説明

アクチュエーター及びアクチュエーターの制御方法

【課題】小型化が可能な電極構造を有するアクチュエーターを提供する。
【解決手段】第1の電極及び第2の電極を有するアクチュエーター素子と、前記アクチュエーター素子に駆動電圧の供給を行う駆動回路と、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差の検出を行う検出回路と、を含み、前記駆動電圧の供給は、所定の期間における第1の期間内に、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差が生じるように行われ、前記電位差の検出は、前記所定の期間における前記第1の期間以外の第2の期間内に行われ、前記所定の期間の長さは、前記第1の期間の長さと前記第2の期間との長さとを加えた長さであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に駆動されるアクチュエーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野にアクチュエーター及びセンサーが用いられている。アクチュエーターは、電気、油圧若しくは気圧などにより与えられるエネルギーを物理運動量に変換する装置のことを示すが、一般的に伸縮若しくは屈伸といった単純な動作を行う装置に対して用いられる場合が多い。例えば、バルブやレバーなどといった操作部分を動作させるための装置や、ロボットの関節を動作させるための装置がアクチュエーターと呼ばれる。
【0003】
アクチュエーターの種類の一つに高分子アクチュエーターがある。このアクチュエーターは、ゴムのような柔らかい材質であるが、電圧を加えると曲がる特性を持っている。例えば、イオン導電性高分子電解質膜の両側に電極を形成し、この一対の電極間に電位差を与えることでイオン導電性高分子電解質膜を変形させることができ、アクチュエーターとして使用することができる。このようなイオン導電性高分子電解質膜を用いたアクチュエーターの例が特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0004】
近年は、医療分野、マイクロマシン分野及び産業用ロボット分野などに適した小型、軽量なアクチュエーターが求められるようになってきている。これらのアクチュエーターの多くは電気的に制御されるものであり、上述した高分子アクチュエーターもこれらの分野での応用が期待されているものである。また、これらの分野の使用において、動作状況を目視で確認することが難しい場所にアクチュエーターが取り付けられる場合がある。このため、アクチュエーターの動作状況を確認するためにセンサーが必要となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−275078号公報
【特許文献2】特開平11−169393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように更なるアクチュエーターの小型化は必要であるが、アクチュエーターの小型化が進むにつれ電極の取り付け場所の確保が難しくなる場合がある。また、アクチュエーターの動作状況の確認の手段を用意しないとアクチュエーターの制御が難しくなるが、このためのセンサーを取り付ける場所を確保することが難しい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかるアクチュエーターは、第1の電極及び第2の電極を有するアクチュエーター素子と、前記アクチュエーター素子に駆動電圧の供給を行う駆動回路と、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差の検出を行う検出回路と、を含み、前記駆動電圧の供給は、所定の期間における第1の期間内に、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差が生じるように行われ、前記電位差の検出は、前記所定の期間における前記第1の期間以外の第2の期間内に行われ、前記所定の期間の長さは、前記第1の期間の長さと前記第2の期間との長さとを加えた長さであることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1の電極及び第2の電極を有するアクチュエーター素子に対して、第1の期間に第1の電極と第2の電極との間に電位差が生じるように駆動電圧を駆動回路により駆動し、第2の期間に第1の電極と第2の電極との間の電位差を検出することで、第1の期間にアクチュエーター素子の形状を変化させ、第2の期間にアクチュエーター素子の変形量を検出することができる。これにより、アクチュエーター素子を駆動するための電極とアクチュエーター素子の変形量を検出するための電極とを共用とすることができ、アクチュエーター素子に取り付ける電極の数を低減することができる。
【0010】
所定の期間は、第1の期間と第2の期間とで構成される。所定の期間を繰り返すことで、第2の期間における検出結果を次の所定の期間における第1の期間の駆動回路の制御に用いることが可能となる。これにより、アクチュエーター素子の変形量を確認してからアクチュエーター素子の変形量の制御を行うことができ、アクチュエーターが目視することができない状況にあっても的確な制御を行うことができる。
【0011】
[適用例2]
上記適用例にかかるアクチュエーターにおいて、前記駆動電圧の供給は、前記第2の期間において行われないことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第2の期間に駆動回路からの駆動電圧の駆動が行われないことで、第2の期間における第1の電極と第2の電極との電位差の測定を駆動電圧の影響を受けずに検出することができる。
【0013】
[適用例3]
上記適用例にかかるアクチュエーターにおいて、前記検出回路は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差を増幅する機能を有することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1の電極と第2の電極との電位差が微弱なものであっても検出をすることができる。
【0015】
[適用例4]
上記適用例にかかるアクチュエーターにおいて、第1の前記所定の期間である第1所定期間における前記電位差の検出の結果が、前記第1所定期間の後の第2の前記所定の期間である第2所定期間における前記駆動電圧の供給の制御に用いられることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第1所定期間の第2の期間における検出結果を、第1所定期間より後の第2所定期間における第1の期間の駆動回路の制御に用いることで、アクチュエーター素子のより複雑な制御をすることができる。第1所定期間と第2所定期間とは必ずしも連続した所定の期間でなくてもよい。
【0017】
[適用例5]
本適用例にかかるアクチュエーターの制御方法は、第1の電極及び第2の電極を有するアクチュエーターの制御方法であって、所定の期間における第1の期間に、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差を生じさせるように駆動電圧の供給を行う第1の工程と、所定の期間における前記第1の期間以外の第2の期間に、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差の検出を行う第2の工程と、前記電位差の検出の結果を基にして前記駆動電圧の供給量を決定する第3の工程と、を含み、前記所定の期間の長さは、前記第1の期間の長さと前記第2の期間との長さとを加えた長さであることを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、第1の工程、第2の工程及び第3の工程を行うことで、第1の期間に第1の電極と第2の電極との間に電位差が生じるように駆動電圧を駆動回路により駆動し、第2の期間に第1の電極と第2の電極との間の電位差を検出することで、第1の期間にアクチュエーター素子の形状を変化させ、第2の期間にアクチュエーター素子の変形量を検出することができる。これにより、アクチュエーター素子を駆動するための電極とアクチュエーター素子の変形量を検出するための電極とを共用とすることができ、アクチュエーター素子に取り付ける電極の数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】アクチュエーターの構成図。
【図2】駆動回路及び検出回路のブロック図。
【図3】アクチュエーターの動作を説明するためのタイミングチャート。
【図4】アクチュエーターを含むシステムのブロック図。
【図5】アクチュエーター素子の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。尚、図の記載は、説明の便宜上のものであり、実際の形状とは異なる場合がある。また、下記説明においてハイレベル若しくはローレベルという表現を用いているが、ハイレベルとは所定の電圧値(閾値)よりも高いレベルのことであり、ローレベルとは該所定の電圧値(閾値)よりも低いレベルのことである。
【0021】
まず、アクチュエーター素子について説明を行う。図5−(a)にアクチュエーター素子10を示す。アクチュエーター素子10は、第1電極11、第2電極12及びイオン導電性高分子電解質膜13(以降、イオン交換膜13と記載する)を含む。イオン交換膜13は、その内部の外側に多数のマイナスイオンが固定されており、その内部を自由に移動できる多数のプラスイオン(カウンターイオン)が存在する。また、イオン交換膜13内部には多数の水分子が含まれている。
【0022】
第1電極11と第2電極12との間に電位差を与えると、カウンターイオンが該電位差により定まる方向にイオン交換膜13内部を移動する。このカウンターイオンの移動に伴い水分子の移動が引き起こされ、イオン交換膜13の内部における水分子の配置に偏りが発生する。このような状態になると、イオン交換膜13は水分子の量が多くなる側が伸張し、水分子の量が少なくなる側は収縮して屈曲した形状に変形する。このイオン交換膜13の変形が、アクチュエーターとしての機能を提供することになる。
【0023】
図5−(b)は、第1電極11の電位を第2電極12の電位よりも高くした場合のアクチュエーター素子10の変形の様子を示したものである。カウンターイオンは、第2電極12側に引き寄せられ、これに伴い水分子も第2電極12側に移動する。これにより、イオン交換膜13の第2電極12側が伸張し第1電極11側が収縮する。図5−(c)は、第1電極11の電位を第2電極12の電位よりも低くした場合のアクチュエーター素子10の変形の様子を示したものである。カウンターイオンは、第1電極11側に引き寄せられ、これに伴い水分子も第1電極11側に移動する。これにより、イオン交換膜13の第2電極12側が収縮し第1電極11側が伸張する。
【0024】
次に、上述したアクチュエーター素子10を有するアクチュエーター100について説明する。アクチュエーター100を図1に示す。アクチュエーター100は、アクチュエーター素子10、駆動回路20及び検出回路30を有する。第1電極11は、第2制御信号42を介して駆動回路20により電位が与えられる。第2電極12は、第1制御信号41を介して駆動回路20により電位が与えられる。また、第1制御信号41及び第2制御信号42は、アクチュエーター素子10の変形量を検出するための情報を検出回路30に伝達するための信号としても用いられる。
【0025】
駆動回路20は、方向制御信号101、角度制御信号102及びゲート信号103により制御され、第1制御信号41及び第2制御信号42のそれぞれにアクチュエーター素子10を変形させるために必要な電位を供給する。方向制御信号101、角度制御信号102及びゲート信号103は、アクチュエーター100の外部から与えられる信号である。
【0026】
駆動回路20の回路ブロック図を図2−(a)に示す。駆動回路20は、論理和素子21、論理和素子22、駆動素子23、駆動素子24及び論理反転素子25を含む。駆動素子23及び駆動素子24は、共にトライステートのバッファーである。第1制御信号41は駆動素子24により駆動され、第2制御信号42は駆動素子23により駆動される。
【0027】
駆動素子23及び駆動素子24における信号の出力タイミングは、ゲート信号103により制御される。ゲート信号103がハイレベルのときに駆動素子23及び駆動素子24は信号を駆動し、ゲート信号103がローレベルのときは出力をハイインピーダンスとする。駆動素子23の入力信号は論理和素子21の出力信号であり、方向制御信号101を反転した信号と角度制御信号102が論理和された結果である。また、駆動素子24の入力信号は論理和素子22の出力信号であり、方向制御信号101と角度制御信号102が論理和された結果である。
【0028】
検出回路30の回路ブロック図を図2−(b)に示す。アクチュエーター素子10の変形は、第1電極11と第2電極12との間に電位差を生じさせることになる。この電位差は、第1制御信号41と第2制御信号42との間の電位差となる。尚、第1制御信号41及び第2制御信号42を差動信号として機能させることができる。上述したが、検出回路30は、第1制御信号41及び第2制御信号42を入力することにより第1電極11と第2電極12との間に電位差を検出することができる。第1制御信号41及び第2制御信号42は、所定の抵抗値を持つ抵抗素子32、抵抗素子33、抵抗素子34及び抵抗素子35により電位が調整され、増幅素子31により検出信号111が生成される。これにより、アクチュエーター素子10そのものをセンサー素子として機能させることができる。
【0029】
図3に、まずアクチュエーター素子10を第2電極12の側に屈曲させる制御(第1の制御)を行い、次に第1電極11側に屈曲させる制御(第2の制御)を行い、次に再び第2電極12側に屈曲させる制御(第3の制御)を行った場合のタイミングチャートを示す。図3に示したのは、方向制御信号101、角度制御信号102、ゲート信号103、駆動素子23の信号駆動状態(図3において駆動素子23と記載)、駆動素子24の信号駆動状態(図3において駆動素子24と記載)、第1制御信号41、第2制御信号42及び検出信号111である。方向制御信号101、角度制御信号102及びゲート信号103は、アクチュエーター100に対する外部からの入力信号である。駆動素子23の信号駆動状態、駆動素子24の信号駆動状態、第1制御信号41及び第2制御信号42は、アクチュエーター100の内部信号である。検出信号111は、アクチュエーター100からの外部に対しての出力信号である。尚、図3に示したタイミングチャートは、信号の状態が分かりやすいように、各素子や配線などによる遅延によるタイミングのズレなどを便宜上省略して記載した。
【0030】
ゲート信号103は、アクチュエーター100における制御サイクルを指定する役割を有する。図3で示したd1が1サイクルとなる。1サイクルd1は、第1の期間d2と第2の期間d3に分割され、ゲート信号103がハイレベルであるときが第1の期間d2でありゲート信号103がローレベルであるときが第2の期間d3である。また、上述したようにゲート信号103は、駆動素子23及び駆動素子24の出力を制御する信号として用いられる信号である。駆動素子23及び駆動素子24の出力は、第2の期間d3の間ハイインピーダンスとなる。これにより、第1制御信号41及び第2制御信号42は、第1の期間d2の間はアクチュエーター素子10を動作させるための信号となり、第2の期間d3の間はアクチュエーター素子10の変形に伴い発生する第1電極11と第2電極12との間の電位差を伝達するための信号となる。尚、1サイクルd1、第1の期間d2及び第2の期間d3は、アクチュエーター素子10の特性や、アクチュエーター100の用途などを考慮して設定されるものである。
【0031】
方向制御信号101は、アクチュエーター素子10の屈曲する方向を規定するための信号である。この信号の値により、第1電極11と第2電極12とでどちらの方の電位を高くするかが決定され、これによりアクチュエーター素子10の屈曲する向きが決まる。
【0032】
角度制御信号102は、アクチュエーター素子10の変形量を制御するための信号である。アクチュエーター素子10は、カウンターイオンの移動によって変形するが、カウンターイオンの移動は第1電極11及び第2電極12の各々に所定の電位を与えている期間に行われる。このため、第1電極11と第2電極12との間に電位差を与える時間を制御することで、アクチュエーター素子10の変形量を制御することが可能となる。角度制御信号102がハイレベルとなる期間が第1電極11と第2電極12との間に電位差を与える期間である。第1の期間d2内において、角度制御信号102をハイレベルとする期間の長さを変えることで、アクチュエーター素子10の変形量を制御する。角度制御信号102をハイレベルとする期間は、第1の期間d2の何処でもよく、また、分割されていてもよい。
【0033】
第1の期間d2における駆動素子23及び駆動素子24の駆動状態は、次のようになる。方向制御信号101がハイレベルのときは、角度制御信号102の信号レベルは駆動素子23により第2制御信号42に反映され、駆動素子24は第1制御信号41をローレベルに駆動する。また、方向制御信号101がローレベルのときは、角度制御信号102の信号レベルが駆動素子24により第1制御信号41に反映され、駆動素子23は第2制御信号42をローレベルに駆動する。
【0034】
第2の期間d3は、第1制御信号41及び第2制御信号42は、駆動素子23及び駆動素子24の出力がハイインピーダンスとなる。駆動素子23及び駆動素子24がハイインピーダンスの状態おいて、第1制御信号41及び第2制御信号42は、アクチュエーター素子10内のカウンターイオンの移動に伴って発生する第1電極11及び第2電極12の電位を伝達する。この電位の変化は、アクチュエーター素子10内のカウンターイオンの移動に伴うものであるから、一方の電極の電位が高くなればその分他方の電極の電位が低くなる。このため、第1制御信号41と第2制御信号42とでひとつの差動信号を形成するものとして扱うことができる。この差動信号を増幅して得た信号が検出信号111である。また、このときの第1制御信号41及び第2制御信号42はアナログ信号として扱われることになり、検出信号111もアナログ信号となる。
【0035】
検出信号111は、アクチュエーター素子10が第1電極11の側に屈曲している場合は、プラスの電圧レベルとして出力され、屈曲量が大きいほど電圧レベルは高くなる。また、検出信号111は、アクチュエーター素子10が第2電極12の側に屈曲している場合は、マイナスの電圧レベルとして出力され、屈曲量が大きいほど電圧レベルは低くなる。尚、検出信号111が有効となる値を出力するのは第2の期間d3のときであり、図3においては、検出信号111の出力が有効となる部分の状態のみ図示した。
【0036】
上記した第1の制御は、図3の期間T1及び期間T2で示した期間に行われる。期間T1において、ゲート信号103がハイレベルに設定される。これにより期間T1の間、駆動素子23は論理和素子21の出力を第2制御信号42に駆動し、駆動素子24は論理和素子22の出力を第1制御信号41に駆動する。方向制御信号101がローレベルであることから、ハイレベルw1を含む角度制御信号102の状態が駆動素子24により第1制御信号41に伝搬される。また、方向制御信号101がローレベルであることから論理和素子21の出力はローレベルとなり、駆動素子23は第2制御信号42にローレベルを出力する。よって、期間T1の第1制御信号41がハイレベルに出力されている期間において、第1電極11と第2電極12との間に電位差が引き起こされ、アクチュエーター素子10は第2電極12の側に屈曲する。
【0037】
期間T2において、ゲート信号103はローレベルに設定され、駆動素子23及び駆動素子24の出力はハイインピーダンスとなる。これにより、第1制御信号41と第2制御信号42との間にカウンターイオンに移動に伴う電位差が現れる。この電位差が検出回路30に伝達されて検出信号111としてプラスの電圧レベルとして出力される。
【0038】
第2の制御は、図3の期間T3及びT4で示した期間に行われる。期間T3において、ゲート信号103がハイレベルに設定される。これにより期間T3の間、駆動素子23は論理和素子21の出力を第2制御信号42に駆動し、駆動素子24は論理和素子22の出力を第1制御信号41に駆動する。方向制御信号101がハイレベルであることから、ハイレベルw2を含む角度制御信号102の状態が駆動素子23により第2制御信号42に伝搬される。また、方向制御信号101がハイレベルであることから論理和素子22の出力はローレベルとなり、駆動素子24は第1制御信号41にローレベルを出力する。よって、期間T3の第2制御信号42がハイレベルである期間において、第1電極11と第2電極12との間に電位差が引き起こされ、アクチュエーター素子10は第1電極11の側に屈曲する。
【0039】
期間T4において、ゲート信号103はローレベルに設定され、駆動素子23及び駆動素子24の出力はハイインピーダンスとなる。これにより、第1制御信号41と第2制御信号42との間にカウンターイオンに移動に伴う電位差が現れる。この電位差が検出回路30に伝達されて検出信号111としてマイナスの電圧レベルとして出力される。第1の制御で第2電極12側に屈曲したアクチュエーター素子10は、第2の制御により第1電極11側に屈曲する制御がなされ、屈曲していない状態を経由して第1電極11側に屈曲した状態にあることがわかる。
【0040】
第3の制御は、図3の期間T5及びT6で示した期間に行われる。期間T5において、ゲート信号103がハイレベルに設定される。これにより期間T5の間、駆動素子23は論理和素子21の出力を第2制御信号42に駆動し、駆動素子23は論理和素子22の出力を第2制御信号42に駆動する。方向制御信号101がローレベルであることから、ハイレベルw3を含む角度制御信号102の状態が駆動素子24により第1制御信号41に伝搬される。ハイレベルw3の期間の長さは、第2の制御の期間T4の検出信号111のレベルにより、アクチュエーター素子10を屈曲していない状態に戻すのに必要な期間として決定された長さである。また、方向制御信号101がローレベルであることから論理和素子21の出力はローレベルとなり、駆動素子23は第2制御信号42にローレベルを出力する。よって、期間T5の第1制御信号41がハイレベルである期間において、第1電極11と第2電極12との間に電位差が引き起こされ、アクチュエーター素子10は第1電極11の側に屈曲する運動を行う。
【0041】
期間T6において、ゲート信号103はローレベルに設定され、駆動素子23及び駆動素子24の出力はハイインピーダンスとなる。これにより、第1制御信号41と第2制御信号42との間にカウンターイオンに移動に伴う電位差が生じる。この電位差が検出回路30に伝達されて検出信号111としてゼロの電圧レベルとして出力される。第2の制御で第1電極11側に屈曲したアクチュエーター素子10は、第3の制御により第2電極12側の方向に屈曲する制御がなされ、屈曲していない状態に戻されていることがわかる。
【0042】
上述したように、第2の制御の期間T4における検出信号111の値から第3の制御の期間T5におけるハイレベルw3の期間の長さを決定し、アクチュエーター素子10を屈曲していない状態に戻し、屈曲した状態にないことが期間T6における検出信号111で確認することができている。
【0043】
アクチュエーター100を含むシステム1000のブロック図を図4に示す。システム1000は、アクチュエーター100、制御部200を含む。制御部200は、アナログ−デジタル変換回路210と制御情報生成部220を含む。検出信号111はアナログ−デジタル変換回路210によりデジタルデータに変換され、制御情報生成部220に伝達される。制御情報生成部220には、アクチュエーター素子10をどのように変形させるかの情報が予め格納されており、アナログ−デジタル変換回路210から伝達される検査結果に基づいて、方向制御信号101、角度制御信号102及びゲート信号103を所定のレベルに制御することにより、アクチュエーター素子10に対する適切な制御を行うことができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態の説明を行ったが、本発明の適用は上述した内容に限られる訳ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において広く変形並びに適用が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10…アクチュエーター素子、11…第1電極、12…第2電極、13…イオン導電性高分子電解質膜(イオン交換膜)、20…駆動回路、21…論理和素子、22…論理和素子、23…駆動素子、24…駆動素子、25…論理反転素子、30…検出回路、31…増幅素子、32…抵抗素子、33…抵抗素子、34…抵抗素子、35…抵抗素子、41…第1制御信号、42…第2制御信号、100…アクチュエーター、101…方向制御信号、102…角度制御信号、103…ゲート信号、111…検出信号、200…制御部、210…アナログ−デジタル変換回路、220…制御情報生成部、1000…システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極及び第2の電極を有するアクチュエーター素子と、
前記アクチュエーター素子に駆動電圧の供給を行う駆動回路と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差の検出を行う検出回路と、を含み、
前記駆動電圧の供給は、所定の期間における第1の期間内に、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差が生じるように行われ、
前記電位差の検出は、前記所定の期間における前記第1の期間以外の第2の期間内に行われ、
前記所定の期間の長さは、前記第1の期間の長さと前記第2の期間との長さとを加えた長さであることを特徴とするアクチュエーター。
【請求項2】
前記駆動電圧の供給は、前記第2の期間において行われないことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエーター。
【請求項3】
前記検出回路は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差を増幅する機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエーター。
【請求項4】
第1の前記所定の期間である第1所定期間における前記電位差の検出の結果が、前記第1所定期間の後の第2の前記所定の期間である第2所定期間における前記駆動電圧の供給の制御に用いられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアクチュエーター。
【請求項5】
第1の電極及び第2の電極を有するアクチュエーターの制御方法であって、
所定の期間における第1の期間に、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差を生じさせるように駆動電圧の供給を行う第1の工程と、
所定の期間における前記第1の期間以外の第2の期間に、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差の検出を行う第2の工程と、
前記電位差の検出の結果を基にして前記駆動電圧の供給量を決定する第3の工程と、を含み、
前記所定の期間の長さは、前記第1の期間の長さと前記第2の期間との長さとを加えた長さであることを特徴とするアクチュエーターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223002(P2012−223002A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87984(P2011−87984)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】