説明

めっき条材の製造方法およびリフロー処理装置

【課題】良好なめっき条材を安定して得ることのできるめっき条材の製造方法を提供すること。また、他の課題は、良好なめっき条材を安定して得ることのできるめっき条材のリフロー処理装置を提供すること。
【解決手段】リフロー処理装置10は、予熱槽12の下方にバーナ14が設けられ、バーナ14の周辺部に、遮風部材16が設けられている。バーナ14の下方には、冷却液18を冷媒に用いた冷却槽20が設けられている。また、遮風部材16の一端は、冷却液18の液面下に配置されている。予熱槽12で予熱された金属条材22は、バーナ14により加熱溶融され、バーナ14と冷却槽20との間に設けられた遮風部材16を通過して、冷却槽20に搬送され冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき条材の製造方法およびリフロー処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両や、OA機器、家電製品などの分野において使用されるコネクタ端子には、めっき処理を施した金属条材を所定の形状にプレス加工して形成したものが広く用いられている。
【0003】
めっき処理は、プレス加工後の金属条材のせん断面の露出を避けたり、防錆や耐食性向上、電気的特性向上などのために行われている。
【0004】
めっき処理に用いられるめっき材には、地球環境への負荷を抑制するなどの観点から、近年では、鉛フリーの錫や錫系合金などが広く用いられている。
【0005】
錫や錫系合金などのめっきを施した金属条材を用いたコネクタ端子では、めっき表面にウィスカが発生して、隣接するコネクタ端子同士が接触して短絡するおそれがある。そのため、錫や錫系合金などのめっきを施した金属条材には、ウィスカの発生を抑制するために、あらかじめリフロー処理を行うことが多い。また、めっき表面に光沢を出すために、リフロー処理を行う場合もある。
【0006】
リフロー処理は、金属条材表面に施されためっきを加熱し、溶融させて再凝固させる方法であり、例えば、バーナや電気炉、熱風などの加熱手段を用いて行うことができる。
【0007】
この中でも、バーナは、電気炉や熱風などに比べて高いエネルギーをかけられるため、製造ラインを高速化できるとともに、低コスト化を図るなどの利点を有している。
【0008】
例えば、特許文献1には、錫系めっき条材をバーナによって加熱溶融させてリフロー処理する工程を有する電子部品用錫系めっき条材の製造法が記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−107290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のバーナ式のリフロー処理によりめっき条材を製造する場合、以下の問題があった。
【0011】
すなわち、バーナによる直火方式で金属条材表面に施されためっきを加熱する場合、バーナ周辺部での空気の対流により、バーナの火力を一定にすることが難しかった。図4は、既存のバーナ式のリフロー処理装置においてバーナの火炎中央部と端部での温度を測定した結果である。図4からもわかるようにバーナの火力には大きなバラツキがあった。
【0012】
そのため、バーナの熱がめっきに対して不均一に伝達され、光沢ムラができたり、めっき表面が部分的に白くなったりするなど、良好なめっき条材が安定して得られないといった問題があった。
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、良好なめっき条材を安定して得ることのできるめっき条材の製造方法を提供することにある。また、他の課題は、良好なめっき条材を安定して得ることのできるめっき条材のリフロー処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るめっき条材の製造方法は、めっきを施した金属条材をバーナで加熱してリフロー処理する工程を有するめっき条材の製造方法であって、上記バーナの周辺部に、遮風部材が配置されていることを要旨とするものである。
【0015】
ここで、上記加熱後、加熱された金属条材を冷却する冷却部を備え、上記遮風部材は、上記バーナと上記冷却部との間に配置されていると良い。
【0016】
さらに、上記冷却部は冷却液を冷媒に用いており、上記遮風部材の一端は、上記冷却液の液面下に配置されていると良い。
【0017】
また、上記冷却部は、上記バーナの下方に配置されていると良い。
【0018】
一方、本発明に係るめっき条材のリフロー処理装置は、めっきを施した金属条材をバーナで加熱してリフロー処理する手段を備え、上記バーナの周辺部に、遮風部材が配置されていることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るめっき条材の製造方法は、バーナの周辺部に、遮風部材が配置されているので、外部からの空気の流入を抑え、バーナ周辺部での空気の対流を抑制することができ、リフロー処理時の熱量を一定化させることができる。そのため、バーナの熱をめっきに対して均一に伝達することができ、光沢ムラやめっき表面の不均一性を抑制することができるため、良好なめっき条材を安定して得ることができる。
【0020】
この場合、上記加熱後、加熱された金属条材を冷却する冷却部を備え、上記遮風部材は、バーナと冷却部との間に配置されていれば、バーナと冷却部との間の空気の対流を抑制することができるとともに、溶融されためっき条材を冷却部で効率的に再凝固させることができる。
【0021】
また、上記冷却部は冷却液を冷媒に用いており、上記遮風部材の一端が、上記冷却液の液面下に配置されていれば、外部からの空気の流入をより抑えることができる。
【0022】
また、上記冷却部が、バーナの下方に配置されていれば、めっき条材の搬送を円滑に行うことができる。
【0023】
一方、本発明に係るめっき条材のリフロー処理装置は、めっきを施した金属条材をバーナで加熱してリフロー処理する手段を備え、上記バーナの周辺部に、遮風部材が配置されている。そのため、バーナ周辺部での空気の対流を抑制でき、良好なめっき条材を安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明に係るめっき条材の製造方法では、バーナの周辺部に、遮風部材が配置されている。そして、上記バーナを用いて、あらかじめめっきが施された金属条材を加熱してめっきを溶融させる。
【0026】
遮風部材は、バーナ周辺部での空気の対流を抑え、バーナの火力を一定にさせることができる形状であれば特に限定されない。また、バーナの形状や設置されるスペースなどにより適宜変更することができる。例えば、図1(a)に示すように角筒形状や、図1(b)に示すように円筒形状のものを用いることができる。遮風部材は、耐熱性のある樹脂や金属、ガラスなどから構成することができる。
【0027】
上記加熱後には、さらに加熱された金属条材を冷却する冷却部が設けられていても良い。冷却部が設けられていれば、溶融された金属条材表面のめっきを冷却部で効率的に再凝固させることができるからである。
【0028】
冷却部を設ける場合、遮風部材はバーナと冷却部との間に設けると良い。バーナと冷却部との間の空気の対流を抑制することができるからである。
【0029】
上記冷却部は、水冷式や空冷式などの手段により構成することができる。好ましくは、冷却部は、冷却液を冷媒に用いた冷却槽から構成すると良い。冷却液を冷媒に用いた冷却槽は、装置が簡便であり、製造コストを抑えることができるからである。
【0030】
この場合、遮風部材の一端は、冷却液の液面下に設けると良い。上記のように構成すれば、外部からの空気の流入を抑え、バーナ周辺部での空気の対流をより抑制することができるからである。
【0031】
次に、本発明に係るめっき条材の製造方法の一例を、図を用いてより具体的に説明する。図2は、本発明のめっき条材の製造方法に好適に用いられるめっき条材のリフロー処理装置である。
【0032】
図2に示すように、リフロー処理装置10は、予熱槽12と、バーナ14と、遮風部材16と、冷却槽20とを備えている。
【0033】
予熱槽12は、めっきが施された金属条材22をバーナ14で加熱する前に、あらかじめ予熱するためのものである。また、予熱槽12は、バーナ14の上部に設けられており、バーナ14の熱が伝搬されて予熱されるようになっている。
【0034】
バーナ14は、予熱槽12で予熱された金属条材22のめっきを加熱溶融するためのものである。また、バーナ14の周辺部に、遮風部材16が設けられている。
【0035】
冷却槽20は、バーナ14で加熱溶融された金属条材22のめっきを再凝固させるためのものであり、冷却液18を冷媒として用いている。冷却槽20は、バーナ14の下部に設けられており、遮風部材16の一端は、冷却液18の液面下に配置されている。
【0036】
まず、金属条材22は、ロール24により予熱槽12に搬送され予熱される。そして、予熱槽12で予熱された金属条材22はさらに搬送されて、バーナ14により加熱溶融される。加熱溶融された金属条材22は、バーナ14と冷却槽20との間に設けられた遮風部材16を通過して、冷却槽20に搬送され冷却されて、めっき条材が製造される。
【0037】
冷却部の後には、さらに乾燥部が設けられていても良い。乾燥部が設けられていれば、製造されためっき条材の水分を効率的に取り除くことができるからである。上記のようにして製造されためっき条材は、例えば、図示しない巻き取り機などにより巻き取ることができる。
【0038】
また、リフロー処理装置10は、図3に示すように、予熱槽12とバーナ14が並置されていても良い。この場合、遮風部材16は、例えば、略L字形状のものを用いることができる。
【0039】
上記バーナには、直火方式で、安定して均一な火炎が得られやすいラインバーナを用いると良い。
【0040】
冷却液としては、例えば、水、メタノールやエタノールなどのアルコール類またはこれらの混合液などを用いることができる。
【0041】
金属条材としては、例えば、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金、ニッケル、ニッケル系合金などを用いることができ、特にこれに限定されるものではない。
【0042】
金属条材にめっきされるめっき材としては、例えば、錫、ニッケル、金、銀、銅またはこれらの合金などを用いることができる。めっき被膜は、単層から構成されていても良いし、複数層から構成されていても良い。めっき被膜の厚さは特に限定されず、めっき条材の用途や使用される環境に応じて適宜変更することができる。
【0043】
めっき材は、電気めっきや無電解めっき、溶融めっきなどの湿式めっきや、蒸着やスパッタ、CVDなどの乾式めっきなどの方法により金属条材にめっきされると良い。製造ラインやコストの面から、好ましくは電気めっき法が用いられると良い。
【0044】
以上、本実施形態に係るめっき条材の製造方法およびリフロー処理装置について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る遮風部材の一例を示す斜視図であり、(a)は角筒形状、(b)は円筒形状である。
【図2】本発明の一実施形態に係るリフロー処理装置の模式図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るリフロー処理装置の模式図である。
【図4】従来のリフロー処理装置におけるバーナの火炎中央部と端部での温度の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10・・・リフロー処理装置
12・・・予熱槽
14・・・バーナ
16・・・遮風部材
18・・・冷却水
20・・・冷却槽
22・・・金属条材
24・・・ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっきを施した金属条材をバーナで加熱してリフロー処理する工程を有するめっき条材の製造方法であって、
前記バーナの周辺部に、遮風部材が配置されていることを特徴とするめっき条材の製造方法。
【請求項2】
前記加熱後、加熱された金属条材を冷却する冷却部を備え、
前記遮風部材は、前記バーナと前記冷却部との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のめっき条材の製造方法。
【請求項3】
前記冷却部は冷却液を冷媒に用いており、
前記遮風部材の一端は、前記冷却液の液面下に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のめっき条材の製造方法。
【請求項4】
前記冷却部は、前記バーナの下方に配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のめっき条材の製造方法。
【請求項5】
めっきを施した金属条材をバーナで加熱してリフロー処理する手段を備え、
前記バーナの周辺部に、遮風部材が配置されていることを特徴とするリフロー処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−120910(P2009−120910A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296294(P2007−296294)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】