説明

ちらつき知覚閾値の測定装置、測定方法及び測定プログラム

【課題】適正距離で短時間にちらつきの知覚閾値を測定可能な測定装置、測定方法及び測定プログラムを提供する。
【解決手段】2枚の画像200、220を、一定の周波数で交互に表示することにより、点滅刺激を提示するステップと、点滅刺激を提示した状態で、被験者が、ちらつきを知覚する領域P2とちらつきを知覚しない領域P1との境界208を指定するステップと、境界208に対応する、2枚の画像上の位置の輝度差をちらつき知覚閾値として決定するステップとを含み、画像200は、所定領域210内において輝度が変化し、画像220は、所定領域210に対応する領域222内の輝度が一定である。測定距離の適否は、予め適正距離で撮像した画像中の顔領域と、測定時に撮像した画像中の顔領域とを比較して判定する。これにより、適正距離で短時間にちらつきの知覚閾値を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滅する刺激に対して人がちらつきを知覚し始める又は知覚しなくなる閾値(以下、ちらつき知覚閾値ともいう)の測定に関し、特に適正距離で、短時間に閾値を測定することができるちらつき知覚閾値の測定装置、測定方法及び測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代はストレス社会と言われており、日常生活の中で使える疲労の客観的計測及び評価方法が強く要求されている。従来、人が点滅する光源を見る際の「ちらつき」(フリッカー)の知覚が疲労度により変化する現象、とくに「ちらつき」を知覚することができる境界の点滅周波数(Critical Flicker Frequency:CFF)が疲労度の増大とともに低下する現象を用いて、疲れの定量的な評価(フリッカー検査)が行なわれている。フリッカー検査では、図1に示すように、点滅する光の点滅周波数を時間的に変化(単調に増大又は減少)させて被験者に提示し、点滅が見えない状態から見える状態に変化したとき、又は、点滅が見る状態から見えない状態に変化したときに、被験者にボタン押し等の反応をさせることにより周波数を測定する。図1は5回の測定状況を示している。即ち、周波数を、一定の開始値fsから減少させて被験者に提示し、各回の測定において被験者がちらつきを知覚したときにボタンが押され(時刻t1〜t5)、CFFとしてそれぞれ周波数f1〜f5が得られる状況を示している。ちらつき知覚閾値(以下、フリッカー値ともいう)は、例えば、得られた測定値f1〜f5の平均値として求められる。
【0003】
フリッカー検査を用いた疲労度の定量的評価は、特に産業衛生分野で幅広く用いられている。しかし、LED等を装備した専用のフリッカー値計測装置が必要であり、誰もが日常的に手軽に実施することはできなかった。
【0004】
これに対して本願発明者は、フリッカー検査と同じちらつき知覚原理に基づく精神的疲労度検査を、液晶ディスプレイ及びCRT等のリフレッシュレートが固定された画像表示装置を用いて行なうことを可能にする技術を開発した(下記特許文献1、2参照)。この技術では、従来のフリッカー検査で用いられている点滅光の点滅周波数を変化させる代わりに、点滅光のコントラストを変化させることにより、フリッカー知覚を生じさせる。これにより、携帯電話等の携帯端末装置、パーソナルコンピュータ等を用いて、日常的に簡易に精神的疲労の計測が可能になる。
【0005】
例えば、図2に示したように、画像表示装置に表示する画像の輝度を、最大輝度Lon(=Lon)から0まで、Loff、・・・、Loff、・・・、Loff=0と、一定の比率で減少させながら、画像を表示する。図2は、t=0〜T1の期間で、線形にn階調(例えば、n=256)変化させる場合を示す。図2において、時間軸に沿って交互に付した数字“1”及び“2”は、それぞれ輝度が最大の第1画像及び輝度を変化させた第2画像が表示されている期間を表す。第1画像の輝度値と第2画像の輝度値との比(Loff/Lon)であるコントラストが、ある値以下になるとちらつきが知覚されるようになる。ちらつきが知覚されるときのコントラストは、被験者及び疲労度によって変化する。
【0006】
また、特許文献2は、図3に示したような2枚の画像を用いて、被験者の恣意性を排除して客観的な測定ができること、及び、測定時間を短縮できることが開示されている。図3の2枚の画像は、右側の扇型領域の輝度値が異なる。右側の扇型領域が、コントラスがある領域である。これらの画像を交互に表示すると、右側の扇型領域のコントラストが、ある値以下になるとちらつきが知覚されるようになる。コントラストを設ける領域を4つの扇型領域の中からランダムに決定して、コントラストを変化させながら、被験者に、ちらつきを知覚した領域(コントラストを変化させた領域)を回答させる。正答か誤答かを判定することができるので、これにより、被験者の恣意性を排除して客観的な測定ができる。さらに、正答か誤答かに応じて、コントラストの変化量を調整しながら測定することで、測定時間を短くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−088862号公報
【特許文献2】国際公開第2011/030622号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1に示したような従来のフリッカー測定装置では、点滅が見えない状態から見える状態に移行する点を閾値として測定する場合、通常、どのような被験者にも対応できるように、固定した同じ開始点から測定を開始する。したがって、複数回(通常5回)計測を行なう場合、計測に長時間を要する問題がる。この点はコントラスを用いる方法においても同じである。上記特許文献2に開示された方法によれば、従来のフリッカー測定装置よりも、測定時間を短縮することができる。しかし、より短時間に測定できることが望ましい。
【0009】
また、フリッカー検査では、被験者と測定装置との距離(被験者の目と点滅刺激との距離)が適正に保たれた状態で測定されることが必要である。距離が適正でなければ、正確なちらつき知覚閾値を測定することができない問題がある。また、異なる距離で測定されたデータを同等に扱うことはできない。例えば、測定データを相互比較して、被験者の疲労度を判定する場合に十分な精度が得られない問題がある。
【0010】
したがって、本発明は、ちらつき知覚閾値を従来よりも短時間に測定できる測定装置、測定方法及び測定プログラムを提供することを目的とする。また、本発明は、適正距離でちらつき知覚閾値を測定できる測定装置、測定方法及び測定プログラムを提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、下記によって達成することができる。
【0012】
即ち、本発明に係るちらつき知覚閾値の第1の測定方法は、被験者に点滅刺激を提示してこの被験者のちらつき知覚閾値を測定する方法であって、2枚の画像を、画像表示面の同じ位置に、一定の周波数で交互に表示することにより、点滅刺激を提示するステップと、点滅刺激を提示した状態で、被験者が、点滅刺激によるちらつきを知覚する領域とちらつきを知覚しない領域との境界を指定するステップと、指定された境界に対応する、2枚の画像上の位置の輝度差をちらつき知覚閾値として決定するステップとを含み、2枚の画像のうちの一方の画像は、所定領域内において輝度が変化し、2枚の画像のうちの他方の画像は、所定領域に対応する領域内の輝度が一定である。
【0013】
好ましくは、ちらつき知覚閾値の第1の測定方法は、点滅刺激を提示するステップの前に、被験者の顔を、点滅刺激を提示してちらつき知覚閾値の測定を行なう測定装置の適正距離で、測定装置に装備された撮像装置により撮像するステップと、適正距離で撮像された画像から顔領域を抽出するステップと、境界を指定するステップの直後に、被験者の顔を撮像装置で撮像するステップと、境界を指定するステップの直後に撮像された画像から顔領域を抽出するステップと、境界を指定するステップの直後に撮像された画像から抽出された顔領域の大きさと、適正距離で撮像された画像から抽出された顔領域の大きさとを比較して、境界を指定したときの、被験者の目と点滅刺激との距離が適正か否かを判定するステップとを、さらに含む。
【0014】
より好ましくは、所定領域は帯状領域であり、所定領域の輝度は、帯状領域の延伸方向に沿って変化し、延伸方向と交差する方向に沿って一定の値である。
【0015】
さらに好ましくは、所定領域は1つの閉曲線によって画定され、所定領域の輝度は、所定領域内の所定の点と所定領域の外周上の任意の1点とを結ぶ直線上で一定の値であり、所定の点を中心とする円周に沿って変化する。
【0016】
好ましくは、所定領域は1つの閉曲線によって画定され、所定領域の輝度は、所定領域内の所定の点と所定領域の外周上の任意の1点とを結ぶ直線に沿って変化し、所定の点を中心とする円周に沿って一定の値である。
【0017】
より好ましくは、所定領域の輝度の変化は、単調増加又は単調減少であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るちらつき知覚閾値の第2の測定方法は、被験者に点滅刺激を提示してこの被験者のちらつき知覚閾値を測定する方法であって、被験者の顔を、ちらつき知覚閾値の測定に使用する測定装置の適正距離で撮像するステップと、適正距離で撮像された画像から顔領域を抽出するステップと、被験者に点滅刺激を提示してこの被験者のちらつき知覚閾値を測定するステップと、ちらつき知覚閾値を測定した直後に、被験者の顔を撮像するステップと、ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された画像から顔領域を抽出するステップと、ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された画像から抽出された顔領域の大きさと、適正距離で撮像された画像から抽出された顔領域の大きさとを比較して、ちらつき知覚閾値を測定したときの、被験者の目と点滅刺激との距離が適正か否かを判定するステップとを含む。
【0019】
本発明に係るちらつき知覚閾値の第3の測定方法は、被験者に点滅刺激を提示してこの被験者のちらつき知覚閾値を測定する方法であって、測定装置により被験者に点滅刺激を提示してこの被験者のちらつき知覚閾値を測定するステップと、ちらつき知覚閾値を測定した直後に、被験者の顔を測定装置に装備された撮像装置で撮像するステップと、ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された画像から顔領域を抽出するステップと、ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された画像から抽出された顔領域の大きさと、被験者の顔の大きさとから、撮像装置の光学特性を考慮して測定距離を求めるステップと、求められた測定距離が、ちらつき知覚閾値の測定における適正距離であるか否かを判定するステップとを含む。
【0020】
本発明に係るちらつき知覚閾値の第1の測定装置は、2枚の画像を同じ位置に一定の周波数で交互に表示することにより、点滅刺激を被験者に提示する表示部と、点滅刺激を提示した状態で、被験者に、点滅刺激によるちらつきを知覚する領域とちらつきを知覚しない領域との境界を指定させるための操作部とを備え、指定された境界に対応する、2枚の画像上の位置の輝度差をちらつき知覚閾値として決定し、2枚の画像のうちの一方の画像は、所定領域内において輝度が変化し、2枚の画像のうちの他方の画像は、所定領域に対応する領域内の輝度が一定である。
【0021】
本発明に係るちらつき知覚閾値の第2の測定装置は、被験者に点滅刺激を提示してこの被験者のちらつき知覚閾値を測定する測定装置であって、被験者の顔を撮像する撮像部と、撮像された画像から顔領域を抽出する抽出部とを備え、ちらつき知覚閾値を測定したときの、被験者の目と点滅刺激との距離が適正か否かを、抽出された顔領域を用いて判定する判定部とを備え、判定部は、ちらつき知覚閾値を測定した直後に、撮像部により撮像された画像から、抽出部により抽出された顔領域の大きさと、撮像部により、被験者の顔を測定装置の適正距離で撮像した画像から、抽出部により抽出された顔領域の大きさとを比較して、ちらつき知覚閾値を測定したときの距離が適正か否かを判定する。
【0022】
本発明に係るちらつき知覚閾値の第1の測定プログラムは、操作部及び表示部を備えたコンピュータ又は携帯端末装置に、2枚の画像を、表示部の同じ位置に、一定の周波数で交互に表示することにより、点滅刺激を提示する機能と、点滅刺激を提示した状態で、被験者による、点滅刺激によるちらつきを知覚する領域とちらつきを知覚しない領域との境界を指定するための操作部の操作を受付ける機能と、指定された境界に対応する、2枚の画像上の位置の輝度差をちらつき知覚閾値として決定する機能とを実現させ、2枚の画像のうちの一方の画像は、所定領域内において輝度が変化し、2枚の画像のうちの他方の画像は、所定領域に対応する領域内の輝度が一定であることを特徴とするちらつき知覚閾値の測定プログラム。
【0023】
本発明に係るちらつき知覚閾値の第2の測定プログラムは、表示部及び撮像部を備えたコンピュータ又は携帯端末装置に、撮像部により、ちらつき知覚閾値を測定する場合の適正距離で被験者の顔を撮像する機能と、適正距離で撮像された画像から顔領域を抽出する機能と、表示部により被験者に点滅刺激を提示してこの被験者のちらつき知覚閾値を測定する機能と、ちらつき知覚閾値を測定した直後に、撮像部により被験者の顔を撮像する機能と、ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された画像から顔領域を抽出する機能と、ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された画像から抽出された顔領域の大きさと、適正距離で撮像された画像から抽出された顔領域の大きさとを比較して、ちらつき知覚閾値を測定したときの、被験者の目と点滅刺激との距離が適正か否かを判定する機能とを実現させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、輝度が2次元分布する画像を用いて点滅刺激を提示することにより、種々のコントラスト差を一度に被験者に提示するので、ちらつきを知覚する領域とちらつきを知覚しない領域との境界から、ちらつき知覚閾値を決定することができる。被験者は、点滅刺激の提示後、直ちに境界を知覚できるので、極めて短時間でちらつき知覚閾値を測定することができる。点滅刺激の表示装置としてタッチ操作が可能な装置を用いれば、1秒以内での測定も可能である。
【0025】
また、ちらつき閾値の測定装置の適正距離で撮像した画像から抽出した顔領域と、ちらつき閾値の測定時に撮像した画像から抽出した顔領域とを比較することによって、ちらつき閾値の測定時の測定距離が適正であるか否かを判定することができる。したがって、適正距離で測定されなかったデータを捨てることができ、得られるデータは全て適正距離で測定されたデータであるので、測定データの相互比較が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来のちらつき知覚閾値の測定における点滅周波数の変化を示すグラフである。
【図2】従来のちらつき知覚閾値の測定における点滅コントラストの変化を示すグラフである。
【図3】従来のちらつき知覚閾値としてコントラストを測定する場合に被験者に提示する画像を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るちらつき知覚閾値の測定装置の構成の概要を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るちらつき知覚閾値の測定方法を実現するためのプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図6】被験者に提示する2枚の画像を示す図である。
【図7】被験者に提示する2枚の画像を示す図である。
【図8】被験者に提示する画像を示す図である。
【図9】被験者に提示する画像を示す図である。
【図10】被験者に提示する画像の輝度変化を示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るちらつき知覚閾値の測定装置の構成の概要を示すブロック図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係るちらつき知覚閾値の測定において適正距離での測定を実現するためのプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図13】キャリブレーションを説明する図である。
【図14】測定距離の判定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0028】
(第1の実施の形態)
図4を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るちらつき知覚閾値の測定装置100は、演算処理部(以下、CPUと記す)102、読出専用メモリ(以下、ROMと記す)104、書換可能メモリ(以下、RAMと記す)106、記録部108、タイマ110、インターフェイス部(以下、IF部と記す)112、バス114、表示部116、及び操作部118を備えている。CPU102は、測定装置100全体を制御する。ROM104は不揮発性の記憶装置であり、測定装置100の動作を制御するためのプログラム及びデータが記憶されている。RAM106は、揮発性の記憶装置である。記録部108は、通電が遮断された場合にもデータを保持する不揮発性記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等である。CPU102は、バス114を介してROM104からプログラムをRAM106上に読出して、RAM106の一部を作業領域としてプログラムを実行する。CPU102は、プログラムにしたがって測定装置100を構成する各部の制御を行なう。
【0029】
タイマ110は、内部クロックを用いて時刻情報を出力する。IF部112は、CPU102と表示部116及び操作部118とのインターフェイスである。バス114には、CPU102、ROM104、RAM106、記録部108、タイマ110、及びIF部112が接続されている。各部間のデータ(制御情報を含む)交換は、バス114を介して行なわれる。
【0030】
表示部116は、画像を表示するための表示パネル(液晶パネル等)及びそれを駆動するための駆動部を備えている。表示部116は、IF部112を介して伝送される画像データを、所定のリフレッシュレートで表示する。IF部112と表示部116との間で伝送される画像信号の様式(仕様)に応じてIF部112及び駆動部が設計されていれば、画像信号はデジタルであってもアナログであってもよい。操作部118は、キー、パッド等を備えており、被験者は操作部118を操作して測定装置100に対し指示を行なう。
【0031】
測定装置100として、例えば公知のコンピュータや携帯端末装置(携帯電話、PHS、PDA等)を使用することができる。
【0032】
図5を参照して、測定装置100を用いたちらつき知覚閾値の測定について説明する。
【0033】
ステップ300において、CPU102は、記録部108から2つの画像データをRAM106に読出す。読出される2枚の画像のうち1枚の画像は、輝度が変化する所定の2次元領域(以下、輝度変化領域ともいう)を含む画像であり、もう1枚は、輝度変化領域に対応する領域の輝度が一様である画像である。例えば、図6に示すような2枚の画像である。第1画像200は、横長の帯状領域210とその背景領域212とから構成されている。帯状領域210内の輝度値は、左端領域202の輝度値が最も大きく、右に行くにしたがって輝度値が線形に減少し、右端領域204で輝度値が最も小さくなるように分布している。例えば、8ビットの256階調の画像である場合、左端領域202の輝度値は255、右端領域204の輝度値は0である。一方、第2画像220の帯状領域210に対応する領域222の輝度値は一定であり、例えば255である。第1画像200の背景領域212、及び第2画像220の背景領域224の輝度は何れも一定であり、例えば255である。なお、階調幅(最大輝度値と最小輝度値との差)は、8ビット(256階調)に限定されず、任意である。例えば、3〜7、9〜11ビット(8、16、32、64、128、512、1024、2048階調)等であってもよいし、これら以外の値であってもよい。また、隣接する領域の輝度値の差も、一定でなくてもよい。
【0034】
ステップ302において、CPU102は、現在時刻をタイマ110から取得して、RAM106に記憶した後、2つの画像データを所定の周期で交互に、IF部112を介して表示部116に伝送する。表示部116は、受信した画像データを、所定のリフレッシュレート(例えば60Hz)で表示し、被験者に提示する。
【0035】
図6に示した2枚の画像を表示部116に交互に表示することは、従来の時間的なコントラスト変化(図2参照)を、2次元的なコントラスト分布(輝度値の2次元分布)として一度に提示することになる。したがって、被験者は、輝度変化領域(帯状領域210)の一部の領域でちらつきを知覚し、その他の領域ではちらつきを知覚しない。ちらつきを知覚できる領域と知覚できない領域との境界を、コントラスト変化知覚の閾値、即ちフリッカー値として規定できる。例えば、背景領域212の輝度が、左端領域202と同じである場合、被験者は、帯状領域210の範囲P1の領域でちらつきを知覚できず、範囲P2の領域(領域206から右端領域204まで)でちらつきを知覚する。この場合、境界208が知覚される。また、例えば、背景領域212の輝度が、右端領域204と同じである場合、被験者は、帯状領域210の範囲P1の領域でちらつきを知覚し、範囲P2の領域(領域206から右端領域204まで)でちらつきを知覚できない。この場合にも、被験者は、境界208を知覚する。
【0036】
ステップ304において、CPU102は、被験者によって操作部118が操作され、輝度変化領域内の点が指定されたか否かを判定する。輝度変化領域内の点が指定されたと判定された場合、指定された点を特定する情報をRAM106に記憶し、ステップ310に移行する。操作されない場合、又は操作されても輝度変化領域内の点が指定されていない場合、ステップ306に移行する。
【0037】
ちらつきを知覚できる領域と知覚できない領域の境界を、被験者が指定する方法は、表示部116に矢印等のカーソルを表示して、そのカーソルを操作部118の矢印キーで移動させた後、操作部118の確定キーを押せばよい。表示部116にタッチパネルディスプレイが採用されていれば、被験者がタッチパネルディスプレイにタッチして境界を指定できるようにすればよい。
【0038】
ステップ306において、CPU102は、タイマ110から現在時刻を取得し、ステップ302でRAM106に記憶した時刻から所定時間Tが経過したか否かを判定する。所定時間Tが経過したと判定された場合ステップ310に移行する。所定時間Tが経過していないと判定された場合、ステップ304に戻る。これによって、所定時間Tの間、2枚の画像を交互に表示して、操作部118が操作されるのを待つ。
【0039】
所定時間Tが経過した場合、ステップ310においてCPU102は、画像の表示を停止し、所定のメッセージを表示部116に表示して、ステップ312に移行する。所定のメッセージは、例えば、「測定に失敗しました。」等の正しく測定できなかったことを表すメッセージである。
【0040】
ステップ310において、CPU102は、ステップ304でRAM106に記憶した指定された点を特定する情報を読出し、表示した第1画像データ上の対応する点の輝度値を決定し、記録部108に被験者のフリッカー値として保存する。
【0041】
ステップ312において、CPU102は終了するか否かを判定する。終了しないと判定された場合、ステップ300に戻る。例えば、CPU102は、表示部116に「もう一度測定しますか?」等のメッセージと、「はい」及び「いいえ」の選択肢とを表示し、ユーザの選択操作によって、終了するか否かを判定する。ユーザが再測定を選択した場合、ステップ300以降の処理を繰返す。
【0042】
以上によって、1回だけ(所定の時間T以内)、輝度値が2次元的に分布する第1画像と、輝度値が一様な第2画像とを用いて点滅表示することにより、被験者のフリッカー値を極めて短時間に測定することができる。被験者は、点滅している領域と点滅していない領域とを、ほぼ一瞬に知覚することができるので、被験者が操作部118を操作して境界を指定するのに要する時間で測定が完了する。被験者の操作時間を短縮するには、表示部116にタッチパネルディスプレイを採用して、被験者が点滅の境界にタッチして、境界を直接指定できるようにすることが好ましい。
【0043】
点滅刺激として提示する画像は、図6に示した画像に限定されない。図7に示すような、画像を用いてもよい。即ち、第1画像及び第2画像として、それぞれ画像240、260を使用することができる。画像240は、輝度変化領域が円形領域であり中心の周りに(円周に沿って)、輝度値が変化している。輝度変化領域内の輝度値は、扇型領域242の輝度値が最も大きく、右回りに移動するにしたがって輝度値が線形に減少し、扇型領域244で輝度値が最も小さくなるように分布している。なお、扇型領域246は、輝度値が最大の領域と最小の領域の境界になるので、任意の輝度値であればよい。例えば、扇型領域242と同じ輝度値、扇型領域244と同じ輝度値、背景と同じ輝度値等である。この場合に、被験者は、ちらつきを知覚できる領域と知覚できない領域との境界として、例えば矢印250で示した半径方向の線を指定する。なお、扇型領域を三角形領域として、輝度変化領域を多角形領域としてもよい。
【0044】
また、輝度変化領域は、図5のような直線状の帯状領域に限定されず、任意の幅のある曲線であってもよい。例えば、両端部が開放された渦巻状の帯状領域であっても、図8に示したような開放端が無い環状の帯状領域(図8は円環)であってもよい。また、輝度変化領域は、図9に示したように、中心から半径方向に輝度値が変化する円形領域であってもよい。これらの何れの画像であっても、ちらつきを知覚できる領域と知覚できない領域との境界を、被験者が指定することができる。
【0045】
また、背景領域は無くてもよい。例えば、輝度変化領域が図6のような矩形であれば、表示画面全体が輝度変化領域となる画像を使用してもよい。
【0046】
また、上記では、輝度値の変化は、2次元面上の所定方向に沿って線形に増加又は減少する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、図10に示したように、輝度値の変化パターンは任意である。例えば、輝度値は、線500のように一定の傾きで変化しても、線502のように複数の傾きの線分のように変化しても、線504、506のように曲線状に変化してもよい。なお、実際の輝度値は階調値として表わされるので、離散的な値、例えば0以上の整数値である。また、輝度値の変化は、単調減少又は単調増加でなくてもよい。図10の線510、512、514のように、輝度変化領域の両端以外に、最大値、最小値、極大値又は極小値を含む線であってもよい。例えば、線500のように輝度値が変化する画像を第1画像として使用した場合、点Aが、ちらつきを知覚できる領域と知覚できない領域との境界として指定される。これに対して、中央付近で輝度値が最大となる折れ線510のように輝度値が変化する画像を第1画像として使用した場合、点B及び点Cが、ちらつきを知覚できる領域と知覚できない領域との境界として指定され得る。この場合、被験者が、点B及び点Cの少なくとも一方を指定すれば、対応する輝度値をフリッカー値として決定することができる。したがって、狭い範囲で輝度値が急激に変化しないようなパターン(被験者が境界を指定することができるパターン)であれば、輝度変化領域は任意の図形(画像)であってよい。仮に、被験者が、ちらつきを知覚できる領域と知覚できない領域との境界を複数知覚したとしても、何れか1箇所を指定すれば、対応する輝度値をフリッカー値として決定することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0048】
図11を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るちらつき知覚閾値の測定装置120は、CPU102、ROM104、RAM106、記録部108、タイマ110、IF部122、バス114、表示部116、操作部118、及び撮像部124を備えている。測定装置120は、図1に示した測定装置100に撮像部124が追加された構成である。IF部122は、撮像部124とのインターフェイスを行なう点でIF部112と異なるので、異なる符号を付している。ここでは、撮像部124に関する説明を行ない、重複する説明は繰返さない。
【0049】
撮像部124は、例えばイメージセンサ(CCD、CMOSイメージセンサ等)であり、CPU102の制御を受けて、撮像を行なう。撮像部124から出力されるデータは、IF部122を介してRAM106に伝送され、必要に応じて記録部108に画像データとして保存される。撮像の指示は、ユーザが操作部118を操作することによって行なわれる。
【0050】
図12を参照して、測定装置120を用いたちらつき知覚閾値(フリッカー値)の測定について説明する。なお、ここでは、ちらつき知覚閾値の測定は、図5と同じ方法で行なうこととする。図12において、図5のフローチャートと同じステップには、同じ符号を付しているので、重複説明は繰返さない。
【0051】
ステップ400において、実際の測定を行なう前に、CPU102はキャリブレーションを行なう。具体的には、図13に示したように、被験者が、測定装置120を用いて、自分の目から表示部116を適正距離(例えば50cm)だけ離した状態で、自分の顔の撮影を行なう。CPU102は、被験者による操作部118の操作に応じて撮像部124を制御して、撮像を行ない、画像データを記録部108に保存する。CPU102は、保存した画像データに対して画像処理を実行して顔領域を抽出し、顔領域の大きさの情報(例えば、抽出された領域に外接する長方形の長辺及び短辺の長さ(画素値))を記録部108に保存する。なお、画像データから顔を抽出する処理は公知の方法を用いればよい。
【0052】
ステップ300〜308において、所定の点滅画像を表示してフリッカー値を測定する。
【0053】
被験者による操作部118の操作によって、輝度変化領域内の点が指定されたと判定された場合、ステップ402において、CPU102は、撮像部124を制御して撮像を行ない、撮像した画像データを記録部108に記録する。
【0054】
ステップ404において、CPU102は、ステップ402で記録部108に保存した画像データ対して画像処理を実行して顔領域を抽出し、顔領域の大きさを求める。さらに、CPU102は、ステップ400で求めた顔領域の大きさの情報を記録部108から読出し、求めた顔領域の大きさと比較して、被験者の目と測定装置120の表示部116との距離(測定距離)が適正であるか否かを判定する。適正距離であると判定された場合、ステップ310に移行し、ステップ304で指定された点を特定する情報からフリッカー値を求めて、記録部108に保存する。適正距離であると判定されなかった場合、ステップ308に移行する。
【0055】
1つの撮像装置で同じ大きさの物を撮像する場合、その物と撮像装置との距離、及び撮像に用いた光学系の倍率に応じて、得られる画像中のその物の大きさは(画素値)決まる。したがって、ステップ402において、ステップ400における適正距離での撮像時から、測定装置120の倍率を変更せずに撮像した場合、ステップ400において適正距離で撮像した画像中の顔領域の大きさが、ステップ402で撮像した画像中の顔領域の大きさとほぼ等しければ、適正距離(50cm)で測定されたことになる。例えば、図14に示すように、ステップ400において中央の画像が撮像されていた場合、ステップ402で撮像した画像が左端の画像であれば、被験者の目と表示部116との距離(例えば100cm)は適正距離よりも大きい。また、右端の画像であれば、被験者の目と表示部116との距離(例えば20cm)は適正距離よりも小さい。なお、ステップ402において、ステップ400における適正距離での撮像時から、測定装置120の倍率を変更して撮像した場合、ステップ402で撮像された画像をそのまま使用することは適切ではない。その場合には、ステップ402で撮像した画像を、ステップ400における適正距離での撮像時の倍率と等価な倍率の画像に変換した画像を用いて、上記の比較を行なう。
【0056】
以上によって、適正距離で測定されたフリッカー値のみを保存することができる。
【0057】
上記では、被験者が操作部118を操作したときに、撮像を行なう場合を説明したが、これに限定されない。例えば、点滅刺激を提示してから、被験者が操作部118を操作するまでの間、所定の時間間隔で撮像してもよい。その場合、撮像した画像から顔を抽出して、基準の大きさと比較して、適正な大きさでなければ、表示部116に適正距離を維持させるメッセージ(例えば、「顔を近づけてください。」、「顔を遠ざけてください。」等)を表示することができる。
【0058】
また、同じ被験者に対して測定を行なう場合、毎回キャリブレーション(ステップ400)を行なわなくてもよい。少なくとも1回キャリブレーションを行ない、その結果(撮像した画像データそのものでも、抽出した顔領域の大きさのデータでもよい)と撮像倍率の情報とを記録部108に保存しておけば、それらを用いて、上記のように適正距離でフリッカー値が測定されたか否かを判定することができる。その場合、撮像倍率が異なっているときには、上記したように等価な倍率の画像に変換することが必要である。なお、髪型を変えた場合等、顔領域の抽出処理に影響する変化がある場合には、その都度キャリブレーションを行なうことが好ましい。
【0059】
また、キャリブレーション(ステップ400)を全く行なわないようにすることもできる。例えば、人体寸法データベースなどから得られる顔の標準サイズ(平均値等)を用いる。日本人の場合、頭頂から顎までの距離は、男性に関して約24cm、女性に関して約23cm、頭幅は、男性に関して約16cm、女性に関して約15cmである。このようなデータを用いれば、被験者の性別を指定すれば、被験者の顔の大きさを、近似値ではあるが決定することができる。したがって、決定された値と撮像装置の光学特性とを用いて、フリッカー値の測定時に撮像した被験者の画像中の顔領域の大きさから、測定距離を概算することができ、適正距離で測定されたか否かを判定することができる。撮像装置の光学特性とは、撮像装置の焦点距離、イメージセンサ(CCD等)の大きさ及び解像度(縦横の画素数)、並びに、イメージセンサの画素と撮像される画像データの画素との対応関係(必ずしも1対1ではない)である。なお、被験者が自分の顔の大きさを知っていれば、その値を用いて、上記と同様に測定距離を計算することができる。
【0060】
なお、フリッカー値の測定方法は、図5に示した方法に限定されず、従来の周波数を測定する方法(図1参照)、コントラストを時間的に変化させて測定する方法(図2、図3参照)であってもよい。
【0061】
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
100、120 ちらつき知覚閾値の測定装置
102 演算処理部(CPU)
104 読出専用メモリ(ROM)
106 書換可能メモリ(RAM)
108 記録部
110 タイマ
112、122 インターフェイス部(IF部)
114 バス
116 表示部
118 操作部
124 撮像部
210、240 第1画像
220、260 第2画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に点滅刺激を提示して該被験者のちらつき知覚閾値を測定する方法であって、
2枚の画像を、画像表示面の同じ位置に、一定の周波数で交互に表示することにより、前記点滅刺激を提示するステップと、
前記点滅刺激を提示した状態で、前記被験者が、前記点滅刺激によるちらつきを知覚する領域とちらつきを知覚しない領域との境界を指定するステップと、
指定された前記境界に対応する、2枚の前記画像上の位置の輝度差をちらつき知覚閾値として決定するステップとを含み、
2枚の前記画像のうちの一方の画像は、所定領域内において輝度が変化し、
2枚の前記画像のうちの他方の画像は、前記所定領域に対応する領域内の輝度が一定であることを特徴とするちらつき知覚閾値の測定方法。
【請求項2】
点滅刺激を提示する前記ステップの前に、前記被験者の顔を、前記点滅刺激を提示してちらつき知覚閾値の測定を行なう測定装置の適正距離で、前記測定装置に装備された撮像装置により撮像するステップと、
適正距離で撮像された画像から顔領域を抽出するステップと、
境界を指定する前記ステップの直後に、前記被験者の顔を前記撮像装置で撮像するステップと、
境界を指定する前記ステップの直後に撮像された前記画像から顔領域を抽出するステップと、
境界を指定する前記ステップの直後に撮像された前記画像から抽出された顔領域の大きさと、前記適正距離で撮像された前記画像から抽出された顔領域の大きさとを比較して、前記境界を指定したときの、前記被験者の目と前記点滅刺激との距離が適正か否かを判定するステップとを、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載のちらつき知覚閾値の測定方法。
【請求項3】
前記所定領域は帯状領域であり、
前記所定領域の輝度は、前記帯状領域の延伸方向に沿って変化し、前記延伸方向と交差する方向に沿って一定の値であることを特徴とする請求項1又は2に記載のちらつき知覚閾値の測定方法。
【請求項4】
前記所定領域は1つの閉曲線によって画定され、
前記所定領域の輝度は、前記所定領域内の所定の点と前記所定領域の外周上の任意の1点とを結ぶ直線上で一定の値であり、前記所定の点を中心とする円周に沿って変化することを特徴とする請求項1又は2に記載のちらつき知覚閾値の測定方法。
【請求項5】
前記所定領域は1つの閉曲線によって画定され、
前記所定領域の輝度は、前記所定領域内の所定の点と前記所定領域の外周上の任意の1点とを結ぶ直線に沿って変化し、前記所定の点を中心とする円周に沿って一定の値であることを特徴とする請求項1又は2に記載のちらつき知覚閾値の測定方法。
【請求項6】
前記所定領域の輝度の変化は、単調増加又は単調減少であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のちらつき知覚閾値の測定方法。
【請求項7】
被験者に点滅刺激を提示して該被験者のちらつき知覚閾値を測定する方法であって、
被験者の顔を、ちらつき知覚閾値の測定に使用する測定装置の適正距離で、前記測定装置に装備された撮像装置により撮像するステップと、
適正距離で撮像された画像から顔領域を抽出するステップと、
前記測定装置により被験者に点滅刺激を提示して該被験者のちらつき知覚閾値を測定するステップと、
ちらつき知覚閾値を測定した直後に、前記被験者の顔を前記撮像装置で撮像するステップと、
ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された前記画像から顔領域を抽出するステップと、
ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された前記画像から抽出された顔領域の大きさと、前記適正距離で撮像された前記画像から抽出された顔領域の大きさとを比較して、ちらつき知覚閾値を測定したときの、前記被験者の目と前記点滅刺激との距離が適正か否かを判定するステップとを含むことを特徴とするちらつき知覚閾値の測定方法。
【請求項8】
被験者に点滅刺激を提示して該被験者のちらつき知覚閾値を測定する方法であって、
測定装置により被験者に点滅刺激を提示して該被験者のちらつき知覚閾値を測定するステップと、
ちらつき知覚閾値を測定した直後に、前記被験者の顔を前記測定装置に装備された撮像装置で撮像するステップと、
ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された前記画像から顔領域を抽出するステップと、
ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された前記画像から抽出された顔領域の大きさと、前記被験者の顔の大きさとから、前記撮像装置の光学特性を考慮して測定距離を求めるステップと、
求められた前記測定距離が、ちらつき知覚閾値の測定における適正距離であるか否かを判定するステップとを含むことを特徴とするちらつき知覚閾値の測定方法。
【請求項9】
2枚の画像を同じ位置に一定の周波数で交互に表示することにより、点滅刺激を被験者に提示する表示部と、
前記点滅刺激を提示した状態で、前記被験者に、前記点滅刺激によるちらつきを知覚する領域とちらつきを知覚しない領域との境界を指定させるための操作部とを備え、
指定された前記境界に対応する、2枚の前記画像上の位置の輝度差をちらつき知覚閾値として決定し、
2枚の前記画像のうちの一方の画像は、所定領域内において輝度が変化し、
2枚の前記画像のうちの他方の画像は、前記所定領域に対応する領域内の輝度が一定であることを特徴とするちらつき知覚閾値の測定装置。
【請求項10】
被験者に点滅刺激を提示して該被験者のちらつき知覚閾値を測定する測定装置であって、
被験者の顔を撮像する撮像手段と、
撮像された画像から顔領域を抽出する抽出手段とを備え、
ちらつき知覚閾値を測定したときの、前記被験者の目と前記点滅刺激との距離が適正か否かを、抽出された前記顔領域を用いて判定する判定手段とを備え、
前記判定手段は、ちらつき知覚閾値を測定した直後に、前記撮像手段により撮像された画像から、前記抽出手段により抽出された顔領域の大きさと、前記撮像手段により、被験者の顔を前記測定装置の適正距離で撮像した画像から、前記抽出手段により抽出された顔領域の大きさとを比較して、ちらつき知覚閾値を測定したときの前記距離が適正か否かを判定することを特徴とするちらつき知覚閾値の測定装置。
【請求項11】
操作部及び表示部を備えたコンピュータ又は携帯端末装置に、
2枚の画像を、前記表示部の同じ位置に、一定の周波数で交互に表示することにより、点滅刺激を提示する機能と、
前記点滅刺激を提示した状態で、前記被験者による、前記点滅刺激によるちらつきを知覚する領域とちらつきを知覚しない領域との境界を指定するための前記操作部の操作を受付ける機能と、
指定された前記境界に対応する、2枚の前記画像上の位置の輝度差をちらつき知覚閾値として決定する機能とを実現させ、
2枚の前記画像のうちの一方の画像は、所定領域内において輝度が変化し、
2枚の前記画像のうちの他方の画像は、前記所定領域に対応する領域内の輝度が一定であることを特徴とするちらつき知覚閾値の測定プログラム。
【請求項12】
表示部及び撮像部を備えたコンピュータ又は携帯端末装置に、
前記撮像部により、ちらつき知覚閾値を測定する場合の適正距離で被験者の顔を撮像する機能と、
前記適正距離で撮像された前記画像から顔領域を抽出する機能と、
前記表示部により被験者に点滅刺激を提示して該被験者のちらつき知覚閾値を測定する機能と、
ちらつき知覚閾値を測定した直後に、前記撮像部により前記被験者の顔を撮像する機能と、
ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された前記画像から顔領域を抽出する機能と、
ちらつき知覚閾値を測定した直後に撮像された前記画像から抽出された顔領域の大きさと、前記適正距離で撮像された前記画像から抽出された顔領域の大きさとを比較して、ちらつき知覚閾値を測定したときの、前記被験者の目と前記点滅刺激との距離が適正か否かを判定する機能とを実現させることを特徴とするちらつき知覚閾値の測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−228342(P2012−228342A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97965(P2011−97965)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】