説明

すべり止め付きマット

【課題】原材料を余分に使うことなく、簡易に製造でき、軽量であり、しかもすべり止め機能も十分に得られるすべり止め付きマットを提供する。
【解決手段】すべり止めマットは、目付量30〜1000gのポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維の低融点繊維層と、目付量80〜1000gの低融点ポリエステル繊維を少量含む通常融点のポリエステル繊維の基材層とを重ね合わせ、低融点繊維層の側から熱風を送風することにより該低融点繊維層だけを融解し毛玉状態に冷却固化し、基材層と毛玉状態のすべり止め層が一体化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すべり止め付きマットであって、特には自動車フロアに敷かれるオプションマットに適したものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアは、通常、ボディの鉄板の上に不織布の下敷きが敷かれ、その上に内装マットでカバーされる。多くの場合、任意的ではあるがオプションマットが敷かれる。かかるオプションマットは使い心地の良さをえるため保温性、感触、通気性、吸音性などとともに軽量であることが求められる。同時に内装マットの上に敷かれる都合上、マット間の滑りが問題となる。内装マットとオプションマットの間に網を挟み込んで滑止めにしていることも多い。しかし、網は挟み込む際にたくし上げられたり、折れたりして、うまく挟むのに手間がかかる。
【0003】
通常のオプションマットは、不織布等にすべり止めの樹脂加工等を施しているものか、塩ビ、ゴム等の樹脂バッキングが主流であり、中には発砲ラバーや毛焼きタイプもある。特許文献1には、自動車のオプションマットとしても使用可能な通気遮水マットが記載されている。このマットは、不織布の裏打ち面に粒状樹脂を付着させた構造となっている。しかしながら、このマットは、通気、遮水といった機能を重視しているため、構成が複雑であり、製造にも手間がかかる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−261798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のマットですべり止め機能を備えたものは、構造が複雑であるため、重量がかさみやすく、製造にも手間がかかり高コストになるという問題点が指摘されている。本発明は、従来の問題点を解消するためになされたもので、原材料を余分に使うことなく、簡易に製造でき、軽量であり、しかもすべり止め機能も十分に得られるすべり止め付きマット、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に係る発明のマットは、目付量30〜1000gのポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維の低融点繊維層と、目付量80〜1000gの低融点ポリエステル繊維を少量含む通常融点のポリエステル繊維の基材層とを重ね合わせ、低融点繊維層の側から熱風を送風することにより該低融点繊維層だけを融解し毛玉状態に冷却固化し、基材層と毛玉状態のすべり止め層が一体化している。
【0007】
また、前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項2に係る発明のすべり止め付きマットの製造方法は、低融点ポリエステル繊維を少量含む通常融点のポリエステル繊維ウェブの上に、ポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維の低融点繊維ウェブを重ね合わせてからニードルパンチ加工を施して、該ポリエステル繊維ウェブの融点温度と低融点繊維の融点温度の中間温度の熱風を該低融点繊維ウェブの側から送風することにより、該低融点繊維を融解し冷却固化する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマットは、すべり止め機能を付加するための構造が単純であるため、従来の塩化ビニル樹脂を使用して重量構造によるすべり止め機能を付加したものに較べ、軽量化が可能となった。また原料の繊維素材を単一素材にしてあるので、安価でコストダウンになると同時に、リサイクル、再生が容易であり、再生材料の使用率を上げることができる。
【0009】
また、本発明のマットの製造方法によれば、作業工程が単純であるため、すべり止め付きマットを高効率に、安価に製造できる。本発明の方法は、溶媒を使用しないため環境に対する負荷がないし、溶媒乾燥のためのエネルギ消費もない。
【0010】
本発明のすべり止めマットは、自動車のオプションマットみならず、部屋敷きマット、玄関マット、トイレマット、キッチンマット、バスマット、航空機用マットなど、あらゆる分野に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のすべり止めマットは、図1(断面図)に示すとおり、ポリエステル繊維の基材層1と、毛玉状態3のすべり止め層2が一体化している。このすべり止め層2は、図2(マットの裏面図)に示すとおり、低融繊維がところどころ毛玉3になり、各毛玉3の間は繊維4が部分的に残るが、溶融冷却固化した薄膜5でほぼ埋められている。ポリエステル繊維の基材層1は、少量含まれた低融点ポリエステル繊維の溶融固化により通常融点のポリエステル繊維が固められた状態になっている。
【0012】
本発明のすべり止めマットは、以下のように製造される。
【0013】
所定目付量の低融点ポリエステル繊維を少量含む通常融点のポリエステル繊維ウェブの上に、ポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維の低融点繊維ウェブを重ね合わせてからニードルパンチ加工を施す。これを走行させておき、低融点繊維ウェブの側から熱風を送る。低融点繊維ウェブに到達してこれを融解する。融解したポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維は、毛玉状、薄膜状になる。そしてウェブの走行で室温の冷風ゾーンに入ると毛玉状、薄膜状のポリエチレンおよびポリプロピレンは凝固する。以上の工程ですべり止めマットが完成する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明のすべり止めマットを試作した実施例を詳細に説明する。さらに試作したすべり止めマットの性能評価を説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0015】
(実施例)
ポリエチレン繊維とポリプロピレン繊維を重量比90:10で混綿した目付230g/mの低融点繊維ウェブと、低融点ポリエステル繊維と通常融点のポリエステル繊維を重量比10:90で混綿した目付480g/mのウェブとを重ね合わせて、以下の条件でポリエステル繊維側からニードルパンチ加工を施した。
【0016】
先ず1号ロッカーで40番手の針で基層面を針深±13.0mm、突密度65本/cmでパンチングした。次いで2号ロッカーで36番手、40番手の針で針深±7.0mm、突密度82本/cmでパンチングしてニードルパンチ布を得た。
【0017】
このニードルパンチ布を、速度6.0m/minで給送しつつ、サクションにて設定温度190℃で低融点繊維側から熱風を送った。加熱により融解したポリエチレンおよびポリプロピレンは、毛玉状、薄膜状になり、ウェブの走行で室温の冷風ゾーンに入ると毛玉状、薄膜状のまま凝固する。ポリエステル繊維は、少量の低融点ポリエステル繊維が溶融した後固化して固められた状態になった。そして、ポリエステル繊維の基材層に毛玉の付いたすべり止め層が形成された。
【0018】
(滑止め性能テスト)
A4サイズ(210mm×290mm)に裁断した試作のすべり止めマットのすべり止め層を下面にして指定カーペットにのせ、基材層の上に8kg(200mm×200mm)の荷重を加え、滑らせた時の最大荷重を測定する。試験結果は指定カーペットの順目及び逆目に従い5回測定し、順目及び逆目それぞれの平均値で表す。
【0019】
(通気性能テスト)
180mm×180mmに裁断した試料を作成した。この試料をフラジール型通気試験器の円筒のフランジに取り付け、クランプにて留めた。加減抵抗器によって傾斜型気圧計が水柱12.7mmの圧力を示すように吸引ファンを調整し、そのときの垂直型気圧計の示す圧力と、空気孔の径から試料を通過する空気の量(cm/cm/Sec)を求めた。
【0020】
試作のすべり止めマットの滑止め性能テスト、通気性能テストの結果を表1に示してある。
【0021】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用するすべり止めマットの断面図である。
【0023】
【図2】本発明を適用するすべり止めマットの裏面図ある。
【符号の説明】
【0024】
1は基材層、2はすべり止め層、3は毛玉、4は繊維、5は薄膜である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目付量30〜1000gのポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維の低融点繊維層と、目付量80〜1000gの低融点ポリエステル繊維を少量含む通常融点のポリエステル繊維の基材層とを重ね合わせ、低融点繊維層の側から熱風を送風することにより該低融点繊維層だけを融解し毛玉状態に冷却固化し、基材層と毛玉状態のすべり止め層が一体化していることを特徴とするマット。
【請求項2】
低融点ポリエステル繊維を少量含む通常融点のポリエステル繊維ウェブの上に、ポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維の低融点繊維ウェブを重ね合わせてからニードルパンチ加工を施して、該ポリエステル繊維ウェブの融点温度と低融点繊維の融点温度の中間温度の熱風を該低融点繊維ウェブの側から送風することにより、該低融点繊維を融解し冷却固化することを特徴とするすべり止め付きマットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−325845(P2007−325845A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161104(P2006−161104)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(504240326)トーア紡マテリアル株式会社 (9)
【Fターム(参考)】