説明

アクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路および等量分流弁

【課題】等量分流弁の流入側の圧力上昇を抑制して各アクチュエータに等分される作動油の流量減少を防止可能なアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路を提案すること。
【解決手段】第1、第2加振用油圧モータ15、16を同調作動させるための油圧駆動回路1は、作動油を等分して供給するための等量分流弁7を備えている。等量分流弁7は、第3絞り部19を介して、2つの出口ポートA、Bの間を連通している連通路20を備えている。等量分流弁7の出口ポートA、Bから油圧モータ15、16に作動油を供給する第1、第2分岐油圧供給路13、14に内圧差が生じた場合、この内圧差が第3絞り部19を備えた連通路20により解消される。等量分流弁7が作用して流入側の圧力が上昇して油圧供給源2からの作動油の供給量が減少して、油圧モータ15、16へ十分な量の作動油を供給できなくなるという弊害を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダ、油圧ポンプなどの油圧駆動式のアクチュエータを複数台、油圧供給源に対して並列に接続して、これらアクチュエータを同調作動させるアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン、高所作業車等に用いられる多段ブームの油圧駆動回路では、例えば、各段のブームを伸縮させるための複数台の油圧シリンダを同調作動させるために、油圧供給源からの作動油を等量分流弁(フローディバイダ)を介して二等分して各段の油圧シリンダに供給するようにしている。特許文献1には、このような分流弁を備えた油圧シリンダ回路が提案されている。また、自走式の選別ふるい機などにおいても、複数台の加振用オイルモータを同調作動させるために、油圧供給源からの作動油を、等量分流弁を経由させて二等分して、各加振用オイルモータに供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−300280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、等量分流弁は、公知のように、2つの出口ポートA、Bの間に圧力差が生じた場合に、内蔵の流量調整機構によって圧力の高い側の流量を絞ることにより双方の流量を等分状態となるように調整する。このため、流入側である入口ポートPの圧力が上昇し、油圧供給源からの作動油の流入量が減少することがある。流入量が減少すると、それに伴ってアクチュエータの速度が低下してしまう。
【0005】
例えば、容量可変型の斜板式ピストンポンプには、容量を可変で制御できるように、斜板角度を制御するためのレギュレータが備わっており、レギュレータには、ポンプ駆動用のエンジン馬力を超えないように吐出圧に応じて斜板角度を制御して吐出流量を抑制する機能が備わっている。このため、等量分流弁の流入側圧力が上昇すると、流入量が減少してしまい、十分な作動油を各アクチュエータに供給できない場合がある。また、ギアポンプ等の定容量ポンプにおいても、同様に、動力源(電動機、あるいはエンジンを問わない)で回転数が低下する問題がある。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、等量分流弁の流入側の圧力上昇を抑制して各アクチュエータに等分される作動油の流量が減少してしまうことを防止できるようにしたアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路を提案することにある。また、油圧駆動回路の動力源として小型の動力源(電動機、あるいはエンジンを問わない)を選定することを可能にしたアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路を提案することにある。さらに、当該油圧駆動回路に用いるのに適した等量分流弁を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、油圧駆動式の第1、第2アクチュエータを同調作動させるために用いるアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路であって、次の構成を備えたことを特徴としている。なお、括弧付の符号は、本発明の実施の形態における対応する部位を示すものであり、理解を容易にすることを目的として付したものであり、本発明を実施の形態に限定することを意図したものではない。
【0008】
すなわち、本発明のアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路(1)は、油圧ポンプの吐出口に連通している油圧供給路(4)と、前記油圧供給路(4)を介して入口ポート(P)に供給される作動油を二等分して第1出口ポート(A)および第2出口ポート(B)から送り出す等量分流弁(7)と、前記第1出口ポート(A)から送り出される作動油を前記第1アクチュエータ(15)に供給する第1分岐油圧供給路(13)と、前記第2出口ポート(B)から送り出される作動油を前記第2アクチュエータ(16)に供給する第2分岐油圧供給路(14)と、前記等量分流弁(7)における前記第1出口ポート(A)および前記第2出口ポート(B)の間を連通している連通路(20)と、前記連通路(20)に介挿されている絞り部(19)とを有していることを特徴としている。
【0009】
ここで、絞り部付きの連通路を等量分流弁の内部に組み込むことができる。この代わりに、等量分流弁の各出口ポートから各アクチュエータに向けて作動油を供給する各油圧供給路の間を、絞り部付きの連通路で連通しておいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油圧駆動回路において、等量分流弁の2つの出口ポートから各アクチュエータに作動油を供給する第1、第2分岐油圧供給路の内圧差が生じた場合には、等量分流弁による差圧調整動作が開始する前に、絞り部付きの連通路を介して差圧が解消される。よって、等量分流弁の流入側の圧力が上昇して、油圧供給源からの作動油の供給量が減少し、各アクチュエータに十分な量の作動油が供給されないという弊害を防止できる。したがって、油圧供給源として小型の容量可変型のピストンポンプ、定容量型のギアポンプなどの油圧ポンプを用いた場合であって、効率良く各アクチュエータを駆動することができるとともに、動力源(電動機、あるいはエンジンを問わない)を小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用したアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路の主要部分を示す概略回路図である。
【図2】図1の油圧駆動回路の変更例を示す部分回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は本発明を適用した実施の形態に係るアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路の主要部分を示す概略回路図である。油圧駆動回路1は、自走式選別ふるい機などに搭載される複数台の加振用油圧モータを同期させて回転駆動するために用いられる。
【0014】
油圧駆動回路1は、油圧供給源として、ディーゼルエンジンなどによって回転駆動される容量可変型の斜板式ピストンポンプ2を備えている。油圧供給源として定容量油圧ポンプを用いることもできる。油タンク3の作動油は斜板式ピストンポンプ2によって吸い上げられて、その吐出ポートから吐出される。吐出された作動油は、第1油圧供給路4、制御弁5および第2油圧供給路6を順次に経由して、等量分流弁(フローディバイダ)7に供給される。
【0015】
等量分流弁7の入口ポートであるPポートから当該等量分流弁7に流入した作動油は、Pポートに連通している入口側通路8から、第1絞り部(オリフィス)9を備えている第1分流路10および第2絞り部11を備えている第2分流路12に分流比1:1で分流される。第1、第2分流路10、12に流れ込んだ作動油は、それらの出口ポートであるAポートおよびBポートから流出して、それぞれ、第1分岐油圧供給路13および第2分岐油圧供給路14に供給される。
【0016】
第1分岐油圧供給路13に供給された作動油は第1加振用油圧モータ15に供給され、当該モータを駆動する。同様に、第2分岐油圧供給路14に供給された作動油は第2加振用油圧モータ16に供給され、当該モータを駆動する。第1、第2加振用油圧モータ15、16から排出される作動油は還流路17、制御弁5および還流路18を順次に経由して再び油タンク3に戻る。
【0017】
第1、第2加振用油圧モータ15、16の駆動時には、制御弁5は位置5(2)に切り替えられ、停止時は制御弁5は位置5(1)に戻る。また、本例の等量分流弁7には、第3絞り部19を備えた連通路20が備わっている。連通路20は、第1分流路10における第1絞り部9と出口ポートAの間の流路部分と、第2分流路12における第2絞り部11と出口ポートBの間の流路部分との間を連通している。
【0018】
ここで、等量分流弁7としては、図2に示す一般的な構成の分流弁7Aを使用することもできる。この場合には、分流弁7Aの出口ポートA、Bにそれぞれ連通している第1分岐油圧供給路13および第2分岐油圧供給路14の間を、第3絞り部19Aを備えた連通路20Aによって連通した回路構成とすればよい。
【0019】
このように、第1、第2加振用油圧モータ15、16を同調作動させるための油圧駆動回路1は、作動油を等分して供給するための等量分流弁7を備えている。また、等量分流弁7は、第3絞り部19を介して、2つの出口ポートA、Bの間を連通している連通路20を備えている。あるいは、出口ポートA、Bに連通している第1分岐油圧供給路13、第2分岐油圧供給路14の間が、第3絞り部19Aを介して、連通路20Aによって連通している。
【0020】
等量分流弁7(7A)の出口ポートA、Bから油圧モータ15、16に作動油を供給する第1、第2分岐油圧供給路13、14に内圧差が生じた場合、この内圧差が第3絞り部19(19A)を備えた連通路20(20A)により解消される。
【0021】
従来では、差圧を解消するために等量分流弁7(7A)が動作して、その流入側の圧力が上昇し、油圧供給源である斜板式ピストンポンプ2からの作動油の供給量が減少すると、油圧モータ15、16に十分な量の作動油を供給できなくなるという弊害が発生する。本例では、差圧が、第3絞り部19(19A)を備えた連通路20(20A)により解消されるので、このような弊害を解消できる。
【0022】
同様に、従来において、油圧供給源として定容量油圧ポンプ、例えば、ギアポンプを用いている場合に、差圧を解消するために等量分流弁7(7A)が作動して、その流入側の圧力が上昇し、ギアポンプの動力源(電動機あるいはエンジンであるかを問わず)の回転数が減少すると、油圧モータに十分な量の作動油を供給できなくなるという弊害が発生する。かかる弊害も、第3絞り部19(19A)を備えた連通路20(20A)により解消できる。
【0023】
なお、第3絞り部19、19Aの絞り径は、機種の特性に依存する作動油の流れに影響がでない範囲内の小さな径寸法であり、かつ、分流弁のAポートおよびBポートの急激な圧力変化を吸収して、圧力を同調させることができる大きさの径寸法である。
【符号の説明】
【0024】
1 油圧駆動回路
2 斜板式ピストンポンプ
3 油タンク
4 第1油圧供給路
5 制御弁
6 第2油圧供給路
7 等量分流弁
8 入口側通路
9 第1絞り部
10 第1分流路
11 第2絞り部
12 第2分流路
13 第1分岐油圧供給路
14 第2分岐油圧供給路
15 第1加振用油圧モータ
16 第2加振用油圧モータ
17、18 還流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧駆動式の第1、第2アクチュエータを同調作動させるために用いるアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路であって、
油圧ポンプの吐出口に連通している油圧供給路と、
前記油圧供給路を介して入口ポートに供給される作動油を分流比1:1で第1出口ポートおよび第2出口ポートから送り出す等量分流弁と、
前記第1出口ポートから送り出される作動油を前記第1アクチュエータに供給する第1分岐油圧供給路と、
前記第2出口ポートから送り出される作動油を前記第2アクチュエータに供給する第2分岐油圧供給路と、
前記等量分流弁における前記第1出口ポートおよび前記第2出口ポートの間を連通している連通路と、
前記連通路に介挿されている絞り部とを有していることを特徴とするアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記等量分流弁は、
前記入口ポートを、第1絞り部を介して、前記第1出口ポートに連通させている第1分流路と、
前記入口ポートを、第2絞り部を介して、前記第2出口ポートに連通させている第2分流路とを有しており、
前記第1分流路における前記第1絞り部よりも下流側の流路部分と、前記第2分流路における前記第2絞り部よりも下流側の流路部分との間が、前記絞り部を備えた前記連通路を介して連通していることを特徴とするアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路。
【請求項3】
請求項1において、
前記連通路は、前記第1分岐油圧供給路および前記第2分岐油圧供給路の間を、前記絞り部を介して連通していることを特徴とするアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記油圧ポンプは、容量可変型のピストンポンプまたは定容量型のギアポンプであることを特徴とするアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路。
【請求項5】
請求項1に記載のアクチュエータ同調作動用の油圧駆動回路に用いる等量分流弁であって、
前記入口ポートと、
前記第1、第2出口ポートと、
前記入口ポートを、第1絞り部を介して、前記第1出口ポートに連通させている第1分流路と、
前記入口ポートを、第2絞り部を介して、前記第2出口ポートに連通させている第2分流路と、
前記第1分流路における前記第1絞り部よりも下流側の流路部分および前記第2分流路における前記第2絞り部よりも下流側の流路部分の間を、前記絞り部を介して連通している前記連通路とを有していることを特徴とする等量分流弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−96462(P2013−96462A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238123(P2011−238123)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000148380)株式会社前田製作所 (14)
【Fターム(参考)】