説明

ろ過装置及びろ過装置の膜洗浄方法

【課題】オゾン等の薬品を利用することなく、散気設備を設置しないで費用の増大を抑え、かつ濾過水を用いることのないろ過装置及びろ過装置の膜洗浄方法を提供する。
【解決手段】ろ過装置10Aは、供給水30中の濁質分を濾過して生産水31と濃縮水32とに分離する膜12を有する膜装置13と、前記供給水30を前記膜装置13に送給する供給水ライン33とを具備してなるろ過装置において、ガスを溶液に過飽和状態に溶解させるガス溶解部34Aを有し、前記膜12の洗浄を行う際に、前記ガス溶解部34Aを用いて、前記供給水30をガスで過飽和状態に溶解し、前記膜装置13内で微細気泡を発生させ、前記膜12の洗浄に用いてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理設備に用いられるろ過装置及びろ過装置の膜洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水淡水化設備においては、脱塩処理することにより原水(海水)を淡水化させて上水として使用するための海水淡水化装置としてろ過装置が用いられている。
【0003】
このようなろ過装置は、原水である海水中の濁質分を除去するために、MO膜(逆浸透膜)、UF膜(限外濾過膜)又はMF膜(精密濾過膜)等の膜が用いられている。
ところで、該膜は所定時間運転した後、前記膜の表面や細孔内に有機物等が付着して、ろ過水量の低下あるいは膜差圧が上昇する。このため、従来では、捕集された濁質分を除去するために、前記膜でろ過したろ過水を逆洗水として用い、膜の洗浄を行っていた(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−34694号公報
【0005】
図7は、従来の膜洗浄方法を備えたろ過装置10の構成を示す図である。
図7に示すように、この膜洗浄方法を備えたろ過装置10は、原水タンク11と、前記原水タンク11に貯留されている原水を固液分離するための膜12を備えた膜装置13(ろ過空間)と、前記膜12によってろ過されたろ過水が貯留されるろ過水タンク14とを有している。
【0006】
このろ過装置10では、ろ過工程は次のように実施される。すなわち、原水供給バルブ15およびろ過バルブ16を開いて、微細気泡バルブ17、粗大気泡バルブ18、逆洗バルブ19、排気バルブ20を閉じて原水ポンプ21を稼働して、原水を前記原水タンク11から前記膜装置13に供給する。前記膜装置13に供給された原水は、前記膜12によって濁質分等が除去されて、ろ過水が前記ろ過水タンク14に貯留されるようにしている。
【0007】
そして、前記膜12の洗浄を行うときには、膜洗浄の工程は次のように実施される。すなわち、前記逆流バルブ19を開いて前記ろ過水タンク14に貯蓄されているろ過水を前記膜装置13に流し、前記微細気泡バルブ17を開いて、オゾン発生設備22から原水部(前記膜12の原水側)にオゾンを含有する微細気泡を微細気泡散気管23から発生させる。その後、前記微細気泡バルブ17を閉じ、前記粗大気泡バルブ18を開いて、前記膜装置13内の前記膜12の原水側に粗大気泡を前記粗大気泡散気管(板)24から発生させる。この時、粗大気泡を発生させると同時に前記逆洗バルブ19を開いて逆洗ポンプ25を作動させ、過酸化水素注入設備26から過酸化水素(H22)を注入し、前記過酸化水素(H22)を含んだろ過水で前記膜12を逆流洗浄するようにしている。そして、逆洗浄した後、前記膜装置13内の水は排水バルブ27より全て排出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の膜洗浄方法を備えたろ過装置10は、オゾン等の薬品を用いないと使用できないが、RO膜のような膜はオゾン等のような強い薬品を用いると破損等してしまう、という問題がある。
【0009】
また、前記膜洗浄方法を備えたろ過装置10は、微細気泡を発生されるための微細気泡散気管(板)23を設置する必要があるため、費用が増大する、という問題がある。
【0010】
更に、原水を濾過した濾過水は淡水の原料であるので、逆洗水を多用することは、透過水量を減らすことになり、経済性が低下する、という問題がある。
【0011】
本発明は、前記問題に鑑み、オゾン等の薬品を利用することなく、散気設備を設置しないで費用の増大を抑え、かつ濾過水を用いることのないろ過装置及びろ過装置の膜洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、供給水中の濁質分を濾過して生産水と濃縮水とに分離する膜を有する膜装置と、前記供給水を前記膜装置に送給する供給水ラインとを具備してなるろ過装置において、ガスを溶液に過飽和状態に溶解させるガス溶解部を有し、前記膜の洗浄を行う際に、前記ガス溶解部を用いて、前記供給水をガスで過飽和状態に溶解し、前記膜装置内で微細気泡を発生させ、前記膜の洗浄に用いてなることを特徴とするろ過装置にある。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記ガス溶解部が、液体にガスを過飽和状態に溶
解させるガス溶解装置と、前記ガス溶解装置内を加圧する予備加圧ポンプとを具備することを特徴とするろ過装置にある。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、前記ガス溶解部が、前記供給水ラインに空気を常圧で送給する空気供給部と、前記空気供給部より前記供給水ラインに送給された前記空気を過飽和状態に溶解させるキャビテーション加圧ポンプとを具備することを特徴とするろ過装置にある。
【0015】
第4の発明は、第1の発明において、前記ガス溶解部が、前記供給水ラインに炭酸塩を常圧で送給する炭酸塩供給部と、前記炭酸塩を含有する前記供給水に酸を加える酸供給部とを具備することを特徴とするろ過装置にある。
【0016】
第5の発明は、供給水中の濁質分を濾過した後、膜の洗浄を行う際に、ガス溶解部により前記供給水にガスを過飽和状態に溶解し、前記ガスを過飽和状態に溶解した前記供給水を膜装置に送給し、前記膜装置内を減圧して微細気泡を発生させ、膜を洗浄することを特徴とするろ過装置の膜洗浄方法にある。
【0017】
第6の発明は、第5の発明において、前記供給水ライン上の加圧比を計測しつつ、前記膜の洗浄を繰り返し行った後、化学洗浄を行うことを特徴とするろ過装置の膜洗浄方法にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガスが過飽和に溶解している供給水を前記膜の洗浄水として用い、前記ろ過装置内の膜の近傍で微細気泡を発生させているので、従来のようにオゾン等の薬品を利用し、散気設備を設置して費用を増大させることなく、又濾過水の一部を逆洗水として用いることなく、膜の洗浄ができ、濾過水の全量を淡水化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。尚この実施例によりこの発明が限定されるものではない。又下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0020】
本発明による実施例1に係るろ過装置について、図1を参照して説明する。
図1は、実施例1に係るろ過装置の構成を示す概念図である。
図1に示すように、本実施例に係るろ過装置10Aは、供給水30中の濁質分を濾過して生産水31と濃縮水32とに分離する膜12を有する膜装置13と、前記供給水30を前記膜装置12に送給する供給水ライン33とを具備してなるろ過装置において、ガスを溶液に過飽和状態に溶解させるガス溶解部34Aを有し、前記膜12の洗浄を行う際に、前記ガス溶解部34Aを用いて、前記供給水30をガスで過飽和状態に溶解し、前記膜装置13内で微細気泡を発生させ、前記膜12の洗浄に用いてなるものである。又ろ過装置10Aは、前記供給水30を前記膜装置13に送給するポンプ21を具備する。
【0021】
通常、本実施例に係るろ過装置10Aを用いて、ろ過をする際には、前記供給水30は前記供給水ライン33を介して前記膜12によって、前記生産水31と濃縮水32とに分離する。
【0022】
そして、前記膜装置13で生成される生産水31は生産水ライン35を経由して外部の図示しない水使用設備等に送給される。又濃縮された濃縮水32は濃縮水ライン36を経由して外部の図示しないタンクに貯留される。又生産水ライン35と濃縮水ライン36はバイパスライン39で連結されている。
【0023】
一方、本実施例に係るろ過装置10Aを用いて、ろ過を続けると、膜12表面に濁質等が付着してろ過流速が遅くなる。そこで、本実施例に係るろ過装置10Aを用いて、前記膜12の洗浄を行う。
【0024】
前記膜12の洗浄を行う際には、前記ガス溶解部34Aを用いて、前記供給水30をガスで過飽和状態に溶解し、前記膜装置13内で微細気泡を発生させ、前記膜12の洗浄を行うものである。
【0025】
まず、気泡の基になるガスを溶液に過飽和状態に溶解させる必要がある。
本実施例に係るろ過装置10Aにおいては、前記ガス溶解部34Aは、液体にガスを過飽和状態に溶解させるガス溶解装置37と、前記ガス溶解装置37内を加圧する予備加圧ポンプ38とを具備している。前記膜12の洗浄を行う際には、予備加圧ポンプ38により前記ガス溶解装置37内を加圧することによりガスを溶液に吹き込んで混合溶解し、過飽和状態に溶解させる。そして、ガスを過飽和状態に溶解させている液体は、ガス溶解水ライン38を介して前記供給水30に送給する。このように、前記予備加圧ポンプ38によって、ガスを液体に過飽和状態に溶解させているため、前記ポンプ21でのキャビテーションを防止することができる。
【0026】
また、ろ過装置10Aにおいては、前記ガス溶解部34Aは、前記供給水ライン33上に配置しており、膜の洗浄を行う際には、前記ガス溶解部34Aからのガスを過飽和状態に溶解させた液体は前記供給水30と共に前記ポンプ21を兼用して前記膜装置13に送給される。このため、ガスを過飽和状態に溶解させた液体を前記膜装置13に送給するポンプを別途設ける必要がないため、ろ過装置の製造コストを削減することができる。
【0027】
また、ろ過装置10Aにおいては、膜の洗浄を行う際には、前記ガス溶解部34Aからのガスを過飽和状態に溶解させた液体を前記供給水30と共に前記膜装置13に送給される。このため、ろ過装置10Aを用いれば、ろ過を行うと共に、膜の洗浄をも同時に並行して行うことができる。
【0028】
また、前記ガス溶解部34Aは、図1のように前記供給水ライン33上に配置しなくても、前記供給水ライン33とは別にラインを設けて前記ガス溶解部34Aで製造されたガスを過飽和状態に溶解させた液体を直接前記膜装置13に送給するようにしても良い。
【0029】
また、加圧条件として、前記ガス溶解部34Aにおいて、前記ガス溶解装置37は前記予備加圧ポンプ38によって、例えば0.4〜0.5MPa程度で加圧している。尚本発明に係る加圧条件は、特にこれに限定されるものではない。
【0030】
そして、ガスを過飽和状態に溶解させたガスを含有する前記供給水30は、前記膜装置13に送給される。また、このときバイパスライン39上に設けられているバルブを開放する。その後、生産水ライン35上に設けられているバルブ、又は濃縮水ライン36上に設けられているバルブの何れか一方を開放する。それから前記膜装置13内を減圧する。これにより、前記膜装置13内の膜12に均一に加圧され、膜の破損を防ぐようにしている。
【0031】
また、前記膜装置13には、前記膜装置13内を減圧状態にするための減圧バルブ(図示せず)を有している。前記膜装置13内を減圧する際、前記減圧バルブ(図示せず)を開放することにより、前記膜装置13内を減圧状態にする。これにより、前記膜装置13内では、前記供給水30中に過飽和状態に溶解しているガスが膨張して微細気泡を発生し、前記膜12に付着している濁質分等を剥離して、前記膜12の洗浄を行うようにしている。
【0032】
また、気泡の発生量と減圧の度合いについては、そのときの圧力の飽和溶解度により決定される。
【0033】
また、減圧条件としては、加圧したときの圧力の1/5〜1/10の範囲に減圧するのが好ましい。又、特に好ましくは、1/5〜1/6の範囲で減圧すると良い。
【0034】
また、減圧したときに発生する気泡の気泡径は、およそ50〜200μmの泡であって、気泡の発生量は、前記ガス溶解部34Aにおいて、過飽和状態にガスを溶解させた分だけ、発生することになる。
【0035】
ここで、前記膜12表面に付着している濁質分等を除去するメカニズムについて詳細に
説明する。
図2は、減圧処理したときの前記膜に付着している濁質分等を除去する状態を示す図である。図2は加圧状態から減圧状態にした時の様子をそれぞれ示している。
【0036】
図2に示すように、加圧状態では、液体中にガスが過飽和の状態で溶解している。又気泡を含む液体は、気泡が濁質分等の表面に付着したり、濁質分等同士の間や濁質分と前記膜12表面等との間に浸入する。
そして、前記膜装置13内を減圧状態にすると、気泡が一気に連続的に発生して破裂する。これは、例えば、ダイナマイトを爆発したときの場合のように、気泡の膨張と破裂の効果によって前記膜12表面に付着している濁質分等を剥離させる起爆力を発揮する。このように、発生した気泡の破裂エネルギーを利用して、前記膜12表面の濁質分等を剥離するものである。そして、前記膜12表面から剥離した濁質分は濃縮水32と共に排出される。
【0037】
また、前記膜装置13内を減圧して気泡を含有する溶液を前記膜装置13内に一定時間留まらせることにより、微細気泡の消滅により発生するキャビテーションにより、前記膜12表面の洗浄効果をも得ることができる。
【0038】
更に、前記膜装置13内を減圧して発生した微細気泡を含有する溶液を循環させることにより、発生した微細気泡による物理的な洗浄効果をも得ることができる。
【0039】
また、前記ろ過装置10Aにおいては、圧力比(加圧/減圧)が0.1MPa程度に達したら洗浄するようにするものである。
【0040】
図3は、前記膜12としてUF膜(限外濾過膜)を用いた場合の圧力比(加圧/減圧)とろ過流束との関係を示す図である。
図3に示すように、圧力比(加圧/減圧)が0.4MPaの時に、ろ過流束は初期状態に近い状態に戻った。尚圧力比(加圧/減圧)とろ過流束との関係をまとめた結果を下記表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
図3及び表1に示す結果より、ろ過流束を初期状態に近い状態に回復することができたのは、圧力比(加圧/減圧)、即ち減圧を大きくしたことによりUF膜表面の濁質分等が除去することができたためであると考えられる。
【0043】
また、前記ろ過装置10Aにおいて、供給水ライン33上に圧力計40を具備してなり、前記圧力計40からの情報を制御装置(CPU)41に送るようにしている。前記膜12に濁質分等が付着するようになれば、ろ過流束が遅くなるため、前記圧力計40からの情報により減圧調整し、圧力比(加圧/減圧)が所定の圧力比(加圧/減圧)になったら、微細気泡を発生させて、膜の洗浄を行うようにすることができる。
【0044】
図4は、圧力比(加圧/減圧)と時間との関係を示す図である。
図4に示すように、圧力比(加圧/減圧)は時間の経過により変動する。圧力比(加圧/減圧)が、所定の圧力比(加圧/減圧)、例えば図4に示すようなΔP1になったら、前記膜の洗浄を行なう。
【0045】
しかし、前記膜12の洗浄を行っても前記膜12は初期状態ほどにはきれいに回復しないため、ろ過流束が遅くなる、そのため、初期状態と同じ分だけのろ過流速を保とうとすると圧力が大きくなる。その結果、圧力比(加圧/減圧)の回復は初期状態より少し高くなってしまう。例えば、図4に示すようなΔP2、ΔP3になったら、前記膜12の洗浄を繰り返し行なうと、前記膜12の洗浄後の圧力比(加圧/減圧)のベースラインが上がっていくことになる。そこで、圧力比(加圧/減圧)が、図4に示すようなΔP4になった時には、化学洗浄を行うようにする。これにより、膜の洗浄後の圧力比(加圧/減圧)は初期状態に近い位置まで回復することができる。
【0046】
また、前記膜12は、例えばRO膜(逆浸透膜)、UF膜(限外濾過膜)又はMF膜(精密濾過膜)等の分離膜を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本実施例によれば、従来のようにオゾン等の薬品を利用し、散気設備を設置することなく、膜表面で微細気泡を発生させて、微細気泡の効果により膜洗浄をすることができる。
【実施例2】
【0048】
次に、本発明による実施例2に係るろ過装置について、図5を参照して説明する。
図5は、実施例2に係るろ過装置10Bの構成を示す概念図である。
尚図1のろ過装置10Aの構成と同一の部材については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、本実施例に係るろ過装置10Bにおいて、ガス溶解部34Bが、供給水ライン33に空気を常圧で送給する空気供給部42と、前記供給水ライン33に送給された前記空気を過飽和状態に溶解させるキャビテーション加圧ポンプ43とを具備してなる。
【0049】
本実施例のろ過装置10Bにおいて、前記膜12の洗浄を行う際には、前記空気供給部42より空気を常圧で前記供給水30に送給し、前記キャビテーション加圧ポンプ43により、前記供給水30に送給された前記空気を過飽和状態に溶解させる。そして、前記空気を過飽和状態に溶解させた前記供給水30は前記供給水ライン33を介して、前記膜装置13に送給する。このように、ろ過装置10Bでは、実施例1の前記ろ過装置10Aのような前記予備加圧ポンプ38を設け、予備加圧することなく、前記膜12の洗浄を行うことができる。
【0050】
尚前記供給水30に供給するガスとして、本実施例では空気を用いているが、本発明はこれに限定されず、例えば不活性ガス等を用いるようにしても良い。
【0051】
本実施例によれば、ガス溶解部にガスを溶解させるための前記予備加圧ポンプ38を設け、予備加圧することなく、膜表面で微細気泡を発生させて、膜洗浄をすることができる。
【実施例3】
【0052】
次に、本発明による実施例3に係るろ過装置について、図6を参照して説明する。
図6は、実施例3に係るろ過装置10Cの構成を示す概念図である。
尚図1のろ過装置10Aの構成と同一の部材については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図6に示すように、本実施例に係るろ過装置10Cにおいて、前記ガス溶解部34Cが、前記供給水ライン33に炭酸塩を常圧で送給する炭酸塩供給部44と、前記炭酸塩を含有する前記供給水30に酸を加える酸供給部45とを具備している。
【0053】
本実施例のろ過装置10Cにおいて、前記膜12の洗浄を行う際には、前記炭酸塩供給部44により炭酸塩を常圧で前記供給水30に送給し、前記ポンプ21により加圧した後、前記酸供給部45により炭酸塩を含有する前記供給水30に酸を加える。これにより、前記供給水30中のpHを下げると共に、炭酸塩と酸との反応により生成される二酸化炭素(CO2)を前記供給水30に過飽和状態で溶解させることができる。
【0054】
この結果、前記予備加圧ポンプ38や、前記キャビテーション加圧ポンプ43のような液体にガスを過飽和状態に溶解させるためのガス加圧設備を設けることなく、ガスを前記供給水30に過飽和状態で溶解させることができる。尚pHを低下させるために前記酸供給部45より供給する酸は、硝酸(HNO3)や、塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)等を用いれば良く、特にこれらに限定されるものではない。
【0055】
本実施例によれば、液体にガスを過飽和状態に溶解させるためのガス加圧設備を設けることなく、ガスを前記供給水30に過飽和状態で溶解し、膜表面で微細気泡が発生させて、膜洗浄をすることができる。
【0056】
また、本発明による実施例1乃至実施例3に係るろ過装置は、複数台設置しても良い。
【0057】
また、上述の実施例は、汚染海水中の有機物を処理する膜について説明したが、被処理水が有機物を含んだ液体であれば、例えば、半導体メーカーでの超純粋、原子力発電所での用水、河川水、湖沼水、下水二次処理水、工場廃水食品加工用途などにも変更実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明に係るろ過装置は、従来のようなオゾン等の薬品を利用し、散気設備を設置して費用を増大させることなく、又濾過水の一部を逆洗水として用いることなく膜の洗浄ができ、濾過水を全量淡水化することができるので、ろ過装置の膜の洗浄に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1に係るろ過装置の構成を示す概念図である。
【図2】前記膜に付着している濁質分等を除去する状態を示す図である。
【図3】圧力比(加圧/減圧)とろ過流束との関係を示す図である。
【図4】圧力比(加圧/減圧)と時間との関係を示す図である。
【図5】実施例2に係るろ過装置の構成を示す概念図である。
【図6】実施例3に係るろ過装置の構成を示す概念図である。
【図7】従来の膜洗浄方法を備えたろ過装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
10A、10B、10C ろ過装置
12 膜
13 膜装置
21 ポンプ
30 供給水
31 生産水
32 濃縮水
33 供給水ライン
34A、34B、34C ガス溶解部
35 生産水ライン
36 濃縮水ライン
37 ガス溶解装置
38 予備加圧ポンプ
39 バイパスライン
40 圧力計
41 制御装置(CPU)
42 空気供給部
43 キャビテーション加圧ポンプ
44 炭酸塩供給部
45 酸供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給水中の濁質分を濾過して生産水と濃縮水とに分離する膜を有する膜装置と、
前記供給水を前記膜装置に送給する供給水ラインとを具備してなるろ過装置において、
ガスを溶液に過飽和状態に溶解させるガス溶解部を有し、
前記膜の洗浄を行う際に、前記ガス溶解部を用いて、前記供給水をガスで過飽和状態に溶解し、前記膜装置内で微細気泡を発生させ、前記膜の洗浄に用いてなることを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ガス溶解部が、
液体にガスを過飽和状態に溶解させるガス溶解装置と、
前記ガス溶解装置内を加圧する予備加圧ポンプとを具備することを特徴とするろ過装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記ガス溶解部が、
前記供給水ラインに空気を常圧で送給する空気供給部と、
前記空気供給部より前記供給水ラインに送給された前記空気を過飽和状態に溶解させるキャビテーション加圧ポンプとを具備することを特徴とするろ過装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記ガス溶解部が、
前記供給水ラインに炭酸塩を常圧で送給する炭酸塩供給部と、
前記炭酸塩を含有する前記供給水に酸を加える酸供給部とを具備することを特徴とするろ過装置。
【請求項5】
供給水中の濁質分を濾過した後、
膜の洗浄を行う際に、
ガス溶解部により前記供給水にガスを過飽和状態に溶解し、
前記ガスを過飽和状態に溶解した前記供給水を膜装置に送給し、
前記膜装置内を減圧して微細気泡を発生させ、膜を洗浄することを特徴とするろ過装置の膜洗浄方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記供給水ライン上の加圧比を計測しつつ、前記膜の洗浄を繰り返し行った後、化学洗浄を行うことを特徴とするろ過装置の膜洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−216102(P2007−216102A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37081(P2006−37081)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】