説明

し渣搬出機の長物除去装置

【課題】除塵機によって掻き揚げられたし渣を円滑に搬出するために、し渣に含まれる長物を除去することができるし渣搬出機の長物除去装置を提供する。
【解決手段】本発明の長物除去装置10は、コンベア20によって搬送されてきた長物32が乗載されるローラ34と、長物32の搬送に伴ってローラ34が長物32の乗載位置から排出除去位置に移動するようにローラ34を振り子状に支持する一対のローラ支持部36、36とから構成される。コンベア20によって搬送されてきた長物32は、コンベア20の下流端位置から前方に突出されていきローラ34に乗載する。そして、長物32は、コンベア20の搬送力によってローラ34上を滑りながら継続して前方に突出されていき、長物32の重心位置Gがローラ34を超えた際に、長物32の重力によってローラ34が振り子状に揺動し、排出除去位置に移動する。ローラ34が揺動動作を行うと、長物32がローラ34に沿って滑落し、コンベア22の外側に配置されたダストシュート54に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈砂池の除塵機によって掻き揚げられたし渣を貯留ホッパに向けて搬出するとともに、その搬出中のし渣に含まれた角材等の長物を除去するし渣搬出機の長物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水や泥水を処理する下水処理場の沈砂池には、特許文献1等に記載の如く、し渣や沈砂を掻き揚げる除塵機が設置され、この除塵機のレーキによって掻き揚げられたし渣や沈砂は、貯留ホッパに一時貯留されて汚水が抜かれた後、トラックに搬送されて埋め立て処理される。
【0003】
この際、沈砂池及び除塵機は通常、下水処理場の地下室に設置されるとともに貯留ホッパは地上に設置されるため、し渣や沈砂は、複数のコンベア及びトラフ型傾斜コンベア等を使用して除塵機から貯留ホッパに向けて段階的に上昇搬送される。
【特許文献1】特開平8−113929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、除塵機のレーキによって掻き揚げられた掻揚物中には、し渣の他に流木や角材等の長物が含まれる。この長物は、フラットなコンベアの場合には問題無く搬送されるが、フラットなコンベアからトラフ型傾斜コンベアに乗り継いだ際に、トラフ内にしっかりと納まっていなければ、傾斜部にさしかかった際にトラフから滑落する。滑落した長物は、トラフ型傾斜コンベアのコーナ軸のスプロケットとカバーとの間に堆積することが多々確認され、また、この位置での堆積により、搬送の過負荷やトラフの破損等の不具合が発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、除塵機によって掻き揚げられたし渣を円滑に搬出するために、し渣に含まれる長物を除去することができるし渣搬出機の長物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、沈砂池の除塵機によって掻き揚げられたし渣を、複数のコンベアを介して段階的に上昇搬送させて貯留ホッパに搬出するし渣搬出機において、前記し渣搬出機の前記コンベアには、前記し渣中に含まれる角材等の長物に当接し、該長物をコンベアから排出方向に案内して除去する長物除去装置が設けられていることを特徴とする。
【0007】
不具合の原因となる長物は、トラフ型傾斜コンベアの上流側で除去する必要がある。そこで、請求項1によれば、コンベアによってし渣と共に搬送されてきた長物を、トラフ型傾斜コンベアの上流側に設置した長物除去装置によって除去する。すなわち、長物は、長物に当接されると、長物除去装置によって排出方向に案内されてコンベアから除去される。これにより、本発明によれば、し渣に含まれる長物を除去することができるので、トラフ型傾斜コンベアに生じる不具合を防止できる。
【0008】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記長物除去装置は、コンベアの乗り継ぎ部である隣接する2つのコンベアの間に設置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、上流側のコンベアからし渣と共に搬送されてきた長物は、上流側のコンベアから下流側のコンベアに乗り継ぐ直前で長物除去装置により除去される。よって、下流のコンベアにはし渣のみ移載され、し渣のみが貯留ホッパに搬出される。
【0010】
本願請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記長物除去装置は、前記コンベアによって搬送されてきた長物が乗載されるローラと、前記長物の搬送に伴って前記ローラが長物の乗載位置から排出除去位置に移動するように該ローラを振り子状に支持するローラ支持部とから構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、コンベアによって搬送されてきた長物は、乗載位置においてローラに乗載し、コンベアの搬送力によってローラ上を滑る。そして、長物の重心位置がローラを超えた際に、長物の重力によってローラが振り子状に排出除去位置に移動する。このローラの揺動動作によって、長物をコンベアから除去することができる。すなわち、長物除去装置は、ローラを振り子状に揺動自在に支持しただけの構造なので、簡易的な構造で長物をコンベアから除去できる。
【0012】
除塵機のレーキによって掻き揚げられた長尺棒等の長物(例えば、500mm以上の長物)は、上流側コンベアに落下し、下流側コンベアとの乗り継ぎ部において長物除去装置により上流側コンベアから取り除かれる。すなわち長物は、上流側コンベアの下流端において、ローラ支持部により振り子状に揺動自在に支持されたローラに乗載し、ローラの揺動により下流側コンベアへ落下することなく、下流側コンベアの外側にある排出除去位置に落下する。一方、搬送に問題のない短い物は、ローラに乗載しないので、し渣とと共に下流側のコンベアに落下し、貯留ホッパに向けて搬送される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るし渣搬出機の長物除去装置によれば、コンベアによってし渣と共に搬送されてきた長物は、長物除去装置に当接され、この長物除去装置により排出方向に案内されてコンベアから除去される。これにより、本発明によれば、し渣に含まれる長物を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下添付図面に従って、本発明に係るし渣搬出機の長物除去装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0015】
図1は、実施の形態に係る長物除去装置10が設置された下水処理場のし渣処理設備12の平面図である。同図に示すし渣処理設備12は、下水処理場の地下室に設置された雨水自動除塵機14、16及び汚水自動除塵機18を有し、これらの除塵機14、16、18の各レーキによって掻き揚げられたし渣を、コンベア20、22、24、26及びトラフ型傾斜コンベア28によって段階的に上昇搬送し、地上に設置された貯留ホッパ30に搬出する設備である。
【0016】
コンベア20は、各除塵機14、16、28に沿ってフラットに配設され、各除塵機14、16、28のレーキによって掻き揚げられたし渣を搬送する上流側のコンベアである。このコンベア20によって搬送されたし渣は、コンベア20の下流端(乗り継ぎ位置)からコンベア22に移載される。コンベア22は図2に示すようにフラットに配設され、このコンベア22によって搬送されたし渣は、コンベア22の下流端から傾斜コンベア24に移載される。また、傾斜コンベア24によって上昇搬送されたし渣は、傾斜コンベア24の下流端から、図3のフラットなコンベア26に移載され、この後、コンベア26の下流端からトラフ型傾斜コンベア28に移載される。そして、し渣はトラフ型傾斜コンベア28によって上昇搬送され、地上に設置された貯留ホッパ30に搬出される。
【0017】
ところで、コンベア20によって搬送される搬送物にはし渣の他、図4に示す流木、角材等の長物32が存在する。この長物32を除去することなく貯留ホッパ30に向けて搬送した場合には、図3のコンベア26からトラフ型傾斜コンベア28に乗り継いだ際に、長物32がトラフ内に納まっていなければ、トラフから滑落することに起因する搬送過負荷やトラフ破損等の不具合が発生する。よって、不具合の原因となる長物32は、トラフ型傾斜コンベア28の上流側で除去する必要がある。
【0018】
そこで、実施の形態のし渣処理設備12によれば、コンベア20からコンベア22への乗り継ぎ部に長物除去装置10を設置し、この長物除去装置10によって長物32を、コンベア20からコンベア22に移載される直前で、コンベア22の外側に除去するように構成している。
【0019】
長物除去装置10は、コンベア20によって搬送されてきた長物32が乗載されるローラ34と、長物32の搬送に伴ってローラ34が長物32の乗載位置(図5(A)参照)から排出除去位置(図5(B)参照)に移動するようにローラ34を振り子状に支持する一対のローラ支持部36、36とから構成されている。
【0020】
ローラ支持部36は、コンベア20の下流端位置において、コンベア20の両側でコンベア20と平行に配設された一対の梁38、38上に設置される。また、ローラ支持部36は、一対の梁38、38上に取り付けられる脚部40、40を有している。これらの脚部40、40の上端部に、アーム42、42の上端部の軸44、44がそれぞれ回動自在に支持され、アーム42、42の下端部の軸受部46にローラ34が回転自在に支持されている。これにより、ローラ34は、コンベア20の下流端位置から所定量離間して配置されるとともにコンベア20の搬送方向に対して直交方向に配置される。また、ローラ34は、アーム42、42の軸44、44を中心に振り子状に揺動自在に支持される。
【0021】
なお、脚部40の下部取付部41には、コンベア20の搬送方向と同方向に長孔48が形成され、この長孔48に挿通されたボルト50によって、脚部40が梁38に固定される。よって、ボルト50を緩めれば、脚部40を長孔48に沿ってコンベア20の搬送方向に前後移動させることができるので、コンベア20の下流端位置に対するローラ34の離間距離を調整することができる。また、アーム42には、軸受部46の他に軸受部52が設けられ、これらの軸受部52、52にローラ34を支持させることにより、コンベア20に対するローラ34の高さ位置を調整することができる。このようなローラ34の位置調整は、除去対象の長物32の長さ及び大きさが変更される度に行われる。
【0022】
次に、前記の如く構成された長物除去装置10の作用について説明する。
【0023】
各除塵機14、16、18のレーキによって掻き揚げられた長尺棒等の長物(例えば、500mm以上の長物)32は、コンベア20に落下し、コンベア20からコンベア22に向けて搬送される。
【0024】
コンベア20によって搬送されてきた長物32は、コンベア20の下流端位置から前方に突出されていき、図5(A)で示した乗載位置においてローラ34に乗載する。そして、長物32は、コンベア20の搬送力によってローラ34上を滑りながら継続して前方に突出されていき、長物32の重心位置Gがローラ34を超えた際に、長物32の重力によってローラ34が振り子状に揺動し、図5(B)に示した排出除去位置に移動する。ローラ34が揺動動作を行うことにより、長物32がローラ34に沿って滑落し、コンベア22に移載されることなく、コンベア22の外側に配置されたダストシュート54に排出される。よって、不具合の原因となる長物32をトラフ型傾斜コンベア28の上流側で除去することができる。
【0025】
また、実施の形態の長物除去装置10は、ローラ34を振り子状に揺動自在に支持しただけの構造なので、簡易的な構造で長物32をコンベア20から除去できる。
【0026】
更に、実施の形態では、長物除去装置10をコンベア20の乗り継ぎ部である隣接する2つのコンベア20、22の間に設置したので、下流のコンベア22にはし渣のみ移載され、し渣のみが貯留ホッパ30に搬出される。
【0027】
なお、実施の形態では、長物除去装置10としてローラ34を揺動自在に支持した構造を例示したが、これに限定されるものではなく、長物32に当接し、長物32をコンベア20から排出方向に案内して除去する構造の長物除去装置であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態に係る長物除去装置が設置された下水処理場のし渣処理設備の平面図
【図2】図1に示したし渣処理設備のコンベアを示した説明図
【図3】図1に示したし渣処理設備のトラフ型傾斜コンベアを示した説明図
【図4】実施の形態に係る長物除去装置の構造を示した全体斜視図
【図5】実施の形態に係る長物除去装置の動作説明図
【符号の説明】
【0029】
10…長物除去装置、12…し渣処理設備、14、16…雨水自動除塵機、18…汚水自動除塵機、20、22、24、26…コンベア、28…トラフ型傾斜コンベア、30…貯留ホッパ、32…長物、34…ローラ、36…ローラ支持部、54…ダストシュート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈砂池の除塵機によって掻き揚げられたし渣を、複数のコンベアを介して段階的に上昇搬送させて貯留ホッパに搬出するし渣搬出機において、
前記し渣搬出機の前記コンベアには、前記し渣中に含まれる角材等の長物に当接し、該長物をコンベアから排出方向に案内して除去する長物除去装置が設けられていることを特徴とするし渣搬出機の長物除去装置。
【請求項2】
前記長物除去装置は、コンベアの乗り継ぎ部である隣接する2つのコンベアの間に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のし渣搬出機の長物除去装置。
【請求項3】
前記長物除去装置は、前記コンベアによって搬送されてきた長物が乗載されるローラと、前記長物の搬送に伴って前記ローラが長物の乗載位置から排出除去位置に移動するように該ローラを振り子状に支持するローラ支持部とから構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のし渣搬出機の長物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−136305(P2007−136305A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331875(P2005−331875)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(591102970)日立プラントテクノ株式会社 (5)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】