説明

ねじ締め本数管理方法、およびねじ締め本数管理装置

【課題】トルクレンチのトグル機構が作動するときの「カッ」「チン」という特定パターンの音を手がかりにして、高価な加速度センサを用いた振動の解析装置を必要としないねじ締め本数管理方法および装置を提供すること。
【解決手段】所定のトルク値でのねじ締付けが完了する毎に動作して特定パターンの音を発するトルクバーを備えたトルクレンチに用いるねじ締め本数管理装置であって、前記トルクバーで発する音を検知して前記音に対応した電気信号を出力する検知手段と、前記電気信号を解析して前記特定パターンの音の有無を解析して1本のねじ締めが完了したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段にて1本のねじ締めが完了したと判定する毎にねじ締め完了本数を積算して出力する積算手段と、前記検知手段、判定手段、積算手段に対して必要とする電源を供給する電池もしくは蓄電手段からなる電源供給手段とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のトルク値でのねじ締付けが完了する毎に動作して音を発するトルクバーを備えたトルクレンチを用いてねじ締めを行う場合に、ねじ締め完了した数量を積算する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定のトルク値でのねじ締付けが完了する毎に、トグル機構(トルク伝達機構)が「カッ」「チン」と作動するトルクバーを備えたトルクレンチを用いてねじ締めを行う場合に、ねじ締め完了した数量を積算して管理する技術に関しては、出願人等が既に特開2005−231001(特許文献1)で提案した。
【0003】
【特許文献1】特開2005−231001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものは、振動を検出するために加速度センサを設けたものであるが、加速度センサを用いた振動の解析装置は高価になるので、より安価で使いやすい管理方法、装置が要望されている。
【0005】
そこで、本発明は、トグル機構等のトルク伝達機構が作動するときの「カッ」「チン」という特定パターンの音を手がかりにして、高価な加速度センサを用いた振動の解析装置を必要としないねじ締め本数管理方法および装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる請求項1のねじ締め本数管理方法は、
所定のトルク値でのねじ締付けが完了する毎に動作して特定パターンの音を発するトルクバーを備えたトルクレンチに用いるねじ締め本数管理方法であって、
前記トルクバーで発生する音を検知して、検知された音を解析して前記特定パターンの音の有無を解析して1本のねじ締めが完了したか否かを判定することによって、ねじ締め本数を管理することを特徴としている。
請求項2のねじ締め本数管理装置は、
所定のトルク値でのねじ締付けが完了する毎に動作して特定パターンの音を発するトルクバーを備えたトルクレンチに用いるねじ締め本数管理装置であって、
前記トルクバーで発する音を検知して前記音に対応した電気信号を出力する検知手段と、
前記電気信号を解析して前記特定パターンの音の有無を解析して1本のねじ締めが完了したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段にて1本のねじ締めが完了したと判定する毎にねじ締め完了本数を積算して出力する積算手段と、
前記検知手段、判定手段、積算手段に対して必要とする電源を供給する電池もしくは蓄電手段からなる電源供給手段と
から構成されていることを特徴としている。
請求項3のねじ締め本数管理装置は、
所定のトルク値でのねじ締付けが完了する毎に動作して特定パターンの音を発するトルクバーを備えたトルクレンチに装着し得るねじ締め本数管理装置であって、
前記トルクレンチに対して装着する装着手段と、
前記トルクバーで発する音を検知して前記音に対応した電気信号を出力する検知手段と、
前記電気信号を解析して前記特定パターンの音の有無を解析して1本のねじ締めが完了したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段にて1本のねじ締めが完了したと判定する毎にねじ締め完了本数を積算して出力する積算手段と、
前記検知手段、判定手段、積算手段に対して必要とする電源を供給する電池もしくは蓄電手段からなる電源供給手段と
から構成されていることを特徴としている。
請求項4では、
前記判定手段は、前記電気信号の振幅が所定の幅以上変動する波形パターンが1つ検出されたときに特定パターンが有ると判定するとともに、所定の時間内の後続の電気信号の変化を無視して、1本のねじ締めが完了したと判定する。
請求項5では、
前記判定手段は、所定の時間内に、前記電気信号の振幅が所定の幅以上変動する波形パターンが2つ検出されたときに特定パターンが有ると判定して、1本のねじ締めが完了したと判定する。
請求項6では、
前記判定手段は、前記電気信号に所定傾き以上の急峻な立ち上がりパターンが検出されたときに特定パターンが有ると判定するとともに、所定の時間内の後続の電気信号の変化を無視して、1本のねじ締めが完了したと判定する。
請求項7では、
前記判定手段は、所定の時間内に、前記電気信号に所定傾き以上の急峻な立ち上がりパターンが2つ検出されたときに特定パターンが有ると判定して、1本のねじ締めが完了したと判定する。
請求項8では、
前記検知手段は、
単一指向性のマイクロフォンとするとともに、
指向性の向きを前記トルクバーのトルク伝達機構に向けた状態で取り付けている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の方法では、トルクバーから特定パターンの音が検出されたときに1本のねじ締めが完了したことを判定するので、高価な加速度センサなどを用いることなく、小型、安価、高性能のコンデンサマイクなどでも、ねじ締め完了本数を正確に積算することができ、より安価で使いやすい管理方法を提供することができる。
請求項2のねじ締め本数管理装置は、
前記トルクバーで発する音を検知、解析して特定パターンの音が検知されたときに1本のねじ締めが完了したと判定し、その度にねじ締め完了本数を積算して出力するので、加速度センサなどを用いることなく、ねじ締め完了本数を正確に積算することができる。
請求項3では、トルクレンチに装着し得る構造にしたので、従来のトルクレンチに装着したり、メンテナンスや管理のために取り外したりすることが容易である。
請求項4では、前記電気信号の振幅が所定の幅以上変動する波形パターンが1つ検出されたときに、1本のねじ締めが完了したと判定する。このとき、所定の時間内の後続の電気信号を無視するので、誤検出を防ぐことができる。
請求項5では、所定の時間内に、前記電気信号の振幅が所定の幅以上変動する波形パターンが2つ検出されたときに1本のねじ締めが完了したと判定するので、誤検出を防ぐことができる。
請求項6では、前記電気信号に所定傾き以上の急峻な立ち上がりパターンが検出されたときに、1本のねじ締めが完了したと判定する。このとき、直後の電気信号を無視するので、誤検出を防ぐことができる。
請求項7では、所定の時間内に、前記電気信号に所定傾き以上の急峻な立ち上がりパターンが2つ検出されたときに1本のねじ締めが完了したと判定するので、誤検出を防ぐことができる。
請求項8では、単一指向性のマイクロフォンを、前記トルクバーのトルク伝達機構に向けた状態で取り付けるので、トルク伝達機構の音を確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明にかかるねじ締め本数管理方法と装置を、その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、
1はトルクレンチであり、操作対象のねじ等に装着する機能を備えたヘッド部材11、柄部材12、前記柄部材12の端部に形成された握り部13、前記柄部材12の内部に配設されたトルクバー14、スラスタ15、トルクバー14とスラスタ15とをリンクで連結するトルク伝達機構としてのトグル機構16、及びバネ17等を備えている。そして、ねじ締め(図1における時計回り方向での締付け)において前記バネ17によって設定された所定のトルクに達すると、前記トグル機構16によって前記スラスタ15が押されて前記バネ17が圧縮されると同時に、柄部材12はヘッドピン18を中心として急激に時計回り方向に回動し、トルクバー14はそのままの位置を維持する。したがって、前記トルクバー14は前記柄部材12の内壁と衝突して特定パターンの音が発生するように構成されている。
【0009】
2はセンサユニットであり、マイクロフォン3と、マイクロコンピュータ4と、電源供給手段としてのバッテリ5と、LEDランプ61、62と、ブザー7を内蔵している。
前記マイクロフォン3はエレクトレットコンデンサマイクであり、センサユニット2の先頭部の台座21に形成された孔に取り付けられている。前記マイクロフォン3の感度は前記トグル機構16を向く軸方向が特に高くなっている。
【0010】
前記センサユニット2の先頭部の外周には雄ねじが形成されており、前記トルクレンチ1の握り部13の後端の内周には雌ねじが形成され、前記センサユニット2をトルクレンチ1にねじ込んで装着し、もしくは、緩めて取り外すことが容易にできるように装着手段が構成されている。
【0011】
前記マイクロフォン3は、前記トルクレンチ1で発生した音が、トルクレンチ1の内部の空洞を伝わって、センサユニット2の先頭部に伝達したときに、その音圧変動に応じて電圧が変化する電気信号を出力するようにセンサユニット2の先頭部の台座21に取り付けられている。
【0012】
前記マイクロコンピュータ4は、前記マイクロフォン3から出力される前記電気信号を取り込む入力ポートと、後述する信号解析プログラムが書き込まれたメモリと、前記信号解析プログラムを動作させることによって、取り込まれた前記電気信号の波形を解析して、1本のねじ締めが完了したと判定する毎にねじ締め完了本数を1本づつ増やして積算し、その積算したねじ締め完了本数が予め設定された予定数量に達したときにLEDランプもしくはブザーを特定のパターンで駆動するように制御するCPUと、外部との通信を行う通信ポートを備えている。
なお、前記CPUは、取り込まれた前記電気信号の波形を解析して、1本のねじ締めが完了したと判定する毎にねじ締め完了信号を出力して、LEDランプもしくはブザーを前記特定のパターンとは異なるパターンで短時間駆動するように構成してもよい。
【0013】
トグル機構から発せられる音に基づいた電気信号を解析して、1本のねじ締めが完了したか否かを判定する信号解析プログラムでは、検出した音が、トグル機構が作動した音であるのか、他の音であるのかを正確に峻別する必要がある。
以下において、図2に示した信号解析プログラムに沿って、ねじ締め完了の判定方法を説明する。
ステップ1において、
マイクロコンピュータは入力ポートから入力される電気信号を監視して、電気信号V1が入力されるとステップ2へ進む。
ステップ2では、入力される電気信号のバレー電圧VP1とピーク電圧VP2とを検出する。検出しない場合にはステップ1に戻る。
ステップ3では、バレー電圧V P1とピーク電圧V P2との電圧差Vz(=|V P1−V P2|)を計算する。
ステップ4では、前記電圧差Vzを所定のしきい値電圧Vsと比較し、しきい値電圧Vsより低い場合はステップ1へ戻り、高い場合は、振幅が所定の幅以上変動する波形パターンが検知されたのでステップ5へ進む。
ステップ5では、1本のねじ締めが確定したと判断して、メモリで積算しているねじ締め本数を1本分増加させる。
ステップ6では、所定時間の間、電圧信号の解析を中止するために、所定時間の経過をマスクタイマでチェックし、所定時間の間は、トグル機構が作動した音をマスキングする。
そして、所定時間が経過した後、再びステップ1ヘ戻って以上の動作を繰り返す。
以上のように動作するので、「カッ」「チン」という特定パターンの一対の音が発生した場合、はじめの「カッ」を検知したときに1本のねじ締めを確定し、後続の「チン」という音は無視する。
したがって、前記マスクタイマの設定時間は、ゆっくり操作して「カッ」と「チン」の間が伸びた場合でも確実に検知できるような時間に設定する。
【0014】
特定パターンの音に対応する電気信号の波形パターンは、図3に示したように、トグル機構が作動するときの「カッ」「チン」という特定パターンの音を発生させる動きに応じて、2つの大きなレベル変動波形を持っている。はじめのレベル変動波形のバレー電圧V P1とピーク電圧V P2とし、後続のレベル変動波形のバレー電圧V P11とピーク電圧V P21とするとき、バレー電圧V P1とピーク電圧V P2の電圧差Vz(=|V P1−V P2|)が、所定のしきい値電圧Vsより高い場合には、それによって1本のねじ締めを完了したと判断する。その直後のレベル変動波形のバレー電圧V P11とピーク電圧V P21は無視するので、「カッ」と「チン」という特定パターンの一対の音が発生した場合も、2本ではなく、1本のねじ締めが完了したと正しく判定する。
このように、「カッ」と「チン」という擬音で表現可能な2つの短い音が続いて発生するパターンを特定パターンの音という。
【0015】
次に、図2に示した手順とは異なる手順による信号解析プログラムの例を図4を参照して説明する。
図4のステップ41からステップ44までは、図2のステップ1からステップ4までと同様の処理であるので説明を省く。
ステップ45では、「カッ」「チン」という一対の音のうちはじめの1音(第1音)を確定し、ステップ46で間隔タイマの作動を開始する。前記間隔タイマの設定時間は、ゆっくり操作して「カッ」と「チン」の間が伸びた場合でも2番目の音(第2音)を確実に検知できるような時間に設定する。
【0016】
ステップ47で間隔タイマが終了していないうちに、ステップ48において、入力ポートから電気信号を監視して、電気信号V2が入力されるとステップ49へ進む。ステップ48からステップ51までは、前述したステップ41からステップ44までと同様の処理であるので説明を省く。ただし、バレー電圧がVP11に、ピーク電圧がVP21に、電圧差がVz2に、しきい値電圧がVs2に、それぞれ替わっている。
【0017】
ステップ52では、「カッ」「チン」という一対の音のうち後続の1音を確定する。
「カッ」「チン」という一対の音が両方とも検出されたので、ステップ53では、1本のねじ締めが完了したと確定して、メモリに蓄積されているねじ締め完了本数を1本分増加させる。
なお、前記ステップ47で2番目の音を検出する前に、間隔タイマが終了した場合にはステップ54へ進んで、既に確定した1音目の検出をキャンセルして、ステップ41へ戻る。
このように、「カッ」「チン」という一対の音の両方を、所定の時間間隔内に検出したときにだけ1本のねじ締めが完了したと確定するので、単なる衝撃等のショックに基づいた1回の音と区別することができる。
また、トルクレンチを誤って床などに落下させた場合には、落下後にリバウンドが生じて合計2回の音を発生することもある。その場合、1音目に比べ2音目は、ピーク電圧とバレー電圧との電圧差が小さいため、図4のステップ51で、しきい値電圧より低くなるため、後続の1音が確定せず、1本のねじ締めが完了しとは確定しないため、誤検出を防ぐことができる。
【0018】
図2、図4の手順に限らず種々の手順で、「カッ」「チン」という作動音を検出することができる。
例えば、図3の電圧波形において、バレー電圧からピーク電圧への電圧の立ち上がり(ピーク電圧からバレー電圧への電圧の立ち下がりも含む。)の傾きの絶対値を検出して、所定の値以上の急峻な立ち上がり(もしくは立ち下がり)パターンが検出されたときにだけ、トグル機構の作動に伴った音であると判断するようにしてもよい。
この場合、図2の場合のように、1音目を検出した後はマスク時間を設定して、2音目を無視して、1本のねじ締め完了と判断する手順でも、図4の場合のように、所定の時間間隔内に急峻な立ち上がり(もしくは立ち下がり)パターンが2つ続いて検出されたときにだけ1本のねじ締め完了と判断する手順でもよい。
【0019】
1本のねじ締めが完了したと判定する毎に例えば、一方のLEDランプを短時間点灯するとともに、ブザーを「ピッ」と鳴らすように駆動し、ねじ締め完了本数が予定数量に達したときには、例えば、他方のLEDランプを連続点滅するとともに、ブザーを「ピッピッピッピッ・・・」と連続的に鳴らすように駆動したり、合成音声で報知することができる。
なお、このような報知機能は全てセンサユニット2に具備しなくてもよく、後述するホルダ部または上位コンピュータに備えてもよい。
【0020】
前記マイクロコンピュータ4に設定される予定数量は、後述する上位コンピュータから入力されるが、その予定数量を設定するための入力手段を前記センサユニット2または後述するホルダ部に備えても良い。
【0021】
図1において、
9は前記トルクレンチ1を載置するためのホルダ部であり、前記センサユニット2のバッテリ5の充電機能を備えた充電回路91と、前記トルクレンチ1および後述する上位コンピュータPCとの通信機能を備えた通信手段としての通信回路92を内蔵し、前記充電回路91および前記通信回路92への電源を商用電源から供給するACアダプタ93が接続されている。
PCは前記ホルダ部9とケーブルCで接続された上位コンピュータであり、前記ホルダ部9を介して前記センサユニット2と通信を行い、予定数量としての設定締付け本数データを送信する機能と、完了締付け本数データを受信する機能とを備えている。
なお、前記通信回路92の通信方式は、ホルダ部9とトルクレンチ1のセンサユニット2との間の通信方式も、ホルダ部9と上位コンピュータとの間の通信方式も、ケーブルを用いた有線通信方式だけでなく無線通信方式も可能である。有線通信方式の場合には、種々のケーブルを用いたシリアル通信やパラレル通信が可能であり、無線通信方式の場合には種々の波長の電磁波(電波、赤外線等)を用いた通信が可能である。また、イーサネット(登録商標)型のLANや各種方式の無線LAN等も採用できる。
このように、トルクレンチ1のセンサユニット2はバッテリ駆動方式とし、ホルダ部9に載せたときに通信するように構成することによって、信号の通信にあたってノイズの影響を受けにくいという効果と、電源コードが邪魔にならないという効果が得られる。
【0022】
前記トルクレンチ1を前記ホルダ部9に載置すると、載置された状態を検知してホルダ部9が作動して、前記センサユニット2と前記ホルダ部9とが充電用電極と通信用電極を介して相互に電気的に接続され、充電と通信を開始するように構成されている。
【0023】
前記センサユニット2は特許請求の範囲に記載されたねじ締め本数管理装置に対応する構成であり、前記マイクロフォン3は特許請求の範囲に記載された検知手段に対応する構成であり、前記マイクロコンピュータ4は特許請求の範囲に記載された判定手段及び積算手段に対応する構成であり、前記バッテリ5は特許請求の範囲に記載された電源供給手段に対応する構成である。
【0024】
なお、電源供給手段としては、前記バッテリ5に代えて、各種1次電池、太陽電池、もしくは蓄電手段としてのスーパーキャパシタ等の大容量のコンデンサを使用することができる。大容量のコンデンサを使用する場合には、前記充電回路91に代えて蓄電回路を使用するとよい。
なお、ねじ締めの作業環境によっては、電源コードを備えたものも可能である。
また、前記充電用電極に代えて、電磁誘導作用等を利用した非接触型の電力伝達手段を採用することも可能である。また、通信の信頼性が高いものであれば、前記通信用電極に代えて、電波や赤外線等を利用した非接触型の情報伝達手段を採用することも可能である。
【0025】
このようにして、作業者が予定した本数のねじ締め作業を終了して、トルクレンチ1を前記ホルダ部9に載せると、充電開始とともに、上位コンピュータPCとの通信が開始されて、前記センサユニット2で積算されたねじ締め完了本数が上位コンピュータPCへ送信され、上位コンピュータPCでは予定本数と比較して、過不足がなければ「OK信号」をLEDランプの点滅やブザーの鳴動によって報知し、不足している場合には「不足信号」をLEDランプの点滅やブザーの鳴動によって報知する。
なお、上位コンピュータPCへ送信されたねじ締め完了本数が予定本数と一致している場合には、次のねじ締めの予定本数が前記上位コンピュータPCから前記ホルダ部9を介して前記トルクレンチ1のセンサユニット2内のマイクロコンピュータに送信されるように構成する。
【0026】
なお、マイクロフォン3を、図1に示したようにセンサユニット2の台座21に取り付ける場合に、台座21に空気抜き穴を設けてもよい。この場合、空気抜き穴の大きさをトグル機構が発する音の大きさによって決めることも可能である。
または、マイクロフォン3はセンサユニット2の台座21に固着させてもよい。この場合は、センサユニット2に振動が加えられてもマイクロフォン3は揺れ動かないので、トグル機構や、それに替わる機構が発する音をしっかり検知できる。

マイクロフォン3は、緩衝材を介してセンサユニット2の台座21に取り付ける構造としてもよい。この場合は、他の要因によって発生した振動が台座21を介して
マイクロフォン3に伝わるのを防ぐことができ、誤検出を防止できる。マイクロフォン3はトルクレンチ1の柄部材12の内部に設置してもよい。この場合には、作業環境の外部の騒音などが柄部材12の内部までは侵入しにくいので、外部騒音による誤検出を防止できる。
また、マイクロフォン3はエレクトレットコンデンサマイクに限らず、静電型マイクを用いると、高感度で、広い音圧レベル範囲を歪みなく測定することができるとともに、長期間にわたって感度変化が少ないので、長期間の使用においても誤検知を防止できる。
また、コンデンサ型のシリコンマイクを用いると、超小型であるため、トルクレンチ1の内部の狭いスペースにも取り付けることができる。
また、バウンダリマイクを用いて、柄部材の内面に直接貼り付けると、反射音による干渉が減り、より正確にトグル機構の作動音を検知することができる。
また、マイクロフォン3に代えてコンタクトピックアップを用いてトルクバーまたは柄部材に直接取り付けると、空気伝播音ではなく、固体伝播音を直接検知できるので、作業現場における他の要因による騒音による誤検知を防止できる。
また、検知手段は、トルクレンチ1と別体のセンサユニットにではなく、トルクレンチ1本体に取り付けることで、トグル機構の作動音の発生箇所により近い位置で前記作動音を検知することができるので、騒音などによる誤検知を防止できる。
【実施例1】
【0027】
次に、実施例1のねじ締め本数管理装置に用いたセンサユニット2のマイクロコンピュータの動作を説明する。
まず、ねじ締め作業にあたって、ねじ締めする予定本数を設定する。この予定本数は、上位コンピュータPCからホルダ部9を介してトルクレンチ1に入力されるように構成してもよいが、トルクレンチに入力手段を備えて直接入力してもよい。また、ホルダ部に入力手段を備えておいて、トルクレンチをホルダ部に載せたときに、そのホルダ部の入力手段を操作して予定本数を入力してもよい。
次に、ねじ締め作業を開始すると、1本のねじ締めが完了したときにトルクバー14が作動して発する特定パターンの音を解析して、ねじ締めが完了した本数を積算する。
そして、予定本数に達したことが報知された場合もしくは、作業者が予定本数を完了したと思った場合には、トルクレンチをホルダ部9に載せる。
【0028】
図5に示したように、装着手段としての取り付け部材8を介してセンサユニット2をトルクレンチ1に取り付け、マイクロフォン3Aをトルクレンチ1に固定し、マイクロフォン3Aからの電気信号をケーブルを介して前記センサユニット2に入力するように構成してもよい。この場合には、前記取り付け部材8はトルクレンチ1とセンサユニット2とを固着させるものではなく、回動可能に取り付けている構造とすることによって、センサユニット2をトルクレンチ1の軸回りに回動させることが可能なようにしてもよい。この場合は、作業空間が狭い場合には、その状況に応じて、センサユニット2を所望の位置に回動させて、ねじ締め操作の邪魔にならないようにすることができる。
【実施例2】
【0029】
図6の(a)に示したトルクレンチ1Bは特開2003-136418号において開示されたものであり、図6の(b)にはその要部を示した。
これらの図に示したトルクレンチ1Bは、ヘッド部材11Bと一体に回動するトルクバー14Bが、ヘッドピン18Bで回動可能に設けられた柄部材12Bに外装された構造であり、トルク伝達機構をトルクバー14B側のコロ状体161と、柄部材12B側のコロ状体162とで構成し、柄部材12B側のコロ状体をバネ17Bで押されたスラスタ15Bで押さえ、ねじ締めトルクが設定された所定のトルクを越えたときに、前記バネ17Bが圧縮されて、柄部材12B側のコロ状体162がトルクバー14B側のコロ状体161を乗り越え、柄部材12Bがトルクバー14Bの内周面に衝突することによって、トルク伝達機構が作動したときの特定パターンの音を発生するように構成されたものである。
このように発生した特定パターンの音を、トルクバー14Bに設けた検知手段3Bによって検知して電気信号を出力するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかるねじ締め本数管理装置の実施の形態の構成を示した構成図である。
【図2】本発明にかかるねじ締め本数管理方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明における電気信号の波形パターンの一例を示す波形図である。
【図4】別の手順のフローチャートである。
【図5】実施例1の構成図である。
【図6】実施例2の構成図である。
【符号の説明】
【0031】
1 トルクレンチ
14 トルクバー
2 センサユニット
3 マイクロフォン、検知手段
4 マイクロコンピュータ
5 バッテリ
8 取り付け部材
9 ホルダ部
PC 上位コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のトルク値でのねじ締付けが完了する毎に動作して特定パターンの音を発するトルクバーを備えたトルクレンチに用いるねじ締め本数管理方法であって、
前記トルクバーで発生する音を検知して、検知された音を解析して前記特定パターンの音の有無を解析して1本のねじ締めが完了したか否かを判定することによって、ねじ締め本数を管理することを特徴とするねじ締め本数管理方法。
【請求項2】
所定のトルク値でのねじ締付けが完了する毎に動作して特定パターンの音を発するトルクバーを備えたトルクレンチに用いるねじ締め本数管理装置であって、
前記トルクバーで発する音を検知して前記音に対応した電気信号を出力する検知手段と、
前記電気信号を解析して前記特定パターンの音の有無を解析して1本のねじ締めが完了したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段にて1本のねじ締めが完了したと判定する毎にねじ締め完了本数を積算して出力する積算手段と、
前記検知手段、判定手段、積算手段に対して必要とする電源を供給する電池もしくは蓄電手段からなる電源供給手段と
から構成されていることを特徴とするねじ締め本数管理装置。
【請求項3】
所定のトルク値でのねじ締付けが完了する毎に動作して特定パターンの音を発するトルクバーを備えたトルクレンチに装着し得るねじ締め本数管理装置であって、
前記トルクレンチに対して装着する装着手段と、
前記トルクバーで発する音を検知して前記音に対応した電気信号を出力する検知手段と、
前記電気信号を解析して前記特定パターンの音の有無を解析して1本のねじ締めが完了したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段にて1本のねじ締めが完了したと判定する毎にねじ締め完了本数を積算して出力する積算手段と、
前記検知手段、判定手段、積算手段に対して必要とする電源を供給する電池もしくは蓄電手段からなる電源供給手段と
から構成されていることを特徴とするねじ締め本数管理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記電気信号の振幅が所定の幅以上変動する波形パターンが1つ検出されたときに特定パターンが有ると判定するとともに、所定の時間内の後続の電気信号の変化を無視して、1本のねじ締めが完了したと判定することを特徴とする請求項2、3の何れか1項に記載のねじ締め本数管理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、所定の時間内に、前記電気信号の振幅が所定の幅以上変動する波形パターンが2つ検出されたときに特定パターンが有ると判定して、1本のねじ締めが完了したと判定することを特徴とする請求項2、3の何れか1項に記載のねじ締め本数管理装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記電気信号に所定傾き以上の急峻な立ち上がりパターンが検出されたときに特定パターンが有ると判定するとともに、所定の時間内の後続の電気信号の変化を無視して、1本のねじ締めが完了したと判定することを特徴とする請求項2、3の何れか1項に記載のねじ締め本数管理装置。
【請求項7】
前記判定手段は、所定の時間内に、前記電気信号に所定傾き以上の急峻な立ち上がりパターンが2つ検出されたときに特定パターンが有ると判定して、1本のねじ締めが完了したと判定することを特徴とする請求項2、3の何れか1項に記載のねじ締め本数管理装置。
【請求項8】
前記検知手段は、
単一指向性のマイクロフォンとするとともに、
指向性の向きを前記トルクバーのトルク伝達機構に向けた状態で取り付けたことを特徴とする請求項2〜7の何れか1項に記載のねじ締め本数管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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