説明

ろ過モジュール用メンブレンの製造方法

本発明は、水処理用の、ナノろ過、限外ろ過またはマイクロろ過モジュール用メンブレンの製造方法であって、親水性高分子材料がその中に組込まれるか、またはその上に堆積される疎水性高分子材料を有し、以下の工程からなる方法である:
a)カリウム、ナトリウムまたはアンモニウムの過硫酸塩を含有する溶液中で、親水性高分子材料が組み込まれるか、または堆積した後、加熱せずに、メンブレンを調整する工程、および
b)前記メンブレンを、遊離基メカニズムによって作用する架橋剤に浸漬することにより、60℃以上の温度で、メンブレンを構成する親水性および疎水性高分子材料の架橋が行われる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水処理用のナノろ過、限外ろ過またはマイクロろ過モジュール用のメンブレンの製造方法に関し、前記メンブレンは、2つの高分子から構成され、第1は疏水性高分子材であり、第2は親水性高分子材であり、これらの2つの高分子が“結合”している。
【背景技術】
【0002】
疎水性材料に基づくメンブレンは、水処理の分野で使用され、化学的、熱的および細菌学的に安定しているという利点を有する。しかしながら、それらは、特に表面水に存在する懸濁物および/または有機物で、急激かつ不可逆な目詰まりを起こす。このタイプのメンブレンを使用することは可能であるが、頻繁に化学的洗浄を行う必要があり、これがプラントの開発を複雑にし、開発費を増し、また、ろ過システムの生産性を減少させる。
【0003】
親水性高分子に基づくメンブレンは、より目詰まりを起こしにくく、したがって、“工場生産管理”の観点から大きな関心がある。一般的には、その様なメンブレンは、生産性が疏水性メンブレンよりかなり高いのが特徴で、この生産性はそれらの化学的性質に起因し、その性質そのものが、これらのメンブレンの目詰まりのポテンシャルレベルを左右する。それらの主な欠点は、特にセルロース誘導体に基づくメンブレンにとって、それらがより早い化学的経年変化を受け、細菌学的分解によるポテンシャルリスクを有するという事実にある。最後のパラメーターは、バクテリアに起因する障害のリスクからメンブレンを十分に保護するために、予め操作上注意することが可能であることから、技術的障壁ではない。
【0004】
多くのメンブレン改良の研究が既に発表されており、それらの研究は、中に親水性材が組込まれる(または、その上に堆積する)疏水性材料に基づくメンブレン製造について述べられている。一般に、それは、機械的特性を損なうことなく、または、改良されたメンブレンの一体性に悪影響を及ぼすことなく、より良い目詰まり特性を有する新規なメンブレンが求められている(P. Rouzies, these, UPS Toulouse, 11 mars 1992, K. Asfardjanie et these, UPS Toulouse, 12 juillet 1991)。しかしながら、メンブレンに付与される親水性特性の全ての利点は、一次的なもので、ろ過時間の関数および適用された洗浄の累積効果の関数としては、より弱くなったことが証明された。
【0005】
EP-A-0568045は、血液の透析を意図した中空繊維の製造方法およびポリスルホン(PSF)の進歩した使用法について記載している。これを実行するため、PSFおよび親水性かつ孔形成剤に基づく系統的処方がなされている。しかしながら、この刊行物は、メンブレン中の親水剤を固定または安定させることができる如何なる化学的処理も教示していない。即ち、経験によれば、この場合、他の多くの場合の様に、親水化剤は、メンブレンから徐々に溶出する(F. Ivaldi, these, UPS Toulouse, 15 decembre 1982)。
【0006】
US-A-5543465は、メンブレンの多孔構造内での、親水化剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)の安定化について述べている。前記PVPの導入の結果生じる、メンブレンの親水性の性質を永久に固定するため、この刊行物は、様々な例に言及し、それらの例では、最初に、PVPを含有するすすぎ液中で原料メンブレンを調整し、次に、過硫酸カリウムの遊離基架橋剤を用いた化学処理でそれを架橋することにより、PVPがPSFマトリックス中に固定される。しかしながら、記載されている方法は、好ましい高水準のPVP(0.5重量%〜10重量%)により、メンブレンの透水性を大きく減少させる。以下の表1は、増加する濃度での試験の要約であり、前記透水性(Lp)に関して、すすぎ水中のPVPの濃度の影響を明確に示している。
【0007】
【表1】

【0008】
いずれにせよ、PVPまたは親水性剤を、PSFまたは疎水性高分子基材に添加することは制限されるべきで、それをしないと、高分子混合物(ポリマーブレンド)中の前記親水性剤の割合が過度の場合には、透水性はかなり減少する。
【0009】
本分野の先行技術を説明するため、US-A-4798847、EP-A-0261734およびUS-A-5076925に言及すると、それらは、メンブレン製造方法について述べており、そこにはPVPの熱架橋が記載されている。しかしながら、US-A-2658045およびAndersonによる刊行物(応用高分子科学ジャーナル[Journal of Applied Polymer Sciences]、23号,2453頁−2462頁,1979)において述べられている様に、これらの刊行物中に示されているPVP固定方法は、使用中、繊維特性の安定性を保証することができない。その理由は、これらの刊行物は、激しいすすぎ方法(有機抽出溶剤の使用にまで至る)を用いており、また、その様な方法は、PVPの“孔形成”片を除き、他方で、支持高分子の分子に近いPVPだけをその場に残すことについて述べている。したがって、これらの分子の架橋は、このように処理されたメンブレンの透水性に、いかなる減少をも生じさせない様にするためである。架橋PVPに対するこの熱処理方法は、それが壊れやすく且つ不安定なゲルを生じるため、かくして、不充分である。
【特許文献1】EP-A-0568045
【特許文献2】US-A-5543465
【特許文献3】US-A-4798847
【特許文献4】EP-A-0261734
【特許文献5】US-A-5076925
【特許文献6】US-A-2658045
【非特許文献1】応用高分子科学ジャーナル
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、この従来技術から出発して、2つの高分子の“混合体(alloy)”から構成されるメンブレンの製造を目的とする。即ち、これら2つの高分子材料の確実な結合を、適切な制御と方法を用いるという条件で、簡単な化学作用により可能とし、その結果、これは、前記メンブレンにとって、2つの構成高分子の特性の有利な結合となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、ろ過モジュール、特には水処理ろ過モジュール用メンブレンの製造方法に係り、この方法は、親水性高分子材に組込まれるか、またはその上に堆積される疎水性高分子材を有し、以下の工程からなることを特徴とする:
a)カリウム、ナトリウムまたはアンモニウムの過硫酸塩を含有する溶液中で、親水性高分子材料が組み込まれるか、または堆積した後、加熱せずに、メンブレンを調整する工程、および
b)前記メンブレンを、遊離基メカニズムによって作用する架橋剤、特に過硫酸塩水溶液中に浸漬することにより、60℃以上、好ましくは約70℃〜80℃の温度で、メンブレンを構成する親水性および疎水性高分子材料の架橋が行われる工程。
【0012】
本発明によれば、2つの高分子の内の1つは、遊離基メカニズムによって作用する架橋剤の作用により分離可能な、シンプルな分子でも良い。本発明の方法の一実施例によれば、疎水性および親水性高分子材料間の架橋は、2〜7 g/l の濃度の過硫酸ナトリウム溶液の作用により加熱下で行われる。本発明によれば、架橋工程の前に、原料メンブレンは、質量濃度で2〜7g/lの過硫酸ナトリウム水溶液中に、加熱せずに2〜24時間、好ましくは4〜12時間浸漬される
【0013】
本願発明の主題が明確に理解される様に、先ず、その開発を可能にした研究について述べる。
【0014】
本発明者等は、初めに、PSFおよびPVP分子上での過硫酸基の役割をより明確に理解するために、2つのことに着手した。それは、過硫酸カリウムがポリスルホンだけに作用するか否かをチェックすることを意図している。これを行なうために、予めすすがれた中空繊維を高温(90℃)で、過硫酸を0.5%と5.0%を含有する混合液中にそれぞれ1時間浸漬した。それにより、過硫酸濃度(以下の表2参照)との関係で、これらの繊維の機械的性能が低下することが立証された。この様に、過硫酸基は、ポリスルホンの様な高分子鎖を実際に攻撃することに疑いはない。
【0015】
【表2】

【0016】
PVPの架橋に及ぼす過硫酸の作用モードもうまく解明され、かくして、雑誌「応用高分子科学ジャーナル」でAndersonにより、また先に引用されたUS-A-2658045により公表された成果、即ちPVPの架橋には、高濃度(数質量%)の過硫酸塩の存在下、高濃度の前記PVPが必要である、ということが確認された。しかしながら、“完成した”メンブレンの透水性を維持するためには、PSF中のPVPの濃度と過硫酸塩の濃度を共に制限することが必要である。
【0017】
最後に、Andersonにより提案された加熱サイクルの有効性、即ち、過硫酸基の活性は、60℃以上の温度から生じ、かつ、90℃まで徐々に増加するということが確かめられた。このようにして一つの重要な現象が発見された。即ち、過硫酸カリウムの反応性は、60℃からゆるやかに、温度を上げることによりますます急激になる、ということである。この活性は、40℃の低温で既に存在し、また、室温では存在しないことも分かった。以下の表3は、これらの観察結果を示す。
【0018】
【表3】

【0019】
この段階で2つの重要なコメントをする必要がある:
−室温では、過硫酸イオンは安定した状態にあるが(溶液中に存在するイオンは、約30時間にわたる分析で、如何なる変化も観察されなかった)、40℃以上では、過硫酸イオンは、僅か3時間で過硫酸基に転化し始める。しかし、これに関与するのは、極く僅かのイオンでほんの0.6%だけである;
−温度の上昇は、過硫酸塩の転化を促進する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の主題である方法によれば、メンブレンの一方の面(“外膜”)または他方の面(“内膜”)、または両面にさえも、2つの高分子の相対比の制御を維持することが可能となる。特に、温度の急激な低下により、必要な時に架橋工程をブロックすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施例を以下に示す。本実施例は、全くこれに限定されることのない例であり、以下の工程を有する:
A)親水性高分子材料を導入する。即ち、この薬剤は、疎水性高分子と可能な限り最も接近した接触状態にあるのが好ましい。このようにして、それは一般に、接触と均一な分布を保証するため、メンブレン製造に用いられる基礎材料中に導入される;
B)親水性材料が基礎材料中に導入される時、メンブレンは、その孔中に含まれる親水性生成物をできるだけ多く除去するために、過硫酸塩と架橋する前に注意深くすすがれる;
C)加熱しないで、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムまたは過硫酸アンモニウムを含む溶液中でメンブレンを調整する。この様にして、これらのイオンは、自然拡散により、多孔質構造を通って拡散される。この工程は、次の工程での均一な処理を確実なものにするために必要である;
D)過硫酸塩水溶液中に、60℃以上の温度、好ましくは約70〜80℃で、メンブレンを浸漬することにより架橋する。次に、過硫酸塩は、優先的にラジカルを形成して水の水酸化イオンと早期に反応することのないように、繊維を浸漬する直前に温水に加えられる。過硫酸イオンの濃度と共に、この処理の時間と温度により、これらのイオンの遊離基の作用力を調整することができる;
E)メンブレンの入った貯水槽を空にすることで、メンブレンの温度が急激に低下し、速やかに架橋反応はブロックされる;
F)例えば、湯に浸漬することにより、メンブレンのすすぎを行う。このすすぎは、60〜90℃の温度で、1〜24時間、好ましくは2〜12時間行われる。これらの条件およびすすぎ液の組成もまた修正でき、特に、病院用または薬剤用の“清浄な”メンブレンを得るために修正することができる。この場合、すすぎ液は、すすぎ水の抽出力を強化するために、水とエタノールの混合液で構成することもできる;
G)それらをボンディングするために、メンブレンを乾燥させる必要がある場合(例えば、中空繊維のポッティングの場合)にだけ、水とグリセロールを含有する混合液中でメンブレンの最終調整を行う。
【0022】
本発明の主題である方法によれば、ナノろ過か(または限外ろ過の下限)からマイクロろ過の上限に至る多孔性領域の範囲内でメンブレンを製造することができる。親水性材料の含有量を増やすため、前記材料の所定の割合から出発して、メンブレンに、所望のろ過性能を与えるのに必要な量を最小にするため、より高い分子量の親水性材料を用いることが好ましい。同様に、親水性材料が、疎水性支持高分子と、より相溶性であればあるほど、支持高分子マトリックス、特に、中で様々な高分子が共存する高密度マトリックス中での疎水性材料の安定性が大きくなる。
【0023】
先に述べた方法の実施の具体例が以下に示され、これらの例により、本発明により提供される利点が理解される。
【0024】
これらの例では、親水性薬剤としてPVPが組込まれているPSFベースのメンブレンのケースのみが述べられている。これら全ての例において、透水性の値は、20℃でのものである。
【実施例1】
【0025】
使用されたコロジオンは、以下から構成されている:
PSF グレードS6010 = 18%
PEG-1500押出し添加物 約15〜25%
PVP K30 = 2%
N−メチルピロリドン qs 100%
【0026】
このコロジオンは、80℃で24時間の機械的な攪拌による溶解の後、ほぼ10μmのろ過閾値を有するステンレス鋼金網を通してろ過され、その後、真空に引いて脱ガスされる。外径/内径が1.8/1.0mmの中空繊維が製造される。繊維を析出させるために、内側液および同一の外側液が使用され、同液は、質量割合で5%〜50%、好ましくは、内膜を有する繊維用には25%〜40%のN−メチルピロリドンを有し、外膜を有する繊維を製造するためには、溶媒の割合が、40%〜100%、好ましくは50%〜90%である。コロジオン、内側液および外側液は、繊維の析出 中、20〜60℃、好ましくは25〜45℃の温度で維持される。最初に得られる繊維は、8.6×10-10m/s. Paに等しい透水性、9.5ニュートンでの破断および50%伸張での断裂性を有する。
【0027】
1000ppmの塩素を加えた水に浸漬された後、繊維の透水性が測定され、9.7×10-10m/s.Paであった。
【0028】
“未処理押出し”繊維は、塩素に曝されずに、20時間水ですすがれ、それから、3g/lの過硫酸カリウムを含む水溶液中で、2時間〜24時間、好ましくは4〜12時間浸漬される。それから、それらは、3g/lの同じ過硫酸塩を含む水溶液中で処理され、70℃で約30分間維持される。その後、これらの繊維は、湯(80℃で5時間)の中に静置した状態ですすがれ、次にグリセロール水溶液(質量で60%)中で調整される。グリセロールを含む混合液中で調整する前に、繊維の機械的引張特性が特徴づけられた。繊維の破断力および断裂時の伸びが、ここで測定される。それらは、それぞれ、9.6Nおよび35%である。遊離基剤を用いるこの処理にもかかわらず、繊維の機械的特性の大きな部分を維持することができ、繊維の断裂時の伸びのみが減少した。しかしながら、この伸びの減少は、第一には孔形成剤および繊維上にまたは繊維中に付着しなかった親水剤の十分な除去により、また第二には、繊維を形成する様々な高分子鎖間の新しい化学的結合の創造によるものである。
【0029】
繊維のすすぎ後、マイクロモジュールで行われる制御は、重合された繊維の余剰の固定されたPVPの含有量が4.5%であることを示す。繊維は、コロジオン中に最初に存在していた乾燥物に対して、10%のPVPを含んでいた。こうして、これにより、この方法はポリスルホン・マトリックス中に固定されたPVP巨大分子を含むことが確かめられる。
【実施例2】
【0030】
この例では、例1のそれと同じ“未処理押出し”繊維が製造され、その後、それに対し、0.1%のPVP K30を含む水によるすすぎが適用された。6.9×10-10m/s. Pa(先に得られた9.7−10×10-10m/s. Paに代えて)で、繊維の透水性も測定された。セーヌ川の水のろ過に、1m2のろ過面積を備えたモジュールにこの繊維を使用することは、たとえ1.7×10-10m/s. Paの運転フロー(flux de fonctionnement)であっても、機能的に安定した透水性を得ることはできない。
【0031】
行われた全ろ過試験を通して、セーヌ川の水の大きな特徴は、以下の表4に示される数値と類似していた。
【0032】
【表4】

【0033】
ろ過モードは、いつも「表状態」であった。ろ過サイクルは30分継続された。繊維の洗浄は、5ppmの塩素を補われた透過液による逆洗浄により行なわれ、1〜2分続けられた。この逆洗浄は、2.5×105の最大セット圧力下、8.3〜9.7×10-5m/sでの透過液の逆ろ過を保証した。
【0034】
添付図面の図1は、表4に記載された特徴を有するセーヌ川の水をろ過することによりメンブレンの透水性の変化を示している。使用から2日後、透水性は60 1/h.m2.barに落ち、繊維をその最初の透水性に戻すため、化学的洗浄が必要になることが分かる。
【実施例3】
【0035】
実施例1の条件に関して、コロジオン中に存在するPVPの性質だけが変わっている。この実施例では、先の実施例のものより分子量が低い(即ち、60000ダルトン(daltons)の代わりに約30000ダルトン)、K25“等級”のPVPが使用されている。同じ一連の試験が行われる。最後に、以下の総合的特性が測定されている:
繊維の寸法 :外径/内径=1.78/1.02 mm
初期透水性 :5.3 × 10-10 m/s. Pa
破断力 :7.7 N
断裂時の伸び :62%
【0036】
架橋は、最初の24時間は加熱せずに、次に80℃で30分間、5 g/lの過硫酸カリウムを含む溶液中に繊維を浸漬することにより行われる。すすぎを行い、グリセロール中で調整を行い、かつ水に再び濡らした後、繊維の使用特性値が測定され、これらの数値は以下のように変化した:
破断力 :7.8 N
断裂時の伸び :37%
透水性 :9.4 - 11.4 × 10-10 m/s. Pa
【0037】
ここでは、この処理が、繊維の断裂時の伸びを多少修正するだけであることが分かる。透水性の増加は、PSFマトリックスからPVPを十分に除去することにより得られる。繊維の破断力はほとんど変わらなかった。
【0038】
成分分析は、2.5%に近いPVPの割合を示している。この様に、繊維に付着したPVPの量は減じ、また、繊維の透水性は実施例2より高い。
【0039】
添付図面の図2は、表4に記載された特徴を有するセーヌ川の水をろ過している間のメンブレンの透水性の変化を示す。これらの試験の間、1m2のろ過面積を備えたモジュールが製造され、また、製造の終わりでのその透水性は、9.7 × 10-10 m/s. Paに等しかった。このモジュールは、それから、セーヌ川の水の連続ろ過に配置され、1.9 × 10-5 m/s.に等しいろ過フローを適用することによりスタートした。
【0040】
この図2を検討すると、繊維の透水性が、極めて速やかに11.1から5.0−5.55 × 10-10 m/s. Paに低下したことを示すが、驚くべきことに、それが全期間にわたって極めてゆっくりと減少したことが分かった。ろ過12日目、安定した透水性は、4−5×10-10 m/s. Paに近いままだった。フローは、それから、2.2×10-5 m/s. Pa に増加して、この変化が繊維の透水性の安定性に影響を与えなかったことが、連続5日間にわたって確認された。
【0041】
このようにして、本発明の主題である方法により、それらの親水性を維持し、かつ、新規の特性を附加したメンブレンの製造が可能となり、その結果、それらの最適な使用を可能とし、または、利用分野を拡大する。特に、本発明の主題である方法によって、先に述べた方法の様々な段階において、メンブレンにより得られる特徴をその間ずっと維持することが可能である。
【0042】
図3a〜5bは、走査型電子顕微鏡を用いて得られた写真であり、本発明の主題である方法に従って製造されたメンブレンファイバの多孔構造を示している。
【0043】
操作条件によっては、繊維は、空胞(これらの写真上の繊維の断面図の詳細を参照)有していたり、または有しなかったり、また、均一構造の形でもよい。重要な特徴は、存在するかもしれない空胞がメンブレンの膜面と接触しないことであり、それは均一構造により支持されていなければならない。
【0044】
図3aは、繊維の一部切欠き図であり、これは、PSFベース繊維の標準構造である。
【0045】
図3bは、繊維の断面の詳細、即ち、内膜、空胞を有する海綿状多孔構造および外膜を示す。
【0046】
図4a〜図5bは、空胞を有しない繊維の断面を示す一部切欠き図である。
【0047】
本発明は、先の記載および実施例に限定されるものではなく、むしろ、それらの全変形を包含することはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の方法により得られるメンブレンは、長期にわたって安定した透水性を有し、ろ過システムの生産性の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】表4に詳細に記載された特徴を有するセーヌ川の水をろ過する間のメンブレンの透水性の変化を示すグラフである。
【図2】表4に詳細に記載された特徴を有するセーヌ川の水をろ過している間のメンブレンの透水性の変化を示すグラフである。
【図3】(a)は、PSFベース繊維の標準構造を示す繊維の一部切欠き図であり、(b)は、繊維の断面の詳細、即ち、内膜、空胞を有する海綿状多孔構造および外膜を示す。
【図4】図4(a)及び(b)は、空胞を有しない繊維の断面を示す一部切欠き図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、空胞を有しない繊維の断面を示す一部切欠き図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特には水処理用の、ナノろ過、限外ろ過またはマイクロろ過モジュール用メンブレンの製造方法であって、親水性高分子材料がその中に組込まれるか、またはその上に堆積される疎水性高分子材料を有し、以下の工程からなることを特徴とする方法:
a)カリウム、ナトリウムまたはアンモニウムの過硫酸塩を含有する溶液中で、親水性高分子材料が組み込まれるか、または堆積した後、加熱せずに、メンブレンを調整する工程、および
b)前記メンブレンを、遊離基メカニズムによって作用する架橋剤に浸漬することにより、60℃以上の温度で、メンブレンを構成する親水性および疎水性高分子材料の架橋が行われる工程。
【請求項2】
前記高分子の内の一つが、遊離基メカニズムによって作用する前記架橋剤の作用により分離可能な簡単な分子であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遊離基メカニズムによって作用する前記架橋剤が、過硫酸塩水溶液であることを特徴とする、請求項1および2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
疎水性および親水性高分子間の架橋が、2〜7g/lの濃度の過流酸ナトリウムの作用により加熱下で行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
架橋工程の前に、原料メンブレンが、質量濃度で2〜7g/lの過硫酸ナトリウム水溶液中に、加熱せずに2〜24時間、好ましくは4〜12時間、浸漬されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
熱架橋が、約70〜80度の温度で約30分間行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
調整および架橋工程の前に、原料メンブレンが水ですすがれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
架橋工程の後、架橋反応がメンブレンの急激な温度低下によりブロックされることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
架橋工程の後、メンブレンがすすがれることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
メンブレンのすすぎが、60〜90℃の温度の湯で1〜24時間、好ましくは2〜12時間行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
すすぎ水にエタノールが補充されていることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、ボンディングの前に、メンブレンの乾燥を必要とする時、グリセロール水溶液でのメンブレンの最終調整工程を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
疎水性高分子材料がポリスルホンであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
親水性高分子材料が、ポリビニルピロリドンであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−517469(P2006−517469A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505661(P2006−505661)
【出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000174
【国際公開番号】WO2004/078327
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505283773)
【Fターム(参考)】