その場液体活性化皮膜コーティング錠およびその製法
錠剤および他の物は、錠剤の中に、活性化量の液体と接触したときに活性化される皮膜形成性ポリマーを含めることによって、皮膜コーティングされる。皮膜形成性ポリマー(たとえばセルロースエーテル)を、錠剤の他の成分と均一に混合し、任意の所望の形に成形し、従来のコーティング装置の中に仕込み、活性化量の流体(たとえば水、アルコールなど)を噴霧しまたはその泡で覆い、そして乾燥する。このコーティング方法は、噴霧ノズル目詰り、不適切なコーティング流体の粘度および適正にコーティング流体を霧にすることができないなどの潜在的な問題を解消する。このコーティング方法は錠剤の質量または厚さをあまり増加させない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膜コーティングに関する。1つの態様において、本発明は錠剤のための皮膜コーティングに関し、別の態様において、本発明は錠剤の上に皮膜コーティングを形成する方法に関する。さらに別の態様において、本発明は皮膜コーティングを含む錠剤および他の物に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤または類似の品(たとえば穀物食物形状、菓子類など)をコーティングする従来の方法は、コーティングドラムまたは類似の装置内で錠剤の核を混転させまたは他の方法で動かしながら、錠剤の核の上にコーティング(典型的には皮膜形成性ポリマー)を噴霧または起泡することを含む。この方法は、特に、キャリヤー溶媒(たとえば水、アルコールなど)中のコーティングポリマーの混合物を形成すること、その混合物を錠剤表面に適用すること、およびそのコーティングされた錠剤を乾燥することを伴う。この方法は、よく知られており、たとえば、米国特許第3,981,984号明細書、米国特許第4,828,841号明細書および他の多くの類似する教示に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3981984号明細書
【特許文献2】米国特許第4828841号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コーティング方法がポリマーコーティング液体の使用を省くことができたならば、コーティングされた錠剤を製造する費用および時間はかなり削減することができるかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施態様において、本発明は、核および皮膜コーティングを含む製品であって、核および皮膜コーティングがそれぞれ他方と本質的に同じ化学組成を有することを特徴とする。核は、典型的には、粉末混合物であるが、それが皮膜形成性ポリマーを含む限りにおいて、それは実際上いかなるものをも含むことができる。皮膜コーティングは、典型的には、核を完全に覆う本質的に均一な厚さであるが、皮膜コーティングの厚さは核のまわりで変わってもよく、また皮膜コーティングは核の全表面積を覆っていなくてもよい。その製品はいかなる大きさおよび形であってもよく、それは食用でも食べられなくてもよく、またそれはさらに処理(たとえば、印刷、包装など)されてもよいし、処理されなくてもよい。
【0006】
別の実施態様において、本発明は、核および皮膜コーティングを含む製品を製造する方法であって、該方法は、(i)皮膜形成性ポリマーを含む物質から核を調製する工程、および(ii)核を活性化流体と接触させることによって核の中の皮膜形成性ポリマーを活性化する工程を含むことを特徴とする。皮膜形成性ポリマー(たとえばセルロースエーテル)を、錠剤の他の成分と均一に混合し、任意の望ましい形状に成形し、慣用のコーティング装置に仕込み、活性化量の流体(たとえば液体の水または水蒸気、液体または気体のアルコールなど)を噴霧しまたはその泡で覆い、そして乾燥する。
【発明の効果】
【0007】
この皮膜コーティング方法は、噴霧ノズル目詰り、不適切なコーティング液体の粘度および適正にコーティング液体を霧にすることができないなどの潜在的な問題を解消する。その結果、これらの潜在的な問題の解消、特にコーティング流体を混合する工程の省略は、コーティング方法の費用を削減する。本発明の方法は、限定するものではないが、制御放出マトリックス配合物、任意の固形投薬配合物、食品穀物製品、菓子類、水処理および洗剤含有錠剤などの、種々様々な用途で使用するのに適している。
【0008】
皮膜コーティングされた製品は、皮膜コーティングの化学組成が製品の核の化学組成と同一または本質的に同一であるという点およびその製品は、皮膜コーティング工程中に著しく大きさや質量が増えることがないという点で独特である。その製品コーティングは、硬さ、光沢、印刷適性などのような物性が、たとえ従来の方法で調製されたコーティングより優れていないとしても、それに匹敵する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、皮膜形成性ポリマーを含むコーティングされていない錠剤の断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0010】
【図2】図2は、本発明の方法を用いて、皮膜コーティングされたそして無傷の皮膜コーティング層を有する図1の錠剤のSEMである。
【0011】
【図3】図3は、60分間、皮膜コーティングした後、皮膜コーティングを錠剤の核からはがした錠剤のSEMである。
【図4】図4は、60分間、皮膜コーティングした後、皮膜コーティングを錠剤の核からはがした錠剤のSEMである。
【図5】図5は、60分間、皮膜コーティングした後、皮膜コーティングを錠剤の核からはがした錠剤のSEMである。
【0012】
【図6】図6は、20分間、皮膜コーティングした後の皮膜コーティング断面のSEMである。
【0013】
【図7】図7は、60分間、皮膜コーティングした後の皮膜コーティング断面のSEMである。
【0014】
【図8】図8は、初期の(コーティングしていない)錠剤の質量と、本発明の方法を用いて、180分間、皮膜コーティングした後の錠剤の質量との比較を報告する棒グラフである。
【図9】図9は、初期の(コーティングしていない)錠剤の厚さと、本発明の方法を用いて、180分間、皮膜コーティングした後の錠剤の厚さとの比較を報告する棒グラフである。
【図10】図10は、初期の(コーティングしていない)錠剤の質量と、従来のコーティング方法を用いて、180分間、コーティングした後の錠剤の質量との比較を報告する棒グラフである。
【図11】図11は、初期の(コーティングしていない)錠剤の厚さと、従来のコーティング方法を用いて、180分間、コーティングした後の錠剤の厚さとの比較を報告する棒グラフである。
【0015】
【図12】図12は、同一のマトリックス配合物の、本発明の方法によって皮膜コーティングされた錠剤と、コーティングされていない錠剤との溶解比較を報告する線グラフである。
【0016】
【図13】図13は、高解像度錠剤プリンターを用いて印刷された高精細デザインを有する、本発明の方法によって皮膜コーティングされた錠剤の2つの画像を示す。
【0017】
【図14】図14は、皮膜コーティング錠剤前駆体を体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物と接触させた後の、エチルセルロースを5質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図15】図15は、皮膜コーティング錠剤前駆体を体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物と接触させた後の、エチルセルロースを10質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図16】図16は、皮膜コーティング錠剤前駆体を体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物と接触させた後の、エチルセルロースを20質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図17】図17は、皮膜コーティング錠剤前駆体を体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物と接触させた後の、エチルセルロースを40質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図18】図18は、皮膜コーティング錠剤前駆体を体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物と接触させた後の、エチルセルロースを100質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【0018】
【図19】図19は、皮膜コーティング錠剤前駆体をイソプロピルアルコール100%の溶媒と接触させた後の、エチルセルロースを5質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図20】図20は、皮膜コーティング錠剤前駆体をイソプロピルアルコール100%の溶媒と接触させた後の、エチルセルロースを10質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図21】図21は、皮膜コーティング錠剤前駆体をイソプロピルアルコール100%の溶媒と接触させた後の、エチルセルロースを20質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図22】図22は、皮膜コーティング錠剤前駆体をイソプロピルアルコール100%の溶媒と接触させた後の、エチルセルロースを40質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図23】図23は、皮膜コーティング錠剤前駆体をイソプロピルアルコール100%の溶媒と接触させた後の、エチルセルロースを100質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この開示中の数値範囲は、下の値および上の値を含み、下の値と上の値の間に少なくとも2単位の差があれば、1単位ずつ増加するすべての値を含む。例として、たとえば分子量、粘度、メルトインデックスなどのような、組成、物性または他の性質が100〜1,000である場合は、100、101、102などのようなすべての個々の値および100〜144、155〜170、197〜200などのような部分的な範囲が明示的に列挙されていると意図される。1未満の値または1を越える端数を含む値(たとえば1.1、1.5など)を含む範囲については、1単位は、それぞれ適切に、0.0001、0.001、0.01または0.1であると見なされる。10未満の1桁の数を含む範囲(たとえば1〜5)については、1単位は典型的には0.1であると見なされる。これらは特に意図されるものの単なる例であり、そして列挙された最も低い値と最も高い値の間の数値の可能なすべての組み合わせが、この開示の中に明示的に述べられていると見なすべきである。とりわけ、コーティングおよび錠剤の厚さおよび質量、分子量、および本発明の実施において用いられる組成物または配合物中の種々の成分の量の数値範囲がこの開示中に提供される。
【0020】
「ポリマー」とは、同一のまたは異なる種類のモノマーを重合することによって調製された高分子化合物を意味する。したがって、総称的な用語ポリマーは、たった1種類のモノマーから調製されたポリマーを呼称するするために通常用いられる用語ホモポリマー、および下記に定義されるような用語インターポリマーを包含する。
【0021】
「コポリマー」、「インターポリマー」およびその同類用語は、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これらの総称的な用語は、コポリマーの従来の定義、すなわち2種類の異なるモノマーから調製されたポリマー、ならびにコポリマーおよびインターポリマーのより広義の定義、すなわち3種類以上の異なるモノマーから調製されたポリマー、たとえば三元重合体、四元重合体などを含む。
【0022】
「皮膜コーティング」およびその同類用語は、活性化流体(たとえば、液体もしくは気体の水またはアルコールのような有機化合物または活性化流体の別の成分)と接触したときに皮膜形成性ポリマーから形成される、皮状または膜状のコーティングを意味する。
【0023】
「混合物」およびその同類用語は、2種またはそれ以上の物質の組成物を意味する。そのような混合物は混和するものでもよいし、混和しないものでもよい。そのような混合物は相分離していてもよいし、相分離していなくてもよい。そのような混合物は、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野において既知の他の方法で測定されるような、1つまたはそれ以上のドメイン配置を含んでもいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0024】
「活性化流体」およびその同類用語は、皮膜形成性ポリマーと接触したときに、そのポリマーを皮膜に変える液体または気体を意味する。
【0025】
「組成物」およびその同類用語は、2種またはそれ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。錠剤および/またはコーティングがそれから作製される配合物の文脈においては、組成物は、混合物のすべての成分、たとえば活性薬剤、結合剤、皮膜形成性ポリマー、可塑剤、ならびに架橋剤および架橋助剤、すなわち助触媒または共開始剤または硬化触媒、酸化防止剤、賦形剤、粘着防止剤、着色剤、顔料、滑剤などのような他の添加剤を含む。
【0026】
「剤形」およびその同類用語は、錠剤、ペレット、カプセル、ロゼンジなどの形をした規定量の物質を意味する。剤形の物理的な大きさは広範囲に変わることができるが、活性成分の量はその剤形の要望される機能を果たすのに必要な量である。医薬品剤形の場合は、活性成分は典型的には剤形全体の質量に対して少ない成分である。工業用および商業上の剤形、たとえば洗濯錠剤、浄水ペレットなどの場合は、活性成分が質量基準で剤形のすべてまたは本質的にすべてを構成することができる。
【0027】
「錠剤」、「ペレット」およびその同類用語は、典型的には細かく分けられた粒子をより大きな形に圧縮することによって成形された製品を意味する。本発明の錠剤はいかなる寸法および形であってもよいが、典型的にはヒトまたは動物の消費用に大きさを合わせられる。本発明の錠剤は、薬学的に活性な薬剤および食品を含む広範囲の成分を含むことができ、そのような錠剤の典型的な用途としては、医薬およびビタミン送達システム、穀物製品、ガムボールおよびキャンディーのような菓子類、ならびに洗濯機で使用されるセッケン、硬水軟化剤塩、水衛生化学薬品などのような種々の工業製品が挙げられる。
【0028】
句「本質的に他方と同じ化学組成を有する核と皮膜コーティング」とは、核と皮膜コーティングの化学組成の唯一の本質的な差が、皮膜コーティングの皮膜形成性ポリマーが水和されまたは他の方法で活性化されており、そして核中の皮膜形成性ポリマーが水和されまたは他の方法で活性化されていないということであることを意味する。核を構成する成分のすべてが皮膜形成性ポリマーの活性化前に本質的に均一に核の全体にわたって分布している場合、成分の相対量は皮膜形成性ポリマーの活性化後に核とフィルムコーティングの両方の中で同じである。
【0029】
本発明の錠剤は、いかなる方法によって成形してもよく、そしてそれは、通常、従来技術(すなわち湿式造粒法、乾式造粒法および直接圧縮)のいずれか1つを用いて成形される。典型的な湿式造粒法は、個々の乾燥した成分を単独でまたは互いと組み合わせてばらつきのない粉末に粉砕する工程、粉砕した粉末を混合する工程、結合剤溶液を調製する工程、結合剤溶液を混合した粉砕した粉末と混合して湿った塊を形成する工程、その塊をふるい分けする工程、ふるい分けされた湿った粒体を乾燥する工程、その粒体を乾燥する工程、そして乾燥した粒体を滑剤または崩壊剤とともにふるい分けする工程を含む。錠剤はその粒体の圧縮によって製造される。乾式造粒法は熱または溶媒を使用しない点以外は同様の工程を含み、そしてそれは通常1つまたはそれ以上の錠剤成分が熱および/または溶媒に敏感な場合に用いられる。
【0030】
直接圧縮は、錠剤成分の前処理(たとえばふるい分け、乾燥など)をしないで、錠剤成分を含む粉末混合物を単に圧縮するものである。粉末混合物それ自体は、単に、従来の混合技術および装置を用いて、個々の成分の好ましくは均一な混合物を形成することによって調製される。
【0031】
これらのすべての錠剤形成技術において、錠剤圧縮工程は本質的に同じである。粒状になったまたは圧縮された錠剤配合物を、錠剤ダイキャビティの中に供給し、使用されるまで通常の貯蔵および取り扱い中にその形と結着性を保持するであろう錠剤を製造するのに十分な圧力をかけ、そしてダイキャビティから取り出す。いったんダイキャビティから取り出されたら、錠剤は、微粉を取り除かれ、集められ、包装され、貯蔵される。
【0032】
本発明の1つの顕著な特徴は、錠剤のすべてが皮膜形成性ポリマーを含むことである。適切な活性化流体と接触したときに皮膜を形成するいかなるポリマーも、本発明の実施において用いることができ、そして有用なポリマーとしては、エチレンイミン、アクリル酸のような不飽和酸またはその塩、アクリルアミドのような不飽和アミド、ビニルポリマー、たとえばビニルアルコール、酢酸ビニルのようなビニルエステル、ビニルピロリドン、ビニルオキサゾリドン、ビニルメチルオキサゾリドン、エチレンスルホン酸、ビニルアミン、ビニルピリジン、アルキルグリコール、ポリエチレンオキシドおよびオキシエチレンアルキルエーテルのようなポリアルキレンオキシド、多糖ならびにゼラチンのホモポリマーまたはコポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーが好ましい。
【0033】
多糖の例としては、アラビアゴム、キサンタンガム、カラヤゴム、トラガカントゴム、ガッティガム、カラギーナン、デキストラン、アルギン酸エステル、寒天、ジェランガム、グアーガムのようなガラクトマンナン、ペクチン、デンプン、デンプン誘導体、グアー誘導体およびキサンタン誘導体が挙げられる。デンプン誘導体、グアー誘導体およびキサンタン誘導体は、欧州特許第0504870号明細書第3頁第25行〜第56行および第4頁第1行〜第30行に、より詳細に記載されている。有用なデンプン誘導体は、たとえば、ヒドロキシプロピルデンプンまたはカルボキシメチルデンプンのようなデンプンエーテルである。有用なグアー誘導体は、たとえば、カルボキシメチルグアー、ヒドロキシプロピルグアー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアーおよびカチオン化されたグアーである。好ましいヒドロキシプロピルグアーおよびそれらの製造は、米国特許第4,645,812号明細書第4欄〜第6欄に記載されている。好ましい多糖は、セルロースエステルおよびセルロースエーテルである。好ましいセルロースエーテルは、カルボキシメチルセルロースのようなカルボキシ−C1−C3−アルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースのようなカルボキシ−C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース;メチルセルロースのようなC1−C3−アルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはエチルヒドロキシエチルセルロースのようなC1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−3−アルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシ−C1 3−アルキルセルロース;ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースのような混合ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、ならびにアルコキシヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(ただしアルコキシ基は直鎖または枝分かれであり、そして2〜8個の炭素原子を含む。)である。最も好ましくは、流体組成物は、水溶性セルロースエーテル、たとえばメチルモル置換DSメトキシルが0.5〜3.0、好ましくは1〜2.5のメチルセルロース、またはDSメトキシルが0.5〜3.0、好ましくは1〜2.5、そしてMSヒドロキシプロポキシルが0.05〜2.0、好ましくは0.1〜1.5のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0034】
多糖、ゼラチンおよび前記の合成ポリマーは、一般に少なくとも10,000、好ましくは少なくとも12,000、より好ましくは少なくとも15,000の質量平均分子量を有する。質量平均分子量の好ましい上限は、ポリマーの種類に大いに依存する。一般に、ポリマーの質量平均分子量は、1,000,000以下、好ましくは500,000以下、より好ましくは100,000以下である。
【0035】
典型的には、本発明の実施において使用される皮膜形成性ポリマーは、錠剤または他の製品組成物の少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも10質量%、最も好ましくは少なくとも20質量%を構成する。本発明の実施において使用される皮膜形成性ポリマーの最大の量は、適宜変えることができ、典型的には費用と実用性の関数である。典型的には、本発明の実施において使用される皮膜形成性ポリマーの最大値は、錠剤または他の製品組成物の95質量%を超えず、好ましくは75質量%を超えず、より好ましくは50質量%を超えない。
【0036】
本発明の実施に使用される活性化流体は、それと接触したときに皮膜形成性ポリマーを活性化する、すなわち皮膜形成性ポリマーに皮膜を形成させる、いかなる液体または気体であってもよい。活性化流体の好ましい組成は、主として、皮膜形成性ポリマーの種類、すなわち皮膜形成性ポリマーを活性化する方法に依存する。水溶性皮膜形成性ポリマーは、一般に、水で活性化される。有機溶媒に可溶の皮膜形成性ポリマーは、一般に、適切な有機溶媒に接したときに活性化される。活性化流体は、水と有機溶媒の混合物、たとえば水とアルコールの混合物を含むことができ、そして混合物中の各成分の相対量は適宜変えることができる。活性化流体は、また、他の成分、たとえば、錠剤の表面上の流体の広がりを助けるために、ラウリル硫酸ナトリウムのような、表面張力を下げる薬剤を含んでもよい。他の添加剤としては、光沢向上剤、着色剤などが挙げられる。本発明の1つの特定の実施態様において、活性化流体は、皮膜形成性ポリマーまたは核の中の別の化合物もしくは成分を膨張させる化合物または薬剤を含む。活性化流体は従来のコーティング装置および技術を使用して塗布され、所望の厚さの皮膜コーティングを形成するために皮膜を活性化するのに十分な量で塗布される。
【0037】
活性化流体は、典型的にはそして好ましくは、周囲条件、たとえば大気圧、23℃で、液体または気体の化合物である。流体で活性化される皮膜形成性ポリマー用には、活性化流体は、好ましくは、単量体化合物または500以下、好ましくは300以下の分子量を有するオリゴマー化合物である。有用な有機液体は、アルコール、好ましくは単官能性アルコール、たとえばエタノール;アルケン、アルカン、ハロゲン化アルケン、ハロゲン化アルカン、エーテル、エステルおよび油、たとえばパラフィン油、動物油または植物油である。水で活性化される皮膜形成性ポリマー用には、好ましくは、コーティング液体は、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも75質量%、さらに好ましくは少なくとも90質量%の水を含む。もちろん、皮膜形成性ポリマーの活性化を最適化するために、コーティング液体は皮膜形成性ポリマーと対になる。
【0038】
本発明の1つの顕著な特徴は、錠剤の核またはマトリックスにおける、皮膜形成性ポリマーの活性化(水溶性皮膜形成性ポリマーの場合には、水和)によって皮膜コーティングが形成されることである。言いかえれば、皮膜被覆の成分、皮膜被覆の成分が1つだけではない場合はその主要な成分は、活性化流体ではなく、核に由来するかまたは核から供給される。
【0039】
別の顕著な特徴は、本発明の錠剤の皮膜コーティングは、錠剤の核の表面で形成し始め、その後、核の中心に向かって形成されることである。そのため、錠剤は、質量または大きさ(たとえば厚さ)のいずれにおいても実質的に増加しない。いかなる質量の増加も、典型的には、核の最初の質量の5%未満、より典型的には2.5%未満、さらに典型的には1%未満である。同様に、いかなる厚さの増加も、典型的には、核の最初の厚さの5%未満、より典型的には2.5未満、さらに典型的には1%未満である。典型的には、皮膜コーティングは、1000μm未満、より典型的には500μm未満、さらに典型的には200μm未満の厚さを有する。
【0040】
しかし、別の顕著な特徴は、錠剤のマトリックス中の皮膜形成性ポリマーは活性化されていないが、コーティング中の皮膜形成性ポリマーは活性化されているという了解の下で、すなわち皮膜の物理的形態において、核および皮膜コーティングの両方の全体にわたって、錠剤の化学組成が本質的に均一であることである。
【0041】
本発明のさらに別の特徴は、可塑剤の使用を必要としないことである。従来のコーティング配合物の一般的な、しばしば本質的な、成分は、錠剤または他の核の形の角および端のまわりの滑らかで耐久性のあるコーティングを容易にするために、可塑剤を必要とすることである。しかしながら、本発明の皮膜コーティングは既に核の一部であるポリマーから形成されるので、核のこれらの特徴の上に滑らかで耐久性のあるコーティングを得るために、可塑剤は必要ではない(ただし、何らかの特別の理由により要望されるならば、活性化流体は1種以上の可塑剤を含んでもよい。)。
【0042】
本発明の皮膜コーティングされた錠剤のこれらの独特の特徴は、コーティングの源として高分子量の皮膜形成性ポリマー、たとえば500,000を超える、750,000または1,000,000さえを超える、質量平均(Mw)分子量のポリマーの使用を可能にする。高分子量の皮膜形成性ポリマーの粘度のために、これらは従来のコーティング装置および技術を使用して塗布するのがあまりにも困難であると考えられていたので、コーティングは典型的には低分子量の皮膜形成性ポリマーを含んでいた。高分子量の皮膜形成性ポリマーから調製された皮膜は、多くの場合、低分子量の皮膜形成性ポリマーから調製された皮膜より良好な光沢を示す。
【0043】
錠剤マトリックス中の皮膜形成性ポリマーは多面的機能を果たすことができ、たとえば、(薬理的またはその他の)活性成分を含む錠剤において、皮膜形成性ポリマーは、錠剤コーティングの形成および活性成分の放出制御の両方に寄与することができる。しかし、他の実施態様においては、錠剤は、それぞれ異なる機能を有する2種以上の皮膜形成性ポリマーを含むことができ、たとえば、一方は錠剤コーティングを形成する機能を有し、他方は活性成分の即時放出または制御放出を制御しまたは制御するのに寄与する機能を有することもできる。この文脈においては、活性成分の放出は、制御されてもよいし、変更されてもよいし、遅らされてもよい。再び、この実施の利点は、それが粘稠液の調製および噴霧を回避することである。
【0044】
さらに、本発明の皮膜コーティングは、錠剤表面上に非常に望ましい仕上がり、医薬品および食品産業において一般に使用される食用に適する印刷の適用を可能にする仕上がりを与える。この仕上がりは「ロゴブリッジング」の問題、すなわち、ロゴが印刷されるまたは筋が付けられる(すなわちへこみが付けられる)錠剤表面の領域の上に起こり得るコーティング液体または泡からの固体粒子の付着をを除去する。このブリッジングは、ロゴ鮮明度の喪失に帰着し、貧弱なまたは劣った錠剤外観に帰着する。
【0045】
本発明の皮膜コーティングされた錠剤およびこれらの錠剤を作る方法は、次の実施例によってさらに詳しく記載される。別段の言及がない限り、部およびパーセントはすべて質量基準である。
【実施例】
【0046】
実施例1
METHOCELtmA4MPセルロースエーテル(80質量%)、AVICELtmPH−102微結晶性セルロース(19.5質量%)およびステアリン酸マグネシウム(滑剤、0.5質量%)を含む円形の錠剤(直径0.5インチ)を、実験室規模コーティングパン(アイオワ州マリアンのベクター社(Vector Corporation))で皮膜コーティングされる。METHOCELtmA4MPセルロースエーテルは、ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)から商業的に入手可能なプレミアムグレード・メチルセルロースであり、それはメトキシル置換が約30%であり、2質量%水溶液で測定した見掛け粘度が約4,000mPa・sである。コーティング液体は、青色食品着色料および0.001質量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む水である。皮膜コーティング条件は、入口温度が60〜70℃の、出口温度が30〜40℃、パン速度が20〜22回転/分(rpm)、噴霧流量が2〜3グラム/分(g/min)、そしてノズル圧が17〜25ポンド/平方インチ(psi)である。皮膜コーティングされた錠剤は、その後、異なる時間間隔で走査型電子顕微鏡で観察し、その観察結果が図1〜7において報告される。
【0047】
図1は、コーティング液体を適用する前のコーティングしていない錠剤の断面を示す。図2〜7は、本発明の方法を用いて皮膜コーティングされた錠剤を示す。図2は、無傷の青色に着色された錠剤の断面を示す。図3〜5は、水と60分間接触させた後のMETHOCELtmA4MPセルロースエーテルの水和によって形成された実際の皮膜コーティングを示すために、錠剤の核またはマトリックスからはがされた青色着色フィルムコーティングを示す。図6および7は、それぞれ20分間および60分間、水と接触させた後の皮膜コーティングの断面を示す。これらの図は、皮膜コーティングがコーティングされていない錠剤の表面で始まり、その後、錠剤の核の中心に向かって内部に成長していくことを示す。製品の皮膜コーティングの最終の厚さ%は、製品の最終用途、たとえば耐久性、光沢、印刷受容性、活性成分徐放性などの関数である。
【0048】
その後、25個の皮膜コーティングされた錠剤の厚さおよび質量が測定され、その結果が図8および9において報告される。これらの図は、コーティング適用時間180分後でさえ、錠剤表面上に皮膜構造を形成している間の、錠剤の質量および厚さの両方の増加をほとんど示さない。錠剤の質量および厚さのこの最小の増加は、皮膜が錠剤マトリックス表面から錠剤マトリックスの中心に向かって形成されるという結論を強化する。これは、皮膜が錠剤マトリックス表面から外側へ形成される従来の錠剤コーティングとまさに反対であり、そしてこれは、図10および11において報告されるように、錠剤の質量および厚さの測定可能な増加によって支持される。これらの比較試料において使用された従来の錠剤コーティング液は、ペンシルベニア州ウェストポイントのカラーコン社(Colorcon, Inc.)から入手可能な商用錠剤コーティングOpadrytmYS−1−7006である。この製品の12質量%溶液が、図2〜9において調製され報告された錠剤に使用されたのと同一のコーティング条件下および同一のコーティング装置で適用される。
【0049】
表1は、図8〜11に示された情報を、25個の個々の錠剤の測定値の平均としてまとめたものである。この表に記載されるように、本発明の方法で皮膜コーティングされた類似の錠剤と比較して、従来の技術を使用してコーティングされた錠剤では、錠剤の質量および厚さのはるかにより大きな質量が観察される。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例2〜3
これらの実施例に使用された皮膜形成性ポリマーの含量は、典型的な制御放出医薬品錠剤配合物に使用されるものと同様である。実施例2および3に使用されたMETHOCEL K4MPセルロースエーテルは、ダウ・ケミカル社から商業的に入手可能なヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、それはメトキシル置換が19〜24%であり、ヒドロキシプロポキシル置換が7〜12%であり、2質量%水溶液で測定した見掛け粘度が約4,000mPa・sである。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
実施例2および3のデータは、本発明の皮膜コーティング方法が医薬品の典型的なマトリックス制御放出剤形の調製に有用なことを示す。さらに、図12は、固形の剤形に適用された皮膜コーティング仕上げが錠剤の放出プロフィールを変えないことを示す。図12は、マトリックス配合物が同一の皮膜コーティングされた錠剤とコーティングしていない錠剤とを比較する。これらの曲線は時間とともに平らになり、それは一次放出からゼロ次放出に移動すること、制御放出配合物にとって望ましい結果、すなわち時間とともに、活性成分は、加速または失速された速度のいずれとも対照的に、安定した速度で放出されるを示唆する。溶解試験は、バリアン薬物溶解試験モデル(Varian Drug Dissolution Testing Model)VK−7025装置および900mLの脱イオン水を使用して、37±0.5℃で、50rpmで回転するパドルで撹拌しながら、行なわれる。
【0055】
実施例4
本発明の方法によって調製された偽薬錠剤は、ニュージャージー州のエー・シー・コンパクティング社(AC Compacting LLC)から入手可能なPI(型式Platinum 160)高解像度実験室錠剤印字装置を使用して、高精細食用インキで印刷される。もし存在しなければ、食用インキが錠剤表面の中にしみ込むことを許し、汚れた外観をもたらすであろう、仕上げまたは皮膜コーティングの完全無欠状態を例証するために、2つの高精細図案が選ばれる。印刷された錠剤は、図13に報告される。
【0056】
実施例5および6
すべての成分を均一に混合されるまで互いに混合し、その後、0.5インチの丸い標準凹面成形型を装備したカーバープレス(Carver Press)を使用して、4000ポンドの力で、2秒の保圧時間で、混合された混合物を650mgの錠剤に圧縮成形することによって、次の5つの配合物が調製された。ETHOCELスタンダード10プレミアム・エチルセルロースはダウ・ケミカル社から入手可能な皮膜形成性ポリマーである。乳糖および微結晶性セルロースは賦形剤として存在し、そしてステアリン酸マグネシウムは滑剤として存在する。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
錠剤はベクトル社(Vector Corporation)製の従来のコーティング装置を使用して、皮膜コーティングされた。体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物または100%イソプロピルアルコールの溶媒のいずれかを、180分間、錠剤に噴霧した。図14〜18は、体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物を噴霧したすべての配合物の皮膜コーティングの形成を示し、そして図19〜23は、100%イソプロピルアルコール溶媒を噴霧したすべての配合物の皮膜コーティングの形成を示す。
【0063】
本発明は前の実施例によって相当に詳しく記載されたが、この詳細は例証のためのものであって、次の特許請求の範囲に記載される本発明の精神および範囲を限定するものと解釈してはならない。上に引用されたすべての米国特許、米国特許出願公開、許可された米国特許出願、および他のすべての文献は、引用によってここに組み入れられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膜コーティングに関する。1つの態様において、本発明は錠剤のための皮膜コーティングに関し、別の態様において、本発明は錠剤の上に皮膜コーティングを形成する方法に関する。さらに別の態様において、本発明は皮膜コーティングを含む錠剤および他の物に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤または類似の品(たとえば穀物食物形状、菓子類など)をコーティングする従来の方法は、コーティングドラムまたは類似の装置内で錠剤の核を混転させまたは他の方法で動かしながら、錠剤の核の上にコーティング(典型的には皮膜形成性ポリマー)を噴霧または起泡することを含む。この方法は、特に、キャリヤー溶媒(たとえば水、アルコールなど)中のコーティングポリマーの混合物を形成すること、その混合物を錠剤表面に適用すること、およびそのコーティングされた錠剤を乾燥することを伴う。この方法は、よく知られており、たとえば、米国特許第3,981,984号明細書、米国特許第4,828,841号明細書および他の多くの類似する教示に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3981984号明細書
【特許文献2】米国特許第4828841号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コーティング方法がポリマーコーティング液体の使用を省くことができたならば、コーティングされた錠剤を製造する費用および時間はかなり削減することができるかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施態様において、本発明は、核および皮膜コーティングを含む製品であって、核および皮膜コーティングがそれぞれ他方と本質的に同じ化学組成を有することを特徴とする。核は、典型的には、粉末混合物であるが、それが皮膜形成性ポリマーを含む限りにおいて、それは実際上いかなるものをも含むことができる。皮膜コーティングは、典型的には、核を完全に覆う本質的に均一な厚さであるが、皮膜コーティングの厚さは核のまわりで変わってもよく、また皮膜コーティングは核の全表面積を覆っていなくてもよい。その製品はいかなる大きさおよび形であってもよく、それは食用でも食べられなくてもよく、またそれはさらに処理(たとえば、印刷、包装など)されてもよいし、処理されなくてもよい。
【0006】
別の実施態様において、本発明は、核および皮膜コーティングを含む製品を製造する方法であって、該方法は、(i)皮膜形成性ポリマーを含む物質から核を調製する工程、および(ii)核を活性化流体と接触させることによって核の中の皮膜形成性ポリマーを活性化する工程を含むことを特徴とする。皮膜形成性ポリマー(たとえばセルロースエーテル)を、錠剤の他の成分と均一に混合し、任意の望ましい形状に成形し、慣用のコーティング装置に仕込み、活性化量の流体(たとえば液体の水または水蒸気、液体または気体のアルコールなど)を噴霧しまたはその泡で覆い、そして乾燥する。
【発明の効果】
【0007】
この皮膜コーティング方法は、噴霧ノズル目詰り、不適切なコーティング液体の粘度および適正にコーティング液体を霧にすることができないなどの潜在的な問題を解消する。その結果、これらの潜在的な問題の解消、特にコーティング流体を混合する工程の省略は、コーティング方法の費用を削減する。本発明の方法は、限定するものではないが、制御放出マトリックス配合物、任意の固形投薬配合物、食品穀物製品、菓子類、水処理および洗剤含有錠剤などの、種々様々な用途で使用するのに適している。
【0008】
皮膜コーティングされた製品は、皮膜コーティングの化学組成が製品の核の化学組成と同一または本質的に同一であるという点およびその製品は、皮膜コーティング工程中に著しく大きさや質量が増えることがないという点で独特である。その製品コーティングは、硬さ、光沢、印刷適性などのような物性が、たとえ従来の方法で調製されたコーティングより優れていないとしても、それに匹敵する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、皮膜形成性ポリマーを含むコーティングされていない錠剤の断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0010】
【図2】図2は、本発明の方法を用いて、皮膜コーティングされたそして無傷の皮膜コーティング層を有する図1の錠剤のSEMである。
【0011】
【図3】図3は、60分間、皮膜コーティングした後、皮膜コーティングを錠剤の核からはがした錠剤のSEMである。
【図4】図4は、60分間、皮膜コーティングした後、皮膜コーティングを錠剤の核からはがした錠剤のSEMである。
【図5】図5は、60分間、皮膜コーティングした後、皮膜コーティングを錠剤の核からはがした錠剤のSEMである。
【0012】
【図6】図6は、20分間、皮膜コーティングした後の皮膜コーティング断面のSEMである。
【0013】
【図7】図7は、60分間、皮膜コーティングした後の皮膜コーティング断面のSEMである。
【0014】
【図8】図8は、初期の(コーティングしていない)錠剤の質量と、本発明の方法を用いて、180分間、皮膜コーティングした後の錠剤の質量との比較を報告する棒グラフである。
【図9】図9は、初期の(コーティングしていない)錠剤の厚さと、本発明の方法を用いて、180分間、皮膜コーティングした後の錠剤の厚さとの比較を報告する棒グラフである。
【図10】図10は、初期の(コーティングしていない)錠剤の質量と、従来のコーティング方法を用いて、180分間、コーティングした後の錠剤の質量との比較を報告する棒グラフである。
【図11】図11は、初期の(コーティングしていない)錠剤の厚さと、従来のコーティング方法を用いて、180分間、コーティングした後の錠剤の厚さとの比較を報告する棒グラフである。
【0015】
【図12】図12は、同一のマトリックス配合物の、本発明の方法によって皮膜コーティングされた錠剤と、コーティングされていない錠剤との溶解比較を報告する線グラフである。
【0016】
【図13】図13は、高解像度錠剤プリンターを用いて印刷された高精細デザインを有する、本発明の方法によって皮膜コーティングされた錠剤の2つの画像を示す。
【0017】
【図14】図14は、皮膜コーティング錠剤前駆体を体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物と接触させた後の、エチルセルロースを5質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図15】図15は、皮膜コーティング錠剤前駆体を体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物と接触させた後の、エチルセルロースを10質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図16】図16は、皮膜コーティング錠剤前駆体を体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物と接触させた後の、エチルセルロースを20質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図17】図17は、皮膜コーティング錠剤前駆体を体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物と接触させた後の、エチルセルロースを40質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図18】図18は、皮膜コーティング錠剤前駆体を体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物と接触させた後の、エチルセルロースを100質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【0018】
【図19】図19は、皮膜コーティング錠剤前駆体をイソプロピルアルコール100%の溶媒と接触させた後の、エチルセルロースを5質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図20】図20は、皮膜コーティング錠剤前駆体をイソプロピルアルコール100%の溶媒と接触させた後の、エチルセルロースを10質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図21】図21は、皮膜コーティング錠剤前駆体をイソプロピルアルコール100%の溶媒と接触させた後の、エチルセルロースを20質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図22】図22は、皮膜コーティング錠剤前駆体をイソプロピルアルコール100%の溶媒と接触させた後の、エチルセルロースを40質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【図23】図23は、皮膜コーティング錠剤前駆体をイソプロピルアルコール100%の溶媒と接触させた後の、エチルセルロースを100質量%含む錠剤の錠剤核の上の皮膜コーティング層を示す錠剤断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この開示中の数値範囲は、下の値および上の値を含み、下の値と上の値の間に少なくとも2単位の差があれば、1単位ずつ増加するすべての値を含む。例として、たとえば分子量、粘度、メルトインデックスなどのような、組成、物性または他の性質が100〜1,000である場合は、100、101、102などのようなすべての個々の値および100〜144、155〜170、197〜200などのような部分的な範囲が明示的に列挙されていると意図される。1未満の値または1を越える端数を含む値(たとえば1.1、1.5など)を含む範囲については、1単位は、それぞれ適切に、0.0001、0.001、0.01または0.1であると見なされる。10未満の1桁の数を含む範囲(たとえば1〜5)については、1単位は典型的には0.1であると見なされる。これらは特に意図されるものの単なる例であり、そして列挙された最も低い値と最も高い値の間の数値の可能なすべての組み合わせが、この開示の中に明示的に述べられていると見なすべきである。とりわけ、コーティングおよび錠剤の厚さおよび質量、分子量、および本発明の実施において用いられる組成物または配合物中の種々の成分の量の数値範囲がこの開示中に提供される。
【0020】
「ポリマー」とは、同一のまたは異なる種類のモノマーを重合することによって調製された高分子化合物を意味する。したがって、総称的な用語ポリマーは、たった1種類のモノマーから調製されたポリマーを呼称するするために通常用いられる用語ホモポリマー、および下記に定義されるような用語インターポリマーを包含する。
【0021】
「コポリマー」、「インターポリマー」およびその同類用語は、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これらの総称的な用語は、コポリマーの従来の定義、すなわち2種類の異なるモノマーから調製されたポリマー、ならびにコポリマーおよびインターポリマーのより広義の定義、すなわち3種類以上の異なるモノマーから調製されたポリマー、たとえば三元重合体、四元重合体などを含む。
【0022】
「皮膜コーティング」およびその同類用語は、活性化流体(たとえば、液体もしくは気体の水またはアルコールのような有機化合物または活性化流体の別の成分)と接触したときに皮膜形成性ポリマーから形成される、皮状または膜状のコーティングを意味する。
【0023】
「混合物」およびその同類用語は、2種またはそれ以上の物質の組成物を意味する。そのような混合物は混和するものでもよいし、混和しないものでもよい。そのような混合物は相分離していてもよいし、相分離していなくてもよい。そのような混合物は、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野において既知の他の方法で測定されるような、1つまたはそれ以上のドメイン配置を含んでもいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0024】
「活性化流体」およびその同類用語は、皮膜形成性ポリマーと接触したときに、そのポリマーを皮膜に変える液体または気体を意味する。
【0025】
「組成物」およびその同類用語は、2種またはそれ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。錠剤および/またはコーティングがそれから作製される配合物の文脈においては、組成物は、混合物のすべての成分、たとえば活性薬剤、結合剤、皮膜形成性ポリマー、可塑剤、ならびに架橋剤および架橋助剤、すなわち助触媒または共開始剤または硬化触媒、酸化防止剤、賦形剤、粘着防止剤、着色剤、顔料、滑剤などのような他の添加剤を含む。
【0026】
「剤形」およびその同類用語は、錠剤、ペレット、カプセル、ロゼンジなどの形をした規定量の物質を意味する。剤形の物理的な大きさは広範囲に変わることができるが、活性成分の量はその剤形の要望される機能を果たすのに必要な量である。医薬品剤形の場合は、活性成分は典型的には剤形全体の質量に対して少ない成分である。工業用および商業上の剤形、たとえば洗濯錠剤、浄水ペレットなどの場合は、活性成分が質量基準で剤形のすべてまたは本質的にすべてを構成することができる。
【0027】
「錠剤」、「ペレット」およびその同類用語は、典型的には細かく分けられた粒子をより大きな形に圧縮することによって成形された製品を意味する。本発明の錠剤はいかなる寸法および形であってもよいが、典型的にはヒトまたは動物の消費用に大きさを合わせられる。本発明の錠剤は、薬学的に活性な薬剤および食品を含む広範囲の成分を含むことができ、そのような錠剤の典型的な用途としては、医薬およびビタミン送達システム、穀物製品、ガムボールおよびキャンディーのような菓子類、ならびに洗濯機で使用されるセッケン、硬水軟化剤塩、水衛生化学薬品などのような種々の工業製品が挙げられる。
【0028】
句「本質的に他方と同じ化学組成を有する核と皮膜コーティング」とは、核と皮膜コーティングの化学組成の唯一の本質的な差が、皮膜コーティングの皮膜形成性ポリマーが水和されまたは他の方法で活性化されており、そして核中の皮膜形成性ポリマーが水和されまたは他の方法で活性化されていないということであることを意味する。核を構成する成分のすべてが皮膜形成性ポリマーの活性化前に本質的に均一に核の全体にわたって分布している場合、成分の相対量は皮膜形成性ポリマーの活性化後に核とフィルムコーティングの両方の中で同じである。
【0029】
本発明の錠剤は、いかなる方法によって成形してもよく、そしてそれは、通常、従来技術(すなわち湿式造粒法、乾式造粒法および直接圧縮)のいずれか1つを用いて成形される。典型的な湿式造粒法は、個々の乾燥した成分を単独でまたは互いと組み合わせてばらつきのない粉末に粉砕する工程、粉砕した粉末を混合する工程、結合剤溶液を調製する工程、結合剤溶液を混合した粉砕した粉末と混合して湿った塊を形成する工程、その塊をふるい分けする工程、ふるい分けされた湿った粒体を乾燥する工程、その粒体を乾燥する工程、そして乾燥した粒体を滑剤または崩壊剤とともにふるい分けする工程を含む。錠剤はその粒体の圧縮によって製造される。乾式造粒法は熱または溶媒を使用しない点以外は同様の工程を含み、そしてそれは通常1つまたはそれ以上の錠剤成分が熱および/または溶媒に敏感な場合に用いられる。
【0030】
直接圧縮は、錠剤成分の前処理(たとえばふるい分け、乾燥など)をしないで、錠剤成分を含む粉末混合物を単に圧縮するものである。粉末混合物それ自体は、単に、従来の混合技術および装置を用いて、個々の成分の好ましくは均一な混合物を形成することによって調製される。
【0031】
これらのすべての錠剤形成技術において、錠剤圧縮工程は本質的に同じである。粒状になったまたは圧縮された錠剤配合物を、錠剤ダイキャビティの中に供給し、使用されるまで通常の貯蔵および取り扱い中にその形と結着性を保持するであろう錠剤を製造するのに十分な圧力をかけ、そしてダイキャビティから取り出す。いったんダイキャビティから取り出されたら、錠剤は、微粉を取り除かれ、集められ、包装され、貯蔵される。
【0032】
本発明の1つの顕著な特徴は、錠剤のすべてが皮膜形成性ポリマーを含むことである。適切な活性化流体と接触したときに皮膜を形成するいかなるポリマーも、本発明の実施において用いることができ、そして有用なポリマーとしては、エチレンイミン、アクリル酸のような不飽和酸またはその塩、アクリルアミドのような不飽和アミド、ビニルポリマー、たとえばビニルアルコール、酢酸ビニルのようなビニルエステル、ビニルピロリドン、ビニルオキサゾリドン、ビニルメチルオキサゾリドン、エチレンスルホン酸、ビニルアミン、ビニルピリジン、アルキルグリコール、ポリエチレンオキシドおよびオキシエチレンアルキルエーテルのようなポリアルキレンオキシド、多糖ならびにゼラチンのホモポリマーまたはコポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーが好ましい。
【0033】
多糖の例としては、アラビアゴム、キサンタンガム、カラヤゴム、トラガカントゴム、ガッティガム、カラギーナン、デキストラン、アルギン酸エステル、寒天、ジェランガム、グアーガムのようなガラクトマンナン、ペクチン、デンプン、デンプン誘導体、グアー誘導体およびキサンタン誘導体が挙げられる。デンプン誘導体、グアー誘導体およびキサンタン誘導体は、欧州特許第0504870号明細書第3頁第25行〜第56行および第4頁第1行〜第30行に、より詳細に記載されている。有用なデンプン誘導体は、たとえば、ヒドロキシプロピルデンプンまたはカルボキシメチルデンプンのようなデンプンエーテルである。有用なグアー誘導体は、たとえば、カルボキシメチルグアー、ヒドロキシプロピルグアー、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアーおよびカチオン化されたグアーである。好ましいヒドロキシプロピルグアーおよびそれらの製造は、米国特許第4,645,812号明細書第4欄〜第6欄に記載されている。好ましい多糖は、セルロースエステルおよびセルロースエーテルである。好ましいセルロースエーテルは、カルボキシメチルセルロースのようなカルボキシ−C1−C3−アルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースのようなカルボキシ−C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース;メチルセルロースのようなC1−C3−アルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはエチルヒドロキシエチルセルロースのようなC1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−3−アルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシ−C1 3−アルキルセルロース;ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースのような混合ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、ならびにアルコキシヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(ただしアルコキシ基は直鎖または枝分かれであり、そして2〜8個の炭素原子を含む。)である。最も好ましくは、流体組成物は、水溶性セルロースエーテル、たとえばメチルモル置換DSメトキシルが0.5〜3.0、好ましくは1〜2.5のメチルセルロース、またはDSメトキシルが0.5〜3.0、好ましくは1〜2.5、そしてMSヒドロキシプロポキシルが0.05〜2.0、好ましくは0.1〜1.5のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0034】
多糖、ゼラチンおよび前記の合成ポリマーは、一般に少なくとも10,000、好ましくは少なくとも12,000、より好ましくは少なくとも15,000の質量平均分子量を有する。質量平均分子量の好ましい上限は、ポリマーの種類に大いに依存する。一般に、ポリマーの質量平均分子量は、1,000,000以下、好ましくは500,000以下、より好ましくは100,000以下である。
【0035】
典型的には、本発明の実施において使用される皮膜形成性ポリマーは、錠剤または他の製品組成物の少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも10質量%、最も好ましくは少なくとも20質量%を構成する。本発明の実施において使用される皮膜形成性ポリマーの最大の量は、適宜変えることができ、典型的には費用と実用性の関数である。典型的には、本発明の実施において使用される皮膜形成性ポリマーの最大値は、錠剤または他の製品組成物の95質量%を超えず、好ましくは75質量%を超えず、より好ましくは50質量%を超えない。
【0036】
本発明の実施に使用される活性化流体は、それと接触したときに皮膜形成性ポリマーを活性化する、すなわち皮膜形成性ポリマーに皮膜を形成させる、いかなる液体または気体であってもよい。活性化流体の好ましい組成は、主として、皮膜形成性ポリマーの種類、すなわち皮膜形成性ポリマーを活性化する方法に依存する。水溶性皮膜形成性ポリマーは、一般に、水で活性化される。有機溶媒に可溶の皮膜形成性ポリマーは、一般に、適切な有機溶媒に接したときに活性化される。活性化流体は、水と有機溶媒の混合物、たとえば水とアルコールの混合物を含むことができ、そして混合物中の各成分の相対量は適宜変えることができる。活性化流体は、また、他の成分、たとえば、錠剤の表面上の流体の広がりを助けるために、ラウリル硫酸ナトリウムのような、表面張力を下げる薬剤を含んでもよい。他の添加剤としては、光沢向上剤、着色剤などが挙げられる。本発明の1つの特定の実施態様において、活性化流体は、皮膜形成性ポリマーまたは核の中の別の化合物もしくは成分を膨張させる化合物または薬剤を含む。活性化流体は従来のコーティング装置および技術を使用して塗布され、所望の厚さの皮膜コーティングを形成するために皮膜を活性化するのに十分な量で塗布される。
【0037】
活性化流体は、典型的にはそして好ましくは、周囲条件、たとえば大気圧、23℃で、液体または気体の化合物である。流体で活性化される皮膜形成性ポリマー用には、活性化流体は、好ましくは、単量体化合物または500以下、好ましくは300以下の分子量を有するオリゴマー化合物である。有用な有機液体は、アルコール、好ましくは単官能性アルコール、たとえばエタノール;アルケン、アルカン、ハロゲン化アルケン、ハロゲン化アルカン、エーテル、エステルおよび油、たとえばパラフィン油、動物油または植物油である。水で活性化される皮膜形成性ポリマー用には、好ましくは、コーティング液体は、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも75質量%、さらに好ましくは少なくとも90質量%の水を含む。もちろん、皮膜形成性ポリマーの活性化を最適化するために、コーティング液体は皮膜形成性ポリマーと対になる。
【0038】
本発明の1つの顕著な特徴は、錠剤の核またはマトリックスにおける、皮膜形成性ポリマーの活性化(水溶性皮膜形成性ポリマーの場合には、水和)によって皮膜コーティングが形成されることである。言いかえれば、皮膜被覆の成分、皮膜被覆の成分が1つだけではない場合はその主要な成分は、活性化流体ではなく、核に由来するかまたは核から供給される。
【0039】
別の顕著な特徴は、本発明の錠剤の皮膜コーティングは、錠剤の核の表面で形成し始め、その後、核の中心に向かって形成されることである。そのため、錠剤は、質量または大きさ(たとえば厚さ)のいずれにおいても実質的に増加しない。いかなる質量の増加も、典型的には、核の最初の質量の5%未満、より典型的には2.5%未満、さらに典型的には1%未満である。同様に、いかなる厚さの増加も、典型的には、核の最初の厚さの5%未満、より典型的には2.5未満、さらに典型的には1%未満である。典型的には、皮膜コーティングは、1000μm未満、より典型的には500μm未満、さらに典型的には200μm未満の厚さを有する。
【0040】
しかし、別の顕著な特徴は、錠剤のマトリックス中の皮膜形成性ポリマーは活性化されていないが、コーティング中の皮膜形成性ポリマーは活性化されているという了解の下で、すなわち皮膜の物理的形態において、核および皮膜コーティングの両方の全体にわたって、錠剤の化学組成が本質的に均一であることである。
【0041】
本発明のさらに別の特徴は、可塑剤の使用を必要としないことである。従来のコーティング配合物の一般的な、しばしば本質的な、成分は、錠剤または他の核の形の角および端のまわりの滑らかで耐久性のあるコーティングを容易にするために、可塑剤を必要とすることである。しかしながら、本発明の皮膜コーティングは既に核の一部であるポリマーから形成されるので、核のこれらの特徴の上に滑らかで耐久性のあるコーティングを得るために、可塑剤は必要ではない(ただし、何らかの特別の理由により要望されるならば、活性化流体は1種以上の可塑剤を含んでもよい。)。
【0042】
本発明の皮膜コーティングされた錠剤のこれらの独特の特徴は、コーティングの源として高分子量の皮膜形成性ポリマー、たとえば500,000を超える、750,000または1,000,000さえを超える、質量平均(Mw)分子量のポリマーの使用を可能にする。高分子量の皮膜形成性ポリマーの粘度のために、これらは従来のコーティング装置および技術を使用して塗布するのがあまりにも困難であると考えられていたので、コーティングは典型的には低分子量の皮膜形成性ポリマーを含んでいた。高分子量の皮膜形成性ポリマーから調製された皮膜は、多くの場合、低分子量の皮膜形成性ポリマーから調製された皮膜より良好な光沢を示す。
【0043】
錠剤マトリックス中の皮膜形成性ポリマーは多面的機能を果たすことができ、たとえば、(薬理的またはその他の)活性成分を含む錠剤において、皮膜形成性ポリマーは、錠剤コーティングの形成および活性成分の放出制御の両方に寄与することができる。しかし、他の実施態様においては、錠剤は、それぞれ異なる機能を有する2種以上の皮膜形成性ポリマーを含むことができ、たとえば、一方は錠剤コーティングを形成する機能を有し、他方は活性成分の即時放出または制御放出を制御しまたは制御するのに寄与する機能を有することもできる。この文脈においては、活性成分の放出は、制御されてもよいし、変更されてもよいし、遅らされてもよい。再び、この実施の利点は、それが粘稠液の調製および噴霧を回避することである。
【0044】
さらに、本発明の皮膜コーティングは、錠剤表面上に非常に望ましい仕上がり、医薬品および食品産業において一般に使用される食用に適する印刷の適用を可能にする仕上がりを与える。この仕上がりは「ロゴブリッジング」の問題、すなわち、ロゴが印刷されるまたは筋が付けられる(すなわちへこみが付けられる)錠剤表面の領域の上に起こり得るコーティング液体または泡からの固体粒子の付着をを除去する。このブリッジングは、ロゴ鮮明度の喪失に帰着し、貧弱なまたは劣った錠剤外観に帰着する。
【0045】
本発明の皮膜コーティングされた錠剤およびこれらの錠剤を作る方法は、次の実施例によってさらに詳しく記載される。別段の言及がない限り、部およびパーセントはすべて質量基準である。
【実施例】
【0046】
実施例1
METHOCELtmA4MPセルロースエーテル(80質量%)、AVICELtmPH−102微結晶性セルロース(19.5質量%)およびステアリン酸マグネシウム(滑剤、0.5質量%)を含む円形の錠剤(直径0.5インチ)を、実験室規模コーティングパン(アイオワ州マリアンのベクター社(Vector Corporation))で皮膜コーティングされる。METHOCELtmA4MPセルロースエーテルは、ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)から商業的に入手可能なプレミアムグレード・メチルセルロースであり、それはメトキシル置換が約30%であり、2質量%水溶液で測定した見掛け粘度が約4,000mPa・sである。コーティング液体は、青色食品着色料および0.001質量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む水である。皮膜コーティング条件は、入口温度が60〜70℃の、出口温度が30〜40℃、パン速度が20〜22回転/分(rpm)、噴霧流量が2〜3グラム/分(g/min)、そしてノズル圧が17〜25ポンド/平方インチ(psi)である。皮膜コーティングされた錠剤は、その後、異なる時間間隔で走査型電子顕微鏡で観察し、その観察結果が図1〜7において報告される。
【0047】
図1は、コーティング液体を適用する前のコーティングしていない錠剤の断面を示す。図2〜7は、本発明の方法を用いて皮膜コーティングされた錠剤を示す。図2は、無傷の青色に着色された錠剤の断面を示す。図3〜5は、水と60分間接触させた後のMETHOCELtmA4MPセルロースエーテルの水和によって形成された実際の皮膜コーティングを示すために、錠剤の核またはマトリックスからはがされた青色着色フィルムコーティングを示す。図6および7は、それぞれ20分間および60分間、水と接触させた後の皮膜コーティングの断面を示す。これらの図は、皮膜コーティングがコーティングされていない錠剤の表面で始まり、その後、錠剤の核の中心に向かって内部に成長していくことを示す。製品の皮膜コーティングの最終の厚さ%は、製品の最終用途、たとえば耐久性、光沢、印刷受容性、活性成分徐放性などの関数である。
【0048】
その後、25個の皮膜コーティングされた錠剤の厚さおよび質量が測定され、その結果が図8および9において報告される。これらの図は、コーティング適用時間180分後でさえ、錠剤表面上に皮膜構造を形成している間の、錠剤の質量および厚さの両方の増加をほとんど示さない。錠剤の質量および厚さのこの最小の増加は、皮膜が錠剤マトリックス表面から錠剤マトリックスの中心に向かって形成されるという結論を強化する。これは、皮膜が錠剤マトリックス表面から外側へ形成される従来の錠剤コーティングとまさに反対であり、そしてこれは、図10および11において報告されるように、錠剤の質量および厚さの測定可能な増加によって支持される。これらの比較試料において使用された従来の錠剤コーティング液は、ペンシルベニア州ウェストポイントのカラーコン社(Colorcon, Inc.)から入手可能な商用錠剤コーティングOpadrytmYS−1−7006である。この製品の12質量%溶液が、図2〜9において調製され報告された錠剤に使用されたのと同一のコーティング条件下および同一のコーティング装置で適用される。
【0049】
表1は、図8〜11に示された情報を、25個の個々の錠剤の測定値の平均としてまとめたものである。この表に記載されるように、本発明の方法で皮膜コーティングされた類似の錠剤と比較して、従来の技術を使用してコーティングされた錠剤では、錠剤の質量および厚さのはるかにより大きな質量が観察される。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例2〜3
これらの実施例に使用された皮膜形成性ポリマーの含量は、典型的な制御放出医薬品錠剤配合物に使用されるものと同様である。実施例2および3に使用されたMETHOCEL K4MPセルロースエーテルは、ダウ・ケミカル社から商業的に入手可能なヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、それはメトキシル置換が19〜24%であり、ヒドロキシプロポキシル置換が7〜12%であり、2質量%水溶液で測定した見掛け粘度が約4,000mPa・sである。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
実施例2および3のデータは、本発明の皮膜コーティング方法が医薬品の典型的なマトリックス制御放出剤形の調製に有用なことを示す。さらに、図12は、固形の剤形に適用された皮膜コーティング仕上げが錠剤の放出プロフィールを変えないことを示す。図12は、マトリックス配合物が同一の皮膜コーティングされた錠剤とコーティングしていない錠剤とを比較する。これらの曲線は時間とともに平らになり、それは一次放出からゼロ次放出に移動すること、制御放出配合物にとって望ましい結果、すなわち時間とともに、活性成分は、加速または失速された速度のいずれとも対照的に、安定した速度で放出されるを示唆する。溶解試験は、バリアン薬物溶解試験モデル(Varian Drug Dissolution Testing Model)VK−7025装置および900mLの脱イオン水を使用して、37±0.5℃で、50rpmで回転するパドルで撹拌しながら、行なわれる。
【0055】
実施例4
本発明の方法によって調製された偽薬錠剤は、ニュージャージー州のエー・シー・コンパクティング社(AC Compacting LLC)から入手可能なPI(型式Platinum 160)高解像度実験室錠剤印字装置を使用して、高精細食用インキで印刷される。もし存在しなければ、食用インキが錠剤表面の中にしみ込むことを許し、汚れた外観をもたらすであろう、仕上げまたは皮膜コーティングの完全無欠状態を例証するために、2つの高精細図案が選ばれる。印刷された錠剤は、図13に報告される。
【0056】
実施例5および6
すべての成分を均一に混合されるまで互いに混合し、その後、0.5インチの丸い標準凹面成形型を装備したカーバープレス(Carver Press)を使用して、4000ポンドの力で、2秒の保圧時間で、混合された混合物を650mgの錠剤に圧縮成形することによって、次の5つの配合物が調製された。ETHOCELスタンダード10プレミアム・エチルセルロースはダウ・ケミカル社から入手可能な皮膜形成性ポリマーである。乳糖および微結晶性セルロースは賦形剤として存在し、そしてステアリン酸マグネシウムは滑剤として存在する。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
錠剤はベクトル社(Vector Corporation)製の従来のコーティング装置を使用して、皮膜コーティングされた。体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物または100%イソプロピルアルコールの溶媒のいずれかを、180分間、錠剤に噴霧した。図14〜18は、体積比50:50のイソプロピルアルコールと水の溶媒混合物を噴霧したすべての配合物の皮膜コーティングの形成を示し、そして図19〜23は、100%イソプロピルアルコール溶媒を噴霧したすべての配合物の皮膜コーティングの形成を示す。
【0063】
本発明は前の実施例によって相当に詳しく記載されたが、この詳細は例証のためのものであって、次の特許請求の範囲に記載される本発明の精神および範囲を限定するものと解釈してはならない。上に引用されたすべての米国特許、米国特許出願公開、許可された米国特許出願、および他のすべての文献は、引用によってここに組み入れられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核および皮膜コーティングを含む製品であって、核および皮膜コーティングがそれぞれ他方と本質的に同じ化学組成を有することを特徴とする製品。
【請求項2】
核が活性化されていない皮膜形成性ポリマーを含み、そして皮膜コーティングが活性化された皮膜形成性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項3】
さらに活性成分を含む請求項2に記載の製品。
【請求項4】
剤形の状態の請求項3に記載の製品。
【請求項5】
錠剤の形をした請求項4に記載の製品。
【請求項6】
穀物食品形状の形をした請求項2に記載の製品。
【請求項7】
菓子の形をした請求項2に記載の製品。
【請求項8】
(i)皮膜形成性ポリマーを含む物質から核を調製する工程、および(ii)核を活性化流体と接触させることによって核の中の皮膜形成性ポリマーを活性化する工程を含む、核および皮膜コーティングを含む製品を製造する方法。
【請求項9】
皮膜形成性ポリマーが水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
皮膜形成性ポリマーが有機流体において可溶であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
核を、水溶性ポリマーを水和して核の上に皮膜コーティングを作るために十分な量の水と接触させることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
核を、皮膜形成性ポリマーを活性化して核の上にコーティングを形成するために十分な量の有機流体と接触させることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
皮膜形成性ポリマーがセルロースエステルまたはセルロースエーテルであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
核がさらに活性成分を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
活性成分が医薬品であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水溶性皮膜形成性ポリマーを含む固体をコーティングする方法であって、該方法が固体を活性化量の水と接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
皮膜形成性ポリマーが固体の全体にわたって均一に分散していることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項1】
核および皮膜コーティングを含む製品であって、核および皮膜コーティングがそれぞれ他方と本質的に同じ化学組成を有することを特徴とする製品。
【請求項2】
核が活性化されていない皮膜形成性ポリマーを含み、そして皮膜コーティングが活性化された皮膜形成性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項3】
さらに活性成分を含む請求項2に記載の製品。
【請求項4】
剤形の状態の請求項3に記載の製品。
【請求項5】
錠剤の形をした請求項4に記載の製品。
【請求項6】
穀物食品形状の形をした請求項2に記載の製品。
【請求項7】
菓子の形をした請求項2に記載の製品。
【請求項8】
(i)皮膜形成性ポリマーを含む物質から核を調製する工程、および(ii)核を活性化流体と接触させることによって核の中の皮膜形成性ポリマーを活性化する工程を含む、核および皮膜コーティングを含む製品を製造する方法。
【請求項9】
皮膜形成性ポリマーが水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
皮膜形成性ポリマーが有機流体において可溶であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
核を、水溶性ポリマーを水和して核の上に皮膜コーティングを作るために十分な量の水と接触させることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
核を、皮膜形成性ポリマーを活性化して核の上にコーティングを形成するために十分な量の有機流体と接触させることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
皮膜形成性ポリマーがセルロースエステルまたはセルロースエーテルであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
核がさらに活性成分を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
活性成分が医薬品であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水溶性皮膜形成性ポリマーを含む固体をコーティングする方法であって、該方法が固体を活性化量の水と接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
皮膜形成性ポリマーが固体の全体にわたって均一に分散していることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2010−532362(P2010−532362A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514921(P2010−514921)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/065478
【国際公開番号】WO2009/005923
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/065478
【国際公開番号】WO2009/005923
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】
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