説明

たとえば自動車の車室内の空気等である空間内空気に負イオンを供給するためのイオン化装置

【課題】空間中の空気、たとえば自動車の車室内の空気に負イオンを供給するための次のようなイオン化装置、すなわち、該イオン化装置を設置することができる構造空間が非常に小さい使用場所においても周辺空気に負イオンを十分に供給できることを保証することができるイオン化装置を提供すること。
【解決手段】イオン化装置のエミッタ手段を該イオン化装置の高電圧生成手段から空間的に分離して配置し、該イオン化装置の該エミッタ手段と該高電圧生成手段とを、有利にはフレキシブルな電気的接続線路によって接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば自動車の車室内の空気等である空間内空気に負イオンを供給するためのイオン化装置に関する。この種のイオン化装置には、周辺空気の気体分子を電子がイオン化するように電子を放出して不均質な電界内で加速させるためのエミッタ手段と、該電子の放出と不均質な電界内において該電子の加速を行うのに必要な高電圧を発生させるための高電圧生成手段とが含まれる。
【背景技術】
【0002】
イオンは負または正に荷電した分子であり、自然界の周辺空気中にある程度の濃度で存在する。とりわけ、山岳地帯の清浄な空気、海洋領域の空気または雷の後の空気中に含まれる負に荷電したイオンの割合は高い。また、滝近傍の空気が清浄であるのも、このような負に荷電したイオンの濃度が高いことに起因する。
【0003】
周辺空気中に含まれる負に荷電したイオンの割合が高いほど、該周辺空気中に存在する人間の快適係数(Wohlfuehlfaktor)は高くなる。この快適係数を実感するためには通常、1人の人間あたり、1cmの空気中に少なくとも2000個の負荷電イオンが必要である。
【0004】
閉鎖的な空間内の負荷電イオンの濃度は、このような理想的と感じられる値から格段にかけ離れている。温度や空気中の湿度と並んで、空間内の空気中に含まれる負荷電イオンの濃度は、建物技術において室内空気の品質を表すのに使用されるパラメータの1つである。
【0005】
従来技術からは、空間内の空気に負イオンを供給するためのイオン化装置が公知である。この従来技術のイオン化装置は、自然界の空間内に空気の単位体積あたりの負荷電イオンの数を内部空間において再現するように構成されている。室内ないしは内部空間には工業製品表面が存在するため、空間内の空気中に自然に存在する負荷電イオンの含有量は室内ないしは内部空間内では低減する。このことはとりわけ、自動車の車室に当てはまる。というのも、工業製品表面の面積の割合が高いからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術を背景として、本発明の課題は、空間中の空気、たとえば自動車の車室内の空気に負イオンを供給するための次のようなイオン化装置、すなわち、該イオン化装置を設置することができる構造空間が非常に小さい使用場所においても周辺空気に負イオンを十分に供給できることを保証することができるイオン化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は本発明では、イオン化装置のエミッタ手段を該イオン化装置の高電圧生成手段から空間的に分離して配置し、該イオン化装置の該エミッタ手段と該高電圧生成手段とを、有利にはフレキシブルな電気的接続線路によって接続することによって解決される。本発明では、前記エミッタ手段をほぼ任意に、内部空間への空気排出部ないしは流出口に近接して配置することができ、イオン化装置の高電圧生成手段を配置するために別の構造空間ないしは取付場所を設けることができる。前記エミッタ手段と前記高電圧生成手段との確実かつ高信頼性の接続は、前記接続線路によって実現される。前記高電圧生成手段は、空気流出口等に配置するのと比較して危険性が格段に少なくかつ十分な取付スペースないしは構造空間が得られる、たとえば自動車内の場所に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】空間中の空気に負イオンを供給するための本発明のイオン化装置の第1の実施形態を示す。
【図2】本発明のイオン化装置の第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
有利には、本発明のイオン化装置のエミッタ手段を尖鋭エミッタとし、該尖鋭エミッタに不均質に発生する電界は、直流電圧を用いて生成することができる。このことにより、電子が周辺空気の気体分子をイオン化することによって該周辺空気中の負荷電イオンの含有量を格段に上昇させることができるように、電子を確実に大きく加速させることができる。
【0010】
好適には、エミッタ手段ないしは尖鋭エミッタと高電圧生成手段との間の電気的接続線路を、少なくとも内側導体と外側導体とを有する同軸ケーブルとする。このことにより、車両乗員に及ぶ危険が無くなり、また、事故が発生して救助要員が出動したときに、救助要員が危険にさらされることも無くなる。
【0011】
上記実施形態において好適には、前記同軸ケーブルの外側導体を、車両接地電位より最大で設定可能な電圧値だけ高い電位に接続する。この同軸ケーブルの外側導体に接続される電位は、車両接地電位よりたとえば60V高い。このことにより、エミッタ手段ないしは尖鋭エミッタにおいてコロナ放電を実現するのに、1kVを上回る電圧が必要であっても、該エミッタ手段ないしは尖鋭エミッタが高信頼性で動作するのを保証することができ、たとえば自動車内に設置された電気機器または電子機器への妨害が回避される。
【0012】
本発明のイオン化装置の有利な実施形態では、該イオン化装置が有する前記エミッタ手段ないしは尖鋭エミッタは少なくとも2つであり、これらのエミッタ手段ないしは尖鋭エミッタは、該イオン化装置の高電圧生成手段に接続されている。この構成により、たとえば自動車車室内の2つの分離された空気排出部にそれぞれ、専用のエミッタ手段ないしは専用の尖鋭エミッタを備え付けることができる。これら2つの分離された空気排出部が、自動車ドライバに対して設けられた空気排出部と同乗者に対して設けられた空気排出部とである場合、自動車ドライバと同乗者とで別個に、負イオンが高濃度化された空気を供給することができる。
【0013】
有利には、尖鋭エミッタの尖鋭電極の周辺の領域内に面電極を配置し、該面電極を、該尖鋭電極の電位より格段に正である電位に接続する。
【0014】
本発明のイオン化装置の別の有利な実施形態では、高抵抗の抵抗器を介して、前記少なくとも1つのエミッタ手段と前記高電圧生成手段との間の電気的接続線路を該高電圧生成手段に接続する。
【0015】
本発明のイオン化装置のエミッタ手段ないしは尖鋭エミッタが、バヨネット固定具によって取付位置に固定できるように形成されている場合、該エミッタ手段ないしは該尖鋭エミッタを格段に簡単に取り付けることができる。このことにより、前記エミッタ手段ないしは前記尖鋭エミッタが取り付けられるとバヨネット固定具のシールリングが封止機能を果たすようになることを保証することもできる。
【実施例】
【0016】
以下、図面を参照し、実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1に示された本発明のイオン化装置1の実施形態は、内部空間内に存在する空気に負イオンを供給するために使用される。とりわけ自動車の車室内においてこのようなイオン化装置1を使用することができる。というのも車室内では、自然に存在する空気中の負イオンの含有量を少なくするいわゆる工業製品表面の割合が非常に大きいからである。
【0018】
図1に示されたイオン化装置1には、イオン化モジュールないしはエミッタ手段2が含まれており、これは図中の実施例では、尖鋭エミッタ2として形成されている。
【0019】
尖鋭エミッタ2の場合には、コロナ放電方式ないしは先端放電方式が使用される。その場合には、周辺空気中に存在する気体分子を電子がイオン化するように、非常に不均質な電界内で電子が大きく加速される。尖鋭エミッタ2において電界を発生させるためには、直流電圧が使用される。
【0020】
この尖鋭エミッタ2には尖鋭電極が属し、該尖鋭電極周辺の領域に面電極が配置されている。この面電極は、前記尖鋭電極における電位と比較して格段に正である電位に接続されている。
【0021】
前記尖鋭エミッタ2において電界を発生させるために必要な電気エネルギーを得るためには、イオン化装置1に高電圧生成手段3が設けられている。この高電圧生成手段3はたとえば、蓋部を有する電子回路ボックスとして構成することができる。
【0022】
前記イオン化装置1の高電圧供給手段3は、該イオン化装置1の尖鋭エミッタ2から空間的に離され、該尖鋭エミッタ2との間にスペースを置いて配置される。
【0023】
図1に示されたイオン化装置1の実施形態の場合、前記尖鋭エミッタ2と前記高電圧生成手段3とを接続するために接続線路4が設けられており、該接続線路4は高電圧同軸ケーブル4として形成されている。前記高電圧同軸ケーブル4によって前記イオン化装置1の尖鋭エミッタ2と高電圧生成装置3とが接続されることにより、該尖鋭エミッタ2を、自動車の車室への空気排出部に直近の小さい構造空間内に配置することができ、高電圧生成手段3は、露出されることが少なく適切かつ安全な場所に取付ないしは固定することができる。
【0024】
前記イオン化装置1の高電圧同軸ケーブル4は、少なくとも内側導体と外側導体とを有する。前記外側導体は、自動車における使用時には車両接地電位より最大60V上回る電位に接続される。
【0025】
前記高電圧同軸ケーブル4は高抵抗の抵抗器を介して前記高電圧生成手段3に接続されている。
【0026】
前記接続線路ないしは高電圧同軸ケーブル4の上述の構成により、前記尖鋭エミッタ2において発生するコロナ放電が、1kVを上回る電圧になっても、たとえば自動車内に配置された他の電気機器ないしは電子機器に妨害が発生するのが回避される。さらに、高電圧同軸ケーブル4の上述の構成により、車両乗員が高電圧に接触することがなくなる。このことは、事故時に救急要員が出動する場合にも当てはまり、高電圧同軸ケーブル4の上述の構成により、救急要員が高電圧によって危険にさらされることがなくなる。
【0027】
図2に示された本発明のイオン化装置1の実施形態が、図1に示された実施形態と異なる点は、前記高電圧供給手段3が2つの高電圧同軸ケーブル5,6を介して前記イオン化装置1の2つの尖鋭エミッタ7,8に接続されていることである。このような構成により、たとえば自動車における使用時に、自動車車室に空間空気を供給する2つの分離された空気排出部にそれぞれ、尖鋭エミッタ7,8を備え付けることができ、たとえば、自動車内においてドライバと同乗者とで別個に、負イオンが高濃度化された空気を供給することができる。
【0028】
図2に示された実施形態では、前記イオン化装置1の高電圧生成手段3を固定ラグ板9によって、自動車内の任意の場所の取付位置に取り付けることができ、前記高電圧生成手段3の取付位置と前記2つの尖鋭エミッタ7,8との間の間隔を比較的大きくすることができる。
【0029】
本発明のイオン化装置1の尖鋭エミッタ2ないしは7,8はそれぞれ、バヨネット固定具10によって簡単に、取付位置ないしは設置位置に固定することができる。ここでは、前記バヨネット固定具10にはシールリングが設けられており、前記尖鋭エミッタ2ないしは7,8が該バヨネット固定具10によって設置位置に固定されると該シールリングが封止機能を果たすように設けられている。
【符号の説明】
【0030】
1 イオン化装置
2 エミッタ手段/尖鋭エミッタ
3 高電圧生成手段
4 接続線路/高電圧同軸ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
たとえば自動車の車室等である空間中の空気に負イオンを供給するためのイオン化装置であって、
前記イオン化装置は、
・電子が周辺空気の気体分子をイオン化するように電子を放出して不均質な電界内で加速するためのエミッタ手段(2)と、
・前記不均質な電界内で電子を放出および加速するのに必要な高電圧を生成するための高電圧生成手段(3)と
を有し、
前記エミッタ手段(2)は前記高電圧生成手段(3)から空間的に分離されて配置されており、
前記エミッタ手段(2)と前記高電圧生成手段(3)とは、有利にはフレキシブルである電気的接続線路(4)によって接続されている
ことを特徴とする、イオン化装置。
【請求項2】
前記エミッタ手段(2)は尖鋭エミッタ(2)であり、
前記尖鋭エミッタ(2)に発生する前記不均質な電界は直流電圧によって生成されるように構成されている、請求項1記載のイオン化装置。
【請求項3】
前記エミッタ手段(2)ないしは前記尖鋭エミッタ(2)と前記高電圧生成手段(3)との間に設けられる前記電気的接続線路(4)は、少なくとも内側導体と外側導体とを有する同軸ケーブル(4)である、請求項1または2記載のイオン化装置。
【請求項4】
前記同軸ケーブル(4)の外側導体は、車両接地電位より最大で設定可能な電圧値だけ高い電位に接続されており、たとえば車両接地電位より60V高い電位に接続されている、請求項3記載のイオン化装置。
【請求項5】
前記エミッタ手段ないしは尖鋭エミッタ(7,8)は少なくとも2つであり、
前記少なくとも2つのエミッタ手段ないしは尖鋭エミッタ(7,8)は前記高電圧生成手段(3)に接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のイオン化装置。
【請求項6】
前記尖鋭エミッタ(2)の尖鋭電極の周辺領域内に面電極が配置されており、
前記面電極は、前記尖鋭電極における電位より格段に正である電位に接続されている、請求項2から5までのいずれか1項記載のイオン化装置。
【請求項7】
前記エミッタ手段(2;7,8)と前記高電圧供給手段(3)との間に設けられる前記電気的接続線路(4,5,6)は、高抵抗の抵抗器を介して該高電圧供給手段(3)に接続されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のイオン化装置。
【請求項8】
前記エミッタ手段ないしは前記尖鋭エミッタのうち少なくとも1つは、バヨネット固定具(10)によって、空気排出部の近傍の取付位置ないしは接地位置に固定可能である、請求項1から7までのいずれか1項記載のイオン化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−131489(P2012−131489A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281613(P2011−281613)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(504085808)パラゴン アクチエンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】paragon AG
【住所又は居所原語表記】Schwalbenweg 29, D−33129 Delbrueck, Germany
【Fターム(参考)】