説明

アクセルペダル誤操作防止装置

【課題】アクセルペダルとブレーキペダルの踏み違えに対して確実に動作し機械的にも堅牢で復旧が容易なもの
【解決手段】アクセルペダル12の左右の側面を挟持する一対の挟持アーム24と、挟持アーム24の挟持力を保持する挟持ばね26と、挟持アーム24の外側面を囲んで往復移動範囲を規定するガイドフレーム32と、挟持アーム24の往復移動によりアクセルを開閉するアクセルワイヤ20と、挟持アーム24を復帰させるための弾力を加える戻しばね22と、アクセル作動範囲を越えて挟持アーム24が移動したとき、挟持アーム24と衝突し、挟持アーム24の間隔を広げるガイド爪28と、挟持アーム24の間隔が広がってアクセルペダル12が解放されたときに、移動したアクセルペダル12により押圧されてブレーキを作動させる非常ブレーキペダル14を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み違いによる事故を防止するアクセルペダル誤操作防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクセルペダルとブレーキペダルの踏み違いにより、様々な事故が多発している。報道されない事故や大事に至らなかった場合を含めれば、大変な件数になるものと予想される。これを防止するために多種の技術が紹介されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−269650号公報
【特許文献2】特開平8−253054号公報
【特許文献3】特開平8−53021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
アクセルペダルとブレーキペダルの踏み違えたときでも、運転者はブレーキペダルを踏んでいるものと確信して、ペダルをいっそう強く踏んでしまう。こうした場合に、運転者の誤操作を検知して自動的にブレーキを作動させる技術も各種紹介されているが、制御が複雑になるという問題があった。また、非常時の安全を確保するための装置は、機構的に堅牢で、動作テストも確実に容易にできることが望ましい。
上記の課題を解決するために、本発明は、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み違えに対して確実に動作し、機械的にも堅牢で復旧も容易なアクセルペダル誤操作防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
アクセルペダル12の左右の側面を挟持する一対の挟持アーム24と、この挟持アーム24のアクセルペダル12に対する挟持力を保持する挟持ばね26と、アクセルペダル12の可動範囲で挟持アーム24の外側面を囲んで往復移動範囲を規定するガイドフレーム32と、前記挟持アーム24に連結されて前記挟持アーム24の往復移動によりアクセルを開閉するアクセルワイヤ20と、挟持アーム24をアクセルべダルの上死点まで復帰させるための弾力を加える戻しばね22と、前記上死点から下死点までのアクセル作動範囲を越えて前記挟持アーム24が移動したとき、前記挟持アーム24と衝突し、前記一対の挟持アーム24の間に割り込んで挟持アーム24の間隔を広げるガイド爪28と、前記挟持アーム24の間隔が広がって前記アクセルペダル12を挟持する挟持力が解放されたときに、前記アクセルペダル12が前記下死点を越えて移動する方向に配置されて、前記アクセルペダル12により押圧されてブレーキを作動させる非常ブレーキペダル14を備えたことを特徴とするアクセルペダル誤操作防止装置。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載のアクセルペダル誤操作防止装置において、前記非常ブレーキペダル14は、自動車本体のブレーキペダルと連結するリンク34を備え、その連結部36には、自動車の床面に一端を固定した支持軸40が挿入されていることを特徴とするアクセルペダル誤操作防止装置。
【0007】
〈構成3〉
構成1または2に記載のアクセルペダル誤操作防止装置において、一端を非常ブレーキペダル14に回転軸52を介して接続され、中間を第一支点42により支持された第一アーム44と、一端を本体のブレーキペダル50に回転軸54を介して接続され、中間を第二支点46により支持された第二アーム48とが、それぞれ他端を相互に連結し、この連結を維持した状態で屈曲とアームの長手方向の相対移動を許容する自在連結部56で連結されていることを特徴とするアクセルペダル誤操作防止装置。
【0008】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載のアクセルペダル誤操作防止装置において、前記非常ブレーキペダル14の操作によりブレーキランプとハザードランプを点灯させるスイッチを設けたことを特徴とするアクセルペダル誤操作防止装置。
【発明の効果】
【0009】
〈構成1の効果〉
アクセルペダル12をブレーキペダルと間違えて強く踏み込んだとき、挟持アーム24がアクセルペダル12を解放して、アクセルペダル12が非常ブレーキペダル14を押圧するので、ペダルを強く踏み続けたときにはブレーキがかかる。また、このとき挟持アーム24がアクセルペダル12を解放して、戻しばね22により上死点まで復帰するので、アクセルを自動的に閉状態に戻すことができる。
〈構成2の効果〉
支持軸40が連結部36に挿入されていると、リンク34は支持軸40の軸方向に円滑に往復移動できる。従って、自動車本体のブレーキペダルを正確に操作できる。
〈構成3の効果〉
第一アーム44と第二アーム48の長さや第一支点42と第二支点46の位置を調節すると、非常ブレーキペダル14を踏み込んだときに、隣接する本体のブレーキペダル50に対してその力を有効に伝達し、必要な量だけ本体のブレーキペダル50を踏み込むように、最適化することができる。
〈構成4の効果〉
後続車その他の周囲の人に対して非常操作をしたことを知らせるために、ブレーキランプとハザードランプを点灯させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のアクセルペダル誤操作防止装置10を示し、(a)と(b)は、その主要部の動作前後の状態を比較した正面図。(c)は装置のY−Y線に沿う横断面図、(d)は挟持アーム24の斜視図、(e)はガイド爪28の斜視図である。
【図2】図1の状態に続く状態を示し、(a)と(b)はその前後の状態を比較した正面図である。
【図3】アクセルペダルの復帰動作説明図で、(a)は復帰中(b)は復帰後の状態の正面図である。
【図4】非常ブレーキペダル14と自動車本体のブレーキペダルの連結構造を示し、(a)はその斜視図、(b)と(c)はその異なる状態の縦断面図である。
【図5】非常ブレーキペダル14と自動車本体のブレーキペダルの連結構造の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は実施例1のアクセルペダル誤操作防止装置10を示し、(a)と(b)は、その主要部の動作前後の状態を比較した正面図。(c)は装置のY−Y線に沿う横断面図、(d)は挟持アーム24の斜視図、(e)はガイド爪28の斜視図である。
【0013】
図のアクセルペダル誤操作防止装置10は、アクセルペダル12を足で踏む操作を妨げない場所に取り付けられる。例えば、アクセルペダル12のつま先側に設けるとよい。アクセルペダル12には、その左右の側面を挟持する一対の挟持アーム24が取り付けられている。挟持ばね26は、この挟持アーム24のアクセルペダル12に対する挟持力を保持するためのものである。
【0014】
この実施例では、挟持アーム24は横棒21の両端に設けた支持軸23を介して横棒21に連結され、下端が挟みのように開閉できる構成とされている。横棒21は上板16に対して戻しばね22により吊り下げられている。上板16は、アクセルペダル12の上部にある自動車のフレーム等である。
【0015】
横棒21には、アクセルワイヤ20が連結されている。アクセルワイヤ20は、図示しないアクセルを開閉するワイヤーである。即ち、アクセルワイヤ20が、横棒21を介して挟持アーム24に連結されているので、挟持アーム24の往復移動によりアクセルを開閉することができる。戻しばね22は、アクセルワイヤ20と挟持アーム24とを、アクセルべダルの上死点まで復帰させるための弾力を加える。
【0016】
図1(c)に示すように、ガイドフレーム32の外側面を、断面がコ字状の挟持アーム24が囲んでいる。このガイドフレーム32は、アクセルペダル12の可動範囲で、挟持アーム24の往復移動範囲を規定している。即ち、挟持アーム24はガイドフレーム32に沿って自由に往復移動できるが、その範囲を逸脱しない。
【0017】
正常に運転がされる場合には、アクセルペダル12は、(a)に示すように、アクセル作動範囲Aの範囲で上下動する。しかしながら、アクセルペダルをブレーキペダルと勘違いして強く踏み込んだときには、アクセルペダル12が挟持アーム24から離れる。その直前の状態が(b)の状態である。
【0018】
挟持アーム24にはその下端部に突起30が設けられている。アクセルペダル12はこの突起30により位置決めされて、挟持アーム24と一体に上下動する。アクセル作動範囲Aの上限を上死点、下限を下死点と呼ぶことにする。この上死点から下死点までのアクセル作動範囲を越えて挟持アーム24が移動したとき、挟持アーム24はガイド爪28に衝突する。(b)がこの状態である。
【0019】
ガイド爪28は床面18に固定されている。挟持アーム24は図1(c)に示すように、下端ほど間隔が広くなる角状の突起30を備えている。ガイド爪28は一対の突起30の間に割り込むくさび状をしている。挟持アーム24がガイド爪28に衝突すると、ガイド爪28が一対の挟持アーム24の間に割り込んで挟持アーム24の間隔を広げる。
【0020】
図2は、図1の状態に続く状態を示し、(a)と(b)はその前後の状態を比較した正面図である。
図2(a)に示すように、ガイド爪28により挟持アーム24の間隔が広がってアクセルペダル12を挟持する挟持力が解放されると、アクセルペダル12が下死点を越えて移動する。ガイド爪28の間には、非常ブレーキペダル14が配置されている。アクセルペダル12は非常ブレーキペダル14に衝突する。
【0021】
非常ブレーキペダル14には詳細を図示しないブレーキシリンダ33が接続されており、アクセルペダル12を踏み込む力で非常ブレーキペダル14を踏み込むと、非常ブレーキペダル14がアクセルペダル12により押圧されてブレーキを作動させる。このとき、挟持アーム24がアクセルペダル12を解放する。戻しばね22は挟持アーム24を引き上げて上死点まで復帰させる。アクセルワイヤ20が戻されるので、アクセルが閉状態になり、車輪の駆動力が無くなる。
【0022】
即ち、アクセルペダル12をブレーキペダルと間違えて強く踏み込んだとき、挟持アーム24がアクセルペダル12を解放して、アクセルペダル12が非常ブレーキペダル14を押圧するので、ペダルを強く踏み続けたときにはブレーキがかかり、車を停止させることができる。なお、非常ブレーキペダル14は例えば、図1(b)に示したブレーキ作動範囲Bで移動するように構成しておく。
【実施例2】
【0023】
図3はアクセルペダルの復帰動作説明図で、(a)は復帰中(b)は復帰後の状態の正面図である。
この実施例の装置は、非常ブレーキを作動させた後に、簡単に元の正常な状態に復旧できる。まず、図3(a)に示すように、アクセルペダル12がアクセル可動範囲に戻る方向に移動すると、挟持アーム24の突起30に衝突する。
【0024】
アクセルペダル12の全幅は、突起30の最も間隔の広い下端よりも狭く選定されている。従って、アクセルペダル12が突起30に衝突し、その間隔を押し広げて、図3(b)に示すように、突起30の直上の安定位置に戻る。その後は、図1(a)で説明したように正常にアクセルを操作することが可能になる。
【実施例3】
【0025】
図4は、非常ブレーキペダル14と自動車本体のブレーキペダルの連結構造を示し、(a)はその斜視図、(b)と(c)はそのZ−Z線に沿う異なる状態の縦断面図である。
この実施例では、非常ブレーキペダル14は、自動車本体のブレーキペダルと連結するリンク34を備える。リンク34の中央付近には補強と移動方向を規制するための連結部36が設けられている。連結部36はブロック状で、例えば、2個の軸孔38を備えている。
【0026】
連結部36の軸孔38には、自動車の床面18に一端を固定した支持軸40が挿入されている。非常ブレーキペダル14を踏み込むと、図4(b)の状態から図4(c)の状態になる。非常ブレーキペダル14を解放すると図4(b)の状態に復帰する。この支持軸40によって、リンク34は支持軸40の軸方向に円滑に往復移動する。即ち、非常ブレーキペダル14を踏み込む動作をそのまま本体のブレーキに伝達できる。
【実施例4】
【0027】
図5は非常ブレーキペダル14と自動車本体のブレーキペダルの連結構造の変形例を示す側面図である。
この実施例では、非常ブレーキペダル14と本体のブレーキペダル50とを第一アーム44と第二アーム48を介して接続する。第一アーム44は、一端を非常ブレーキペダル14の裏面に回転軸52を介して接続されている。また、第一アーム44は、中間を第一支点42により支持されて、シーソー運動をするように構成されている。
【0028】
一方、第二アーム48は、一端を本体のブレーキペダル50の裏面に回転軸54を介して接続されている。また、第二アーム48は、中間を第二支点46により支持されて、シーソー運動をするように構成されている。第一支点42と第二支点46とは自動車の壁に固定されている。
【0029】
第一アーム44の他端と第二アーム48の他端とは、自在連結部56を介して連結されている。自在連結部56は例えば、それぞれの他端を相互に連結を維持した状態で、屈曲とアームの長手方向の相対移動を許容する構造のものである。双方が回転軸を介して連結され、その回転軸が長孔中を自由に移動できる構成にするとよい。
【0030】
即ち、非常ブレーキペダル14を踏み込むと、第一アーム44の他端は矢印Cの方向に揺動する。第二アーム48の他端は第一アーム44の他端により矢印C方向に引き上げられ、第二アーム48の一端が本体のブレーキペダル50を引き下げる。従って、図の破線に示す状態になる。これにより、自動車本体のブレーキが作動する。
【0031】
第一アーム44と第二アーム48の長さや第一支点42と第二支点46の位置を調節すると、非常ブレーキペダル14のストロークと本体のブレーキペダル50のストロークの比率を自由に変更できる。従って、ブレーキの効き目を最適化できる。また、非常ブレーキペダル14を踏み込む力は、本体のブレーキペダル50に正確に伝達される。この機構は堅牢でメンテナンスが容易な特徴がある。
【0032】
なお、非常ブレーキペダル14の操作により本体のブレーキベダルが連動する場合には自動的にブレーキランプが点灯する。しかし、実施例1で説明したように、非常ブレーキペダル14でブレーキシリンダを直接操作する場合には、ブレーキベダルが連動しない。従って、この場合に、非常ブレーキペダル14に押されてブレーキランプとハザードランプを点灯させるスイッチを設けることが好ましい。ハザードランプを点灯させるのは、非常ブレーキを動作させた後は、直ちに運転を再開することができないから、それを周囲に知らせるためである。
【符号の説明】
【0033】
10 アクセルペダル誤操作防止装置
12 アクセルペダル
14 非常ブレーキペダル
16 上板
18 床板
20 アクセルワイヤ
21 横棒
22 戻しばね
23 支持軸
24 挟持アーム
26 挟持ばね
28 ガイド爪
30 突起
32 ガイドフレーム
33 ブレーキシリンダ
34 リンク
36 連結部
38 軸孔
40 支持軸
42 第一支点
44 第一アーム
46 第二支点
48 第二アーム
50 本体のブレーキペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダル12の左右の側面を挟持する一対の挟持アーム24と、
この挟持アーム24のアクセルペダル12に対する挟持力を保持する挟持ばね26と、
アクセルペダル12の可動範囲で挟持アーム24の外側面を囲んで往復移動範囲を規定するガイドフレーム32と、
前記挟持アーム24に連結されて前記挟持アーム24の往復移動によりアクセルを開閉するアクセルワイヤ20と、
挟持アーム24をアクセルべダルの上死点まで復帰させるための弾力を加える戻しばね22と、
前記上死点から下死点までのアクセル作動範囲を越えて前記挟持アーム24が移動したとき、前記挟持アーム24と衝突し、前記一対の挟持アーム24の間に割り込んで挟持アーム24の間隔を広げるガイド爪28と、
前記挟持アーム24の間隔が広がって前記アクセルペダル12を挟持する挟持力が解放されたときに、前記アクセルペダル12が前記下死点を越えて移動する方向に配置されて、前記アクセルペダル12により押圧されてブレーキを作動させる非常ブレーキペダル14を備えたことを特徴とするアクセルペダル誤操作防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクセルペダル誤操作防止装置において、
前記非常ブレーキペダル14は、自動車本体のブレーキペダルと連結するリンク34を備え、その連結部36には、自動車の床面に一端を固定した支持軸40が挿入されていることを特徴とするアクセルペダル誤操作防止装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクセルペダル誤操作防止装置において、
一端を非常ブレーキペダル14に回転軸52を介して接続され、中間を第一支点42により支持された第一アーム44と、一端を本体のブレーキペダル50に回転軸54を介して接続され、中間を第二支点46により支持された第二アーム48とが、それぞれ他端を相互に連結し、この連結を維持した状態で屈曲とアームの長手方向の相対移動を許容する自在連結部56で連結されていることを特徴とするアクセルペダル誤操作防止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のアクセルペダル誤操作防止装置において、
前記非常ブレーキペダル14の操作によりブレーキランプとハザードランプを点灯させるスイッチを設けたことを特徴とするアクセルペダル誤操作防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78989(P2013−78989A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219698(P2011−219698)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(502329784)株式会社ツタ (1)
【Fターム(参考)】