アクセスポイントのアンテナ操向方法と隠れ端末の認識方法
無線LAN内でアクセスポイント(A)を動作させる方法を提供する。アクセスポイント(A)には複数のリモートステーション(120)と通信する指向性アンテナ(200a)が含まれ、指向性アンテナ(200a)には複数のアンテナパターンが含まれている。本方法には、アクセスポイント(A)と各リモートステーション(120)との間で複数のアンテナパターンに対応する測定された信号品質のそれぞれを関連付けることによってアンテナデータベースを作成するステップが含まれる。それぞれの測定された信号品質は、アクセスポイント(A)によって、各リモートステーション(120)との通信に基づいて決定される。アンテナデータベースに基づいて、選択されたリモートステーション(120)と通信する前に、そうした通信が実際にいつ行われるか、選択されていないリモートステーション(120)のいずれかが知らない可能性があるかどうかも判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に無線LANの分野に関し、詳細には、無線LAN内でアクセスポイントを動作させるアンテナ操向アルゴリズムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な標準規格により、ポータブルコンピュータなどのリモートステーションは無線LAN(WLAN)内で移動し、無線周波数(RF)送信を使用して、有線ネットワークに接続されたアクセスポイント(AP)に接続できる。有線ネットワークは、多くの場合にディストリビューションシステム(distribution system)と呼ばれる。様々な標準規格には、IEEE 802.11標準規格とそれに対応する文字の改訂版(例えば802.1lbや802.11gなど)が含まれる。
【0003】
リモートステーション内とアクセスポイント内の物理レイヤは、ステーションとアクセスポイントが通信する低レベルの伝送を提供する。物理レイヤの上には、例えば、認証、認証解除(deauthentication)、プライバシー、接続(association)、切断(disassociation)などのサービスを提供するメディアアクセス制御(MAC)レイヤがある。
【0004】
動作中に、リモートステーションがオンラインになると、まずステーションの物理レイヤとアクセスポイントの物理レイヤとの間で接続が確立される。次に、MACレイヤが接続できる。通常、リモートステーションとアクセスポイントでは、モノポールアンテナを使用して物理レイヤRF信号を送信および受信する。
【0005】
モノポールアンテナは、すべての方向に(一般的には垂直指向のエレメントに対して水平面内で)放射する。モノポールアンテナは、障害物による電波信号の反射や回折など、リモートステーションとアクセスポイントとの通信の品質を劣下させる作用の影響を受けやすい。障害物には、例えば壁、机、人などが含まれる。このような物体によって、マルチパス、標準の統計的なフェージング、レイリー(Rayleigh)フェージングなどが発生する。結果として、このような作用によって引き起こされる信号劣化を軽減するための努力が払われてきた。
【0006】
【特許文献1】米国特許公開第2002/0008672号明細書
【特許文献2】米国特許第6,515,635号明細書
【特許文献3】米国特許公開第2002/0036586号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RF信号の劣化を抑制する1つの技術は、2つのアンテナを使用してダイバシティを備えることである。リモートステーションとアクセスポイントのいずれかまたは両方において、2つのアンテナがアンテナダイバシティスイッチに接続される。2つのアンテナを使用してアンテナダイバシティを備える方法の背後にある理論は、任意の所与の時間において、2つのアンテナの少なくとも1つがマルチパスの影響を受けていない信号を受信する可能性が高いということである。したがって、このアンテナが、信号を送信/受信するためにアンテナダイバシティスイッチを使用してリモートステーションまたはアクセスポイントにより選択されるアンテナである。それにもかかわらず、無線LAN内では、依然としてリモートステーションとアクセスポイントの間のRF信号劣化に対処する必要がある。
【0008】
アクセスポイントと選択されたリモートステーションが相互に通信していることを、特定のリモートステーションが知らず、このリモートステーションがアクセスポイントと通信しようとする場合は、さらに別の問題が発生する。結果として、アクセスポイントで競合が発生する。このことにより、隠れ端末(Hidden Node)問題と呼ばれる状況が発生する。これは、無線LAN内のすべてのリモートステーションがネットワーク内にある他のすべてのリモートステーションと直接通信できるわけではないという事実による。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の背景に鑑みて、本発明の目的は無線LANにおいて、アクセスポイントとリモートステーションの間の通信を、特に隠れ端末に関して改善することである。
【0010】
簡単なダイバシティに優る改善が、無線LAN内で使用するアクセスポイント(例えば無線ゲートウェイ)のアンテナ操向(antenna steering)プロセスによって提供される。指向性アンテナは、ネットワークのスループットを向上し、アクセスポイントとリモートステーション(例えば無線のユーザデバイス)との間の範囲を拡張する。指向性アンテナは、多くの場合に無指向性アンテナより高い信号対雑音比を提供するので、リンクは高いデータ転送速度によって動作できる。
【0011】
アンテナ操向プロセスは、アクセスポイントのメディアアクセス制御(MAC)レイヤ内に常駐でき、リモートステーションから信号を受信したときに物理レイヤから利用できる信号品質指標(metrics)に基づいて、指向性アンテナの最適なパターンまたは好ましいパターンを選択する。
【0012】
本発明の原理によれば、登録、認証、またはそれに続くアクセスポイントと選択されたリモートステーションとのデータ交換などのプロセスの間に、アクセスポイントのアンテナ操向のための好ましい方向が決定する。1つの実施形態では、アクセスポイントで動作するソフトウェアまたはファームウェアがこれを決定する。アクセスポイントのアンテナ制御ソフトウェア/ファームウェアは、リモートステーションのIDと最適な通信パフォーマンスを実現するためのそのステーションに関連付けられたアンテナ方向を格納するデータベースを構築してもよい。
【0013】
一般的な802.11装置において、指向性アンテナの好ましい角度を選択するための固有のダイバシティ選択回路で動作するハードウェアを使用してもよい。アクセスポイントは、シグナリング(signaling)を使用してリモートステーションにプローブ応答信号を送信させ、アクセスポイントはプローブ応答信号の信号品質を測定する。アクセスポイントは、指向性アンテナモードでリモートステーションから受信した信号に対応する指標を、無指向性モードでリモートステーションから受信した信号に対応する指標と比較し、新しいアンテナスキャンを実行する必要があるかどうかを判定する。アクセスポイントで隠れ端末が存在すると判定した場合は、例えば802.11標準規格で定義する送信要求/送信可(RTS/CTS:request−to−send/clear−to−send)メッセージングを使用して防止メカニズムを呼び出すことができる。
【0014】
指向性アンテナを備えるアクセスポイントを増加させることの利点は2つある。つまり、個々のリモートステーションのスループットが向上することと、ネットワーク内でより多くのユーザをサポートできることである。多くのRF環境において、リモートステーションで受信する信号レベルは、アクセスポイントがステーションの方に向けて成形されたアンテナビームを使用して送信することによって向上する。成形されたアンテナビームは、例えば通常はアクセスポイントに配置する無指向性アンテナに比べて3〜5dBのゲインの効果が得られる。信号レベルの向上により、アクセスポイントとリモートステーションとのリンクは、特にカバリッジ範囲の外側帯域において、より高いデータ転送速度で動作できる。指向性アンテナの操向プロセスは、アクセスポイント内に常駐してリモートステーションの操作をサポートする。
【0015】
より詳細には、本発明は無線LAN(WLAN)内でアクセスポイントを操作する方法を対象とする。ここで、アクセスポイントは複数のリモートステーションと通信するための指向性アンテナを備えており、指向性アンテナは複数のアンテナパターンを備えている。本方法は、アクセスポイントと各リモートステーションとの間で複数のアンテナパターンに対応するそれぞれの測定された信号品質を関連付けることによって、アンテナデータベースを作成するステップを備えている。それぞれの測定された信号品質は、アクセスポイントによって各リモートステーションとの通信に基づいて決定される。
【0016】
本方法は、リモートステーションごとにアンテナデータベースに基づいて好ましいアンテナパターンを決定するステップと、リモートステーションおよびそれに対応する通信のための好ましいアンテナパターンを選択するステップとをさらに備えている。アンテナデータベースに基づき、選択されたリモートステーションと通信する前に、そうした通信が実際にいつ行われるかを、選択されていないリモートステーションのいずれかが知らない可能性があるかどうかが判定される。
【0017】
選択されていないリモートステーションのいずれかが、こうした通信が実際にいつ行われるか知らない可能性があるかどうかを判定するステップは、選択されたリモートステーションについて好ましいアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質を、同じ好ましいアンテナパターンを使用した場合の選択されていないリモートステーションに関連付けられたそれぞれの信号品質と比較するステップを備えている。測定されたそれぞれの信号品質は、受信信号強度表示(received signal strength indication)、搬送波対干渉比(carrier−to−interference ratio)、ビットあたりのエネルギー比(energy−per−bit ratio)、信号対雑音比の少なくとも1つを含むことができる。
【0018】
複数のアンテナパターンは、無指向性アンテナパターンを備えていてもよい。また、こうした通信が実際にいつ行われるか、選択されていないリモートステーションの少なくとも1つが知らないと判定された場合に、本方法は無指向性アンテナパターンを使用して要求のない(unsolicited)送信可メッセージを複数のリモートステーションに送信するステップをさらに備えることができる。送信可メッセージは、複数のリモートステーションのいずれにも対応していない未使用のアドレスを備えている。
【0019】
代替的に、こうした通信が実際にいつ行われるか、選択されていないリモートステーションの少なくとも1つが知らないと判定された場合に、本方法は、無指向性アンテナパターンを使用して順方向リンクで複数のリモートステーションに送信要求メッセージを送信するステップと、選択されたリモートステーションから送信可メッセージを受信するステップと、選択されたリモートステーションにデータフレームを送信するステップと、選択されたリモートステーションから肯定応答メッセージを受信するステップとをさらに備えることができる。逆方向リンクの場合に、本方法は、選択されたリモートステーションから送信要求メッセージを受信するステップと、選択されたリモートステーションに送信可メッセージを送信するステップと、選択されたリモートステーションからデータフレームを受信するステップと、選択されたリモートステーションに肯定応答メッセージを送信するステップとをさらに備えることができる。
【0020】
アンテナデータベースの作成は、少なくとも3つの方法で実行できる。第1のアプローチは順方向リンクで制御フレームを使用すること、第2のアプローチは逆方向リンクで制御フレームを使用すること、さらに第3のアプローチはプローブ信号を使用することである。
【0021】
順方向リンクで制御フレームを使用してアンテナデータベースを作成する方法は、複数の制御フレームとデータフレームを備えるパケットデータの交換に基づいて順方向リンクの複数のリモートステーションと通信するアクセスポイントを備えており、アンテナデータベースを作成するステップは、第1のリモートステーションから指向性アンテナの第1のアンテナパターンを使用して要求のある第1の制御フレームを受信するステップと、第1のデータフレームを第1のリモートステーションに送信するステップと、第1のリモートステーションから指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第2の制御フレームを受信するステップと、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と第2のアンテナパターンを使用して受信した第2の制御フレームの信号品質とを測定するステップとを備えている。これらのステップは、残りのアンテナパターンについても繰り返される。
【0022】
加えて、本方法は、リモートステーションごとに、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と、第2のアンテナパターンを使用して受信した第2の制御フレームの信号品質とを測定するための受信のステップと送信のステップとを繰り返すステップをさらに備えている。受信した第1の制御フレームは送信可メッセージを含んでおり、受信した第2の制御フレームは肯定応答メッセージを含んでいる。
【0023】
逆方向リンクで制御フレームを使用してアンテナデータベースを作成する方法は、第1のリモートステーションから指向性アンテナの第1のアンテナパターンを使用して第1の制御フレームを受信し、第2の制御フレームを第1のリモートステーションに送信し、第1のリモートステーションから指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第1のデータフレームを受信し、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と第2のアンテナパターンを使用して受信した第1のデータフレームの信号品質とを測定するアクセスポイントを備えている。これらのステップは、残りのアンテナパターンについても繰り返される。
【0024】
本方法は、リモートステーションごとに、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と、第2のアンテナパターンを使用して受信した第1のデータフレームの信号品質とを測定するための受信のステップと送信のステップとを繰り返すステップをさらに備えている。受信した第1の制御フレームは送信要求メッセージを含んでおり、送信された第2の制御フレームは送信可メッセージを含んでいる。
【0025】
プローブ信号を使用してアンテナデータベースを作成する方法は、全方位角と複数の指向性角を備える指向性アンテナに基づいており、アンテナデータベースを作成するステップは、第1のリモートステーションを選択するステップと、指向性アンテナの全方位角を使用して第1のプローブ信号を第1のリモートステーションに送信するステップと、全方位角を使用して、第1のプローブ信号に応答する第1のリモートステーションから受信した第1のプローブ応答信号を測定するステップとを備えている。第2のプローブ信号のそれぞれが指向性アンテナの複数の指向性角の各1つを使用して第1のリモートステーションに送信され、各指向性角を使用して、第2のプローブ信号のそれぞれに応答する第1のリモートステーションから受信した第2のプローブ応答信号が測定される。
【0026】
プローブ信号を使用する場合に、本方法は、複数のリモートステーションから次のリモートステーションを選択するステップと、選択された次のリモートステーションに第1および第2のプローブ信号を送信するステップと選択された次のリモートステーションから受信した第1および第2のプローブ応答信号を測定するステップとを繰り返すステップとをさらに備えている。これらのステップは、複数のリモートステーションの残りのリモートステーションのそれぞれについて繰り返される。第1のプローブ信号は送信要求(RTS)メッセージを含んでおり、第1のプローブ応答信号は送信可(CTS)メッセージを含んでいる。さらに、第2のプローブ信号はRTSメッセージを含んでおり、第2のプローブ応答信号はCTSメッセージを含んでいる。
【0027】
アクセスポイントは、IEEE 802.11標準規格とIEEE 802.16標準規格の少なくとも1つに基づいて動作する。指向性アンテナは、少なくとも1つの能動素子と複数の受動素子を備えている。
【0028】
本発明の別の態様は、複数のアンテナパターンを備える指向性アンテナと、指向性アンテナに接続し、指向性アンテナを制御するコントローラを備える無線LAN(WLAN)のアクセスポイントを対象とする。コントローラは、各リモートステーションとの間で複数のアンテナパターンに対応するそれぞれの測定された信号品質を関連付けることによってアンテナデータベースを作成し、それによって複数のリモートステーションと通信する。それぞれの測定された信号品質は、各リモートステーションとの通信に基づいて決定される。
【0029】
コントローラは、リモートステーションごとにアンテナデータベースに基づいて好ましいアンテナパターンを決定し、リモートステーションとそれに対応する通信のための好ましいアンテナパターンを選択する。アンテナデータベースに基づいて、選択されたリモートステーションと通信する前に、そうした通信が実際にいつ行われるかを、選択されていないリモートステーションが知らない可能性があるかどうかを判定する。
【0030】
前述の、およびそれ以外の本発明の目的、機能、利点は、添付の図面に示す本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明で明らかになるであろう。図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、本発明の原理を示すことが強調されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本明細書の以下の部分では、本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照しながら、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態で実施でき、本明細書で説明する実施形態に限定されると解釈してはならない。むしろ、本開示を十分で完成されたものにするため、および本発明の範囲を当業者に詳細に説明するためにこうした実施形態が提示されている。全体を通じて、同じ番号は同じエレメントを表しており、プライム表記は代替の実施形態における同様のエレメントを示している。
【0032】
図1Aを参照しながら、まずディストリビューションシステム105を備える無線LAN(WLAN)100について説明する。アクセスポイント110a、110b、110cは、有線データネットワーク接続などの有線接続を経由してディストリビューションシステム105に接続する。アクセスポイント110a、110b、110cのそれぞれは、無線周波数(RF)信号を介して、リモートステーション120a、120b、120cと通信可能なそれぞれのゾーン(zone)115a、115b、115cを備えている。リモートステーション120a、120b、120cは、無線LANのハードウェアとソフトウェアでサポートされており、ディストリビューションシステム105にアクセスする。以下の説明において、アクセスポイント、リモートステーション、およびゾーンを一般的に参照する場合は、それぞれ参照番号110、120、115を使用する。
【0033】
本技術は、アクセスポイント110とリモートステーション120に、アンテナダイバシティを提供する。アンテナダイバシティにより、アクセスポイント110とリモートステーション120は、受信する信号の品質に基づいて、送信および受信の機能を備える2つのアンテナのいずれかを選択できる。2つのうち1つを選択するのは、マルチパスフェージングの場合に、1つの信号が2つの異なる経路をとることにより、一方のアンテナでは信号の相殺(cancellation)が発生し、他方では発生しないためである。別の例は、同一のアンテナで受信する2つの異なる信号によって干渉が発生する場合である。2つのアンテナのうち1つを選ぶ別の理由として、矢印125が示すように、リモートステーション120cが第3のゾーン115cから第1のゾーン115aまたは第2のゾーン115bに移動するといった変化する環境がある。
【0034】
図1Bは、図1Aに示すネットワーク100の一部のブロック図であり、本発明の原理を利用するアクセスポイント110bについて、指向性アンテナローブ(directive antenna lobes)130a〜130iに関連してより詳細に示している。指向性アンテナローブ130a〜130iは、全体として参照番号130によっても示される。アクセスポイント110bは、その環境をスキャンする間に、アンテナローブ130を順次配列することによって、好ましいアンテナの方向を決定する。
【0035】
スキャン中に、アクセスポイント110bは、図2Aと図2Bにより詳細に示すように、指向性アンテナを使用してリモートステーション120bから送信されたRF信号を探索してスキャンを行う。スキャンの各方向(すなわち角度またはアンテナパターン)で、アクセスポイント110bは信号またはプローブ応答を測定し、そのスキャン角度のそれぞれの指標(metric)を計算する。こうした指標の例には、受信信号の品質または信号環境の受信信号強度表示(RSSI:received signal strength indication)、搬送波対干渉波(C/I:carrier−to−interference)、ビットあたりエネルギー比(energy−per−bit ratio)(Eb/No)、または信号対雑音比(SNR:signal−to−noise ratio)など、その他の適切な基準が含まれる。当業者には言うまでもないが、これらの測定値の組合せによっても、最適なアンテナパターンまたは好ましいアンテナパターンが決定される。測定された信号の品質指標に基づき、アクセスポイント110bは、リモートステーション120bとの通信において好ましいアンテナの角度または方向を決定する。
【0036】
スキャンを実行するのは、リモートステーション110bが認証され、ディストリビューションシステム105に接続する前でも後でもよい。したがって、最初のアンテナスキャンは、MACレイヤ内で実行してもよい。代わりに、最初のスキャンはMACレイヤの外部で実行してもよい。同様に、スキャンは、リモートステーション110bが認証され、ディストリビューションシステム105に接続した後に、MACレイヤ内で実行されてもよいし、MACレイヤ外で起こるプロセスによって実行されてもよい。
【0037】
図2Aは、外付けの指向性アンテナアレイ200aを使用するアクセスポイント110を示す図である。指向性アンテナアレイ200aには、5つのモノポール受動アンテナエレメント205a、205b、205c、205d、205e、および1つのモノポール能動アンテナエレメント206が含まれる。受動アンテナエレメント205a、205b、205c、205d、205eは、以下では参照番号205で総称する。指向性アンテナエレメント200aは、USBポート215を経由してアクセスポイント110に接続する。指向性アンテナアレイ200aとアクセスポイント110とを接続する他の方法も、容易に使用できる。
【0038】
指向性アンテナアレイ200a内の受動アンテナエレメント205は、受信機にも送信機にも接続せず(parasitically)、能動アンテナエレメント206に結合してスキャンを可能にする。スキャンにより、指向性アンテナアレイ200aの少なくとも1つのアンテナビームは、オプションで受動アンテナエレメント205の数に関連付けられた増分で360度回転できる。
【0039】
指向性アンテナアレイ200aについての詳しい説明は、参照により開示全体が本明細書に組み込まれており、本発明の現在の譲受人に譲渡されている、2002年1月24日に公開された特許文献1に提示されている。指向性アンテナアレイ200aによって受信または送信された信号に基づいて、アンテナの方向を最適化する方法の例についても、特許文献1に説明されている。
【0040】
さらに、指向性アンテナアレイ200aは無指向性(omni−directional)モードで使用でき、無指向性のアンテナパターンを備えることができる。アクセスポイント110は、無指向性パターンを使用して送信または受信できる。アクセスポイント110は、リモートステーション120に送信する場合、またはリモートステーション120から受信する場合に、選択した指向性アンテナを使用することもできる。
【0041】
図2Bは、内蔵の指向性アンテナ220bを備えるアクセスポイント110の投影図である。この実施形態において、指向性アンテナアレイ200bはPCMCIAカード220上にある。PCMCIAカード220は、アクセスポイント110に装着されており、プロセッサ(図示せず)に接続している。指向性アンテナアレイ200bは、図2Aに示す指向性アンテナアレイ200aと同様の機能を備えている。
【0042】
他の様々な形態の指向性アンテナアレイを使用できることを理解されたい。この例には、本発明の現在の譲受人に譲渡されており、参照により開示全体が本明細書に組み込まれている2003年2月4日に出願した特許文献2、ならびに2002年3月28日に公開された特許文献3において説明されたアレイが含まれる。
【0043】
図3Aは、前述の受動アンテナエレメント205と能動アンテナエレメント206を含む指向性アンテナアレイ200aを詳細に示す図である。図3Bに関連して後述するように、指向性アンテナアレイ200aには、受動アンテナエレメントが電気的に結合するグラウンドプレーン(ground plane)330も含まれる。
【0044】
引き続き図3Aを参照すると、指向性アンテナアレイ200aは、アンテナエレメント205aと205eから角度を付けた指向性アンテナローブ300を備える。これは、アンテナエレメント205aと205eが反射モードにあり、アンテナエレメント205b、203c、205dが送信モードにあることを示している。換言すると、能動アンテナエレメント206と受動アンテナエレメント205が相互に結合することにより、指向性アンテナアレイ200aは、この場合、図示されたように受動エレメント205が設定されたモードにより方向付けられた指向性アンテナローブ300をスキャンする。当業者には言うまでもないが、受動アンテナエレメント205の様々なモードの組合せによって、様々なアンテナローブ300のパターンと角度が得られる。
【0045】
図3Bは、受動アンテナエレメント205を反射モードまたは送信モードに設定するために使用できる回路の例を示す概略図である。反射モードは、代表的な長い破線305で示し、送信モードは短い破線310で示している。代表的なモード305と310は、それぞれ誘導性エレメント(inductive element)320または容量性エレメント(capacitive element)325を経由してグラウンドプレーン330に結合することによって発生する。誘導性エレメント320または容量性エレメント325を経由した受動アンテナエレメント205aの結合は、スイッチ315を使用して実行される。スイッチ315は、受動アンテナエレメント205aをグラウンドプレーン330に結合できる機械的スイッチでも電気的スイッチでもよい。スイッチ315は、制御信号335を使用して設定される。
【0046】
受動アンテナエレメント205aは、誘電性エレメント320を経由してグラウンドプレーン330に結合すると、代表的な長い破線305に示すように実効的に伸長される。これは、能動アンテナエレメント206との相互結合を経由して受動アンテナエレメント205aに結合するRF信号の「バックボード(backboard)」となっていると考えられる。図3Aの場合は、受動アンテナエレメント205aと205eの両方が、それぞれ誘導性エレメント320を経由してグラウンドプレーン330に接続される。同時に、図3Aの例では、他の受動アンテナエレメント205b、205c、205dが、それぞれ容量性エレメント325を経由してグラウンドプレーン330に電気的に接続される。
【0047】
受動アンテナエレメントは、容量性エレメントに結合すると、代表的な短い破線310に示すように実効的に短縮される。すべての受動エレメント325を容量性エレメントに結合させると、指向性アンテナアレイ200aは実効的に無指向性アンテナになる。受動アンテナエレメント205とグラウンドプレーン330の間には、例えば遅延線(delay lines)や集中定数インピーダンス(lumped impedances)といった他の結合技術を使用してもよいことを理解されたい。
【0048】
図9に進むと、指向性アンテナアレイ200aまたは200bを使用して無指向性アンテナパターン905と指向性アンテナパターン910を生成するアクセスポイント110bを上から見た図(overhead view俯瞰図)が示されている。アクセスポイント110bは、複数のステーション120a〜120dと通信する。アクセスポイント110は通常は離れて設置されており、近くに障害物や移動する反射体(例えば壁の高い部分や天井)がないので、好ましいアンテナパターン方向の選択は、所定のリモートステーション120との接続中は変更されない場合が多い。
【0049】
図示されたアクセスポイント110bは、指向性アンテナ200aを使用して、ダウンリンクのデータフレームを選択されたリモートステーション120cに送信できる。ほとんどのブロードキャストおよび制御フレームは、アクセスポイントで無指向性アンテナパターン905と利用可能な最小のデータ転送速度を使用することによって、すべてのリモートステーション120においてそれらを受信することを保証できる。指向性アンテナ200aは、ネットワーク100のカバリッジ範囲を拡大しないが、リモートステーション120に送信されたデータフレームのデータ転送速度を向上させることができる。ネットワーク100を経由して転送されたデータの大半がダウンリンク上に現れるので(例えばウェブページへのアクセス、ファイル転送など)、ダウンリンク速度の向上は効果的である。1つの選択肢は、アクセスポイント110bが無指向性モードでの受信を要求された場合に、空間切り替えダイバシティ(switched spatial diversity)を使用することである。リンクマージンを5dB増大させる可能性があるので、例えば300%のスループット向上にも対応できる。
【0050】
競合期間(CP:contention period)中に、選択されたリモートステーション120cからアクセスポイント110bに送信されたアップリンクデータフレームは、任意のリモートステーションがこのフレームを送信できるので、無指向性アンテナパターンを使用して受信される。大規模なフレームについては、ネットワーク構成からリモートステーションに対して送信要求/送信可(RTS/CTS)メカニズムの使用が要求され、無線媒体が予約されてもよい。この場合に、アクセスポイント110bは、指向性モードで受信することによってアップリンク上のデータ転送速度を向上できた。これは、リモートステーション120cに実装されたデータ転送速度選択アルゴリズムにある程度依存している。
【0051】
ダウンリンクの伝送において、アクセスポイント110bは、競合期間中に無指向性パターンとより低いデータ転送速度を使用して小さなパケットを転送するように決定してもよい。この理由は、カバリッジ範囲の「もう一方」の側のリモートステーション(例えばリモートステーション120e)は、そこから外れた方向に向けた、指向性アンテナパターン910からのアクセスポイント送信を聞き取ることができないことである。これはよく知られている「隠れ端末(hidden node)」問題であり、2つのリモートステーション120はお互いに聞き取ることができず、ついには同時に送信をすることになる。この場合では、2つのリモートステーションは120cと120eである。特に大きなデータフレームにおいて、この問題を防止する方法については、図7を参照しながら以下で説明する。
【0052】
このように、アクセスポイント110の指向性アンテナパターンは、大規模なネットワークトラフィックであるリモートステーション120とのダウンリンクとアップリンクのデータフレーム交換において、高いデータ転送速度を提供できる。ネットワーク接続性は、アクセスポイント110の無指向性アンテナの公称ゲインに維持される。つまり、リモートステーション120は、アクセスポイント110に接続し、指向性アンテナ200aを使用しなくても接続を維持できる。
【0053】
指向性アンテナ200aの無指向性ならびに指向性の特性を最大限に活用するために、表1に示す一連の規則を定義できる。表1には、アクセスポイント110と現在のアンテナ方向選択に関連付けられるリモートステーション120のアドレスが記載されている。表1は、802.11標準規格(標準規格中の表21と22)からのフレームシーケンスに基づいてアンテナ方向を選択する例を示している。表1において、「Dir」は方向を、「UL」はアップリンクを、「DL」はダウンリンクを示している。
【0054】
【表1】
【0055】
プロセスは、どんな場合に無指向性パターンを選択するか、およびどんな場合に指向性パターンを選択するかを決定する一連の規則によって説明できる。例えば、アクセスポイント110は、1つのリモートステーション120との間の送信または受信の合間に指向性パターンを選択してもよい。
【0056】
アクセスポイント110のインターフェースを示すブロック図が図4に示されている。図示されたアクセスポイント110には、様々なサブシステムとレイヤが含まれている。アンテナサブシステム405には、指向性アンテナ200bとサポートする回路、バス、および指向性アンテナを操作するソフトウェアを含めてもよい。アンテナサブシステム405は、物理レイヤ410にインターフェースしてこのレイヤにRF信号412を提供する。
【0057】
物理レイヤ410は、RF信号412を処理してアンテナ操向プロセス420に対する信号品質測定値417を決定する。物理レイヤ410は、RF信号412に基づいて処理した信号を、MACレイヤ415に送信する。MACレイヤ415はタイミング制御メッセージ422を生成する。このメッセージはアンテナ操向プロセス420にも送信され、必要に応じてアンテナを無指向性モードまたは指向性モードに切り替える。
【0058】
MACレイヤ415は、さらにデータフレーム429を他のプロセス(図示せず)に送信する。図示された物理レイヤ410、MACレイヤ415、およびアンテナ操向プロセス420は、コントローラ400内に常駐してもよい。アンテナ操向プロセス420は、例えばスタンドアロンのメモリやプロセッサに内蔵されたメモリなどのメモリに格納してもよい。
【0059】
アンテナ操向プロセス420は、各リモートステーション120がアンテナをスキャンする間に作成された受信信号品質測定値417の関数として、「アンテナテーブルもしくはデータベース」、または「方向テーブルもしくはデータベース」425を維持する。例えば、方向テーブル425には、ステーションIDおよびリモートステーション120との指向性をもった通信に対応するアンテナ方向(A、B、C)を格納できる。方向テーブル425内のアンテナ方向が決定すると、アンテナ操向プロセス420を使用してアンテナサブシステム405に指向性アンテナ制御427が提供される。信号品質測定値417が、無指向性モードで最大のデータ転送速度をサポートできることを示す所定のしきい値を超えている場合は、アンテナ方向を無指向性(O)モードに保持してもよい。
【0060】
以下の各段落では、指向性アンテナ220bをアクセスポイント110からリモートステーション120に向ける好ましい方向を決定するための、本発明による様々な技術について説明する。第1の技術では、空間ダイバシティ選択メカニズムを使用する。第2の技術では、アクセスポイント110とリモートステーション120の間で交換されるプローブ信号シーケンスを使用する。第3の技術では、アクセスポイント110における受信アンテナ方向の信号品質測定値を求める制御メッセージ(例えばACKやCTS)を使用する。第3の技術は、順方向と逆方向の両方のリンクに適用できる。
【0061】
第1の技術では、現在の802.11デバイスにアンテナ切り替えダイバシティのスキャン/制御が組み込まれていること、および802.11a/802.11g/802.1lnといった将来の802.11デバイスも切り替えダイバシティをサポートすることが想定されている。第1の技術は、リモートステーション120が認証を行い、ステーション自体をネットワークに接続した後に適用できる。最初のアンテナスキャンは、MAC/ネットワークレイヤプロトコル内で実行されることが想定されている。指向性またはマルチエレメントアンテナ220aを使用すると、第1の技術ではダイバシティプロトコルを利用してアンテナ位置/選択を最新に維持できる。
【0062】
次に図6を参照すると、第1の技術は以下のように機能する。図示されたアクセスポイント110’には、アンテナサブシステム405’に接続されたコントローラ600’が含まれる。コントローラ600’は、アンテナ制御信号にアクセスできる物理レイヤ410’とMACレイヤを備えている(図4)。MACレイヤは、レジスタA 605a’とレジスタB 605b’に選択したアンテナを書き込む。レジスタA 605a’には選択したアンテナ位置が格納され、レジスタB 605b’は候補となるアンテナ位置が格納される。物理レイヤ410’は、マルチプレクサ610’とも通信している。物理レイヤ410’は、ダイバシティ選択スイッチ制御信号607’を一般的なダイバシティ選択制御法によってマルチプレクサ610’に送信するが、この場合では、ダイバシティ選択スイッチ制御信号はレジスタA 605a’の内容を使用するかレジスタB 605b’の内容を使用するかを制御する。
【0063】
選択されたアンテナ位置は、まずはネットワーク認証/接続プロトコル実行中に選択される。候補となるアンテナ位置は、他の任意のアンテナ位置でよい(無指向性モードを含む)。有効なパケットを受信した後、またはパケットを受信することなく所定の期間が経過した場合に、所定の順序によって候補となるアンテナ位置が変更される。
【0064】
パケットが正常に受信された後で、物理レイヤ410’は両方のアンテナ位置についての受信信号品質指標(信号強度、信号対ノイズ率、マルチパス/イコライザー指標など)をMACレイヤに送信する。パケット受信中に、物理レイヤ410’は、ここで802.11と同様に機能する。つまり、2つのアンテナ位置の間で切り替えを行い、パケットを受信するための最適なアンテナ位置を使用する。物理レイヤ410’で有効なパケットを受信した後に、2つのアンテナ位置の信号品質指標がMACレイヤに送信される。
【0065】
MACレイヤは、選択されたアンテナ位置と候補となるアンテナ位置の両方を更新する。選択されたアンテナ位置は、物理レイヤ410’から受信したデータに基づいて最適な位置に置き換えられる。フィルタリング/ヒステリシスを使用することによって、2つのアンテナ位置間の「ピンポンのように頻繁な切り替え(ping−ponging)」を回避できる。
【0066】
前述のように、この技術では現在の802.11アンテナ切り替えダイバシティの方法を利用している。この第1の技術は、ハードウェア、ソフトウェア/ファームウェア、またはこれらの組合せを含むことができることを理解されたい。
【0067】
次に図10を参照しながら、空間ダイバシティに基づいてWLAN 100内のアクセスポイント110を動作させる前述の方法のフロー図について説明する。本方法は、ブロック1000において開始される。指向性アンテナ220bの現在の角度を使用して、リモートステーション120と通信するステップ(ブロック1010)を備えている。ブロック1020において、プリアンブル(preamble)中にリモートステーション120と通信する指向性アンテナ220bの複数の他の角度についてスキャンを行う。ブロック1030において、リモートステーション120から現在の角度と複数の他の角度を使用して受信した各信号を測定する。ブロック1040において、プリアンブル中に、測定された信号に基づいて、現在の角度または複数の他の角度のうち1つを好ましい角度として選択し、リモートステーション120との通信を続行する。ブロック1050において本方法が終了する。
【0068】
第2の技術は、アクセスポイント110からリモートステーション120へのRTSメッセージの送信と、これに応答してリモートステーションからアクセスポイントに送信したCTSメッセージの受信に基づいている。802.11標準規格では、プローブ要求/プローブ応答の交換も規定されている。通常、この信号はリモートステーション120で他のステーション120へのリンクの品質を決定するために使用する。
【0069】
アクセスポイント110において選択されたリモートステーション120に対する好ましい方向を決定するために使用する場合は、図8に示すように、アクセスポイント110は無指向性パターンと候補となる指向性パターン130のそれぞれを使用してプローブ要求信号805を送信し、それぞれのパターンで動作する間にリモートステーション110から返送されたプローブ応答信号810の信号品質を測定する。
【0070】
この方法は、これらの応答フレーム810を測定することによって、前述のダイバシティ選択技術よりも信頼性の高い技術となっている。この第2の技術は、リモートステーション120がアクセスポイント110に接続した直後に、少なくとも一度使用するのが好ましい。ただし、さらにプローブ要求/プローブ応答信号を使用することによってネットワーク効率に影響が出るが、この交換は頻繁に行わなくてもよい。
【0071】
次に、図11を参照しながら、プローブ信号に基づいてWLAN 100内のアクセスポイント110を動作させる前述の方法のフロー図について説明する。本方法は、ブロック1100において開始され、リモートステーション120を選択するステップ(ブロック1110)と、指向性アンテナ220bの全方位角を使用して第1のプローブ信号を選択されたリモートステーションに送信するステップ(ブロック1120)と、第1のプローブ信号に応答する選択されたリモートステーションから、全方位角を使用して受信した第1のプローブ応答信号を測定するステップ(ブロック1130)とを備えている。
【0072】
ブロック1140において、指向性アンテナ220bの複数の指向性角の1つを使用して第2のプローブ信号のそれぞれを選択されたリモートステーション120に送信し、ブロック1150において、第2のプローブ信号に応答する選択されたリモートステーションから各指向性角を使用して受信した第2のプローブ応答信号を測定する。ブロック1160において、選択されたリモートステーション120からの測定された第1のプローブ応答信号と測定された第2のプローブ応答信号のそれぞれをアンテナデータベースに格納する。
【0073】
ブロック1170において、測定された第2のプローブ応答信号に基づいて、選択されたリモートステーション120への好ましい指向性角を選択する。ブロック1180において、全方位角からの測定された第1のプローブ応答信号を好ましい指向性角からの測定された第2のプローブ応答信号と比較する。第1のプローブ信号は送信要求(RTS)メッセージを含んでおり、第1のプローブ応答信号は送信可(CTS)メッセージを含んでいる。同様に、第2のプローブ信号はRTSメッセージを含んでおり、第2のプローブ応答信号はCTSメッセージを含んでいる。ブロック1190において、この比較に基づいて全方位角または好ましい指向性角を選択し、選択されたリモートステーション120との通信を続行する。ブロック1195において本方法は終了する。
【0074】
第3の技術では、アクセスポイント110とリモートステーション120の間の標準的なデータ交換で使用される制御フレームを利用する。この技術は、順方向リンクの通信と逆方向リンクの通信の両方において使用できる。送信可(CTS)メッセージと肯定応答(ACK)メッセージは比較的低いデータ転送速度によって送信されるので、アクセスポイント110はこれらのメッセージを使用して無指向性パターン905と現在選択されている指向性パターン130とを比較できる。これについては、アンテナ選択のタイミングを図5Aに破線で示している。これは、現在選択されている方向130が無指向性パターン905に対して優位を維持しているかどうか判定する方法として利用できる。この優位は、通常は所定のしきい値に基づいており、信号品質指標がほぼ同等の2つのアンテナパターンの間で頻繁な切り替えが発生するのを防止する。
【0075】
例えば、CTSメッセージの間に、無指向性モードを利用してこのメッセージを受信し、第1の信号品質測定値を計算する。ACKメッセージの間に、テストアンテナ方向を使用してこのメッセージを受信し、第2の信号品質測定値を計算する。第1と第2の信号品質測定値を比較し、テストアンテナ方向を保存するかどうかを判定する。つまり、指向性モードは無指向性モードより高いゲインを提供するかどうかである。指向性アンテナの2つの異なる方向間で、比較をすることもできる。
【0076】
図5Bに示すように、逆方向リンクのデータ送信の間に同様のタイプの測定と比較を行ってもよい。ACKメッセージの間に、アクセスポイント110は、信号品質の測定値を計算し、これを無指向性モードの測定値、または他の指向性モードの測定値と比較できる。選択されたリモートステーション110との複数の通信について比較を行ってから、別のアンテナ方向をスキャンしてもよい。
【0077】
図4に示す方向テーブル425は、前述の無指向性および選択された指向性アンテナパターンによる1つまたは複数のプロセスからの信号品質測定値で拡張してもよい。優位性の低下が所定のしきい値を超える場合に、アクセスポイント110は無指向性の選択に戻り、前述の最初の2つの技術を使用してアンテナ検索を実行する。
【0078】
リモートステーション120が省電力モードになった場合、またはデータ送信のないアイドル期間が長く続いた場合は、アクセスポイント110は無指向性パターンの選択に戻る。リモートステーション120が再びアクティブになった場合に、アクセスポイント110はもう一度別のアンテナ検索を実行してもよい。
【0079】
次に、図12と図13を参照しながら、順方向リンクと逆方向リンクの制御フレームに基づいて、WLAN 100内のアクセスポイント120を動作させる方法のフロー図のそれぞれについて説明する。本方法は、ブロック1200において開始され、リモートステーション120から指向性アンテナ220bの第1のアンテナパターンを使用して順方向リンクの第1の制御フレームを受信するステップ(ブロック1210)と、第1のデータフレームをリモートステーションに送信するステップ(ブロック1220)と、リモートステーションから指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第2の制御フレームを受信するステップ(ブロック1230)とを備えている。ブロック1240において、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と、第2のアンテナパターンを使用して受信した第2の制御フレームの信号品質を測定する。ブロック1250において、第1のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質と第2のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質とを比較する。ブロック1260において、第2のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質が第1のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質を所定のしきい値だけ超えた場合は、リモートステーション120に第2のデータフレームを送信するために第2のアンテナパターンを選択する。受信した第1の制御フレームは送信可メッセージを含んでおり、受信した第2の制御フレームは肯定応答メッセージを含んでいる。ブロック1270において、本方法は終了する。
【0080】
逆方向リンクの制御フレームに基づいてWLAN 100内でアクセスポイント120を動作させる方法は、ブロック1300において開始され、リモートステーションから指向性アンテナ220bの第1のアンテナパターンを使用して第1の制御フレームを受信するステップ(ブロック1310)と、リモートステーションに第2の制御フレームを送信するステップ(ブロック1320)と、リモートステーションから指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第1のデータフレームを受信するステップ(ブロック1330)とを備えている。ブロック1340において、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と、第2のアンテナパターンを使用して受信した第1のデータフレームの信号品質を測定する。ブロック1350において、第1のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質と第2のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質とを比較する。ブロック1360において、第2のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質が第1のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質を所定のしきい値だけ超えた場合は、アクセスポイント110からリモートステーション120に第2のデータフレームを送信するために第2のアンテナパターンを選択する。受信した第1の制御フレームは送信要求メッセージを含んでおり、送信された第2の制御フレームは送信可メッセージを含んでいる。ブロック1370において、本方法は終了する。
【0081】
第4の技術は、隠れ端末防止技術であり、アクセスポイント110において指向性アンテナ220bを使用する場合に、隠れ端末の発生を抑制したり除去したりするための防止メカニズムを提供する。隠れ端末は、クセスポイント110と選択されたリモートステーション120との間の通信を、ネットワーク100内のすべてのリモートステーション120が聞き取ることができるわけではない場合に発生する。したがって、聞き取ることができないリモートステーションは、媒体使用中に送信をする可能性がある。したがって、特にアクセスポイント110において競合が発生する。
【0082】
アクセスポイント110からリモートステーション120に送信するデータがある場合に、制御プロセスは図4に示す方向テーブル425をスキャンして選択されたアンテナ方向を設定し、隠れ端末の可能性がないかを判定する。例えば、アクセスポイント110が選択されたアンテナ方向とは逆方向にあるリモートステーション120を探索するとする。
【0083】
図7のタイミング図を参照すると、隠れ端末の可能性が存在すると制御ソフトウェアが判定した場合に、アクセスポイント110はまずアンテナ220aの無指向性モードを使用して既知の使用されていないMACアドレスにCTSメッセージを送信する。このプロセスは、ネットワーク内のすべてのリモートステーション120に交換が発生することを通知し、交換が終了するまで送信をしないように指示する役割を果たす。次に、アクセスポイント110は意図されたリモートステーション120用に選択したアンテナ方向に切り替わり、通信を続行する。隠れ端末問題を防止する別の方法は、所望のリモートステーション120との4wayのフレーム交換プロトコル(RTS、CTS、データ、ACK)を実行することである。
【0084】
隠れ端末の可能性がないと制御ソフトウェアが判定した場合は、アクセスポイント110がCTSメッセージを送信せず、アクセスポイント110の適切な方向に設定されたアンテナを使用してただちに通信を開始できる。図5Aに示すように、ネットワークプロトコルで必要とされる場合に、RTSメッセージは意図された受信機のアドレスを指定できるので、CTSメッセージは肯定応答としてアクセスポイント110に返される。
【0085】
図7を参照しながら前述したプロセスにおいて、リモートステーション120で送信を停止するために必要なのはCTSメッセージだけであり、RTSメッセージはアクセスポイント110から送信されないので効率がよくなる。標準802.11プロトコルヘッダーのIDセクションに示されているリモートステーション120は、特定のリモートステーションでデータフレームを受信することを保証する。
【0086】
次に図14を参照しながら、隠れ端末の認識に基づいてWLAN 100内のアクセスポイント120を動作させる方法のフロー図について説明する。本方法は、ブロック1400で開始され、アクセスポイント110と各リモートステーション120との間で複数のアンテナパターンに対応するそれぞれの測定された信号品質を関連付けることによってアンテナデータベースを作成するステップ(ブロック1410)を備えている。それぞれの測定された信号品質は、アクセスポイント110によって各リモートステーション120との通信に基づいて決定される。ブロック1420において、リモートステーション120ごとにアンテナデータベースに基づいて好ましいアンテナパターンを決定し、ブロック1430において、リモートステーションと通信するための対応する好ましいアンテナパターンを選択する。ブロック1440において、アンテナデータベースに基づいて、選択されたリモートステーションと通信する前に、選択されていないリモートステーションがそうした通信が実際にいつ行われるかを知らない可能性があるかどうかを、判定する。これは、好ましいアンテナパターンを使用した場合の選択されたリモートステーションに関連付けられた測定された信号品質を、同様に好ましいアンテナパターンを使用した場合の選択されていないリモートステーションに関連付けられたそれぞれの信号品質と比較することによって決定される。
【0087】
ブロック1450において、隠れ端末の可能性がある場合は、アクセスポイント110と選択されたリモートステーション120とが互いに通信することを通知するメッセージをブロードキャストする。前述のように、このブロードキャストは、リモートステーション120への無指向性アンテナパターンを使用した要求のない(unsolicited)送信可メッセージの形態をとることができる。CTSは、リモートステーション120のいずれにも対応していない、未使用のアドレスを含んでいる。他の方法としては、4wayのフレーム交換プロトコル(RTS、CTS、データ、ACK)が選択されたリモートステーション120で実行され、隠れ端末問題を防止する。ブロック1460において、本方法は終了する。
【0088】
本発明について、その好ましい実施形態に関連して詳細に示し、説明してきた。添付の特許請求の範囲に示す本発明の範囲を逸脱することなしに、その形態および細部に様々な変更を加えることが可能なことは、当業者には理解されるであろう。例えば、アクセスポイントはIEEE 802.11標準には限定されない。当業者には言うまでもないが、前述のアクセスポイントのアンテナアルゴリズムは、他のタイプのLAN(IEEE 802.16標準規格で定義するものなど)にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1A】本発明の原理を使用する無線LAN(WLAN)を示す概略図である。
【図1B】図1Aに示すWLAN内のアンテナスキャンを実行するアクセスポイントを示す概略図である。
【図2A】外付けの指向性アンテナアレイを備える図1Aのアクセスポイントを示す図である。
【図2B】内蔵のPCMCIAカードに組み込まれた指向性アンテナアレイを備える図2Aのアクセスポイントを示す図である。
【図3A】図2Aの指向性アンテナアレイを示す図である。
【図3B】図3Aに示す指向性アンテナのアンテナエレメントの状態を選択するためのスイッチを示す概略図である。
【図4】本発明の原理によるサブシステム、レイヤ、およびアンテナ操向プロセスを使用する図1Aのアクセスポイントを示すブロック図である。
【図5A】図4のアンテナ操向プロセスで選択的に使用される信号を示す図である。
【図5B】図4のアンテナ操向プロセスで選択的に使用される他の信号を示す図である。
【図6】アンテナダイバシティ回路を使用した図4の他のブロック図である。
【図7】図4のアンテナ操向プロセスで選択的に使用される、隠れ端末技術を使用した信号を示す図である。
【図8】双方向のシグナリングを行う図1のネットワークを上から見た図である。
【図9】アンテナビームを示した図1のネットワークを上から見た図である。
【図10】本発明による空間ダイバシティに基づいてWLAN内のアクセスポイントを動作させる方法を示すフロー図である。
【図11】本発明によるプローブ信号に基づいてWLAN内のアクセスポイントを動作させる方法を示すフロー図である。
【図12】本発明による順方向リンクの制御フレームに基づいてWLAN内のアクセスポイントを動作させる方法を示すフロー図である。
【図13】本発明による逆方向リンクの制御フレームに基づいてWLAN内のアクセスポイントを動作させる方法を示すフロー図である。
【図14】本発明による隠れ端末認識に基づいてWLAN内のアクセスポイントを動作させる方法を示すフロー図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に無線LANの分野に関し、詳細には、無線LAN内でアクセスポイントを動作させるアンテナ操向アルゴリズムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な標準規格により、ポータブルコンピュータなどのリモートステーションは無線LAN(WLAN)内で移動し、無線周波数(RF)送信を使用して、有線ネットワークに接続されたアクセスポイント(AP)に接続できる。有線ネットワークは、多くの場合にディストリビューションシステム(distribution system)と呼ばれる。様々な標準規格には、IEEE 802.11標準規格とそれに対応する文字の改訂版(例えば802.1lbや802.11gなど)が含まれる。
【0003】
リモートステーション内とアクセスポイント内の物理レイヤは、ステーションとアクセスポイントが通信する低レベルの伝送を提供する。物理レイヤの上には、例えば、認証、認証解除(deauthentication)、プライバシー、接続(association)、切断(disassociation)などのサービスを提供するメディアアクセス制御(MAC)レイヤがある。
【0004】
動作中に、リモートステーションがオンラインになると、まずステーションの物理レイヤとアクセスポイントの物理レイヤとの間で接続が確立される。次に、MACレイヤが接続できる。通常、リモートステーションとアクセスポイントでは、モノポールアンテナを使用して物理レイヤRF信号を送信および受信する。
【0005】
モノポールアンテナは、すべての方向に(一般的には垂直指向のエレメントに対して水平面内で)放射する。モノポールアンテナは、障害物による電波信号の反射や回折など、リモートステーションとアクセスポイントとの通信の品質を劣下させる作用の影響を受けやすい。障害物には、例えば壁、机、人などが含まれる。このような物体によって、マルチパス、標準の統計的なフェージング、レイリー(Rayleigh)フェージングなどが発生する。結果として、このような作用によって引き起こされる信号劣化を軽減するための努力が払われてきた。
【0006】
【特許文献1】米国特許公開第2002/0008672号明細書
【特許文献2】米国特許第6,515,635号明細書
【特許文献3】米国特許公開第2002/0036586号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RF信号の劣化を抑制する1つの技術は、2つのアンテナを使用してダイバシティを備えることである。リモートステーションとアクセスポイントのいずれかまたは両方において、2つのアンテナがアンテナダイバシティスイッチに接続される。2つのアンテナを使用してアンテナダイバシティを備える方法の背後にある理論は、任意の所与の時間において、2つのアンテナの少なくとも1つがマルチパスの影響を受けていない信号を受信する可能性が高いということである。したがって、このアンテナが、信号を送信/受信するためにアンテナダイバシティスイッチを使用してリモートステーションまたはアクセスポイントにより選択されるアンテナである。それにもかかわらず、無線LAN内では、依然としてリモートステーションとアクセスポイントの間のRF信号劣化に対処する必要がある。
【0008】
アクセスポイントと選択されたリモートステーションが相互に通信していることを、特定のリモートステーションが知らず、このリモートステーションがアクセスポイントと通信しようとする場合は、さらに別の問題が発生する。結果として、アクセスポイントで競合が発生する。このことにより、隠れ端末(Hidden Node)問題と呼ばれる状況が発生する。これは、無線LAN内のすべてのリモートステーションがネットワーク内にある他のすべてのリモートステーションと直接通信できるわけではないという事実による。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の背景に鑑みて、本発明の目的は無線LANにおいて、アクセスポイントとリモートステーションの間の通信を、特に隠れ端末に関して改善することである。
【0010】
簡単なダイバシティに優る改善が、無線LAN内で使用するアクセスポイント(例えば無線ゲートウェイ)のアンテナ操向(antenna steering)プロセスによって提供される。指向性アンテナは、ネットワークのスループットを向上し、アクセスポイントとリモートステーション(例えば無線のユーザデバイス)との間の範囲を拡張する。指向性アンテナは、多くの場合に無指向性アンテナより高い信号対雑音比を提供するので、リンクは高いデータ転送速度によって動作できる。
【0011】
アンテナ操向プロセスは、アクセスポイントのメディアアクセス制御(MAC)レイヤ内に常駐でき、リモートステーションから信号を受信したときに物理レイヤから利用できる信号品質指標(metrics)に基づいて、指向性アンテナの最適なパターンまたは好ましいパターンを選択する。
【0012】
本発明の原理によれば、登録、認証、またはそれに続くアクセスポイントと選択されたリモートステーションとのデータ交換などのプロセスの間に、アクセスポイントのアンテナ操向のための好ましい方向が決定する。1つの実施形態では、アクセスポイントで動作するソフトウェアまたはファームウェアがこれを決定する。アクセスポイントのアンテナ制御ソフトウェア/ファームウェアは、リモートステーションのIDと最適な通信パフォーマンスを実現するためのそのステーションに関連付けられたアンテナ方向を格納するデータベースを構築してもよい。
【0013】
一般的な802.11装置において、指向性アンテナの好ましい角度を選択するための固有のダイバシティ選択回路で動作するハードウェアを使用してもよい。アクセスポイントは、シグナリング(signaling)を使用してリモートステーションにプローブ応答信号を送信させ、アクセスポイントはプローブ応答信号の信号品質を測定する。アクセスポイントは、指向性アンテナモードでリモートステーションから受信した信号に対応する指標を、無指向性モードでリモートステーションから受信した信号に対応する指標と比較し、新しいアンテナスキャンを実行する必要があるかどうかを判定する。アクセスポイントで隠れ端末が存在すると判定した場合は、例えば802.11標準規格で定義する送信要求/送信可(RTS/CTS:request−to−send/clear−to−send)メッセージングを使用して防止メカニズムを呼び出すことができる。
【0014】
指向性アンテナを備えるアクセスポイントを増加させることの利点は2つある。つまり、個々のリモートステーションのスループットが向上することと、ネットワーク内でより多くのユーザをサポートできることである。多くのRF環境において、リモートステーションで受信する信号レベルは、アクセスポイントがステーションの方に向けて成形されたアンテナビームを使用して送信することによって向上する。成形されたアンテナビームは、例えば通常はアクセスポイントに配置する無指向性アンテナに比べて3〜5dBのゲインの効果が得られる。信号レベルの向上により、アクセスポイントとリモートステーションとのリンクは、特にカバリッジ範囲の外側帯域において、より高いデータ転送速度で動作できる。指向性アンテナの操向プロセスは、アクセスポイント内に常駐してリモートステーションの操作をサポートする。
【0015】
より詳細には、本発明は無線LAN(WLAN)内でアクセスポイントを操作する方法を対象とする。ここで、アクセスポイントは複数のリモートステーションと通信するための指向性アンテナを備えており、指向性アンテナは複数のアンテナパターンを備えている。本方法は、アクセスポイントと各リモートステーションとの間で複数のアンテナパターンに対応するそれぞれの測定された信号品質を関連付けることによって、アンテナデータベースを作成するステップを備えている。それぞれの測定された信号品質は、アクセスポイントによって各リモートステーションとの通信に基づいて決定される。
【0016】
本方法は、リモートステーションごとにアンテナデータベースに基づいて好ましいアンテナパターンを決定するステップと、リモートステーションおよびそれに対応する通信のための好ましいアンテナパターンを選択するステップとをさらに備えている。アンテナデータベースに基づき、選択されたリモートステーションと通信する前に、そうした通信が実際にいつ行われるかを、選択されていないリモートステーションのいずれかが知らない可能性があるかどうかが判定される。
【0017】
選択されていないリモートステーションのいずれかが、こうした通信が実際にいつ行われるか知らない可能性があるかどうかを判定するステップは、選択されたリモートステーションについて好ましいアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質を、同じ好ましいアンテナパターンを使用した場合の選択されていないリモートステーションに関連付けられたそれぞれの信号品質と比較するステップを備えている。測定されたそれぞれの信号品質は、受信信号強度表示(received signal strength indication)、搬送波対干渉比(carrier−to−interference ratio)、ビットあたりのエネルギー比(energy−per−bit ratio)、信号対雑音比の少なくとも1つを含むことができる。
【0018】
複数のアンテナパターンは、無指向性アンテナパターンを備えていてもよい。また、こうした通信が実際にいつ行われるか、選択されていないリモートステーションの少なくとも1つが知らないと判定された場合に、本方法は無指向性アンテナパターンを使用して要求のない(unsolicited)送信可メッセージを複数のリモートステーションに送信するステップをさらに備えることができる。送信可メッセージは、複数のリモートステーションのいずれにも対応していない未使用のアドレスを備えている。
【0019】
代替的に、こうした通信が実際にいつ行われるか、選択されていないリモートステーションの少なくとも1つが知らないと判定された場合に、本方法は、無指向性アンテナパターンを使用して順方向リンクで複数のリモートステーションに送信要求メッセージを送信するステップと、選択されたリモートステーションから送信可メッセージを受信するステップと、選択されたリモートステーションにデータフレームを送信するステップと、選択されたリモートステーションから肯定応答メッセージを受信するステップとをさらに備えることができる。逆方向リンクの場合に、本方法は、選択されたリモートステーションから送信要求メッセージを受信するステップと、選択されたリモートステーションに送信可メッセージを送信するステップと、選択されたリモートステーションからデータフレームを受信するステップと、選択されたリモートステーションに肯定応答メッセージを送信するステップとをさらに備えることができる。
【0020】
アンテナデータベースの作成は、少なくとも3つの方法で実行できる。第1のアプローチは順方向リンクで制御フレームを使用すること、第2のアプローチは逆方向リンクで制御フレームを使用すること、さらに第3のアプローチはプローブ信号を使用することである。
【0021】
順方向リンクで制御フレームを使用してアンテナデータベースを作成する方法は、複数の制御フレームとデータフレームを備えるパケットデータの交換に基づいて順方向リンクの複数のリモートステーションと通信するアクセスポイントを備えており、アンテナデータベースを作成するステップは、第1のリモートステーションから指向性アンテナの第1のアンテナパターンを使用して要求のある第1の制御フレームを受信するステップと、第1のデータフレームを第1のリモートステーションに送信するステップと、第1のリモートステーションから指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第2の制御フレームを受信するステップと、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と第2のアンテナパターンを使用して受信した第2の制御フレームの信号品質とを測定するステップとを備えている。これらのステップは、残りのアンテナパターンについても繰り返される。
【0022】
加えて、本方法は、リモートステーションごとに、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と、第2のアンテナパターンを使用して受信した第2の制御フレームの信号品質とを測定するための受信のステップと送信のステップとを繰り返すステップをさらに備えている。受信した第1の制御フレームは送信可メッセージを含んでおり、受信した第2の制御フレームは肯定応答メッセージを含んでいる。
【0023】
逆方向リンクで制御フレームを使用してアンテナデータベースを作成する方法は、第1のリモートステーションから指向性アンテナの第1のアンテナパターンを使用して第1の制御フレームを受信し、第2の制御フレームを第1のリモートステーションに送信し、第1のリモートステーションから指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第1のデータフレームを受信し、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と第2のアンテナパターンを使用して受信した第1のデータフレームの信号品質とを測定するアクセスポイントを備えている。これらのステップは、残りのアンテナパターンについても繰り返される。
【0024】
本方法は、リモートステーションごとに、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と、第2のアンテナパターンを使用して受信した第1のデータフレームの信号品質とを測定するための受信のステップと送信のステップとを繰り返すステップをさらに備えている。受信した第1の制御フレームは送信要求メッセージを含んでおり、送信された第2の制御フレームは送信可メッセージを含んでいる。
【0025】
プローブ信号を使用してアンテナデータベースを作成する方法は、全方位角と複数の指向性角を備える指向性アンテナに基づいており、アンテナデータベースを作成するステップは、第1のリモートステーションを選択するステップと、指向性アンテナの全方位角を使用して第1のプローブ信号を第1のリモートステーションに送信するステップと、全方位角を使用して、第1のプローブ信号に応答する第1のリモートステーションから受信した第1のプローブ応答信号を測定するステップとを備えている。第2のプローブ信号のそれぞれが指向性アンテナの複数の指向性角の各1つを使用して第1のリモートステーションに送信され、各指向性角を使用して、第2のプローブ信号のそれぞれに応答する第1のリモートステーションから受信した第2のプローブ応答信号が測定される。
【0026】
プローブ信号を使用する場合に、本方法は、複数のリモートステーションから次のリモートステーションを選択するステップと、選択された次のリモートステーションに第1および第2のプローブ信号を送信するステップと選択された次のリモートステーションから受信した第1および第2のプローブ応答信号を測定するステップとを繰り返すステップとをさらに備えている。これらのステップは、複数のリモートステーションの残りのリモートステーションのそれぞれについて繰り返される。第1のプローブ信号は送信要求(RTS)メッセージを含んでおり、第1のプローブ応答信号は送信可(CTS)メッセージを含んでいる。さらに、第2のプローブ信号はRTSメッセージを含んでおり、第2のプローブ応答信号はCTSメッセージを含んでいる。
【0027】
アクセスポイントは、IEEE 802.11標準規格とIEEE 802.16標準規格の少なくとも1つに基づいて動作する。指向性アンテナは、少なくとも1つの能動素子と複数の受動素子を備えている。
【0028】
本発明の別の態様は、複数のアンテナパターンを備える指向性アンテナと、指向性アンテナに接続し、指向性アンテナを制御するコントローラを備える無線LAN(WLAN)のアクセスポイントを対象とする。コントローラは、各リモートステーションとの間で複数のアンテナパターンに対応するそれぞれの測定された信号品質を関連付けることによってアンテナデータベースを作成し、それによって複数のリモートステーションと通信する。それぞれの測定された信号品質は、各リモートステーションとの通信に基づいて決定される。
【0029】
コントローラは、リモートステーションごとにアンテナデータベースに基づいて好ましいアンテナパターンを決定し、リモートステーションとそれに対応する通信のための好ましいアンテナパターンを選択する。アンテナデータベースに基づいて、選択されたリモートステーションと通信する前に、そうした通信が実際にいつ行われるかを、選択されていないリモートステーションが知らない可能性があるかどうかを判定する。
【0030】
前述の、およびそれ以外の本発明の目的、機能、利点は、添付の図面に示す本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明で明らかになるであろう。図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、本発明の原理を示すことが強調されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本明細書の以下の部分では、本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照しながら、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態で実施でき、本明細書で説明する実施形態に限定されると解釈してはならない。むしろ、本開示を十分で完成されたものにするため、および本発明の範囲を当業者に詳細に説明するためにこうした実施形態が提示されている。全体を通じて、同じ番号は同じエレメントを表しており、プライム表記は代替の実施形態における同様のエレメントを示している。
【0032】
図1Aを参照しながら、まずディストリビューションシステム105を備える無線LAN(WLAN)100について説明する。アクセスポイント110a、110b、110cは、有線データネットワーク接続などの有線接続を経由してディストリビューションシステム105に接続する。アクセスポイント110a、110b、110cのそれぞれは、無線周波数(RF)信号を介して、リモートステーション120a、120b、120cと通信可能なそれぞれのゾーン(zone)115a、115b、115cを備えている。リモートステーション120a、120b、120cは、無線LANのハードウェアとソフトウェアでサポートされており、ディストリビューションシステム105にアクセスする。以下の説明において、アクセスポイント、リモートステーション、およびゾーンを一般的に参照する場合は、それぞれ参照番号110、120、115を使用する。
【0033】
本技術は、アクセスポイント110とリモートステーション120に、アンテナダイバシティを提供する。アンテナダイバシティにより、アクセスポイント110とリモートステーション120は、受信する信号の品質に基づいて、送信および受信の機能を備える2つのアンテナのいずれかを選択できる。2つのうち1つを選択するのは、マルチパスフェージングの場合に、1つの信号が2つの異なる経路をとることにより、一方のアンテナでは信号の相殺(cancellation)が発生し、他方では発生しないためである。別の例は、同一のアンテナで受信する2つの異なる信号によって干渉が発生する場合である。2つのアンテナのうち1つを選ぶ別の理由として、矢印125が示すように、リモートステーション120cが第3のゾーン115cから第1のゾーン115aまたは第2のゾーン115bに移動するといった変化する環境がある。
【0034】
図1Bは、図1Aに示すネットワーク100の一部のブロック図であり、本発明の原理を利用するアクセスポイント110bについて、指向性アンテナローブ(directive antenna lobes)130a〜130iに関連してより詳細に示している。指向性アンテナローブ130a〜130iは、全体として参照番号130によっても示される。アクセスポイント110bは、その環境をスキャンする間に、アンテナローブ130を順次配列することによって、好ましいアンテナの方向を決定する。
【0035】
スキャン中に、アクセスポイント110bは、図2Aと図2Bにより詳細に示すように、指向性アンテナを使用してリモートステーション120bから送信されたRF信号を探索してスキャンを行う。スキャンの各方向(すなわち角度またはアンテナパターン)で、アクセスポイント110bは信号またはプローブ応答を測定し、そのスキャン角度のそれぞれの指標(metric)を計算する。こうした指標の例には、受信信号の品質または信号環境の受信信号強度表示(RSSI:received signal strength indication)、搬送波対干渉波(C/I:carrier−to−interference)、ビットあたりエネルギー比(energy−per−bit ratio)(Eb/No)、または信号対雑音比(SNR:signal−to−noise ratio)など、その他の適切な基準が含まれる。当業者には言うまでもないが、これらの測定値の組合せによっても、最適なアンテナパターンまたは好ましいアンテナパターンが決定される。測定された信号の品質指標に基づき、アクセスポイント110bは、リモートステーション120bとの通信において好ましいアンテナの角度または方向を決定する。
【0036】
スキャンを実行するのは、リモートステーション110bが認証され、ディストリビューションシステム105に接続する前でも後でもよい。したがって、最初のアンテナスキャンは、MACレイヤ内で実行してもよい。代わりに、最初のスキャンはMACレイヤの外部で実行してもよい。同様に、スキャンは、リモートステーション110bが認証され、ディストリビューションシステム105に接続した後に、MACレイヤ内で実行されてもよいし、MACレイヤ外で起こるプロセスによって実行されてもよい。
【0037】
図2Aは、外付けの指向性アンテナアレイ200aを使用するアクセスポイント110を示す図である。指向性アンテナアレイ200aには、5つのモノポール受動アンテナエレメント205a、205b、205c、205d、205e、および1つのモノポール能動アンテナエレメント206が含まれる。受動アンテナエレメント205a、205b、205c、205d、205eは、以下では参照番号205で総称する。指向性アンテナエレメント200aは、USBポート215を経由してアクセスポイント110に接続する。指向性アンテナアレイ200aとアクセスポイント110とを接続する他の方法も、容易に使用できる。
【0038】
指向性アンテナアレイ200a内の受動アンテナエレメント205は、受信機にも送信機にも接続せず(parasitically)、能動アンテナエレメント206に結合してスキャンを可能にする。スキャンにより、指向性アンテナアレイ200aの少なくとも1つのアンテナビームは、オプションで受動アンテナエレメント205の数に関連付けられた増分で360度回転できる。
【0039】
指向性アンテナアレイ200aについての詳しい説明は、参照により開示全体が本明細書に組み込まれており、本発明の現在の譲受人に譲渡されている、2002年1月24日に公開された特許文献1に提示されている。指向性アンテナアレイ200aによって受信または送信された信号に基づいて、アンテナの方向を最適化する方法の例についても、特許文献1に説明されている。
【0040】
さらに、指向性アンテナアレイ200aは無指向性(omni−directional)モードで使用でき、無指向性のアンテナパターンを備えることができる。アクセスポイント110は、無指向性パターンを使用して送信または受信できる。アクセスポイント110は、リモートステーション120に送信する場合、またはリモートステーション120から受信する場合に、選択した指向性アンテナを使用することもできる。
【0041】
図2Bは、内蔵の指向性アンテナ220bを備えるアクセスポイント110の投影図である。この実施形態において、指向性アンテナアレイ200bはPCMCIAカード220上にある。PCMCIAカード220は、アクセスポイント110に装着されており、プロセッサ(図示せず)に接続している。指向性アンテナアレイ200bは、図2Aに示す指向性アンテナアレイ200aと同様の機能を備えている。
【0042】
他の様々な形態の指向性アンテナアレイを使用できることを理解されたい。この例には、本発明の現在の譲受人に譲渡されており、参照により開示全体が本明細書に組み込まれている2003年2月4日に出願した特許文献2、ならびに2002年3月28日に公開された特許文献3において説明されたアレイが含まれる。
【0043】
図3Aは、前述の受動アンテナエレメント205と能動アンテナエレメント206を含む指向性アンテナアレイ200aを詳細に示す図である。図3Bに関連して後述するように、指向性アンテナアレイ200aには、受動アンテナエレメントが電気的に結合するグラウンドプレーン(ground plane)330も含まれる。
【0044】
引き続き図3Aを参照すると、指向性アンテナアレイ200aは、アンテナエレメント205aと205eから角度を付けた指向性アンテナローブ300を備える。これは、アンテナエレメント205aと205eが反射モードにあり、アンテナエレメント205b、203c、205dが送信モードにあることを示している。換言すると、能動アンテナエレメント206と受動アンテナエレメント205が相互に結合することにより、指向性アンテナアレイ200aは、この場合、図示されたように受動エレメント205が設定されたモードにより方向付けられた指向性アンテナローブ300をスキャンする。当業者には言うまでもないが、受動アンテナエレメント205の様々なモードの組合せによって、様々なアンテナローブ300のパターンと角度が得られる。
【0045】
図3Bは、受動アンテナエレメント205を反射モードまたは送信モードに設定するために使用できる回路の例を示す概略図である。反射モードは、代表的な長い破線305で示し、送信モードは短い破線310で示している。代表的なモード305と310は、それぞれ誘導性エレメント(inductive element)320または容量性エレメント(capacitive element)325を経由してグラウンドプレーン330に結合することによって発生する。誘導性エレメント320または容量性エレメント325を経由した受動アンテナエレメント205aの結合は、スイッチ315を使用して実行される。スイッチ315は、受動アンテナエレメント205aをグラウンドプレーン330に結合できる機械的スイッチでも電気的スイッチでもよい。スイッチ315は、制御信号335を使用して設定される。
【0046】
受動アンテナエレメント205aは、誘電性エレメント320を経由してグラウンドプレーン330に結合すると、代表的な長い破線305に示すように実効的に伸長される。これは、能動アンテナエレメント206との相互結合を経由して受動アンテナエレメント205aに結合するRF信号の「バックボード(backboard)」となっていると考えられる。図3Aの場合は、受動アンテナエレメント205aと205eの両方が、それぞれ誘導性エレメント320を経由してグラウンドプレーン330に接続される。同時に、図3Aの例では、他の受動アンテナエレメント205b、205c、205dが、それぞれ容量性エレメント325を経由してグラウンドプレーン330に電気的に接続される。
【0047】
受動アンテナエレメントは、容量性エレメントに結合すると、代表的な短い破線310に示すように実効的に短縮される。すべての受動エレメント325を容量性エレメントに結合させると、指向性アンテナアレイ200aは実効的に無指向性アンテナになる。受動アンテナエレメント205とグラウンドプレーン330の間には、例えば遅延線(delay lines)や集中定数インピーダンス(lumped impedances)といった他の結合技術を使用してもよいことを理解されたい。
【0048】
図9に進むと、指向性アンテナアレイ200aまたは200bを使用して無指向性アンテナパターン905と指向性アンテナパターン910を生成するアクセスポイント110bを上から見た図(overhead view俯瞰図)が示されている。アクセスポイント110bは、複数のステーション120a〜120dと通信する。アクセスポイント110は通常は離れて設置されており、近くに障害物や移動する反射体(例えば壁の高い部分や天井)がないので、好ましいアンテナパターン方向の選択は、所定のリモートステーション120との接続中は変更されない場合が多い。
【0049】
図示されたアクセスポイント110bは、指向性アンテナ200aを使用して、ダウンリンクのデータフレームを選択されたリモートステーション120cに送信できる。ほとんどのブロードキャストおよび制御フレームは、アクセスポイントで無指向性アンテナパターン905と利用可能な最小のデータ転送速度を使用することによって、すべてのリモートステーション120においてそれらを受信することを保証できる。指向性アンテナ200aは、ネットワーク100のカバリッジ範囲を拡大しないが、リモートステーション120に送信されたデータフレームのデータ転送速度を向上させることができる。ネットワーク100を経由して転送されたデータの大半がダウンリンク上に現れるので(例えばウェブページへのアクセス、ファイル転送など)、ダウンリンク速度の向上は効果的である。1つの選択肢は、アクセスポイント110bが無指向性モードでの受信を要求された場合に、空間切り替えダイバシティ(switched spatial diversity)を使用することである。リンクマージンを5dB増大させる可能性があるので、例えば300%のスループット向上にも対応できる。
【0050】
競合期間(CP:contention period)中に、選択されたリモートステーション120cからアクセスポイント110bに送信されたアップリンクデータフレームは、任意のリモートステーションがこのフレームを送信できるので、無指向性アンテナパターンを使用して受信される。大規模なフレームについては、ネットワーク構成からリモートステーションに対して送信要求/送信可(RTS/CTS)メカニズムの使用が要求され、無線媒体が予約されてもよい。この場合に、アクセスポイント110bは、指向性モードで受信することによってアップリンク上のデータ転送速度を向上できた。これは、リモートステーション120cに実装されたデータ転送速度選択アルゴリズムにある程度依存している。
【0051】
ダウンリンクの伝送において、アクセスポイント110bは、競合期間中に無指向性パターンとより低いデータ転送速度を使用して小さなパケットを転送するように決定してもよい。この理由は、カバリッジ範囲の「もう一方」の側のリモートステーション(例えばリモートステーション120e)は、そこから外れた方向に向けた、指向性アンテナパターン910からのアクセスポイント送信を聞き取ることができないことである。これはよく知られている「隠れ端末(hidden node)」問題であり、2つのリモートステーション120はお互いに聞き取ることができず、ついには同時に送信をすることになる。この場合では、2つのリモートステーションは120cと120eである。特に大きなデータフレームにおいて、この問題を防止する方法については、図7を参照しながら以下で説明する。
【0052】
このように、アクセスポイント110の指向性アンテナパターンは、大規模なネットワークトラフィックであるリモートステーション120とのダウンリンクとアップリンクのデータフレーム交換において、高いデータ転送速度を提供できる。ネットワーク接続性は、アクセスポイント110の無指向性アンテナの公称ゲインに維持される。つまり、リモートステーション120は、アクセスポイント110に接続し、指向性アンテナ200aを使用しなくても接続を維持できる。
【0053】
指向性アンテナ200aの無指向性ならびに指向性の特性を最大限に活用するために、表1に示す一連の規則を定義できる。表1には、アクセスポイント110と現在のアンテナ方向選択に関連付けられるリモートステーション120のアドレスが記載されている。表1は、802.11標準規格(標準規格中の表21と22)からのフレームシーケンスに基づいてアンテナ方向を選択する例を示している。表1において、「Dir」は方向を、「UL」はアップリンクを、「DL」はダウンリンクを示している。
【0054】
【表1】
【0055】
プロセスは、どんな場合に無指向性パターンを選択するか、およびどんな場合に指向性パターンを選択するかを決定する一連の規則によって説明できる。例えば、アクセスポイント110は、1つのリモートステーション120との間の送信または受信の合間に指向性パターンを選択してもよい。
【0056】
アクセスポイント110のインターフェースを示すブロック図が図4に示されている。図示されたアクセスポイント110には、様々なサブシステムとレイヤが含まれている。アンテナサブシステム405には、指向性アンテナ200bとサポートする回路、バス、および指向性アンテナを操作するソフトウェアを含めてもよい。アンテナサブシステム405は、物理レイヤ410にインターフェースしてこのレイヤにRF信号412を提供する。
【0057】
物理レイヤ410は、RF信号412を処理してアンテナ操向プロセス420に対する信号品質測定値417を決定する。物理レイヤ410は、RF信号412に基づいて処理した信号を、MACレイヤ415に送信する。MACレイヤ415はタイミング制御メッセージ422を生成する。このメッセージはアンテナ操向プロセス420にも送信され、必要に応じてアンテナを無指向性モードまたは指向性モードに切り替える。
【0058】
MACレイヤ415は、さらにデータフレーム429を他のプロセス(図示せず)に送信する。図示された物理レイヤ410、MACレイヤ415、およびアンテナ操向プロセス420は、コントローラ400内に常駐してもよい。アンテナ操向プロセス420は、例えばスタンドアロンのメモリやプロセッサに内蔵されたメモリなどのメモリに格納してもよい。
【0059】
アンテナ操向プロセス420は、各リモートステーション120がアンテナをスキャンする間に作成された受信信号品質測定値417の関数として、「アンテナテーブルもしくはデータベース」、または「方向テーブルもしくはデータベース」425を維持する。例えば、方向テーブル425には、ステーションIDおよびリモートステーション120との指向性をもった通信に対応するアンテナ方向(A、B、C)を格納できる。方向テーブル425内のアンテナ方向が決定すると、アンテナ操向プロセス420を使用してアンテナサブシステム405に指向性アンテナ制御427が提供される。信号品質測定値417が、無指向性モードで最大のデータ転送速度をサポートできることを示す所定のしきい値を超えている場合は、アンテナ方向を無指向性(O)モードに保持してもよい。
【0060】
以下の各段落では、指向性アンテナ220bをアクセスポイント110からリモートステーション120に向ける好ましい方向を決定するための、本発明による様々な技術について説明する。第1の技術では、空間ダイバシティ選択メカニズムを使用する。第2の技術では、アクセスポイント110とリモートステーション120の間で交換されるプローブ信号シーケンスを使用する。第3の技術では、アクセスポイント110における受信アンテナ方向の信号品質測定値を求める制御メッセージ(例えばACKやCTS)を使用する。第3の技術は、順方向と逆方向の両方のリンクに適用できる。
【0061】
第1の技術では、現在の802.11デバイスにアンテナ切り替えダイバシティのスキャン/制御が組み込まれていること、および802.11a/802.11g/802.1lnといった将来の802.11デバイスも切り替えダイバシティをサポートすることが想定されている。第1の技術は、リモートステーション120が認証を行い、ステーション自体をネットワークに接続した後に適用できる。最初のアンテナスキャンは、MAC/ネットワークレイヤプロトコル内で実行されることが想定されている。指向性またはマルチエレメントアンテナ220aを使用すると、第1の技術ではダイバシティプロトコルを利用してアンテナ位置/選択を最新に維持できる。
【0062】
次に図6を参照すると、第1の技術は以下のように機能する。図示されたアクセスポイント110’には、アンテナサブシステム405’に接続されたコントローラ600’が含まれる。コントローラ600’は、アンテナ制御信号にアクセスできる物理レイヤ410’とMACレイヤを備えている(図4)。MACレイヤは、レジスタA 605a’とレジスタB 605b’に選択したアンテナを書き込む。レジスタA 605a’には選択したアンテナ位置が格納され、レジスタB 605b’は候補となるアンテナ位置が格納される。物理レイヤ410’は、マルチプレクサ610’とも通信している。物理レイヤ410’は、ダイバシティ選択スイッチ制御信号607’を一般的なダイバシティ選択制御法によってマルチプレクサ610’に送信するが、この場合では、ダイバシティ選択スイッチ制御信号はレジスタA 605a’の内容を使用するかレジスタB 605b’の内容を使用するかを制御する。
【0063】
選択されたアンテナ位置は、まずはネットワーク認証/接続プロトコル実行中に選択される。候補となるアンテナ位置は、他の任意のアンテナ位置でよい(無指向性モードを含む)。有効なパケットを受信した後、またはパケットを受信することなく所定の期間が経過した場合に、所定の順序によって候補となるアンテナ位置が変更される。
【0064】
パケットが正常に受信された後で、物理レイヤ410’は両方のアンテナ位置についての受信信号品質指標(信号強度、信号対ノイズ率、マルチパス/イコライザー指標など)をMACレイヤに送信する。パケット受信中に、物理レイヤ410’は、ここで802.11と同様に機能する。つまり、2つのアンテナ位置の間で切り替えを行い、パケットを受信するための最適なアンテナ位置を使用する。物理レイヤ410’で有効なパケットを受信した後に、2つのアンテナ位置の信号品質指標がMACレイヤに送信される。
【0065】
MACレイヤは、選択されたアンテナ位置と候補となるアンテナ位置の両方を更新する。選択されたアンテナ位置は、物理レイヤ410’から受信したデータに基づいて最適な位置に置き換えられる。フィルタリング/ヒステリシスを使用することによって、2つのアンテナ位置間の「ピンポンのように頻繁な切り替え(ping−ponging)」を回避できる。
【0066】
前述のように、この技術では現在の802.11アンテナ切り替えダイバシティの方法を利用している。この第1の技術は、ハードウェア、ソフトウェア/ファームウェア、またはこれらの組合せを含むことができることを理解されたい。
【0067】
次に図10を参照しながら、空間ダイバシティに基づいてWLAN 100内のアクセスポイント110を動作させる前述の方法のフロー図について説明する。本方法は、ブロック1000において開始される。指向性アンテナ220bの現在の角度を使用して、リモートステーション120と通信するステップ(ブロック1010)を備えている。ブロック1020において、プリアンブル(preamble)中にリモートステーション120と通信する指向性アンテナ220bの複数の他の角度についてスキャンを行う。ブロック1030において、リモートステーション120から現在の角度と複数の他の角度を使用して受信した各信号を測定する。ブロック1040において、プリアンブル中に、測定された信号に基づいて、現在の角度または複数の他の角度のうち1つを好ましい角度として選択し、リモートステーション120との通信を続行する。ブロック1050において本方法が終了する。
【0068】
第2の技術は、アクセスポイント110からリモートステーション120へのRTSメッセージの送信と、これに応答してリモートステーションからアクセスポイントに送信したCTSメッセージの受信に基づいている。802.11標準規格では、プローブ要求/プローブ応答の交換も規定されている。通常、この信号はリモートステーション120で他のステーション120へのリンクの品質を決定するために使用する。
【0069】
アクセスポイント110において選択されたリモートステーション120に対する好ましい方向を決定するために使用する場合は、図8に示すように、アクセスポイント110は無指向性パターンと候補となる指向性パターン130のそれぞれを使用してプローブ要求信号805を送信し、それぞれのパターンで動作する間にリモートステーション110から返送されたプローブ応答信号810の信号品質を測定する。
【0070】
この方法は、これらの応答フレーム810を測定することによって、前述のダイバシティ選択技術よりも信頼性の高い技術となっている。この第2の技術は、リモートステーション120がアクセスポイント110に接続した直後に、少なくとも一度使用するのが好ましい。ただし、さらにプローブ要求/プローブ応答信号を使用することによってネットワーク効率に影響が出るが、この交換は頻繁に行わなくてもよい。
【0071】
次に、図11を参照しながら、プローブ信号に基づいてWLAN 100内のアクセスポイント110を動作させる前述の方法のフロー図について説明する。本方法は、ブロック1100において開始され、リモートステーション120を選択するステップ(ブロック1110)と、指向性アンテナ220bの全方位角を使用して第1のプローブ信号を選択されたリモートステーションに送信するステップ(ブロック1120)と、第1のプローブ信号に応答する選択されたリモートステーションから、全方位角を使用して受信した第1のプローブ応答信号を測定するステップ(ブロック1130)とを備えている。
【0072】
ブロック1140において、指向性アンテナ220bの複数の指向性角の1つを使用して第2のプローブ信号のそれぞれを選択されたリモートステーション120に送信し、ブロック1150において、第2のプローブ信号に応答する選択されたリモートステーションから各指向性角を使用して受信した第2のプローブ応答信号を測定する。ブロック1160において、選択されたリモートステーション120からの測定された第1のプローブ応答信号と測定された第2のプローブ応答信号のそれぞれをアンテナデータベースに格納する。
【0073】
ブロック1170において、測定された第2のプローブ応答信号に基づいて、選択されたリモートステーション120への好ましい指向性角を選択する。ブロック1180において、全方位角からの測定された第1のプローブ応答信号を好ましい指向性角からの測定された第2のプローブ応答信号と比較する。第1のプローブ信号は送信要求(RTS)メッセージを含んでおり、第1のプローブ応答信号は送信可(CTS)メッセージを含んでいる。同様に、第2のプローブ信号はRTSメッセージを含んでおり、第2のプローブ応答信号はCTSメッセージを含んでいる。ブロック1190において、この比較に基づいて全方位角または好ましい指向性角を選択し、選択されたリモートステーション120との通信を続行する。ブロック1195において本方法は終了する。
【0074】
第3の技術では、アクセスポイント110とリモートステーション120の間の標準的なデータ交換で使用される制御フレームを利用する。この技術は、順方向リンクの通信と逆方向リンクの通信の両方において使用できる。送信可(CTS)メッセージと肯定応答(ACK)メッセージは比較的低いデータ転送速度によって送信されるので、アクセスポイント110はこれらのメッセージを使用して無指向性パターン905と現在選択されている指向性パターン130とを比較できる。これについては、アンテナ選択のタイミングを図5Aに破線で示している。これは、現在選択されている方向130が無指向性パターン905に対して優位を維持しているかどうか判定する方法として利用できる。この優位は、通常は所定のしきい値に基づいており、信号品質指標がほぼ同等の2つのアンテナパターンの間で頻繁な切り替えが発生するのを防止する。
【0075】
例えば、CTSメッセージの間に、無指向性モードを利用してこのメッセージを受信し、第1の信号品質測定値を計算する。ACKメッセージの間に、テストアンテナ方向を使用してこのメッセージを受信し、第2の信号品質測定値を計算する。第1と第2の信号品質測定値を比較し、テストアンテナ方向を保存するかどうかを判定する。つまり、指向性モードは無指向性モードより高いゲインを提供するかどうかである。指向性アンテナの2つの異なる方向間で、比較をすることもできる。
【0076】
図5Bに示すように、逆方向リンクのデータ送信の間に同様のタイプの測定と比較を行ってもよい。ACKメッセージの間に、アクセスポイント110は、信号品質の測定値を計算し、これを無指向性モードの測定値、または他の指向性モードの測定値と比較できる。選択されたリモートステーション110との複数の通信について比較を行ってから、別のアンテナ方向をスキャンしてもよい。
【0077】
図4に示す方向テーブル425は、前述の無指向性および選択された指向性アンテナパターンによる1つまたは複数のプロセスからの信号品質測定値で拡張してもよい。優位性の低下が所定のしきい値を超える場合に、アクセスポイント110は無指向性の選択に戻り、前述の最初の2つの技術を使用してアンテナ検索を実行する。
【0078】
リモートステーション120が省電力モードになった場合、またはデータ送信のないアイドル期間が長く続いた場合は、アクセスポイント110は無指向性パターンの選択に戻る。リモートステーション120が再びアクティブになった場合に、アクセスポイント110はもう一度別のアンテナ検索を実行してもよい。
【0079】
次に、図12と図13を参照しながら、順方向リンクと逆方向リンクの制御フレームに基づいて、WLAN 100内のアクセスポイント120を動作させる方法のフロー図のそれぞれについて説明する。本方法は、ブロック1200において開始され、リモートステーション120から指向性アンテナ220bの第1のアンテナパターンを使用して順方向リンクの第1の制御フレームを受信するステップ(ブロック1210)と、第1のデータフレームをリモートステーションに送信するステップ(ブロック1220)と、リモートステーションから指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第2の制御フレームを受信するステップ(ブロック1230)とを備えている。ブロック1240において、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と、第2のアンテナパターンを使用して受信した第2の制御フレームの信号品質を測定する。ブロック1250において、第1のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質と第2のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質とを比較する。ブロック1260において、第2のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質が第1のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質を所定のしきい値だけ超えた場合は、リモートステーション120に第2のデータフレームを送信するために第2のアンテナパターンを選択する。受信した第1の制御フレームは送信可メッセージを含んでおり、受信した第2の制御フレームは肯定応答メッセージを含んでいる。ブロック1270において、本方法は終了する。
【0080】
逆方向リンクの制御フレームに基づいてWLAN 100内でアクセスポイント120を動作させる方法は、ブロック1300において開始され、リモートステーションから指向性アンテナ220bの第1のアンテナパターンを使用して第1の制御フレームを受信するステップ(ブロック1310)と、リモートステーションに第2の制御フレームを送信するステップ(ブロック1320)と、リモートステーションから指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第1のデータフレームを受信するステップ(ブロック1330)とを備えている。ブロック1340において、第1のアンテナパターンを使用して受信した第1の制御フレームの信号品質と、第2のアンテナパターンを使用して受信した第1のデータフレームの信号品質を測定する。ブロック1350において、第1のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質と第2のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質とを比較する。ブロック1360において、第2のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質が第1のアンテナパターンに関連付けられた測定された信号品質を所定のしきい値だけ超えた場合は、アクセスポイント110からリモートステーション120に第2のデータフレームを送信するために第2のアンテナパターンを選択する。受信した第1の制御フレームは送信要求メッセージを含んでおり、送信された第2の制御フレームは送信可メッセージを含んでいる。ブロック1370において、本方法は終了する。
【0081】
第4の技術は、隠れ端末防止技術であり、アクセスポイント110において指向性アンテナ220bを使用する場合に、隠れ端末の発生を抑制したり除去したりするための防止メカニズムを提供する。隠れ端末は、クセスポイント110と選択されたリモートステーション120との間の通信を、ネットワーク100内のすべてのリモートステーション120が聞き取ることができるわけではない場合に発生する。したがって、聞き取ることができないリモートステーションは、媒体使用中に送信をする可能性がある。したがって、特にアクセスポイント110において競合が発生する。
【0082】
アクセスポイント110からリモートステーション120に送信するデータがある場合に、制御プロセスは図4に示す方向テーブル425をスキャンして選択されたアンテナ方向を設定し、隠れ端末の可能性がないかを判定する。例えば、アクセスポイント110が選択されたアンテナ方向とは逆方向にあるリモートステーション120を探索するとする。
【0083】
図7のタイミング図を参照すると、隠れ端末の可能性が存在すると制御ソフトウェアが判定した場合に、アクセスポイント110はまずアンテナ220aの無指向性モードを使用して既知の使用されていないMACアドレスにCTSメッセージを送信する。このプロセスは、ネットワーク内のすべてのリモートステーション120に交換が発生することを通知し、交換が終了するまで送信をしないように指示する役割を果たす。次に、アクセスポイント110は意図されたリモートステーション120用に選択したアンテナ方向に切り替わり、通信を続行する。隠れ端末問題を防止する別の方法は、所望のリモートステーション120との4wayのフレーム交換プロトコル(RTS、CTS、データ、ACK)を実行することである。
【0084】
隠れ端末の可能性がないと制御ソフトウェアが判定した場合は、アクセスポイント110がCTSメッセージを送信せず、アクセスポイント110の適切な方向に設定されたアンテナを使用してただちに通信を開始できる。図5Aに示すように、ネットワークプロトコルで必要とされる場合に、RTSメッセージは意図された受信機のアドレスを指定できるので、CTSメッセージは肯定応答としてアクセスポイント110に返される。
【0085】
図7を参照しながら前述したプロセスにおいて、リモートステーション120で送信を停止するために必要なのはCTSメッセージだけであり、RTSメッセージはアクセスポイント110から送信されないので効率がよくなる。標準802.11プロトコルヘッダーのIDセクションに示されているリモートステーション120は、特定のリモートステーションでデータフレームを受信することを保証する。
【0086】
次に図14を参照しながら、隠れ端末の認識に基づいてWLAN 100内のアクセスポイント120を動作させる方法のフロー図について説明する。本方法は、ブロック1400で開始され、アクセスポイント110と各リモートステーション120との間で複数のアンテナパターンに対応するそれぞれの測定された信号品質を関連付けることによってアンテナデータベースを作成するステップ(ブロック1410)を備えている。それぞれの測定された信号品質は、アクセスポイント110によって各リモートステーション120との通信に基づいて決定される。ブロック1420において、リモートステーション120ごとにアンテナデータベースに基づいて好ましいアンテナパターンを決定し、ブロック1430において、リモートステーションと通信するための対応する好ましいアンテナパターンを選択する。ブロック1440において、アンテナデータベースに基づいて、選択されたリモートステーションと通信する前に、選択されていないリモートステーションがそうした通信が実際にいつ行われるかを知らない可能性があるかどうかを、判定する。これは、好ましいアンテナパターンを使用した場合の選択されたリモートステーションに関連付けられた測定された信号品質を、同様に好ましいアンテナパターンを使用した場合の選択されていないリモートステーションに関連付けられたそれぞれの信号品質と比較することによって決定される。
【0087】
ブロック1450において、隠れ端末の可能性がある場合は、アクセスポイント110と選択されたリモートステーション120とが互いに通信することを通知するメッセージをブロードキャストする。前述のように、このブロードキャストは、リモートステーション120への無指向性アンテナパターンを使用した要求のない(unsolicited)送信可メッセージの形態をとることができる。CTSは、リモートステーション120のいずれにも対応していない、未使用のアドレスを含んでいる。他の方法としては、4wayのフレーム交換プロトコル(RTS、CTS、データ、ACK)が選択されたリモートステーション120で実行され、隠れ端末問題を防止する。ブロック1460において、本方法は終了する。
【0088】
本発明について、その好ましい実施形態に関連して詳細に示し、説明してきた。添付の特許請求の範囲に示す本発明の範囲を逸脱することなしに、その形態および細部に様々な変更を加えることが可能なことは、当業者には理解されるであろう。例えば、アクセスポイントはIEEE 802.11標準には限定されない。当業者には言うまでもないが、前述のアクセスポイントのアンテナアルゴリズムは、他のタイプのLAN(IEEE 802.16標準規格で定義するものなど)にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1A】本発明の原理を使用する無線LAN(WLAN)を示す概略図である。
【図1B】図1Aに示すWLAN内のアンテナスキャンを実行するアクセスポイントを示す概略図である。
【図2A】外付けの指向性アンテナアレイを備える図1Aのアクセスポイントを示す図である。
【図2B】内蔵のPCMCIAカードに組み込まれた指向性アンテナアレイを備える図2Aのアクセスポイントを示す図である。
【図3A】図2Aの指向性アンテナアレイを示す図である。
【図3B】図3Aに示す指向性アンテナのアンテナエレメントの状態を選択するためのスイッチを示す概略図である。
【図4】本発明の原理によるサブシステム、レイヤ、およびアンテナ操向プロセスを使用する図1Aのアクセスポイントを示すブロック図である。
【図5A】図4のアンテナ操向プロセスで選択的に使用される信号を示す図である。
【図5B】図4のアンテナ操向プロセスで選択的に使用される他の信号を示す図である。
【図6】アンテナダイバシティ回路を使用した図4の他のブロック図である。
【図7】図4のアンテナ操向プロセスで選択的に使用される、隠れ端末技術を使用した信号を示す図である。
【図8】双方向のシグナリングを行う図1のネットワークを上から見た図である。
【図9】アンテナビームを示した図1のネットワークを上から見た図である。
【図10】本発明による空間ダイバシティに基づいてWLAN内のアクセスポイントを動作させる方法を示すフロー図である。
【図11】本発明によるプローブ信号に基づいてWLAN内のアクセスポイントを動作させる方法を示すフロー図である。
【図12】本発明による順方向リンクの制御フレームに基づいてWLAN内のアクセスポイントを動作させる方法を示すフロー図である。
【図13】本発明による逆方向リンクの制御フレームに基づいてWLAN内のアクセスポイントを動作させる方法を示すフロー図である。
【図14】本発明による隠れ端末認識に基づいてWLAN内のアクセスポイントを動作させる方法を示すフロー図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LAN(WLAN)内でアクセスポイントを動作させる方法であって、前記アクセスポイントは複数のリモートステーションと通信する指向性アンテナを備えており、前記指向性アンテナは複数のアンテナパターンを備えており、
前記アクセスポイントと各リモートステーションとの間で、前記複数のアンテナパターンに対応するそれぞれの測定された信号品質を関連付けることによって、アンテナデータベースを作成するステップであって、前記それぞれの測定された信号品質は前記アクセスポイントによって各リモートステーションとの通信に基づいて決定されることと、
前記アンテナデータベースに基づいてリモートステーションごとに好ましいアンテナパターンを決定するステップと、
リモートステーションと、それに対応する通信するための好ましいアンテナパターンとを選択するステップと、
前記アンテナデータベースに基づいて、前記選択されたリモートステーションと通信する前に、選択されていないリモートステーションのいずれかがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らない可能性があるかどうかを判定するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
選択されていないリモートステーションのいずれかが、こうした通信が実際にいつ行われるかを知らない可能性があるかどうかを判定する前記ステップは、前記選択されたリモートステーションに対する前記好ましいアンテナパターンに関連付けられた前記測定された信号品質を、同じ好ましいアンテナパターンを使用した場合の前記選択されていないリモートステーションに関連付けられた前記それぞれの信号品質と比較するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記それぞれの信号品質を測定することは、受信信号強度表示、搬送波対干渉比、ビットあたりエネルギー比、および信号対雑音比の少なくとも1つを決定するステップを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターンを含み、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと判定された場合は、前記無指向性アンテナパターンを使用して要求のない送信可メッセージを前記複数のリモートステーションに送信するステップであって、前記送信可メッセージは前記複数のリモートステーションのいずれにも対応しない未使用のアドレスを含むこと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターンを含み、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと判定された場合は、
前記無指向性アンテナパターンを使用して、前記複数のリモートステーションに送信要求メッセージを順方向リンクで送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションから送信可メッセージを受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションにデータフレームを送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションから肯定応答メッセージを受信するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターン含み、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと判定された場合は、
前記選択されたリモートステーションから送信要求メッセージを逆方向リンクで受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションに送信可メッセージを送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションからデータフレームを受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションに肯定応答メッセージを送信するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アクセスポイントは、複数の制御フレームとデータフレームとを備えるパケットデータの交換に基づいて、順方向リンクにおいて前記複数のリモートステーションと通信し、前記アンテナデータベースを作成する前記ステップは、
第1のリモートステーションから前記指向性アンテナの第1のアンテナパターンを使用して要求された(solicited)第1の制御フレームを受信するステップと、
前記第1のリモートステーションに第1のデータフレームを送信するステップと、
前記第1のリモートステーションから前記指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第2の制御フレームを受信するステップと、
前記第1のアンテナパターンを使用して受信した前記第1の制御フレームの信号品質と前記第2のアンテナパターンを使用して受信した前記第2の制御フレームの信号品質とを測定するステップと、
残りのアンテナパターンについて前記各ステップを繰り返すステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
リモートステーションごとに、前記第1のアンテナパターンを使用して受信した前記第1の制御フレームの信号品質と前記第2のアンテナパターンを使用して受信した前記第2の制御フレームの信号品質を測定するために受信する前記ステップと送信する前記ステップとを繰り返すステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記受信した第1の制御フレームは送信可メッセージを含み、前記受信した第2の制御フレームは肯定応答メッセージを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記アクセスポイントは、複数の制御フレームとデータフレームを備えるパケットデータの交換に基づいて、逆方向リンクの前記複数のリモートステーションと通信し、前記アンテナデータベースを作成する前記ステップは、
第1のリモートステーションから前記指向性アンテナの第1のアンテナパターンを使用して第1の制御フレームを受信するステップと、
前記第1のリモートステーションに第2の制御フレームを送信するステップと、
前記第1のリモートステーションから前記指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第1のデータフレームを受信するステップと、
前記第1のアンテナパターンを使用して受信した前記第1の制御フレームの信号品質と前記第2のアンテナパターンを使用して受信した前記第1のデータフレームの信号品質を測定するステップと、
他のすべてのアンテナパターンについて前記各ステップを繰り返すステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
リモートステーションごとに、前記第1のアンテナパターンを使用して受信した前記第1の制御フレームの信号品質と、前記第2のアンテナパターンを使用して受信した前記第1のデータフレームの信号品質を測定するための受信する前記ステップと送信する前記ステップとを繰り返すステップをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記受信した第1の制御フレームは送信要求メッセージを含み、前記送信された第2の制御フレームは送信可メッセージを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記指向性アンテナは全方位角と複数の指向性角を備えており、前記アンテナデータベースを作成する前記ステップは、
第1のリモートステーションを選択するステップと、
前記指向性アンテナの前記全方位角を使用して、前記第1のリモートステーションに第1のプローブ信号を送信するステップと、
前記全方位角を使用して、前記第1のプローブ信号に応答する前記第1のリモートステーションから受信した第1のプローブ応答信号を測定するステップと、
前記指向性アンテナの前記複数の指向性角の各1つを使用して、前記第1のリモートステーションにそれぞれの第2のプローブ信号を送信するステップと、
指向性角の各1つを使用して、前記それぞれの第2のプローブ信号に応答する前記第1のリモートステーションから受信した第2のプローブ応答信号を測定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のリモートステーションから次のリモートステーションを選択するステップと、
前記選択された次のリモートステーションに前記第1および第2のプローブ信号を送信するステップと、前記選択された次のリモートステーションから受信した前記第1および第2のプローブ応答信号を測定するステップとを繰り返すステップと、
前記複数のリモートステーションの前記残りのリモートステーションのそれぞれについて、前記ステップを繰り返すステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のプローブ信号は送信要求(RTS)メッセージを含み、前記第1のプローブ応答信号は送信可(CTS)メッセージを含むこと、および前記第2のプローブ信号はRTSメッセージを含み、前記第2のプローブ応答信号はCTSメッセージを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記アクセスポイントは、IEEE 802.11標準規格とIEEE 802.16標準規格の少なくとも1つに基づいて動作することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記指向性アンテナは、少なくとも1つの能動エレメントと複数の受動エレメントを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
無線LAN(WLAN)のアクセスポイントであって、
複数のアンテナパターンを含む指向性アンテナと、
前記指向性アンテナに接続してそれを制御するためのコントローラであって、
前記複数のアンテナパターンに対応するそれぞれの測定された信号品質を各リモートステーションに関連付けることによって、アンテナデータベースを作成するステップであって、前記それぞれの測定された信号品質は各リモートステーションとの通信に基づいて決定されることと、
前記アンテナデータベースに基づいてリモートステーションごとに好ましいアンテナパターンを決定するステップと、
リモートステーションと、それに対応する通信するための前記好ましいアンテナパターンとを選択するステップと、
前記アンテナデータベースに基づいて、前記選択されたリモートステーションと通信する前に、選択されていないリモートステーションのいずれかがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らない可能性があるかどうかを判定するステップと、
を実行することによって、複数のリモートステーションと通信することと、
を備えることを特徴とするアクセスポイント。
【請求項19】
前記指向性アンテナは、少なくとも1つの能動エレメントと複数の受動エレメントを備えることを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項20】
前記コントローラは、選択されていないリモートステーションのいずれかが、こうした通信が実際にいつ行われるかを知らない可能性があるかどうかを判定するために、前記選択されたリモートステーションに対する前記好ましいアンテナパターンに関連付けられた前記測定された信号品質を、同じ好ましいアンテナパターンを使用した場合の前記選択されていないリモートステーションに関連付けられた前記それぞれの信号品質と比較することを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項21】
前記測定された信号品質は、受信信号強度表示、搬送波対干渉比、ビットあたりエネルギー比、および信号対雑音比の少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項22】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターンを備え、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと前記コントローラが判定した場合に、前記コントローラは、前記無指向性アンテナパターンを使用して送信可メッセージを前記複数のリモートステーションに送信し、前記送信可メッセージは前記複数のリモートステーションのいずれにも対応しない未使用のアドレスを含むことを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項23】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターン備え、および、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと前記コントローラが判定した場合に、前記コントローラは、
前記無指向性アンテナパターンを使用して、前記複数のリモートステーションに送信要求メッセージを順方向リンクで送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションから送信可メッセージを受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションにデータフレームを送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションから肯定応答メッセージを受信するステップと、
を実行することを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項24】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターン備え、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと前記コントローラが判定した場合に、前記コントローラは、
前記選択されたリモートステーションから送信要求メッセージを逆方向リンクで受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションに送信可メッセージを送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションからデータフレームを受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションに肯定応答メッセージを送信するステップと、
を実行することを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項25】
前記コントローラは、リモートステーションごとに、前記第1のアンテナパターンを使用して受信した前記第1の制御フレームの信号品質と前記第2のアンテナパターンを使用して受信した前記第2の制御フレームの信号品質とを測定するために、受信する前記ステップと送信する前記ステップとを繰り返すことを特徴とする請求項24に記載のアクセスポイント。
【請求項26】
前記受信した第1の制御フレームは送信可メッセージを含み、前記受信した第2の制御フレームは肯定応答メッセージを含むことを特徴とする請求項24に記載のアクセスポイント。
【請求項27】
前記指向性アンテナは全方位角と複数の指向性角とを備え、前記コントローラは、前記アンテナデータベースを作成するために、
第1のリモートステーションを選択するステップと、
前記指向性アンテナの前記全方位角を使用して、第1のプローブ信号を前記第1のリモートステーションに送信するステップと、
前記全方位角を使用して、前記第1のプローブ信号に応答する前記第1のリモートステーションから受信した第1のプローブ応答信号を測定するステップと、
前記指向性アンテナの前記複数の指向性角の各1つを使用して、それぞれの第2のプローブ信号を前記第1のリモートステーションに送信するステップと、
各指向性角を使用して、前記それぞれの第2のプローブ信号に応答する前記第1のリモートステーションから受信した第2のプローブ応答信号を測定するステップと、
を実行することを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項28】
前記コントローラは、
前記複数のリモートステーションから次のリモートステーションを選択するステップと、
次の所定のリモートステーションに前記第1および第2のプローブ信号を送信する前記ステップと、次の所定のリモートステーションから受信した前記第1および第2のプローブ応答信号を測定する前記ステップとを繰り返すステップと、
前記複数のリモートステーションの前記残りのリモートステーションのそれぞれに対して、前記ステップを繰り返すステップと、
をさらに実行することを特徴とする請求項27に記載のアクセスポイント。
【請求項29】
前記第1のプローブ信号は送信要求(RTS)メッセージを含み、前記第1のプローブ応答信号は送信可(CTS)メッセージを含むことと、前記第2のプローブ信号はRTSメッセージを含み、前記第2のプローブ応答信号はCTSメッセージを含むこととを特徴とする請求項27に記載のアクセスポイント。
【請求項30】
前記コントローラは、IEEE 802.11標準規格とIEEE 802.16標準規格の少なくとも1つに基づいて動作することを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項1】
無線LAN(WLAN)内でアクセスポイントを動作させる方法であって、前記アクセスポイントは複数のリモートステーションと通信する指向性アンテナを備えており、前記指向性アンテナは複数のアンテナパターンを備えており、
前記アクセスポイントと各リモートステーションとの間で、前記複数のアンテナパターンに対応するそれぞれの測定された信号品質を関連付けることによって、アンテナデータベースを作成するステップであって、前記それぞれの測定された信号品質は前記アクセスポイントによって各リモートステーションとの通信に基づいて決定されることと、
前記アンテナデータベースに基づいてリモートステーションごとに好ましいアンテナパターンを決定するステップと、
リモートステーションと、それに対応する通信するための好ましいアンテナパターンとを選択するステップと、
前記アンテナデータベースに基づいて、前記選択されたリモートステーションと通信する前に、選択されていないリモートステーションのいずれかがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らない可能性があるかどうかを判定するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
選択されていないリモートステーションのいずれかが、こうした通信が実際にいつ行われるかを知らない可能性があるかどうかを判定する前記ステップは、前記選択されたリモートステーションに対する前記好ましいアンテナパターンに関連付けられた前記測定された信号品質を、同じ好ましいアンテナパターンを使用した場合の前記選択されていないリモートステーションに関連付けられた前記それぞれの信号品質と比較するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記それぞれの信号品質を測定することは、受信信号強度表示、搬送波対干渉比、ビットあたりエネルギー比、および信号対雑音比の少なくとも1つを決定するステップを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターンを含み、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと判定された場合は、前記無指向性アンテナパターンを使用して要求のない送信可メッセージを前記複数のリモートステーションに送信するステップであって、前記送信可メッセージは前記複数のリモートステーションのいずれにも対応しない未使用のアドレスを含むこと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターンを含み、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと判定された場合は、
前記無指向性アンテナパターンを使用して、前記複数のリモートステーションに送信要求メッセージを順方向リンクで送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションから送信可メッセージを受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションにデータフレームを送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションから肯定応答メッセージを受信するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターン含み、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと判定された場合は、
前記選択されたリモートステーションから送信要求メッセージを逆方向リンクで受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションに送信可メッセージを送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションからデータフレームを受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションに肯定応答メッセージを送信するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アクセスポイントは、複数の制御フレームとデータフレームとを備えるパケットデータの交換に基づいて、順方向リンクにおいて前記複数のリモートステーションと通信し、前記アンテナデータベースを作成する前記ステップは、
第1のリモートステーションから前記指向性アンテナの第1のアンテナパターンを使用して要求された(solicited)第1の制御フレームを受信するステップと、
前記第1のリモートステーションに第1のデータフレームを送信するステップと、
前記第1のリモートステーションから前記指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第2の制御フレームを受信するステップと、
前記第1のアンテナパターンを使用して受信した前記第1の制御フレームの信号品質と前記第2のアンテナパターンを使用して受信した前記第2の制御フレームの信号品質とを測定するステップと、
残りのアンテナパターンについて前記各ステップを繰り返すステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
リモートステーションごとに、前記第1のアンテナパターンを使用して受信した前記第1の制御フレームの信号品質と前記第2のアンテナパターンを使用して受信した前記第2の制御フレームの信号品質を測定するために受信する前記ステップと送信する前記ステップとを繰り返すステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記受信した第1の制御フレームは送信可メッセージを含み、前記受信した第2の制御フレームは肯定応答メッセージを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記アクセスポイントは、複数の制御フレームとデータフレームを備えるパケットデータの交換に基づいて、逆方向リンクの前記複数のリモートステーションと通信し、前記アンテナデータベースを作成する前記ステップは、
第1のリモートステーションから前記指向性アンテナの第1のアンテナパターンを使用して第1の制御フレームを受信するステップと、
前記第1のリモートステーションに第2の制御フレームを送信するステップと、
前記第1のリモートステーションから前記指向性アンテナの第2のアンテナパターンを使用して第1のデータフレームを受信するステップと、
前記第1のアンテナパターンを使用して受信した前記第1の制御フレームの信号品質と前記第2のアンテナパターンを使用して受信した前記第1のデータフレームの信号品質を測定するステップと、
他のすべてのアンテナパターンについて前記各ステップを繰り返すステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
リモートステーションごとに、前記第1のアンテナパターンを使用して受信した前記第1の制御フレームの信号品質と、前記第2のアンテナパターンを使用して受信した前記第1のデータフレームの信号品質を測定するための受信する前記ステップと送信する前記ステップとを繰り返すステップをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記受信した第1の制御フレームは送信要求メッセージを含み、前記送信された第2の制御フレームは送信可メッセージを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記指向性アンテナは全方位角と複数の指向性角を備えており、前記アンテナデータベースを作成する前記ステップは、
第1のリモートステーションを選択するステップと、
前記指向性アンテナの前記全方位角を使用して、前記第1のリモートステーションに第1のプローブ信号を送信するステップと、
前記全方位角を使用して、前記第1のプローブ信号に応答する前記第1のリモートステーションから受信した第1のプローブ応答信号を測定するステップと、
前記指向性アンテナの前記複数の指向性角の各1つを使用して、前記第1のリモートステーションにそれぞれの第2のプローブ信号を送信するステップと、
指向性角の各1つを使用して、前記それぞれの第2のプローブ信号に応答する前記第1のリモートステーションから受信した第2のプローブ応答信号を測定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のリモートステーションから次のリモートステーションを選択するステップと、
前記選択された次のリモートステーションに前記第1および第2のプローブ信号を送信するステップと、前記選択された次のリモートステーションから受信した前記第1および第2のプローブ応答信号を測定するステップとを繰り返すステップと、
前記複数のリモートステーションの前記残りのリモートステーションのそれぞれについて、前記ステップを繰り返すステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のプローブ信号は送信要求(RTS)メッセージを含み、前記第1のプローブ応答信号は送信可(CTS)メッセージを含むこと、および前記第2のプローブ信号はRTSメッセージを含み、前記第2のプローブ応答信号はCTSメッセージを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記アクセスポイントは、IEEE 802.11標準規格とIEEE 802.16標準規格の少なくとも1つに基づいて動作することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記指向性アンテナは、少なくとも1つの能動エレメントと複数の受動エレメントを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
無線LAN(WLAN)のアクセスポイントであって、
複数のアンテナパターンを含む指向性アンテナと、
前記指向性アンテナに接続してそれを制御するためのコントローラであって、
前記複数のアンテナパターンに対応するそれぞれの測定された信号品質を各リモートステーションに関連付けることによって、アンテナデータベースを作成するステップであって、前記それぞれの測定された信号品質は各リモートステーションとの通信に基づいて決定されることと、
前記アンテナデータベースに基づいてリモートステーションごとに好ましいアンテナパターンを決定するステップと、
リモートステーションと、それに対応する通信するための前記好ましいアンテナパターンとを選択するステップと、
前記アンテナデータベースに基づいて、前記選択されたリモートステーションと通信する前に、選択されていないリモートステーションのいずれかがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らない可能性があるかどうかを判定するステップと、
を実行することによって、複数のリモートステーションと通信することと、
を備えることを特徴とするアクセスポイント。
【請求項19】
前記指向性アンテナは、少なくとも1つの能動エレメントと複数の受動エレメントを備えることを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項20】
前記コントローラは、選択されていないリモートステーションのいずれかが、こうした通信が実際にいつ行われるかを知らない可能性があるかどうかを判定するために、前記選択されたリモートステーションに対する前記好ましいアンテナパターンに関連付けられた前記測定された信号品質を、同じ好ましいアンテナパターンを使用した場合の前記選択されていないリモートステーションに関連付けられた前記それぞれの信号品質と比較することを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項21】
前記測定された信号品質は、受信信号強度表示、搬送波対干渉比、ビットあたりエネルギー比、および信号対雑音比の少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項22】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターンを備え、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと前記コントローラが判定した場合に、前記コントローラは、前記無指向性アンテナパターンを使用して送信可メッセージを前記複数のリモートステーションに送信し、前記送信可メッセージは前記複数のリモートステーションのいずれにも対応しない未使用のアドレスを含むことを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項23】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターン備え、および、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと前記コントローラが判定した場合に、前記コントローラは、
前記無指向性アンテナパターンを使用して、前記複数のリモートステーションに送信要求メッセージを順方向リンクで送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションから送信可メッセージを受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションにデータフレームを送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションから肯定応答メッセージを受信するステップと、
を実行することを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項24】
前記複数のアンテナパターンは無指向性アンテナパターン備え、前記選択されていないリモートステーションの少なくとも1つがこうした通信が実際にいつ行われるかを知らないと前記コントローラが判定した場合に、前記コントローラは、
前記選択されたリモートステーションから送信要求メッセージを逆方向リンクで受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションに送信可メッセージを送信するステップと、
前記選択されたリモートステーションからデータフレームを受信するステップと、
前記選択されたリモートステーションに肯定応答メッセージを送信するステップと、
を実行することを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項25】
前記コントローラは、リモートステーションごとに、前記第1のアンテナパターンを使用して受信した前記第1の制御フレームの信号品質と前記第2のアンテナパターンを使用して受信した前記第2の制御フレームの信号品質とを測定するために、受信する前記ステップと送信する前記ステップとを繰り返すことを特徴とする請求項24に記載のアクセスポイント。
【請求項26】
前記受信した第1の制御フレームは送信可メッセージを含み、前記受信した第2の制御フレームは肯定応答メッセージを含むことを特徴とする請求項24に記載のアクセスポイント。
【請求項27】
前記指向性アンテナは全方位角と複数の指向性角とを備え、前記コントローラは、前記アンテナデータベースを作成するために、
第1のリモートステーションを選択するステップと、
前記指向性アンテナの前記全方位角を使用して、第1のプローブ信号を前記第1のリモートステーションに送信するステップと、
前記全方位角を使用して、前記第1のプローブ信号に応答する前記第1のリモートステーションから受信した第1のプローブ応答信号を測定するステップと、
前記指向性アンテナの前記複数の指向性角の各1つを使用して、それぞれの第2のプローブ信号を前記第1のリモートステーションに送信するステップと、
各指向性角を使用して、前記それぞれの第2のプローブ信号に応答する前記第1のリモートステーションから受信した第2のプローブ応答信号を測定するステップと、
を実行することを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【請求項28】
前記コントローラは、
前記複数のリモートステーションから次のリモートステーションを選択するステップと、
次の所定のリモートステーションに前記第1および第2のプローブ信号を送信する前記ステップと、次の所定のリモートステーションから受信した前記第1および第2のプローブ応答信号を測定する前記ステップとを繰り返すステップと、
前記複数のリモートステーションの前記残りのリモートステーションのそれぞれに対して、前記ステップを繰り返すステップと、
をさらに実行することを特徴とする請求項27に記載のアクセスポイント。
【請求項29】
前記第1のプローブ信号は送信要求(RTS)メッセージを含み、前記第1のプローブ応答信号は送信可(CTS)メッセージを含むことと、前記第2のプローブ信号はRTSメッセージを含み、前記第2のプローブ応答信号はCTSメッセージを含むこととを特徴とする請求項27に記載のアクセスポイント。
【請求項30】
前記コントローラは、IEEE 802.11標準規格とIEEE 802.16標準規格の少なくとも1つに基づいて動作することを特徴とする請求項18に記載のアクセスポイント。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−524272(P2007−524272A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517344(P2006−517344)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/019324
【国際公開番号】WO2004/114457
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(504407103)アイピーアール ライセンシング インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/019324
【国際公開番号】WO2004/114457
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(504407103)アイピーアール ライセンシング インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】
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