説明

ろ過ユニットおよびこれを備えたろ過装置

【課題】初期導入費用および維持管理費用を低く抑えることができるろ過ユニットを備え、小型でろ過水の濁りを抑えることのできるろ過装置を提供する。
【解決手段】デプスフィルタ10およびそれを収容する筐体9を含み、原水RWをろ過する一次ろ過ユニット4を有するろ過装置1であって、筐体9が、デプスフィルタ10に原水RWを供給する原水供給口18と、ろ過水の取出口16と、デプスフィルタ10に逆洗用の流体を供給する流体供給口24と、デプスフィルタ10を逆洗した流体Aおよび原水RWを排出する排出口22を有し、デプスフィルタ10を形成するろ過膜の孔径が1〜25μmであり、さらに、ろ過水取出口16に接続されるろ過水通路8と排出口22に接続される排出通路14とを連通させる連通路15と、連通路15を開閉する第5自動開閉弁MV5を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプールや温泉の水の循環ろ過や、海水淡水化プラントなどの水のろ過に用いるろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、浴槽やプール水の循環ろ過などでは、砂ろ過装置が用いられている。砂ろ過装置は、例えば、砂利を積んだ層の上に砂の層を重ねて造り、これらの層に水を通過させ、水中の細かいごみ、浮遊物等を取り除くものであるが、装置が大きいため広い設置スペースを要するというデメリットがある。
【0003】
また、砂ろ過装置以外に、より小さい粒子を取り除くことのできる合成樹脂でできた膜を使う膜ろ過装置がある。膜ろ過装置は、砂ろ過装置に比べて小型で、小さいスペースで装置を設置することができる(例えば、特許文献1)。
【0004】
海水の淡水化プラントなどでは、限外ろ過膜や逆浸透膜などが用いられているが、その前段階に砂ろ過装置が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−096064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
膜ろ過装置に用いられるフィルタとして、サーフェスフィルタとデプスフィルタとがある。サーフェスフィルタはろ材表面で異物を捕捉するフィルタで、例えば、ろ過表面積を多くしてろ過抵抗を下げつつ異物の捕集量を多くした高精度ろ過に使用される。サーフェスフィルタは逆流洗浄を行うことで繰り返し使用できるが、デプスフィルタに比べて捕集する異物量が少ないから、比較的汚れの多い水のろ過には適さず、また高価でもあるので、その用途は限定されてしまう。
【0007】
デプスフィルタはろ材間の空隙で異物を捕捉するフィルタで、捕集する異物量が多いので、比較的汚れの多いろ過にも使用される。デプスフィルタはサーフェスフィルタに比べて安価であるが、ろ材の表面ではなくろ材間の空隙で異物を捕捉するので、サーフェスフィルタよりも逆流洗浄を行い難い。デプスフィルタを逆流洗浄後にろ過を行なうと、逆流洗浄中にろ材間の空隙に挟まった極微細な粒子が、ろ過再開直後のろ過水に集積し、ろ過水が濁ったように見えることがある。この微細な粒子は、デプスフィルタの孔径よりも小さなもので、ろ過水中に存在しても問題はないが、用途によってはこのような濁りが問題となる可能性がある。
【0008】
海水の淡水化プラントでは、逆浸透膜などによって海水を処理しているが、海水中に存在するさまざまな粒状物質を除去するためにプレフィルタとして砂ろ過装置を設置していることが多い。しかしながら、海水中に存在するプランクトン類、藻類や甲殻類、貝などの幼生が砂ろ過装置に取り付き、生長、繁殖することによって砂ろ過装置が機能不全に陥ることがある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、初期導入費用および維持管理費用を低く抑えることができるろ過ユニットを備え、小型でろ過水の濁りを抑えることのできるろ過装置を提供することを目的としている。さらに、砂ろ過装置の代替として、あるいは砂ろ過装置のプレフィルタとして作用し、装置の寿命を延ばすことができるろ過装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るろ過装置は、ろ材およびそれを収容する筐体を含み、原水をろ過するろ過ユニットを有するろ過装置であって、前記筐体が、前記ろ材に原水を供給する原水供給口と、ろ過水の取出口と、前記ろ材に逆洗用の流体を供給する流体供給口と、前記ろ材を逆洗した流体および前記原水を排出する排出口を有し、前記ろ材が孔径1〜25μmのデプスフィルタであり、さらに、前記ろ過水取出口に接続されるろ過水通路と前記排出口に接続される排出通路とを連通させる連通路と、この連通路を開閉する開閉弁とを備えている。逆洗用の流体としては、気体や液体が用いられ、好ましくは気体であり、より好ましくは、空気、窒素等の不活性ガスである。孔径が1μm未満であると目詰まりが発生し、圧力損失が大きくなる。また、孔径が25μmを越えると、ろ過水中の浮遊物が目立つようになる。
【0011】
孔径は、以下のように定義される。一定の直径を有する粒子、好ましくは球状ポリスチレンまたはガラスビーズを水中に10000個/L添加した液を、デプスフィルタ(外径60mm、内径30mm、長さ250mm)に25℃、1.0m/hの条件で通水させ、デプスフィルタを透過した粒子数を光学式カウンターで測定し、通水前後の液中に存在する粒子数の差を通水前の液に存在する粒子数で除して得られる捕集率(R%)を複数の粒子について測定し、その測定値を元にして下記の近似式(1)において、Rが90となる粒子の直径(S)の値を求め、これを孔径とする。
R=100/(1−m×exp{−a×log(S)}) (1)
ここで、m,aは、デプスフィルタの性状により決まる定数である。
例えば、粒子の直径が1μmの場合は、球形ポリスチレン微粒子(10000個/L)を添加した液を、デプスフィルタ(外径60mm、内径30mm、長さ250mm)に上記の条件で通水させることで測定が可能である。
【0012】
この構成によれば、ろ材に孔径1〜25μmのデプスフィルタを用いているので、目立つ大きさの浮遊物を十分取り除くことができるうえに、サーフェスフィルタを用いる場合に比べて、初期導入費用を抑えることができる。また、逆流洗浄を行うことで、ろ材のろ過性能を回復させて使用できるので、ろ材の交換頻度を少なくして、維持管理費用を抑えることができる。さらに、ろ過水通路と排出通路とを連通させる連通路と開閉弁を備えているので、逆流洗浄直後に開閉弁を開放することで、微細粒子が集積したろ過水が排水通路に排出され、濁ったろ過水が流れるのを防ぐことができる。また、このろ過装置を砂ろ過装置の代替として、あるいは砂ろ過装置のプレフィルタとして用いると、水中に存在するプランクトン類などが砂ろ過装置に取り付くのを防いで、装置全体の寿命を延ばすことができる。
【0013】
本発明において、さらに、前記ろ過ユニットによりろ過されたろ過水を、限外ろ過膜または逆浸透膜からなるろ材によって再度ろ過する二次ろ過ユニットを備えていることが好ましい。この構成によれば、一次ろ過ユニットと二次ろ過ユニットのろ材が、共通の逆流洗浄用流体で逆流洗浄されるので、設備を一層簡素化できる。さらに、限外ろ過膜または逆浸透膜からなるろ材の負荷を低減させ、高価なろ材の寿命を延ばすことができる。
【0014】
本発明において、前記流体供給口と前記ろ過水取出口とが同一であることが好ましい。この構成によれば、流体供給口とろ過水取出口とを共通化して、構成を簡略化することができる。
【0015】
本発明において、前記排出口と前記原水供給口とが同一であることが好ましい。この構成によれば、排出口と原水供給口とを共通化して、構成を簡略化することができる。
【0016】
本発明に係るろ過水の製造方法は、前記ろ材からのろ過水の供給およびろ材への流体の供給を停止した状態で前記開閉弁を開放することにより、前記ろ過ユニットを経て前記連通路および排出通路から流体を原水とともに排出する準備工程と、ろ材からの原水の排出とろ材への流体供給とを停止した状態で、ろ過ユニットに原水を供給して、ろ過水を前記ろ過水取出口に送るろ過工程と、ろ過水の供給を停止した状態で、ろ過水側からろ材へ流体を供給する逆洗工程とを備えている。
【0017】
この構成によれば、逆流洗浄を行うことで、ろ材のろ過性能を回復させて使用されるので、維持管理費用を抑えることができる。また、準備工程において逆流洗浄後のろ過水を連通路および排水通路を経由して排出しているので、逆流洗浄直後にろ過水が濁ることがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明のろ過装置およびろ過水製造方法によれば、ろ材に孔径1〜25μmのデプスフィルタを用いているので、目立つ大きさの浮遊物を取り除くことができるうえに、サーフェスフィルタを用いる場合に比べて、初期導入費用を抑えることができる。また、逆流洗浄を行うことで、ろ材のろ過性能を回復させて使用できるので、ろ材の交換頻度を少なくして、維持管理費用を抑えることができる。さらに、ろ過水通路と排出通路とを連通させる連通路を備えているので、逆流洗浄直後の微細粒子が集積したろ過水が排水通路に排出され、濁ったろ過水が流れるのを防ぐことができる。また、原水として海水を使用する場合には、逆流洗浄を行うことでプランクトンなどの微細な海洋生物が元の海域に戻され、微生物の無用な殺傷を防ぐことができるだけでなく、現場海域の海洋環境保全の観点からも負荷が少ないという大きな利点がある。さらに、微細な海洋生物を予め捕捉することで、砂ろ過装置での藻類の繁殖によって起こる目詰まり等のトラブルを防ぐことができるうえに、砂ろ過装置そのものを不要とすることもでき、砂ろ過装置の代替としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るろ過水製造装置の系統図である。
【図2】同上装置のろ過ユニットの拡大断面図である。
【図3】同上装置の運転工程表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るろ過ユニットを備えたろ過水製造装置の概略系統図である。ろ過水製造装置1は、原水RWを取り込むろ過ポンプ2と、取り込まれた原水RWをろ過する一次ろ過ユニット4とを備えている。一次ろ過ユニット4には、ろ過ポンプ2により原水RWが供給される原水通路5と、一次ろ過ユニット4からのろ過水FWを取り出すろ過水通路8と、一次ろ過ユニット4内の原水RWを後述する圧縮空気Aとともに排出する排出通路14とが接続され、ろ過水通路8には一次ろ過ユニット4へ圧縮空気Aを供給する気体供給通路12が接続されている。さらに、ろ過水通路8および排出通路14には、両者を連通させる連通路15が接続されている。各通路5,8,12,14,15は配管により形成されている。一次ろ過ユニット4は、筒形の筐体9内にろ過膜を形成するろ材であるデプスフィルタ10が収納されている。
【0021】
原水通路5には、原水流量の調整弁として機能する第1自動開閉弁MV1が接続され、ろ過水通路8には、ろ過水FWの送水弁として機能する第2自動開閉弁MV2が接続され、ろ過水通路8における第2自動開閉弁MV2の下流側に流量計RIが設けられている。さらに、ろ過水通路8における流量計RIの下流側には、限外ろ過膜である1μm以下の孔径を有する中空糸膜(図示せず)を有する二次ろ過ユニット26が設けられている。二次ろ過ユニット26は、ろ過水FWをさらに高精度にろ過して処理水TWを精製するもので、ろ材は中空糸膜に限定されず、公知の限外ろ過膜を使用できる。また、限外ろ過膜に代えて逆浸透膜を用いてもよい。さらに、ろ過装置の用途によっては、二次ろ過ユニット26に代えて、ろ過水FWに滅菌用の薬剤を投入してもよく、また、二次ろ過ユニット26を省略することもできる。
【0022】
気体供給通路12には圧縮空気導入弁として作用する第3自動開閉弁MV3が接続され、排水通路14には、排水弁として作用する第4自動開閉弁MV4が接続されている。連通路15には、この連通路15を開閉する第5自動開閉弁MV5が接続されている。連通路15は、ろ過水通路8における第2自動開閉弁MV2の上流側から分岐して、排水通路14における第4自動開閉弁MV4の下流側に接続されている。前記気体供給通路12の一端は図示しない空気圧縮機に接続されており、他端が一次ろ過ユニット4の上部の二次側に接続されている。ろ過ポンプ2および第1〜5自動開閉弁MV1〜MV5の駆動は、コントローラ30により制御されている。また、流量計RIの出力はコントローラ30に入力されている。各自動開閉弁MV1〜5としては、エア駆動弁、電動弁、電磁弁あるいはコントローラを使用しない手動弁などが用いられる。
【0023】
二次ろ過ユニット26の中空糸膜を逆流洗浄する流体と、一次ろ過ユニット4のデプスフィルタ10を逆流洗浄する流体とを同一とすることで、装置全体の構成を簡略化することができる。また、既存の設備として、例えば、砂ろ過装置と逆流洗浄を行う二次ろ過ユニットとを有するろ過設備がある場合、砂ろ過装置を本発明の一次ろ過ユニット4と置き換えることで、既存の逆流洗浄用の流体を使用できる。二次ろ過ユニットを含んでいない既存のろ過装置に対しても、そのろ過装置を本発明のろ過ユニット4に交換し、逆流洗浄用の設備を導入したうえで、既存のろ過水通路と排水通路とを連通する連通路を儲けることで、既存のろ過水装置にも本発明を適用できる。
【0024】
図2に示すように、デプスフィルタ10は、一端が開口し、他端が閉止部材13により閉塞された中空円筒状であり、その一端である開口端10aをろ過水取出口16に向けることにより、デプスフィルタ10の中空部11をろ過水取出口16に連通させている。原水RWは、デプスフィルタ10を径方向に通過する際に、フィルタ内部の空孔により異物が捕捉され、ろ過水FWが得られる。デプスフィルタ10はまた、一次ろ過ユニット4の筐体9内に着脱自在に収納されて、開口端10aが他端である閉止端10bよりも上になるように配置されている。本実施形態では、一次ろ過ユニット4は、デプスフィルタ10の長手方向の中心線Cが鉛直方向を向くように配置されているが、一次ろ過ユニット4がろ過水取出口16に向かって斜め上方へ傾斜するように配置してもよい。
【0025】
ろ過ユニット4の円筒状の筐体9は、下側の一端壁9aと、周壁9bと、上側の他端壁9cとからなっている。筐体9の一端壁9aに、原水通路5に接続される原水供給口18および排出通路14に接続される排出口22が形成され、他端壁9cに流体供給通路12に接続される流体供給口24およびろ過水通路8に接続されるろ過水取出口16が形成されている。つまり、ろ過水取出口16は、筐体9の最上部に配置されている。本実施形態では、原水供給口18と排出口22とが同一となっているが、別々に設けてもよい。また、ろ過水取出口16と流体供給口24を同一としてもよい。
【0026】
筐体9の周壁9bにおける流体供給口24およびろ過水取出口16よりも軸方向の下方に環状の底板9dが設けられ、デプスフィルタ10の開口端10aが該底板9dに支持されている。つまり、筐体9における他端壁9cと底板9dとの間には空間Sが形成され、この空間Sに流体供給口24、ろ過水取出口16およびデプスフィルタ10の開口端10aが臨んでおり、デプスフィルタ10の中空部11と空間Sが連通している。つまり、開口端10aが閉止端10bよりも上になるように配置されている。原水供給口18および排出口22は、デプスフィルタ10の一次側に設けられており、ろ過水取出口16は二次側に設けられている。
【0027】
デプスフィルタ10は外圧方式の円筒状フィルタであり、縦断面形状がコ字形である。該デプスフィルタ10は、例えば、合成繊維や化学繊維をウェブ、不織布、紙、織物等の形態にして溶着・成形等を行い、円筒状に加工した積層タイプと呼ばれるものが例示される。合成繊維としては、ポリオレフィン、ポリエステル、あるいはナイロンやエチレンビニルアルコール共重合体などの熱溶融性ポリマーまたはポリビニルアルコールやポリアクリロニトリルなどのポリマーを用いることができる。中でも、気体による逆流洗浄を行う場合、フィルタ交換時の液きり性の観点から、ポリオレフィンおよびポリエステル、具体的には、ポリプロピレンが好ましい。また、フィルタはその厚み方向において、繊維の密度や繊度を変更し、フィルタの外側(原水流入側)において、繊維密度が低い、あるいは繊度が大きい構造が好ましい。該デプスフィルタ10としては、他にも、フィラメントや紡績糸をスパイラル状に巻きつけた糸巻きフィルタと呼ばれるものや、スポンジのような樹脂成形体である樹脂成形タイプと呼ばれるものがある。
【0028】
ろ過膜の孔径は、設備の目的により異なるが、下限は1μm以上である。孔径が小さ過ぎると目詰まりが発生し、圧力損失が大きくなる。孔径の上限は、25μmである。孔径が25μmを越えると、ろ過水FW中の浮遊物が目立つようになる。孔径の上限は10μm以下が好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0029】
デプスフィルタ10は当該一次ろ過ユニット4においては逆洗可能であり、逆洗によりろ過性能を回復させて、ろ過時の差圧が上昇することなく使用できる。本実施形態では、逆洗は、コンプレッサ(図示しない)から気体供給通路12を通って供給される圧縮空気Aにより行っている。逆洗に用いられる流体は空気以外の気体、例えば窒素等でもよく、また、真水、ろ過された海水等の液体でもよい。
【0030】
次に、図1および図3を用いて、ろ過水製造装置の運転方法、つまり、本実施形態に係るろ過ユニットによるろ過水製造方法について説明する。図3に示すように、バラスト水製造装置の運転方法は、ろ過の準備工程である充水工程、ろ過工程、加圧工程および逆洗工程からなる。
【0031】
コントローラ30に設置された始動ボタン(図示しない)を操作してろ過水製造装置1を作動させると、まずろ過ポンプ2が起動し、第1自動開閉弁MV1と第5自動開閉弁MV5とを開いて充水工程に入る。充水工程では、第2〜4自動開閉弁MV2〜4を閉じて、デプスフィルタ10から二次ろ過ユニット26へのろ過水FWの供給およびデプスフィルタ10への圧縮空気Aの供給を停止した状態で、一次ろ過ユニット4および連通路15を経て排出通路14に原水RWを流して、外部へ排出することにより、原水通路5および一次ろ過ユニット4のエア抜きおよび充水を行う。
【0032】
つづいて、第5自動開閉弁MV5を閉じ、第2自動開閉弁MV2を開いてろ過工程に入る。ろ過工程では、デプスフィルタ10からの排水とデプスフィルタ10への圧縮空気供給とを停止した状態で、一次ろ過ユニット4に原水RWを供給して、ろ過水FWをろ過水通路8に送る。このとき、原水RWはデプスフィルタ10の外側からデプスフィルタ10のろ過膜を通過して中空部11へ流入することにより、原水RW中の異物が除去されてろ過される。ろ過水FWはろ過水通路8を通って、二次ろ過ユニット26へ供給され、再度ろ過されて処理水TWとなる。
【0033】
次に、ろ過水ポンプ2を停止し、第1および2自動開閉弁MV1,2を閉じ、第3自動開閉弁MV3を開けて加圧工程に入る。加圧工程では、デプスフィルタ10から二次ろ過ユニット26へのろ過水FWの供給およびデプスフィルタ10への原水RWの供給を停止した状態で、圧縮空気Aを一次ろ過ユニット4に流す。こうして一次ろ過ユニット4を加圧することにより、次の逆洗工程においてろ過水FWが流体供給通路12に逆流してくるのを防ぐ。
【0034】
つづいて、第1、2自動開閉弁MV1、2を閉じたままで、第4自動開閉弁MV4を開けて逆洗工程に入る。逆洗工程では、一次ろ過ユニット4への原水RWの供給、および二次ろ過ユニット26へのろ過水FWの供給が停止されている状態で、デプスフィルタ10の中空部11へ圧縮空気Aを供給し、この圧縮空気Aを排出通路14に流す。これにより、圧縮空気Aがろ過工程とは逆方向にデプスフィルタ10を通過して、デプスフィルタ10に付着した異物および筐体9内に溜まった異物を一次ろ過ユニット4外へ導出させ、排出通路14から外部へ排出する。
【0035】
逆洗工程が完了すると、第3、4自動開閉弁MV3、4を閉めて、ろ過水ポンプ2を起動し、第1および5自動開閉弁MV1、5を開いて、充水工程に戻る。逆流洗浄直後のデプスフィルタ10でろ過されたろ過水FWは、逆流洗浄時にデプスフィルタ10の空隙に詰まった極微粒子が集積して濁ることがあるが、この濁った水は連通路15から排水通路14を通って外部へ排出される。以降このループが繰り返される。充水工程の継続時間は、タイマのような時限装置により可変設定される。設定時間はろ過設備の規模によって異なるが、例えば、5秒程度である。加圧はごく短時間、例えば3秒程度であり、これもタイマのような時限装置により可変設定される。ろ過工程および逆洗工程の時間は、原水の水質や設備の規模により異なるが、例えば、1分から5分程度で、これもタイマのような時限装置により可変設定される。ろ過工程から加圧工程への移行は、流量計RIの測定流量Qが規定値よりも小さくなった時点で行うようにしてもよい。
【0036】
ろ過工程中は、コントローラ30が常時測定流量Qを監視しており、測定流量Qが警報値H1を上回ると、例えばブザーのような警報を発し注意を促す。この時点ではろ過装置1は運転を継続する。さらに、測定流量Qが大きくなり非常停止値H2を上回ると、例えばベルのような警報を発し、ろ過装置1が緊急停止する。具体的には、コントローラ30がろ過ポンプ2を停止させ、すべての自動開閉弁MV1〜5を閉止させる。
【0037】
上記構成において、ろ材に孔径1〜25μmのデプスフィルタ10を用いているので、目立つ大きさの浮遊物を取り除くことができるうえに、サーフェスフィルタを用いる場合に比べて、初期導入費用を抑えることができる。また、逆流洗浄を行うことで、デプスフィルタ10のろ過性能を回復させて使用できるので、デプスフィルタ10の交換頻度を少なくして、維持管理費用を抑えることができる。さらに、ろ過水通路8と排出通路14とを連通させる連通路15とこの連通路15を開閉する第5自動開閉弁MV5を備えているので、逆流洗浄直後の極微細粒子が集積したろ過水FWが排水通路14に排出され、濁ったろ過水RWが供給されるのを防ぐことができる。
【0038】
また、一次ろ過ユニット4のデプスフィルタ10と二次ろ過ユニット26の中空糸膜が、共通の圧縮空気Aで逆流洗浄されるので、設備を一層簡素化できる。
【0039】
排出口22と原水供給口18とが同一であるので、排出口22と原水供給口18とを共通化して、構成を簡略化することができる。
【0040】
さらに、上記運転方法によれば、図3に示すように、準備工程において逆流洗浄後のろ過水FWを連通路15および排水通路14を経由して排出しているので、逆流洗浄直後にろ過水FWが濁ることがない。
【0041】
また、デプスフィルタ10は、被ろ過物質をフィルタの表面のみで捕集するサーフェスフィルタと異なり、フィルタの厚み方向全体で被ろ過物質を捕集することができるので、捕集量が多く、フィルタが長時間目詰まりを起こすことがない。
【実施例】
【0042】
本実施形態におけるデプスフィルタ10を用いて、検証実験を行った。原水は海水で、原水の供給圧力、流量は、それぞれ0.03MPa、0.037m/minである。逆洗用の流体には圧縮空気を用いて、圧縮空気の供給圧力、流量は、それぞれ0.13MPa、0.4Nm/minである。使用したデプスフィルタは、長さ25cmで、孔径は1μm,25μmとした。また、デプスフィルタの軸心を水平面に対して45°傾斜させて配置した。
【0043】
検証1:初期圧力損失
表1は、原水温度が25℃のときの孔径0.5μm、1μmおよび25μmのデプスフィルタにおいて、原水を供給した際のデプスフィルタの一次側と二次側との圧力の差を示したもので、図4は、原水の供給流量と圧力損失の関係を示したグラフである。表1および図4から明らかなように、1μmおよび25μmのデプスフィルタにおいては圧力損失が小さいが、0.5μmのデプスフィルタにおいては圧力損失が極めて大きく、ほとんど原水が流れなくなった。したがって、デプスフィルタの孔径は1μm以上であることが好ましい。
【0044】
【表1】

【0045】
検証2:逆洗効果
表2は、孔径1μmと25μmのデプスフィルタのそれぞれにおいて、連続ろ過運転した場合と、ろ過運転・逆洗運転を交互に行った場合のデプスフィルタの状態(差圧の状況)を示したものである。ろ過・逆洗の交互運転は、ろ過運転と逆洗運転を5分毎に交互に繰り返した。連続ろ過運転をした場合、25μmのデプスフィルタでは約2時間で、1μmのデプスフィルタでは約40分間で差圧が上昇し、デプスフィルタが閉塞した。ろ過・逆洗の交互運転では、1μm、25μmのどちらのデプスフィルタにおいても、5時間連続運転後も差圧の上昇はなく、デプスフィルタの閉塞はなかった。
【0046】
【表2】

【0047】
検証3:ろ過水の水質
表3は、孔径1μm、25μmのデプスフィルタそれぞれにおける、原水およびろ過水1ml中に含まれるサイズ別の粒子の数(水中パーティクル数)と、除去率を示している。各データの分母が原水における水中パーティクル数、分子がろ過水における水中パーティクル数を表し、括弧内の数値は除去率を表している。孔径が25μmのデプスフィルタでは、粒子径が25μm以上の粒子の95%以上、10μm以上の粒子の約88%が除去され、1μm以上の粒子でも60%以上が除去されている。25μm以上の粒子の大部分が除去されていることにより、ろ過水中の浮遊物が目立たない。さらに、孔径が1μmのデプスフィルタでは、粒子径が25μm以上の粒子の99%以上、10μm以上の粒子の約94%が除去され、1μm以上の粒子でも80%以上が除去されている。
【0048】
【表3】

【0049】
検証1の結果から分かるように、本実施形態に使用するデプスフィルタ10は、孔径が1μmであっても圧力損失がほとんどないので、デプスフィルタ10の投影面積が少なくて済み、一次ろ過ユニット4が大型化するのを抑えることができる。また、検証2の結果から分かるように、逆洗を行うことで、繰り返し使用可能となる。これにより、寿命が格段に長くなる。さらに、検証3の結果から分かるように、孔径が25μmのもので、25μm以上の粒子の90%以上、10μm以上の粒子の80%以上を除去している。したがって、デプスフィルタ10の孔径は1〜25μmとすることができる。
【0050】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、本発明は、砂ろ過装置の代替としてだけではなく、珪藻土ろ過代替、カートリッジフィルタ代替、プリーツフィルタ代替およびマイクロメッシュフィルタ代替等にも適用できる。具体的な使用分野としては、例えば、プール水循環ろ過、浴槽水循環ろ過、海水淡水化プラント、工業用水ろ過、廃水処理ろ過、油ろ過、燃料ろ過、上下水道水ろ過または飲料製造工程でのろ過等である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 ろ過水製造装置(ろ過システム)
4 一次ろ過ユニット
8 ろ過水通路
9 筐体
10 デプスフィルタ(ろ材)
12 気体供給通路
14 排出通路
15 連通路
16 ろ過水取出口
18 原水供給口
22 排出口
24 気体供給口
26 二次ろ過ユニット
38 ろ材
MV5 第5自動開閉弁
A 圧縮空気
FW ろ過水
RW 原水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ材およびそれを収容する筐体を含み、原水をろ過するろ過ユニットを有するろ過装置であって、
前記筐体が、前記ろ材に原水を供給する原水供給口と、ろ過水の取出口と、前記ろ材に逆洗用の流体を供給する流体供給口と、前記ろ材を逆洗した流体および前記原水を排出する排出口を有し、
前記ろ材が孔径1〜25μmのデプスフィルタであり、
さらに、前記ろ過水取出口に接続されるろ過水通路と前記排出口に接続される排出通路とを連通させる連通路と、この連通路を開閉する開閉弁とを備えたろ過装置。
【請求項2】
請求項1において、さらに、前記ろ過ユニットによりろ過されたろ過水を、限外ろ過膜または逆浸透膜からなるろ材によって再度ろ過する二次ろ過ユニットを備えたろ過装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記流体供給口と前記ろ過水取出口とが同一であるろ過装置。
【請求項4】
請求項1,2または3において、前記排出口と前記原水供給口とが同一であるろ過装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のろ過装置を用いたろ過水製造方法であって、
前記ろ材からのろ過水の供給およびろ材への流体の供給を停止した状態で前記開閉弁を開放することにより、前記ろ過ユニットを経て前記連通路および排出通路から流体を原水とともに排出する準備工程と、
ろ材からの原水の排出とろ材への流体供給とを停止した状態で、ろ過ユニットに原水を供給して、ろ過水を前記ろ過水取出口に送るろ過工程と、
ろ過水の供給を停止した状態で、ろ過水側からろ材へ流体を供給し、この流体を前記排出口から前記排出通路を経て排出する逆洗工程と、
を備えたろ過水製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−207800(P2010−207800A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260648(P2009−260648)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】