説明

アクチュエータ

【課題】特にマスチック吹きつけ器具用のロッドアクチュエータに関する。
【解決手段】本発明によるアクチュエータは、ロッド用チャンネルを形成するストック、ロッドと係合可能なキャッチ部材、キャッチ部材を移動させて一方向においてロッドと係合して前進させるトリガ部材、ロッドと係合可能でありロッドが他方向へ後退することを阻止するための解放部材、およびキャッチ部材をロッドとの係合から付勢するために解放部材に付与された解放力をキャッチ部材に伝達する伝達手段を含み、それによりロッドの他方向への移動を可能にし、解放部材がロッドと係合関係になるために移動するときおよび係合関係から離脱するときに、伝達手段がロッドと共に移動するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロッドを前進させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロッドを前進させるアクチュエータは、例えば、マスチックコーキング(mastic caulking)材等の粘性物質を小出しするための分配器具に使用される。
【0003】
マスチックコーキング材等の粘着材料は、通常、吐出ノズルを有するカートリッジに供給される。カートリッジは、しばしばディスペンシングスガン(dispensing gun)と呼ばれる分配器具に取付けられる。かかるディスペンシングスガンの例は、英国特許GB1555455に記載されている。このガンは、ストック(stock)に摺動自在に取付けたプランジャまたは押し棒を有する。カートリッジはプランジャの前のキープに取付けられ、プランジャは、他端でノズルから材料を付勢するために、カートリッジの一端内側でピストンを前方へ付勢するトリガレバーによりロッドと係合するキャッチプレートにより前進する。トリガおよびキャッチプレートは、ディスペンシングストロークの一端に当接し、かつ分配力は再度付与される。分配中、プランジャは係止プレートによりトリガストローク間カートリッジ内でピストンに対して保持される。
【0004】
トリガ上に一定力を維持かつ再付与することにより、マスチック材の分配速度にわたる高程度の制御付与が可能であることが知見されている。ガンは、多く状況において粘着材料に対する分配器具として全体的に許容可能である。しかし、カートリッジの本体が分配力もしくは分与力下で放射状に拡張することが知見されている。同様に、幾らかのガスポケットがカートリッジ内に捕獲される場合に、ガスポケットは、粘着材料の吐出時に圧縮しかつ一旦分与力が除去されると膨張する。プランジャは分与力がトリガから除去される実質的位置で係止プレートにより維持されるので、収縮中のカートリッジおよび膨張中のガスポケットは、係止プレートを手動で解放してロッドを後退させなければ、必要ないときに材料を連続的に分配する傾向がある。時には、手によりトリガを解放すると直ちに吐出を停止できることが望ましい。
【0005】
それ目的としてヨーロッパ特許出願EP−B−0448375は圧力解放装置を開示する。この装置において、ロッドはマスチックが連続的に分配されるのを防止するために少量ずつトリガストロークの終点で(即ち、トリガから力を解除するとき)自動的に後退する。この機構は、GB1555455のディスペンシングスガンの従来タイプの改良型として首尾よく作動する。
【0006】
ロッドを前進させるアクチュエータの他の開発は、US5370282に知見される。ここでは、キャッチプレートが遭遇する不可欠な磨耗は補償され得る。これは、キャッチプレートが「オン」、即ち、ロッドとの係合関係に付勢され、かつキャッチプレートを解放するために係止プレートに加わる力を伝達する装置の運動により解放され、ロッドがトリガストロークの終点で手動により後退するので、典型的作動と異なるアプローチである。
【0007】
圧力緩和概念および磨耗補償概念のいずれも、例えばマスチックガンに有利であるが、両概念が抵触する方法で実施されるので、両方の利益を一つのアクチュエータで組み合わせることが可能であるかは証明されていない。
【0008】
【特許文献1】GB1555455
【特許文献1】EP−B−0448375
【特許文献1】US5370282
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の圧力緩和概念および磨耗補償概念を一つのアクチュエータで組み合わせることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載されている。幾つかの好適形態はその従属項に記載されている。
【0011】
即ち、上記課題を達成するための本発明によるロッドを前進させるアクチュエータは、ロッド用チャンネルを形成するストック、前記ロッドと係合可能なキャッチ部材、前記キャッチ部材を移動させて一方向において前記ロッドと係合しかつ前記ロッドを前進させるトリガ部材、前記ロッドと係合可能であり前記ロッドが他方向へ後退することを阻止するための解放部材、および前記キャッチ部材を前記ロッドとの係合から付勢するために、前記解放部材に付与された解放力を前記キャッチ部材に伝達する伝達手段を含み、それにより前記ロッドの他方向への移動を可能にし、前記伝達手段が前記ロッドと共に移動するように構成され、そのようにして前記解放部材が前記ロッドと係合関係になるために移動しかつ係合関係から離脱するように移動する。
【0012】
好適形態において、前記解放部材は、前記ロッドが後退するときに前記ロッドと共に移動し前記ロッドに対して係合姿態を形成し、その後に前記ロッドの更なる後退を阻止するように構成されている。
【0013】
他の好適形態において、前記解放部材は、前記ロッドが初期に前進するときに、前記ロッドと共に移動するように構成されている。
【0014】
他の好適形態において、前記解放部材は前記ロッドに対して解放姿態と係合姿態間を移動する、もしくは解放関係と係合関係間で枢軸回転可能に構成されている。
【0015】
他の好適形態において、前記伝達手段は、前記解放部材と前記キャッチ部材間に延在する前記ロッド上のスリーブである。他の好適形態において、前記伝達手段は前記解放部材に取付けられていてよい。
【0016】
他の好適形態において、前記伝達手段は、前記解放部材と共に移動するように構成されていてよい。
【0017】
他の好適形態において、前記キャッチ部材は、前記ロッドに対して係合姿態に付勢されたキャッチプレートであり、前記トリガ部材の作動が前記キャッチ部材および前記ロッドの即時運動の起因となる。
【0018】
他の好適形態において、前記解放部材は、前記ロッドを解放しかつその運動を前記伝達手段へ伝達し前記キャッチプレートを移動させて前記ロッドを解放するために操作可能である。
【0019】
他の好適形態において、前記解放部材は前記ロッドに対する係合姿態と解放姿態間で移動可能な解放プレートである。
【0020】
本発明は、更に、上述のいずれか1の構成のアクチュエータを含むマスチックアプリケータを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、マスチック、例えばコーキングまたはシーリング材料等の粘性物質を分配する(dispensing)ためのマスチックガンを示す。マスチックガンは、駆動ロッド16を担持する一対の整列孔12/14を形成するストック(stock)10を含む。ロッド16はプランジャ18内において前端で終端する。ストック10は、ロッドが前進するときにプランジャに力を付与することによりノズルから分配する物質のカートリッジを保持するために前に取付けられたキープ(keep)もしくはヨーク(yoke)19(後アームのみが示されている)を有する。
【0022】
ストック10は、下方に延びた固定ハンドルもしくはバット(butt)20を有する形態であり、ハンドルもしくはバット20は、駆動ロッド16の軸を横切る軸を中心にストック10上に枢軸回転可能に取付けられたトリガレバー22により補完されている。
【0023】
キャッチプレート24は貫通孔26を有し、かつ貫通孔26によりロッド16上に乗っている。キャッチプレート24の下部は、ピボット点上方でトリガレバー22上に取付けられた横切る方向の横部材28と係合する。バネ30が、キャッチプレート24の前でロッド16上に取付けられている。バネは、ストック10の前壁に対して支持され、かつキャッチプレート24上に力を付与し付勢してロッドと係合もしくはロッドに対して噛み付く姿態を採る。ロッドと係合する姿態において、キャッチプレート24は、ロッド上に係止する、孔26を形成するキャッチプレート24部分の上後縁および下前縁を有し、そのようにしてトリガレバー22に加わる力をキャッチプレート24を介して伝達しかつ前方線運動に転換してストック10に形成された孔12/14からロッドへ伝達し、それによりヨーク内に保持されたカートリッジ内のピストンの背後へプランジャを押すことにより分配運動を実行する(図示されていない)。
【0024】
スリーブ40がロッド16上に取付けられかつ孔14へ自由に摺動する。スリーブ40はロッド用の孔14を通過し、かつストック10の後端でロッドのための可動ブッシュとして作用する。スリーブ40は、貫通孔(図示せず)によりロッド上に同様に取付けられた解放プレート42と共に移動するように保持される。スリーブ40および解放プレート42は、スリーブ40の一端上の円形フランジ(図示せず)と係合しかつ本体内に解放プレート42を受けるプラスチック顎部46によって共に保持される。スリーブ40は顎部により解放プレート42の運動に伴って運ばれる。
【0025】
アクチュエータの後方は図3に示され、図3は完全なアプリケータ、即ち分配器具を示す。解放プレートの上端48は前後鼻部50/52間で作動する。
【0026】
解放プレートの解放姿態もしくは起立姿態は前鼻部50と、ロッド下でストック10の背後から後方へ延在する下突起54との間に形成される。解放プレートのブレーキもしくは傾斜姿態は後鼻部52と、ロッド用の貫通孔56を形成する解放プレートの部分の噛み付き係合部との間に形成される。
【0027】
図1はトリガレバー22のストロークの開始時のアクチュエータを示す。トリガレバー22は前方へ伸長している。キャッチプレート24はロッド16と係合している。なぜならばキャッチプレート24はバネ30によりそのような姿態に付勢されるからである。解放プレート42は、スリーブ40と共にロッド16上に乗っている。
【0028】
トリガレバー22は、後方へ付勢されたキャッチプレート24上に圧搾されるときに、キャッチプレート24の下部上に力を加える。キャッチプレート24がバネ30の力によりロッドと係合するように付勢されるときに、トリガレバー22に加わる力は直ちにロッドの前方運動へ変換される。
【0029】
ロッドは図2に示された位置へ解放プレート42を運びかつ続いて解放プレートを通過できるようにされる。ただし、解放プレートは図2に示されたロッドに対して起立もしくは解放姿態に運ばれ、ストック10上で前鼻部50および突起54と係合する。終局的には、トリガレバー22は全ストローク(もしくはストロークの一部)を移動し、そして図2に示された位置に達する。この場合、バネ30は前進したキャッチプレート24の前に圧縮される。
【0030】
トリガレバー22の解放後に、アクチュエータは図1の配置に再度戻る。キャッチプレート24の下部は、バネの力によって横部材28に対して支持され、それによりロッドと係合関係になる。図1の位置からこの位置に達するために、キャッチプレート24は、バネ面により形成される起立姿態に抑制されたロッド上方を後方へ摺動する。解放プレートは、ロッドと共に後方へ運ばれロッドと係合関係になり、それにより後鼻部52と係合しかつ突起54から離れる。事実上は、解放プレートの姿態は変化していて、解放プレートの孔を形成する部分の前上縁および後下縁がロッド上に噛み付くことによりロッドと係合し、それにより更に後方へ移動しない。トリガレバー22上の力の解放から、ロッドは、カートリッジ内の膨張ガスによりまたはカートリッジそれ自体の放射状収縮により加わる力により、解放プレートの二つの姿態(解放および係合)間で形成される小距離を、後退可能である。
【0031】
トリガレバー22の圧搾の反復は、第二ストロークに対してロッドを前進させる。トリガレバー22に力を加えることによりロッドは、キャッチプレート24の係合縁上の磨耗と関係なく、直ちに運動のために係合する。
【0032】
図4は、アクチュエータがロッドを後退させる、例えば、空のカートリッジを除去し、かつ/またはカートリッジをヨークへ挿入するために、ロッドを手動でできる限り後方へ引っ張る、態勢にある状態を示す。これを実行するために、前方圧力が解放プレート42の下へ加えられ、それにより解放プレートはロッドに対して解放姿態もしくは起立姿態になり、かつ孔を形成する解放プレートの縁がロッド上に噛み付かないようにする。ロッドの自由な摺動を可能にする解放プレートのこの運動は、スリーブ40によりキャッチプレート24へ伝達され、それによりキャッチプレート24が、係合関係の僅かに前方の起立係合離脱、即ち分離関係へ付勢される。スリーブへ加わる力はキャッチプレート24を起立もしくは直立移動させかつバネの力に対して横部材28から離す。
【0033】
開示されたアクチュエータは、単一バネを必要とするのみであり、即ち、キャッチプレート24を付勢するために、そして解放プレートに加わる解放力を伝達しかつ摩擦係合を可能にするために解放プレートとの有利結合を使用し、それにより解放プレートが二つの位置、ロッドとの係合位置とロッドからの解放位置に付く。
【0034】
アクチュエータの部品は、金属またはプラスチックで形成できる。プレートはスチールであり、ストック10およびトリガレバー22はアルミニウム/亜鉛成型、またはポリプロピレン、ガラス充填ナイロンまたはABS等の適宜硬質プラスチックである。ロッドはスチール製である。ロッドは円形、六角形、または任意の他の断面形状であってよい。ロッド上へのプレートによる係合は、プレート内の貫通孔の使用を含み、ロッドを前方へ駆動する、もくしはロッドの後退を阻止する、いずれかのために係合する時に、プレートがロッド上に噛み付く係合部を形成する限り、開放スロットにより同様に首尾よく実施できる。同様に、解放プレートに加わる力をキャッチプレート24へ伝達するスリーブは、その二つのプレート間に延在する他の部材であってよい。
【0035】
ロッド16に並設される部材は、解放プレートおよびキャッチプレートの二つのプレート間に力を伝達するものであってよい。カラーおよびスリーブ(もしくは他の装置)は分離片もしくは単一プラスチック成型品であってよい。解放プレートは、二姿態間を移動するためにカラー内で十分に自由でなければならない。
【0036】
他の実施形態において、解放プレートはバネにより係合位置へ付勢され得る。この形態において、ロッドの前進に起因して、解放プレートは係合位置から非常に僅かに前方へ移動するが、事実上は同一である。係合を手動で解放するために、解放プレートは突起54に対して、従前通り、押し下げられる。この形態において、ロッドに対する解放プレートの姿態に認識可能な変化はないが、解放プレートはロッドの前進および移動を可能にしかつロッドの後退に対して圧力緩和を実現する遊びを創出するものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】駆動ロッドを移動するためのトリガアクチュエータを有するディスペンシングスガンの側面図である。
【図2】図1のディスペンシングスガンの第二配置を示し、(A)はトリガレバーが引かれて解放スリーブがロッドとの摩擦係合下で前進する状態を示し、(B)はトリガレバーがスリーブを解放するときに、ロッドとキャッチプレートは、解放プレートがロッドを捕獲するまで、後退する状態を示す。
【図3】図1のディスペンシングスガンの後方斜視図である。
【図4】図1のディスペンシングスガンの第四配置を示す。
【符号の説明】
【0038】
10 ストック
12,14 孔
16 ロッド
18 プランジャ
22 トリガレバー
24 キャッチプレート
26 貫通孔
30 バネ
40 スリーブ
42 解放プレート
50 前鼻部
52 後鼻部
54 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド用チャンネルを形成するストック、前記ロッドと係合可能なキャッチ部材、前記キャッチ部材を移動させて一方向において前記ロッドと係合しかつ前記ロッドを前進させるトリガ部材、前記ロッドと係合可能であり前記ロッドが他方向へ後退することを阻止するための解放部材、および前記キャッチ部材を前記ロッドとの係合から付勢するために、前記解放部材に付与された解放力を前記キャッチ部材に伝達する伝達手段を含み、それにより前記ロッドの他方向への移動を可能にし、前記解放部材が前記ロッドと係合関係になるために移動するときおよび係合関係から離脱するときに、前記伝達手段が前記ロッドと共に移動するように構成されている、ロッドを前進させるアクチュエータ。
【請求項2】
前記解放部材は、前記ロッドが後退するときに前記ロッドと共に移動し前記ロッドに対して係合姿態を形成し、その後に前記ロッドの更なる後退を阻止するように構成されている、請求項1のアクチュエータ。
【請求項3】
前記解放部材は、前記ロッドが初期に前進するときに、前記ロッドと共に移動するように構成されている、請求項1または2のアクチュエータ。
【請求項4】
前記解放部材は前記ロッドに対して解放姿態と係合姿態間を移動するように構成されている、請求項1から3のいずれか1のアクチュエータ。
【請求項5】
前記伝達手段は、前記解放部材と前記キャッチ部材間に延在する前記ロッド上のスリーブである、請求項1から4のいずれか1のアクチュエータ。
【請求項6】
前記伝達手段は、前記解放部材と共に移動するように構成されている、請求項1から5のいずれか1のアクチュエータ。
【請求項7】
前記キャッチ部材は、前記ロッドに対して係合姿態に付勢されたキャッチプレートであり、前記トリガ部材の作動が前記キャッチ部材および前記ロッドの即時運動の起因となる、請求項1から6のいずれか1のアクチュエータ。
【請求項8】
前記解放部材は、前記ロッドを解放しかつその運動を前記伝達手段へ伝達し前記キャッチプレートを移動させて前記ロッドを解放するために操作可能である、請求項7のアクチュエータ。
【請求項9】
前記解放部材は前記ロッドに対する係合姿態と解放姿態間で移動可能な解放プレートである、請求項8のアクチュエータ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1のアクチュエータを含むマスチックアプリケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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