め油においては、取り扱い性を向上させる目的で、比較的低粘度の基油、あるいは低粘度基油と高粘度基油とを混合した基油が用いられる場合が多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鋼板や軸受等の金属製部材を備える装置においては、通常、金属製部材の他に様々な有機材料からなる部材が用いられているので、さび止め油には有機材料との適合性に優れることも求められるが、従来のさび止め油を用いた場合には有機材料からなる部材を劣化させてしまう場合があった。
【0005】
また、金属製部材を出荷する際に、梱包材として有機材料を用いると、梱包材が劣化する場合があった。本発明者らは、このような実状に鑑み、有機材料に対する適合性が高いさび止め油を提案している(特許文献1)。
特許文献1:特開2005−290163号公報
【0006】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、有機材料に対する適合性が十分に高く、取り扱い性に優れており、且つ金属製部材におけるさびの発生を十分に防止することが可能なさび止め油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
15℃における密度が0.7〜0.8g/cmであり、n−パラフィン分が10〜90%、芳香族分が0〜3%、ナフテン分が0〜20%である炭化水素油を含有するさび止め油組成物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
さび止め油組成物として樹脂相性を向上することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のさび止め油組成物は、15℃における密度が0.7〜0.8g/cmであり、n−パラフィン分が10〜90%、芳香族分が0〜3%、ナフテン分が0〜20%である炭化水素油(以下本発明の炭化水素油という)を含有するものである。
本発明の炭化水素油の15℃における密度(g/cm)は、0.70〜0.80、好ましくは0.72〜0.79、さらに好ましくは0.73〜0.785である。密度がこれより低いと有機樹脂材料との相性が劣る。一方、この範囲を越えて高いと油剤の除去性が劣るために好ましくない。なお、本発明における密度とは、JISK2249に準拠して測定される値を意味する。
本発明の炭化水素油のn−パラフィン分含有量(質量%)は、10−90%、好ましくは20−80%、さらに好ましくは30−70%である。これより少ないと有機樹脂材料との相性が劣り、多いと、添加剤の溶解性が劣りいずれも好ましくない。
なお、ここでいうn−パラフィン分は、GC−FIDを用いて測定される値(希釈油全量基準)を意味する。なお、本発明においては、カラムにはメチルシリコンのキャピラリーカラム(ULTRAALLOY−1)、キャリアガスにはヘリウムを、検出器には水素イオン検出器(FID)を用い、カラム長30m、キャリアガス流量1.0mL/min、分割比1:79、試料注入温度360℃、カラム昇温条件140℃→(8℃/min)→355℃、検出器温度360℃の条件で、n−パラフィン含有標準試料を用いて同定、定量されたn−パラフィン分(希釈油全量基準)を示すが、同等の結果が得られるのであれば、この測定条件に限定されない。
【0010】
本発明の炭化水素油の芳香族分の含有量(容量%)は0−10%、好ましくは0−3%、より好ましくは0−2%、さらに好ましくは0−1%である。芳香族含有量が高いと、やはり臭気を発し、また皮膚刺激性が発現するので、これも作業環境悪化につながるので好ましくない。また、有機樹脂材料との相性が劣り、好ましくない。
本発明の炭化水素油の飽和炭化水素分の含有量(容量%)は、特に限定されないが、好ましくは90−100%、より好ましくは97−100%、さらに好ましくは98−100%、最も好ましくは99−100%である。
本発明の炭化水素油の不飽和分の含有量(容量%)は、特に限定されないが、好ましくは0−5%、より好ましくは0−3%、さらに好ましくは0−1%である。
なお、ここでいう飽和分、不飽和分及び芳香族分は、石油学会法JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠して測定されるもので、(社団法人石油学会発行)に準拠して測定される芳香族分含有量の容量百分率(容量%)(希釈油全量基準)を意味する。
本発明の炭化水素油の芳香族分の含有量(容量%)は0−3%、好ましくは0−2%、より好ましくは0−1%である。多いと臭気があり、皮膚刺激性も奏するので好ましくない。また、有機樹脂材料との相性が劣り、好ましくない。
本発明の炭化水素油のナフテン分含有量(容量%)は、0−20%、好ましくは0−10%、さらに好ましくは0−5%である。ナフテン含有量が高いと臭気を発し、これは作業環境悪化につながるので好ましくない。また、有機樹脂材料との相性が劣り、好ましくない。
本発明の炭化水素油のパラフィン分含有量(容量%)は特に限定されないが、好ましくは80−100%、より好ましくは90−100%、さらに好ましくは95‐100%、最も好ましくは99−100%である。
ここで、パラフィン分及びナフテン分は、ASTM D2786「Standard Test Method for Hydrocarbon Types Analysis of Gas-Oil Saturates Fractions by High Ionizing Voltage Mass Spectrometry」に準拠して測定される、パラフィン(アルカン)分及びナフテン分の容量百分率(容量%)(前記飽和分全量基準)を意味する。
【0011】
本発明の炭化水素油の動粘度(mm/s)は、特に限定されないが、好ましくは0.5‐9、さらに好ましくは1.0‐5.5、より好ましくは1.2‐5.0である。動粘度がこれより低いと防錆性が劣る可能性があり、一方、この範囲を越えて高いと油剤の除去性が劣る可能性がある。なお、本発明における動粘度とは、JISK2283に準拠して測定される値を意味する。
本発明の炭化水素油の引火点(℃)は、特に限定されないが、好ましくは50‐200、より好ましくは55‐150、さらに好ましくは58‐140である。引火点が低いと火災の危険性が高まる可能性があり、高いと除去性が劣る可能性がある。なお、本発明における引火点とは、JISK2265の規定に従いタグ密閉式又はペンスキーマルテンス密閉式引火点試験法により測定される値を意味する。
本発明の炭化水素油のアニリン点(℃)は、特に限定されないが、好ましくは65‐110、より好ましくは70‐110、さらに好ましくは75‐110である。なお、本発明におけるアニリン点とは、JISK2256により測定される値を意味する。
本発明の炭化水素油の硫黄分(質量ppm)は、特に限定されないが、好ましくは0−30、より好ましくは0−10、さらに好ましくは0−5、もっとも好ましくは0−1である。硫黄分が多いと臭気が悪化する可能性がある。なお、本発明における硫黄分とは、JIS K 2541により測定される値を意味する。
【0012】
本発明の炭化水素油の蒸留性状(℃)はエングラー蒸留(JISK2254)によるもので、以下のとおりである。
本発明の炭化水素油の初留点(℃)は、特に限定されないが、好ましくは140〜280であり、より好ましくは150〜275、さらに好ましくは160〜270、最も好ましくは165〜265である。低いと有機樹脂材料との相性が劣る可能性がある。
本発明の炭化水素油の10%留出点(℃)は、特に限定されないが、好ましくは150―270、より好ましくは160〜285、さらに好ましくは170〜280、最も好ましくは180〜275である。
本発明の炭化水素油の50%留出点(℃)は、特に限定されないが、好ましくは170―320であり、より好ましくは180〜310、さらに好ましくは190〜300、特に好ましくは195〜290である。
本発明の炭化水素油の90%留出点(℃)は、特に限定されないが、好ましくは、180―390、より好ましくは190〜370、さらに好ましくは200〜340、特に好ましくは210〜330である。
本発明の炭化水素油の終点(℃)は特に限定されないが、好ましくは190〜400であり、より好ましくは200―380、さらに好ましくは210〜350、最も好ましくは220〜340である。
本発明の炭化水素油のT90―T10(℃)は特に限定されないが、好ましくは15―160、より好ましくは20〜150、さらに好ましくは30〜140、特に好ましくは35〜135である。
本発明の炭化水素油のEP−IBP(℃)は特に限定されないが、好ましくは35―200、より好ましくは40〜190、さらに好ましくは50〜180、特に好ましくは60〜170である。
本発明の炭化水素油の煙点(mm)は、特に限定されないが、好ましくは0−5、より好ましくは0−3、さらに好ましくは0−1である。なお、本発明における煙点とは、JISK2537により測定される値を意味する。
【0013】
以上、本発明の炭化水素油について説明してきたが、より具体的な好ましい態様として、以下の第1の態様が挙げられる。
好ましい第1の態様では、動粘度(mm/s)は、好ましくは1.4‐2.7、さらに好ましくは1.0‐5.5、より好ましくは1.2‐5.0である。動粘度がこれより低い防錆性が劣り、一方、この範囲を越えて高いと油剤の除去性が劣るためにいずれも好ましくない。
好ましい第1の態様では、初留点(℃)は、好ましくは140−260、好ましくは150−255、より好ましくは160−250、最も好ましくは165−245である。初留点が低いと有機樹脂材料との相性が劣る可能性がある。
好ましい第1の態様では、10%留出点(℃)は、好ましくは150−270、好ましくは160−265、より好ましくは170−260、最も好ましくは180−255である。
好ましい第1の態様では、90%留出点(℃)は、好ましくは180−320、好ましくは190−310、より好ましくは200−300、最も好ましくは210−290である。
好ましい第1の態様では、終点(℃)は、好ましくは190−310、好ましくは200−300、より好ましくは210−290、最も好ましくは220−280である。
【0014】
本発明の炭化水素油は、その製造法に特に制限はないが、たとえば、フィッシャートロプシュ(FT)合成工程、ワックス含有成分の水素化分解工程及びこれらの工程から得られる成分の水素化精製処理工程から選ばれる少なくとも1つの工程を有する製造工程により製造される灯軽油留分であることが好ましい。
FT合成工程とは、水素及び一酸化炭素を主成分とする混合ガス(合成ガスと称する場合もある)に対してフィッシャートロプシュ(FT)反応を適用させる工程であり、ガス、ナフサ、灯油、軽油の沸点範囲に相当の液体留分、パラフィンワックス(FTワックス)等が得られる。
ワックス含有成分の水素化分解工程とは、前記FTワックスや潤滑油脱ろう工程において副生されるスラックワックス等のワックス含有成分を水素化分解(異性化反応が含まれていても良い)工程であり、ガス、ナフサ、灯油、軽油の沸点範囲に相当の液体留分、潤滑油留分等が得られる。
また、水素化精製工程とは、上記の2つの工程のいずれか又は両方から得られる成分を水素化精製(水素化分解/異性化反応が含まれていても良い)する工程である。
本発明においては、上記各工程から得られる灯軽油留分を単独又は2種以上混合したものであってもよく、また異なる上記工程から得られる灯軽留分を2種以上混合したものであっても良い。
なお、ここでいう灯軽油留分とは、常圧において140〜400℃、好ましくは150〜360℃の範囲に沸点範囲を有する留分を意味し、例えば、一般に、灯油留分は沸点が140〜300℃、好ましくは150〜260℃の範囲内にあり、軽油留分は、沸点が150〜400℃、好ましくは180〜360℃の範囲内にある。
【0015】
以下では、FT合成、水素化精製、水素化分解の各工程を説明する。
(FT合成工程)
<原料ガス>
原料となる混合ガスは、水素及び一酸化炭素を主成分とする混合ガスであり、炭素を含有する物質を酸素および/または水および/または二酸化炭素を酸化剤に用いて酸化し、更に必要に応じて水を用いたシフト反応により所定の水素および一酸化炭素濃度に調整して得られる。炭素を含有する物質としては、天然ガス、石油液化ガス、メタンガス等の常温で気体となっている炭化水素からなるガス成分や、石油アスファルト、バイオマス、石炭、建材やゴミ等の廃棄物、汚泥、及び通常の方法では処理しがたい重質な原油、非在来型石油資源等を高温に晒すことで得られる混合ガスが一般的であるが、水素及び一酸化炭素を主成分とする混合ガスが得られる限りにおいては、本発明はその原料を限定するものではない。
【0016】
<触媒種>
フィッシャートロプシュ反応には金属触媒が必要である。該金属触媒としては、好ましくは8族の金属、例えば、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ニッケル、鉄等、更に好ましくは8族第4周期の金属を活性触媒成分として利用する。また、これらの金属を適量混合した金属群を用いることもできる。これらの活性金属はシリカやアルミナ、チタニア、シリカアルミナなどの担体上に担持して得られる触媒の形態で使用することが一般的である。また、これら触媒に上記活性金属に加えて第2金属を組合せて使用することにより、触媒性能を向上させることもできる。第2金属としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、具体的にはナトリウム、リチウム、マグネシウムなどの他に、ジルコニウム、ハフニウム、チタニウムなどが挙げられ、一酸化炭素の転化率向上やワックス生成量の指標となる連鎖成長確率(α)の増加など、目的に応じて適宜使用される。
【0017】
<原料混合ガス組成>
フィッシャートロプシュ反応は、混合ガスを原料として液体留分及びパラフィンワックスを生成する合成法である。この合成法を効率的に行うために、一般には混合ガス中の水素と一酸化炭素の比を制御することが好ましい。水素と一酸化炭素のモル混合比は1.2:1以上であることが好ましく、1.5:1であることがより好ましく、1.8:1以上であることが更により好ましい。また、この比率は3:1以下であることが好ましく、2.6:1以下であることがより好ましく、2.2:1以下であることが更により好ましい。
【0018】
<反応温度>
上記触媒を用いてフィッシャートロプシュ反応を行う場合の反応温度は、180℃以上320℃以下であることが好ましく、200℃以上300℃以下であることがより好ましい。反応温度が180℃未満では一酸化炭素がほとんど反応せず、炭化水素収率が低い傾向にある。また、反応温度が320℃を超えると、メタンなどのガス生成量が増加し、液体留分及びパラフィンワックスの生成効率が低下してしまう。
【0019】
<液空間速度>
触媒に対するガス空間速度に特に制限は無いが、500h−1以上4000h−1以下が好ましく、1000h−1以上3000h−1以下がより好ましい。ガス空間速度が500未満では液体燃料の生産性が低下する傾向にあり、また4000h−1を超えると反応温度を高くせざるを得なくなると共にガス生成が大きくなり、目的物の収率が低下してしまう。
【0020】
<反応圧力>
反応圧力(一酸化炭素と水素からなる合成ガスの分圧)は特に制限が無いが、0.5MPa以上7MPa以下が好ましく、2MPa以上4MPa以下がより好ましい。反応圧力が0.5MPa未満では液体留分の収率が低下する傾向にあり、また7MPaを超えると設備投資額が大きくなる傾向にあり、非経済的になる。
【0021】
(水素化精製工程、水素化分解工程)
上記FT合成工程により得られた成分及び/又はワックス含有成分を任意の方法で水素化精製または水素化分解する。水素化精製及び水素化分解は目的に即して選択すればよく、どちらか一方のみまたは両方法の組み合わせ等の選択も本発明の希釈油を製造しうる範囲において何ら限定されるものではない。
【0022】
(水素化精製工程)
本工程は、主に上記FT合成工程により得られた成分及び/又は後述するワックス含有成分の水素化分解工程により得られた成分を水素化精製する工程である。この工程における反応には、水素化分解/異性化反応が含まれていてもよい。
<触媒種>
水素化精製に用いる触媒は水素化活性金属を多孔質担体に担持したもので一般的あるが、同様の効果が得られる触媒であれば本発明はその形態を何ら限定するものではない。
多孔質担体としてはアルミナなどの無機酸化物が挙げられる。具体的な無機酸化物としてはアルミナ、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、あるいはゼオライトがある。
ゼオライトは結晶性アルミノシリケートであり、フォージャサイト、ペンタシル、モルデナイトなどが挙げられ、好ましくはフォージャサイト、ベータ、モルデナイト、特に好ましくはY型、ベータ型が用いられる。Y型は超安定化したものが好ましい。
【0023】
活性金属としては以下に示す2つの種類(活性金属Aタイプおよび活性金属Bタイプ)が好ましく用いられる。
活性金属Aタイプは周期律表第8族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはRu,Rd,Ir,Pd,Ptから選ばれる少なくとも1種類であり、さらに好ましくはPdまたは/およびPtである。活性金属としてはこれらの金属を組み合わせたものでよく、例えばPt−Pd,Pt−Rh,Pt−Ru,Ir−Pd,Ir−Rh,Ir−Ru,Pt−Pd−Rh,Pt−Rh−Ru,Ir−Pd−Rh,Ir−Rh−Ruなどがある。これらの金属からなる貴金属系触媒を使う際には、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いることができる。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
また活性金属Bタイプとして、周期律表第6A族および第8族金属から選ばれる少なくとも一種類の金属を含有し、望ましくは第6A族および第8族から選択される二種類以上の金属を含有しているものも使用することができる。例えばCo−Mo,Ni−Mo,Ni−Co−Mo,Ni−Wが挙げられ、これらの金属からなる金属硫化物触媒を使う際には予備硫化工程を含む必要がある。
【0024】
金属源としては一般的な無機塩、錯塩化合物を用いることができ、担持方法としては含浸法、イオン交換法など通常の水素化触媒で用いられる担持方法のいずれの方法も用いることができる。また、複数の金属を担持する場合には混合溶液を用いて同時に担持してもよく、または単独溶液を用いて逐次担持してもよい。金属溶液は水溶液でもよく有機溶剤を用いてもよい。
【0025】
<反応温度>
上記活性金属Aタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の反応温度は、180℃以上400℃以下であることが好ましく、200℃以上370℃以下であることがより好ましく、250℃以上350℃以下であることが更に好ましく、280℃以上350℃以下が更により好ましい。水素化精製における反応温度が370℃を超えると、ナフサ留分へ分解する副反応が増えて中間留分の収率が極度に減少するため好ましくない。また、反応温度が170℃を下回ると、アルコール分が除去しきれずに残存するため好ましくない。
上記活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の反応温度は、170℃以上320℃以下であることが好ましく、175℃以上300℃以下であることがより好ましく、180℃以上280℃以下であることが更により好ましい。水素化精製における反応温度が320℃を超えると、ナフサ留分へ分解する副反応が増えて中間留分の収率が極度に減少するため好ましくない。また、反応温度が170℃を下回ると、アルコール分が除去しきれずに残存するため好ましくない。
【0026】
<水素圧力>
上記活性金属Aタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の水素圧力は、0.5MPa以上12MPa以下であることが好ましく、1.0MPa以上5.0MPa以下であることがより好ましい。水素圧力は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
上記活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の水素圧力は、2MPa以上10MPa以下であることが好ましく、2.5MPa以上8MPa以下であることがより好ましく、3MPa以上7MPa以下であることが更により好ましい。水素圧力は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
【0027】
<LHSV>
活性金属Aタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の液空間速度(LHSV)は、0.1h−1以上10.0h−1以下であることが好ましく、0.3h−1以上3.5h−1以下であることがより好ましい。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので経済的に好ましくない。
上記活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の液空間速度(LHSV)は、0.1h−1以上2h−1以下であることが好ましく、0.2h−1以上1.5h−1以下であることがより好ましく、0.3h−1以上1.2h−1以下であることが更により好ましい。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので経済的に好ましくない。
【0028】
<水素/油比>
上記活性金属Aタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の水素/油比は、50NL/L以上1000NL/L以下であることが好ましく、70NL/L以上800NL/L以下であることがより好ましい。水素/油比は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
上記活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の水素/油比は、100NL/L以上800NL/L以下であることが好ましく、120NL/L以上600NL/L以下であることがより好ましく、150NL/L以上500NL/L以下であることが更により好ましい。水素/油比は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
【0029】
(水素化分解工程)
本工程は、ワックス含有成分、好ましくは上記FTワックスを水素化分解する工程である。この工程における反応には、異性化反応が含まれていても良い。
<触媒種>
水素化分解に用いる触媒は水素化活性金属を固体酸性質を有する担体に担持したものが一般的であるが、同様の効果が得られる触媒であれば本発明はその形態を何ら限定するものではない。
固体酸性質を有する担体にはアモルファス系と結晶系のゼオライトがある。具体的にはアモルファス系のシリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニアとゼオライトのフォージャサイト型、ベータ型、MFI型、モルデナイト型などがある。好ましくはフォージャサイト型、ベータ型、MFI型、モルデナイト型のゼオライト、より好ましくはY型、ベータ型である。Y型は超安定化したものが好ましい。
【0030】
活性金属としては以下に示す2つの種類(活性金属Cタイプおよび活性金属Dタイプ)が好ましく用いられる。
活性金属Cタイプとしては主に周期律表第6A属および8族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはNi、Co、Mo、Pt、Pd、Wから選ばれる少なくとも1種類の金属である。これらの金属からなる貴金属系触媒を使う際には、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いることができる。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
また活性金属Dタイプとしてはこれらの金属を組み合わせたものでよく、例えばPt−Pd、Co−Mo、Ni−Mo、Ni−W、Ni−Co−Moなどがある。
また、これらの金属からなる触媒を使う際には予備硫化した後に使用するのが好ましい。
【0031】
金属源としては一般的な無機塩、錯塩化合物を用いることができ、担持方法としては含浸法、イオン交換法など通常の水素化触媒で用いられる担持方法のいずれの方法も用いることができる。また、複数の金属を担持する場合には混合溶液を用いて同時に担持してもよく、または単独溶液を用いて逐次担持してもよい。金属溶液は水溶液でもよく有機溶剤を用いてもよい。
【0032】
<反応温度>
上記活性金属Cタイプおよび活性金属Dタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の反応温度は、200℃以上450℃以下であることが好ましく、250℃以上430℃以下であることがより好ましく300℃以上400℃以下であることが更により好ましい。水素化分解における反応温度が370℃を超えると、ナフサ留分へ分解する副反応が増えて中間留分の収率が極度に減少するため好ましくない。一方、200℃未満の場合は触媒の活性が著しく低下するので好ましくない。
【0033】
<水素圧力>
上記活性金属Cタイプおよび活性金属Dタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の水素圧力は、1MPa以上20MPa以下であることが好ましく、4MPa以上16MPa以下であることがより好ましく、6MPa以上13MPa以下であることが更により好ましい。水素圧力は高いほど水素化反応が促進されるが、分解反応はむしろ進行が鈍化し反応温度の上昇で進行を調整する必要が生じるため、転じて触媒寿命の低下に繋がってしまう。そのため、一般に反応温度には経済的な最適点が存在する。
【0034】
<LHSV>
上記活性金属Cタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の液空間速度(LHSV)は、0.1h−1以上10h−1以下であることが好ましく、0.3h−1以上3.5h―1以下であることがより好ましい。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので経済的に好ましくない。
上記活性金属Dタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の液空間速度(LHSV)は、0.1h−1以上2h−1以下であることが好ましく、0.2h−1以上1.7h―1以下であることがより好ましく、0.3h−1以上1.5hh−1以下であることが更により好ましい。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので経済的に好ましくない。
【0035】
<水素/油比>
上記活性金属Cタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の水素/油比は、50NL/L以上1000NL/L以下であることが好ましく、70NL/L以上800NL/L以下であることがより好ましく、400NL/L以上1500NL/L以下であることが更に好ましい。水素/油比は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
上記活性金属Dタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の水素/油比は、150NL/L以上2000NL/L以下であることが好ましく、300NL/L以上1700NL/L以下であることがより好ましく、400NL/L以上1500NL/L以下であることが更により好ましい。水素/油比は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
【0036】
<装置>
水素化処理する装置はいかなる構成でもよく、反応塔は単独または複数を組み合わせてもよく、複数の反応塔の間に水素を追加注入してもよく、気液分離操作や硫化水素除去設備、水素化生成物を分留し、所望の留分を得るための蒸留塔を有していてもよい。
本発明の水素化処理装置の反応形式は、固定床方式をとりうる。水素は原料油に対して、向流または並流のいずれの形式をとることもでき、また、複数の反応塔を有し向流、並流を組み合わせた形式のものでもよい。一般的な形式としてはダウンフローであり、気液双並流形式がある。反応塔の中段には反応熱の除去、あるいは水素分圧を上げる目的で水素ガスをクエンチとして注入してもよい。
以上のようにしてフィッシャートロプシュ合成工程、ワックス含有成分の水素化分解工程及びこれらの工程から得られる成分の水素化精製工程から選ばれる少なくとも1つの工程を有する製造工程により製造される灯軽油留分を、本願発明の炭化水素油として使用することができる。
【0037】
本発明は上記炭化水素油を溶剤基油として含有するものであるが、これ以外に鉱油、合成油および油脂のいずれでも併用することができ、その種類に制限はないが、併用するには、鉱油または合成油が特に好ましい。その併用割合も特に限定なく、本発明の効果が損なわれない限りに任意に選択できるが、本発明の炭化水素油の含有量が、さび止め油組成物全量基準で、95質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが最も好ましい。また、本発明の炭化水素油以外の基油の含有量が、さび止め油組成物全量基準で、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが最も好ましい。
また、併用する本発明の炭化水素油以外の基油としては、本発明の炭化水素油よりも高粘度の基油、より具体的には40℃における動粘度が6mm2/sを超える基油を使用し、溶剤希釈型のさび止め油として用いることが好ましい。このような溶剤希釈型のさび止め油として用いる場合には、本発明の炭化水素油の含有量は、さび止め油組成物全量基準で、5〜95質量%であることが好ましく、10〜90質量%であることがより好ましく、15〜質量85%であることが最も好ましい。また、本発明の炭化水素油以外の40℃における動粘度が6mm2/sを超える基油の含有量が、さび止め油組成物全量基準で、5〜95質量%であることが好ましく、10〜90質量%であることがより好ましく、15〜85質量%であることが最も好ましい。
【0038】
併用可能な鉱油を例示すれば、例えば、パラフィン系またはナフテン系の原油の蒸留により得られる灯油留分;灯油留分からの抽出操作等により得られるノルマルパラフィン;およびパラフィン系またはナフテン系の原油の蒸留により得られる潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、および白土処理等の精製処理を一つ以上適宜組み合わせて精製したもの等が挙げられる。その他に合成油、油脂等をさらに基油に混合して使用することができる。
さらに併用可能な合成油としては、例えば、オレフィンオリゴマー(プロピレンオリゴマー、イソブチレンオリゴマー、ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)またはその水素化物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリグリコール、シリコーン油、ジアルキルジフェニルエーテル、およびポリフェニルエーテル等が挙げられる。これらの中で、プロピレンオリゴマー水素化物、イソブチレンオリゴマー水素化物およびポリブテン水素化物は総称してイソパラフィンと呼ばれている。
【0039】
また本発明で併用可能な油脂としては、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、これらの水素添加物あるいはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0040】
また、本発明のさび止め油組成物は酸化ワックス塩、カルボン酸等を含有することができる。
以下では酸化ワックス塩を説明し、酸化ワックス塩としては、ワックスを酸化して得られる酸化ワックスと、アルカリ金属、アルカリ土類金属(但し、バリウムを除く)およびアミンの中から選ばれる少なくとも1種と、を反応させ、酸化ワックスが有する酸性基の一部または全部を中和して塩としたものが好ましい。
【0041】
酸化ワックス塩の原料として使用される酸化ワックスとしては特に制限されないが、具体的には例えば、石油留分の精製の際に得られるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムや合成により得られるポリオレフィンワックス等のワックスを酸化することによって製造されるもの等が挙げられる。
【0042】
また、酸化ワックス塩がアルカリ金属塩である場合、原料として使用されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0043】
また、酸化ワックス塩がアルカリ土類金属塩である場合、原料として使用されるアルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。
【0044】
また、酸化ワックス塩が重金属塩である場合、原料として使用される重金属としては、亜鉛、鉛等が挙げられる。
【0045】
なお、人体や生体系に対する安全性の点から、酸化ワックス塩はバリウム塩及び重金属塩でないことが好ましい。
【0046】
また、酸化ワックス塩がアミン塩である場合、アミンとしては、モノアミン、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。
【0047】
モノアミンとしては、具体的には、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルアミン(全ての異性体を含む)、トリプロピルアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルアミン(全ての異性体を含む)、トリブチルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンチルアミン(全ての異性体を含む)、ジペンチルアミン(全ての異性体を含む)、トリペンチルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクチルアミン(全ての異性体を含む)、ジオクチルアミン(全ての異性体を含む)、モノノニルアミン(全ての異性体を含む)、モノデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノウンデシル(全ての異性体を含む)、モノドデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノテトラデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプタデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクタデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノノナデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノイコシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘンイコシルアミン(全ての異性体を含む)、モノドコシルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリコシルアミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(エチル)アミン、ジメチル(プロピル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ブチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(デシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ウンデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ドデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(テトラデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンタデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキサデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプタデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクタデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノナデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(イコシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘンイコシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリコシル)アミン(全ての異性体を含む)等のアルキルアミン;
モノビニルアミン、ジビニルアミン、トリビニルアミン、モノプロペニルアミン(全ての異性体を含む)、ジプロペニルアミン(全ての異性体を含む)、トリプロペニルアミン(全ての異性体を含む)、モノブテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジブテニルアミン(全ての異性体を含む)、トリブテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジペンテニルアミン(全ての異性体を含む)、トリペンテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキセニルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘキセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘプテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジオクテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノノネニルアミン(全ての異性体を含む)、モノデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノウンデセニル(全ての異性体を含む)、モノドデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノテトラデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプタデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクタデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノノナデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノイコセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘンイコセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノドコセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリコセニルアミン(全ての異性体を含む)等のアルケニルアミン;
ジメチル(ビニル)アミン、ジメチル(プロペニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ブテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノネニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(デセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ウンデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ドデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(テトラデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンタデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキサデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプタデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクタデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノナデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(イコセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘンイコセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリコセニル)アミン(全ての異性体を含む)等のアルキル基及びアルケニル基を有するモノアミン;
モノベンジルアミン、(1−フェニルチル)アミン、(2−フェニルエチル)アミン(別名:モノフェネチルアミン)、ジベンジルアミン、ビス(1−フェニエチル)アミン、ビス(2−フェニルエチレン)アミン(別名:ジフェネチルアミン)等の芳香族置換アルキルアミン;
モノシクロペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノシクロヘプチルアミン、ジシクロヘプチルアミン等の炭素数5〜16のシクロアルキルアミン;
ジメチル(シクロペンチル)アミン、ジメチル(シクロヘキシル)アミン、ジメチル(シクロヘプチル)アミン等のアルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミン;
(メチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(ジメチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(エチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(ジメチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(エチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロヘプチルアミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)等のアルキルシクロアルキルアミン、等が挙げられる。また、ここでいうモノアミンには、油脂から誘導されるモノアミン(牛脂アミン等)も含まれる。
【0048】
また、ポリアミンとしては、具体的には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、ブチレンジアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、テトラブチレンペンタミン、ペンタブチレンヘキサミン等のアルキレンポリアミン;
N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N−プロピルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ブチルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ペンチルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘキシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘプチルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−オクチルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ノニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−デシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ウンデシル(全ての異性体を含む)、N−ドデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−トリデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−テトラデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ペンタデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘキサデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘプタデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−オクタデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ノナデシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−イコシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘンイコシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ドコシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−トリコシルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)等のN−アルキルエチレンジアミン;
N−ビニルエチレンジアミン、N−プロペニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ブテニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ペンテニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘキセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘプテニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−オクテニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ノネニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−デセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ウンデセニル(全ての異性体を含む)、N−ドデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−トリデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−テトラデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ペンタデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘキサデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘプタデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−オクタデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ノナデセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−イコセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ヘンイコセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−ドコセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)、N−トリコセニルエチレンジアミン(全ての異性体を含む)等のN−アルケニルエチレンジアミン;
N−アルキルジエチレントリアミン、N−アルケニルジエチレントリアミン、N−アルキルトリエチレンテトラミン、N−アルケニルトリエチレンテトラミン、N−アルキルテトラエチレンペンタミン、N−アルケニルテトラエチレンペンタミン、N−アルキルペンタエチレンヘキサミン、N−アルケニルペンタエチレンヘキサミン、N−アルキルプロピレンジアミン、N−アルケニルプロピレンジアミン、N−アルキルジプロピレントリアミン、N−アルケニルジプロピレントリアミン、N−アルキルトリプロピレンテトラミン、N−アルケニルトリプロピレンテトラミン、N−アルキルテトラプロピレンペンタミン、N−アルケニルテトラプロピレンペンタミン、N−アルキルペンタプロピレンヘキサミン、N−アルケニルペンタプロピレンヘキサミン、N−アルキルブチレンジアミン、N−アルケニルブチレンジアミン、N−アルキルジブチレントリアミン、N−アルケニルジブチレントリアミン、N−アルキルトリブチレンテトラミン、N−アルケニルトリブチレンテトラミン、N−アルキルテトラブチレンペンタミン、N−アルケニルテトラブチレンペンタミン、N−アルキルペンタブチレンヘキサミン、N−アルケニルペンタブチレンヘキサミン等のN−アルキルまたはN−アルケニルアルキレンポリアミン、等が挙げられる。また、ここでいうポリアミンには油脂から誘導されるポリアミン(牛脂ポリアミン等)も含まれる。
【0049】
さらに、アルカノールアミンとしては、具体的には、モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(n−プロパノール)アミン、ジ(n−プロパノール)アミン、トリ(n−プロパノール)アミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、トリブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、トリペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサノールアミン(全ての異性体を含む)、ジヘキサノールアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジヘプタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノオクタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノノナノールアミン(全ての異性体を含む)、モノデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノウンデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノドデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノトリデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノテトラデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサデカノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノエタノールアミン、ジエチルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノエタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノエタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジエタノールアミン、モノエチルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジエタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジエタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノシクロヘキシルモノエタノールアミン、モノシクロヘキシルジエタノールアミン、モノシクロヘキシルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノシクロヘキシルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)等が挙げられる。
【0050】
上記したアミンの中でも、モノアミンは耐ステイン性が良好であるという点で好ましく、モノアミンの中でもアルキルアミン、アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミン、アルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミン、シクロアルキルアミン並びにアルキルシクロアルキルアミンがより好ましい。また、アミン分子中の合計炭素数が3以上のアミンは耐ステイン性が良好であるという点で好ましく、合計炭素数が5以上のアミンがより好ましい。
【0051】
本発明では、酸化ワックス塩として、上記のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重金属塩又はアミン塩のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、さび止め性の点から、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ土類金属塩であることがより好ましい。更に、アルカリ土類金属塩の中でも、安全性、並びにカルボン酸との併用効果がより高い点から、カルシウム塩であることが特に好ましい。
【0052】
本発明のさび止め油組成物における酸化ワックス塩の含有量は特に制限されないが、さび止め性の点から、組成物全量を基準として、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上である。また、酸化ワックス塩の含有量は、脱脂性及び貯蔵安定性の点から、組成物全量を基準として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0053】
また、本発明のさび止め油組成物に含まれるカルボン酸としては、任意のものが用いられるが、好ましくは、脂肪酸、ジカルボン酸、ヒドロキシ脂肪酸、ナフテン酸、樹脂酸、酸化ワックス、ラノリン脂肪酸などが挙げられる。
【0054】
本発明において用いられる脂肪酸の炭素数は特に制限されないが、好ましくは6〜24、より好ましくは10〜22である。また、本発明において使用される脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、また直鎖状脂肪酸であっても分岐鎖状脂肪酸であってもよい。このような脂肪酸としては、具体的には、ヘキサン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタン酸(全ての異性体を含む)、オクタン酸(全ての異性体を含む)、ノナン酸(全ての異性体を含む)、デカン酸(全ての異性体を含む)、ウンデカン酸(全ての異性体を含む)、ドデカン酸(全ての異性体を含む)、トリデカン酸(全ての異性体を含む)、テトラデカン酸(全ての異性体を含む)、ペンタデカン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサデカン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタデカン酸(全ての異性体を含む)、オクタデカン酸(全ての異性体を含む)、ノナデカン酸(全ての異性体を含む)、イコサン酸(全ての異性体を含む)、ヘンイコサン酸(全ての異性体を含む)、ドコサン酸(全ての異性体を含む)、トリコサン酸(全ての異性体を含む)、テトラコサン酸(全ての異性体を含む)等の飽和脂肪酸;ヘキセン酸(全ての異性体を含む)、ヘプテン酸(全ての異性体を含む)、オクテン酸(全ての異性体を含む)、ノネン酸(全ての異性体を含む)、デセン酸(全ての異性体を含む)、ウンデセン酸(全ての異性体を含む)、ドデセン酸(全ての異性体を含む)、トリデセン酸(全ての異性体を含む)、テトラデセン酸(全ての異性体を含む)、ペンタデセン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサデセン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタデセン酸(全ての異性体を含む)、オクタデセン酸(全ての異性体を含む)、ノナデセン酸(全ての異性体を含む)、イコセン酸(全ての異性体を含む)、ヘンイコセン酸(全ての異性体を含む)、ドコセン酸(全ての異性体を含む)、トリコセン酸(全ての異性体を含む)、テトラコセン酸(全ての異性体を含む)等の不飽和脂肪酸;およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0055】
ジカルボン酸としては、好ましくは炭素数2〜40のジカルボン酸、より好ましくは炭素数5〜36のジカルボン酸が用いられる。これらの中でも、炭素数6〜18の不飽和脂肪酸をダイマー化したダイマー酸、アルキル又はアルケニルコハク酸が好ましく用いられる。ダイマー酸としては、具体的には、オレイン酸のダイマー酸等が挙げられる。また、アルキル又はアルケニルコハク酸の中でも、アルケニルコハク酸が好ましく、炭素数8〜18のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸がより好ましい。
【0056】
ヒドロキシ脂肪酸としては、好ましくは炭素数6〜24のヒドロキシ脂肪酸が用いられる。また、ヒドロキシ脂肪酸が有するヒドロキシ基の個数は1個でも複数個でもよいが、1〜3個のヒドロキシ基を有するものが好ましく用いられる。このようなヒドロキシ脂肪酸としては、具体的には、リシノール酸等が挙げられる。
【0057】
ナフテン酸とは、石油中のカルボン酸類であって、ナフテン環に−COOH基が結合したものをいう。
【0058】
樹脂酸とは、天然樹脂中に遊離した状態又はエステルとして存在する有機酸をいう。
【0059】
酸化ワックスとは、ワックスを酸化して得られるものである。原料として用いられるワックスは特に制限されないが、具体的には、石油留分の精製の際に得られるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトラタムや合成により得られるポリオレフィンワックス等が挙げられる。
【0060】
ラノリン脂肪酸とは、羊の毛に付着するろう状物質を精製(加水分解等)して得られるカルボン酸である。
【0061】
これらのカルボン酸の中でも、さび止め性、脱脂性及び貯蔵安定性の点から、ジカルボン酸が好ましく、ダイマー酸がより好ましく、オレイン酸のダイマー酸がより好ましい。
【0062】
本発明のさび止め油組成物におけるカルボン酸の含有量は特に制限されないが、組成物全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。カルボン酸の含有量が前記下限値未満であると、その添加によるさび止め性向上効果が不十分となる傾向にある。また、カルボン酸の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。カルボン酸の含有量が前記上限値を超えると、基油に対する溶解性が不十分となり、貯蔵安定性が低下する傾向にある。
【0063】
また、酸化ワックス塩とカルボン酸との含有割合は特に制限されないが、カルボン酸/酸化ワックス塩の比(質量比)が、1/100〜30/100であることが好ましく、3/100〜7/100であることがより好ましく、4/100〜6/100であることが更に好ましい。カルボン酸/酸化ワックス塩の比が1/100未満の場合又は30/100を超える場合には、両者の併用によるさび止め性、脱脂性及び貯蔵安定性の向上効果が不十分となる傾向にある。
【0064】
本発明のさび止め油組成物は、さらに、必要に応じて以下に示す各種添加剤を更に含有することができる。
【0065】
本発明のさび止め油組成物は、スルホン酸塩、カルボン酸塩、エステル、ザルコシン型化合物、アミン、ホウ素化合物などのさび止め添加剤を更に含有してもよい。
【0066】
スルホン酸塩の好ましい例としては、スルホン酸アルカリ金属塩、スルホン酸アルカリ土類金属塩及びスルホン酸アミン塩が挙げられる。スルホン酸塩はいずれも人体や生態系に対して十分に高い安全性を有するものであり、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアミンとスルホン酸とを反応させることにより得ることができる。
【0067】
スルホン酸塩を構成するアルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、それぞれ酸化ワックスのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の説明において例示されたアルカリ金属及びアルカリ土類金属が挙げられ、中でもナトリウム、カリウム、カルシウムが好ましい。
【0068】
また、スルホン酸塩を構成するアミンとしては、酸化ワックスのアミン塩の説明において例示されたアミンが挙げられる。中でも、モノアミンは、よりさび止め性に優れる点で好ましく、モノアミンの中でもアルキルアミン、アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミン、アルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミン、シクロアルキルアミン並びにアルキルシクロアルキルアミンがより好ましい。また、アミン分子中の合計炭素数が3以上のアミンは、よりさび止め性に優れる点で好ましく、合計炭素数が5以上のアミンがより好ましい。
【0069】
他方、本発明にかかるスルホン酸は、常法によって製造された従来公知のものを使用することができる。具体的には、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生するいわゆるマホガニー酸等の石油スルホン酸、あるいは洗剤等の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したりポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したものやジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したもの等の合成スルホン酸等、が挙げられる。これらのスルホン酸の分子量について特に制限はないが、好ましくは100〜1500、より好ましくは200〜700のものが使用される。
【0070】
上記のスルホン酸の中でも、
ナフタレン環に結合する2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であるジアルキルナフタレンスルホン酸;
ベンゼン環に結合する2つのアルキル基がそれぞれ直鎖アルキル基又は側鎖メチル基を1個有する分岐鎖状アルキル基であり、且つ2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であるジアルキルベンゼンスルホン酸;及び
ベンゼン環に結合するアルキルの炭素数が15以上であるモノアルキルベンゼンスルホン酸、
からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0071】
本発明において好適に使用されるジアルキルナフタレンスルホン酸は、前述の通り、ナフタレン環に結合する2つのアルキル基の総炭素数が14〜30のものである。2つのアルキル基の総炭素数が14未満であると抗乳化性が不十分となる傾向にあり、他方30を超えると得られるさび止め油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。なお、2つのアルキル基はそれぞれ直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であれば各アルキル基の炭素数について特に制限はないが、各アルキル基の炭素数はそれぞれ6〜18であることが好ましい。
【0072】
また、本発明において好適に使用されるジアルキルベンゼンスルホン酸は、前述の通り、ベンゼン環に結合する2つのアルキル基がそれぞれ直鎖アルキル基又は側鎖メチル基を1個有する分岐鎖状アルキル基であり、且つ2つのアルキル基の総炭素数が14〜30のものである。モノアルキルベンゼンスルホン酸の場合は後述するようにアルキル基の炭素数が15以上であれば好適に使用することができるが、アルキル基の炭素数が15未満のモノアルキルベンゼンスルホン酸を用いるとさび止め油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。また、3個以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸を用いた場合にもさび止め油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。さらに、ジアルキルベンゼンスルホン酸のベンゼン環に結合するアルキル基が側鎖メチル基以外の分岐構造を持つ分岐鎖状アルキル基(例えば、側鎖エチル基を有する分岐鎖状アルキル基、等)や2つ以上の分岐構造を有する分岐鎖状アルキル基(例えば、プロピレンのオリゴマーから誘導される分岐鎖状アルキル基等)であると、人体又は生態系に悪影響を及ぼす恐れがあり、また、さび止め性が不十分となる傾向にある。さらにまた、ジアルキルベンゼンスルホン酸のベンゼン環に結合する2つのアルキル基の総炭素数が14未満であると抗乳化性が低下する傾向にあり、他方、30を超えるとさび止め油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。なお、ベンゼン環に結合する2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であれば各アルキル基の炭素数については特に限定はないが、各アルキル基の炭素数はそれぞれ6〜18であることが好ましい。
【0073】
さらに、本発明において好適に使用されるモノアルキルベンゼンスルホン酸は、前述の通り、ベンゼン環に結合する1つのアルキル基の炭素数が15以上のものである。ベンゼン環に結合するアルキル基の炭素数が15未満であると、得られるさび止め油組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。また、ベンゼン環に結合するアルキル基は、その炭素数が15以上であれば直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0074】
上記の原料を用いて得られるスルホン酸塩としては、具体的には以下のものが挙げられる。すなわち、
アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物等)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等)又はアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミン等)とスルホン酸とを反応させることにより得られる中性(正塩)スルホネート;
上記の中性(正塩)スルホネートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンを水の存在下で加熱することにより得られる塩基性スルホネート;
炭酸ガスの存在下で上記の中性(正塩)スルホネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンと反応させることにより得られる炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネート;
上記の中性(正塩)スルホネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミン並びにホウ酸又は無水ホウ酸等のホウ酸化合物との反応、あるいは上記の炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネートとホウ酸又は無水ホウ酸等のホウ酸化合物との反応によって得られるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネート、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0075】
なお、上記の中性(正塩)スルホネートを製造する場合、反応促進剤として目的とするスルホン酸塩と同じアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアミンの塩化物を添加したり、目的とするスルホネートと異なるアルカリ金属、アルカリ土類金属又アミンの中性(正塩)スルホネートを調製した後に目的とするスルホン酸塩と同じアルカリ金属アルカリ土類金属又はアミンの塩化物を添加して交換反応を行うことによっても目的のスルホン酸塩を得ることが可能である。しかしながら、このような方法により得られるスルホン酸塩には塩化物イオンが残存しやすいので、本発明においては、このような方法により得られるスルホン酸塩を用いないか、または、得られるスルホン酸塩に水洗などの十分な洗浄処理を行うことが好ましい。具体的には、スルホン酸塩中の塩素濃度を200質量ppm以下とすることが好ましく、100質量ppm以下とすることがより好ましく、50質量ppm以下とすることが好ましく、25質量ppm以下とすることが特に好ましい。
【0076】
ナフタレン環に結合する2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であるジアルキルナフタレンスルホン酸塩;
ベンゼン環に結合する2つのアルキル基がそれぞれ直鎖アルキル基又は側鎖メチル基を1個有する分岐鎖状アルキル基であり、且つ2つのアルキル基の総炭素数が14〜30であるジアルキルベンゼンスルホン酸塩;及び
ベンゼン環に結合するアルキルの炭素数が15以上であるモノアルキルベンゼンスルホン酸塩、
からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0077】
本発明においては、上記のうち、中性、塩基性、過塩基性のアルカリ金属スルホネート及びアルカリ土類金属スルホネートから選ばれる1種又は2種以上を用いることがより好ましく;塩基価が0〜50mgKOH/g、好ましくは10〜30mgKOH/gの中性又は中性に近いアルカリ金属スルホネート若しくはアルカリ土類金属スルホネート及び/又は塩基価が50〜500mgKOH/g、好ましくは200〜400mgKOH/gの(過)塩基性のアルカリ金属スルホネート若しくはアルカリ土類金属スルホネートを用いることが特に好ましい。上記の塩基価が0〜50mgKOH/gのアルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネートの含有量は、組成物全量規準で、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは2〜12質量%である。また、上記の塩基価が0〜50mgKOH/gのアルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネートと塩基価が50〜500mgKOH/gのアルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネートとの質量比(塩基価が0〜50mgKOH/gのアルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネート/塩基価が50〜500mgKOH/gのアルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネート)は、好ましくは0.1〜30、より好ましくは1〜20、特に好ましくは1.5〜15である。ここで、アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等が挙げられ、また、アルカリ土類金属としてはバリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられるが、カルシウム及びマグネシウムが好ましく、カルシウムが特に好ましい。また、ここでいう塩基価とは、通常潤滑油基油等の希釈剤を30〜70質量%含む状態で、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の6.に準拠した塩酸法により測定される塩基価を意味する。
【0078】
また、カルボン酸塩としては、カルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩などが挙げられる。カルボン酸塩を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアミンとしては、それぞれ酸化ワックス塩の説明において例示したアルカリ金属、アルカリ土類金属およびアミンが挙げられる。なお、バリウム塩は人体や生態系に対する安全性が不十分となるおそれがある。
【0079】
また、カルボン酸塩は、その他のさび止め剤と併用可能であるが、酸化ワックス塩及びラノリン脂肪酸塩をスルホン酸ナトリウム塩と併用する場合は、酸化ワックス塩およびラノリン脂肪酸塩としてそれぞれナトリウム塩を用いることが好ましい。
【0080】
また、エステルとしては、多価アルコールの部分エステル、エステル化酸化ワックス、エステル化ラノリン脂肪酸、アルキル又はアルケニルコハク酸エステルなどが挙げられる。
【0081】
多価アルコールの部分エステルとは、多価アルコール中の水酸基の少なくとも1個以上がエステル化されておらず水酸基のままで残っているエステルであり、その原料である多価アルコールとしては任意のものが使用可能であるが、分子中の水酸基の数が好ましくは2〜10個(より好ましくは3〜6個)であり且つ炭素数が2〜20(より好ましくは3〜10)である多価アルコールが好適に使用される。これらの多価アルコールの中でも、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールを用いることが好ましく、ペンタエリスリトールを用いることがより好ましい。
【0082】
他方、部分エステルを構成するカルボン酸としては、任意のものが用いられるが、カルボン酸の炭素数は、好ましくは2〜30、より好ましくは6〜24、更に好ましくは10〜22である。また、当該カルボン酸は、飽和カルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよく、また直鎖状カルボン酸であっても分岐鎖状カルボン酸であってもよい。このような脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸(全ての異性体を含む)、ペンタン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタン酸(全ての異性体を含む)、オクタン酸(全ての異性体を含む)、ノナン酸(全ての異性体を含む)、デカン酸(全ての異性体を含む)、ウンデカン酸(全ての異性体を含む)、ドデカン酸(全ての異性体を含む)、トリデカン酸(全ての異性体を含む)、テトラデカン酸(全ての異性体を含む)、ペンタデカン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサデカン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタデカン酸(全ての異性体を含む)、オクタデカン酸(全ての異性体を含む)、ノナデカン酸(全ての異性体を含む)、イコサン酸(全ての異性体を含む)、ヘンイコサン酸(全ての異性体を含む)、ドコサン酸(全ての異性体を含む)、トリコサン酸(全ての異性体を含む)、テトラコサン酸(全ての異性体を含む)、ペンタコサン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサコサン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタコサン酸(全ての異性体を含む)、オクタコサン酸(全ての異性体を含む)、ノナコサン酸(全ての異性体を含む)、トリアコンタン酸(全ての異性体を含む)等の飽和脂肪酸(これら飽和脂肪酸は直鎖状でも分枝状でもよい);プロペン酸、ブデン酸(全ての異性体を含む)、ヘプテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸(全ての異性体を含む)、オクテン酸(全ての異性体を含む)、ノネン酸(全ての異性体を含む)、デセン酸(全ての異性体を含む)、ウンデセン酸(全ての異性体を含む)、ドデセン酸(全ての異性体を含む)、トリデセン酸(全ての異性体を含む)、テトラデセン酸(全ての異性体を含む)、ペンタデセン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサデセン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタデセン酸(全ての異性体を含む)、オクタデセン酸(全ての異性体を含む)、ノナデセン酸(全ての異性体を含む)、イコセン酸(全ての異性体を含む)、ヘンイコセン酸(全ての異性体を含む)、ドコセン酸(全ての異性体を含む)、トリコセン酸(全ての異性体を含む)、テトラコセン酸(全ての異性体を含む)、ペンタコセン酸(全ての異性体を含む)、ヘキサコセン酸(全ての異性体を含む)、ヘプタコセン酸(全ての異性体を含む)、オクタコセン酸(全ての異性体を含む)、ノナコセン酸(全ての異性体を含む)、トリアコンテン酸(全ての異性体を含む)等の不飽和脂肪酸;およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0083】
また、部分エステルを構成するカルボン酸として、ヒドロキシカルボン酸を用いてもよい。なお、本発明でいう「ヒドロキシカルボン酸」とは、カルボン酸基(−COOH)に含まれる水酸基以外に水酸基を有するカルボン酸を意味する。
【0084】
ヒドロキシカルボン酸は、飽和カルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよいが、安定性の点から飽和カルボン酸であることが好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸は、直鎖カルボン酸又は分岐カルボン酸であってもよいが、直鎖カルボン酸、あるいは炭素数1又は2(より好ましくは炭素数1)の分岐鎖を1〜3個(より好ましくは1〜2個、特に好ましくは1個)有する分岐カルボン酸であることが好ましい。
【0085】
また、ヒドロキシカルボン酸の炭素数は、さび止め性と貯蔵安定性との両立の点から、2〜40であることが好ましく、6〜30であることがより好ましく、8〜24であることがさらに好ましい。
【0086】
ヒドロキシカルボン酸が有するカルボン酸基の個数は特に制限されず、当該ヒドロキシカルボン酸一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよいが、一塩基酸であることが好ましい。
【0087】
また、ヒドロキシカルボン酸が有する水酸基の個数は特に制限されないが、安定性の点から、1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましく、1〜2個であることが更に好ましく、1個であることが特に好ましい。
【0088】
また、ヒドロキシカルボン酸における水酸基の結合位置は任意であるが、カルボン酸基の結合炭素原子に水酸基が結合したカルボン酸(αヒドロキシ酸)、及びカルボン酸基の結合炭素原子から見て主鎖の他端の炭素原子に水酸基が結合したカルボン酸(ωヒドロキシ酸)であることが好ましい。
【0089】
ヒドロキシカルボン酸の好ましい例としては、具体的には、下記一般式(1)で表されるαヒドロキシ酸、及び下記一般式(2)で表されるωヒドロキシ酸が挙げられる。
【0090】
【化1】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキル基又は炭素数2〜38のアルケニル基を示す。]
【0091】
【化2】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキレン基又は炭素数2〜38のアルケニレン基を示す。]
【0092】
上記一般式(1)において、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキル基又は炭素数1〜38のアルケニル基を示す。Rで示されるアルキル基及びアルケニル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、ヘプタトリアコンチル基、オクタトリアコンチル基等のアルキル基(全ての異性体を含む);エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基、ヘントリアコンテニル基、ドトリアコンテニル基、トリトリアコンテニル基、テトラトリアコンテニル基、ペンタトリアコンテニル基、ヘキサトリアコンテニル基、ヘプタトリアコンテニル基、オクタトリアコンテニル基等のアルケニル基(すべての異性体を含む)などが挙げられる。
【0093】
また、上記一般式(2)において、Rは水素原子、炭素数1〜38のアルキレン基又は炭素数2〜38のアルケニレン基を示す。Rで示されるアルキレン基及びアルケニレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基、ヘントリアコンチレン基、ドトリアコンチレン基、トリトリアコンチレン基、テトラトリアコンチレン基、ペンタトリアコンチレン基、ヘキサトリアコンチレン基、ヘプタトリアコンチレン基、オクタトリアコンチレン基等のアルキレン基(全ての異性体を含む);エテニレン基(ビニレン基)、プロペニル基(アリレン基)、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、ノネニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセニレン基、トリデセニレン基、テトラデセニレン基、ペンタデセニレン基、ヘキサデセニレン基、ヘプタデセニレン基、オクタデセニレン基、ノナデセニレン基、イコセニレン基、ヘンイコセニレン基、ドコセニレン基、トリコセニレン基、テトラコセニレン基、ペンタコセニレン基、ヘキサコセニレン基、ヘプタコセニレン基、オクタコセニレン基、ノナコセニレン基、トリアコンテニレン基、ヘントリアコンテニレン基、ドトリアコンテニレン基、トリトリアコンテニレン基、テトラトリアコンテニレン基、ペンタトリアコンテニレン基、ヘキサトリアコンテニレン基、ヘプタトリアコンテニレン基、オクタトリアコンテニレン基等のアルケニレン基(すべての異性体を含む)などが挙げられる。
【0094】
このようなヒドロキシカルボン酸を含む原料として、羊の毛に付着するろう状物質を精製(加水分解等)して得られるラノリン脂肪酸を好ましく使用することができる。
【0095】
部分エステルの構成カルボン酸としてヒドロキシカルボン酸を用いる場合、水酸基を有さないカルボン酸を併用してもよい。なお、本発明でいう「水酸基を有さないカルボン酸」とは、カルボン酸基(−COOH)に含まれる水酸基以外に水酸基を有さないカルボン酸を意味する。
【0096】
なお、部分エステルを構成するカルボン酸がヒドロキシカルボン酸及び水酸基を有さないカルボン酸の双方を含む場合、構成カルボン酸の全量に占めるヒドロキシカルボン酸の割合は5〜80質量%であることが好ましい。ヒドロキシカルボン酸の割合が5質量%未満であると防錆性が不十分となる傾向にある。同様の理由から、当該ヒドロキシカルボン酸の割合は、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。また、当該ヒドロキシカルボン酸の割合が80質量%を超えると、貯蔵安定性及び基油に対する溶解性が不十分となる傾向にある。同様の理由から、当該ヒドロキシカルボン酸の割合は、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以下であることが一層好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
【0097】
水酸基を有さないカルボン酸としては、飽和カルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよい。
【0098】
水酸基を有さないカルボン酸のうち、飽和カルボン酸は直鎖カルボン酸又は分岐カルボン酸のいずれであってもよいが、直鎖カルボン酸、あるいは炭素数1又は2(より好ましくは炭素数1)の分岐鎖を1〜3個(より好ましくは1〜2個、更に好ましくは1個)有する分岐カルボン酸であることが好ましい。
【0099】
水酸基を有さない飽和カルボン酸の炭素数は、さび止め性と貯蔵安定性との両立の点から、2〜40であることが好ましく、6〜30であることがより好ましく、8〜24であることが更に好ましい。
【0100】
水酸基を有さない飽和カルボン酸におけるカルボン酸基の個数は特に制限されず、一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよいが、一塩基酸であることが好ましい。
【0101】
水酸基を有さない飽和カルボン酸の中でも、酸化安定性及び耐ステイン性の点から、ラウリン酸、ステアリン酸などの炭素数10〜16の直鎖飽和カルボン酸が特に好ましい。
【0102】
また、水酸基を有さないカルボン酸のうち、不飽和カルボン酸は直鎖カルボン酸又は分岐のいずれであってもよいが、直鎖カルボン酸、あるいは炭素数1又は2(より好ましくは炭素数1)の分岐鎖を1〜3個(より好ましくは1〜2個、更に好ましくは1個)有する分岐カルボン酸であることが好ましい。
【0103】
また、水酸基を有さないカルボン酸のうち、不飽和カルボン酸の炭素数は、さび止め性と貯蔵安定性との両立の点から、2〜40であることが好ましく、6〜30であることがより好ましく、8〜24であることが更に好ましく、12〜22であることが特に好ましい。
【0104】
水酸基を有さない不飽和カルボン酸におけるカルボン酸基の個数は特に制限されず、一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよいが、一塩基酸であることが好ましい。
【0105】
水酸基を有さない不飽和カルボン酸が有する不飽和結合の個数は特に制限されないが、安定性の点から、1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましく、1〜2個であることが更に好ましく、1個であることが特に好ましい。
【0106】
水酸基を有さない不飽和カルボン酸の中でも、さび止め性及び基油に対する溶解性の点からはオレイン酸などの炭素数18〜22の直鎖不飽和カルボン酸が好ましく、また、酸化安定性、基油に対する溶解性及び耐ステイン性の点からは、イソステアリン酸などの炭素数18〜22の分岐不飽和カルボン酸が好ましく、特にオレイン酸が好ましい。
【0107】
多価アルコールとカルボン酸との部分エステルにおいて、構成カルボン酸に占める不飽和カルボン酸の割合は5〜95質量%であることが好ましい。不飽和カルボン酸の割合を5質量%以上とすることで、さび止め性及び貯蔵安定性を更に向上させることができる。同様の理由から、当該不飽和カルボン酸の割合は、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが一層好ましく、35質量%以上であることが特に好ましい。他方、当該不飽和カルボン酸の割合が95質量%を超えると、大気暴露性及び基油に対する溶解性が不十分となる傾向にある。同様の理由から、当該不飽和カルボン酸の割合は、80質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0108】
なお、「不飽和カルボン酸」には水酸基を有する不飽和カルボン酸及び水酸基を有さない不飽和カルボン酸の双方が包含されるが、不飽和カルボン酸全量に占める水酸基を有さない不飽和カルボン酸の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0109】
また、上記部分エステルが、構成カルボン酸に占める不飽和カルボン酸の割合が5〜95質量%である部分エステルである場合、当該部分エステルのヨウ素価は、5〜75であることが好ましく、10〜60であることがより好ましく、20〜45であることが更に好ましい。部分エステルのヨウ素価が5未満であると、さび止め性及び貯蔵安定性が低下する傾向にある。また、部分エステルのヨウ素価が75を超えると、大気暴露性及び基油に対する溶解性が低下する傾向にある。
【0110】
なお、本発明でいう「ヨウ素価」とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、ヨウ素価、水酸基価及び不ケン化物価」の指示薬滴定法により測定したヨウ素価を意味する。
【0111】
本発明において好ましく用いられる部分エステルの製造方法としては、例えば下記製造方法(i)、(ii)、(iii)が挙げられる。
(i)多価アルコールとヒドロキシカルボン酸(またはヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物)との部分エステルと、多価アルコールと水酸基を有さない不飽和カルボン酸(または水酸基を有さない不飽和カルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物)との部分エステルとを、両者の混合物におけるカルボン酸組成が上記条件を満たすように混合する。
(ii)得られる部分エステルのカルボン酸組成が上記条件を満たすように、水酸基を有するカルボン酸と水酸基を有さない不飽和カルボン酸とを混合し(あるいは、水酸基を有さない飽和カルボン酸を更に混合し)、当該カルボン酸混合物と多価アルコールとの部分エステル化反応を行う。
(iii)ヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さない不飽和カルボン酸との混合物(あるいは、これらのカルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物)との部分エステルに、カルボン酸組成が上記条件を満たすように、多価アルコールとヒドロキシカルボン酸(もしくはヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物)との部分エステル、または多価アルコールと水酸基を有さない不飽和カルボン酸(もしくは水酸基を有さない不飽和カルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物)との部分エステルを混合する。
【0112】
例えば上記製造方法(i)の場合、ヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物としてラノリン脂肪酸を、水酸基を有さない不飽和カルボン酸としてオレイン酸等の炭素数2〜40の不飽和カルボン酸を、それぞれ好ましく用いることができる。この場合、多価アルコールとヒドロキシカルボン酸と水酸基を有さない飽和カルボン酸との混合物(好ましくはラノリン脂肪酸)とで構成される部分エステル(第1の部分エステル)と、多価アルコールと水酸基を有さない不飽和カルボン酸(好ましくはオレイン酸)とで構成される部分エステル(第2の部分エステル)との含有割合は、両者の混合物におけるカルボン酸組成比が上記条件を満たせば特に制限されないが、第1及び第2の部分エステルの合計量に占める第1の部分エステルの割合は、20〜95質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、55〜65質量%であることが特に好ましい。第1の部分エステルの割合が20質量%未満であるか、あるいは95質量%を超える場合、大気暴露性などの錆止め性が不十分となる傾向にある。また、第1の部分エステルの割合が95質量%を超えると、部分エステル全体の基油に対する溶解性が低下し、貯蔵安定性が不十分となる傾向にある。
【0113】
エステル化酸化ワックスとは、酸化ワックスとアルコール類とを反応させ、酸化ワックスが有する酸性基の一部または全部をエステル化させたものをいう。ここで、前記エステル化酸化ワックスの原料として使用される酸化ワックスとしては、上記酸化ワックス塩の説明において例示された酸化ワックス;アルコール類としては、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状の飽和1価アルコール、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状の不飽和1価アルコール、上記エステルの説明において例示された多価アルコール、ラノリンの加水分解により得られるアルコール等、がそれぞれ挙げられる。
【0114】
エステル化ラノリン脂肪酸とは、羊の毛に付着するろう状物質を精製(加水分解等)して得られたラノリン脂肪酸とアルコールとを反応させて得られたものを指す。ここで、エステル化ラノリン脂肪酸の原料として使用されるアルコールとしては、上記のエステル化酸化ワックスの説明において例示されたアルコールが挙げられ、中でも多価アルコールが好ましく、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセリンがより好ましい。
【0115】
アルキル又はアルケニルコハク酸エステルとしては、前記したアルキル又はアルケニルコハク酸と1価アルコール又は2価以上の多価アルコールとのエステルが挙げられる。これらの中でも1価アルコール及び2価アルコールのエステルが好ましい。
【0116】
ここでいう1価アルコールとしては、直鎖状のものでも分岐鎖状のものでもよく、また、飽和アルコールでも不飽和アルコールでもよい。また、1価アルコールの炭素数は特に制限されないが、炭素数8〜18の脂肪族アルコールが好ましく用いられる。
【0117】
また、2価アルコールとしては、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールが好ましく用いられる。アルキレングリコールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘプチレングリコール、オクチレングリコール、ノニレングリコール、デシレングリコール等が挙げられる。また、ポリオキシアルキレングリコールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のある切れの基サイドを単独重合又は共重合したものが挙げられる。なお、ポリオキシアルキレングリコールにおいて、構造の異なるアルキレンオキサイドが共重合している場合、オキシアルキレン基の重合形式は特に制限されず、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであってもよい。また、ポリオキシアルキレングリコールの重合度は特に制限されないが、2〜10のものが好ましく、2〜8のものがより好ましく、2〜6のものが更に好ましい。
【0118】
また、アルキル又はアルケニルコハク酸エステルとしては、アルキル又はアルケニルコハク酸の2個の−COOH基の双方がエステル化されたジエステル(完全エステル)であってもよく、あるいは−COOH基の一方のみがエステル化されたモノエステル(部分エステル)であってもよいが、よりさび止め性に優れる点から、モノエステルであることが好ましい。
【0119】
また、ザルコシン型化合物としては、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化合物が好ましく用いられる。本発明のさび止め油組成物に一般式(3)〜(5)で表されるザルコシン型化合物を含有させることによって、ワックス、ペトロラタム、重質基油などの重質成分を用いずとも、さび止め性を更に向上させることができ、また、そのさび止め性を長期にわたって高水準に維持することができるようになるため、さび止め性及びその長期維持性に優れると共に、持ち出し量の増加の抑制、脱脂性及び噴霧性の点で有利なさび止め油組成物を得ることができる。
−CO−NR−(CH−COOX (3)
(式中、Rは炭素数6〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアルケニル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Xは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルケニル基、nは1〜4の整数を示す。)
[R−CO−NR−(CH−COO]Y (4)
(式中、Rは炭素数6〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアルケニル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Yはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、nは1〜4の整数、mはYがアルカリ金属の場合は1、アルカリ土類金属の場合は2を示す。)
[R−CO−NR−(CH−COO]−Z−(OH)m’ (5)
(式中、Rは炭素数6〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアルケニル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Zは2価以上の多価アルコールの水酸基を除いた残基、mは1以上の整数、m’は0以上の整数、m+m’はZの価数、nは1〜4の整数を示す。)
一般式(3)〜(5)中、Rは炭素数6〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアルケニル基を表す。基油への溶解性などの点から、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基であることが必要であり、炭素数7以上であることが好ましく、炭素数8以上であることがより好ましい。また、貯蔵安定性などの点から、炭素数30以下のアルキル基又はアルケニル基であることが必要であり、炭素数24以下であることが好ましく、炭素数20以下であることがより好ましい。このようなアルキル基及びアルケニル基としては、具体的には例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である)等が挙げられる。
【0120】
一般式(3)〜(5)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。貯蔵安定性などの点から、炭素数4以下のアルキル基であることが必要であり、炭素数3以下であることが好ましく、炭素数2以下であることがより好ましい。一般式(3)〜(5)中、nは1〜4の整数を表す。貯蔵安定性などの点から、4以下の整数であることが必要であり、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
一般式(3)中、Xは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルケニル基を表す。Xで表されるアルキル基又はアルケニル基としては、貯蔵安定性などの点から炭素数30以下であることが必要であり、炭素数20以下であることが好ましく、炭素数10以下であることがより好ましい。このようなアルキル基又はアルケニル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である)等が挙げられる。また、よりさび止め性に優れるなどの点から、アルキル基であることが好ましい。Xとしては、よりさび止め性に優れるなどの点から、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルケニル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であることがさらにより好ましい。
【0121】
一般式(4)中、Yはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表し、具体的には例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。これらの中でも、よりさび止め性に優れる点から、アルカリ土類金属が好ましい。なお、バリウムの場合、人体や生態系に対する安全性が不十分となるおそれがある。一般式(3)中、mはYがアルカリ金属の場合は1を示し、Yがアルカリ土類金属の場合は2を示す。
【0122】
一般式(5)中、Zは2価以上の多価アルコールの水酸基を除いた残基を表す。このような多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、イソプレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール等の2価のアルコール;グリセリン、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール;ポリグリセリン又はこれらの脱水縮合物等が挙げられる。
【0123】
一般式(5)中、mは1以上の整数、m’は0以上の整数であり、かつm+m’はZの価数と同じである。つまり、Zの多価アルコールの水酸基のうち、全てが置換されていても良く、その一部のみが置換されていても良い。
【0124】
上記一般式(3)〜(5)で表されるザルコシン型化合物の中でも、よりさび止め性に優れる点から、一般式(3)および(4)の中から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。また、一般式(3)〜(5)の中から選ばれる1種の化合物のみを単独で使用しても良く、2種以上の化合物の混合物を使用しても良い。
また、アミンとしては、上記酸化ワックス塩の説明において例示されたアミンが挙げられる。
【0125】
また、ホウ素化合物としては、ホウ酸カルシウム等が挙げられる。
【0126】
更に、上記のさび止め添加剤以外に、高級脂肪族アルコール等に代表されるアルコール類;リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、亜リン酸エステル、これらのアミン塩等に代表される(亜)リン酸誘導体類等をさび止め添加剤として含有させることもできる。
【0127】
本発明のさび止め油組成物においては、上記さび止め添加剤のうちの1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。しかしながら、カルボン酸を必須成分として含有する本発明のさび止め油組成物においては、より高いさび止め性が得られることから、スルホン酸塩を用いることが好ましい。更に、スルホン酸塩を用いる場合には、カルボン酸塩、エステル、ザルコシン型化合物、アミン及びホウ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、を更に含有してもよい。更に、スルホン酸塩と組み合わせて用いられるさび止め添加剤としては、エステル及びカルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エステルとカルボン酸塩とを組み合わせて用いることがより好ましい。また、ここでいうエステルとしては、多価アルコールの部分エステル及びアルケニルコハク酸の部分エステルが好ましく、カルボン酸としては、脂肪酸、ダイマー酸及びアルケニルコハク酸が好ましく、カルボン酸塩としては、脂肪酸塩及びラノリン脂肪酸塩が好ましい。
【0128】
本発明のさび止め組成物において、酸化ワックス及びカルボン酸以外のさび止め添加剤の含有量は、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%である。さび止め添加剤の含有量が前記下限値未満であると、その添加によるさび止め性の向上効果が不十分となる傾向にある。また、当該さび止め添加剤の含有量が40質量%を超えても、含有量に見合うさび止め性の向上効果が得られない傾向にある。
【0129】
また、発明のさび止め油組成物においては、必要に応じてさらに、他の添加剤を含有させてもよい。ここで、本発明において使用される他の添加剤としては、具体的には例えば、酸性雰囲気での暴露さび止め性向上効果が著しいパラフィンワックス;プレス成形性向上効果あるいは潤滑性向上効果が著しい硫化油脂、硫化エステル、長鎖アルキル亜鉛ジチオホスフェート、トリクレジルフォスフェート等のリン酸エステル、豚脂等の油脂、脂肪酸、高級アルコール、炭酸カルシウム、ホウ酸カリウム;酸化防止性能を向上させるためのフェノール系またはアミン系酸化防止剤;腐食防止性能を向上させるための腐食防止剤(ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、チアジアゾール、ベンゾチアゾール等);ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の湿潤剤;アクリルポリマー、パラフィンワックス、マイクロワックス、スラックワックス、ポリオレフィンワックス、ペトロラタム等の造膜剤;メチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等の消泡剤;水溶性腐敗因子を除去するための水及び界面活性剤、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0130】
また、本発明のさび止め油組成物の塩基価は特に制限されないが、さび止め性の点から、当該塩基価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは1.5mgKOH/g以上、更に好ましくは2mgKOH/g以上、特に好ましくは3mgKOH/g以上である。また、貯蔵安定性の点から、当該塩基価は、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下であり、特に好ましくは8mgKOH/gである。なお、ここでいう塩基価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」の6.に準拠した塩酸法により測定される塩基価[mgKOH/g]をいう。
【0131】
また、本発明のさび止め油組成物の40℃における動粘度は特に制限されないが、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは2mm/s以上、更に好ましくは2.5mm/s以上、一層好ましくは3mm/s以上、特に好ましくは3.5mm/s以上である。さび止め油組成物の40℃における動粘度が前記下限値未満の場合、塗膜の油膜切れが起こりやすくなり、さび止め性が不十分となる傾向にある。また、本発明のさび止め油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは50mm/s以下、より好ましくは40mm/s以下、更に好ましくは30mm/s以下である。さび止め油組成物の40℃における動粘度が前記上限値を超えると、作業性が低下する傾向にある。
【0132】
なお、本発明のさび止め組成物の粘性が高い場合であっても、加熱によりその動粘度を所定値以下(好ましくは50mm/s以下)とした後で被処理体に塗布することによって、当該組成物を被処理体に容易に且つ確実に塗布することができる。しかしながら、さび止め油組成物の40℃における動粘度が1000mm/sを超える場合、低粘度化するためにはより高温での加熱が必要となるため、さび止め油の劣化が促進されてその性能が損なわれてしまう。そのため、本発明のさび止め油組成物の40℃における動粘度は1000mm/s以下であることが好ましい。
【0133】
上記構成を有する本発明のさび止め油組成物は、さび止め性、脱脂性及び貯蔵安定性の全てを高水準でバランスよく達成できるものであり、様々な金属製部材のさび止め油として好適に用いることができる。被処理体である金属製部材は特に制限されず、具体的には、自動車ボディや電気製品ボディとなる冷延鋼板、熱延鋼板、高張力後半、亜鉛めっき鋼板などの表面処理鋼板、ブリキ用原板、アルミニウム合金板、マグネシウム合金板などの金属製板材、更には転がり軸受、テーパー転がり軸受、ニードル軸受等の軸受部品、建築用鋼材、精密部品等が挙げられる。
【0134】
このような金属製部材に対するさび止め油としては、金属製部材の加工工程等の過程で用いられる中間さび止め油、出荷時のさび止めのために用いられる出荷さび止め油、プレス加工に供する前の異物除去又は金属板製造メーカーにおいて出荷に先立つ異物除去のための洗浄工程で用いられる洗浄さび止め油などがあるが、本発明のさび止め油組成物は上記のいずれの用途にも使用することができる。
【0135】
また、本発明のさび止め油組成物を被処理体に塗布する方法は特に制限されず、例えば、スプレー、滴下、フェルト材等による転写、静電塗油等の方法により金属製部材に塗布することができる。これらの塗布法の中でも、スプレー法は、微細な霧状で塗布することにより油膜厚さを均一とできるので好ましい。スプレー法を適用する場合の塗布装置としては、さび止め油組成物を霧化できるものであれば特に制限されず、例えばエアースプレータイプ、エアレススプレータイプ、ホットメルトタイプなどのいずれも適用可能である。
【0136】
さらに、塗布工程においては、過剰のさび止め油組成物が塗布された後に、遠心分離器を用いたドレイン切り工程、あるいは長時間放置によるドレイン切り工程を設けることが好ましい。
【0137】
また、本発明のさび止め油組成物を洗浄さび止め油組成物として用いる場合には、金属製部材の表面に、大過剰量の本発明のさび止め油組成物を、スプレー、シャワー、浸漬塗布等により給油することによって良好な洗浄およびその後のさびの防止を行うことができる。さらに、必要に応じて、上記の金属加工工程後にロールブラシ等による表面清掃を併せて行うと、異物除去の効率を高めることができる。さらにまた、本発明のさび止め油組成物を用いて洗浄を行う際には、リンガーロール等による金属製部材の表面処理を併せて行い、金属製部材の表面の付着油量を調節することが好ましい。
【0138】
本発明のさび止め油組成物の塗布方法が上記のいずれであっても、金属製部材上に過剰量塗布されたさび止め油組成物を回収、循環、再使用することが好ましい。なお、さび止め油組成物の循環に際しては、循環系中に混入する異物の除去を併せて行うことが好ましい。具体的には例えば、本発明のさび止め油組成物の循環経路の途中、好ましくはさび止め油組成物を金属製部材に向けて噴出させる直前に、フィルターを設けて異物の除去を行うことができる。また、本発明のさび止め油組成物を貯留するタンクの底部に磁石を設け、磁力により磨耗分等の異物を吸着させて除去することもできる。なお、このような工程において再使用される本発明のさび止め油組成物の性能は、前工程油の混入などにより低下することが懸念される。したがって、本発明のさび止め油組成物を再使用する際には、使用油に対して定期的に動粘度や密度の測定、銅板腐食試験、さび止め性試験などを行ってその性状を管理し、必要に応じて更油、ドレイン廃棄、タンク清掃、浄油操作等を行うことが好ましい。さらに、廃棄した油剤については、その油剤をそのまま、あるいは溶剤又は低粘度基油で希釈し、廃棄前に使用されていたラインに比べてさび止め油組成物への要求性能が低いラインに使用することによって、総使用油量の低減を図ることができる。さらにまた、本発明のさび止め油組成物をタンクに貯留する際には、タンク内の該組成物の減少量に応じて補給することが好ましい。その場合、必ずしも初期に充填したさび止め油組成物と同一の組成でなく、その時々に応じて強化したい性能を引き出すための添加剤を増量した組成物などを補給してもよい。あるいは逆に、高粘度基油の含有量を低減する等の方法により低粘度化させた組成物を補給して、さび止め油組成物の洗浄能力を維持してもよい。
【0139】
また、本発明のさび止め油組成物を金属板製造メーカーにおいて出荷に先立つ異物除去のための洗浄工程に用いる場合、金属板を、洗浄工程の後に直ちにコイル状に巻き取り、あるいはシート材として重ねて出荷することが可能である。すなわち、本発明のさび止め油組成物は洗浄さび止め油兼出荷さび止め油として使用できる。この方法によれば、異物の付着量が少なく、かつプレス加工においてプレス工程の直前に洗浄さび止め油による洗浄工程が行われた際にも容易に且つ確実に洗浄できるというメリットが有る。なお、当然のことながら、鋼板製造場所において洗浄さび止め油により洗浄する工程に続いて、再度さび止め油を塗布する工程を設け、2段階でさび止め処理を行なってもよい。
【0140】
上記した本発明の炭化水素油は、錆止め油の基油として用いられるものであるが、その他の用途にも使用することができる。その他の用途としては具体的には、2サイクルエンジン油、洗浄剤、各種インクや塗料の溶剤、クリーニング用溶剤、エアゾール用溶剤、防腐剤・殺虫剤・農薬用溶剤、感圧紙用溶剤、界面活性剤用希釈剤、ワックス・クリーナ・ポリッシュ用希釈剤、自動車アンダーコート剤、なっ染用溶剤、オルガノゾル、顔料分散剤、ブランケット洗浄剤、半導体洗浄剤、めっき用前処理剤、各種潤滑油、タイヤ製造、接着剤、離型剤、ポリオレフィン反応溶剤、家庭用クリーナ、NAD塗料、鉱石浮遊選鉱、印刷インキ洗浄液、車の一時保護塗料(ワックスを主成分とする)の除去剤、木材防腐剤、除草剤、ノンカーボン紙、水処理剤、金属抽出用希釈剤、温室用CO2製造、金属深傷剤などが挙げられる。本発明の炭化水素油は、臭気が少なく作業環境を改善でき、またこれを使用する箇所の周辺にあるゴムやプラスチック製の部品などに対する悪影響が少ないなどの特徴を有する。
【実施例】
【0141】
[実施例、比較例]
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
実施例、比較例においては、表1の基油を用いて、表2記載の配合割合でさび止め油組成物を調製した。各さび止め油組成物の調製に用いた成分は、以下の通りである。
(1)使用する基油の製法
(FT合成油の水素化精製油、ワックス水素化分解油、及び基油1、2、6、7)
1) 天然ガスを原料とするFT合成炭化水素油(沸点150℃以上の炭化水素の含有量:82質量%、沸点360℃以上の炭化水素の含有量:41質量%)を蒸留塔で、沸点150℃以下の軽質留分と、沸点150〜360℃の中間留分と、塔底残渣重質ワックス分(FTワックス:沸点360℃以上の留分に相当)とに分離した。
2) 1)で分離された中間留分は、水素化精製触媒(Pt:担体に対し0.8質量%、USYゼオライト/シリカアルミナ/アルミナバインダー:重量比3/57/40)、水素気流下、反応温度:311℃、水素圧力:3.0MPa、LHSV:2.0h−1、水素/油比:340NL/Lで水素化精製処理を行った。
3) 2)で得られた水素化精製油を蒸留により150〜250℃留分(灯油留分1)及び250〜360℃留分(軽油留分1)に分留した。
4) 1)で得られたFTワックスは、水素化分解触媒(Pt:担体に対し0.8質量%、USYゼオライト/シリカアルミナ/アルミナバインダー:重量比3/57/40)を用い、水素気流下、反応温度:326℃、水素圧力:4.0MPa、LHSV:2.0h−1、水素/油比:680NL/Lで水素化分解を行った。
5) 4)で得られた水素化分解油を蒸留により150〜250℃留分(灯油留分2)及び250〜360℃留分(軽油留分2)に分留した。
6) 3)及び5)で得られた軽油留分1及び2を51:49(質量比)で混合し、希基油1を得た。基油1の性状を表1に示す。
7) 3)及び5)で得られた灯油留分1及び2を63:37(質量比)で混合し、基油2を得た。基油2の性状を表1に示す。
8) 3)及び5)で得られた軽油留分1及び2を57:43(質量比)で混合し、希基油6を得た。基油6の性状を表1に示す。
9) 3)及び5)で得られた灯油留分1及び2を49:51(質量比)で混合し、基油7を得た。基油7の性状を表1に示す。
(基油3〜5)
1) 基油3は一般的な水素化精製鉱油を用いた。基油3の性状を表1に示す。
2) 基油4は一般的な水素化精製鉱油を用いた。基油4の性状を表1に示す。
3) 基油5は一般的な水素化精製鉱油を用いた。基油5の性状を表1に示す。
【0142】
【表1】

【0143】
実施例及び比較例においては、それぞれ表1に示す基油及び以下に示す添加剤を用いて、表2に示す組成を有するさび止め油組成物を調製した。
【0144】
さび止め油に配合した表2記載の添加剤は以下のとおりである。
(添加剤)
A1:アルキルベンゼンカルシウムスルホネート
A2:酸化ワックスのカルシウム塩
A3:多価アルコールのエステル
B1:ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
【0145】
樹脂相性試験
樹脂との相性を以下の方法により試験した。
試験方法:300mlの試料油中に評価する樹脂(50mm×50mm×5mm)を完全に浸漬する。その後、25±3℃で30日間保持し、体積変化率を測定する。
評価方法:体積変化率が10%未満を○、10%以上を×として評価する。
評価対象樹脂の種類:ポリエチレン樹脂、NBRゴム
試験:
そのほか、湿潤試験 JIS K2246 準拠および塩水噴霧試験 JIS K2246 準拠を行った。
結果はいずれも表2に示す。
【0146】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
15℃における密度が0.7〜0.8g/cmであり、n−パラフィン分が20〜90%、芳香族分が0〜3%、ナフテン分が0〜20%である炭化水素油を含有するさび止め油組成物。

【公開番号】特開2007−270323(P2007−270323A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100769(P2006−100769)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】