説明

アクセスポイント、および、プローブ信号に基づくアクセスポイントのアンテナ方向を操作する方法

無線ローカルエリアネットワーク内のアクセスポイントを操作する方法が提供される。アクセスポイント(110A、110B、110C)は、複数のリモート局(120a、120b、120c)と通信するための指向性アンテナを含み、指向性アンテナは、全方向角度と、複数の指向性角度を含む。この方法は、複数のリモート局からリモート局の1つを選択することと、全方向角度の指向性アンテナを介して、選択されたリモート局に第1のプローブ信号を送信することと、第1の信号に応答して選択されたリモート局から全方向角度を介して受信される第1のプローブ応答信号を測定することとを含む。第2のプローブ信号に同じことを行うよりも、選択されたリモート局からの第1のプローブ応答信号と第2のプローブ応答信号がアンテナデータベースに格納される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ローカルエリアネットワークの分野に関し、詳細には、無線ローカルエリアネットワーク内で稼動するアクセスポイントのためのアンテナの方向操作アルゴリズムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の標準により、携帯型コンピュータなどのリモート局を無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)内で移動し、無線周波(RF)送信を介して、有線ネットワークに接続されたアクセスポイント(AP)に接続することが可能になっている。有線ネットワークは、しばしば、分配システムと呼ばれる。各種の標準には、IEEE802.11標準と、それに対応する、例えば802.11bや802.11gなどの文字改訂版(letter revision)が含まれる。
【0003】
リモート局とアクセスポイントの物理層は、局とアクセスポイントが通信するための低レベルの送信を提供する。物理層の上には、例えば認証、認証解除、プライバシー、関連付け、関連付け解除などのサービスを提供するメディアアクセス制御(MAC)層がある。
【0004】
動作時に、リモート局がオンライン状態になると、初めに、その局の物理層とアクセスポイントの物理層の間に接続が確立される。そして、MAC層が接続することができる。通例は、リモート局とアクセスポイントに対して、モノポールアンテナを使用して物理層のRF信号が送受信される。
【0005】
モノポールアンテナは、すべての方向に放射し、一般には垂直方向を向いた素子に対しては水平面に放射する。モノポールアンテナは、間にある物体によって生じる無線波信号の反射や回折など、リモート局とアクセスポイント間の通信の品質を低下させる影響を受けやすい。間にある物体は、例えば壁、机、人などである。そうした物体は、マルチパス、通常の統計的フェーディング、レイリーフェーディングなどを引き起こす。その結果、そのような影響によって生じる信号の劣化を緩和する努力がなされてきた。
【0006】
【特許文献1】米国特許公開第2002/0008672号
【特許文献2】米国特許第6,515,635号
【特許文献3】米国特許公開第2002/0036586号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RF信号の劣化を抑制する技術の1つは、2つのアンテナを使用してダイバーシティを提供するものである。2つのアンテナは、リモート局とアクセスポイントの1つまたは両方でアンテナダイバーシティスイッチに結合される。アンテナのダイバーシティのために2つのアンテナを使用することの基盤となる理論は、所与の時に、それらのアンテナの少なくとも1つがマルチパスの影響がない信号を受信する可能性があるというものである。その結果、このアンテナが、信号の送受信のためにアンテナダイバーシティスイッチを介してリモート局またはアクセスポイントが選択するアンテナとなる。それでもなお、無線ローカルエリアネットワーク内のリモート局とアクセスポイントの間でRF信号の劣化に対処する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した背景に鑑みて、本発明の目的は、無線ローカルエリアネットワーク内のアクセスポイントとリモート局との間の通信を改良することである。
【0009】
無線ローカルエリアネットワークで使用されるアクセスポイント(無線ゲートウェイ)のためのアンテナ方向操作プロセスを通じて、単純なダイバーシティを上回る改良が提供される。指向性アンテナが、ネットワークのスループットを向上させ、アクセスポイントとリモート局(無線ユーザデバイス)との間の範囲を拡大する。指向性アンテナは、大半の場合は全方向性アンテナよりも高い信号対雑音比を提供し、したがって、リンクがより高いデータレートで動作することを可能にする。
【0010】
アンテナ方向操作プロセスは、アクセスポイントのメディアアクセス制御(MAC)層に存在することができ、リモート局から信号を受信すると物理層から得られる信号品質の測定基準に基づいて最適あるいは好ましい指向性アンテナパターンを選択する。
【0011】
本発明の原理によれば、アクセスポイントと選択されたリモート局の間の登録、認証、あるいはそれに続くデータ交換などのプロセス中に、方向が操作されるアクセスポイントアンテナのための好ましい方向が判定される。一実施形態では、アクセスポイントで動作するソフトウェアまたはファームウェアがこの判定を行う。アクセスポイントのアンテナ制御ソフトウェア/ファームウェアは、リモート局の識別と、そのリモート局に関連付けられた、最適な通信動作を実現するためのアンテナ方向とを含むデータベースを構築することができる。
【0012】
ハードウェアを用いて、好ましい指向性アンテナ角度を選択するために典型的な802.11機器に固有のダイバーシティ選択回路とともに動作することができる。アクセスポイントは、シグナリングを使用して、リモート局からプローブ応答信号を送信させることができ、アクセスポイントは、プローブ応答信号の信号品質を測定する。アクセスポイントは、指向性アンテナモードでリモート局から受信された信号に対応する測定基準値を、全方向性モードでリモート局から受信された信号に対応する測定基準値と比較して、新たなアンテナスキャンを行うべきかどうかを判定することができる。隠れノードがあるとアクセスポイントが判定した場合、アクセスポイントは、例えば802.11標準で定義されるRTS/CTS(request−to−send/clear−to−send)メッセージングを使用する防御機構を起動することができる。
【0013】
アクセスポイントを指向性アンテナで増強することの利益には、個々のリモート局へのスループットが向上することと、ネットワーク内でより多くのユーザをサポートできることの2つである。大半のRF環境では、リモート局で受信される信号レベルは、局の方向を向いた成形アンテナビームを使用してアクセスポイントから送信させることによって改善することができる。成形アンテナビームは、アクセスポイントに一般に配置される全方向性アンテナに比べて例えば3〜5dBの利得の優位を提供することができる。信号レベルが上がると、アクセスポイントとリモート局間のリンクが、特に有効範囲の外縁部で、より高いデータレートで動作することができる。指向性アンテナ方向操作プロセスは、アクセスポイントに存在してリモート局との間の動作を支援する。
【0014】
より詳しくは、本発明は、WLAN内のアクセスポイントを操作する方法を対象とし、アクセスポイントは、複数のリモート局と通信するための指向性アンテナを備える。指向性アンテナは、全方向角度と、複数の指向性角度を備える。この方法は、複数のリモート局の中からリモート局の1つを選択することと、選択されたリモート局に指向性アンテナの全方向角度を介して第1のプローブ信号を送信することと、第1のプローブ信号に応答して、選択されたリモート局から全方向角度を介して受信される第1のプローブ応答信号を測定することとを備える。
【0015】
この方法はさらに、指向性アンテナの複数の指向性角度それぞれを介して、選択されたリモート局に個々の第2のプローブ信号を送信することと、個々の第2のプローブ信号に応答して、選択されたリモート局から各指向性角度を介して受信される第2のプローブ応答信号を測定することとを備える。選択されたリモート局からの測定された第1のプローブ応答信号と測定された個々の第2のプローブ応答信号は、アンテナデータベースに格納される。
【0016】
この方法はさらに、測定された第2のプローブ応答信号に基づいて選択されたリモート局に好ましい指向性角度を選択することと、全方向角度からの測定された第1のプローブ応答信号と、好ましい指向性角度からの測定された第2のプローブ応答信号とを比較することとを備えることができる。選択されたリモート局との通信を継続するために、比較に基づいて全方向角度または好ましい指向性角度を選択することができる。好ましい指向性角度に伴う、測定された信号が、全方向角度に伴う測定信号を所定の閾値だけ上回る場合は、好ましい指向性角度を選択することができる。
【0017】
この方法はさらに、複数のリモート局から次のリモート局を選択することと、選択された次のリモート局に第1および第2のプローブ信号を送信することを繰り返すことと、選択された次のリモート局から受信される第1および第2のプローブ応答信号を測定することとを備えることができる。選択された次のリモート局からの測定された第1のプローブ応答信号と、測定された個々の第2のプローブ応答信号がアンテナデータベースに格納される。選択、送信、および格納は、残りのリモート局ごとに繰り返される。
【0018】
第1のプローブ信号は、RTS(request−to−send)メッセージからなり、第1のプローブ応答信号は、CTS(clear−to−send)メッセージからなることができる。同様に、第2のプローブ信号もRTSメッセージからなり、第2のプローブ応答信号もCTSメッセージからなることができる。
【0019】
測定は、受信信号強度指示、搬送波対干渉比、ビット当たりのエネルギー比、および信号対雑音比の少なくとも1つを判定することからなることができる。全方向角度の選択と、複数の指向性角度のスキャンは、アクセスポイントのMAC(メディアアクセス制御)層で行うことができる。
【0020】
この方法はさらに、一定の期間にわたってアクセスポイントと選択されたリモート局間の通信が行われない場合は、選択されたリモート局についてのアンテナデータベースを更新することを備えることができる。この更新は、選択されたリモート局への第1および第2のプローブ信号の送信と、選択されたリモート局から受信される第1および第2のプローブ応答信号の測定とを繰り返すことを含むことができる。
【0021】
アクセスポイントは、IEEE802.11標準またはIEEE802.16標準に基づいて動作することができる。指向性アンテナは、少なくとも1つのアクティブ素子と複数のパッシブ素子を備えることができる。本発明の別の態様は、全方向角度と複数の指向性角度を備える指向性アンテナと、その指向性アンテナを制御するために指向性アンテナに接続されたコントローラとを備えたアクセスポイントを対象とする。
【0022】
コントローラは、複数のリモート局からリモート局の1つを選択し、選択されたリモート局に指向性アンテナの全方向角度を介して第1のプローブ信号を送信し、第1のプローブ信号に応答して選択されたリモート局から全方向角度を介して受信される第1のプローブ応答信号を測定する。コントローラはさらに、指向性アンテナの複数の指向性角度それぞれを介して、選択されたリモート局に個々の第2のプローブ信号を送信し、個々の第2のプローブ信号に応答して、選択されたリモート局から各指向性角度で受信される第2のプローブ応答信号を測定し、選択されたリモート局からの、測定された第1のプローブ応答信号と測定された個々の第2のプローブ応答信号をアンテナデータベースに格納する。
【0023】
本発明の前述した、およびその他の目的、特徴、および利点は、添付図面に図示される、以下の本発明の好ましい実施形態のより詳細な説明から明らかになろう。図面は、必ずしも実物大ではなく、本発明の原理を説明するために強調が置かれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態が図示される添付図面を参照して本発明をより完全に説明する。しかし、本発明は、多数の異なる形態で実施することができ、ここに記載される実施形態に制限されるものと解釈すべきでない。ここに記載される実施形態は、この開示が綿密かつ完全なものとなり、本発明の範囲を完全に当業者に伝えるように提供される。説明を通じて同様の要素は同様の参照符号で示し、主要要素表記(prime notation)を使用して代替実施形態の同様の要素を示す。
【0025】
初めに図1Aを参照して、分配システム105を有する無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)100を説明する。アクセスポイント110a、110b、および110cは、有線データネットワーク接続などの有線接続を介して分配システム105に接続される。アクセスポイント110a、110b、110cはそれぞれ、無線周波(RF)信号を介してリモート局120a、120b、120cと通信することができる個々のゾーン115a、115b、115cを有する。リモート局120a、120b、120cは、分配システム105にアクセスするための無線ローカルエリアネットワークハードウェアおよびソフトウェアでサポートされる。以下の説明では、アクセスポイント、リモート局、ゾーン全般を指す際には、個々の参照符号110、120、115を使用することができる。
【0026】
現在の技術は、アクセスポイント110とリモート局120にアンテナダイバーシティを提供する。アンテナダイバーシティは、アクセスポイント110とリモート局120が、受信される信号の品質に基づいて2つのアンテナの1つを選択して、送受信の動作(duty)を提供できるようにする。一方のアンテナではなくもう一方のアンテナを選択する理由の1つは、2つの異なる経路をとる信号によって一方のアンテナで信号の相殺が発生するが、もう一方のアンテナでは発生しないマルチパスフェーディングが発生した場合に生じる。別の理由の例は、同じアンテナで受信される2つの異なる信号のために干渉が発生する場合である。2つのアンテナの1つを選択するさらに別の理由は、矢印125で示すようにリモート局120cが第3のゾーン115cから第1または第2のゾーン115a、115bに持ち運ばれる場合など、変化する環境によるものである。
【0027】
図1Bは、図1Aに示すネットワーク100のサブセットのブロック図であり、指向性アンテナローブ130a〜130iとの関連で、本発明の原理を用いるアクセスポイント110bがより詳細に示される。指向性アンテナローブ130a〜130i全般は、参照符号130でも示される。アクセスポイント110bは、そのアクセスポイントの環境をスキャンする際にアンテナローブ130を順に試して、好ましいアンテナ方向を判定する。
【0028】
スキャンの際に、アクセスポイント110bは、図2Aおよび2Bにより詳細に示すように指向性アンテナを使用して、リモート局120bから送信されるRF信号を求めてスキャンする。スキャン方向(すなわち角度あるいはアンテナパターン)ごとに、アクセスポイント110bは、信号あるいはプローブ応答を測定し、そのスキャン角度の個々の測定基準値を計算する。測定基準の例には、受信信号または信号環境の品質の受信信号強度指示(RSSI)、搬送波対干渉比(C/I)、ビット当たりのエネルギー比(Eb/No)、あるいは、信号対雑音比(SNR)などの他の適当な測定基準が含まれる。当業者には容易に理解されるように、上記の測定の組み合わせを行って、最適な、または好ましいアンテナパターンを決定することもできる。測定された信号品質の測定基準に基づいて、アクセスポイント110bは、リモート局120bと通信するための好ましいアンテナ角度または方向を決定する。
【0029】
スキャンは、リモート局110bが認証され、分配システム105に関連付けられる前に行っても、後に行ってもよい。したがって、最初のアンテナスキャンは、MAC層内で行われることができる。あるいは、最初のスキャンは、MAC層の外部で行われてもよい。同様に、リモート局110bが認証され、分配システム105に関連付けられた後に行われるスキャンは、MAC層の中で行われても、MAC層の外部で行われるプロセスによって行われてもよい。
【0030】
図2Aは、外部の指向性アンテナアレイ200aを使用するアクセスポイント110の図である。指向性アンテナアレイ200aは、5つのモノポールパッシブアンテナ素子205a、205b、205c、205d、および205eと、1つのモノポールのアクティブアンテナ素子206を含む。以下では、パッシブアンテナ素子205a、205b、205c、205d、および205e全般を参照符号205で参照する。指向性アンテナ素子200aは、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート215を介してアクセスポイント110に接続される。指向性アンテナアレイ200aとアクセスポイント110間の他のタイプの接続を容易に許容することができる。
【0031】
指向性アンテナアレイ200aのパッシブアンテナ素子205は、アクティブアンテナ素子206に無給電結合されて、スキャンを可能にする。スキャンとは、指向性アンテナアレイ200aの少なくとも1つのアンテナビームを、パッシブアンテナ素子205の数に関連する増分単位で、場合によっては360度回転させることができることを意味する。
【0032】
指向性アンテナアレイ200aの詳しい解説が、2002年1月24日に公開された米国特許公開「Adaptive Antenna For Use In Wireless Communications System」に提供される(特許文献1)。同特許の全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれ、本発明の現在の譲受人に譲渡される。指向性アンテナアレイ200aによって受信信号または送信信号に基づいてアンテナ方向を最適化する例示的方法も、同特許で論じられる。
【0033】
指向性アンテナアレイ200aは、全方向モードで使用して、全方向性のアンテナパターンを提供することもできる。アクセスポイント110は、送信または受信に全方向性のパターンを使用することができる。アクセスポイント110は、リモート局120との間の送受信を行う際に、選択された指向性アンテナを使用してもよい。
【0034】
図2Bは、内部の指向性アンテナ220bを有するアクセスポイント110の等角図である。この実施形態では、指向性アンテナアレイ200bは、PCMCIAカード220上にある。PCMCIAカード220は、アクセスポイント110によって搬送され、プロセッサ(図示せず)に接続される。指向性アンテナアレイ200bは、図2Aに示す指向性アンテナアレイ200aと同じ機能を備える。
【0035】
各種の他の形態の指向性アンテナアレイを使用できることは理解されよう。その例には、2003年2月4日に発行された米国特許「Adaptive Antenna For Use In Wireless Communications System」(特許文献2)と、2002年3月28日に公開された米国特許公開「Adaptive Antenna For Use In Wireless Communication System」(特許文献3)に記載されるアレイが含まれ、同特許の全教示は、参照により本明細書に組み込まれ、本発明の現在の譲受人に譲渡される。
【0036】
図3Aは、上記のパッシブアンテナ素子205とアクティブアンテナ素子206を含む指向性アンテナアレイ200aの詳細図である。指向性アンテナアレイ200aは、図3Bを参照して下記で説明するように、パッシブアンテナ素子が電気的に結合された接地面330も含む。
【0037】
引き続き図3Aを参照すると、指向性アンテナアレイ200aは、アンテナ素子205aおよび205eから離して角度がつけられた指向性アンテナローブ300を提供する。これは、アンテナ素子205aおよび205eが反射モードにあり、アンテナ素子205b、205c、205dが送信モードにあることを表す。すなわち、アクティブアンテナ素子206とパッシブアンテナ素子205との相互結合により、指向性アンテナアレイ200aが指向性アンテナローブ300をスキャンすることが可能になり、ローブ300は、この場合は、図に示すように、パッシブ素子205が設定されたモードの結果として方向が合わせられる。当業者には容易に理解されるように、パッシブアンテナ素子205を異なるモードで組み合わせると、異なるアンテナローブ300のパターンと角度が得られる。
【0038】
図3Bは、パッシブアンテナ素子205を反射モードまたは送信モードに設定するために使用することができる例示的回路の略図である。反射モードは、代表的な長い点線305で表し、送信モードは、短い点線310で表す。代表的なモード305および310は、それぞれ、誘導素子320または容量素子325を介して接地面330に結合することによって生じる。誘導素子320または容量素子325を通じたパッシブアンテナ素子205aの結合は、スイッチ315を介して行われる。スイッチ315は、パッシブアンテナ素子205aを接地面330に結合することができる機械スイッチまたは電気スイッチである。スイッチ315は、制御信号335を介して設定される。
【0039】
誘導子320を介して接地面330に結合されるのは、パッシブアンテナ素子205aであり、その場合のアンテナ素子205aは、長い代表点線305で示すように、図では長く示している。これは、アクティブアンテナ素子206との相互結合を介してパッシブアンテナ素子205aに結合された、RF信号のための「バックボード」を提供するものとみなすことができる。図3Aの場合は、パッシブアンテナ素子205aと205eの両方が、個々の誘導素子320を介して接地面330に接続される。同時に、図3Aの例では、他のパッシブアンテナ素子205b、205c、および205dは、個々の容量素子325を介して接地面330に電気接続される。
【0040】
この容量結合は、短い代表点線310で表すように、実質上パッシブアンテナ素子を短くする。すべてのパッシブアンテナを容量結合325すると、実質上、指向性アンテナアレイ200aが全方向性アンテナになる。例えば遅延線や集中インピーダンスなど、パッシブアンテナ素子205と接地面330間には代替の結合技術も使用してよいことを理解されたい。
【0041】
図9に飛ぶと、指向性アンテナアレイ200aまたは200bの使用を通じて全方向性アンテナパターン905と指向性アンテナパターン910を生成するアクセスポイント110bを上から見た図(overhead view)が提供される。アクセスポイント110bは、複数の局120a〜120dと通信する。アクセスポイント110は通常、近くに障害物あるいは移動する反射体がない遠隔に設置される(壁の上の方や天井など)ので、好ましいアンテナパターン方向の選択は、所与のリモート局120との接続の始めから最後まで恐らくは変化しない。
【0042】
図のアクセスポイント110bは、選択されたリモート局120cに送信されるダウンリンクのデータフレームには、指向性アンテナ200aを利用することができる。大半の同報通信フレームおよび制御フレームには、アクセスポイントは、全方向性アンテナパターン905と、利用できる最も低いデータレートを使用して、すべてのリモート局120がフレームを受信することを保証することができる。指向性アンテナ200aは、ネットワーク100の有効範囲を拡大するとは限らないが、リモート局120に送信されるデータフレームのデータレートを増大することができる。ネットワーク100を通じて転送されるデータの大部分はダウンリンクで発生する(ウェブページへのアクセス、ファイル転送など)ので、ダウンリンクレートの増大は、有益である。選択肢の1つは、アクセスポイント110bが全方向性モードでの受信を要求される場合に、切り替えられた空間ダイバーシティを使用するものである。5dBの潜在的な追加リンクの余裕で、例えば300%のスループットの増大に対処する。
【0043】
競合期間(CP)中に選択されたリモート局120cからアクセスポイント110bに送信されるアップリンクのデータフレームは、どのリモート局もそのフレームを送信した可能性があるので、全方向性のアンテナパターンを使用して受信される。大きなフレームの場合は、ネットワーク構成が、リモート局がRTS/CTS(request−to−send/clear−to−send)機構を使用して無線媒体を確保することを要求する場合がある。その場合、アクセスポイント110bは、指向性モードで受信してアップリンクのデータレートを増大することができる。これは、リモート局120cで実装されるデータレートの選択アルゴリズムに多少依存する。
【0044】
ダウンリンク送信では、アクセスポイント110bは、競合期間には全方向性のパターンとより低いデータレートを使用して小さなパケットを送信することを決定することができる。この理由は、有効範囲の「反対」側にあるリモート局(リモート局120eなど)が、その局と離れた方向を向いた指向性アンテナパターン910からのアクセスポイント送信を受信しない可能性があるためである。これは、2つのリモート局120が相互の通信を受信せず、同時に送信をやめてしまう、よく知られた「隠れノード」問題である。この場合、2つのリモート局は120cと120eである。特にデータフレームが大きい場合にこの問題を回避する方法は、下記で図7を参照して説明する。
【0045】
したがって、アクセスポイント110の指向性アンテナパターンは、ネットワークトラフィックの大半を占める、リモート局120とのダウンリンクおよびアップリンクのデータフレーム交換に、より高いデータレートを提供することができる。ネットワークの接続性は、アクセスポイント110の全方向性アンテナの名目上の利得とともに維持される。すなわち、リモート局120は、指向性アンテナ200aを使用せずに、アクセスポイント110に関連付けることができ、接続を維持することができる。
【0046】
表1に提供する規則のセットは、指向性アンテナ200aの全方向性と指向性を利用するように定義されることができる。表1は、現在アクセスポイント110に関連付けられているリモート局120のアドレスと、それらの現在のアンテナ方向の選択を含む。表1は、802.11標準からのフレームの連続に基づく、例示的なアンテナ方向の選択を詳細に示すことができる(同標準の表21および22)。表1では、「Dir」は方向を表し、「UL」はアップリンクを意味し、「DL」はダウンリンクを意味する。
【0047】
【表1】

【0048】
いつ全方向性のパターンを選択し、いつ指向性パターンを選択するかを決定する規則のセットでプロセスを記述することができる。例えば、アクセスポイント110は、1つのリモート局120との間で送信または受信する際に、時間間隔中には指向性パターンを選択することができる。
【0049】
アクセスポイント110のインタフェースを示すブロック図が図4に示される。図のアクセスポイント110は、各種のサブシステムと層を含む。アンテナサブシステム405は、指向性アンテナ200bと、指向性アンテナを稼動させるためのサポート回路、バス、およびソフトウェアを含むことができる。アンテナサブシステム405は、物理層410とのインタフェースをとり、物理層410にRF信号412を提供する。
【0050】
物理層410は、RF信号412を処理し、アンテナ方向操作プロセス420への信号品質の測定値417を決定する。物理層410は、RF信号412に基づいて、処理された信号をMAC層415に送る。MAC層415は、タイミング制御メッセージ422を生成し、このメッセージ422も、必要とされる時にアンテナを全指向性モードまたは指向性モードに切り替えるためにアンテナ方向操作プロセス420に送られる。
【0051】
MAC層415は、データフレーム429も他のプロセス(図示せず)に送る。図の物理層410、MAC層415、およびアンテナ方向操作プロセス420は、コントローラ400の中に存在することができる。アンテナ方向操作プロセス420は、例えば、独立型メモリ、あるいはプロセッサに内蔵されたメモリなどのメモリに記憶されることができる。
【0052】
アンテナ方向操作プロセス420は、各リモート局120のアンテナスキャンの際に行われる受信信号品質の測定値417に応じた「アンテナテーブルまたはデータベース」あるいは「方向テーブルまたはデータベース」425を保持する。例えば、方向テーブル425は、局IDと、そのリモート局120と指向性通信するための対応するアンテナ方向(A、B、C)を格納することができる。方向テーブル425のアンテナ方向が決定されると、アンテナ方向操作プロセス420が使用されて、指向性アンテナ制御427をアンテナサブシステム405に提供する。信号品質の測定値417が閾値を上回り、最も高いデータレートが全方向性モードでサポートできることを意味する場合、アンテナ方向は、全方向性(O)モードに維持されることができる。
【0053】
以下の段落では、指向性アンテナ220bをアクセスポイント110からリモート局120に向ける好ましい方向を決定する、本発明による各種技術を説明する。第1の技術では、空間ダイバーシティ選択機構を用いる。第2の技術は、アクセスポイント110とリモート局120間で交換されるプローブ信号の連続を用いる。第3の技術では、アクセスポイント110で受信アンテナ方向の信号品質測定を行わせる制御メッセージ(ACKやCTSなど)を用いる。第3の技術は、順方向および逆方向両方のリンクに適用することができる。
【0054】
第1の技術は、現在の802.11デバイスが、アンテナ切り替えダイバーシティのスキャン/制御機能を組み込んでおり、802.11a/802.11g/802.11nなどの将来の802.11デバイスも切り替えダイバーシティに対応することを前提とする。第1の技術は、リモート局120が認証され、ネットワークに関連付けられた後に適用することができる。最初のアンテナスキャンは、MAC/ネットワーク層プロトコル内で行われるものと想定する。指向性または多素子のアンテナ220aの場合、第1の技術は、ダイバーシティプロトコルを利用してアンテナの位置/選択を更新された状態に保つことができる。
【0055】
次いで図6を参照すると、第1の技術は次のように機能する。図のアクセスポイント110’は、アンテナサブシステム405’に接続されたコントローラ600’を含む。コントローラ600’は、アンテナ制御信号へのアクセス権が与えられた物理層410’と、MAC層(図4)を備える。MAC層は、アンテナの選択をレジスタA605a’とレジスタB605b’に書き込む。レジスタA605a’は、選択されたアンテナ位置を保持し、レジスタB605b’は、候補のアンテナ位置を保持する。物理層410’は、マルチプレクサ610’とも通信することができる。物理層410’は、ダイバーシティ選択切り替え制御信号607’を典型的なダイバーシティ選択制御の方式でマルチプレクサ610’に送るが、この場合は、ダイバーシティ選択切り替え制御信号は、レジスタA605a’の内容が使用されるか、レジスタB605b’の内容が使用されるかを制御する。
【0056】
選択されたアンテナ位置は、初めに、ネットワーク認証/関連付けプロトコルの際に選択される。候補アンテナ位置は、他のどのアンテナ位置でもよい(全方向モードを含む)。候補アンテナ位置は、有効なパケットが受信された後、または所定の時間にわたってパケットが受信されなかった後に、所定の順序で変更される。
【0057】
問題なくパケットを受信すると、物理層410’は、両方のアンテナ位置についての受信信号品質の測定基準値(信号強度、信号対雑音比、マルチパス/等化器の測定基準など)をMAC層に送る。パケットの受信中に、物理層410’は、現在802.11の場合と同じように、すなわち2つのアンテナ位置で切り替え、パケットの受信のために最適なアンテナ位置を使用するように機能する。物理層410’で有効にパケットが受信されると、2つのアンテナ位置についての信号品質の測定基準値がMAC層に送られる。MAC層は、選択されたアンテナ位置と候補アンテナ位置の両方を更新する。選択されたアンテナ位置は、物理層410’から受け取られたデータに基づいて、最適な位置に置き換えられる。フィルタリング/ヒステレシスを用いて2つのアンテナ位置間の「往復(ping−ponging)」を回避してもよい。
【0058】
先に述べたように、この技術は、現在の802.11アンテナ切り替えダイバーシティ方法を利用する。この第1の技術は、ハードウェア、ソフトウェア/ファームウェア、またはそれらの組み合わせを含んでよいことは理解されよう。
【0059】
次いで図10を参照して、空間ダイバーシティに基づいてWLAN100内のアクセスポイント110を稼動させる上記の方法のフローチャートを解説する。開始(ブロック1000)から、この方法は、ブロック1010で、指向性アンテナ220bの現在の角度を使用してリモート局120と通信することを含む。ブロック1020で、プリアンブル中にリモート局120と通信するために、指向性アンテナ220bの複数の代替の角度でのスキャンが行われる。ブロック1030で、リモート局120から現在の角度を介して受信された個々の信号と、複数の代替角度で受信された個々の信号が測定される。ブロック1040で、プリアンブル中に、リモート局120との通信を継続するために、測定された信号に基づいて、現在の角度または複数の代替角度の1つが好ましい角度として選択される。方法はブロック105で終了する。
【0060】
第2の技術は、アクセスポイント110からリモート局120へのRTSメッセージの送信と、それに応答してリモート局からアクセスポイントに送信されるCTSメッセージの受信に基づく。802.11標準は、プローブ要求/プローブ応答の交換も定義し、通例はその応答がリモート局120によって使用されて、他の局120とのリンクの品質を判定する。
【0061】
図8に示すように、選択されたリモート局120への好ましい方向を決定するためにアクセスポイント110でこの技術が使用される場合、アクセスポイント110は、プローブ要求信号805を全方向パターンと各可能な方向パターン130で送信し、個々のパターンで動作しながら、リモート局110から送り返されるプローブ応答信号810の信号品質を測定する。
【0062】
その応答フレーム810の測定のために、この技術は、上記のダイバーシティ選択技術よりも信頼性のある技術になる。この第2の技術は、リモート局120がアクセスポイント110に関連付けられた直後に少なくとも1回用いられることが好ましい。しかし、追加的なプローブ要求/プローブ応答信号を使用するとネットワークの効率に影響があるが、その交換はそれほど頻繁でない可能性がある。
【0063】
次いで図11を参照して、プローブ信号に基づいてWLAN100内のアクセスポイント110を操作する上記の方法のフローチャートを解説する。開始(ブロック1100)から、この方法は、ブロック1110でリモート局120を選択すること、ブロック1120で、選択されたリモート局に指向性アンテナ220bの全方向角度を介して第1のプローブ信号を送信すること、ブロック1130で、第1のプローブ信号に応答する、選択されたリモート局から全方向角度で受信された第1のプローブ応答信号を測定することを含む。
【0064】
ブロック1140で、個々の第2のプローブ信号が指向性アンテナ220bの複数の指向性角度のそれぞれを介して、選択されたリモート局120に送信され、ブロック1150で、個々の第2のプローブ信号に応答して、選択されたリモート局から各指向性角度を介して受信された第2のプローブ応答信号が測定される。ブロック1160で、測定された第1のプローブ応答信号と、選択されたリモート局120からの個々の測定された第2のプローブ応答信号が、アンテナデータベースに記憶される。
【0065】
ブロック1170で、測定された第2のプローブ応答信号に基づいて、選択されたリモート局120に好ましい指向性角度が選択される。1180で、全方向角度からの測定された第1のプローブ応答信号が、好ましい指向性角度からの測定された第2のプローブ応答信号と比較される。第1のプローブ信号は、RTS(request−to−send)メッセージからなり、第1のプローブ応答信号は、CTS(clear−to−send)メッセージからなる。同様に、第2のプローブ信号もRTSメッセージからなり、第2のプローブ応答信号もCTSメッセージからなる。ブロック1190で、選択されたリモート局120と通信を継続するために、比較に基づいて全方向角度または好ましい指向性角度が選択される。方法はブロック1195で終了する。
【0066】
第3の技術は、アクセスポイント110とリモート局120の間の通常のデータ交換で使用される制御フレームを活用する。この技術は、順方向リンクの通信と逆方向リンクの通信の両方で使用することができる。CTS(clear−to−send)と肯定応答(ACK)メッセージは、低いデータレートで送信されるので、アクセスポイント110は、それらのメッセージを使用して、全方向パターン905を現在選択されている指向性パターン130と比較することができる。これを図5Aに示し、アンテナを選択するタイミングを点線で示す。これは、現在選択されている方向130が全方向パターン905よりも優位を保ってきたかどうかを判定する方法として機能することができる。この優位は、通例、ほぼ同じ信号品質の測定基準値を有する2つのアンテナパターンで頻繁に切り替えられるのを防ぐための所定の閾値に基づく。
【0067】
例えば、CTSメッセージ中に、全方向モードを使用してCTSメッセージを受信して第1の信号品質測定値を計算することができる。ACKメッセージの際に、テストアンテナ方向を使用してACKメッセージを受信して第2の信号品質測定値を計算することができる。第1の信号品質測定値と第2の信号品質測定値との比較が行われ、テストアンテナ方向を記憶すべきかどうかの判定が行われる。すなわち、指向性モードが、全方向モードよりも高い利得を提供するかどうかが判定される。2つの異なる指向性アンテナ方向間で比較を行ってもよい。
【0068】
図5Bに示すように、逆方向リンクのデータ送信の際にこれと同じタイプの測定と比較を行うことができる。ACKメッセージ中に、アクセスポイント110は、信号品質測定値を計算し、その値を全方向モードの測定値または他の指向性モードの測定値と比較することができる。比較は、別のアンテナ方向をスキャンする前に、選択されたリモート局110との何回かの通信にわたって行ってよい。
【0069】
図4の方向テーブル425は、全方向のアンテナパターンおよび選択された指向性アンテナパターンについて上述したプロセスからの信号品質測定値で増強することができる。優位が所定の閾値を下回った場合、アクセスポイント110は、全方向パターンの選択に戻り、上記の最初の2つの技術の1つを使用してアンテナの探索を行う。
【0070】
リモート局120が省電力モードになる、またはデータ転送が行われない長いアイドル期間を有する場合は、アクセスポイント110は、全方向パターンの選択に戻る。リモート局120が再びアクティブになると、アクセスポイント110は、改めてアンテナ探索を行うことができる。
【0071】
次いで図12および13を参照して、順方向リンクおよび逆方向リンクの制御フレームに基づいてWLAN100内のアクセスポイント120を操作する方法の個々のフローチャートを説明する。開始(ブロック1200)から、この方法は、ブロック1210で、順方向リンクで、リモート局120から指向性アンテナ220bの第1のアンテナパターンを介して第1の制御フレームを受信することと、ブロック1220で第1のデータフレームをリモート局に送信することと、ブロック1230で、リモート局から指向性アンテナの第2のアンテナパターンを介して第2の制御フレームを受信することとを含む。ブロック1240で、第1のアンテナパターンを介して受信された第1の制御フレームの信号品質と、第2のアンテナパターンを介して受信された第2の制御フレームの信号品質が測定される。ブロック1250で、第1のアンテナパターンに関連する個々の測定信号品質と、第2のアンテナパターンに関連する個々の測定信号品質が比較される。第2のアンテナパターンに関連付けられた測定信号品質が、第1のアンテナパターンに関連付けられた測定信号品質を所定の閾値だけ上回る場合は、ブロック1260で、リモート局120に第2のデータフレームを送信するために第2のアンテナパターンが選択される。受信される第1の制御フレームはCTSメッセージからなり、受信される第2の制御フレームは、肯定応答メッセージからなる。方法はブロック1270で終了する。
【0072】
逆方向リンクの制御フレームに基づいてWLAN100内のアクセスポイント120を操作する方法は、開始(ブロック1300)から、ブロック1310で、リモート局から指向性アンテナ220bの第1のアンテナパターンを介して第1の制御フレームを受信することと、ブロック1320で、リモート局に第2の制御フレームを送信することと、ブロック1330で、リモート局から指向性アンテナの第2のアンテナパターンを介して第1のデータフレームを受信することとを含む。ブロック1340で、第1のアンテナパターンを介して受信された第1の制御フレームの信号品質と、第2のアンテナパターンを介して受信された第1のデータフレームの信号品質が測定される。ブロック1350で、第1のアンテナパターンに関連付けられた個々の測定信号品質と、第2のアンテナパターンに関連付けられた個々の測定信号品質が比較される。第2のアンテナパターンに関連付けられた測定信号品質が、第1のアンテナパターンに関連付けられた測定信号品質を所定の閾値だけ上回る場合は、ブロック1360で、リモート局120にアクセスポイント110から第2のデータフレームを送信するために第2のアンテナパターンが選択される。受信される第1の制御フレームは、RTSメッセージからなり、送信される第2の制御フレームは、CTSメッセージからなる。方法はブロック1370で終了する。
【0073】
第4の技術は、アクセスポイント110で指向性アンテナ220bを使用して隠れノードの発生を低減または解消する場合に防止機構を提供する隠れノード防止技術である。隠れノードは、ネットワーク100内のリモート局120のすべてが、アクセスポイント110と選択されたリモート局120との間の通信を受信することができない時に発生し、したがって、受信することができないリモート局は、媒体が使用中の時に送信する可能性がある。これは、特にアクセスポイント110で衝突を発生させる。
【0074】
アクセスポイント110がリモート局120に送信するデータを有する場合、制御プロセスは、図4の方向テーブル425をスキャンして潜在的な隠れノードがあるかどうかを判定することにより、選択されるアンテナ方向を設定する。例えば、アクセスポイント110は、選択されたアンテナ方向と反対の方向にあるリモート局120を探すことができる。
【0075】
図7のタイミング図を参照すると、制御ソフトウェアが隠れノードの可能性があると判定した場合、アクセスポイント110は、まず、アンテナ220aの全方向モードを使用して、既知の使用されていないMACアドレスにCTSメッセージを送信する。このプロセスは、ネットワーク中のすべてのリモート局120に、交換が行われようとしており、その交換が終了するまで送信しないように通知する役目を果たす。そして、アクセスポイント110は、意図されるリモート局120のための選択されたアンテナ方向に切り替え、通信が進行する。隠れノードの問題を防止する別の手法は、所望のリモート局120との間で4種のフレーム交換プロトコル(RTS、CTS、データ、およびACK)を行うものである。
【0076】
制御ソフトウェアが、隠れノードの可能性がないと判定した場合、アクセスポイント110は、CTSメッセージを送信しなくてよく、アクセスポイント110のアンテナが適正な方向に設定されると直ちに通信が開始することができる。ネットワークプロトコルによって要求される場合は、RTSメッセージを意図される受信機にアドレス指定することができ、その結果、図5Aに示すようにCTSメッセージが肯定応答としてアクセスポイント110に返される。
【0077】
図7を参照して説明したプロセスでは、CTSメッセージのみでリモート局120に送信をやめさせることができるため、RTSメッセージがアクセスポイント110から送信されないので、効率が向上することに留意されたい。標準的な802.11プロトコルのヘッダのIDセクションで指示されるリモート局120が、指定されたリモート局がデータフレームを受信することを保証する。
【0078】
次いで図14を参照して、隠れノードを認識することに基づいてWLAN100内のアクセスポイント120を操作するフローチャートを説明する。開始(ブロック1400)から、この方法は、ブロック1410で、アクセスポイント110と各リモート局120の間に、複数のアンテナパターンに対応する個々の測定された信号品質を関連付けることにより、アンテナデータベースを作成することを含む。個々の測定信号品質は、各リモート局120との通信に基づいてアクセスポイント110によって判定される。リモート局120ごとに、ブロック1420でアンテナデータベースに基づく好ましいアンテナパターンが判定され、通信すべきリモート局とそれに対応する好ましいアンテナパターンがブロック1430で選択される。ブロック1440で、アンテナデータベースに基づき、選択されたリモート局と通信する前に、選択されていないリモート局で、そのような通信が実際に行われた時に認識されない可能性があるリモート局があるかどうかが判定される。これは、選択されたリモート局の好ましいアンテナパターンに関連付けられた測定信号品質を、同じ好ましいアンテナパターンを使用した時の選択されないリモート局に関連付けられた個々の信号品質と比較することによって判定される。
【0079】
隠れノードの可能性がある場合は、ブロック1450でメッセージが同報通信されて、アクセスポイント110と選択されたリモート局120が相互と通信することを知らせる。上記で指摘したように、この同報通信は、全方向アンテナパターンを介したリモート局120への自発的なCTSメッセージの形をとることができる。CTSは、どのリモート局120にも対応しない未使用のアドレスを有する。あるいは、選択されたリモート局120との間で4種のフレーム交換プロトコル(RTS、CTS、データ、およびACK)を行って隠れノードの問題を防止する。方法はブロック1460で終了する。
【0080】
好ましい実施形態を参照して本発明を詳細に図示し、説明したが、当業者には、頭記の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく各種の形態および詳細の変更を加えてよいことは理解されよう。例えば、アクセスポイントは、IEEE802.11標準に限定されない。当業者には容易に理解されるように、上記で述べたアクセスポイントのアンテナアルゴリズムは、IEEE802.16標準で定義されるものなど、他の種類のローカルエリアネットワークに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1A】本発明の原理を使用した無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)の略図である。
【図1B】アンテナスキャンを行う図1AのWLAN内のアクセスポイントの略図である。
【図2A】外部の指向性アンテナアレイを有する図1Aのアクセスポイントの図である。
【図2B】内部のPCMCIAカードに内蔵された指向性アンテナアレイを有する図2Aのアクセスポイントの図である。
【図3A】図2Aの指向性アンテナアレイの図である。
【図3B】図3Aの指向性アンテナのアンテナ素子の状態を選択するために使用されるスイッチの略図である。
【図4】本発明の原理によるサブシステム、層、およびアンテナ方向操作プロセスを用いる図1Aのアクセスポイントのブロック図である。
【図5A】図4のアンテナ方向操作プロセスで任意で使用される信号図である。
【図5B】図4のアンテナ方向操作プロセスで任意で使用される代替の信号図である。
【図6】アンテナダイバーシティ回路が用いられる、図4の代替ブロック図である。
【図7】図4のアンテナ方向操作プロセスで任意で使用される隠れノード技術を使用する信号図である。
【図8】双方向シグナリングを備える図1のネットワークを上から見た図である。
【図9】アンテナビームを示した図1のネットワークを上から見た図である。
【図10】本発明による空間ダイバーシティに基づいてWLAN内のアクセスポイントを操作する方法のフローチャートである。
【図11】本発明によるプローブ信号に基づいてWLAN内のアクセスポイントを操作する方法のフローチャートである。
【図12】本発明による順方向のリンクの制御フレームに基づいてWLAN内のアクセスポイントを操作する方法のフローチャートである。
【図13】本発明による逆方向のリンクの制御フレームに基づいてWLAN内のアクセスポイントを操作する方法のフローチャートである。
【図14】本発明による隠れノードの認識に基づいてWLAN内のアクセスポイントを操作する方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)内のアクセスポイントを操作する方法であって、前記アクセスポイントは、複数のリモート局と通信するための、全方向角度と複数の指向性角度を含む指向性アンテナを備え、前記方法は、
前記複数のリモート局の中からリモート局の1つを選択するステップと、
前記選択されたリモート局に前記指向性アンテナの前記全方向角度を介して第1のプローブ信号を送信するステップと、
前記第1のプローブ信号に応答して、前記選択されたリモート局から前記全方向角度を介して受信される第1のプローブ応答信号を測定するステップと、
前記指向性アンテナの前記複数の指向性角度それぞれを介して、前記選択されたリモート局に個々の第2のプローブ信号を送信するステップと、
前記個々の第2のプローブ信号に応答して、前記選択されたリモート局から各指向性角度を介して受信される第2のプローブ応答信号を測定するステップと、
前記選択されたリモート局からの前記測定された第1のプローブ応答信号と前記測定された個々の第2のプローブ応答信号をアンテナデータベースに格納するステップと
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定された第2のプローブ応答信号に基づいて、前記選択されたリモート局に好ましい指向性角度を選択するステップと、
前記全方向角度からの前記測定された第1のプローブ応答信号と、前記好ましい指向性角度からの前記測定された第2のプローブ応答信号とを比較するステップと
をさらに具えたことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記選択されたリモート局との通信を継続するために、前記比較に基づいて前記全方向角度または前記好ましい指向性角度を選択するステップをさらに具えたことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記好ましい指向性角度に伴う前記測定された信号が、前記全方向角度に伴う前記測定信号を所定の閾値だけ上回る場合は、前記好ましい指向性角度が選択されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記複数のリモート局から次のリモート局を選択するステップと、
前記選択された次のリモート局への前記第1および第2のプローブ信号の送信と、前記選択された次のリモート局から受信される前記第1および第2のプローブ応答信号の測定とを繰り返すステップと、
前記選択された次のリモート局からの前記測定された第1のプローブ応答信号と、前記測定された個々の第2のプローブ応答信号とを前記アンテナデータベースに格納するステップと、
前記選択、送信、および格納ステップを、前記複数のリモート局の残りのリモート局ごとに繰り返すステップと
をさらに具えたことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記第1のプローブ信号は、RTS(request−to−send)メッセージからなり、前記第1のプローブ応答信号は、CTS(clear−to−send)メッセージからなり、前記第2のプローブ信号は、RTSメッセージからなり、前記第2のプローブ応答信号は、CTSメッセージからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記測定は、受信信号強度指示、搬送波対干渉比、ビット当たりのエネルギー比、および信号対雑音比の少なくとも1つを判定することからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記全方向角度の選択と、前記複数の指向性角度のスキャンは、前記アクセスポイントのMAC(メディアアクセス制御)層で行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
一定の期間にわたって前記アクセスポイントと前記選択されたリモート局間の通信が行われない場合は、前記選択されたリモート局についての前記アンテナデータベースを更新するステップをさらに具え、前記更新は、前記選択されたリモート局への前記第1および第2のプローブ信号の送信と、前記選択されたリモート局から受信される前記第1および第2のプローブ応答信号の測定とを繰り返すことを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記アクセスポイントは、IEEE802.11標準およびIEEE802.16標準の少なくとも1つに基づいて動作することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記指向性アンテナは、少なくとも1つのアクティブ素子と複数のパッシブ素子を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)のアクセスポイントであって、
全方向角度と複数の指向性角度を備える指向性アンテナと、
前記指向性アンテナを制御するために該指向性アンテナに接続されたコントローラと
を具え、
前記コントローラは、
複数のリモート局の中からリモート局の1つを選択し、
前記選択されたリモート局に前記指向性アンテナの前記全方向角度を介して第1のプローブ信号を送信し、
前記第1のプローブ信号に応答して、前記選択されたリモート局から前記全方向角度を介して受信される第1のプローブ応答信号を測定し、
前記指向性アンテナの前記複数の指向性角度それぞれを介して、前記選択されたリモート局に個々の第2のプローブ信号を送信し、
前記個々の第2のプローブ信号に応答して、前記選択されたリモート局から各指向性角度を介して受信される第2のプローブ応答信号を測定し、
前記選択されたリモート局からの前記測定された第1のプローブ応答信号と前記測定された個々の第2のプローブ応答信号をアンテナデータベースに格納する
ことを特徴とするアクセスポイント。
【請求項13】
前記指向性アンテナは、少なくとも1つのアクティブ素子と複数のパッシブ素子を具えたことを特徴とする請求項12記載のアクセスポイント。
【請求項14】
前記コントローラは、物理層とメディアアクセス制御(MAC)層を備え、前記全方向角度の選択と、前記複数の指向性角度のスキャンは、前記MAC層で行われることを特徴とする請求項12記載のアクセスポイント。
【請求項15】
前記コントローラはさらに、前記測定された第2のプローブ応答信号に基づいて、前記選択されたリモート局に好ましい指向性角度を選択し、前記全方向角度からの前記測定された第1のプローブ応答信号を、前記好ましい指向性角度からの前記測定された第2のプローブ応答信号と比較することを特徴とする請求項12記載のアクセスポイント。
【請求項16】
前記コントローラは、前記選択されたリモート局との通信を継続するために、前記比較に基づいて前記全方向角度または前記好ましい指向性角度を選択することを特徴とする請求項15記載のアクセスポイント。
【請求項17】
前記好ましい指向性角度に伴う前記測定信号が、前記全方向角度に伴う前記測定信号を所定の閾値だけ上回る場合は、前記好ましい指向性角度が選択されることを特徴とする請求項16記載のアクセスポイント。
【請求項18】
前記コントローラはさらに、
前記複数のリモート局から次のリモート局を選択し、
前記選択された次のリモート局への前記第1および第2のプローブ信号の送信と、前記選択された次のリモート局から受信される前記第1および第2のプローブ応答信号の測定とを繰り返し、
前記選択された次のリモート局からの前記測定された第1のプローブ応答信号と、前記測定された個々の第2のプローブ応答信号とを前記アンテナデータベースに格納し、
前記選択、送信、および格納ステップを、前記複数のリモート局の残りのリモート局ごとに繰り返す
ことを特徴とする請求項12記載のアクセスポイント。
【請求項19】
前記第1のプローブ信号は、RTS(request−to−send)メッセージからなり、前記第1のプローブ応答信号は、CTS(clear−to−send)メッセージからなり、前記第2のプローブ信号は、RTSメッセージからなり、前記第2のプローブ応答信号は、CTSメッセージからなることを特徴とする請求項12記載のアクセスポイント。
【請求項20】
前記コントローラは、一定の期間にわたって前記選択されたリモート局との通信が行われない場合は、前記選択されたリモート局についての前記アンテナデータベースを更新し、前記更新は、前記選択されたリモート局への前記第1および第2のプローブ信号の送信と、前記選択されたリモート局から受信される前記第1および第2のプローブ応答信号の測定とを繰り返すことを含むことを特徴とする請求項12記載のアクセスポイント。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−525066(P2007−525066A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517437(P2006−517437)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/019604
【国際公開番号】WO2004/114460
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(504407103)アイピーアール ライセンシング インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】