説明

ろ過装置

【課題】 ろ過効率に優れ、円筒状スクリーンの外周面に付着する粗大固形物を容易に除去することができ、しかも、簡易な構造を採用することによって製作コストの低減も図ることができるろ過装置を提供する。
【解決手段】 ろ過装置10は、密閉容器11の内部に設けられた筒状の外スクリーン12と、外スクリーンの内部に設けられた内スクリーン13と、外スクリーンと内スクリーンとの間に充填された圧縮変形可能なろ材と、ろ材を圧縮するろ材圧縮手段22と、外スクリーンの外周面に付着した固形物を掻き落すためのスクレーパー18と、密閉容器の内部に設けられた散気管25a,25b,25cと、密閉容器の下部に原水を流入させる原水流入部14と、内スクリーン内の処理水を密閉容器の上部から流出させる処理水流出部16と、密閉容器の下部から洗浄排水を流出させる洗浄排水流出部15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置に関し、詳しくは、原水中に含まれる固形物のろ過処理を高速に且つ確実に行うことができる高速ろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ過装置の一つとして、原水流入口を有するろ過槽の内部に、ろ過液流出口を有する環状多層プリパックスクリーン組立体からなる直径が異なる3個以上の円筒状スクリーンを同軸に配置して隣接するスクリーン間に環状空間を形成すると共に、各環状空間に異なるろ過機能を果たす2以上の異なるろ材を充填した高速ろ過装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような円筒状のスクリーンを使用することにより、一般的なろ過装置に比べてろ過面積を大幅に拡大することができるので、ろ過処理の高速化を図ることができる。
【特許文献1】特開2000−246021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の高速ろ過装置では、円筒状スクリーンの外周面に粗大固形物が付着することによってろ過効率が低下してしまうことがあった。さらに、前記環状空間内に充填したろ材の洗浄も不十分なものとなりやすいという問題があった。また、円筒状スクリーンの外周にスクレーパーを設置し、円筒状スクリーンを回転させて外周面に付着した粗大固形物をスクレーパーで除去することも考えられるが、大規模のろ過装置では、円筒状スクリーンを回転させるために大きな動力を必要とし、軸受等の構造も大掛かりになって製作コストが上昇するという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、ろ過効率に優れ、円筒状スクリーンの外周面に付着する粗大固形物を容易に除去することができ、しかも、簡易な構造を採用することによって製作コストの低減も図ることができるろ過装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のろ過装置は、密閉容器と、該密閉容器の内部に軸線を鉛直方向に向けて設けられた筒状の外スクリーンと、該外スクリーンの内部に設けられた内スクリーンと、前記外スクリーンと内スクリーンとの間に充填された圧縮変形可能なろ材と、該ろ材を圧縮するろ材圧縮手段と、前記外スクリーンの外周面に付着した固形物を掻き落すための付着物除去手段と、密閉容器の内部に設けられた散気手段と、密閉容器の下部に容器内壁に沿う方向に原水を流入させる原水流入部と、前記内スクリーン内の処理水を密閉容器の上部から流出させる処理水流出部と、密閉容器の下部から洗浄排水を流出させる洗浄排水流出部とを備えていることを特徴としている。
【0006】
さらに、本発明のろ過装置は、上記構成において、前記付着物除去手段が、駆動手段により駆動されて回転運動又は直線運動することにより、前記外スクリーンの外周面に摺接するスクレーパーであること、又は、前記密閉容器と前記外スクリーンとの間に充填され、ろ過工程時の原水又は洗浄工程時の洗浄水の水流により、前記外スクリーンの外周面に摺接する浮遊体であることを特徴としている。
【0007】
また、前記ろ材圧縮手段が、複数のシリンダーによって前記外スクリーンと内スクリーンとの間を軸線方向に移動し、前記ろ材を充填体積に対して10〜50%の範囲で圧縮及び弛緩する円盤状部材で形成されていることを特徴とし、前記散気手段が、少なくとも前記外スクリーンと前記内スクリーンとの間の底部に設けられていることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記散気手段は、前記洗浄排水流出部の経路を開いた状態で、該散気手段からの散気により密閉容器内の圧力を高めて密閉容器内の洗浄排水を排水可能に形成されていることを特徴とし、該散気手段に散気用空気を供給する経路に、水蒸気、滅菌剤又は洗浄剤を注入する経路が接続されていることを特徴としている。
【0009】
また、前記ろ材が繊維状又はスポンジ状のろ材であること、さらに、該ろ材が、空隙が多く、加圧による変形量が大きなろ材と、空隙が少なく、加圧による変形量が小さなろ材とを組み合わせた構造を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のろ過装置によれば、ろ材や外スクリーン外周面の洗浄操作を確実に行うことができるとともに、コンパクトで経済的な高速ろ過処理を長期にわたって安定して行うことができ、製作コスト、設備コスト、運転コストの削減が図れる。例えば、同等の大きさの従来のろ過装置と比較すると、数倍のろ過面積を得ることができる。
【0011】
さらに、原水流入部から容器内壁に沿う方向に原水を流入させることによって遠心分離効果が得られるとともに、外スクリーンでのスクリーン効果も得られるので、しかも、外スクリーンの外周面を清掃する付着物除去手段を設けているので、ろ過装置前段に前処理装置を設ける必要もない。したがって、ろ過設備全体の小型化あるいは能力の向上が図れる。
【0012】
このように、ろ過面積の増大、設備能力の向上等から、同等の大きさのろ過設備において、ろ過処理能力を数十倍に高めることができる。したがって、下水の三次処理、合流式下水道の雨天時越流水対策、湖沼等のアオコや赤潮対策等、従来から各種ろ過装置が採用されていた用途に適用することにより、コンパクトで経済的な高速ろ過処理を行うことができ、設備コストや運転コストの大幅な削減が図れる。さらに、原水にPAC、バンド、ポリ鉄等の従来から用いられている金属系凝集剤や、有機系ポリマー等の各種凝集剤を適宜添加することにより、ろ過処理性能を更に向上させることができる。また、浮上分離濃縮や脱水装置を組み合わせて洗浄排水量を削減することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1乃至図6は、本発明のろ過装置の第1形態例を示すもので、図1はろ過装置の縦断面図、図2はろ過装置の横断面図、図3はスクレーパーの平面図、図4はろ材の一例を示す斜視図、図5はろ過装置を設置したろ過設備の一例を示す概略系統図、図6は図5に示した構成のろ過設備における運転工程の一例を示す工程図である。
【0014】
まず、本形態例に示すろ過装置10は、略円筒状の密閉容器(ケーシング)11と、該密閉容器11の内部に設けられた円筒状の外スクリーン12と、該外スクリーン12の内部に設けられた円筒状の内スクリーン13とを有しており、各円筒体の軸線を鉛直方向に向けて同軸に配置している。密閉容器11の下部には、原水を容器内壁に沿う方向、すなわち、本形態例では容器接線方向に向けて原水を密閉容器11内に流入させる原水流入部14が設けられており、密閉容器11の底部には、容器下部から洗浄排水を流出させるための洗浄排水流出部15が設けられている、また、内スクリーン13には、該内スクリーン13内に流入した処理水を密閉容器11の上部から流出させる処理水流出部16が設けられている。
【0015】
外スクリーン12は、周面(胴部)を円筒形のウェッジワイヤースクリーン12aで形成し、その両端開口を鏡板12b,12bで閉塞したものであって、ウェッジワイヤースクリーン12aにおける隣接するウェッジワイヤー同士の間隔(目開き)は、ろ材の種類や原水の性状に応じて0.2〜5.0mm程度に設定されている。内スクリーン13は、多数の通水孔13aを設けたパイプ状のものであって、外スクリーン12の上部鏡板及び密閉容器11の天板の中心を気密、水密状態で貫通している。内スクリーン13の通水孔13aは、運転中にろ材が通過したり、ろ材によって閉塞されない大きさ及び形状に形成されるとともに、ろ材圧縮状態でのろ過処理を行えるようにするため、内スクリーン上部側には設けないようにしている。
【0016】
なお、外スクリーン12及び内スクリーン13は、ろ材を通過させない通水構造を有していれば任意の構造を採用することができる。例えば、外スクリーン12を、内スクリーン13と同じような多数の通水孔を有するパイプ状、例えばパンチングメタルを筒状に成形したものを使用することができ、内スクリーン13の通水部に外スクリーン12と同じようなウエッジワイヤースクリーンを使用することができる。また、内スクリーン13の形状は、円筒(パイプ)状に限るものでもない。
【0017】
前記外スクリーン12の外周には、付着物除去手段として、密閉容器11と外スクリーン12との間に、モーター17等の駆動手段により駆動されて回転運動し、外スクリーン12の外周面に摺接して外スクリーン12の外周面に付着した固形物を掻き落すためのスクレーパー18が設けられている。このスクレーパー18は、図3に示すように、リング状乃至筒状の保持部材19に、90度間隔で筒体軸線と平行な方向に保持されており、モーター17の回転がピニオン17aから保持部材19の内歯車19aに伝達されることにより、一方向に回転、あるいは、往復回動して外スクリーン12外周面の固形物を掻き落とす。
【0018】
また、外スクリーン12と内スクリーン13との間には、圧縮変形可能なろ材21(図4参照)が充填されるとともに、該ろ材21を上方から下方に向けて圧縮するろ材圧縮手段22が設けられている。ろ材21としては、主として圧縮変形可能なろ材を適当に選択して使用することができるが、濁質捕捉量を大きくするためには繊維状又はスポンジ状のろ材を用いることが好ましく、特に、図4に示すように、濁質を捕捉するための空隙が多く、加圧による変形量が大きな疎なろ材21aと、濁質を捕捉するための空隙は少ないが、加圧による変形量が小さな密なろ材21bとを張合せるなどして組み合わせた構造を有するろ材21が最適である。さらに、ろ材21として、比重が1付近のものを使用することにより、外スクリーン12と内スクリーン13との間の空間内にろ材21を平均的に分散させた状態にできるので、短絡流の発生も防止できる。
【0019】
前記繊維状又はスポンジ状のろ材は、一般的にろ材として用いられているケイ砂やアンスラサイト等のろ材と比較して空隙率が大きくなることから、単位容積当たりの固形物(濁質)捕捉量が大幅に増加する。しかし、空隙率の大きなろ材は、圧力の上昇によって変形(圧縮)し易い問題がある。すなわち、ろ過の継続に伴ってろ過抵抗が上昇すると、ろ材が圧縮されて有効な空隙が減少し、さらに急激な圧力上昇を招いてしまうという問題があった。一方、空隙率の小さな緻密なろ材は、ろ材内部の空隙が小さいため、濁質捕捉量が少ないという問題があった。各種ろ材の特徴をより効果的に発揮させるためには、前述のように、疎なろ材21aと密なろ材21bとを張り合わせた構造のろ材が最適である。
【0020】
このような構造のろ材としては、様々な材質及び組合せが可能であるが、耐薬品性、耐熱性及び物理的な強度、比重等を考慮すると、レギュラーポリエステル繊維と低融点ポリエステル繊維とを混合し、熱融着させたものが好ましい。例えば、疎なろ材21aでは6〜10デニール程度の比較的細い繊維を用い、充填密度を少なくして厚さ2〜5mm程度のシート状に形成し、密なろ材21bでは10〜20デニール程度の比較的太い繊維を用い、充填密度を多くして厚さ2〜5mm程度のシート状に形成する。そして、これらを一枚ずつ2枚張り合わせて2層構造のシートを作成した後、5〜20mm程度の角型に打ち抜いたものをろ材として用いるとよい。また、密なシートを中に挟んで両側を疎なシートとした3層構造のシートを形成し、これを打ち抜いてろ材としてもよい。また、2層又は3層構造のシートを作成する際に凸凹状のローラーで押さえ付けることにより、表面を凸凹に仕上げると、より効果的である。
【0021】
なお、低融点ポリエステル繊維は、ポリエステル単独の繊維でもよいが、ポリエステルを心材とし、その周りにポリエチレン等を配したバインダー機能を有する複合ポリエステル繊維を用いることもできる。また、ポリエステル繊維に代えてポロプロピレン繊維を用いても、ポリエステル繊維の場合と同様の手法で良好なろ材を得ることができる。さらに、ポリエステル繊維とポリプロピレン繊維とを混合することも可能である。また、熱融着に限らず、十分な強度が得られれば、ニードルパンチ、ケミカルボンド、あるいはこれらの併用など、不織布製造において一般的に用いられている手法を採用することができる。
【0022】
前記ろ材圧縮手段22は、中央に内スクリーン13の挿通口23aを有し、筒体を横切る方向に配置される円盤状の押圧部材23と、該押圧部材23を筒体軸線方向に移動させる複数のシリンダー24とで形成されており、シリンダー24を作動させて密閉容器11の天板を気密、水密状態で貫通したロッド24aを伸縮させ、押圧部材23を移動させることによってろ材21の圧縮状態を変更できるようにしている。シリンダー24の本数は任意であり、1本又は2本でもよいが、3本以上を円周上に等間隔に配置して連動させることにより、押圧部材23でろ材21を均一に圧縮、弛緩することができる。なお、ろ材圧縮手段22は、前記押圧部材23に限らず、外スクリーン12と内スクリーン13との間にバルーンやベローズ等を配設し、これらの内部に圧縮空気を導入してこれらを膨張させることによってろ材を圧縮する構造も採用できる。
【0023】
ろ材21の圧縮率は、原水やろ材21の性状によって適当に設定することができるが、ろ材充填体積に対して10〜50%程度圧縮できるように形成することが好ましい、50%を超える圧縮率では、装置の大きさに対してろ過面積が小さくなりすぎるのでろ過効率が低下し、10%未満の圧縮率ではろ材を圧縮する効果を十分に得ることができない。
【0024】
さらに、密閉容器11の底部、外スクリーン12と内スクリーン13との間の底部及び内スクリーン13内の底部には、散気手段を構成する散気管25a,25b,25cがそれぞれ設けられている。各散気管25a,25b,25cには、空気供給経路26を介して圧縮空気供給用のブロワ27にそれぞれ接続されるとともに、空気供給経路26から分岐した洗浄経路28を介して洗浄剤供給部29に接続されている。
【0025】
なお、ろ材21の空洗だけを目的とする場合には、外スクリーン12と内スクリーン13との間の底部に散気管25bを設けるだけで十分である。また、密閉容器11の底部に散気管25aを設けることにより外スクリーン12の外周面に付着した固形物等を空洗によって除去することができる。さらに、内スクリーン13内の底部に散気管25cを設けることにより、通水孔13aの空洗を行うことができる。
【0026】
このように形成されたろ過装置10は、図5に示すようにしてろ過設備に組み込むことができ、図6に示す工程を繰り返すことによって連続的にろ過運転を行うことができる。なお、図5ではろ過装置10の細部の図示は省略している。
【0027】
まず、ろ過工程のステップ101では、処理水流出部16に接続する経路の弁16Vのみが開状態になるとともに原水ポンプ51が作動し、原水流入経路52から原水槽53に流入した原水が、原水ポンプ51から逆止弁14Vを通り、原水流入部14から密閉容器11の下部に所定圧力で流入する、このとき、円筒状の密閉容器11の下部に接線方向に原水を流入させて容器下部に旋回流を形成することにより、その遠心力で砂分や比重の大きな夾雑物を分離して槽底部に沈降させ、外スクリーン12やろ材21の負担を軽減することができる。
【0028】
密閉容器11内に流入した原水は、外スクリーン12を通過する際に大きな夾雑物が捕捉され、外スクリーン12と内スクリーン13との間に充填されたろ材21の層を通過することにより、原水中の細かい懸濁成分がろ材21に捕捉されてろ別される。このろ過工程では、ろ材圧縮手段22がろ材圧縮方向に作動してろ材21を充填体積に対して10〜50%の範囲で圧縮した状態としている。懸濁成分をろ別した処理水は、内スクリーン13を通過して上部の処理水流出部16に流出し、弁16Vを通って処理水槽54に一時貯留された後、経路55から系外に流出する。
【0029】
また、ろ過工程中には、前記付着物除去手段のモーター17を適宜作動させてスクレーパー18を外スクリーン12の外周面に摺接させ、外スクリーン12の外周面に捕捉された夾雑物を掻き落とす。このスクレーパー18は、捕捉される夾雑物の量に応じて連続的あるいは間欠的に作動させればよい。
【0030】
ろ過装置10の洗浄操作は、ステップ102の洗浄開始指令により、ステップ103のろ材膨張行程が行われ、原水ポンプ51が停止し、処理水流出部16の弁16Vが閉じるとともに、ろ材圧縮手段22がろ材膨張方向に作動してろ材21を充填体積にまで、より好ましくは、充填体積に加えて、その10〜30%程度の流動化スペースを見込んだ体積にまで膨張させる。ステップ102の洗浄開始指令は、タイマーによる設定の他、原水流入管の圧力上昇、原水流入部と処理水流出部との差圧上昇、処理水の濁度の上昇等を検知することにより、自動的に行うことができる。
【0031】
続いてステップ104の洗浄前水抜き工程によって洗浄排水流出部15の弁15Vが開き、密閉容器11内の水が沈殿物を伴って洗浄排水流出部15から洗浄排水槽56に排出される。さらに、ステップ105の空洗工程では、ブロワ27が運転を開始するとともに空気供給経路26の弁26Vが開き、散気手段25から密閉容器11内への散気による空洗が行われる。この水抜き工程や空洗工程の際には、必要に応じて密閉容器11の天板部に設けた吸排気経路31の弁31Vを開き、密閉容器11内の空気を吸排気する。
【0032】
続いてステップ106のドレン工程が始まり、吸排気経路31の弁31Vが開いている場合には、これを閉じると、空洗用のブロワ27から密閉容器11内に供給された空気によって密閉容器11内の圧力が高まり、密閉容器11内の水(洗浄排水)が空気の圧力によって洗浄排水流出部15から洗浄排水槽56に向けて強制的に排出される。このように、密閉容器11内に供給した空洗用空気の圧力によって密閉容器11内の洗浄排水を押し出すことにより、通常の重力による排水に比べて短時間で洗浄排水を密閉容器11内から排出することができる。これにより、洗浄工程の時間短縮を図れ、ろ過工程の時間を長くすることができ、ろ過装置におけるろ過効率を向上させることができる。
【0033】
さらに、洗浄排水槽56を密閉容器11と同レベルに配置したり、洗浄排水槽56を高位置に配置したりしても、密閉容器11内の洗浄排水を洗浄排水槽56に送り出せるので、密閉容器11と洗浄排水槽56との設置場所の制約が無くなり、洗浄排水槽56の有効水深も大きくとれるため、ろ過設備のコンパクト化等を図れる。
【0034】
次に、ステップ107の再水張工程に進み、洗浄排水流出部15の弁15Vが閉じられるとともに吸排気経路31の弁31Vが開き、原水槽53内の原水が原水ポンプ51によって原水流入部14から密閉容器11内に導入される。これと同時にブロワ27を運転して空洗を行ってもよい。
【0035】
前記ステップ105の空洗工程、ステップ106のドレン工程及びステップ107の再水張工程を、ステップ108のカウンターにより所定回数繰返して行った後、ステップ109の捨水工程が行われる。捨水工程は通常のろ過設備と同様に、処理水流出部16から分岐した捨水経路32に設けた弁32Vのみを開いた状態で原水ポンプ51を運転し、原水を密閉容器11内に供給してろ過工程と同様の操作を行い、捨水経路32から流出する捨水(ろ過水)の濁度が所定濁度以下になるまで行う。なお、捨水経路32は、密閉容器11と処理水流出部16の弁16Vとの間の任意の位置に設けることができ、この捨水経路32によって密閉容器11内の吸排気を行える場合には、吸排気経路31と兼用することができる。
【0036】
捨水工程が終了したらステップ110のろ材圧縮行程に進み、ろ材圧縮手段22をろ材圧縮方向に作動させてろ材21を所定量圧縮する。このろ材圧縮工程で圧縮されたろ材から絞り出される濁質によって上昇した濁度が所定濁度以下になるまでステップ111の再捨水工程を行い、この再捨水工程が終了したら、捨水用の弁32Vを閉じて処理水流出部16の弁16Vを開き、ステップ101のろ過工程に戻る。このような各工程を順次繰り返すことによって連続的にろ過処理を行うことができる。
【0037】
前述のように、ろ材圧縮手段22により、ろ過工程ではろ材を適当に圧縮することによって濁質をより確実に捕捉することができ、洗浄工程ではろ材の圧縮を解除して弛緩した状態にすることによって捕捉した濁質を排出し易い状態とすることができる。さらに、ろ材を弛緩させた状態で散気手段25から散気して空洗を行うことにより、強い撹拌力が得られ、ろ材を効果的に撹拌混合することができるので、ろ材の洗浄操作をより効率よく行うことができる。加えて、ろ材圧縮手段22でろ材を強く圧縮することにより、ろ材中に取り込まれた濁質を絞り出すこともできる。
【0038】
また、洗浄水ポンプ33を備えた逆洗経路34を設けておき、洗浄中の適当な時期に処理水を内スクリーン13内から外スクリーン12に向けて逆流させ、ろ材の逆洗を行うように設定することもできる。さらに、洗浄剤供給部29から洗浄経路28、空気供給経路26及び散気手段25を介して密閉容器11内に、水蒸気、滅菌剤、洗浄剤等を注入することにより、ろ材をより効率よく洗浄することができ、ろ材21に捕捉された細菌等を滅菌処理することもできる。
【0039】
これにより、通常の洗浄方法では洗浄が困難なろ材内部に蓄積する生物スライムや油分等を確実に洗浄することができる。水蒸気、滅菌剤、洗浄剤等を利用したろ材の薬液洗浄は頻繁に実施する必要はないが、3ヶ月から1年に1回程度実施すると効果的である。滅菌剤、洗浄剤としては、酸、アルカリ、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、界面活性剤等を用いることができる。また、原水によっては、クリプトスポリジウムやジアルジア等の病原性微生物をろ材が補足する場合があり、これらをそのまま排水することが好ましくない場合もあるが、密閉容器11や各スクリーン12,13に耐熱性、耐薬品性に優れた材質を用いることにより、高温の水蒸気の注入等によって効率的にこれらを滅菌処理することができる。
【0040】
図7及び図8は、本発明のろ過装置の第2形態例を示すもので、図7はろ過装置の縦断面図、図8はスクレーパーの平面図である。なお、以下の説明において、前記第1形態例で示したろ過装置における構成要素と同一の構成要素には、それぞれ同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
本形態例に示すろ過装置は、付着物除去手段として、密閉容器11と外スクリーン12との間に、シリンダー41等の駆動手段により駆動されて筒体軸線方向に直線運動するリング状のスクレーパー42を配置している。このスクレーパー42は、筒体軸線と平行な方向に設けられた棒状の保持部材43に適当な間隔で複数枚が保持されており、密閉容器11の外周面に沿うように配置したシリンダー41のロッド41aを連続又は間欠的に伸縮させることにより、連結部材43a及び保持部材43と共にスクレーパー42が上下方向に往復し、外スクリーン12の外周面に摺接して外スクリーン12の外周面に付着した固形物を掻き落す。掻き落とされた固形物は、スクレーパー42の外周と密閉容器11の内周面との間を通って容器底部に沈降落下する。
【0042】
前記シリンダー41は、ろ材圧縮手段22のシリンダー24と共用することも可能であり、ろ材を圧縮、弛緩する際の押圧部材23の上下動に連動させてスクレーパー42を上下動させるように形成し、前記ろ材膨張工程及びろ材圧縮工程において、外スクリーン12の外周面に付着した固形物を掻き落とすようにしてもよい。また、本形態例に示すように、駆動手段であるシリンダー41を密閉容器11の外周部分に配置することにより、さらに、前記ろ材圧縮手段22のシリンダー24も密閉容器11の外周部分に配置することにより、ろ過装置の高さを大幅に低くすることができる。
【0043】
なお、スクレーパーの駆動手段には、電動式、空気式、油圧式等の任意の駆動方式を採用でき、動力伝達機構も適宜な構造を採用でき、スクレーパーの作動方向に併せて任意の駆動手段を選択使用することができる。さらに、前述のようなリング状のスクレーパーにおいて、スクレーパーに浮き(ブイ)等を取り付けることにより、前記水抜き工程や再水張工程における密閉容器11内の水位の上下によってスクレーパーを上下動させ、外スクリーン12の外周面に付着した固形物を掻き落とすように形成することも可能である。
【0044】
図9及び図10は、本発明のろ過装置の第3形態例を示すもので、図9はろ過装置の縦断面図、図10は多孔板の平面図である。本形態例に示すろ過装置は、付着物除去手段として、密閉容器11と外スクリーン12との間に浮遊体45を充填するとともに、外スクリーン12の上下端に、浮遊体45の流出を防止するための多孔板46や網体を設けている。浮遊体45は、適度な大きさ及び比重を有するものであって、具体的には、比重0.9〜1.1程度、直径20〜100mmのボール状、円筒状、立方体等のプラスチック製浮遊体を使用することができる。この浮遊体45は、ろ過工程時の原水の流れや、洗浄工程中の水抜き工程や再水張工程時の洗浄水の流れ、空洗工程の気液の流れによって流動したり、振動したりすることにより、浮遊体45が外スクリーン12の外周面に衝突し、外スクリーン12の外周面に付着した固形物を掻き落とす。このような浮遊体45を用いることにより、機械的なスクレーパーを設ける場合に比べて装置構成の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のろ過装置の第1形態例を示す縦断面図である。
【図2】ろ過装置の横断面図である。
【図3】スクレーパーの平面図である。
【図4】ろ材の一例を示す斜視図である。
【図5】ろ過装置を設置したろ過設備の一例を示す概略系統図である。
【図6】ろ過設備における運転工程の一例を示す工程図である。
【図7】本発明のろ過装置の第2形態例を示す縦断面図である。
【図8】スクレーパーの平面図である。
【図9】本発明のろ過装置の第3形態例を示す縦断面図である。
【図10】多孔板の平面図である。
【符号の説明】
【0046】
10…ろ過装置、11…密閉容器、12…外スクリーン、12a…ウェッジワイヤースクリーン、12b…鏡板、13…内スクリーン、13a…通水孔、14…原水流入部、15…洗浄排水流出部、16…処理水流出部、17…モーター、18…スクレーパー、19…保持部材、21…ろ材、21a…疎なろ材、21b…密なろ材、22…ろ材圧縮手段、23…押圧部材、24…シリンダー、25…散気手段、25a,25b,25c…散気管、26…空気供給経路、27…ブロワ、28…洗浄経路、29…洗浄剤供給部、31…吸排気経路、32…捨水経路、33…洗浄水ポンプ、34…逆洗経路、41…シリンダー、42…スクレーパー、43…保持部材、45…浮遊体、46…多孔板、51…原水ポンプ、52…原水流入経路、53…原水槽、54…処理水槽、56…洗浄排水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、該密閉容器の内部に軸線を鉛直方向に向けて設けられた筒状の外スクリーンと、該外スクリーンの内部に設けられた内スクリーンと、前記外スクリーンと内スクリーンとの間に充填された圧縮変形可能なろ材と、該ろ材を圧縮するろ材圧縮手段と、前記外スクリーンの外周面に付着した固形物を掻き落すための付着物除去手段と、密閉容器の内部に設けられた散気手段と、密閉容器の下部に容器内壁に沿う方向に原水を流入させる原水流入部と、前記内スクリーン内の処理水を密閉容器の上部から流出させる処理水流出部と、密閉容器の下部から洗浄排水を流出させる洗浄排水流出部とを備えていることを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記付着物除去手段は、駆動手段により駆動されて回転運動又は直線運動することにより、前記外スクリーンの外周面に摺接するスクレーパーであることを特徴とする請求項1記載のろ過装置。
【請求項3】
前記付着物除去手段は、前記密閉容器と前記外スクリーンとの間に充填され、ろ過工程時の原水又は洗浄工程時の洗浄水の水流により、前記外スクリーンの外周面に摺接する浮遊体であることを特徴とする請求項1記載のろ過装置。
【請求項4】
前記ろ材圧縮手段は、複数のシリンダーによって前記外スクリーンと内スクリーンとの間を軸線方向に移動し、前記ろ材を充填体積に対して10〜50%の範囲で圧縮及び弛緩する円盤状部材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記散気手段は、少なくとも前記外スクリーンと前記内スクリーンとの間の底部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のろ過装置。
【請求項6】
前記散気手段は、前記洗浄排水流出部の経路を開いた状態で、該散気手段からの散気により密閉容器内の圧力を高めて密閉容器内の洗浄排水を排水可能に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のろ過装置。
【請求項7】
前記散気手段は、該散気手段に散気用空気を供給する経路に、水蒸気、滅菌剤又は洗浄剤を注入する経路が接続されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のろ過装置。
【請求項8】
前記ろ材は、繊維状又はスポンジ状のろ材であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のろ過装置。
【請求項9】
前記ろ材は、空隙が多く、加圧による変形量が大きなろ材と、空隙が少なく、加圧による変形量が小さなろ材とを組み合わせた構造を有していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−116411(P2006−116411A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306337(P2004−306337)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【出願人】(594079420)財団法人埼玉県下水道公社 (2)
【Fターム(参考)】