説明

ろう付け用シート

【課題】コア材料と片側または両側上のアルミニウムろう付け用層からできたコアシートを持つ良好な耐食性を維持する一方で、後ろう付け0.2%降伏強度の少なくとも10%の改善を持つアルミニウム合金ろう付け用シートを提供する。
【解決手段】コアシートのアルミニウム合金がMn0.5から13、Cu0.5から2.0、Si0.3から1.5、Mg<0.05、Fe<0、4、Ti<0.15、Cr<0.35、Zr及び/またはV<0.35(合計で)、Zn<0.25、差し引きアルミニウムと不可避の不純物の組成(重量%で)を持ち、そして上記ろう付け用シートが少なくとも50MPaの後ろう付け0.2%降伏強度を持ち、ASTM G−85による穴無しのSWAAT試験において12日以上の腐食寿命を持つ、ろう付け用シート、と更にその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金のコア材料コアシートとコアシートの少なくとも一つの側上の主要合金化元素としてケイ素を通常5から14重量%の範囲で含む、アルミニウム合金ロール接合あるいはクラッドろう付け用層を持つろう付け用シートを指向する。本発明は、更に、このようなろう付け用シートを製造する方法と、またこのように製造した組立体にも関する。
【関連技術の説明】
【0002】
従来技術において、アルミニウム合金は、熱交換器用途向けの選り抜きの合金である。これらの合金は、強度、低重量、良好な熱及び電気伝導性、ろう付け性、耐食性、及び成形性の望ましい組合せにより選ばれる。
【0003】
上記したこのタイプのろう付け用シートは、当該技術でよく知られ、なかんずく、自動車用ラジエーター、蒸発器、凝縮器、給気冷却器で広く使用されている。NOCOLOK(商標)フラックスを使用する制御雰囲気ろう付け(CAB)と真空ろう付けとして知られる、2つのろう付け方法が慣用であり、ここで述べる必要はない。上記フラックスは、カリウム及びフルオロ−アルミネートの混合物からできた非腐食性のフラックスである。このようなろう付けは、ろう付け用層のアルミニウムケイ素合金により決まる約600℃の温度で行なわれる。
【0004】
フラックスろう付け、例えばNOCOLOKろう付けによる極めて良好なろう付け性を持つ市販のろう付け用シートは、例えば一つの側にろう付け合金によりクラッド化されたコア合金を含んでなり、上記コア合金は次の組成を重量%を持つ。
Mn;0.65−1.0
Cu;0.5−0.7
Si;最高0.3
Fe;最高0.5
Zn;最高0.10
Ti;0.08−0.10
差し引き;アルミニウムと不純物。
このようなろう付け用シートは、キャスティングと熱ロールかけによる熱変形の加工ステップの間でこのコアを均質化処理にかけた場合及び均質化処理にかけなかった場合、それぞれ、通常、40MPa迄及び48MPa迄の範囲の後ろう付け0.2%降伏強度を得ることが可能である。更には、このろう付け用シートは、ASTM G−S5によるSWAAT試験で試験して、長寿命の腐食性能を有する。長寿命の合金は、穴無しのASTM G−85によるSWAAT試験において10から12日を超すものである。
【0005】
改善された後ろう付けした強度と同時に良好な耐食性を持つ一方で、フラックスろう付け時のろう付け性が優れるという要求に合致するろう付け用シートの要望が存在する。
【0006】
高い後ろう付けした強度を持ち、また良好な耐食性を持つ合金が当該技術で知られている。EP−A−0718072から、アルミニウム合金コア材料のコアシートとその少なくとも一つの側上の主要合金化元素としてケイ素を含有するアルミニウム合金のろう付け用層を持つろう付け用シートが知られていて、ここで、このコアシートのアルミニウム合金は次の組成(重量%で)を有する。
Mn;0.7−1.5
Cu;0.2−2.0
Mg;0.1−0.6
Si;>0.15、最も好ましくは>0.40
Ti;オプションで、0.15迄
Cr;オプションで、0.35迄
Zr及び/またはV;オプションで全部で0.25迄
差し引き;アルミニウムと不可避の不純物、但し(Cu+Mg)>0.7、最も好ましくは(Cu+Mg)>1.2。
合金化元素のCuとMgを添加して、得られるろう付け用シートに充分な機械的強度と耐食性を組合せて付与する。このろう付け用シートをフラックスろう付けにより加工してもよいが、ろう付けサイクル時に施されるろう付けフラックスに影響を与える、合金中の比較的高Mg含量によるいくつかの困難に遭遇する。コア合金中のMgレベルが高過ぎる更なる難点は、ろう付けサイクル時NOCOLOKろう付けフラックスを施す場合に流動及び/または濡れ性が低下するということである。しかしながら、この既知のアルミニウムコア材料中のMgレベルを低下させることは、ろう付け後に得られる強度レベルを劇的に低下させる。
【0007】
従来技術文献のいくつかの他の開示を下記に挙げる。
【0008】
JP−A−07003370は、ろう付け用シートを形成するためにAl−Si充填金属を持つアルミニウムコアクラッドを記述している。このコア合金は、重量%で次を含んでなる。
Fe;0.4から1.5
Mn;0.7−1.7
但し、(Fe+Mn)≦2.4
Si;1.3最高
Cu;1.5最高
但し、(Si+Cu)≧1.5、更に[Fe]+[Mn]≧l.7[2.5([Si]+[Cu])]−4.2
差し引き;アルミニウムと不可避の不純物。
【0009】
GB−A−2321869は、0.3から1.5重量%のCuと0.03から0.3重量%のSnを含んでなり、合金の差し引きが実質的にアルミニウムである、アルミニウム合金コア材料の一つあるいは双方の表面の上にAl−Siシリーズの充填合金クラッドを含んでなる、アルミニウム合金ろう付け用シートを開示している。与えられた範囲のCuとSnの組合せた添加により、耐食性が改善される。
【0010】
BP−A−0712681により、0.25mm以下の合計厚さの3層構造の熱交換器管用のろう付け用シートが公知であり、ここで、このコア合金は、
Si;0.2−2.5
Fe;0.05−2.0
Cu;0.7−2.5
Mn;0.05−2.0
Mg;オプションで、0.5以下
Cr;オプションで、0.3以下
Zr;オプションで、0.3以下
Ti;オプションで、0.3以下
差し引き;アルミニウムと不可避の不純物を含んでなり(重量%で)、片側上でろう付け材料によりクラッドされ、そしてもう一方の側上で46から70ミクロンの範囲の厚さの腐食防止用陽極クラッド層を持って、必ずクラッドされ、そして上記腐食防止用陽極クラッド層は次を含んでなる(重量%で)。
Zn;3.0−6.0
Mg;0.05−2.5
差し引き;アルミニウムと不可避の不純物。
【0011】
製造時に3層はすべて、キャスティングの後に450から600℃の温度範囲内で均質化処理を受ける。この3層構造の熱ロールかけは、450℃以下の温度で行なわれる。更に、粗い金属間化合物をこの合金中に分布させるために、Feを合金中に慎重に添加する。
【発明の要約】
【0012】
本発明の目的は、アルミニウム合金コア材料と片側または両側上のアルミニウムろう付け用層からできたコアシートを持つろう付け用シートであって、フラックスろう付けプロセス中で改善されたろう付け性をもたらし、そしてコアを均質化処理にかける場合、また均質化処理にかけない場合の双方で、良好な耐食性を維持する一方で、後ろう付け0.2%降伏強度の少なくとも10%の改善を持つろう付け用シートを提供することである。
【0013】
この目的は、本発明により達成され、アルミニウム合金コア材料とこの片側または両側上の主要合金化元素としてケイ素を含有するアルミニウム合金のろう付け用層からできたコアシートを持つ、2層構造または3層構造のろう付け用シートであって、ここで、このコアシートのアルミニウム合金が
Mn;0.5から1.5
Cu;0.5から2.0
Si;0.3から1.5
Mg;<0.05
Fe;<0.4
Ti;<0.15
Cr;<0.35
Zr及び/またはV;<0.35(合計で)
Zn;<0.25
差し引き;アルミニウムと不可避の不純物の組成(重量%で)を有するろう付け用シートを提供することによって行なわれる。
【0014】
このろう付け用シートは、後ろう付け状態で良好な機械的性質を有し、重量で
Mn;0.65−1.0
Cu;0.5−0.7
Si;最高0.3
Fe;最高0.5
Zn;最高0.10
Ti;0.08−0.10
差し引き;アルミニウムと不純物からなり、そしてこのコアをそれぞれ均質化処理にかけた場合、及び均質化処理にかけなかった場合、通常、40MPa迄及び48MPa迄の範囲の後ろう付け0.2%降伏強度を持つコア合金を持つ上記のろう付け用シートに比較して、キャスティングと熱変形加工ステップの間で少なくともコア材料をコアを均質化処理にかけるか、かけない双方の場合、後ろう付け0.2%降伏強度の少なくとも10%の増加をもたらすことが可能である。この材料を上記均質化処理にかけた場合、このろう付け用シートは、O−焼戻しにおいて少なくとも50MPaの、そして最良の例では少なくとも55MPaの後ろう付け0.2%降伏強度を達成することが可能である。この材料を上記均質化処理にかけない場合、ろう付け用シートは、H24−焼戻しにおいて少なくとも55MPaの、そして最良の例においては、少なくとも60MPaの後ろう付け0.2%降伏強度を達成することが可能である。少なくとも双方の場合、本発明のろう付け用シートは、良好な耐食性を有する。このろう付け用シートは、穴無しのASTM G−85によるSWAAT試験で12日以上の、好ましくは20日以上の腐食寿命を得ることが可能である。最良の実施例においては、この耐食性は25日以上である。この耐食性レベルは、ろう付け用シートを長寿命製品として保証する。更には、このアルミニウムコア合金中にMgが存在しないことにより、フラックスろう付け、例えばNOCOLOKろう付けによりこのろう付け用シートを極めて良好に加工することができる。優れた性質は、特にCu、Si、Fe、Mn、及びMgの含量の特定の組合せの結果であると考えられる。注目すべきは、このろう付け用シートは、使用する水性冷却流体と接触する側で腐食防止用陽極として作用する、クラッド層の存在なしで良好な耐食性を有する。
【0015】
本発明においては、このコアシートの片面または両面がろう付け用層を有する。このろう付け用層は、当該技術で知られている好適なSi含有アルミニウム合金ろう付け用層(充填層)であってもよい。このような層は、5から14%のSiを含んでなってもよい。ろう付け用シートの2層構造の場合、このろう付け用層はこのコア合金の片側に存在し、もう一方の側は犠牲(sacrificial)クラッド層を欠く。3層構造のろう付け用シートの場合、ろう付け用層はこのコア合金の両側に存在する。
【0016】
このアルミニウムコア合金は、特に溶液硬化により所望の強度レベルを得るために主要合金化元素の一つとしてCuを含む、アルミニウム協会(Aluminium Association)(AA)3xxx−シリーズのタイプのものである。所望の強度と耐食性を得るためには少なくとも0.5%が必要とされ、一方2.0%以上のCu含量は、強度の点でどのような顕著な改善も生まず、結果として有害な低融点の共融混合物を更に生成する。Cuレベルに対する更に好ましい下限は、0.7%、更に好ましくは0.8%である。所望の性質の最適化を得るために、更に好ましいCuレベルは、0.8から1.5%の範囲にある。
【0017】
Siは、本発明のコア合金中のもう一つの重要な合金化元素である。Siの添加は、結果としてこの合金の溶液硬化を増加させる。0.3%以下ではSiの効果はなく、1.5%以上では、結果として有害な低融点の共融混合物の形成とまた大きな金属間粒子の形成を引き起こす。Siの更に好適な最低レベルは0.40%である。Siの好適な最高レベルは、1.0%であり、更に好ましくは、Siの好適な最高レベルは0.8%である。
【0018】
Mnは、本発明のコア合金中の更に重要な合金化元素である。0.5%以下では、顕著な効果はなく、2.0%以上では、結果として有害な大きな金属間粒子を形成させる。好ましい態様においては、Mnは、0.6から1.5%の範囲、更に好ましくは0.7から1.4%の範囲にある。この範囲では、充分なMnが後ろう付け強度の所望の増加のために固体溶液中に保持されるために、存在するMnによって、固体溶液の硬化効果が可能となる。
【0019】
強度と耐食性のために、好ましくは(Cu+Mn)>1.5、更に好ましくは(Cu+Mn)>l.8、そして更に好ましくは(Cu+Mn)>2.0の但し書きの条件が充たされる。
【0020】
更には、強度と耐食性のために、好ましくは(Si+Mn)>1.2、更に好ましくは(Si+Mn)>l.4の但し書きの条件が充たされる。
【0021】
更に、NOCOLOKろう付け等のフラックスろう付け工程時にアルミニウム合金のろう付け性を改善するために、本発明のアルミニウム合金にMgを添加しないのが慎重である。Mgの最高値は0.05%であり、更に好ましい最高値は0.03%であり、そして更には好ましくはMgは存在しない。
【0022】
Feは、すべての既知のアルミニウム合金に存在するが、本発明のアルミニウム合金では必須の合金化元素として必要とされない。Fe含量が高過ぎる場合には、なかんずく、ろう付け用シートの成形性は低下し、そして腐食性能を低減させる。加えて、有害なFeCuAl金属間粒子が可能性としては形成されることにより、この後ろう付け強度は低下する。許容できるFe含量は、最高0.4%であり好ましくは最高0.3%以下である。
【0023】
オプションとして添加されるCrは、なかんずく、特に高Cu含量と組合せて、後ろう付けした状態でのアルミニウム合金の強度を改善する。0.35%以上のCr含量では、特に有害な大きな金属間粒子の形成により強度の増加の利点が減少する。0.25%でCrの更に好ましい最高値を取る。Cr添加の更に好ましいレベルは、0.05から0.25%の範囲にある。
【0024】
オプションとして添加されるZr及び/またはVは、なかんずく、後ろう付けした状態でのアルミニウム合金の強度と、またろう付け時のクリープ強度とSAG抵抗性を改善する。単独あるいは組合せでのこれらの元素の好ましい最高値は、0.35%である。単独あるいは組合せでのこれらの元素の更に好適なレベルは、0.05から0.25%の範囲にある。
【0025】
Tiは、粒子調整添加剤として作用するために、0.15%迄存在してもよいが、好ましくは0.1未満、更に好ましくは0.05%未満である。
【0026】
また、Znも通常、不純物として0.25%未満、好ましくは0.10%未満の量で存在してもよい。
【0027】
不可避の不純物とは、通常、いかなる追加の元素も0.05%未満であり、このような元素の合計が0.15%未満であるという意味である。
【0028】
当該技術で慣用であるように、シミュレーションしたろう付けサイクルを行うことにより、後ろう付け状態における強度を評価することができる。ここで使用するシミュレーションしたろう付けサイクルは、試料を炉中で加熱し、590から610℃で5分間保持し、続いて標準の商用のろう付けラインで適用し得る冷却速度、すなわち20から100℃/分で制御した冷却を行うことである。
【0029】
本発明のろう付け用シートの態様においては、ろう付け用シートをろう付けサイクルにかける前に、アルミニウムコアシートが上記のようにO−焼戻しまたはH24−焼戻しで提供される。
【0030】
本発明は、また、
(i)アルミニウムコア合金のインゴットをキャストし、
(ii)このアルミニウムコア合金に少なくとも一つの側でろう付け用層を付与し、
(iii)少なくとも一つの側でろう付け用層を持つこのアルミニウムコア合金を熱ロールかけし、
(iv)少なくとも一つの側でろう付け用層を持つこのアルミニウムコア合金を所望の完成したゲージ迄冷ロールかけする
ステップを含んでなり、そしてステップ(1)と(ii)の間で上記アルミニウムコア合金を均質化処理にかけない本発明のろう付け用シートを製造する方法も提供する。熱ロールかけに必要とされる所望の出発温度迄、このキャストした合金を予熱するだけである。均質化処理の必要性を避けることにより、加工ルートが簡素化され、一方でこの製品が後ろう付け状態で更に改良された強度を得ることが可能となり、良好な耐食性を得ることが更になお可能である。
【0031】
本発明のもう一つの局面においては、ろう付け合金により一緒に接合された少なくとも2つの部材を含んでなり、少なくとも一つの部材はそのコアとして上述した本発明のアルミニウムシートを含んでなり、そして50MPa以上の、そして好ましくは少なくとも55MPaの0.2%降伏強度を持つシート材料である編んだ組立体、特に編んだ熱交換器が提供される。
【0032】
ここで、本発明のろう付け用シートを非限定的な実施例により例示する。
【実施例】
【0033】
実験室規模試験で次の試験を行った。ろう付け用シートのコア合金として使用するための10個のアルミニウム合金のインゴットをキャストし、慣用のDCキャスティングで通常行う冷却速度に匹敵する冷却速度で固化した。表1は、合金の組成(差し引きアルミニウムと不純物)を示す。ここで、8から10の合金は比較の合金(「比較」により示される)であり、そして1から7の合金は本発明の合金(「本発明」により示される)である。
【0034】
この合金を2つの異なる加工経路により加工した。キャスティングと熱ロールかけによる熱変形加工ステップの間で材料を均質化処理にかけないように、この合金を加工した。この経路により得られる材料の最終のシートをチューブ・ストック用途に特に好適な条件であるH−24焼戻しで試験した。そして、他の加工経路は、キャスティングの後であるが熱ロールかけの前に施される均質化処理を含み、570℃で8時間の熱処理からなっていた。後者の加工経路から得られる材料を、板用途に特に好適な条件である350℃で3時間の最終アニールを含むO−焼戻し条件中で試験した。
【0035】
0.38mmの最終ゲージを持つ材料について機械的性質を評価し、これらの性質を表2に示した。このアルミニウム合金を後ろう付け状態、すなわち上記に示したシミュレーションしたろう付けサイクルで試験した。更には、機械的試験に類似の材料について耐食性を評価した。腐食試験をASTMG−85により行った。また、表2に結果も示す。この表では、「n.t.」という用語は「試験せず」を表し、「>28」という用語は、試料の破壊を伴わずに28日後にこの試験を止めたことを意味する。
【0036】
これらの結果から、本発明の合金はすべて、比較し得る条件で従来技術の合金(合金10)に比較して、後ろう付け0.2%降伏強度の少なくとも10%の改善を達成したことが判る。合金中の極低マグネシウム含量により、ろう付けフラックスプロセスにより加工する場合、これらは優れたろう付け性を示す。合金2及び5は、Cr及び/またはZrの添加が合金1に比較して、0.2%降伏強度を更に増大させることを示す。合金1及び8の比較は、マンガン含量の増加が結果として0.2%降伏強度を著しく増大させることを示し、これは、合金6及び9の比較から判る類似の傾向である。合金4及び7の結果の比較は、0.2%降伏強度がアルミニウム合金中のSiレベルを増加させることにより更に増大することを示す。
【0037】
SWAAT試験の結果から、本発明の材料は極めて良好な耐食性を持つことが判る。この結果は、ZrとCr双方の添加が耐食性に有害でないことを示す。しかしながら、高過ぎるFe含量(合金3)は、耐腐性に有害である。O−焼戻しでのすべての例を試験したのでなく、合金4及び5の試料のみを試験した。しかし、この結果は、O−焼戻しの条件での本発明の他の合金についても類似の良好な耐食性が期待ができることを示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
いまや本発明を充分に述べたので、本発明に添付された特許請求の範囲に述べたような本発明の精神と範囲を外れずに多数の変更と変形を行うことができることは、当該技術の熟練者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金コア材料とこの片側または両側の主要合金化元素としてケイ素を含有するアルミニウム合金のろう付け用層からできたコアシートを持つ、2層構造または3層構造のろう付け用シートであって、ここで、このコアシートのアルミニウム合金が
Mn;0.5から1.5
Cu;0.5から2.0
Si;0.3から1.5
Mg;<0.05
Fe;<0.4
Ti;<0.15
Cr;<0.35
Zr及び/またはV;<0.35(合計で)
Zn;<0.25差し引き;アルミニウムと不可避の不純物
の組成(重量%で)を持ち、そして上記ろう付け用シートが少なくとも50MPaの後ろう付け0.2%降伏強度(post−braze 0.2% yield strength)を持ち、ASTM G−85による穴無しのSWAAT試験において12日以上の腐食寿命を持つろう付け用シート。
【請求項2】
該コアシートのアルミニウム合金の上記組成中のMg含量が0.03%未満である請求項1に記載のろう付け用シート。
【請求項3】
該コアシートのアルミニウム合金の上記組成中のMn含量が0.6から1.5%の範囲の中にある請求項1または2に記載のろう付け用シート。
【請求項4】
該コアシートのアルミニウム合金の上記組成中のMn含量が0.7から1.4%の範囲の中にある請求項3に記載のろう付け用シート。
【請求項5】
該コアシートのアルミニウム合金の上記組成中のCu含量が0.8から1.5%の範囲の中にある請求項1から4のいずれか一つに記載のろう付け用シート。
【請求項6】
該コアシートのアルミニウム合金の上記組成中のSi含量が0.4から1.0%の範囲の中にある請求項1から5のいずれか一つに記載のろう付け用シート。
【請求項7】
ASTM G−85による穴無しのSWAAT試験において後ろう付け状態で20日以上の腐食寿命を持つ請求項1から6のいずれか一つに記載のろう付け用シート。
【請求項8】
ろう付け用シートの上記2層構造が犠牲アノードクラッド層を欠く請求項1から7のいずれか一つに記載のろう付け用シート。
【請求項9】
該コアシートがろう付けに先立ちO−焼戻しまたはH−24焼戻しにある請求項1から8のいずれか一つに記載のろう付け用シート。
【請求項10】
チューブ・ストック材料の形の請求項1から9のいずれか一つに記載のろう付け用シート。
【請求項11】
順次、(i)上記アルミニウム合金コア材料のインゴットをキャストし、
(ii)上記アルミニウム合金コア材料のシートに上記ろう付け用層を施し、
(iii)上記アルミニウム合金コア材料と上記ろう付け用層を熱ロールかけし、
(iv)該熱ロールかけした製品を所望の最終ゲージ迄冷ロールかけし、ここで、ステップ(1)と(ii)の間で上記アルミニウムコア合金を均質化処理にかけない
ステップを含んでなる、請求項1から10のいずれか一つに記載のろう付け用シートを製造する方法。
【請求項12】
先行する請求項のいずれか一つに記載のろう付け用シートを含んでなる編んだ組立体。
【請求項13】
先行する請求項のいずれか一つに記載のろう付け用シートを含んでなる編んだ熱交換器。
【請求項14】
2層あるいは3層のろう付け用シート構造での用途に対する請求項1から6または9または10のいずれか一つに記載のコアアルミニウム合金。

【公開番号】特開2011−202285(P2011−202285A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−123653(P2011−123653)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【分割の表示】特願2000−612124(P2000−612124)の分割
【原出願日】平成12年4月12日(2000.4.12)
【出願人】(507108003)アレリス、アルミナム、コブレンツ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (10)
【氏名又は名称原語表記】ALERIS ALUMINUM KOBLENZ GMBH
【Fターム(参考)】