ろ過装置
【課題】内枠とのより確実な密着性や取付作業効率の向上、変形や割れの防止を図ったろ過装置を提供する。
【解決手段】ろ過装置は、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内枠1及び外枠と、これら内枠及び外枠に取付可能な内側ろ材1B及び外側ろ材と、内側ろ材と外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りとを備える。スパイラル状の仕切りは回転させないで状態で、内側ろ材及び/又は外側ろ材を軸心周りに回転させる。ろ過空間内に、被処理液を送入し、前記内側ろ材及び前記外側ろ材を通してろ過する。内枠には、内側ろ材を固定するための溝部1Cが形成され、内側ろ材は、内枠よりも若干内径を大きく形成した円筒状又は円錐状であり、内側ろ材の取付の際には、内側ろ材を溝部と押え部材54とで挟み込み、押え部材と溝部とを固定することによって内側ろ材が内枠に取付けられる構成とする。
【解決手段】ろ過装置は、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内枠1及び外枠と、これら内枠及び外枠に取付可能な内側ろ材1B及び外側ろ材と、内側ろ材と外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りとを備える。スパイラル状の仕切りは回転させないで状態で、内側ろ材及び/又は外側ろ材を軸心周りに回転させる。ろ過空間内に、被処理液を送入し、前記内側ろ材及び前記外側ろ材を通してろ過する。内枠には、内側ろ材を固定するための溝部1Cが形成され、内側ろ材は、内枠よりも若干内径を大きく形成した円筒状又は円錐状であり、内側ろ材の取付の際には、内側ろ材を溝部と押え部材54とで挟み込み、押え部材と溝部とを固定することによって内側ろ材が内枠に取付けられる構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製の網、多孔板等のろ材は、布(繊維)製のものに比べて、運転性、保守性、耐久性等の面で優れており、これを利用したものとしてスクリュープレスや回転加圧式脱水機等の加圧式ろ過装置がある。この装置は、歴史が古く、非常にシンプルな構造のものであるため、低動力・低騒音・低コストなどを特徴とし、固形分濃度の低い難脱水性の固液混合物に適用した場合にも優れた脱水性能が得られることから、下水汚泥脱水分野でも多く用いられている。(例えば、特許文献1,2参照)
しかしながら、円筒状の外側ろ材とその内部に挿入されたスクリューからなるスクリュープレスでは、被処理液が入口側から出口側に向かって低速で移送されて行くと同時に、スクリューの締付力によって発生する圧搾圧力で、連続的に脱水されるが、ろ液は外側ろ材のみより搾り出されるものであるため、外側ろ材の長さの短縮化を図るのが困難であり、設備を小型化し難かった。
一方、回転加圧式脱水機においては、脱水ろ過の処理量を向上させるにはディスクの径を大きくする、又は脱水機を複数配置する必要性があり、設備の大型化やコスト増の問題を抱えていた。
そこで、本発明者らは、このような問題点を鑑み、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内側ろ材及び外側ろ材と、これら内側ろ材と外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、を備え、ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、内側ろ材及び外側ろ材を通過したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、内側ろ材及び/又は外側ろ材は軸心周りに回転し、スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされたろ過装置を提案した(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開2001−212697号公報
【特許文献2】特開2001−113109号公報
【特許文献3】特願2005−176901号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の発明では、装置自体を小型化させ、脱水性能を向上させることができたが、ろ材が円筒状又は円錐状の内枠に取付けられるものである場合については、内枠とのより確実な密着性や取付作業効率の向上、変形や割れの防止等が求められていた。
そこで、本発明の主たる課題は、上記課題を解決するものであり、内枠とのより確実な密着性や取付作業効率の向上、変形や割れの防止を図ったろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内枠及び外枠と、これら内枠及び外枠に取付可能な内側ろ材及び外側ろ材と、前記内側ろ材と前記外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、を備え、前記ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、前記内側ろ材及び前記外側ろ材を通したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、前記内枠及び/又は外枠が軸心周りに回転することにより、前記内側ろ材及び/又は前記外側ろ材は軸心周りに回転し、かつ前記スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされ、前記内枠には、内側ろ材を固定するための溝部が外周部分に形成され、前記内側ろ材は、内枠に対応するように、内枠よりも若干内径を大きく形成した円筒状又は円錐状であり、前記内側ろ材の取付の際には、溝部に対応する押え部材を内側ろ材の外側から押し込むことにより、内側ろ材を溝部と押え部材とで挟み込み、押え部材と溝部とを固定することによって内側ろ材が内枠に取付けられる構成とされた、ことを特徴とするろ過装置ことを特徴とするろ過装置である。
【0005】
(作用効果)
内側ろ材及び外側ろ材の二面によってろ過濃縮がなされることによって、従来の外側ろ材のみでろ過を行なっていたスクリュープレスに比べて設備の小型化を図ることができる。また、内側ろ材及び/又は外側ろ材は軸心周りに回転し、スパイラル状の仕切りは回転しない構成とすることにより、ろ過空間に送入された被処理液は、仕切りに沿って螺旋状に装置内を移動しながら、まず内外側ろ材の二面によるろ過濃縮がなされ、次に圧搾脱水がなされるが、内外側ろ材のみならずリボンスクリューも全てを回転自在とした構成のスクリュープレスに比べて、本発明に係るろ過装置は、構造を簡素化でき、製造コストの低減及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
また、内枠には、内側ろ材を固定するための溝部が外周部分に形成され、内側ろ材は、内枠に対応するように、内枠よりも若干内径を大きく形成した円筒状又は円錐状であり、 内側ろ材の取付の際には、溝部に対応する押え部材を内側ろ材の外側から押し込むことにより、内側ろ材を溝部と押え部材とで挟み込み、押え部材と溝部とを固定することによって内側ろ材が内枠に取付けられる構成とすることにより、内枠との確実な密着性を得ることができ、内側ろ材と仕切りとの隙間を一定間隔に均一に保つことができる。また、内枠と内側ろ材との間の隙間が生ずる虞が少ないため被処理液やケーキの漏れを防止することができる。さらに、内側ろ材の内枠への取付が容易であり、取付時間の短縮を図ることができる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、前記内側ろ材は、両端部の溶接により円筒状又は円錐状に構成された、請求項1記載のろ過装置である。
【0007】
(作用効果)
ボルト等の締結手段により内枠に内側ろ材を固定する場合、溶接により円筒状又は円錐状に内側ろ材を構成することにより、一枚のシート状のろ材を溶接することなく円筒状又は円錐状に丸めた状態で内枠にボルト等により固定するよりも、ろ材に形成するボルト孔にかかる負担(応力)を軽減させることができる。そのため、使用中の変形や割れを防止することができる。また、内枠との確実な密着性を得ることができ、内側ろ材と仕切りとの隙間を一定間隔に均一に保つことができる。加えて、内枠と内側ろ材との間の隙間が生ずる虞が少ないため被処理液やケーキの漏れを防止することができる。さらに、内側ろ材の内枠への取付が容易であり、取付時間の短縮を図ることができる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
請求項3記載の発明は、前記押え部材における内側ろ材と当接する面が、断面円弧形状である、請求項1又は2記載のろ過装置である。
【0009】
(作用効果)
押え部材における内側ろ材と当接する面を断面円弧形状とすることにより、内側ろ材を溝部内方向に引き込む力に対し、内側ろ材に均等に応力を分散させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置の小型化を図ると共に、脱水性能を向上させることができる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図13に基づき説明する。
<本発明に係るろ過装置の構成>
本発明に係るろ過装置におけるケーシング7の内部には、図1及び図2に示されるように、モータ等の第1の回転駆動手段(図示せず)によって駆動力が伝達される内筒回転軸5に上板1Aが連結された回転自在な円筒状の内枠1と、この内枠1と同心円状に配設された回転自在な円筒状の外枠2と、内枠1及び外枠2に取付可能な内側ろ材1B及び外側ろ材2Bと、ケーシング7の上板7A及び底板7Bに両端部を固定され、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの間に形成されるろ過空間4に配置されたスパイラル状(リボンスクリュー状)の仕切り3と、が備えられている。なお、ケーシング7は、本実施の形態では円筒型であるが、これに限られることなく、多面体等の形状でもよい。また、内枠1のケーシング7への配設は、上記に限られず、公知の様々な方法で回転可能に取付けることができる。
【0012】
図1及び2に示すように、ケーシング7の底板7Bにおける、ろ過空間4を投影した部分には被処理液送入口10,11が形成されており、これら被処理液送入口10,11から被処理液が送入される。なお、被処理液は、ポンプ(図示せず)により圧送され、この圧力と共に、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bの回転による摩擦で、ケーシング7の底部から上部まで上昇するものである。なお、装置自体の軸心を横向きにし装置全体を横向きに配置する場合には、被処理液をポンプ圧送することなく、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bの回転による摩擦力のみで、装置内を移動させてもよい。また被処理液送入口は、本実施の形態では2箇所であるが、これに限定されるものではない。
【0013】
ろ材としての多孔板である内側ろ材1Bは、内枠1の外周側に張設されている。この内枠1は、内側ろ材1Bの形状等を保持する補強材として機能しており、その周面にはろ液を通過させるための複数の孔1a,1a,…が穿設されている。内側ろ材は、内枠1が軸心周りに回転することにより、軸心周りに回転するようになっている。内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの間に形成されたろ過空間4に送入された被処理液のうち、固液分離がなされたろ液の一部が内側ろ材1B内におけるケーシング7の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口12から排出されるようになっている。
【0014】
外枠2は、周状の上端部分においてケーシング7に配設された旋回輪(ベアリング)(図示せず)等によりケーシング7に対して回動可能に取付けられており、また、外枠2の上端部分は、図示はしないが、モータ等の第2の回転駆動手段(図示せず)によって駆動力が伝達される外側回転軸(図示せず)にピニオンギア(図示せず)等を介して連結され、外側ろ材2B自体が回転するようになっている。なお、内枠1についても、図示はしないが、外枠2と同様に、ケーシング7に配設された旋回輪(ベアリング)(図示せず)等によりケーシング7に対して回動可能に取付け、第1の回転駆動手段によって駆動力を伝達する構成とすることもできる。
【0015】
外側ろ材2Bは、内側ろ材1Bと同様に、多孔板であり、外枠2の内周側に張設されている。外側ろ材2Bは、外枠2が軸心周りに回転することにより、軸心周りに回転するようになっている。ろ過空間4に送入された被処理液のうち、固液分離がなされたろ液の一部がケーシング7と外側ろ材2Bとの間の部分の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口13から排出されるようになっている。
【0016】
ここで、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとは、同角速度(°/sec)で回転させた場合においても、それぞれの半径差分の周速度差(mm/sec)が生じるため、ケーキにせん断力が生じて脱水効率が向上される。例えば、繊維分の多い生汚泥や混合生汚泥が含まれる被処理液に対しては、このせん断力がより効果的であるため、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとに若干角速度差を付けて、回転させることで更に脱水効率を向上させる事が可能である。また、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの相対速度が大きい場合、速く回転するろ過面(例えば、内側ろ材1Bのろ過面)近傍のケーキは、もう一方のろ過面(例えば、外側ろ材2Bのろ過面)側へ移動する効果が現れ、ケーキ内での混合作用が生じることで、ろ過装置内での含水率分布を均一化することもできる。
【0017】
このように、内外側ろ材1B,2Bのろ過面の角速度差によりケーキにせん断力が加えられて脱水効率が改善されるが、この効果は対象ケーキの性状に依存するため、最適状態で運転する場合はケーキ性状に合わせて内外の角速度差を設定することが望ましい。このため、簡易的に角速度差を調整できるように、本実施の形態では、内外側ろ材1B,2Bにそれぞれ個別のモータ等の回転駆動手段を設けている。
一方、ケーキ性状によっては、せん断力を加えた場合、ケーキが流動化してしまい、逆に脱水性を損なう場合もあるので、このような場合には同角速度で回転させることが好ましい。また、せん断力による脱水効果があり、かつケーキ性状が年間を通してほとんど変化しないケーキについては、同角速度で回転させてもよく、これらのような対象ケーキに対しては、内外側ろ材1B,2Bを一つのモータにより同角速度で回転させるようにしてもよい。
なお、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bは、必ずしも両者を回転させる必要はなく、一方のみを回転させるようにしてもよい。
【0018】
内外側ろ材1B,2Bに用いられるろ材としては、前述のように、多孔板が使用されるが、この多孔板としては、例えば、スリットグリル、ダイヤスクリーン、ラスターメタル、丸穴、スリット、ヘリンボン、角孔等の固形物の脱水用、分離用、濃縮用及び分級用などに用いられる打ち抜き板も採用することができる。好適には、孔径をより小さくするためにレーザー加工により穴あけした板を採用することが望ましい。
【0019】
内側ろ材1Bの内枠1への取付には、いくつかの方法がある。
第1の方法は、図9及び図10に示すように、一枚のシート状の内側ろ材1Bの両端部を予めそれぞれ折曲し、内枠1の外周部分に形成された溝部1Cの一側面に内側ろ材1Bの折曲部の一方を当接させ、内枠1の溝部の他側面に内側ろ材1Bの折曲部の他方を当接し、それぞれの折曲部と溝部の側面とをボルト50,50等で固定するものである。
しかしながら、この方法では内枠1と密着させるためには内側ろ材1Bの両端部の折り曲げ位置が正確でなければ、溝部1Cと内枠1の外周部分との境で隙間が生じてしまう。そのため、内枠1と内側ろ材1Bとの隙間(誤差)分をライナー(図示せず)等により調整する必要があり、取付手間も含めて作業効率はよくはない。また、内枠1に内側ろ材1Bが密着していない場合、その隙間から被処理液やケーキが漏れたり、内側ろ材1Bの緩み部分にケーキの圧力による負荷(応力)が集中して、内側ろ材1Bが割れるなどの虞がある。
【0020】
第2の方法は、図11及び図12に示すように、一枚のシート状の内側ろ材1Bの両端部を予め、縦方向に延在する略くさび状の押え部材51にそれぞれボルト52,52等により固定して内側ろ材1Bを筒状にした状態で、溝部1Cに対応する押え部材51を内枠1の溝部1C内に押し込みながらボルト53等で固定するものである。なお、押え部材51と内側ろ材1Bの外周面との段差の解消については、押え部材51に付装部材(図示せず)をボルト等により取付け、押え部材51と仕切り3やスクレーパー16との間に生じる隙間を塞げばよい。
この第2の方法では、第1の方法よりも密着性が得られるものの、内側ろ材1Bを溝部1C内方向に引き込む力に対し、ボルト52,52を固着するための内側ろ材1Bのボルト孔に負荷が集中してしまい、孔が変形したり、使用中に割れが生じるなどの虞がある。
【0021】
そこで、本発明者らは、上記第1及び第2の方法の問題点を解消するために、取付が簡易かつ内枠1に密着して取付可能で、内側ろ材1Bの局所的な負荷集中を軽減した第3の方法を見出した。第3の方法は、内枠1よりも若干内径を大きく形成した円筒状の内側ろ材1Bを、図13に示すように、溝部1Cに対応する押え部材54で、内側ろ材1Bを溝部1Cと押え部材54とで挟み込むように、内枠1の溝部1C内に押し込みながら、ボルト55等で溝部1Cに固定するものである。
これにより、第2の方法に比べて、内側ろ材1Bのボルト孔への負荷の集中を避けることができ、使用中の変形や割れを防止することができる。また、内枠1との確実な密着性を得ることができ、被処理液やケーキの漏れを防止することができる。内側ろ材1Bの内枠1への取付が容易であり、取付時間の短縮を図ることができる。さらに、押え部材54を内側ろ材1Bのろ過面の軸方向の長さと略同じ長さとし、内側ろ材1Bを押え部材54の全長で押える構成とすることで、負荷(応力)を分散させることができ、使用中の変形や割れを防止することができる。
【0022】
内側ろ材1Bは、一枚のシート状のものを、両端部で溶接することで円筒状に製作することができる。また、押え部材54の内側ろ材1Bと当接する面(部分)を断面円弧状(さらに好適には半円形状)にして、内側ろ材1Bを溝部1C内方向に引き込む力に対し、内側ろ材1Bに均等に応力が掛かるようにすることが好適である。これにより、内側ろ材1Bの変形や割れをさらに低減させることができる。また、溶接により円筒状に製作した内側ろ材1Bを用いる場合、溶接部分を外した位置にボルト孔を形成することが好ましい。なお、押え部材54と内側ろ材1Bの外周面との段差の解消については、上記の第2の方法と同様に、押え部材54に付装部材(図示せず)をボルト等により取付けて、隙間を塞げばよい。
【0023】
また、図示はしないが、内側ろ材1B及び/又は外側ろ材2Bの多孔板としては、固形分濃度も低く流動性を持った被処理液が多いろ過空間4の下部には、ろ過濃縮を主とするため孔径(開口)の大きいものを用い、一方、含水率が低下したケーキが多いろ過空間4の上部には、圧密脱水を主とするため孔径の小さいものを用いて、全体としてろ過空間4の下部から上部に行くにしたがって、孔径が徐々に小さくなるような構成にすることもできる。すなわち、ろ過空間4の上部の孔径を小さくすると、ケーキ排出口側では高圧力が発生するため、ろ材からケーキ分を流出し難くして、SS回収率(%)を向上させる効果が生じるものである。
この変形例として、ろ過空間4の下部から上部すべて同一の孔径の孔を形成するが、ろ過空間4の下部から上部に行くにしたがって、開孔率が徐々に小さくなるような構成にすることもできる。
【0024】
図示はしないが、内側ろ材1B及び/又は外側ろ材2Bのろ材として、高摩擦処理を施したろ材を用いることができる。ケーキや被処理液は、回転するろ材との摩擦により、内外側ろ材1B,2Bの円周方向へ搬送が行われ、仕切り3と干渉することで、軸を中心に回転しつつ軸方向への移動し、最終的にケーキ排出口14から排出されるものであるため、ろ材に高摩擦処理を施すことによって搬送性を向上させることができる。なお、高摩擦処理とは摩擦抵抗(摩擦係数)の高い材質を用いること、凸凹等の表面処理をした摩擦抵抗の高い加工をすること、又はこのような加工が施された部材を表面に取付けることをいうものとする。この高摩擦処理としては、例えば、ダイヤスクリーンやスリットグリル等の表面に凹凸が形成された多孔板を考えることができる。表面の凹凸によりケーキや被処理液との接触面積が大きくなり、かつ摩擦抵抗が大きいことで搬送性が向上するものである。
【0025】
特に、含水率が低下したケーキが多いろ過空間4の上部部分に、少なくとも高摩擦処理を施したろ材を用いることにより、ろ材との摩擦力を高めてケーキを搬送しやすくすることができる。また、固形分濃度も低く流動性を持った被処理液が多いろ過空間4の下部に用いても、攪拌効率を向上させることができる。
【0026】
仕切り3は、図1及び図4に示されるように、スパイラル状(リボンスクリュー状)であり、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの間に形成された環状のろ過空間4に配設されている。この仕切り3は、ケーシング7の上板7Aと底板7Bとに固定されていることによって、仕切り3は軸芯周りに回転しない構成となっている。このことによって、内外側ろ材のみならずリボンスクリューも全てを回転自在とした構成のスクリュープレスに比べて、本発明に係るろ過装置は、構造を簡素化でき、製造コストの低減及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0027】
仕切り3の内周縁と外周縁は、それぞれ内側ろ材1B及び外側ろ材2Bのろ過面に近接または接触する構成となっている。この構成によって、内外側ろ材1,2のろ過面に固着したケーキを掻き取り易くし、ろ過濃縮の効率を維持することができると共に、被処理液送入口10,11から送入された被処理液を仕切り3に沿って螺旋状に上昇させることができる。なお、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近が、固液分離作用によるろ過濃縮が主となってくるため、仕切り3の内周縁と外周縁は少なくとも被処理液の送入口10,11側付近が内外側ろ材1B,2Bとそれぞれ近接又は接触する構成であればよい。
【0028】
また、図4に示すように、仕切り3の内周縁と外周縁にゴムなどにより形成されるスクレーパー16を取付けることにより、内側ろ材1B及び外側ろ材2Bは軸心周りに回転し、仕切り3は回転しない構成であることによって、ろ過面に捕捉されたケーキをこのスクレーパー16で掻き取ることができる。なお、前述したように、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近が、固液分離作用によるろ過濃縮が主となってくるため、少なくとも被処理液の送入口10,11側付近にスクレーパーが取付けられていればよい。
【0029】
仕切り3は、スパイラルピッチをろ過空間4内すべてにおいて均一にしてもよいが、排出されるケーキの含水率のムラ(分布)をなくし均一にするため、図1及び図4で示すように、スパイラル状の仕切り3をケーシング7の底板7B側から上板7A側に行くにしたがって、そのピッチが短くなるように構成することが好ましく、具体的には、ろ過空間4の上部部分で、スパイラルピッチを短くしケーキの排出経路を狭くし、圧搾効果を高めることが好ましい。他方、後述する図5乃至図8に示すように、ろ過空間4の上部において脱水効率を向上させるために内外側ろ材1,2の半径差を狭めた場合には、図示しないが、スパイラル状の仕切り3をケーシング7の底板7B側から上板7A側に行くにしたがって、そのピッチが長くなるように構成してもよい。
【0030】
また、図示はしないが、スパイラル状の仕切り3の一部にケーキが通過可能な孔を穿設し、ケーキの攪拌混合を促進することもできる。さらに、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近において、仕切り3の下部をケーシング7の底板7Bから離間して設け(スパイラル状の仕切り3の下部をカットし)てもよく、この場合には、仕切り3とケーシング7の底板7Bとの固定は、任意の支持部材(例えば、柱状部材等)を介して固定すればよい。
【0031】
スクレーパー16は、図1及び図4に示すように、ケーシング7の軸方向に、仕切り3の内周縁と外周縁とに沿って、ケーシング7の上板7Aと底板7Bとを両端部として取付けることが考えられる。このスクレーパー16は、図4には内周縁と外周縁とにそれぞれ1箇所取付けてあるが、複数箇所に取付けてもよい。また、この変形例として、固液分離が主となるろ過空間4の下部にのみ、スクレーパー16を取付けるようにしてもよい。この場合の取付け方として、図示はしないが、ケーシング7の底板7Bのみに設置してもよいし、ケーシング7の底板7Bと仕切り3とを連結するように設置してもよいし、軸方向に隣接する仕切り3の周縁相互を橋渡しして連結するように設置してもよい。また、スクレーパー16を軸方向に平行に取付けるのではなく、図示はしないが、仕切り3の内周縁及び外周縁に沿うように、それぞれの先端にスクレーパー16を取付けてもよい。
【0032】
スクレーパー自体の材質・構造は、前述したように、弾性力によりろ過面に押し付けることができるゴム、樹脂等を用いてもよいが、変形例として、図示はしないが、スクレーパーの先端にバネを取付けた刃を仕込み、バネ等により内側ろ材1B及び外側ろ材2Bの半径方向に刃の移動可能にする機能を有したもの等を用いることができる。
【0033】
以下に、内側ろ材1B、外側ろ材2B及び仕切り3との関係を説明する。後述するケーシング7の底板7Bに形成された被処理液送入口10,11から送入された被処理液は、固形分濃度も低く流動性を持った状態であり、ろ過空間4の下部では、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bにおける円筒状のろ材の目開きを介してろ過濃縮が生じる。ろ過空間4の下部では、固液分離作用によるろ過濃縮が重要な機能となるが、ろ過濃縮がある程度進行すると濃縮されたケーキがろ過面に固着し、ろ過効率が低下する。そこで、濃縮効率を維持するために、仕切り3にスクレーパー16を取付け、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bにおけるろ材の表面を高頻度でスクレーピングすることで、表面に固着したケーキを掻取っている。
【0034】
また、濃縮作用により流動性を失ったケーキは、ろ材との摩擦力が生じるため、回転するろ材により、内外側ろ材1,2の円周方向へ搬送が行われる。しかし、ろ過空間4にはスパイラル状(リボンスクリュー状)の仕切り3が配置されており、内外側ろ材1,2に沿って回転するするケーキが、この仕切り3と干渉することで、軸を中心に回転すると共に、軸方向への移動するようになる。この運動によりケーキはろ過濃縮をされながら、最終的に、ろ過空間4の上部に形成されたケーキ排出口14より排出されるものである。なお、後述するが、ケーキ排出口14には、ケーキの排出を抑制する背圧板15が取付けられており、排出量が強制的に抑制されることでケーキはろ過空間4内で圧密され、更に含水率を低下させることができる。
【0035】
実施の形態に係るろ過空間4は、上から下まで同一の横断面積を有する環状の内枠1及び外枠2を示しているが、ろ過空間4の下部は、処理量を確保するために大容量のろ室容積を持たせ、他方、ろ過空間4の上部において脱水効率を向上させるために内枠及び外枠1,2の半径差を狭めることが好適である。具体的には、図5に示すように、外枠の形状は同一のままで、被処理液送入口10,11側からケーキ排出口14側に向って、内枠1の半径方向を連続的に拡大して行く形状(略円錐形状)、又は図6に示すように階段状に拡大して行く形状(多段円筒形状)を提案できる。また、図7に示すように、内枠1の形状は同一のままで、被処理液送入口10,11側からケーキ排出口14側に向って、外枠2の半径方向を連続的に縮小して行く形状も提案できる。この場合、内側ろ材等を両端部の溶接などにより円錐状に形成すればよい。また、図8に示すように階段状に縮小して行く形状も提案することができる。
【0036】
内側洗浄管8は、図1及び図2に示されるように、内側ろ材1Bの内周面に沿って設けられており、また、複数の洗浄ノズル8A,8A,…が、内側ろ材1Bの内周面に対向するように内側洗浄管8に取付けられている。同様に、外側洗浄管9は、外側ろ材2Bの外周面に沿って設けられており、また、複数の洗浄ノズル9A,9A,…が、外側ろ材2Bの外周面に対向するように外側洗浄管9に取付けられている。そして、内側ろ材1B と外側ろ材2B を軸回りに回転させながら、これら複数の洗浄ノズル8A,8A,…;9A,9A,… から洗浄液を噴射して、目詰まりした内側ろ材1B と外側ろ材2Bのろ過面が洗浄されるものである。洗浄の際に噴射された洗浄液は洗浄排液として、ろ液と共に内側ろ材1B内におけるケーシング7の底板7B、ケーシング7と外側ろ材2Bとの間の部分の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口12,13から排出されるようになっている。
【0037】
ここで、内外側ろ材1B,2Bには、高圧の洗浄液が吹付けられ、洗浄されるが、洗浄液としてアルカリ性の薬品を吹付けて洗浄することが好ましい。また、内外側ろ材1B,2Bのろ過面に超音波発信機を設置し、ろ材自体を振動させ洗浄すると洗浄力が向上するのでより好適である。
【0038】
なお、内外側洗浄管8,9及び洗浄ノズル8A,9Aの設置位置としては上記に限られず、ろ過空間4内に設置し、仕切り3等に洗浄ノズル(図示せず)を取付けて、ろ過空間4内から洗浄液を噴射してもよい。また、内外側洗浄管8,9を複数箇所設置してもよい。
【0039】
図3に示すように、ケーシング7の上板7Aにおける、ろ過空間4を投影した部分には、ケーキ排出口14が形成されており、ここから、脱水されたケーキが排出される。このケーキ排出口14には、背圧板15が取付けられており、この背圧板15によって排出抵抗を生じさせ、排出される汚泥の量を調整することで、さらにケーキを圧搾し、含水率の低下と、体積縮減が図られるものである。
【0040】
<本発明に係るろ過方法>
本発明に係るろ過装置を用いてのろ過方法について、以下に説明する。
まず、被処理液送入口10,11へ被処理液をポンプ圧送し、ろ過空間4内に被処理液を送入する。ろ過空間4内に送入された被処理液は、仕切り3に沿って螺旋状に上昇しながら、内側ろ材1Bと外側ろ材2B とにより二面ろ過が行なわれる。内側ろ材1Bと外側ろ材2Bをそれぞれ、モータ等の第1及び第2の回転駆動手段(図示せず)によって回転させられる。この際、必要に応じて内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとをそれぞれ速度差をもって同一方向に回転させる。なお、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bは、必ずしも両者を回転させる必要はなく、一方のみを回転させるようにしてもよい。
被処理液は、ポンプ圧送の圧力と、回転の摩擦力で仕切り3に沿って上昇していくが、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの間のろ過空間4の下部で固液分離がなされ、その上部で圧搾脱水がなされ、最終的に、ケーキ排出口14が形成されており、ここから、脱水されたケーキが排出される。
内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとを回転させ、仕切り3を回転させないようにすることで、スクレーパー16がそれぞれのろ過面に蓄積されたケーキを掻き取る。
ろ過空間4内の上部には、固液分離がなされた後の含水率の高いケーキが上昇してくるが、このケーキは内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの回転摩擦、及び背圧板15による排出抵抗によって圧搾が促進されて、含水率が低減されると共に体積縮減がなされてケーキ排出口14から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るろ過装置の縦断面図である。
【図2】そのI−I断面図(横断面図)である。
【図3】その平面図である。
【図4】仕切りとスクレーパーとの関係を説明するための概略図である。
【図5】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図6】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図7】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図8】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図9】内側ろ材の内枠への第1の取付方法の概略を示す横断面図である。
【図10】その溝部分の拡大断面図である。
【図11】内側ろ材の内枠への第2の取付方法の概略を示す横断面図である。
【図12】その溝部分の拡大断面図である。
【図13】内側ろ材の内枠への第3の取付方法の概略を示す、溝部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…内枠、1A…上板、1B…内側ろ材、1C…溝部、1a…孔、2…外側ろ材、2B…外側ろ材、3…仕切り、4…ろ過空間、5…内筒回転軸、7…ケーシング、7A…上板、7B…底板、8…内側洗浄管、9…外側洗浄管、10…被処理液送入口、11…被処理液送入口、12…ろ液排出口、13…ろ液排出口、14…ケーキ排出口、15…背圧板、16…スクレーパー、50…ボルト、51…押え部材、52…ボルト、53…ボルト、54…押え部材、55…ボルト。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製の網、多孔板等のろ材は、布(繊維)製のものに比べて、運転性、保守性、耐久性等の面で優れており、これを利用したものとしてスクリュープレスや回転加圧式脱水機等の加圧式ろ過装置がある。この装置は、歴史が古く、非常にシンプルな構造のものであるため、低動力・低騒音・低コストなどを特徴とし、固形分濃度の低い難脱水性の固液混合物に適用した場合にも優れた脱水性能が得られることから、下水汚泥脱水分野でも多く用いられている。(例えば、特許文献1,2参照)
しかしながら、円筒状の外側ろ材とその内部に挿入されたスクリューからなるスクリュープレスでは、被処理液が入口側から出口側に向かって低速で移送されて行くと同時に、スクリューの締付力によって発生する圧搾圧力で、連続的に脱水されるが、ろ液は外側ろ材のみより搾り出されるものであるため、外側ろ材の長さの短縮化を図るのが困難であり、設備を小型化し難かった。
一方、回転加圧式脱水機においては、脱水ろ過の処理量を向上させるにはディスクの径を大きくする、又は脱水機を複数配置する必要性があり、設備の大型化やコスト増の問題を抱えていた。
そこで、本発明者らは、このような問題点を鑑み、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内側ろ材及び外側ろ材と、これら内側ろ材と外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、を備え、ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、内側ろ材及び外側ろ材を通過したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、内側ろ材及び/又は外側ろ材は軸心周りに回転し、スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされたろ過装置を提案した(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開2001−212697号公報
【特許文献2】特開2001−113109号公報
【特許文献3】特願2005−176901号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の発明では、装置自体を小型化させ、脱水性能を向上させることができたが、ろ材が円筒状又は円錐状の内枠に取付けられるものである場合については、内枠とのより確実な密着性や取付作業効率の向上、変形や割れの防止等が求められていた。
そこで、本発明の主たる課題は、上記課題を解決するものであり、内枠とのより確実な密着性や取付作業効率の向上、変形や割れの防止を図ったろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内枠及び外枠と、これら内枠及び外枠に取付可能な内側ろ材及び外側ろ材と、前記内側ろ材と前記外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、を備え、前記ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、前記内側ろ材及び前記外側ろ材を通したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、前記内枠及び/又は外枠が軸心周りに回転することにより、前記内側ろ材及び/又は前記外側ろ材は軸心周りに回転し、かつ前記スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされ、前記内枠には、内側ろ材を固定するための溝部が外周部分に形成され、前記内側ろ材は、内枠に対応するように、内枠よりも若干内径を大きく形成した円筒状又は円錐状であり、前記内側ろ材の取付の際には、溝部に対応する押え部材を内側ろ材の外側から押し込むことにより、内側ろ材を溝部と押え部材とで挟み込み、押え部材と溝部とを固定することによって内側ろ材が内枠に取付けられる構成とされた、ことを特徴とするろ過装置ことを特徴とするろ過装置である。
【0005】
(作用効果)
内側ろ材及び外側ろ材の二面によってろ過濃縮がなされることによって、従来の外側ろ材のみでろ過を行なっていたスクリュープレスに比べて設備の小型化を図ることができる。また、内側ろ材及び/又は外側ろ材は軸心周りに回転し、スパイラル状の仕切りは回転しない構成とすることにより、ろ過空間に送入された被処理液は、仕切りに沿って螺旋状に装置内を移動しながら、まず内外側ろ材の二面によるろ過濃縮がなされ、次に圧搾脱水がなされるが、内外側ろ材のみならずリボンスクリューも全てを回転自在とした構成のスクリュープレスに比べて、本発明に係るろ過装置は、構造を簡素化でき、製造コストの低減及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
また、内枠には、内側ろ材を固定するための溝部が外周部分に形成され、内側ろ材は、内枠に対応するように、内枠よりも若干内径を大きく形成した円筒状又は円錐状であり、 内側ろ材の取付の際には、溝部に対応する押え部材を内側ろ材の外側から押し込むことにより、内側ろ材を溝部と押え部材とで挟み込み、押え部材と溝部とを固定することによって内側ろ材が内枠に取付けられる構成とすることにより、内枠との確実な密着性を得ることができ、内側ろ材と仕切りとの隙間を一定間隔に均一に保つことができる。また、内枠と内側ろ材との間の隙間が生ずる虞が少ないため被処理液やケーキの漏れを防止することができる。さらに、内側ろ材の内枠への取付が容易であり、取付時間の短縮を図ることができる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、前記内側ろ材は、両端部の溶接により円筒状又は円錐状に構成された、請求項1記載のろ過装置である。
【0007】
(作用効果)
ボルト等の締結手段により内枠に内側ろ材を固定する場合、溶接により円筒状又は円錐状に内側ろ材を構成することにより、一枚のシート状のろ材を溶接することなく円筒状又は円錐状に丸めた状態で内枠にボルト等により固定するよりも、ろ材に形成するボルト孔にかかる負担(応力)を軽減させることができる。そのため、使用中の変形や割れを防止することができる。また、内枠との確実な密着性を得ることができ、内側ろ材と仕切りとの隙間を一定間隔に均一に保つことができる。加えて、内枠と内側ろ材との間の隙間が生ずる虞が少ないため被処理液やケーキの漏れを防止することができる。さらに、内側ろ材の内枠への取付が容易であり、取付時間の短縮を図ることができる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
請求項3記載の発明は、前記押え部材における内側ろ材と当接する面が、断面円弧形状である、請求項1又は2記載のろ過装置である。
【0009】
(作用効果)
押え部材における内側ろ材と当接する面を断面円弧形状とすることにより、内側ろ材を溝部内方向に引き込む力に対し、内側ろ材に均等に応力を分散させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置の小型化を図ると共に、脱水性能を向上させることができる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図13に基づき説明する。
<本発明に係るろ過装置の構成>
本発明に係るろ過装置におけるケーシング7の内部には、図1及び図2に示されるように、モータ等の第1の回転駆動手段(図示せず)によって駆動力が伝達される内筒回転軸5に上板1Aが連結された回転自在な円筒状の内枠1と、この内枠1と同心円状に配設された回転自在な円筒状の外枠2と、内枠1及び外枠2に取付可能な内側ろ材1B及び外側ろ材2Bと、ケーシング7の上板7A及び底板7Bに両端部を固定され、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの間に形成されるろ過空間4に配置されたスパイラル状(リボンスクリュー状)の仕切り3と、が備えられている。なお、ケーシング7は、本実施の形態では円筒型であるが、これに限られることなく、多面体等の形状でもよい。また、内枠1のケーシング7への配設は、上記に限られず、公知の様々な方法で回転可能に取付けることができる。
【0012】
図1及び2に示すように、ケーシング7の底板7Bにおける、ろ過空間4を投影した部分には被処理液送入口10,11が形成されており、これら被処理液送入口10,11から被処理液が送入される。なお、被処理液は、ポンプ(図示せず)により圧送され、この圧力と共に、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bの回転による摩擦で、ケーシング7の底部から上部まで上昇するものである。なお、装置自体の軸心を横向きにし装置全体を横向きに配置する場合には、被処理液をポンプ圧送することなく、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bの回転による摩擦力のみで、装置内を移動させてもよい。また被処理液送入口は、本実施の形態では2箇所であるが、これに限定されるものではない。
【0013】
ろ材としての多孔板である内側ろ材1Bは、内枠1の外周側に張設されている。この内枠1は、内側ろ材1Bの形状等を保持する補強材として機能しており、その周面にはろ液を通過させるための複数の孔1a,1a,…が穿設されている。内側ろ材は、内枠1が軸心周りに回転することにより、軸心周りに回転するようになっている。内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの間に形成されたろ過空間4に送入された被処理液のうち、固液分離がなされたろ液の一部が内側ろ材1B内におけるケーシング7の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口12から排出されるようになっている。
【0014】
外枠2は、周状の上端部分においてケーシング7に配設された旋回輪(ベアリング)(図示せず)等によりケーシング7に対して回動可能に取付けられており、また、外枠2の上端部分は、図示はしないが、モータ等の第2の回転駆動手段(図示せず)によって駆動力が伝達される外側回転軸(図示せず)にピニオンギア(図示せず)等を介して連結され、外側ろ材2B自体が回転するようになっている。なお、内枠1についても、図示はしないが、外枠2と同様に、ケーシング7に配設された旋回輪(ベアリング)(図示せず)等によりケーシング7に対して回動可能に取付け、第1の回転駆動手段によって駆動力を伝達する構成とすることもできる。
【0015】
外側ろ材2Bは、内側ろ材1Bと同様に、多孔板であり、外枠2の内周側に張設されている。外側ろ材2Bは、外枠2が軸心周りに回転することにより、軸心周りに回転するようになっている。ろ過空間4に送入された被処理液のうち、固液分離がなされたろ液の一部がケーシング7と外側ろ材2Bとの間の部分の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口13から排出されるようになっている。
【0016】
ここで、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとは、同角速度(°/sec)で回転させた場合においても、それぞれの半径差分の周速度差(mm/sec)が生じるため、ケーキにせん断力が生じて脱水効率が向上される。例えば、繊維分の多い生汚泥や混合生汚泥が含まれる被処理液に対しては、このせん断力がより効果的であるため、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとに若干角速度差を付けて、回転させることで更に脱水効率を向上させる事が可能である。また、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの相対速度が大きい場合、速く回転するろ過面(例えば、内側ろ材1Bのろ過面)近傍のケーキは、もう一方のろ過面(例えば、外側ろ材2Bのろ過面)側へ移動する効果が現れ、ケーキ内での混合作用が生じることで、ろ過装置内での含水率分布を均一化することもできる。
【0017】
このように、内外側ろ材1B,2Bのろ過面の角速度差によりケーキにせん断力が加えられて脱水効率が改善されるが、この効果は対象ケーキの性状に依存するため、最適状態で運転する場合はケーキ性状に合わせて内外の角速度差を設定することが望ましい。このため、簡易的に角速度差を調整できるように、本実施の形態では、内外側ろ材1B,2Bにそれぞれ個別のモータ等の回転駆動手段を設けている。
一方、ケーキ性状によっては、せん断力を加えた場合、ケーキが流動化してしまい、逆に脱水性を損なう場合もあるので、このような場合には同角速度で回転させることが好ましい。また、せん断力による脱水効果があり、かつケーキ性状が年間を通してほとんど変化しないケーキについては、同角速度で回転させてもよく、これらのような対象ケーキに対しては、内外側ろ材1B,2Bを一つのモータにより同角速度で回転させるようにしてもよい。
なお、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bは、必ずしも両者を回転させる必要はなく、一方のみを回転させるようにしてもよい。
【0018】
内外側ろ材1B,2Bに用いられるろ材としては、前述のように、多孔板が使用されるが、この多孔板としては、例えば、スリットグリル、ダイヤスクリーン、ラスターメタル、丸穴、スリット、ヘリンボン、角孔等の固形物の脱水用、分離用、濃縮用及び分級用などに用いられる打ち抜き板も採用することができる。好適には、孔径をより小さくするためにレーザー加工により穴あけした板を採用することが望ましい。
【0019】
内側ろ材1Bの内枠1への取付には、いくつかの方法がある。
第1の方法は、図9及び図10に示すように、一枚のシート状の内側ろ材1Bの両端部を予めそれぞれ折曲し、内枠1の外周部分に形成された溝部1Cの一側面に内側ろ材1Bの折曲部の一方を当接させ、内枠1の溝部の他側面に内側ろ材1Bの折曲部の他方を当接し、それぞれの折曲部と溝部の側面とをボルト50,50等で固定するものである。
しかしながら、この方法では内枠1と密着させるためには内側ろ材1Bの両端部の折り曲げ位置が正確でなければ、溝部1Cと内枠1の外周部分との境で隙間が生じてしまう。そのため、内枠1と内側ろ材1Bとの隙間(誤差)分をライナー(図示せず)等により調整する必要があり、取付手間も含めて作業効率はよくはない。また、内枠1に内側ろ材1Bが密着していない場合、その隙間から被処理液やケーキが漏れたり、内側ろ材1Bの緩み部分にケーキの圧力による負荷(応力)が集中して、内側ろ材1Bが割れるなどの虞がある。
【0020】
第2の方法は、図11及び図12に示すように、一枚のシート状の内側ろ材1Bの両端部を予め、縦方向に延在する略くさび状の押え部材51にそれぞれボルト52,52等により固定して内側ろ材1Bを筒状にした状態で、溝部1Cに対応する押え部材51を内枠1の溝部1C内に押し込みながらボルト53等で固定するものである。なお、押え部材51と内側ろ材1Bの外周面との段差の解消については、押え部材51に付装部材(図示せず)をボルト等により取付け、押え部材51と仕切り3やスクレーパー16との間に生じる隙間を塞げばよい。
この第2の方法では、第1の方法よりも密着性が得られるものの、内側ろ材1Bを溝部1C内方向に引き込む力に対し、ボルト52,52を固着するための内側ろ材1Bのボルト孔に負荷が集中してしまい、孔が変形したり、使用中に割れが生じるなどの虞がある。
【0021】
そこで、本発明者らは、上記第1及び第2の方法の問題点を解消するために、取付が簡易かつ内枠1に密着して取付可能で、内側ろ材1Bの局所的な負荷集中を軽減した第3の方法を見出した。第3の方法は、内枠1よりも若干内径を大きく形成した円筒状の内側ろ材1Bを、図13に示すように、溝部1Cに対応する押え部材54で、内側ろ材1Bを溝部1Cと押え部材54とで挟み込むように、内枠1の溝部1C内に押し込みながら、ボルト55等で溝部1Cに固定するものである。
これにより、第2の方法に比べて、内側ろ材1Bのボルト孔への負荷の集中を避けることができ、使用中の変形や割れを防止することができる。また、内枠1との確実な密着性を得ることができ、被処理液やケーキの漏れを防止することができる。内側ろ材1Bの内枠1への取付が容易であり、取付時間の短縮を図ることができる。さらに、押え部材54を内側ろ材1Bのろ過面の軸方向の長さと略同じ長さとし、内側ろ材1Bを押え部材54の全長で押える構成とすることで、負荷(応力)を分散させることができ、使用中の変形や割れを防止することができる。
【0022】
内側ろ材1Bは、一枚のシート状のものを、両端部で溶接することで円筒状に製作することができる。また、押え部材54の内側ろ材1Bと当接する面(部分)を断面円弧状(さらに好適には半円形状)にして、内側ろ材1Bを溝部1C内方向に引き込む力に対し、内側ろ材1Bに均等に応力が掛かるようにすることが好適である。これにより、内側ろ材1Bの変形や割れをさらに低減させることができる。また、溶接により円筒状に製作した内側ろ材1Bを用いる場合、溶接部分を外した位置にボルト孔を形成することが好ましい。なお、押え部材54と内側ろ材1Bの外周面との段差の解消については、上記の第2の方法と同様に、押え部材54に付装部材(図示せず)をボルト等により取付けて、隙間を塞げばよい。
【0023】
また、図示はしないが、内側ろ材1B及び/又は外側ろ材2Bの多孔板としては、固形分濃度も低く流動性を持った被処理液が多いろ過空間4の下部には、ろ過濃縮を主とするため孔径(開口)の大きいものを用い、一方、含水率が低下したケーキが多いろ過空間4の上部には、圧密脱水を主とするため孔径の小さいものを用いて、全体としてろ過空間4の下部から上部に行くにしたがって、孔径が徐々に小さくなるような構成にすることもできる。すなわち、ろ過空間4の上部の孔径を小さくすると、ケーキ排出口側では高圧力が発生するため、ろ材からケーキ分を流出し難くして、SS回収率(%)を向上させる効果が生じるものである。
この変形例として、ろ過空間4の下部から上部すべて同一の孔径の孔を形成するが、ろ過空間4の下部から上部に行くにしたがって、開孔率が徐々に小さくなるような構成にすることもできる。
【0024】
図示はしないが、内側ろ材1B及び/又は外側ろ材2Bのろ材として、高摩擦処理を施したろ材を用いることができる。ケーキや被処理液は、回転するろ材との摩擦により、内外側ろ材1B,2Bの円周方向へ搬送が行われ、仕切り3と干渉することで、軸を中心に回転しつつ軸方向への移動し、最終的にケーキ排出口14から排出されるものであるため、ろ材に高摩擦処理を施すことによって搬送性を向上させることができる。なお、高摩擦処理とは摩擦抵抗(摩擦係数)の高い材質を用いること、凸凹等の表面処理をした摩擦抵抗の高い加工をすること、又はこのような加工が施された部材を表面に取付けることをいうものとする。この高摩擦処理としては、例えば、ダイヤスクリーンやスリットグリル等の表面に凹凸が形成された多孔板を考えることができる。表面の凹凸によりケーキや被処理液との接触面積が大きくなり、かつ摩擦抵抗が大きいことで搬送性が向上するものである。
【0025】
特に、含水率が低下したケーキが多いろ過空間4の上部部分に、少なくとも高摩擦処理を施したろ材を用いることにより、ろ材との摩擦力を高めてケーキを搬送しやすくすることができる。また、固形分濃度も低く流動性を持った被処理液が多いろ過空間4の下部に用いても、攪拌効率を向上させることができる。
【0026】
仕切り3は、図1及び図4に示されるように、スパイラル状(リボンスクリュー状)であり、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの間に形成された環状のろ過空間4に配設されている。この仕切り3は、ケーシング7の上板7Aと底板7Bとに固定されていることによって、仕切り3は軸芯周りに回転しない構成となっている。このことによって、内外側ろ材のみならずリボンスクリューも全てを回転自在とした構成のスクリュープレスに比べて、本発明に係るろ過装置は、構造を簡素化でき、製造コストの低減及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0027】
仕切り3の内周縁と外周縁は、それぞれ内側ろ材1B及び外側ろ材2Bのろ過面に近接または接触する構成となっている。この構成によって、内外側ろ材1,2のろ過面に固着したケーキを掻き取り易くし、ろ過濃縮の効率を維持することができると共に、被処理液送入口10,11から送入された被処理液を仕切り3に沿って螺旋状に上昇させることができる。なお、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近が、固液分離作用によるろ過濃縮が主となってくるため、仕切り3の内周縁と外周縁は少なくとも被処理液の送入口10,11側付近が内外側ろ材1B,2Bとそれぞれ近接又は接触する構成であればよい。
【0028】
また、図4に示すように、仕切り3の内周縁と外周縁にゴムなどにより形成されるスクレーパー16を取付けることにより、内側ろ材1B及び外側ろ材2Bは軸心周りに回転し、仕切り3は回転しない構成であることによって、ろ過面に捕捉されたケーキをこのスクレーパー16で掻き取ることができる。なお、前述したように、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近が、固液分離作用によるろ過濃縮が主となってくるため、少なくとも被処理液の送入口10,11側付近にスクレーパーが取付けられていればよい。
【0029】
仕切り3は、スパイラルピッチをろ過空間4内すべてにおいて均一にしてもよいが、排出されるケーキの含水率のムラ(分布)をなくし均一にするため、図1及び図4で示すように、スパイラル状の仕切り3をケーシング7の底板7B側から上板7A側に行くにしたがって、そのピッチが短くなるように構成することが好ましく、具体的には、ろ過空間4の上部部分で、スパイラルピッチを短くしケーキの排出経路を狭くし、圧搾効果を高めることが好ましい。他方、後述する図5乃至図8に示すように、ろ過空間4の上部において脱水効率を向上させるために内外側ろ材1,2の半径差を狭めた場合には、図示しないが、スパイラル状の仕切り3をケーシング7の底板7B側から上板7A側に行くにしたがって、そのピッチが長くなるように構成してもよい。
【0030】
また、図示はしないが、スパイラル状の仕切り3の一部にケーキが通過可能な孔を穿設し、ケーキの攪拌混合を促進することもできる。さらに、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近において、仕切り3の下部をケーシング7の底板7Bから離間して設け(スパイラル状の仕切り3の下部をカットし)てもよく、この場合には、仕切り3とケーシング7の底板7Bとの固定は、任意の支持部材(例えば、柱状部材等)を介して固定すればよい。
【0031】
スクレーパー16は、図1及び図4に示すように、ケーシング7の軸方向に、仕切り3の内周縁と外周縁とに沿って、ケーシング7の上板7Aと底板7Bとを両端部として取付けることが考えられる。このスクレーパー16は、図4には内周縁と外周縁とにそれぞれ1箇所取付けてあるが、複数箇所に取付けてもよい。また、この変形例として、固液分離が主となるろ過空間4の下部にのみ、スクレーパー16を取付けるようにしてもよい。この場合の取付け方として、図示はしないが、ケーシング7の底板7Bのみに設置してもよいし、ケーシング7の底板7Bと仕切り3とを連結するように設置してもよいし、軸方向に隣接する仕切り3の周縁相互を橋渡しして連結するように設置してもよい。また、スクレーパー16を軸方向に平行に取付けるのではなく、図示はしないが、仕切り3の内周縁及び外周縁に沿うように、それぞれの先端にスクレーパー16を取付けてもよい。
【0032】
スクレーパー自体の材質・構造は、前述したように、弾性力によりろ過面に押し付けることができるゴム、樹脂等を用いてもよいが、変形例として、図示はしないが、スクレーパーの先端にバネを取付けた刃を仕込み、バネ等により内側ろ材1B及び外側ろ材2Bの半径方向に刃の移動可能にする機能を有したもの等を用いることができる。
【0033】
以下に、内側ろ材1B、外側ろ材2B及び仕切り3との関係を説明する。後述するケーシング7の底板7Bに形成された被処理液送入口10,11から送入された被処理液は、固形分濃度も低く流動性を持った状態であり、ろ過空間4の下部では、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bにおける円筒状のろ材の目開きを介してろ過濃縮が生じる。ろ過空間4の下部では、固液分離作用によるろ過濃縮が重要な機能となるが、ろ過濃縮がある程度進行すると濃縮されたケーキがろ過面に固着し、ろ過効率が低下する。そこで、濃縮効率を維持するために、仕切り3にスクレーパー16を取付け、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bにおけるろ材の表面を高頻度でスクレーピングすることで、表面に固着したケーキを掻取っている。
【0034】
また、濃縮作用により流動性を失ったケーキは、ろ材との摩擦力が生じるため、回転するろ材により、内外側ろ材1,2の円周方向へ搬送が行われる。しかし、ろ過空間4にはスパイラル状(リボンスクリュー状)の仕切り3が配置されており、内外側ろ材1,2に沿って回転するするケーキが、この仕切り3と干渉することで、軸を中心に回転すると共に、軸方向への移動するようになる。この運動によりケーキはろ過濃縮をされながら、最終的に、ろ過空間4の上部に形成されたケーキ排出口14より排出されるものである。なお、後述するが、ケーキ排出口14には、ケーキの排出を抑制する背圧板15が取付けられており、排出量が強制的に抑制されることでケーキはろ過空間4内で圧密され、更に含水率を低下させることができる。
【0035】
実施の形態に係るろ過空間4は、上から下まで同一の横断面積を有する環状の内枠1及び外枠2を示しているが、ろ過空間4の下部は、処理量を確保するために大容量のろ室容積を持たせ、他方、ろ過空間4の上部において脱水効率を向上させるために内枠及び外枠1,2の半径差を狭めることが好適である。具体的には、図5に示すように、外枠の形状は同一のままで、被処理液送入口10,11側からケーキ排出口14側に向って、内枠1の半径方向を連続的に拡大して行く形状(略円錐形状)、又は図6に示すように階段状に拡大して行く形状(多段円筒形状)を提案できる。また、図7に示すように、内枠1の形状は同一のままで、被処理液送入口10,11側からケーキ排出口14側に向って、外枠2の半径方向を連続的に縮小して行く形状も提案できる。この場合、内側ろ材等を両端部の溶接などにより円錐状に形成すればよい。また、図8に示すように階段状に縮小して行く形状も提案することができる。
【0036】
内側洗浄管8は、図1及び図2に示されるように、内側ろ材1Bの内周面に沿って設けられており、また、複数の洗浄ノズル8A,8A,…が、内側ろ材1Bの内周面に対向するように内側洗浄管8に取付けられている。同様に、外側洗浄管9は、外側ろ材2Bの外周面に沿って設けられており、また、複数の洗浄ノズル9A,9A,…が、外側ろ材2Bの外周面に対向するように外側洗浄管9に取付けられている。そして、内側ろ材1B と外側ろ材2B を軸回りに回転させながら、これら複数の洗浄ノズル8A,8A,…;9A,9A,… から洗浄液を噴射して、目詰まりした内側ろ材1B と外側ろ材2Bのろ過面が洗浄されるものである。洗浄の際に噴射された洗浄液は洗浄排液として、ろ液と共に内側ろ材1B内におけるケーシング7の底板7B、ケーシング7と外側ろ材2Bとの間の部分の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口12,13から排出されるようになっている。
【0037】
ここで、内外側ろ材1B,2Bには、高圧の洗浄液が吹付けられ、洗浄されるが、洗浄液としてアルカリ性の薬品を吹付けて洗浄することが好ましい。また、内外側ろ材1B,2Bのろ過面に超音波発信機を設置し、ろ材自体を振動させ洗浄すると洗浄力が向上するのでより好適である。
【0038】
なお、内外側洗浄管8,9及び洗浄ノズル8A,9Aの設置位置としては上記に限られず、ろ過空間4内に設置し、仕切り3等に洗浄ノズル(図示せず)を取付けて、ろ過空間4内から洗浄液を噴射してもよい。また、内外側洗浄管8,9を複数箇所設置してもよい。
【0039】
図3に示すように、ケーシング7の上板7Aにおける、ろ過空間4を投影した部分には、ケーキ排出口14が形成されており、ここから、脱水されたケーキが排出される。このケーキ排出口14には、背圧板15が取付けられており、この背圧板15によって排出抵抗を生じさせ、排出される汚泥の量を調整することで、さらにケーキを圧搾し、含水率の低下と、体積縮減が図られるものである。
【0040】
<本発明に係るろ過方法>
本発明に係るろ過装置を用いてのろ過方法について、以下に説明する。
まず、被処理液送入口10,11へ被処理液をポンプ圧送し、ろ過空間4内に被処理液を送入する。ろ過空間4内に送入された被処理液は、仕切り3に沿って螺旋状に上昇しながら、内側ろ材1Bと外側ろ材2B とにより二面ろ過が行なわれる。内側ろ材1Bと外側ろ材2Bをそれぞれ、モータ等の第1及び第2の回転駆動手段(図示せず)によって回転させられる。この際、必要に応じて内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとをそれぞれ速度差をもって同一方向に回転させる。なお、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bは、必ずしも両者を回転させる必要はなく、一方のみを回転させるようにしてもよい。
被処理液は、ポンプ圧送の圧力と、回転の摩擦力で仕切り3に沿って上昇していくが、内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの間のろ過空間4の下部で固液分離がなされ、その上部で圧搾脱水がなされ、最終的に、ケーキ排出口14が形成されており、ここから、脱水されたケーキが排出される。
内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとを回転させ、仕切り3を回転させないようにすることで、スクレーパー16がそれぞれのろ過面に蓄積されたケーキを掻き取る。
ろ過空間4内の上部には、固液分離がなされた後の含水率の高いケーキが上昇してくるが、このケーキは内側ろ材1Bと外側ろ材2Bとの回転摩擦、及び背圧板15による排出抵抗によって圧搾が促進されて、含水率が低減されると共に体積縮減がなされてケーキ排出口14から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るろ過装置の縦断面図である。
【図2】そのI−I断面図(横断面図)である。
【図3】その平面図である。
【図4】仕切りとスクレーパーとの関係を説明するための概略図である。
【図5】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図6】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図7】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図8】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図9】内側ろ材の内枠への第1の取付方法の概略を示す横断面図である。
【図10】その溝部分の拡大断面図である。
【図11】内側ろ材の内枠への第2の取付方法の概略を示す横断面図である。
【図12】その溝部分の拡大断面図である。
【図13】内側ろ材の内枠への第3の取付方法の概略を示す、溝部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…内枠、1A…上板、1B…内側ろ材、1C…溝部、1a…孔、2…外側ろ材、2B…外側ろ材、3…仕切り、4…ろ過空間、5…内筒回転軸、7…ケーシング、7A…上板、7B…底板、8…内側洗浄管、9…外側洗浄管、10…被処理液送入口、11…被処理液送入口、12…ろ液排出口、13…ろ液排出口、14…ケーキ排出口、15…背圧板、16…スクレーパー、50…ボルト、51…押え部材、52…ボルト、53…ボルト、54…押え部材、55…ボルト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内枠及び外枠と、
これら内枠及び外枠に取付可能な内側ろ材及び外側ろ材と、
前記内側ろ材と前記外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、を備え、
前記ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、前記内側ろ材及び前記外側ろ材を通したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、
前記内枠及び/又は外枠が軸心周りに回転することにより、前記内側ろ材及び/又は前記外側ろ材は軸心周りに回転し、
かつ前記スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされ、
前記内枠には、内側ろ材を固定するための溝部が外周部分に形成され、
前記内側ろ材は、内枠に対応するように、内枠よりも若干内径を大きく形成した円筒状又は円錐状であり、
前記内側ろ材の取付の際には、溝部に対応する押え部材を内側ろ材の外側から押し込むことにより、内側ろ材を溝部と押え部材とで挟み込み、
押え部材と溝部とを固定することによって内側ろ材が内枠に取付けられる構成とされた、
ことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記内側ろ材は、両端部の溶接により円筒状又は円錐状に構成された、請求項1記載のろ過装置。
【請求項3】
前記押え部材における内側ろ材と当接する面が、断面円弧形状である、請求項1又は2記載のろ過装置。
【請求項1】
同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内枠及び外枠と、
これら内枠及び外枠に取付可能な内側ろ材及び外側ろ材と、
前記内側ろ材と前記外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、を備え、
前記ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、前記内側ろ材及び前記外側ろ材を通したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、
前記内枠及び/又は外枠が軸心周りに回転することにより、前記内側ろ材及び/又は前記外側ろ材は軸心周りに回転し、
かつ前記スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされ、
前記内枠には、内側ろ材を固定するための溝部が外周部分に形成され、
前記内側ろ材は、内枠に対応するように、内枠よりも若干内径を大きく形成した円筒状又は円錐状であり、
前記内側ろ材の取付の際には、溝部に対応する押え部材を内側ろ材の外側から押し込むことにより、内側ろ材を溝部と押え部材とで挟み込み、
押え部材と溝部とを固定することによって内側ろ材が内枠に取付けられる構成とされた、
ことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記内側ろ材は、両端部の溶接により円筒状又は円錐状に構成された、請求項1記載のろ過装置。
【請求項3】
前記押え部材における内側ろ材と当接する面が、断面円弧形状である、請求項1又は2記載のろ過装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−68170(P2008−68170A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247378(P2006−247378)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】
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