説明

ふく射冷暖房パネル、空調システム及び植物工場

【課題】高効率のふく射冷暖房パネル、空調システム及びそれらを備えた植物工場を提供する。
【解決手段】中空パネルの内部空間が、中仕切り板70によって第1、第2の内部空間72、74に区分けされ、温調ガスの流入管30から第1の内部空間72に流入する温調ガスは、連通路76を介して第2の内部空間74へと移動し、温調ガスの流出管32から排出される。この際、温調ガスの熱エネルギーは、中仕切り板70によって第1、第2の内部空間72、74に区分けされ狭められた中空を、二枚のふく射放熱板66、68の各々に沿って流れることで、各ふく射放熱板66、68との熱交換が効率的に行われる。そして、二枚のふく射放熱板72、74の各々を介して、ふく射放熱パネル14の外部へと熱放出されることで、放熱に寄与する面積を最大限に確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ふく射冷暖房パネル、空調システム及びそれらを備えた植物工場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住居、オフィス等の空調設備として、冷温風を室内に噴出させ、空気の対流を生み出すことで室温調整を行う、いわゆる気流式空調機が従来から広く普及している。しかながら、気流式空調機の冷温風を長時間浴びることによる不快感を訴える人も多いことから、ふく射熱を用いた空調設備が注目されている。このふく射熱を用いた空調設備は、ふく射冷暖房パネルを室内天井や壁に嵌め込み、又は、自立型のふく射冷暖房パネルを室内に配置し、これらのふく射冷暖房パネルに冷温水や冷温風を供給して冷暖房を行うことで、直接的な空気の対流に頼ることなく、高効率の空調を可能としたものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平07−59992号公報
【特許文献2】特開2004−257677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、温度環境を高度に制御した建屋内で植物を栽培する、いわゆる植物工場が注目されているが、この植物工場には、植物の理想的な生育環境を人工光のみで再現する完全制御型と、人工光と共に太陽光を利用する太陽光併用型とがある。
【0005】
従来の完全制御型植物工場では、特に暖房より冷房が問題となっている。すなわち、照明中はランプからの発熱があるので夏季はもちろん冬季でも冷房を行う必要がある場合が多い。又、植物工場内においては暗期の室温は、植物の呼吸による消耗を抑制するために、照明中(明期)よりも低く設定される。このため、特に夏季には、床面や構造材物からの放熱と外部からの熱の流入を考慮して、暗期(夜間)にも冷房を行う必要がある(但し照明中に比べると冷房付加はかなり小さくなる。)。一方、冬季の夜間は、無暖房或いは床面や構造材からの放熱を考慮して、わずかな暖房熱量で足りる場合が多い。
以上のような事情から、完全制御型植物工場の気温制御方式に於いては、冷凍機(ヒートポンプ)による冷暖房設備を採用することが一般的である。又、暖房用として、別途電気加熱器や重油使用の温風暖房機を使用することが最も一般的である。
【0006】
これに対し、太陽光利用型(または併用型)植物工場の場合には、施設の壁面にガラスやプラスチックフィルムが使われるので、完全制御型に比べると壁面の断熱性が低く、冬季の夜間には暖房が欠かせない。以上のことから太陽光利用型植物工場の気温制御方法は、冬の暖房は温風暖房機或いは温水ボイラーが一般的であり、室温制御方法には、一般の温室の制御方法が適用される。
【0007】
又、太陽光利用型(または併用型)植物工場の場合、夏季の昼間は日射熱によって室温が外気以上になるので、換気や遮光による昇温制御や冷房が必要となる。特に、夏季の高温時には窓換気や換気扇換気により高温抑制を行うが、それでも外気より1〜2℃高くなるのが普通であり、室温を外気温以下にするためには、冷房が必要となる。しかしながら、昼間は日射負荷が大きく、経済的観点から冷凍機冷房はあまり利用されず、パッドアンドファン方式及び細霧冷房方式などを採用することが多い。
パッドアンドファン方式は、温室の側壁部分にパッドを付けてここに水滴を滴下させ、水の気化冷却の原理を利用して室温を下げるものであり、外気取入れ口から室内に取り入れられた外気は、パッド通過時に加湿冷却され冷却空気が温室内を通過して、外気取入れ口と反対側にある換気扇から廃棄される。又、細霧冷房方式は、パッドの代わりに吸気口部分に取付けたノズルから細霧を噴霧し気化させる方式である。他にダクトクーラー、薫風ダクトと呼ばれる蒸発冷却法が用いられることもある。
【0008】
更に、植物工場では、日照条件確保のための照明も必要となるが、現状のランプでは、与えられたエネルギーの25%からせいぜい30%しか光にならず、熱になって放出される残余のエネルギーを冷却する必要がある。以上の如く、植物工場は最適な植物生育環境を再現するために、季節や時間を問わず、冷暖房システムを適宜稼動する必要があることから、冷暖房システムの高効率化は、植物工場を効率的に運営する上での重要課題となっている。
【0009】
又、上述のように、完全制御型植物工場は、一般的に、冷房用に冷凍機(ヒートポンプ、エアコンとも呼ばれる)が使われ、暖房用に電気加熱器及び重油使用の温風暖房機が使用される。これらの装置から生み出された空調空気は、ダクトを介して各箇所に取付けられたノズルから栽培室へ吹き込まれ、空気の対流を生み出すことで空調が行われている。しかしながら、対流する空気が弱風に過ぎると、気孔への炭酸ガス供給が阻害される要因となり、逆に強風に過ぎると葉内の水分蒸発が促進されるため、気孔が閉じて光合成速度の低下を来たすこととなり、栽培植物に応じた最適な風速(一般的に0.5〜0.6m/sが適当とされている。)に制御することは容易ではない。又、室温の寒暖差を最小限に抑え(温度は一般的に工場内で±2℃以内に収まっていることが望ましい。)、湿度の適切化を図る(60〜80%が適当である。)必要がある。更には、炭酸ガス濃度も考慮する(光合成に関与するため1,000〜1,500PPM濃度で施肥されることが望ましい)必要がある。
【0010】
このような種々の条件を、従来の気流式空調機で実現することは、高度な制御はもとより電気代等の運転コストが嵩み、植物工場から生産される野菜の価格高騰を余儀なくされている。従って、植物工場の普及が期待されつつも進まない原因となっている。なお、氷蓄熱システムにおいてもこの電気代に関する問題は解決に至っていない。又、植物工場内で作業を行う作業者にとっても、場所毎に、冷風又は温風の効果の違いや、直接気流が肌に当たることによる不快感が生じてしまうという問題もある。特に夏場に関しては、植物工場内はランプからの発熱や稼働機器の発熱量、工場外から流入する熱量及び作業者の発熱量に対応して、冷房負荷が増大し、気流の増加を来たして冷風が直接吹きかかることにより、作業者は多大なストレスを受けることとなる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高効率のふく射冷暖房パネル、空調システム及びそれらを備えた植物工場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0012】
(1)対向配置された二枚のふく射放熱板を外壁構成部材に含む中空パネルであって、その内部空間が前記二枚のふく射放熱板の中間位置に配された中仕切り板によって区分けされ、各区画間の連通路が、少なくとも前記中仕切り板の端部ないし端部近傍に形成されており、温調ガスの流入管が、前記二枚のふく射放熱板のうちの第1のふく射放熱板と前記中仕切り板とよって区画された第1の内部空間に接続され、温調ガスの流出管が、前記二枚のふく射放熱板のうちの第2のふく射放熱板と前記中仕切り板とによって区画された第2の内部空間に接続されているふく射冷暖房パネル(請求項1)。
本項に記載のふく射冷暖房パネルは、中空パネルの内部空間が、中仕切り板によって第1、第2の内部空間に区分けされ、温調ガスの流入管から第1の内部空間に流入する温調ガスは、連通路を介して第2の内部空間へと移動し、温調ガスの流出管から排出される。この際、温調ガスの熱エネルギーは、中仕切り板によって第1、第2の内部空間に区分けされ狭められた中空内部を、二枚のふく射放熱板の各々に沿って流れることで、各ふく射放熱板との熱交換が効率的に行われる。そして、二枚のふく射放熱板の各々を介して、ふく射放熱パネルの外部へと熱放出されることで、放熱に寄与する面積を最大限に確保するものである。なお、温調ガスは、効率やコストを考慮して適宜選択するものであるが、通常は、ヒートポンプパッケージ等適切な空調機によって、空気を加温又は冷却して用いる。
【0013】
(2)上記(1)項において、前記温調ガスの流入管の開口端部が、前記第2のふく射放熱板及び中仕切り板を貫通して、前記第1の内部空間で前記第1のふく射放熱板の内側面に対し所定の間隔を空けて対向配置され、前記温調ガスの流出管の開口端部が、前記第2のふく射放熱板の外側から、前記第2のふく射放熱板に形成された孔を介して前記第2の内部空間と連通しているふく射冷暖房パネル(請求項2)。
本項に記載のふく射冷暖房パネルは、温調ガスの流入管の開口端部から、第1のふく射放熱板の内側面へと温調ガスが吹き付けられることで、第1のふく射放熱板の内側面に沿って流れる温調ガスと、第1のふく射放熱板との間の熱交換が行われる。又、第1のふく射放熱板の内側面に沿って流れる温調ガスは、連通路を介して第2の内部空間へと移動し、第2のふく射放熱板の内側面に沿って流れる温調ガスと、第2のふく射放熱板との間でも熱交換が行われる。そして、第2の内部空間の温調ガスは、第2のふく射放熱板に形成された孔を介して第2の内部空間と連通している温調ガスの流出管の開口端部から、ふく射冷暖房パネルの外部へと流出する。
しかも、温調ガスの流入管、流出管の双方が、ふく射冷暖房パネルに対し第2のふく射放熱板側から接続する形態となり、温調ガスの循環経路のレイアウトが、ふく射冷暖房パネルの一側側にまとめられることとなる。
【0014】
(3)上記(1)、(2)項において、前記温調ガスの流入管が、少なくとも前記第1のふく射放熱板の重心位置に配置されているふく射冷暖房パネル(請求項3)。
本項に記載のふく射冷暖房パネルは、第1のふく射放熱板の内側面に対し所定の間隔を空けて対向配置された、温調ガスの流入管の開口端部から、第1のふく射放熱板へと温調ガスが吹き付けられる際に、温調ガスは第1のふく射放熱板の全体に渡って均等に広がり、温調ガスと第1のふく射放熱板との間の熱交換が、第1のふく射放熱板の全体に渡って行われ、全体が設定温度となる。又、第1のふく射放熱板の内側面に沿って流れる温調ガスは、連通路を均等に流れて第2の内部空間へと移動し、第2のふく射放熱板との間でもその全体に渡って熱交換が行われ、全体が設定温度となる。
【0015】
(4)上記(1)から(3)項において、前記温調ガスの流出管が、前記第2のふく射放熱板の重心位置ないしその近傍、かつ、前記温調ガスの流入管と干渉しない位置に配置されているふく射冷暖房パネル(請求項4)。
本項に記載のふく射冷暖房パネルは、第2の内部空間へと移動した温調ガスが、流出管へと可能な限り均等に流れ込み、ふく射冷暖房パネルの外部へと流出するものである。
【0016】
(5)上記(1)から(4)項において、前記温調ガスの流入管の開口端部には円錐状に拡径する吹き付けノズルが配置され、前記第1のふく射放熱板の内側面には、前記吹き付けノズルと同心状に、円錐状コーンが突設されているふく射冷暖房パネル(請求項5)。
本項に記載のふく射冷暖房パネルは、円錐状に拡径する吹き付けノズルから流入する温調ガスが、第1のふく射放熱板の内側面にて、吹き付けノズルと同心状に突設する円錐状コーンに沿って流れることで、温調ガスは乱れなく第1のふく射放熱板の全体に均等に広がることとなる。
【0017】
(6)上記(1)から(5)項において、前記二枚のふく射放熱板が四角形に形成され、前記中仕切り板が前記ふく射放熱板の4辺を短くした四角形に形成され、両者の重心位置が一致し、かつ、前記第1、第2のふく射放熱板と等距離に前記中仕切り板が配置されているふく射冷暖房パネル(請求項6)。
本項に記載のふく射冷暖房パネルは、二枚のふく射放熱板が四角形に形成され、中仕切り板がふく射放熱板の4辺を短くした四角形に形成され、両者の重心位置が一致していることで、各区画間の連通路が、二枚のふく射放熱板の4辺の端部に形成される。又、第1、第2のふく射放熱板と等距離に中仕切り板が配置されることで、第1、第2の内部空間の容積比が均等になる。
【0018】
(7)上記(1)から(6)項において、着脱自在なキャスターを備えるふく射冷暖房パネル(請求項7)。
本項に記載のふく射冷暖房パネルは、着脱自在なキャスターによって、適宜移動自在な、自立式のふく射放熱パネルとなる。
【0019】
(8)上記(1)から(7)項において、端縁部を隣接して上下又は左右に複数並べて並べた状態で固定するための、着脱自在な接続板を備えるふく射冷暖房パネル(請求項8)。
本項に記載のふく射冷暖房パネルは、着脱自在な接続板によって複数並べて固定することで、適宜冷暖房能力の調整を行うものである。
【0020】
(9)上記(1)から(9)項において、前記二枚のふく射放熱板の表面が遠赤外線放射性セラミック混不織布で覆われているふく射冷暖房パネル(請求項9)。
本項に記載のふく射冷暖房パネルは、二枚のふく射放熱板の表面を覆う遠赤外線放射性セラミック混不織布が、ふく射放熱板の熱エネルギーを受けて遠赤外線を発生させ、暖房能力を高めるものである。
【0021】
(10)冷温風を供給する空調機と、該空調機から得られる空調空気を、ふく射冷暖房パネルとの間で循環させる送風ダクト及び還流ダクトとを備え、少なくとも末端部及びその近傍は、フレキシブルホースにより構成されており、前記ふく射冷暖房パネルに対し着脱自在な空調システム。
本項に記載の空調システムは、空調機から得られる空調空気が、送風ダクトを介して、ふく射冷暖房パネルへと送られ、空調空気の熱エネルギーが、ふく射放熱パネルの外部へと放出される。そして、温調ガスは、還流ダクトを介して空調機へと戻されることで、空調機とふく射冷暖房パネルとの間を循環するものである。しかも、送風ダクト及び還流ダクトの、少なくとも末端部及びその近傍はフレキシブルホースにより構成されており、ふく射冷暖房パネルに対し着脱自在であることから、ふく射冷暖房パネルの設置場所を適宜変更して、空調機とふく射冷暖房パネルとの間で温調ガスを循環させることも容易である。
なお、送風ダクト及び還流ダクトを、環状にループさせる形態で備えることで、複数のふく射冷暖房パネルへと均一に送風を行うことが可能となる。
【0022】
(11)上記(10)項において、ふく射放熱パネルが、上記(1)から(9)項のいずれかのふく射冷暖房パネルである空調システム。
本項に記載の空調システムは、空調機から得られる空調空気が、送風ダクトを介して、上記(1)から(9)項のいずれかのふく射冷暖房パネルの、温調ガスの流入管へと送られる。そして、温調ガスの流入管からふく射冷暖房パネルの第1の内部空間に流入する温調ガスは、連通路を介して第2の内部空間へと移動し、この際、温調ガスの熱エネルギーは、二枚のふく射放熱板の各々を介して、ふく射放熱パネルの外部へと放出される。そして、温調ガスの流出管からふく射冷暖房パネル外へと温調ガスは流出し、還流ダクトを介して空調機へと戻されることで、温調ガスは、空調機とふく射冷暖房パネルとの間を循環するものである。しかも、送風ダクト及び還流ダクトの、少なくとも末端部及びその近傍はフレキシブルホースにより構成されており、ふく射冷暖房パネルの温調ガスの流入管及び流出管に対し着脱自在であることから、ふく射冷暖房パネルの設置場所を適宜変更して、空調機とふく射冷暖房パネルとの間で温調ガスを循環させることも容易である。
【0023】
(12)上記(11)項において、送風ダクト及び還流ダクトの少なくとも末端部及びその近傍に、非連結時に空調空気の漏れを防止するバルブ機構を備える空調システム。
本項に記載の空調システムは、バルブ機構によって、送風ダクト及び還流ダクトと、ふく射冷暖房パネルとの非連結時に、送風ダクト及び還流ダクトからの空調空気の漏れを防止することで、ふく射冷暖房パネルの増減や設置場所の変更に柔軟に対応するものとなる。
【0024】
(13)上記(11)、(12)項において、前記送風ダクト及び前記還流ダクトは断熱されている空調システム(請求項10)。
本項に記載の空調システムは、送風ダクト及び還流ダクトが断熱されていることから、かかる循環経路での熱エネルギー損失は抑えられ、還流された状態で空調機により再加熱又は再冷却する際に必要となるエネルギーは、ふく射冷暖房パネルでの放熱分を補う程度で良くなる。送風ダクト及び還流ダクトの断熱は、グラスウール、発泡スチロール、スタイロフォーム等の断熱材を適宜採用するものである。
なお、送風ダクト及び還流ダクトの断面形状は、最適圧力損失が得られるものであれば、矩形、円形等、適宜設定可能である。
【0025】
(14)植物培養室を含む建屋と、前記植物培養室に配置された一本ないし複数列の通路と、該通路に沿って並べられた複数列の植物栽培棚と、上記(10)から(12)項記載の空調システムとを備え、前記ふく射冷暖房パネルは、前記植物栽培棚に沿って前記通路に配置され、前記送風ダクト及び前記還流ダクトは、前記空調機に接続され前記建屋の壁面又は天井面の前記植物栽培棚に係る作業に支障を与えない位置に設けられたメイン送風ダクト及びメイン還流ダクトと、該メイン送風ダクト及びメイン還流ダクトから分岐するサブ送風ダクト及びサブ還流ダクトとを含む植物工場(請求項11)。
本項に記載の植物工場は、メイン送風ダクト及びメイン還流ダクトが、空調機に接続され建屋の壁面又は天井面の、植物栽培棚に係る作業に支障を与えない位置に設けられ、メイン送風ダクト及びメイン還流ダクトから分岐するサブ送風ダクト及びサブ還流ダクトを、ふく射冷暖房パネルの、温調ガスの流入管及び流出管と接続することで、温調ガスは、空調機とふく射冷暖房パネルとの間を循環するものである。しかも、ふく射冷暖房パネルの設置場所を適宜変更して、植物培養室の形状、植物栽培棚のレイアウト、栽培される植物の種類等に応じた最適の温度調整を適切に行うものである。
なお、室温は、各々植物培養室内の適切な場所に配置されたセンサによって常時監視され、パソコン等の演算装置からなる制御装置によって、空気制御装置の運転制御がなされ、常時、最適な温度環境が確保される。
【0026】
(15)上記(14)項において、前記植物培養室内に空気流を形成する送風ファンと、前記植物栽培棚の列方向に向けて開口する複数の噴出しノズルと、該噴出しノズルに前記送風ファンで生み出された空気流を送風する送風ダクトとを備える植物工場(請求項12)。
本項に記載の植物工場は、噴出しノズルから、植物培養棚で栽培される植物に適切な気流速の空調空気が供給されるものである。
【0027】
(16)上記(15)項において、前記送風ファンには、湿度調整、CO濃度調整及び空気清浄の少なくとも1つの機能を有する空気制御装置から、空調空気が供給される植物工場(請求項13)。
本項に記載の植物工場は、空気制御装置から、送風ファンに対し、湿度、CO濃度等が調整され浄化された空調空気が供給され、送風ファンから、適切な気流速で植物栽培棚の植物へと供給されることで、温度以外の植物の育成条件が整えられる。なお、湿度、CO濃度は、各々植物培養室内の適切な場所に配置されたセンサによって常時監視され、パソコン等の演算装置からなる制御装置によって、空気制御装置の運転制御がなされ、常時、最適な湿度、CO濃度環境が与えられる。
【0028】
(17)上記(15)、(16)項において、前記植物栽培棚を挟んで前記噴出しノズルと対向する位置に、吸引用フッドが配置され、該吸引用フッドと前記空気制御装置とが、吸引ダクトを介して接続されている植物工場(請求項14)。
本項に記載の植物工場は、送風ファンから噴出しノズルを介して、適切な気流速で植物栽培棚の植物へと供給された空調空気が、吸引用フッドから吸引ダクトを介し空気制御装置へと還流され、湿度、CO濃度等が再調整され浄化されて、再び噴出しノズル40へと供給されるものである。
【0029】
(18)前記建屋には、外気取り入れ口を備える植物工場(請求項15)。
本項に記載の植物工場は、外気取り入れ口から、必要に応じて植物培養室内に新鮮な外気を導入し、植物培養棚で栽培される植物の育成に適した空気を供給するものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明はこのように構成したので、高効率のふく射冷暖房パネル、空調システム及びそれらを備えた植物工場を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る植物工場の模式図である。
【図2】図1に示される植物工場の空調システムの、冷暖房系の構成を模式的に示す斜視図である。
【図3】図1に示される植物工場の空調システムの、空気制御系の構成を模式的に示す斜視図である。
【図4】図1に示される植物工場の空調システムの、ふく射冷暖房パネルを示すものであり、(a)は横断面図、(b)は正面図、(c)は部分的に断面で示した側面図である。
【図5】図4に示されるふく射冷暖房パネルの、温調ガスの流入管及び流出管の端部を示すものであり、(a)は流入管の吹き付けノズルの正面図、(b)は同側面図、(c)は流出管の吸い込みノズルの正面図、(d)は同側面図である。
【図6】図4に示されるふく射冷暖房パネルの、着脱自在なキャスターを示すものであり、(a)は正面図、(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、従来技術と同一部分、若しくは、相当する部分については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
図1から図3には本発明の実施の形態に係る植物工場10が示され、図4には、植物工場10の空調システム12を構成する、ふく射冷暖房パネル14が示されている。
空調システム12は、冷温風を供給する空調機16と、空調機16から得られる空調空気を、ふく射冷暖房パネル14との間で循環させる送風ダクト18及び還流ダクト20とを備えている(ふく射冷暖房パネル14については、追って詳述する。)。なお、本発明の実施の形態では、送風ダクト18及び還流ダクト22を、環状にループさせるように構成されている。
【0033】
図示の例では、空調機16は空冷式ヒートポンプパッケージが用いられているが、必要な冷暖房能力を発揮するものであれば、適宜別形式の空調機を使用することも可能である。又、空調機16と送風ダクト18との間には、植物工場の規模に応じて能力が選定された、空調空気の圧送ファン22が設けられている。同様にして、空調機16と還流ダクト20との間には、植物工場の規模に応じて能力が選定された、吸引ファン24が設けられている。
【0034】
送風ダクト18及び還流ダクト20は、グラスウール、発泡スチロール、スタイロフォーム等の断熱材によって断熱されている。なお、送風ダクト18及び還流ダクト20の断面形状は、最適圧力損失が得られるものであれば、矩形、円形等、適宜設定可能である。送風ダクト18及び還流ダクト20は、空調機16に接続され工場建屋の壁面又は天井面に沿って、植物栽培棚26(後述する)に係る作業に支障を与えない位置に設けられた、メイン送風ダクト18M及びメイン還流ダクト20Mと、メイン送風ダクト18M及びメイン還流ダクト20Mから分岐する、サブ送風ダクト18S及びサブ還流ダクト20Sとからなるものである。そして、送風ダクト18及び還流ダクト20の少なくとも末端部及びその近傍、図示の例ではサブ送風ダクト18S及びサブ還流ダクト20Sが、フレキシブルホースにより構成されている。
【0035】
又、植物栽培棚26は、通路28に沿って複数並べられている。植物栽培棚26は、栽培する植物の種類や生育状況などに応じて、複数段の棚の間隔、高さ、各列の間隔等が適宜レイアウトされるものである。又、植物栽培棚26のレイアウトに起因して、通路28のレイアウトが決定される場合もある。又、ふく射冷暖房パネル14は、植物栽培棚26に沿って通路28に配置されている。通路28の幅は、ふく射冷暖房パネル14を配置した状態で、作業員が必要な作業を行いながら、植物栽培棚26に沿って移動することが可能なだけの通路幅が確保されている。そして、ふく射冷暖房パネル14の、温調ガスの流入管30及び流出管32(図4参照)に対し、サブ送風ダクト18S及びサブ還流ダクト20Sが、適切な着脱機構によって、着脱自在に連結される。更に、サブ送風ダクト18S及びサブ還流ダクト20Sには、非連結時に空調空気の漏れを防止する適切なバルブ機構を備えている。
【0036】
又、空気制御装置34から得られる空調空気が、送風ファン36から、送風ダクト38を介して、植物栽培棚26の列方向に向けて開口する複数の噴出しノズル40へと送風される(図3参照)。
空気制御装置34は、CO濃度調整機能及び空気清浄機能等の種々の空調機能を備えるものであり、図示の例では、調湿機を兼ね備えた自動空気調整機が用いられている。又、COはCO発生器及びCOボンベ42により供給され、空気制御装置34からの送風と共に送風ファン36へと送られる。送風ファン36には、空気中の塵、雑菌等を除去するためのHEPAフィルター44が装着されている。そして、送風ファン36で適切な気流速を与えられた空調空気は、工場建屋54の壁面又は天井面の、植物栽培棚26に係る作業に支障を与えない位置に設けられた送風ダクト38を介して、噴出しノズル40から、各植物栽培棚26に噴射される。なお、空気制御装置34と空調機16とを接続して、空調機16で調整された空調空気を、空気制御装置34へと必要量だけ、任意に又は自動的に廻すようにしても良い。
【0037】
噴出しノズル40は、望ましくは、植物栽培棚26の連なる壁際に配置され、各植物栽培棚26の各列正面で、栽培棚高さの中央位置へと噴射方向が調整された噴出しノズル40から、空調空気が各植物栽培棚26に噴射される。
更に、植物栽培棚26を挟んで噴出しノズル40と対向する位置には、吸引用フッド46が配置され、吸引用フッド46と空気制御装置34の吸引ファン48とが、吸引ダクト50を介して接続されている。そして、噴出しノズル40と吸引ファン48とが、制御装置100によってバランス制御される。更に、工場建屋54には、外気取り入れ口52も備えている。
【0038】
なお、図示の例では、工場建屋54は、植物培養室56、機械室58、出荷・作業室60、管理室62、倉庫64の各室に区分けされている。そして、空調システム12を構成する各部分のうち、ふく射冷暖房パネル14、サブ送風ダクト18S、サブ還流ダクト20S、噴出しノズル40及び吸引用ヘッド46は、植物培養室56に配置されている。
又、空調機16、圧送ファン22、吸引ファン24、48、空気制御装置34、送風ファン36、COボンベ42、HEPAフィルター44及び外気取り入れ口52は、機械室58に配置されている。又、各センサの検知結果を受けて、温度、湿度その他の環境を制御するための、パソコン等の演算装置からなる制御装置100は、機械室58又は管理室62に配置されている。
そして、植物培養室56は、外気が遮断されたいわゆるクリーン室となっており、植物培養室56に設けられた上記各構成部分と、機械室58に設けられた上記各構成部分とが、メイン送風ダクト18M、メイン還流ダクト20M、送風ダクト38及び吸引ダクト50を介して、密閉連結されている。
【0039】
続いて、ふく射冷暖房パネル14の構造について、図4〜図6を参照しながら詳しく説明する。
ふく射冷暖房パネル14は、対向配置された二枚のふく射放熱板66、68を外壁構成部材に含む中空パネルである。そして、その内部空間が二枚のふく射放熱板66、68の中間位置に配された中仕切り板70によって区分けされ、各区画間72、74の連通路76が、中仕切り板70の端部に形成されている。なお、連通路76は、少なくとも中仕切り板70ないし端部近傍に形成されていれば良いが、必要に応じて中仕切り板70の任意の場所にも設けることとしても良い。そして、温調ガスの流入管30が、二枚のふく射放熱板のうちの第1のふく射放熱板66と中仕切り板70とよって区画された、第1の内部空間72に接続されている。又、温調ガスの流出管32が、二枚のふく射放熱板のうちの第2のふく射放熱板68と中仕切り板70とによって区画された、第2の内部空間74に接続されている。本発明の実施の形態に係るふく射放熱パネル14は密閉構造となっており、熱劣化や強度も考慮して、鋼板あるいはその他の材料が用いられる。
【0040】
より具体的には、第1、第2のふく射放熱板66、68が四角形に形成され、中仕切り板70が第1、第2のふく射放熱板66、68の4辺を短くした四角形に形成されている。そして、第1、第2のふく射放熱板66、68及び中仕切り板70の重心位置が一致している。又、第1、第2のふく射放熱板66、68と等距離に、中仕切り板70が配置され、密閉された中空パネルとなっている。
図示の例では、第1、第2のふく射放熱板66、68は、一片の長さAが914mmの正方形に形成され、中仕切り板70は、一片の長さBがAよりも短い正方形(B=A−2C)に形成されている。又、第1、第2の内部空間72、74は同一の幅D(40mm)を有している。そして、第1、第2のふく射放熱板66、68及び中仕切り板70は、第1、第2の内部空間72、74内部の空気の流れに大きな乱れが生じないことを考慮して、ボルトやステー等適切な固定手段によって固定されている。
【0041】
温調ガスの流入管30は、第1、第2のふく射放熱板66、68の重心位置に配置されている。又、温調ガスの流入管30の開口端部が、第2のふく射放熱板68及び中仕切り板70を貫通して、第1の内部空間72で第1のふく射放熱板66の内側面に対し所定の間隔を空けて対向配置されている。しかも、温調ガスの流入管30の開口端部には、図5(a)(b)に示されるように円錐状に拡径する吹き付けノズル78が配置され、第1のふく射放熱板66の内側面には、吹き付けノズル78と同心状に、円錐状コーン80が突設されている。第2のふく射放熱板68及び中仕切り板70の、温調ガスの流入管30が貫通する部分は、必要最少数のボルト等適切な係止手段により固定され、かつ、コーキング等適切な空気漏れ対策が施される。又、温調ガスの流入管30及びサブ送風ダクト18Sは、いわゆるワンタッチで着脱可能な着脱プラグによって、接続されることが望ましい。
【0042】
一方、温調ガスの流出管32は、第2のふく射放熱板68の重心位置ないしその近傍で、かつ、温調ガスの流入管30と干渉しない位置に配置されている。そして、温調ガスの流出管32の開口端部には流出ノズル82が設けられ、この流出ノズル82が、第2のふく射放熱板68の外側から、第2のふく射放熱板68に形成された孔を介して第2の内部空間74と連通している。第2のふく射放熱板68の、温調ガスの流出管32が固定される部分は、必要最少数のボルト等適切な係止手段が用いられ、かつ、コーキング等適切な空気漏れ対策が施される。又、温調ガスの流出管32及びサブ還流ダクト20Sも、いわゆるワンタッチで着脱可能な着脱プラグによって、接続されることが望ましい。
【0043】
又、図4に示されるように、ふく射冷暖房パネル14の端縁部を隣接して上下又は左右に複数並べて並べた状態で固定するための、着脱自在な接続板84を備えている。接続板84は、第1、第2のふく射放熱板66、68に対しボルトなどの適切な係止手段によって固定される。更には、図6に示されるようなキャスター86を、ワンタッチで着脱自在に備えている。
なお、少なくとも二枚のふく射放熱板66、68の表面を、遠赤外線放射性セラミック混不織布等、発熱機能を有するカバーで覆うこととしても良い。
【0044】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。
まず、本項に記載のふく射冷暖房パネルは、中空パネルの内部空間が、中仕切り板70によって第1、第2の内部空間72、74に区分けされ、温調ガスの流入管30から第1の内部空間72に流入する温調ガスは、連通路76を介して第2の内部空間74へと移動し、温調ガスの流出管32から排出される。この際、温調ガスの熱エネルギーは、中仕切り板70によって第1、第2の内部空間72、74に区分けされ狭められた中空を、二枚のふく射放熱板66、68の各々に沿って流れることで、各ふく射放熱板66、68との熱交換が効率的に行われる。そして、二枚のふく射放熱板72、74の各々を介して、ふく射放熱パネル14の外部へと熱放出されることで、放熱に寄与する面積を最大限に確保することができる。
【0045】
この際、温調ガスの流入管30の開口端部から、第1のふく射放熱板66の内側面へと温調ガスが吹き付けられることで、第1のふく射放熱板66の内側面に沿って流れる温調ガスと、第1のふく射放熱板66との間の熱交換が行われる。又、第1のふく射放熱板66の内側面に沿って流れる温調ガスは、連通路76を介して第2の内部空間74へと移動し、第2のふく射放熱板68の内側面に沿って流れる温調ガスと、第2のふく射放熱板68との間でも熱交換が行われる。そして、第2の内部空間74の温調ガスは、第2のふく射放熱板68に形成された孔を介して第2の内部空間74と連通している温調ガスの流出管32の開口端部から、ふく射冷暖房パネル14の外部へと流出する。
しかも、温調ガスの流入管30、流出管32の双方が、ふく射冷暖房パネル14に対し、第2のふく射放熱板68側から接続する形態となり、温調ガスの循環経路のレイアウトが、ふく射冷暖房パネル14の一側側にまとめられることとなる。
【0046】
又、温調ガスの流入管30が、第1のふく射放熱板66の重心位置に配置されていることから、第1のふく射放熱板66の内側面に対し所定の間隔を空けて対向配置された、温調ガスの流入管30の開口端部から、第1のふく射放熱板66へと温調ガスが吹き付けられる際に、温調ガスは第1のふく射放熱板66の全体に渡って均等に広がり、温調ガスと第1のふく射放熱板66との間の熱交換が、第1のふく射放熱板66の全体に渡って行われ、全体が設定温度となる。又、第1のふく射放熱板66の内側面に沿って流れる温調ガスは、連通路76を均等に流れて第2の内部空間74へと移動し、第2のふく射放熱板68との間でもその全体に渡って熱交換が行われ、全体が設定温度となる。
【0047】
一方、温調ガスの流出管32が、第2のふく射放熱板68の重心位置ないしその近傍、かつ、温調ガスの流入管30と干渉しない位置に配置されていることで、第2の内部空間74へと移動した温調ガスが、流出管32へと可能な限り均等に流れ込み、ふく射冷暖房パネル14の外部へと流出するものである。
又、円錐状に拡径する吹き付けノズル78から流入する温調ガスが、第1のふく射放熱板66の内側面にて、吹き付けノズル78と同心状に突設する円錐状コーン80に沿って流れることで、温調ガスは乱れなく第1のふく射放熱板66の全体に均等に広がることとなる。
【0048】
又、二枚のふく射放熱板66、68が四角形に形成され、中仕切り板70がふく射放熱板66、68の4辺を短くした四角形に形成され、両者の重心位置が一致していることで、各区画間の連通路76が、二枚のふく射放熱板66、68の4辺の端部に形成される。又、第1、第2のふく射放熱板66、68と等距離に中仕切り板70が配置されることで、第1、第2の内部空間72、74の容積比が均等になる。なお、ふく射冷暖房パネル14の外形が、複数並べて固定することが可能なように多角形をなしていれば、二枚のふく射放熱板66、68、中仕切り板70の形状は、四角形以外(円形その他の形状)であっても良い。
【0049】
更に、ふく射冷暖房パネル14は、着脱自在なキャスター86によって、適宜移動自在な、自立式のふく射放熱パネルとなる。
又、ふく射冷暖房パネル14を、着脱自在な接続板84によって複数並べて固定ることで、適宜冷暖房能力の調整を行うことができる。
しかも、必要に応じて、二枚のふく射放熱板66、68の表面を遠赤外線放射性セラミック混不織布等、発熱機能を有するカバーで覆うこととで、ふく射放熱板66、68の熱エネルギーを受けて遠赤外線を発生させ、暖房能力を高めることができる。
【0050】
又、本発明の実施の形態に係る空調システム12は、空調機16から得られる空調空気が、送風ダクト18を介して、ふく射冷暖房パネル14の温調ガスの流入管30へと送られる。そして、温調ガスの流入管30からふく射冷暖房パネル14の第1の内部空間72に流入する温調ガスは、連通路76を介して第2の内部空間74へと移動し、この際、温調ガスの熱エネルギーは、二枚のふく射放熱板66、68の各々を介して、ふく射放熱パネル14の外部へと放出される。そして、温調ガスの流出管32からふく射冷暖房パネル14外へと温調ガスは流出し、還流ダクト20を介して空調機16へと戻されることで、温調ガスは、空調機16とふく射冷暖房パネル14との間を循環するものとなる。しかも、送風ダクト18及び還流ダクト20の、少なくとも末端部18S、20S及びその近傍はフレキシブルホースにより構成されており、ふく射冷暖房パネル14の温調ガスの流入管30及び流出管32に対し着脱自在であることから、ふく射冷暖房パネル14の設置場所を適宜変更して、空調機16とふく射冷暖房パネル14との間で温調ガスを循環させることも容易である。
しかも、送風ダクト18及び還流ダクト20を、環状にループさせる形態で備えることで、複数のふく射冷暖房パネル14へと均一に送風を行うことが可能となる。
【0051】
又、送風ダクト18及び還流ダクト20の少なくとも末端部18S、20S及びその近傍に、非連結時に空調空気の漏れを防止するバルブ機構を備え、このバルブ機構によって、送風ダクト18及び還流ダクト20と、ふく射冷暖房パネル14との非連結時に、送風ダクト18及び還流ダクト20からの空調空気の漏れを防止することで、ふく射冷暖房パネル14の増減や設置場所の変更に柔軟に対応することができるものである。
又、送風ダクト18及び還流ダクト20が断熱されていることから、かかる循環経路18、20での熱エネルギー損失は抑えられ、還流された状態で空調機16により再加熱又は再冷却する際に必要となるエネルギーは、ふく射冷暖房パネル14での放熱分を補う程度で良くなり、効率的な運転が可能となる。
【0052】
又、本発明の実施の形態に係る植物工場10は、メイン送風ダクト18M及びメイン還流ダクト20Mが、空調機14に接続され建屋54の壁面又は天井面の、植物栽培棚26に係る作業に支障を与えない位置に設けられ、メイン送風ダクト18M及びメイン還流ダクト20Mから分岐するサブ送風ダクト18S及びサブ還流ダクト20Sを、ふく射冷暖房パネル14の、温調ガスの流入管30及び流出管32と接続することで、温調ガスは、空調機16とふく射冷暖房パネル14との間を循環するものである。しかも、ふく射冷暖房パネル14の設置場所を適宜変更して、植物培養室56の形状、植物栽培棚26のレイアウト、栽培される植物の種類等に応じた最適の温度調整を適切に行うことができる。
【0053】
又、噴出しノズル40から、植物培養棚26で栽培される植物に適切な気流速の空調空気を供給し、植物の生育を促すことができる。
しかも、空気制御装置34から、送風ファン36に対し、湿度、CO濃度等が調整され浄化された空調空気が供給され、送風ファン36から、適切な気流速で植物栽培棚26の植物へと供給されることで、温度以外の植物の育成条件が整えられる。
【0054】
又、送風ファン36から噴出しノズル40を介して、適切な気流速で植物栽培棚26の植物へと供給された空調空気が、吸引用フッド24から吸引ダクト50を介し空気制御装置34へと還流され、湿度、CO濃度等が再調整され浄化されて、再び噴出しノズル40へと供給されるものである。
更に、外気取り入れ口52から、必要に応じて植物培養室56内に新鮮な外気を導入し、植物培養棚で栽培される植物の育成に適した空気を供給することも可能である。
なお、本発明の適用対象となる植物工場は、完全制御型及び太陽光併用型の双方である。又、本発明の適用対象は、上述の植物工場に限定されるものではなく、ふく射冷暖房パネル14を用いた空調システム12を、住居、オフィス等の空調設備に採用することでも、効率的な冷暖房システムを供給することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10:植物工場、12:空調システム、14:ふく射冷暖房パネル、16:空調機、18:送風ダクト、18M:メイン送風ダクト、18S:サブ送風ダクト、20:還流ダクト、20M:メイン還流ダクト、20S:サブ還流ダクト、22:圧送ファン、 24、48:吸引ファン、26:植物栽培棚、28:通路、30:温調空気の流入管、32:温調空気の流出管、34:空気制御装置、36:送風ファン、38:送風ダクト、40:噴出しノズル、42:COボンベ、44:HEPAフィルター、46:吸引用フッド、50:吸引ダクト、52:外気取り入れ口、54:工場建屋、56:植物培養室、66:第1のふく射放熱板、68:第2のふく射放熱板、70:中仕切り板、72:第1の内部空間、74:第2の内部空間、76:連通路、78:吹き付けノズル、80:円錐状コーン、82:流出ノズル、84:接続板、86:キャスター、100:制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された二枚のふく射放熱板を外壁構成部材に含む中空パネルであって、その内部空間が前記二枚のふく射放熱板の中間位置に配された中仕切り板によって区分けされ、各区画間の連通路が、少なくとも前記中仕切り板の端部ないし端部近傍に形成されており、
温調ガスの流入管が、前記二枚のふく射放熱板のうちの第1のふく射放熱板と前記中仕切り板とよって区画された第1の内部空間に接続され、温調ガスの流出管が、前記二枚のふく射放熱板のうちの第2のふく射放熱板と前記中仕切り板とによって区画された第2の内部空間に接続されていることを特徴とするふく射冷暖房パネル。
【請求項2】
前記温調ガスの流入管の開口端部が、前記第2のふく射放熱板及び中仕切り板を貫通して、前記第1の内部空間で前記第1のふく射放熱板の内側面に対し所定の間隔を空けて対向配置され、
前記温調ガスの流出管の開口端部が、前記第2のふく射放熱板の外側から、前記第2のふく射放熱板に形成された孔を介して前記第2の内部空間と連通していることを特徴とする請求項1記載のふく射冷暖房パネル。
【請求項3】
前記温調ガスの流入管が、少なくとも前記第1のふく射放熱板の重心位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のふく射冷暖房パネル。
【請求項4】
前記温調ガスの流出管が、前記第2のふく射放熱板の重心位置ないしその近傍、かつ、前記温調ガスの流入管と干渉しない位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のふく射冷暖房パネル。
【請求項5】
前記温調ガスの流入管の開口端部には円錐状に拡径する吹き付けノズルが配置され、前記第1のふく射放熱板の内側面には、前記吹き付けノズルと同心状に、円錐状コーンが突設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のふく射冷暖房パネル。
【請求項6】
前記二枚のふく射放熱板が四角形に形成され、前記中仕切り板が前記ふく射放熱板の4辺を短くした四角形に形成され、両者の重心位置が一致し、かつ、前記第1、第2のふく射放熱板と等距離に前記中仕切り板が配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のふく射冷暖房パネル。
【請求項7】
着脱自在なキャスターを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のふく射冷暖房パネル。
【請求項8】
端縁部を隣接して上下又は左右に複数並べて並べた状態で固定するための、着脱自在な接続板を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載のふく射冷暖房パネル。
【請求項9】
前記二枚のふく射放熱板の表面が遠赤外線放射性セラミック混不織布で覆われていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載のふく射冷暖房パネル。
【請求項10】
冷温風を供給する空調機と、該空調機から得られる空調空気を、請求項1から9のいずれか1項記載のふく射冷暖房パネルとの間で循環させる送風ダクト及び還流ダクトとを備え、
前記送風ダクト及び前記還流ダクトは断熱され、少なくとも末端部及びその近傍は、フレキシブルホースにより構成され、前記ふく射冷暖房パネルの温調ガスの流入管及び流出管に対し着脱自在、かつ、非連結時に空調空気の漏れを防止するバルブ機構を備えることを特徴とする空調システム。
【請求項11】
植物培養室を含む建屋と、前記植物培養室に配置された一本ないし複数列の通路と、該通路に沿って並べられた複数列の植物栽培棚と、請求項10記載の空調システムとを備え、
前記ふく射冷暖房パネルは、前記植物栽培棚に沿って前記通路に配置され、
前記送風ダクト及び前記還流ダクトは、前記空調機に接続され前記建屋の壁面又は天井面の前記植物栽培棚に係る作業に支障を与えない位置に設けられたメイン送風ダクト及びメイン還流ダクトと、該メイン送風ダクト及びメイン還流ダクトから分岐するサブ送風ダクト及びサブ還流ダクトとを含むことを特徴とする植物工場。
【請求項12】
前記植物培養室内に空気流を形成する送風ファンと、前記植物栽培棚の列方向に向けて開口する複数の噴出しノズルと、該噴出しノズルに前記送風ファンで生み出された空気流を送風する送風ダクトとを備えることを特徴とする請求項11記載の植物工場。
【請求項13】
前記送風ファンには、湿度調整、CO濃度調整及び空気清浄の少なくとも1つの機能を有する空気制御装置から、空調空気が供給されることを特徴とする請求項12記載の植物工場。
【請求項14】
前記植物栽培棚を挟んで前記噴出しノズルと対向する位置に、吸引用フッドが配置され、該吸引用フッドと前記空気制御装置とが、吸引ダクトを介して接続されていることを特徴とする請求項12又は13記載の植物工場。
【請求項15】
前記建屋には、外気取り入れ口を備えることを特徴とする請求項12から14のいずれか1項記載の植物工場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−144957(P2011−144957A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4021(P2010−4021)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000241290)豊国工業株式会社 (28)
【出願人】(307018405)株式会社エコ・パワー (19)
【Fターム(参考)】