説明

ねじ止め用治具

【課題】固定部品を取付部に当接した後に手を離しても当接状態を維持させ、これにより取付作業性を向上させる。
【解決手段】引戸の戸枠上部にレール溝3aを下方に向けた状態で設置された引戸用ガイ
ドレール3の内奥部に位置する取付面3cにトリガ(固定部品)9を当接させてねじ止めする際に、トリガ9を保持するねじ止め用治具1である。レール溝3aに挿入可能な大きさに設定されるとともにトリガ9を着脱可能に保持する部品保持部5と、この部品保持部5の下側に配設され、レール溝3aの幅方向Cに弾性変形可能な挟着部としての側壁面31、32およびその側壁面31、32に形成された突条35とを備え、上記挟着部は、レール溝3aの幅寸法W2よりも広い幅寸法W6(>W2)に構成されるとともに部品保持部5に保持されたトリガ9を取付面3cに当接させた状態でレール溝内に配置されることにより、弾性回復力によりレール溝3aの縁部に圧接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指が入らない狭所や奥まった部分に各種の部品をねじ固定する際に、そのねじ固定位置に部品を仮止めすることができるねじ止め用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明が適用される部品として、建物の開口部を開閉する引戸に閉じ方向または開き方向のスライドアシスト力を加えるスライドアシスト装置のトリガを挙げることができる。
【0003】
上記スライドアシスト装置は、一般には引戸の自動閉じ装置として使用され、原理的には、引戸と戸枠との間に設けた引きバネのバネ力を閉じ方向のスライドアシスト力として引戸に加えるように構成される(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
その構成を、図5、図6によって簡単に説明する。なお、この図示例では、戸枠101内で引戸102が右側にスライドして開口部を開き、左側にスライドして開口部を閉じるようになっている。
【0005】
戸枠101の上側水平部には、その下側にガイドレール103が水平に取付けられ、一方、ガイドレール103内で転動するガイドローラ104が引戸102の上部に支持されている。ガイドレール103内には、ガイドローラ104の他に、引きバネ及びエア給排機構を内蔵したシリンダ105と、内外二重構造であって内部材および外部材の一方が他方に対してスライドする枠体106とが設けられ、この枠体106に、上記引きバネのバネ力を引戸102に伝えるバネ力伝達機構107が設けられている。
【0006】
上記バネ力伝達機構107は、シリンダ105の遊端側に水平軸まわりに回動可能に取付けられたスライド部材108と、戸枠101側のトリガ109とによって構成される。
【0007】
スライド部材108には、上向きに突出する幅広の突起110が設けられ、引戸102の閉じ動作の中間ストロークで、図5に示すように上記突起110がトリガ109の凸部109aに係合することにより、引きバネのバネ力がトリガ109に受け止められ、残りのストロークでバネ力が枠体106を通じて引戸102に閉じ方向の力(スライドアシスト力)として加えられる。これにより、引戸102が閉じ位置まで自動的にスライドする。
【0008】
このようなスライドアシスト装置に用いられるトリガ109は、取付ねじ111により、トリガ109自身及びガイドレール103の各取付孔112、113を介して戸枠101の上側水平部の下面にねじ止めされる。
【0009】
このねじ止めに際し、ガイドレール103のレール溝103aは狭くて手指が入らないため(図6参照)、トリガ109及び取付ねじ111を直接、手でねじ込み位置に保持することができず、取付用治具が用いられる場合がある。その治具としては、図7〜図9に示すものが提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0010】
その提案治具Aは、基端側に手指で把持される把持部114、先端側に部品としてのトリガ109を保持する凹部115をそれぞれ設けるとともに、取付ねじ111が挿通されるねじ通し孔117を、上記凹部115に保持されたトリガ109の取付孔112に連通する状態で基端側から先端側までトンネル状に貫通して設けた構成である。なお、この状態で凹部115には、トリガ109の凸部109aが取付けられる。
【0011】
この治具Aによると、凹部115にトリガ109を保持した状態で把持部114を手で把持し、トリガ109を治具Aごと取付面(ガイドレール103の上部内奥面)に押し付けて位置決めした状態で、取付ねじ111をねじ通し孔117に基端側から差し込んでねじ込むことにより、トリガ109を上記取付面に取付けることができる。すなわち、手指が入らない狭所や奥まった部分でも、治具が入る開口寸法があれば、どんな場所でも部品を正確に位置決めし、かつ、ねじ通し孔によって取付ねじのぐらつきや傾きを抑えながら簡単に能率良くねじ止めすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭57−77570号公報
【特許文献2】特開2003−138828号公報
【特許文献3】特開2000−165027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、提案治具による場合には、治具の把持部を手で把持して部品をねじにより取付面に取付ける必要があり、両手を自由に使うことができず、取付作業性に改善の余地が残されていた。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、固定部品を取付面に当接した後に手を離しても当接状態を維持させ得、これにより取付作業性を向上させることが可能なねじ止め用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るねじ止め用治具は、引戸の戸枠上部にレール溝を下方に向けた状態で設置された引戸用ガイドレールの内奥部に位置する取付面に固定部品を当接させてねじ止めする際に、当該固定部品を保持するねじ止め用治具であって、上記レール溝に挿入可能な大きさに設定されるとともに上記固定部品を着脱可能に保持する部品保持部と、この部品保持部の下側に配設され、上記レール溝の幅方向に弾性変形可能な挟着部とを備え、上記挟着部は、上記レール溝の幅よりも幅広に構成されるとともに上記部品保持部に保持された固定部品を上記ガイドレールの取付面に当接させた状態で上記レール溝内に配置されることにより、弾性回復力により上記レール溝の縁部に圧接されることを特徴とする。この発明による場合には、部品保持部に固定部品を保持し、その固定部品をガイドレールの取付面に当接させると、レール溝の幅よりも幅広の挟着部がレール溝に挟まれて、レール溝の両縁から受ける力により弾性変形可能な挟着部が内方(レール溝の幅中央側)へ向けて弾性変形し、その弾性回復力によりレール溝の縁部に圧接されるため、その後は治具から手を離しても固定部品がガイドレールの取付面に当接した状態が維持され、これにより両手が自由に使えるようになるため取付作業性を向上させ得る。
【0016】
この構成において、上記挟着部は、上記部品保持部の上記レール溝の幅方向両端部から下方に延び、相互の間隔がレール溝幅よりも狭く設定された少なくとも一対の対向する舌状片部と、各舌状片部の外側に突出して設けられ、頂面間の距離がレール溝幅よりも広く設定された突条とを有し、上記突条が上下方向に延びるとともに、上記突条の少なくとも上端部に上方へ向うにつれて薄肉になるように形成されたテーパ部を有する構成とすることができる。この構成による場合には、レール溝から内部に部品保持部を挿入する際、舌状片部に設けた突条が挿入方向に一致する方向に延びており、しかもテーパ部が治具の押し込みに伴って舌状片部を弾性変形させるので、これにより挟持部を簡便に弾性変形させることができる。
【0017】
この構成において、上記突条には、上記テーパ部よりも他端側に肉厚一定の抜け落ち防止部が設けられ、上記部品保持部に保持された固定部品を上記ガイドレールの取付面に当接させた状態で、上記抜け落ち防止部がレール溝内に配置されるようにすることが好ましい。この構成による場合には、突条にテーパ部のみを形成した場合には、レール溝の縁から受ける力が大きくなり過ぎると、治具がレール溝から押し出されて抜け落ちる虞があるが、肉厚一定の抜け落ち防止部がそれを確実に防止し、固定部品がガイドレールの取付面に当接した状態が安定して維持される。
【0018】
この構成において、上記部品保持部は、上記固定部品に予め設けられたねじ取付孔をはみ出した状態で上記固定部品が載置される載置部と、上記固定部品に予め設けられた凸部を、上記固定部品が載置部に載置された状態で着脱可能に保持する凹部と、上記載置部の側方に設けられ、上記載置部からはみ出したねじ取付孔の下方のねじ通し域の周囲の少なくとも一部を囲むねじ案内部とを具備する構成にすることができる。この構成による場合には、固定部品の凸部を部品保持部の凹部に保持させると、部品保持部の載置部に固定部品がねじ取付孔をはみ出す状態で載置されるとともに、載置部からはみ出したねじ取付孔の下方のねじ通し域の周囲の少なくとも一部がねじ案内部で囲まれるので、ねじ案内部を介してねじをねじ取付孔へ確実に取付けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による場合には、部品保持部に固定部品を保持し、その固定部品をガイドレールの取付面に当接させると、挟着部がレール溝に挟まれてその両縁から受ける力により内方へ向けて弾性変形し、その弾性回復力によりレール溝の縁部に圧接されるため、その後は治具から手を離しても固定部品がガイドレールの取付面に当接した状態が維持され、これにより両手が自由に使えるようになるため取付作業性を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る治具等を示す斜視図である。
【図2】治具に固定部品を取付けた状態を下方斜め方向から見た斜視図である。
【図3】固定部材を保持した治具の挟着部がガイドレールのレール溝に挟着された状態を示す底面図である。
【図4】治具をガイドレール内に挿入する状態を示す側面図(断面図)である。
【図5】従来のスライドアシスト装置全体の構成と作用を説明するための正面図である。
【図6】図5の分解斜視図である。
【図7】従来の提案治具等を示す斜視図である。
【図8】従来の提案治具の断面図である。
【図9】従来の提案治具を用いてスライドアシスト装置のトリガを戸枠の上部下面にねじ止めする状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図1〜図4によって説明する。
【0022】
ここでは、戸枠上部の下面に、レール溝3aを下方に向けて取付けられたガイドレール3の上部内側に対し、スライドアシスト装置のトリガ9を固定部品としてねじ止めする場合を例にとっている。
【0023】
ガイドレール3は、押し出し成形等により成形されたアルミニウム等の金属製で、4つの側壁を有する概略矩形状の断面に形成されたものである。側壁の1つ(図示例では下側の側壁)の幅方向中央部が欠落してレール溝3aが形成されており、レール溝3aの両縁は互いに水平方向に向いて対向している。また、他の1つの側壁(図示例では上側の側壁)の内表面には上方に向けて窪んだ凹溝3bが軸方向に沿って形成されており、この凹溝3bにおける底面の軸方向の所定箇所がトリガ9の取付面3cとされる。この取付面3cは、レール溝3aとは反対側のガイドレール3の内奥部に位置し、取付面3cには2つのねじ取付孔13a、13bが形成される。
【0024】
トリガ9は、金属板を加工して形成されており、レール溝3aを挿通しかつ凹溝3bに入る幅寸法を有し、長手方向中央部には下向きに突出した凸部9aが形成されている。この凸部9aを挟んで両側にはねじ取付孔12a、12bが形成され、一方のねじ取付孔12aが形成された方の端部には下側に突出した幅方向一対の垂下片9bが設けられている。この垂下片9bが設けられた一端から凸部9aまでの距離は、凸部9aから他端までの距離よりも長く設定されている。このトリガ9は、凸部9aの突出方向とは反対側の面(つまり上面)を上記取付面3cに当接させた状態で取付けられる。なお、ねじ取付孔12a、12bの離隔間隔は、上記ねじ取付孔13a、13bの離隔間隔に一致している。
【0025】
本実施形態のねじ止め用治具1は、弾性変形が可能なプラスチックにて形成された一体成形品で、内部が空洞となっていて4側壁面を有する筒状部2と、その筒状部2の一端側(上側)の開口を塞ぐように設けられた部品保持部5とを有し、筒状部2の他端側(下側)は開口している。
【0026】
部品保持部5は、筒状部2とは反対側に設けられ、概略長方形の平面状に形成された載置部20と、その載置部20の長手方向の一端(図1では右端)寄りに形成された凹部21と、載置部20の一端側の側方に形成されたねじ案内部22とを有する。
【0027】
凹部21は、幅方向Cの両側の壁が開口し、上記ねじ案内部22側の一端側の壁21aが薄肉に形成されている。この凹部21には、トリガ9に予め設けられた下向きに突出した凸部9aが挿入され、これによりトリガ9が載置部20の上に載置された状態で部品保持部5に保持される。この保持は、トリガ9に予め設けられた2個のねじ取付孔12a、12bのうち、垂下片9bに近い側のねじ取付孔12aを載置部20からはみ出させるように行われる。
【0028】
載置部20のねじ案内部22とは反対側の他端には、筒状部2とは反対側に突出した突起23が設けられている。この突起23は、トリガ9の厚み寸法と同じ高さ寸法に設定されていて、トリガ9の長さが短くてもトリガ9の上面の全域を取付面3cに当接させるようになっている。つまり、トリガ9の凸部9aを挟んで垂下片9bとは反対側の部分(ねじ取付孔12bが設けられた部分)を、図7に示すように省略した構成である場合や短くした構成である場合であっても、突起23を取付面3cに当接させることで、トリガ9の上面の全域が取付面3cに当接することになる。
【0029】
凹部21とねじ案内部22との間には溝24が設けられていて、上記壁21aがねじ案内部22側に撓む状態で、凹部21に凸部9aが保持される。
【0030】
トリガ9の載置部20からはみ出すねじ取付孔12aの下方には、ねじ案内部22がねじ通し域Bの周囲の一部を囲むように設けられている。この図示例では、ねじ案内部22はその内面22aがねじ通し域Bの周りの約半分を囲む円弧状に形成されている。また、上記内面22aの曲率半径は、後述するねじ11の頭部11bの半径よりも大きい寸法に形成している。これにより、載置部20に載置されたトリガ9のねじ取付孔12aを視認し、また、そのトリガ9を取付面3cに当接させた状態で、ねじ取付孔12aとねじ取付孔13aの位置合わせ状態を視認することができる。
【0031】
筒状部2は、中空の断面矩形状に形成されていて、4側壁面31、32、33、34を有する。そのうち、一対の対向する舌状片部を構成する広い側壁面31、32には、上下方向(筒状部2の軸方向)に沿って延びる長い突条35が、側壁面33寄りの部位と側壁面34寄りの部位に各1本、全体で計4本形成されている。ここで、側壁面31、32と、これら各側壁面31、32に形成した突条35とは、レール溝3aの幅方向Cに弾性変形可能な挟着部を構成する。なお、突条35の本数は、広い側壁面31、32に各1本、または各3本以上としてもよい。また、狭い側壁面33、34は、省略してもよい。
【0032】
各突条35は、部品保持部5側(上側)に設けたテーパ部36と、テーパ部36の下側に設けた抜け落ち防止部37とを有する。テーパ部36は上側を薄肉として緩やかに傾斜した楔状に形成され、一方の抜け落ち防止部37は肉厚一定に形成されている。なお、テーパ部36は、傾き一定である必要はなく、上方に向かうにつれて薄肉になる形状であれば部分的に傾きが変化した形態でもよい。
【0033】
また、部品保持部5は、レール溝3aを通るようにガイドレール3の外側から内側へ向けて挿入され、部品保持部5の載置部20側が、凹溝3bにトリガ9とともに入り込み、かつトリガ9が取付面3cに当接し、その当接状態で挟着部がレール溝3aに挟着されるように形成されている。具体的には、以下のように形成されている。
【0034】
即ち、図4に示すようにレール溝3aには部品保持部5が入り、かつ幅方向Cに形成された2つの抜け落ち防止部37がレール溝3aに挟着されるためには、部品保持部5の幅寸法W1はレール溝3aの幅寸法W2よりも短く、側壁面31に形成された突条35の抜け落ち防止部37の外面(頂面)と側壁面32に形成された突条35の抜け落ち防止部37の外面(頂面)との間の幅寸法W6はレール溝3aの幅寸法W2よりも長く設計される。また、凹溝3bの幅寸法W5は、取付面3cに当接されるトリガ9の通し易さを考慮して、レール溝3aの幅寸法W2よりも短く設計される。また、取付面3cにトリガ9を当接させ、かつその当接を可能とするために凹溝3bに部品保持部5の上部5aが入るよう、トリガ9の幅寸法W3(図1参照)と、上部5aの幅寸法W4とは、凹溝3bの幅寸法W5よりも短く設計される。よって、この図示例では、部品保持部5の上部5aは幅方向Cの両端部を長手方向の全長にわたって切り欠いて下部よりも狭幅に形成している。
【0035】
このように構成された本実施形態に係るねじ止め用治具1は、次のように使用される。
【0036】
まず、部品保持部5の凹部21にトリガ9の凸部9aを挿入し、トリガ9を載置部20に載置させる。このとき、一方のねじ取付孔12aが載置部20からはみ出した状態になる。
【0037】
次に、トリガ9を上にして部品保持部5をレール溝3aからガイドレール3の内方に挿入していく。その挿入に際して、テーパ部36の上端の幅寸法はW1に、下端の幅寸法はW6にそれぞれ一致するので、テーパ部36が治具1の押し込みに伴って側壁面31、32を大きく内方に向けて弾性変形させるため、挟着部を簡便に弾性変形させ得る。また、このテーパ部36は、ガイドレール3の内方への挿入に際し、突条35がレール溝3aの縁へ引っ掛かるのを抑制する。
【0038】
続いて、治具1の挿入に伴って、トリガ9と部品保持部5の上部5aとを凹溝3bの内側に入れ、トリガ9を取付面3cに当接させる。このとき上述したように側壁面31に形成された突条35の抜け落ち防止部37の外面(頂面)と側壁面32に形成された突条35の抜け落ち防止部37の外面(頂面)との間の幅寸法W6がレール溝3aの幅寸法W2よりも長いので、挟着部(つまり側壁面31、32と、これら各側壁面31、32に形成した突条35)がレール溝3aに挟まれてその両縁から受ける力により内方へ向けて弾性変形し、その弾性回復力によりレール溝3aの縁部に圧接されるため、これにより治具1の抜け落ちが防止され、その後は治具1から手を離してもトリガ9が取付面3cに当接した状態が維持される。これにより、取付面3cに対してトリガ9が位置ずれしていても、手で治具1を支える必要がないため、位置ずれを解消させる微調整を容易に行うことが可能になる。また、治具1の抜け落ち防止状態において、凹溝3bに上部5aが入っているので、治具1の上下2箇所がガイドレール3により支持され、治具1のぐらつきが防止される。更に、上記トリガ9の取付面3cへの当接に際し、ねじ取付孔12aをガイドレール3に設けたねじ取付孔13aに一致させる。これに伴って、トリガ9に設けたもう片方のねじ取付孔12bがガイドレール3に設けたねじ取付孔13bに一致する。但し、ねじ取付孔12b、13bは、この状態においては治具1に隠れて見えない。
【0039】
次に、ねじ案内部22を介してねじ11をねじ取付孔12a、13aに螺入し、戸枠上部(図示せず)の下面にトリガ9を取付ける。
【0040】
続いて、治具1をレール溝3aから引き抜く。このとき、上述したようにねじ案内部22の曲率半径がねじ11の頭部11bの半径よりも大きいので、支障なく引き抜くことができる。
【0041】
次に、治具1の引き抜きにより表れたねじ取付孔12b、13bに同様にねじ11を螺入し、戸枠上部(図示せず)の下面にトリガ9を確実に固定する。
【0042】
したがって、本実施形態による場合には、上述したようにトリガ9を取付面3cに当接させると、レール溝3aの縁で挟着部が挟まれてレール溝3aの両縁から受ける力により挟着部が内方へ向けて弾性変形し、その弾性回復力によりレール溝3aの両縁に圧接されるため、これにより治具1の抜け落ちが防止され、その後は治具1から手を離してもトリガ9が取付面3cに当接した状態が維持されることになるので、両手が自由に使えるようになって、例えば上述した位置ずれ解消のための微調整に加え、ねじ11とドライバーとを別々の手で掴むことが可能になり、取付作業性を向上させ得る。
【0043】
なお、上述した実施形態では、取付面3cが凹溝3bの底面であるガイドレール3にトリガ9を取り付ける例を挙げているが、本発明はこれに限らない。レール溝を有しておれば、凹溝3bを有していないガイドレールにも適用することができ、取付面は平面に限らず、曲面、屈曲面等であってもよい。
【0044】
また、本発明は、トリガ9に限らず、手指が入らない場所等にねじ止めされる各種部品にも、或いは上向きにねじ止めする場合に限らず横向きにねじ止めする場合にも適用することができる。
【0045】
更に、上述した実施形態では、対向する一対の側壁面(舌状片部)31、32に突条35を形成した構成としているが、本発明はこれに限らず、側壁面31、32の幅方向全域が突条35と同様な形態となるように成形してもよい。より詳細には、側壁面31、32の幅方向の全域に突条35が隙間なく並設された形態(側壁面31、32の外表面が省略されるとともに、突条35の外表面が側壁面31、32の外表面を形成する形態)などであってもよい。
【0046】
更にまた、本発明は、円弧状のねじ案内部22に限らず、環状のものでもよい。但し、ねじ頭部が抜け出るような孔形態が好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 ねじ止め用治具
3 ガイドレール
3a レール溝
3c 取付面
5 部品保持部
9 スライドアシスト装置のトリガ
9a 凸部
20 載置部
21 凹部
22 ねじ案内部
B ねじ通し域
31、32 側壁面(舌状片部)
35 突条
36 テーパ部
37 抜け落ち防止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸の戸枠上部にレール溝を下方に向けた状態で設置された引戸用ガイドレールの内奥部に位置する取付面に固定部品を当接させてねじ止めする際に、当該固定部品を保持するねじ止め用治具であって、
上記レール溝に挿入可能な大きさに設定されるとともに上記固定部品を着脱可能に保持する部品保持部と、
この部品保持部の下側に配設され、上記レール溝の幅方向に弾性変形可能な挟着部とを備え、
上記挟着部は、上記レール溝の幅よりも幅広に構成されるとともに上記部品保持部に保持された固定部品を上記ガイドレールの取付面に当接させた状態で上記レール溝内に配置されることにより、弾性回復力により上記レール溝の縁部に圧接されることを特徴とするねじ止め用治具。
【請求項2】
請求項1記載のねじ止め用治具において、
上記挟着部は、上記部品保持部の上記レール溝の幅方向両端部から下方に延び、相互の間隔がレール溝幅よりも狭く設定された少なくとも一対の対向する舌状片部と、各舌状片部の外側に突出して設けられ、頂面間の距離がレール溝幅よりも広く設定された突条とを有し、上記突条が上下方向に延びるとともに、上記突条の少なくとも上端部に上方へ向うにつれて薄肉になるように形成されたテーパ部を有することを特徴とするねじ止め用治具。
【請求項3】
請求項2記載のねじ止め用治具において、
上記突条には、上記テーパ部よりも他端側に肉厚一定の抜け落ち防止部が設けられ、上記部品保持部に保持された固定部品を上記ガイドレールの取付面に当接させた状態で、上記抜け落ち防止部がレール溝内に配置されることを特徴とするねじ止め用治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のねじ止め用治具において、
上記部品保持部は、上記固定部品に予め設けられたねじ取付孔をはみ出した状態で上記固定部品が載置される載置部と、上記固定部品に予め設けられた凸部を、上記固定部品が載置部に載置された状態で着脱可能に保持する凹部と、上記載置部の側方に設けられ、上記載置部からはみ出したねじ取付孔の下方のねじ通し域の周囲の少なくとも一部を囲むねじ案内部とを具備することを特徴とするねじ止め用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−117221(P2012−117221A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265427(P2010−265427)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000145895)株式会社小林製作所 (21)
【Fターム(参考)】