説明

ぬいぐるみの目玉取り付け構造

【課題】 ぬいぐるみの目や瞳を構成する目玉部材の取り付けが非常に容易で、技術力、熟練度、技量等の異なる作業者が取り付けても、両目の間隔、目玉部材の取り付け位置、向きや角度等を同一に取り付けることができるぬいぐるみの目玉取り付け構造を提供する。
【解決手段】
【0032】
本発明に係るぬいぐるみの目玉取付け構造は、ぬいぐるみの目を構成する一対の目部材と、ぬいぐるみ内部から一対の目部材を同時に固定保持する一つの固定保持部材とからなることを特徴とする。また、固定保持部材は、目部材の保持角度と、一対の目部材間の距離を保持することを特徴とする。また、固定保持部材は、一対の固定保持片を連結してなる構造であっても良い。また、目部材及び固定保持部材は、ぬいぐるみとの接触面が湾曲状であっても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ぬいぐるみの顔に取り付けて目又は瞳を構成する目玉の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ぬいぐるみの表情を愛らしくするために、目や瞳を構成する目玉部材を使用するケースが多い。従来の目玉用部材は、実公平5−42870号公報に記載されたように、目玉本体部と一体に形成された固定脚部を有し、固定脚部と固定具を係合させて固定する構造のものが多い。この様な部材以外では、接着剤で目玉をぬいぐるみに接着する方法や、目玉部材をぬいぐるみに縫いつける方法等がある。
【特許文献1】実公平5−42870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ぬいぐるみの表情や印象は、顔のバランスや各パーツの形状によって変わるが、その中でも目が重要なポイントとされている。具体的には、目の位置や両目の間隔、目の向きや角度等によって表情や印象が異なるとされている。図11は、目の取り付け位置による表情の違いを示した説明図である。図11(a)は、目玉部材を正確な位置に取り付けた状態を示している。図11(b)は、一対の目玉部材間の間隔がずれた場合を示し、図11(c)は、目玉部材を取り付ける高さ位置がずれた場合を示している。図示されたように、目玉部材を取り付ける位置がずれると、表情や印象が異なることが分かる。特に、近年ではマンガ、アニメ、ゲーム等のキャラクターを模したぬいぐるみが人気であり、既存のキャラクターのイメージを損なわないように再現することが求められている。そのため、目玉部材は、正確な位置に取り付ける必要がある。しかし、ぬいぐるみを大量生産する場合、作製工程が分業化され、何人もの作業者が目玉部材の取り付け作業を行うため、作業者の技術力、熟練度、技量等によって目玉部材の取り付け位置にずれが生じてしまうという問題があった。
【0004】
また、上記した実公平5−42870号公報は、目玉部材の取り付け作業が容易になるという利点を有しているが、目玉部材の取り付け位置、向きや角度等は作業者が判断しなければならない。そのため、作業者の技術力、熟練度、技量等によって目玉部材の取り付け位置にずれが生じてしまうという問題があった。
【0005】
以上のことから、目玉部材の取り付けが非常に容易で、どの様な作業者であっても、両目の間隔、目玉部材の取り付け位置、向きや角度等にずれが生じないぬいぐるみの目玉取り付け構造又は方法の開発が切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係るぬいぐるみ等の目玉取付け構造は、ぬいぐるみの目を構成する一対の目部材と、ぬいぐるみ内部から一対の目部材を同時に固定保持する一つの固定保持部材とからなることを特徴とする。また、固定保持部材は、目部材の保持角度と、一対の目部材間の距離を保持することを特徴とする。
【0007】
また、固定保持部材は、一対の固定保持片を連結してなる構造であっても良い。
【0008】
また、目部材及び固定保持部材は、ぬいぐるみとの接触面が湾曲状であっても良い。
【0009】
また、目部材又は固定保持部材のどちらか一方の部材には略柱状の凸部が設けられ、もう一方の部材には凸部と連結する連結部が設けられていても良い。この凸部には複数の段部が設けられ、連結部は、段部と嵌合する凹部又は段部と係合する係合穴であっても良い。
【0010】
また、固定保持部材は、一対の固定保持片と、一対の固定保持片を結ぶ連結保持部材とからなり、連結保持部材は、固定保持片と着脱可能であっても良い。
【0011】
また、固定保持部材と目部材の連結時に対向しあう固定保持片と目部材の対向面において、目部材の対向面が固定保持片側の面内に収まる大きさであっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るぬいぐるみ等の目玉取付け構造は、ぬいぐるみの目を構成する一対の目部材と、ぬいぐるみ内部から一対の目部材を同時に固定保持する一つの固定保持部材とからなるため、一対の目部材の取り付け位置を容易に決定することができ、作業効率が向上する。更に、ぬいぐるみの目部取り付けに必要な部材数を減らすことができるため、生産性が向上する。
【0013】
また、固定保持部材は、目部材の保持角度と、一対の目部材間の距離を保持するため、作業者の能力、技術力、熟練度等に関係なく、目部材の取り付け位置や角度が同一のぬいぐるみを製造することができる。
【0014】
また、目部材及び固定保持部材は、ぬいぐるみとの接触面が湾曲状であるため、ぬいぐるみの丸みや膨らみ等を押しつぶすことなく目部材を取り付けることができ、ぬいぐるみの表情や印象を損なうおそれがない。
【0015】
また、固定保持部材は、一対の固定保持片と、一対の固定保持片を結ぶ連結保持部材とからなり、連結保持部材は、固定保持片と着脱可能であるため、目部材の形状や大きさが変化しても、固定保持片を任意に変更して対応することができ、汎用性を有する目玉取り付け構造となる。
【0016】
また、固定保持部材と目部材の連結時に対向しあう固定保持片の面と目部材の面において、目部材側の面は固定保持片側の面内に収まる構造であるため、目部材及び固定保持部材の連結時に、目部材をぬいぐるみの内側へ食い込ませると共に目部材の周囲を盛り上がらせて目部材を強調させることができ、ぬいぐるみの多様な表情や印象を表現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係るぬいぐるみの目玉取り付け構造2について図を参照にしながら説明する。図1は、本発明に係るぬいぐるみの目玉取り付け構造2の一実施の形態を示した説明図である。なお、これらの図は本発明を説明するためだけのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0018】
本発明に係るぬいぐるみ18の目玉取り付け構造2は、ぬいぐるみ18の目を構成する一対の目部材4と、ぬいぐるみ18内部から一対の目部材4を同時に固定保持する一つの固定保持部材6とからなることを特徴とする。更に、固定保持部材6は、目部材4の保持角度と、一対の目部材4間の距離を保持することを特徴とする。
【0019】
図2は、本発明に係る目部材4を示した図である。なお、本発明に係る目部材4とは、ぬいぐるみ18の外側から取り付けて目や瞳を構成する部材を指す。図2では、瞳部分を板状部材で形成しているが、半球状の部材を使用しても良く、ぬいぐるみ18の表情やイメージ等を考慮して適宜設定すれば良い。また、図示されたように、目部材4の一部を隆起させても良いし、動物や人の目の形に模して円形にしても良い。また、一対の目部材4は、両者が同一形状又は対称の形状である必要は無く、それぞれ異なる形状、大きさであっても良い。また、瞳の白目部分と黒目部分が異なる部材で形成し、組み合わせて目部材4としても良く、複数の部材を組み合わせて目部材4としても良い。
【0020】
次に、図3〜図5は、本発明に係る固定保持部材6を示した図である。固定保持部材6は、ぬいぐるみ18内部から一対の目部材4を同時に固定保持する部材を指す。この時、目部材4の保持角度と、一対の目部材4間の距離を保持できれば更に良い。この目的を達成できれば、固定保持部材6の形状は適宜設定すれば良い。本発明では、図3又は図4に示されたように、目部材4の形状に応じた一対の固定保持片8を連結し、固定保持部材6としている。図3は、一対の固定保持片8同士を連結した固定保持部材6で、図4は、一対の固定保持片8間に連結部材を設けた固定保持部材6を示している。また、図5に示されたように、連結保持部材10を一対の固定保持片8に連結固定して固定保持部材6としても良い。連結保持部材10の形状は、固定保持片8の形状、連結方法等によって適宜設定すれば良い。図5では、ブリッジ部の両端に、固定保持片8の連結部16に取り付けるリング部材を設けている。この連結保持部材10は、固定保持片8と着脱可能であっても良い。この時、連結保持部材10と固定保持片8の連結が容易に外れない連結方法であると更に良い。
【0021】
固定保持部材6の材料については、従来の目玉取り付け構造で使用されてきた材料を使用すれば良く、樹脂、ゴム、金属等を使用するのが良いが、その他の材料であっても使用可能である。また、固定保持部材6を一つの材料で形成する必要は無く、固定保持片8と連結部16の材料が異なるといったように、複数の材料を組み合わせても良い。同様に、連結保持部材10も固定保持片8と同一である必要は無い。
【0022】
また、図3又は図4では、一対の固定保持片8が平坦に連結固定されているが、図10に示されたように、角度を設けて連結しても良い。また、連結保持部材10は、図示されたように、連結保持部材10と固定保持片8の連結手段が角度を有して設けられていても良い。この角度は、目部材4の保持角度や、ぬいぐるみ18の形状に応じて設定すれば良い。また、連結された固定保持片8の角度を調節可能としても良い。例えば、固定保持片8同士の連結部分や、図4中の連結部分等にヒンジ等の調節機構を設ければ、固定保持片8の角度が調節可能となる。同様に、連結保持部材10のブリッジ部にヒンジ等の調節機構を設けても良い。
【0023】
目部材4又は固定保持部材6のどちらか一方の部材には、略柱状の凸部12が設けられ、もう一方の部材には凸部12と連結する連結部16が設けられているのが良い。なお、図中では目部材4に凸部12を設け、固定保持部材6に連結部16を設けているが、これは説明の便宜上だけのことである。図1では、目部材4に一つの凸部12を設け、固定保持部材6に二つの連結部16が設けられているが、凸部12及び連結部16の設置数は適宜設定すれば良い。例えば、凸部12の形成数よりも多くの連結部16を設ければ、凸部12と連結部16の連結箇所を選択することができるため、目部材4の取り付け位置を任意に変更することができる。また、図1中では、凸部12や連結部16を部材の中心に設けているが、他の箇所でも良い。また、図1中では、凸部12と固定保持部材6が直交するように設けられているが、目部材4の保持角度に応じて、凸部12の設置角度、設置箇所、連結部16の形状等を適宜設定しても良い。
【0024】
凸部12の形状については、図1に示されたように円柱状でも良いが、角柱状、台錐状、円錐状でも良い。また、図示されたように、凸部12側面に複数の段部14を設けるのが良い。この段部14は、凸部12と連結部16を係合・嵌合するための部材であり、突起や凹部でも良い。また、連結部16の形状についても、凸部12の形状や段部14の形状、凸部12との連結方法等に応じて適宜設定すれば良い。本発明では、図2〜図4中の断面図のように、凸部12が貫通する貫通穴縁部にキャップ状の係合部材を設け、連結部16としている。
【0025】
また、目部材4及び固定保持部材6のぬいぐるみ18との接触面を、図6に示されたように、湾曲状に形成しても良い。この時、目部材4を取り付けるぬいぐるみ18の部位と同じ湾曲状に形成すると更に良い。図7(a)は、目部材4及び固定保持部材6のぬいぐるみ18との接触面が、ぬいぐるみ18の丸みに応じた形状である場合の取り付け状態を示した図であり、図7(b)は、目部材4及び固定保持部材6のぬいぐるみ18との接触面が、平坦である場合の取り付け状態を示した図である。図7(b)は、目部材4及び固定保持部材6が平坦であるため、丸みをおびたぬいぐるみ18が目部材4の位置で不自然に平坦に押し潰されている。これに対し、図7(a)は、ぬいぐるみ18の丸みを潰すことなく、自然な曲線のまま目部材4が取り付けられていることが分かる。図中では目部材4及び固定保持部材6自体が湾曲状に形成されているが、ぬいぐるみ18との接触面が湾曲状で、その他の面は平坦であっても良い。
【0026】
また、固定保持部材6と目部材4は、図1や上記したように、両部材が同等の大きさであるのが良いが、固定保持部材6と目部材4の連結時に、対向しあう固定保持片8と目部材4の対向面のうち、目部材4の対向面が固定保持片8の対向面に収まる形状であっても良い。つまり、図8に示されたように、固定保持片8の対向面が目部材4の対向面よりも一回り大きい形状であっても良い。目部材4と固定保持片8の大きさが同じ場合は、図9(b)のように、固定保持片8がぬいぐるみ18内部から目部材4全体を支持することができる。これに対し、固定保持片8が目部材4よりも小さい場合は、固定保持片8がぬいぐるみ18内部から支持する面積が小さいため、図9(c)のように、目部材4が浮いた状態となってしまう。また、固定保持片8が目部材4よりも大きい場合は、図9(a)のように、目部材4がぬいぐるみ18やぬいぐるみの内側へ食い込むような状態となる。これにより、目部材4の輪郭がはっきりし、目部材4の周りの膨らみが瞼のように見えるため、実際の動物や人の目ように自然な印象を与えることができる。この時、ぬいぐるみ18やぬいぐるみの材料に毛足(起毛生地の毛部分)の長いものを使用すると目部材4が埋もれてしまうため、毛足が短いものや、毛足のない生地を使用するのが良い。また、図9(a)に示されたように、ぬいぐるみ18と固定保持片8間に弾力性を有する素材を設ければ、目部材4が食い込みやすくなるため、目部材4の周りが弾力によって隆起しやすくなり、より目部材4を際だたせることが可能となる。
【0027】
以上が本発明に係るぬいぐるみの目玉取り付け構造2に関する説明であるが、本発明の目的を逸脱しない限り、種々の条件や設定は変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る目玉取り付け構造の一実施の形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る目部材の一実施の形態を示す説明図である。
【図3】本発明に係る固定保持部材の一実施の形態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る固定保持部材の一実施の形態を示す説明図である。
【図5】本発明に係る目玉取り付け構造の一実施の形態を示す説明図である。
【図6】本発明に係る目玉取り付け構造の一実施の形態を示す説明図である。
【図7】図6に示した目玉取り付け構造の状態を示した比較図である。
【図8】本発明に係る目玉取り付け構造の一実施の形態を示す説明図である。
【図9】図9に示した目玉取り付け構造の状態を示した比較図である。
【図10】本発明に係る目玉取り付け構造の一実施の形態を示す説明図である。
【図11】本発明と従来の目玉部材の取り付け状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0029】
2 目玉取付け構造
4 目部材
6 固定保持部材
8 固定保持片
10 連結保持部材
12 凸部
14 段部
16 連結部
18 ぬいぐるみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ぬいぐるみの目を構成する一対の目部材と、該ぬいぐるみ内部から該一対の目部材を同時に固定保持する一つの固定保持部材とからなることを特徴とするぬいぐるみの目玉取り付け構造。
【請求項2】
前記固定保持部材は、前記目部材の保持角度と、前記一対の目部材間の距離を保持することを特徴とする請求項1に記載のぬいぐるみの目玉取り付け構造。
【請求項3】
前記固定保持部材は、一対の固定保持片を連結してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のぬいぐるみの目玉取り付け構造。
【請求項4】
前記目部材及び前記固定保持部材は、前記ぬいぐるみと接する面が湾曲状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のぬいぐるみの目玉取り付け構造。
【請求項5】
前記目部材又は前記固定保持部材のどちらか一方の部材には略柱状の凸部が設けられ、もう一方の部材には該凸部と連結する連結部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のぬいぐるみの目玉取り付け構造。
【請求項6】
前記凸部には複数の段部が設けられ、前記連結部は、前記段部と嵌合する凹部又は前記段部と係合する係合穴であることを特徴とする請求項5に記載のぬいぐるみの目玉取り付け構造。
【請求項7】
前記固定保持部材は、一対の固定保持片と、該一対の固定保持片を結ぶ連結保持部材とからなり、該連結保持部材は、該固定保持片と着脱可能であることを特徴とする1〜6のいずれかに記載のぬいぐるみの目玉取り付け構造。
【請求項8】
前記固定保持部材及び前記目部材の連結時に対向しあう該固定保持片と該目部材の対向面において、前記目部材の対向面は、前記固定保持片の対向面内に収まる大きさでことを特徴とする1〜7のいずれかに記載のぬいぐるみの目玉取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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