説明

むくみ感改善剤及びむくみ感改善用飲食物

【課題】 天然抽出物を含有したむくみ感改善剤を提供することを目的とする。
【解決手段】むくみ感改善剤として食品、医薬品、医薬部外品などにヒハツ抽出物を有効成分として含有せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常の生活で起きる自然発生的なむくみ感を改善するむくみ改善剤及びむくみ感改善用飲食物に関する。尚、本発明の飲食物とは経口により摂取されるすべての物品を指し、食品、医薬品、医薬部外品などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
日常生活における長時間の立位や座位は、病的ではない自然発生的なむくみ感を発生させることは良く知られている。このむくみ感は、単に身体の局所がむくんだように感じられる場合もあるが、実際に靴がはき難くなったり衣服が肌に食い込むなど身体上一過性の症状を伴う場合も多い。このような自然発生的むくみ感の原因として、毛細血管からの体液漏出と、静脈やリンパ系による体液回収のアンバランスが主な原因と考えられている。
【0003】
このようなむくみ感の改善方法しては例えば、足のマッサージ器具(特許文献1〜3参照)、足温器(特許文献4参照)、貼り付け剤(特許文献5、6参照)、ストッキング(特許文献7参照)、靴下(特許文献8、9参照)などの開発が行われているが、これらのものは全て体外からの刺激によりむくみ感を改善するものである。また、飲食によりむくみ感を改善する方法としては例えば、むくみ改善剤(特許文献10、11参照)、食品組成物(特許文献12参照)などの開発が行われているが効果、安全性、風味などの点に制約があり広く利用されるに至っていない。
【0004】
【特許文献1】特許第2121830号
【特許文献2】特開平10−15025号
【特許文献3】特開平11−197209号
【特許文献4】特開平8−28966号
【特許文献5】特開平8−98868号
【特許文献6】特開平10−279473号
【特許文献7】特開平9−195104号
【特許文献8】特開平9−273002号
【特許文献9】特開平9−111504号
【特許文献10】特開平10−218777号
【特許文献11】特開2004−35425号
【特許文献12】特開2002−330728号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、むくみ感改善作用を有する植物抽出物を見出し、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは古くから飲食されている食品素材に着目し、むくみ感に対する作用を指標に種々検討してきたところ、ヒハツが飲食により自然発生的なむくみ感を改善する作用に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明はヒハツ及び、又はヒハツの抽出物を有効成分とするむくみ感改善剤を提供するものである。また、本発明はヒハツ及び、又はヒハツ抽出物を有効成分として含有するむくみ感改善用飲食物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
上述のように、本発明によれば簡便な方法でむくみ感の改善を行うことができ、安全性や風味に優れたむくみ感改善用飲食物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いるヒハツは、香辛料として古くから利用されているが、日本での利用は胃腸薬程度であり、ほとんど食品には利用されおらず、飲食によるむくみ感の改善については全く知られていなかった。
【0010】
ヒハツはナガコショウとも呼ばれ、コショウ属植物であるPiper longum又はPiper retrofractumに由来する植物の果穂部分を利用することが出来る。
【0011】
ヒハツの果穂はそのまま利用しても良いが必要により粉砕、抽出等の操作を行ってから利用することもできる。ヒハツの抽出に際しては、飲食物の抽出に使用する溶媒が使用でき、例えば水、アルコールなどの親水性有機溶媒やヘキサンなどの疎水性有機溶媒を使用し、常法の植物抽出物製造に従った抽出操作を行うだけでよい。
【0012】
ヒハツ及び、又はヒハツ抽出物をむくみ感改善剤のために利用するには、ヒハツ及び、又はヒハツ抽出物を単独で、またはブドウ糖、果糖、ショ糖、デキストリン、デンプン等の糖類;マルチトール、エリスリトール、キシリトール等の糖アルコール類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;グリシン、アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸;セルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、キチン、キトサン、アラビアゴム末等の多糖類;大豆油、菜種油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類など、任意の助剤とともに任意の剤形に製剤化しておき、それを望ましくはむくみ感の発生する以前に、むくみ感発生後であればなるべく速やかに、経口摂取する。
【0013】
ヒハツ及び、又はヒハツ抽出物あるいはそれを製剤化したものを任意の飲食物に添加しておき、飲食と同時にヒハツ及び、又はヒハツ抽出物が摂取されるようにしてもよい。
【0014】
ヒハツ及び、又はヒハツ抽出物の添加対象飲食物は特に制限されるものではないが、その具体例としてはチューインガム、キャンディー、錠菓、スナック菓子、顆粒類、粉末類、清涼飲料、茶飲料、酒類等がある。
【0015】
むくみ感改善のためのヒハツの好適摂取量は、1日の飲食において約15mg〜1,000mgであり、さらに好ましくは50mg〜500mgである。ヒハツ抽出物にあっては原料であるヒハツの量に換算し、1日の飲食において約15mg〜1,000mgであり、さらに好ましくは50mg〜500mgである。
【0016】
飲食物に対するヒハツ及び、又はヒハツ抽出物の添加率は、上記ヒハツ及び、又はヒハツ抽出物の好適摂取量とその飲食物が通常飲食される量を考慮して適宜選定することができる。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を示して本発明を説明する。
【0018】
[実施例1]
ヒハツの果穂の乾燥物100gを1リットルの水に浸漬し、2時間還流下に加熱した。その後、濾過して残渣を再び1リットルの水で同様に処理した。上記2回の処理により得られた抽出液を合わせて減圧下に濃縮し、12.6gの熱水抽出エキスを得た。
【0019】
[実施例2]
ヒハツの果穂の乾燥粉砕物100gを1リットルのエタノールに浸漬し、2時間還流下に加熱した。その後、濾過して残渣を再び1リットルのエタノールで同様に処理した。上記2回の処理により得られた抽出液を合わせて減圧下に濃縮し、9.9gのエタノール抽出エキスを得た。
【0020】
[実施例3]
日頃からむくみ感を感じる20代〜30代の女性(身長154±2cm)4名の被験者に対し、プラセボ日はデキストリン150mgを水100mlで、ヒハツ日はヒハツの熱水抽出物を原料のヒハツに換算して150mgとなる量を水100mlで午後1時に経口投与した。
【0021】
むくみ感の測定は、被験者の足先からひざ上部より15cm下までの体積を測定することにより評価した。
【0022】
被験者は午前9時と午後5時の1日2回下肢体積測定を行い、午前の体積と午後の下肢体積を比較した。その際に、むくみ感に関する問診も行った。これらの試験を一人に対し複数回行った。
【0023】
[表1] 下肢体積の変化及びむくみの体感度(被験者A)
試験区 午前9時の体積 午後5時の体積 体積増減量 体積増減率
(cm (cm (cm (%)
プラセボ1回目 2386.80 2545.92 159.12 106.7
プラセボ2回目 2545.92 2545.92 0.00 100.0
プラセボ3回目 2426.58 2506.14 79.56 103.3
ヒハツ1回目 2466.36 2466.36 0.00 100.0
ヒハツ2回目 2585.70 2506.14 −79.56 96.9
ヒハツ3回目 2466.36 2426.58 −39.78 98.4
【0024】
問診の結果、プラセボ1回目では非常にむくみを感じ、プラセボ2回目ではむくみをやや感じ、プラセボ3回目ではむくみを感じ、ヒハツ1回目ではむくみをやや感じ、ヒハツ2回目では靴下の跡があまりついていないと感じ、ヒハツ3回目ではむくみをあまり感じなかった。
【0025】
[表2] 下肢体積の変化及びむくみの体感度(被験者B)
試験区 午前9時の体積 午後5時の体積 体積増減量 体積増減率
(cm (cm (cm (%)
プラセボ1回目 1949.22 2108.34 159.12 108.2
プラセボ2回目 2148.12 2148.12 0.00 100.0
プラセボ3回目 2068.56 2068.56 0.00 100.0
ヒハツ1回目 2227.68 2148.12 −79.56 96.4
ヒハツ2回目 2267.46 2187.90 −79.56 96.5
ヒハツ3回目 2267.46 2267.46 0.00 100.0
【0026】
問診の結果、プラセボ1、2回目ではむくみを感じ、プラセボ3回目ではむくみをあまり感じず、ヒハツ1回目ではむくみをあまり感じず、ヒハツ2回目ではむくみを感じず、ヒハツ3回目ではむくみをあまり感じなかった。
【0027】
[表3] 下肢体積の変化及びむくみの体感度(被験者C)
試験区 午前9時の体積 午後5時の体積 体積増減量 体積増減率
(cm (cm (cm (%)
プラセボ1回目 1869.66 1989.00 119.34 106.4
プラセボ2回目 1949.22 2108.34 159.12 108.2
プラセボ3回目 1989.00 1949.22 −39.78 98.0
ヒハツ1回目 2028.78 2068.56 42.78 102.0
ヒハツ2回目 2187.90 2108.34 −79.56 96.4
ヒハツ3回目 2108.34 2028.78 −79.56 96.2
【0028】
問診の結果、プラセボ1、2回目ではむくみを感じ、プラセボ3回目ではむくみをあまり感じず、ヒハツ1回目ではむくみをやや感じ、ヒハツ2、3回目ではむくみをあまり感じなかった。
【0029】
[表4] 下肢体積の変化及びむくみの体感度(被験者D)
試験区 午前9時の体積 午後5時の体積 体積増減量 体積増減率
(cm (cm (cm (%)
プラセボ1回目 1989.00 1989.00 0.00 100.0
プラセボ2回目 1989.00 2068.56 79.56 104.0
プラセボ3回目 1989.00 2028.78 39.78 102.0
ヒハツ1回目 2068.56 2148.12 79.56 103.8
ヒハツ2回目 2068.56 2028.78 −39.78 98.1
ヒハツ3回目 2108.34 2027.78 −80.56 96.2
【0030】
問診の結果、プラセボ1回目ではむくみをあまり感じず、プラセボ2、3回目ではむくみを感じ、ヒハツ1回目ではむくみを感じ、ヒハツ2、3回目ではむくみを感じなかった。
【0031】
[実施例4]
日頃からむくみ感を感じる30代の女性(身長153.5cm)1名の被験者に対し、プラセボ日はデキストリン150mgを水100mlで、ヒハツ日はヒハツのエタノール抽出物を原料のヒハツに換算して150mgとなる量を水100mlで午後1時に経口投与した。
【0032】
むくみ感の測定は、被験者の足先からひざ上部より15cm下までの体積を測定することにより評価した。
【0033】
被験者は午前9時と午後5時の1日2回下肢体積測定を行い、午前の体積と午後の下肢体積を比較した。その際に、むくみ感に関する問診も行った。これらの試験を一人に対し複数回行った。
【0034】
[表5] 下肢体積の変化及びむくみの体感度(被験者E)
試験区 午前9時の体積 午後5時の体積 体積増減量 体積増減率
(cm (cm (cm (%)
プラセボ1回目 1909.44 1989.00 79.56 104.2
プラセボ2回目 1909.44 1989.00 79.56 104.2
ヒハツ1回目 1949.22 1949.22 0.00 100.0
ヒハツ2回目 1949.22 1868.66 −79.56 98.1
【0035】
問診の結果、プラセボ1、2回目ではむくみを感じ、ヒハツ1回目ではむくみをあまり感じず、ヒハツ2回目ではむくみを感じなかった。
【0036】
[実施例5]
ガムベース 25g
砂糖 50g
果糖 15g
水飴 9g
レモン香料 0.5g
ヒハツ熱水抽出物 0.5g
上記原料をチューインガム製造の常法により処理して、むくみ感改善作用を有するチューインガムを製造した。
【0037】
[実施例6]
砂糖 50g
水飴 34g
クエン酸 1g
ヒハツエタノール抽出物 0.2g
水 15g
上記原料をキャンディー製造の常法により処理して、むくみ感改善作用を有するキャンディーを製造した。
【0038】
[実施例7]
マルチトール 73g
デキストリン 6g
グリセリン脂肪酸エステル 4g
ヒハツ熱水抽出物 17g
上記原料を混合、打錠して、むくみ感改善作用を有する錠菓を製造した。
【0039】
[実施例8]
ビートオリゴ糖 43g
エリスリトール 33g
クエン酸 3g
グリセリン脂肪酸エステル 1g
ヒハツエタノール抽出物 20g
上記原料を混合、顆粒化して、むくみ感改善作用を有する顆粒を製造した。
【0040】
[実施例9]
果糖ブドウ糖液糖 12g
ビタミンC 0.5g
クエン酸 0.5g
レモン香料 0.1g
ヒハツ熱水抽出物 0.3g
水 100g
上記原料を水に溶解して、むくみ感改善作用を有する飲料を製造した。
【0041】
[実施例10]
緑茶 4g
紅茶 55g
ウーロン茶 5g
ヒハツエタノール抽出物 35g
カミツレ 1g
上記原料を混合して、むくみ感改善作用を有するティーバック茶を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒハツを有効成分とするむくみ感改善剤。
【請求項2】
ヒハツ抽出物を有効成分とするむくみ感改善剤。
【請求項3】
ヒハツを有効成分として含有するむくみ感改善用飲食物。
【請求項4】
ヒハツ抽出物を有効成分として含有するむくみ感改善用飲食物。


【公開番号】特開2006−104109(P2006−104109A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291790(P2004−291790)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】