説明

ねじ締め装置

【課題】作業者が誤ってワークを取り替えることのないねじ締め装置の提供。
【解決手段】ドライバビット4cを先端に有するドライバツール4と、このドライバツール4を支持して水平および垂直方向に可動するアーム3とから成り、ドライバツール4を作業者が把持してワークの上空で操作し、目標のねじ締めポイントへ下降させてねじ締め付け作業を行うように構成されたねじ締め装置1において、ドライバツール4の位置情報を検出するロータリエンコーダ14,23,34と、ワークの有無を検出するセンサ6と、複数のねじ締めポイント及びこれらポイントの経由順序を予め設定し、この順序通りにドライバツール4が経由せずにセンサ6による検出信号が切り替わった場合には、その旨を表示するように構成した制御ユニット50とを備えるねじ締め装置1による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アームに取付けられたドライバツールを作業者が把持して操作し、ねじ締め作業を行うためのねじ締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水平および垂直方向へ可動するアームに取付けられたドライバツールを作業者が把持して所望の位置へ操作し、ねじ締め作業を行うねじ締め装置としては、特許文献1(特開2002−346857号公報)に示すものが知られている。このねじ締め装置は、アームの位置情報を検出する位置検出手段を備えている。そして、制御部でアームの現在位置情報と予め設定された締め付けポイントとを照合し、その判定を表示するように構成されている。さらに、制御部には複数の締め付けポイントの締め付け順序も設定されており、締め付け順序に誤りがある場合には、その旨を表示するように構成されている。このような構成により、作業ミスを防止することを目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−346857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ねじ締め装置は、全てのねじ締めポイントに対して作業が完了する前に、作業者が誤ってワークを取り替えた場合、これを判定することができないため、作業ミスを完全に防止することができるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、本発明のねじ締め装置は、回転駆動源の駆動により回転するドライバビットを先端に有するドライバツールと、このドライバツールを支持して水平および垂直方向に可動するアームとから成り、当該ドライバツールを作業者が把持して被締結物の上空で操作し、目標のねじ締めポイントへ下降させてねじ締め付け作業を行うように構成されたねじ締め装置において、前記ドライバツールの位置情報を検出する位置検出手段と、被締結物の有無を検出するワーク検出手段と、複数のねじ締めポイント及びこれらポイントの経由順序を予め設定し、この順序通りにドライバツールが経由せずにワーク検出手段による検出信号が切り替わった場合には、その旨を表示するように構成されている。
【0006】
また、前記制御手段が、所定の順序通りにドライバツールが経由した後にワーク検出手段による検出信号が切り替わった場合には、1サイクル完了としてこれをカウントすることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のねじ締め装置によれば、ワーク検出手段と制御ユニットとが連動しており、予め設定された順序通りにドライバツールが経由せずにワーク検出手段による検出信号が切り替わった場合には、その旨を表示するように構成されているので、作業者が誤ってワークを取り替えてしまう問題が発生しない。
【0008】
また、所定の順序通りにドライバツールが経由した後にワーク検出手段による検出信号が切り替わった場合には、1サイクル完了としてこれをカウントするので、工程管理が充実する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のねじ締め装置における全体構成図である。
【図2】本発明のねじ締め装置における昇降可動機構を示す平面視拡大断面図である。
【図3】本発明のねじ締め装置における昇降可動機構を示す正面視拡大断面図である。
【図4】本発明のねじ締め装置における旋回可動機構を示す一部切欠拡大断面図である。
【図5】本発明のねじ締め装置における水平可動機構を示す一部切欠拡大断面図である。
【図6】本発明のねじ締め装置における制御ユニットによる照合判定のイメージを示す説明図である。なお、支柱およびアームは概略的に示してある。
【図7】本発明のねじ締め装置における制御ユニットの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1はねじ締め装置であり、鉛直方向に立設した支柱2に沿って昇降するとともに、水平面を可動するアーム3と、このアーム3に取付けられてこれと一体に可動するドライバツール4とを備えている。このアーム3の先端には前記ドライバーツール4が取付けられる一方、後端には支柱2に沿って昇降可能、かつ当該支柱2と一体に旋回可能なブラケット5が取付けられている。
【0011】
また、ワークを載荷する載荷台(図示せず)にはワーク検出手段の一例であるセンサ6が配置されている。このセンサ6は、ワークの有無を検出するものであり、その検出信号は詳細を後述する制御ユニット50へ伝送されるように構成されている。
【0012】
前記アーム3は、図2および図3に示す昇降可動機構10により、支柱2に沿って昇降可能に構成されている。この昇降可動機構10は、支柱2の上方で軸支された滑車11と、当該支柱2を覆うようにして滑車11に巻き付けられたベルト12と、このベルト12の一端に取付けられた錘13とから構成されている。そして、当該ベルト12の他端には前記ブラケット5が取付けられており、作業者がドライバツール4のスタートグリップ4aを把持してアーム3を鉛直方向に操作すると、錘13にかかる重力の作用により、アーム3が支柱に沿って昇降するように構成されている。そして、滑車11の回転量を、位置検出手段の一例であるロータリエンコーダ14が検出する。これにより、アーム3の昇降位置情報を検出するように構成されている。つまり、図6に示すように、鉛直方向をZ軸、水平旋回方向をX軸、水平方向をY軸とする空間座標において、当該ロータリエンコーダ14は、ドライバツール4のZ軸座標を検出するように構成されている。
【0013】
また、前記アーム3は、図4に示す旋回可動機構20により、支柱2と一体となって水平面を自在に旋回可動するように構成されている。この旋回可動機構20は、支柱2の下端に一体に回転可能に取付けられた第1の平歯車21と、この第1の平歯車21に噛合するとともに、当該第1の平歯車21の回転に伴い回転する第2の平歯車22とから構成されている。これにより、アーム3の旋回に伴い支柱2が旋回して第1の平歯車21も回転し、これに伴い第2の平歯車22も回転する。そして、第2の平歯車22の回転量をロータリエンコーダ23が検出して、水平面におけるアーム3の旋回位置情報を検出するように構成されている。つまり、図6に示す空間座標において、当該ロータリエンコーダ23は、ドライバツール4のX軸座標を検出するように構成されている。
【0014】
さらに、前記アーム3は、図5に示す水平可動機構30により、前記X軸および支柱2と直交する方向(水平方向)へ自在に可動するように構成されている。この水平可動機構30は、レール31と、このレール31の移動を案内するガイドブロック32とを備えており、当該レール31の先端には前記アーム3が取付けられている。また、レール31後方の近傍には、歯車33が軸支されており、当該レール31の後端には当該歯車33と噛合可能な外歯31aが形成してある。これにより、作業者がアーム2を操作して水平方向へ移動させると、歯車33が回転する。そして、当該歯車33の回転量をロータリエンコーダ34が検出して、水平移動するアーム3の水平可動位置情報を検出するように構成されている。つまり、図6に示す空間座標において、当該ロータリエンコーダ34は、ドライバツール4のY軸座標を検出するように構成されている。
【0015】
前記ドライバツール4は、上部に駆動源としてのモータ4bを備え、このモータ4bの回転駆動はドライバ軸(図示せず)を介して先端のドライバビット4cへ伝達されるように構成されている。また、ドライバツール4のモータ4bの駆動を開始する手段として、特開平07−1347号公報の図2に開示された機構を備えている。詳細は割愛するが、ドライバツール4のスタートグリップ4aを作業者が下方に押し下げると、内蔵されたスタートスイッチ(図示せず)が作動して、ドライバビット4cが回転するように構成されている。また、ドライバツール4はドライバコントローラ40を介して制御ユニット50に接続されており、このドライバコントローラ40が制御ユニット50からの指令に応じてモータ4bの駆動を制御するように構成されている。
【0016】
また、前記ドライバビット4cにおいては、その先端がねじ頭部の駆動穴と係合可能に構成されており、当該ドライバビット4cにはリング状のマグネット4dが取付けられている。これにより、当該ドライバビット4cは磁化し、ねじを電磁吸着可能に構成されている。
【0017】
前記ロータリエンコーダ14,23,34による検出情報は、エンコーダケーブル14a,23a,34aを介して制御ユニット50へ伝送される。これにより、空間座標におけるドライバツール4の位置情報が検出される。
【0018】
前記制御ユニット50は、内蔵の記憶部(図示せず)にワーク上の1または複数のねじ締めポイント、及び待機位置ポイントをティーチングプログラムとして記憶するように構成されている。そして、このねじ締めポイントの位置情報(X,Y座標)あるいは待機位置ポイントの位置情報(X,Y座標)と、ドライバツール4の位置情報(X,Y座標)とを照合判定するように構成されている。
【0019】
そして、図7に示すように、照合の結果(一致/不一致)が、制御ユニット50のモニタ51付近に配置された照合ランプ55に表示される。一致の場合には照合ランプ55が点灯し、不一致の場合には照合ランプ55が消灯して視覚的に照合結果を作業者へ知らせるように構成されている。しかも、スピーカ54からも照合結果に応じて異なる音声が流れ、聴覚的にも照合結果を作業者へ知らせるように構成されている。さらに、不一致時には、ドライバコントローラ40へ駆動停止信号を発し、作業者がスタートグリップ4aを押し下げてもモータ4bは駆動しないように構成されている。
【0020】
また、制御ユニット50は、ドライバツール4のモータ4bの負荷電流値からトルクを検出するように構成されている。そして、照合判定の他にトルク管理も行うように設定されている。そこで、制御ユニット50には、ねじ締め付け時における最適なトルク域が設定されており、正常にねじ締めが行われた場合には、OKランプ52が点灯し、このトルク域を外れてねじ締めが行われた場合、すなわち締付け異常時には、NGランプ53が点灯するように構成されている。
【0021】
また、前記制御ユニット50には、前記ねじ締めポイント及び待機位置ポイントの双方を含む経由順序が予め設定されており、これを1サイクルとして管理している。そして、制御ユニット50は、これらポイントとドライバツール4の現在位置とを照合判定し、予め設定された順序通りにドライバツール4が経由していない場合には、その旨を表示するとともにドライバコントローラ40へ駆動停止指令を発し、作業者がスタートグリップ4aを押下げてもドライバツール4が駆動しないように構成されている。
【0022】
ここで、待機位置ポイントは、ねじ締めポイントではない位置に設定されている。すなわち、この待機位置ポイントは、ワーク上の各ねじ締めポイントに対応するねじに交換する作業、あるいはワークの取り替え等、段取り作業を行うためのものであり、段取り作業時には、当該待機位置ポイントにドライバツール4を待機させる。このように、待機位置ポイントを組み込んだサイクル管理により、作業者が段取り作業を飛ばしてしまうことを防止できる。
【0023】
例えば、待機位置ポイントでワークの取り替える場合には、制御ユニット50は、前記センサ6に連動して、待機位置ポイントにドライバツール4が待機している間に、当該センサ6による検出信号が切り替わらない場合、すなわち、ワークの取り替えを確認できない場合には、その旨をモニタ51に表示するとともにドライバツール4の駆動を停止するように構成されている。
【0024】
一方、待機位置ポイントで次のねじ締めポイントに対応するねじに交換する作業をする場合には、センサ6に連動することなく、座標の照合判定のみを行う。この場合、前記待機位置ポイントは、ワークよりも外側に設定されることが望ましい。これにより、待機位置ポイントに各種ねじを収納したボックスを配置して、当該待機位置ポイントで次のねじ締めポイントに対応するねじに付け替えれば、作業者はねじの交換作業を忘れることはない。
【0025】
上記の構成により、本発明のねじ締め装置1は、作業者へ段取り作業を促すとともに、段取り作業の内容に応じた判定を行うことで、一層作業ミスを防止できる。
【0026】
ここで、待機位置ポイントは、上記段取り作業の他に、一連の作業回数をカウントする、サイクル管理にも利用できる。例えば、複数のねじ締めポイントにねじを締付けるサイクルにおいては、サイクルの最初あるいは最後に待機位置ポイントを設定する。そして、所定の順序通りにねじが締付けられた後にドライバツール4と待機位置ポイントとの照合が一致すれば、これをカウントして記憶する。このように、作業の完了したワークの個数を把握することで、製造現場における工程管理が充実する。
【0027】
ところで、上記制御ユニット50による照合判定では、図6に示すように、制御ユニット50には判定の基準となるエリアが設定されている。この照合判定エリアA,Bにより、制御ユニット50は、ねじ締めポイントの位置情報(X,Y座標)と、ドライバツール4の位置情報(X,Y座標)とが寸分の狂いもなく一致していなくても、当該エリア内にドライバツール4が位置すれば一致として判定する。具体的には、ねじ締めポイントを通過するZ軸線(鉛直線)上の任意の点を中心とする四角形の水平面エリアが照合判定エリアA,Bとして記憶されている。しかも、この照合判定エリアは、ドライバツール4の昇降位置(Z軸座標)に応じてその広さが異なり、下方にしたがって狭く設定されてる。すなわち、空間座標において、照合判定エリアは、逆円錐を成しており、徐々に狭くなるように設定されている。
【0028】
上記ねじ締め装置1を用いたねじ締め作業においては、作業者は、照合作業の前段では、ドラーバツール4をおおまかに水平操作して目標のねじ締めポイントの上空に移動させる。そして、照合ランプ55、あるいはスピーカ54による照合結果を参照しながら照合作業を行う。ここで、ドライツール4が上方に位置してドライバツール4とねじ締めポイントとの距離が遠く、目視による照合の一致が比較的困難な位置では、照合判定エリアが広く設定されている。一方、ドライバツール4がねじ締めポイント間近に位置して、目視による照合の一致が比較的容易な位置では、照合確定エリアが狭く設定されている。このような設定により、作業者は、照合ランプ55、あるいはスピーカ54による照合結果に従ってドライバツール4の水平位置を微調整して照合を一致させながらドライバツール4を下降させる。すると、ドライバツール4を目標ねじ締めポイントまで容易に案内してねじを締付けることが可能となる。
【0029】
一方、待機位置ポイントにも、所定の領域をもった照合判定エリアCが設定されている。しかしながら、ここでは、ねじ締め付け作業を行うわけではないので、ねじ締めポイントにおける照合判定エリアA,Bのように逆円錐を成す必要はなく、例えば円柱を成せばよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ねじ締め装置
2 支柱
3 アーム
4 ドライバツール
4a スタートグリップ
4b モータ
4c ドライバビット
4d マグネット
5 ブラケット
6 センサ
10 昇降可動機構
11 滑車
12 ベルト
13 錘
14 ロータリエンコーダ
14a エンコーダケーブル
20 旋回可動機構
21 第1の平歯車
22 第2の平歯車
23 ロータリエンコーダ
23a エンコーダケーブル
30 水平可動機構
31 レール
31a 外歯
32 ガイドブロック
33 歯車
34 ロータリエンコーダ
34a エンコーダケーブル
40 ドライバコントローラ
50 制御ユニット
51 モニタ
52 OKランプ
53 NGランプ
54 スピーカ
55 照合ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の駆動により回転するドライバビットを先端に有するドライバツールと、このドライバツールを支持して水平および垂直方向に可動するアームとから成り、当該ドライバツールを作業者が把持して被締結物の上空で操作し、目標のねじ締めポイントへ下降させてねじ締め付け作業を行うように構成されたねじ締め装置において、
前記ドライバツールの位置情報を検出する位置検出手段と、
被締結物の有無を検出するワーク検出手段と、
複数のねじ締めポイント及びこれらポイントの経由順序を予め設定し、この順序通りにドライバツールが経由せずにワーク検出手段による検出信号が切り替わった場合には、その旨を表示するように構成した制御手段とを備えることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項2】
前記制御手段が、所定の順序通りにドライバツールが経由した後にワーク検出手段による検出信号が切り替わった場合には、1サイクル完了としてこれをカウントすることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−135848(P2012−135848A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290800(P2010−290800)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】