説明

アキシャルピストン油圧マシン

【課題】
スワッシュプレートのモーメントの変動を最小又は低減するアキシャルピストン油圧マシンを提供する。
【解決手段】
アキシャルピストン油圧マシン10は、往復ピストン18を収容するシリンダブロック16を内蔵するハウジング12を備え、ピストン18は、スワッシュプレート30の第1端32に回転可能に連結されている。スワッシュプレート30の第2端34に、支持ボール36、38が受容され、ハウジング12と係合する。支持ボール36、38は、複数のピストン18とラジアル配置され、シャフト48の回転軸50とピストン18の軸間のラジアル距離を、シャフト48の回転軸50と支持ボール36、38の中心点40、42間のラジアル距離より十分に小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルピストン油圧マシンに関し、特に、ボール支持されたスワッシュプレートを有するアキシャルピストン油圧マシンに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機器のトラック駆動用の多くの既存のモータ/ギアボックス組み合わせは、スワッシュプレートを有するアキシャルピストン油圧マシンを利用している。スワッシュプレートは、支持ハウジング内のその背面のボールソケットに配置された2個のボール上で旋回する。このデザインでは、支持ボールを、スワッシュプレートのピストン走行面の背後に直接配置している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、スワッシュプレートの旋回軸は、ピストン/スリッパボールジョイントの中心を通る面から、大幅に離れた後方にある。スワッシュプレートの旋回軸が、ピストン/スリッパボールジョイントの中心を通る面の近傍にないため、スワッシュプレートのモーメントは、大幅に変化することとなり、スワッシュプレートの位置制御は困難になる。特に、圧力及び速度の変化により、中間位置において、スワッシュプレートのモーメントに大幅な変化が生じる。同様に、ポンピングとモータモード間の変化は、スワッシュプレートに顕著なモーメントを生じさせる。
【0004】
本発明は、従来技術の有する上記の課題に鑑みなされたもので、その主たる目的は、スワッシュプレートの制御を強化しうるアキシャルピストンポンプを提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、スワッシュプレートのモーメントの変化を最小にするアキシャルピストン油圧マシンを提供することである。
【0006】
本発明の更に他の目的は、モータ又はギアボックスパッケージの軸長を短縮したアキシャルピストン油圧マシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術の課題を解消又は軽減し、かつ上述した目的を達成するために、本発明のアキシャルピストン油圧マシンは、次の如き特徴的な構成を採用している。
【0008】
本発明によるアキシャルピストン油圧マシン(以下、単に油圧マシンという場合もある)は、複数の往復ピストンを内蔵するシリンダブロックを包囲するハウジングを有する。この油圧マシンは、複数の往復ピストンに回転可能に連結されたスワッシュプレートを有し、このスワッシュプレート及びシリンダブロックを通して、ハウジング内に配置されたシャフトを有し、このシャフトの周りで、シリンダブロックを回転させる。第1及び第2支持ボールが、複数の往復ピストンからラジアル的に配置され、スワッシュプレート及びハウジングにより受容されている。
【0009】
特に、各支持ボールは中心点を有し、第1及び第2支持ボールの中心点を通る旋回軸は、ピストン/スリッパボールジョイントの面内に位置されている。
【発明の効果】
【0010】
上述の如き構成を有する本発明のアキシャルピストン油圧マシンは、次のような特有の効果を奏する。第1及び第2支持ボールが隣接ラジアル位置又はピストン/スリッパボールジョイント近傍に配置されているので、ボール旋回軸が、ボール連結面にあるか、又は接近し、スワッシュプレートのモーメント変動を、最小又は大幅に軽減することが可能である。更に、アキシャルピストン油圧マシンの軸長を短縮することができ、スワッシュプレートの制御を、良好に行いうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明によるアキシャルピストン油圧マシンの好適な実施の形態の構成及び動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1〜図3は、本発明によるアキシャルピストン油圧マシンの好適な実施の形態の構成を示す断面図である。図1及び図2は、この油圧マシン10の側断面図である。図3は、油圧マシン10の横断面図である。この油圧マシン10は、エンドキャップ14に固定されたハウジング14を有する。この油圧マシン10は、ハウジング12及びエンドキャップ14よりなる2体構造として示してあるが、他の実施の形態として、一体構造とすることもある。
【0013】
ハウジング12は、シリンダブロック16を内蔵している。このシリンダブロック16は、複数の往復ピストン18を内蔵している。これら複数の往復ピストン18は、空洞を備えるボディ20を有する。
【0014】
図示の実施の形態のピストンボディ20は、雌スリッパ24と回転的に連結された雄ボールジョイント22を有する。ここでは、雄ボールジョイント及び雌スリッパ24として示してあるが、この連結は、ピストンボディ20側に雌エンドを設け、スリッパ24の雄エンドを受容するようにしてもよい。いずれにしろ、各スリッパ/ボールジョイント連結は、ピストン接続中心点26を有し、これらの中心点を通る面が、ジョイント面27である。更に、複数のピストン18は、各ピストンの中心に沿って、アキシャルであるピストン軸28を有する。
【0015】
スワッシュプレート30が、複数のスリッパ24の第1端32と係合し、第2端34へ延びている。第2端34は、第1及び第2支持ボール36、38を受容している。これらの支持ボール36、38の両方は、ハウジング12と係合している。各支持ボール36、38は、中心点40、42を有し、支持ボールの旋回軸44が、これら第1及び第2中心点40、42を通過している(図3参照)。また、スワッシュプレート30は、エンドキャップ14内で往復する補助ピストン46にも連結されている(図1及び図2参照)。
【0016】
シャフト48が、スワッシュプレート30及びシリンダブロック16を通って、エンドキャップ14内に配置されている。このシャフト48は、回転軸50の軸に沿って回転して、シリンダブロック16を回転させる。当業者には容易に理解される如く、シャフト48の回転軸50と交差する連結面27は、アキシャルピストン回転群のスイートスポットであると考えられる。このアキシャルピストン回転群のスイートスポット、及びスワッシュプレート30の旋回軸が同じ面にない場合には、スワッシュプレート30に作用するモーメントは、スワッシュプレート30の傾斜位置が変化するので、好ましくない振動を生じることになる。
【0017】
図1〜図3に示す本発明の好適な実施の形態によるアキシャルピストン油圧マシン10において、第1及び第2支持ボール36及び38は、シリンダブロック16に対して、連結面27及びボール旋回軸44が同じ面となるように配置され、スワッシュプレート30のモーメントの変動を最小にするようになっている。
【0018】
これに代わって、本発明のアキシャルピストン油圧マシンは、連結面27及びボール旋回軸44が相互に隣接し、スワッシュプレート30のモーメントの変動を低減させるようにしてもよい。例えば、ボール旋回軸44は、スリッパ24を含んでいる複数のピストンと交差させる。変形例として、ボール旋回軸44は、スワッシュプレート30と交差させてもよい。これらの変形実施の形態において、連結面27及びボール旋回軸44は、同一面ではないが、相互に隣接しているので、スワッシュプレート30のモーメントの変動を低減することができる。
【0019】
更に、第1及び第2支持ボール36及び38の広いポジショニングの結果、シャフト48の回転軸50及び支持ボール36、38間のラジアル距離は、シャフト48の回転軸50及びピストン軸28間のラジアル距離より相当に大きくなる。図3に示す如く、シャフト48の回転軸50及びピストン軸28間のラジアル距離は、第1ラジアル距離Xである。
【0020】
同様に、支持ボール36、38の各中心点40、42から、シャフト48の回転軸50までのラジアル距離は、第2ラジアル距離Yである。この第2ラジアル距離Yは、上述した第1ラジアル距離Xより大幅に大きい。
【0021】
従って、本発明によるアキシャルピストン油圧マシン10は、第1及び第2支持ボール36、38が、隣接ラジアル位置、又はスワッシュプレート30の背後ではなく、ピストン/スリッパボールジョイント22に近い。その結果、ボール旋回軸44は、ボール連結面27と同じ面か、又はそれに近い面にある。ボール旋回軸44及びボール連結面27を、同一面又はそれに近い面にすることにより、スワッシュプレート30のモーメントの変動を最小とすることができる。これは、アキシャルピストン油圧マシン10の軸長を短縮するのみならず、スワッシュプレート30の制御を良好にするという付加的な効果を有する。その結果、上述した本発明の全ての目的を達成することができる。
【0022】
以上、本発明によるアキシャルピストン油圧マシンの好適な実施の形態について詳述した。しかし、本発明の要旨や精神を逸脱することなく、特定用途に応じて、種々の変形変更が可能であることは、当業者には容易に理解できると思う。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるアキシャルピストン油圧マシンの好適な実施の形態の側断面図であり、スワッシュプレートが最大角度位置の状態を示す。
【図2】図1と同様のアキシャルピストン油圧マシンの側断面図であるが、スァッシュプレートが最小角度の状態を示す。
【図3】図1及び図2に示すアキシャルピストン油圧マシンの上から見た断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 アキシャルピストン油圧マシン
12 ハウジング
14 エンドキャップ
16 シリンダブロック
18 ピストン
20 ピストンボディ
22 雄ボールジョイント
24 雌スリッパ
26 ピストン連結中心点
27 連結面
28 ピストン軸
30 スワッシュプレート
32 スワッシュプレートの第1端
34 スワッシュプレートの第2端
36、38 支持ボール
40、42 支持ボールの中心点
44 支持ボール旋回軸
48 シャフト
50 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジング内に配置され、複数の往復ピストンを内蔵するシリンダブロックと、前記往復ピストンに回転可能に連結された第1端を有するスワッシュプレートと、このスワッシュプレート、及び前記シリンダブロックを通して、前記ハウジング内に配置され、前記シリンダブロックを回転させるシャフトと、第1中間点を有し、前記スワッシュプレートの第2端に保持されている第1支持ボールと、第2中間点を有し、前記スワッシュプレートの前記第2端に受容されている第2支持ボールと、前記第1中間点から前記第2中間点へ延びる支持旋回軸とを備え、この支持旋回軸は、前記複数の往復ピストンの少なくとも1個と交差することを特徴とするアキシャルピストン油圧マシン。
【請求項2】
ハウジングと、このハウジング内に配置され、複数の往復ピストンを内蔵するシリンダブロックと、前記複数の往復ピストンに連結された第1端を有するスワッシュプレートと、このスワッシュプレート及び前記シリンダブロックを通して、前記ハウジング内に配置され前記シリンダブロックを回転させるシャフトと、第1中間点を有し、かつ前記スワッシュプレートの第2端に受容される第1支持ボールと、第2中間点を有し、前記スワッシュプレートの前記第2端に受容されている第2支持ボールと、前記第1中間点から前記第2中間点へ延びる支持旋回軸とを備え、この支持旋回軸は、前記スワッシュプレートの少なくとも一部と交差していることを特徴とするアキシャルピストン油圧マシン。
【請求項3】
ハウジングと、ハウジング内に配置され、複数のスリッパを有する複数の往復ピストンを内蔵するシリンダブロックと、前記複数のスリッパに係合する第1端及び第1及び第2支持ボールを受容する第2端を有するスワッシュプレートと、このスワッシュプレート及び前記シリンダブロックを通して、前記ハウジング内に配置され、前記シリンダブロックを軸の周りに回転させるシャフトとを備え、前記複数のピストンは、前記シャフトの回転軸に対して平行であり、かつ前記シャフトの回転軸から、第1ラジアル距離のピストン軸を有し、前記第1支持ボールは、第1中間点を有し、前記シャフトの軸から前記第1中間点で、第2ラジアル距離を規定し、この第2ラジアル距離は、前記第1ラジアル距離より大きいことを特徴とするアキシャルピストン油圧マシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−68490(P2009−68490A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−231964(P2008−231964)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(501004464)サウアー ダンフォス インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】