説明

アクチュエータ

【課題】アクチュエータ本体から被駆動体までの距離が異なる全ての車種に簡単かつ安価に対応できるアクチュエータを提供する。
【解決手段】モータ軸3aの回転でアクチュエータ本体2内を往復動するスライダ7と、ケーブル取付部2aに取り付けられ、スライダ7に一端部12aが連結されるインナケーブル12を移動自在に挿入したアウタケーシング15を有したケーブル10とを備え、インナケーブル22の他端部22bが燃料カット弁40に連結されて、スライダ7の往復動でインナケーブル22を介して燃料カット弁を開閉させるエンジンストップアクチュエータ1において、ケーブル10を、ケーブル取付部に取り付けられる所定長の標準ケーブル11と、燃料カット弁40に連結される可変長の調整ケーブル21とで分割構成し、標準ケーブル11と調整ケーブル21の相対向する各端部12b,22a同士を中間ジョイント30にて結合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ本体のケーブル取付部に、インナケーブル及びインナケーブルを移動自在に挿入したアウタケーシングを有したケーブルを備えたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、この種のアクチュエータとして、モータの通電により、ディーゼルエンジンの噴射ポンプに内蔵された燃料カット弁を閉じてディーゼルエンジンの作動をストップさせたり、また、燃料カット弁を開けてディーゼルエンジンをスタートさせるエンジンストップアクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このエンジンストップアクチュエータは、そのアクチュエータ本体に収容されたモータに通電がされると、モータのモータ軸が回転し、このモータ軸の回転によってアクチュエータ本体内をスライダが往復動し、このスライダの往復動により、アクチュエータ本体のケーブル取付部に取り付けられると共にスライダに一端部が連結されたケーブルのインナケーブルが移動して、該インナケーブルの他端部に連結された被駆動体である燃料カット弁が開閉されるものである。
【0004】
【特許文献1】特開平10−54260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のエンジンストップアクチュエータでは、アクチュエータ本体から燃料カット弁までの距離が車両の車種毎に異なるため、その距離に応じて、長さの異なるケーブルのインナケーブルをスライダに連結しなければならず、その仕様毎に長さの異なるケーブルを取り付けたエンジンストップアクチュエータを用意しなければならなかった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、仕様毎に長さの異なる調整ケーブルを複数用意することで、簡単かつ安価に対応させることができるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ケーブル取付部を有したアクチュエータ本体と、このアクチュエータ本体内に収容され、通電により回転するモータ軸を有したモータと、このモータのモータ軸の回転により前記アクチュエータ本体内を往復動するスライダと、前記ケーブル取付部に取り付けられると共に、前記スライダに一端部が連結されるインナケーブル及び該インナケーブルを移動自在に挿入したアウタケーシングを有したケーブルとを備えたアクチュエータにおいて、前記ケーブルを、前記ケーブル取付部に取り付けられる所定長の標準ケーブルと、被駆動体に連結される可変長の調整ケーブルとで分割構成し、これら標準ケーブルと調整ケーブルの相対向する各端部同士を中間ジョイントにて結合自在にしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載のアクチュエータであって、前記中間ジョイントを、前記標準ケーブルのインナケーブルの他端部に固定されたニップルと前記調整ケーブルのインナケーブルの一端部に固定されたニップルとを結合するジョイントピースと、前記標準ケーブルのアウタケーシングの他端部に嵌合されると共に、前記ジョイントピースを収容する合成樹脂製で円筒状のケースと、前記調整ケーブルのアウタケーシングの一端部に嵌合されると共に、前記円筒状のケースの他端部に嵌合される合成樹脂製で円筒状のキャップとで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、ケーブルを、ケーブル取付部に取り付けられる所定長の標準ケーブルと、被駆動体に連結される可変長の調整ケーブルとで分割構成し、これら標準ケーブルとと調整ケーブルの相対向する各端部同士を中間ジョイントにて結合自在にしたことにより、仕様毎に長さの異なる調整ケーブルを複数用意することで、アクチュエータ本体から被駆動体、例えば燃料カット弁までの距離が異なる全ての車種に簡単かつ安価に対応させることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、中間ジョイントを、標準ケーブルのインナケーブルの他端部に固定されたニップルと調整ケーブルのインナケーブルの一端部に固定されたニップルとを結合するジョイントピースと、標準ケーブルのアウタケーシングの他端部に嵌合されると共に、ジョイントピースを収容する合成樹脂製で円筒状のケースと、調整ケーブルのアウタケーシングの一端部に嵌合されると共に、円筒状のケースの他端部に嵌合される合成樹脂製で円筒状のキャップとで構成したことにより、アクチュエータ本体側の標準ケーブルと被駆動体、例えば燃料カット弁側の調整ケーブルとを安価なジョイント構造にて簡単かつ確実に結合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態のエンジンストップアクチュエータの内部を示す平面図、図2は同エンジンストップアクチュエータに取り付けられるケーブルの平面図、図3は同ケーブルを中間ジョイントで結合した状態の要部を示す拡大断面図である。
【0013】
図1に示すように、エンジンストップアクチュエータ(アクチュエータ)1は、ケーブル取付部2aを有した箱形のアクチュエータ本体2と、このアクチュエータ本体2内に収容され、通電により回転するモータ軸3aを有したモータ3と、このモータ軸3aのウォーム3bに噛合されて回転するホイールギヤ4と、このホイールギヤ4にピン5aを介して枢支されたリンクアーム6と、このリンクアーム6にピン5bを介して枢支されて、モータ軸3aの回転によりアクチュエータ本体2内を往復動するスライダ7と、ケーブル取付部2aに取り付けられると共に、スライダ7の係止凹部7aにC字状の係止片8を介して一端部12aの係止部13が連結されるインナケーブル12及び該インナケーブル12を移動自在に挿入したアウタケーシング15を有したケーブル10とを備えている。
【0014】
リンクアーム6は一方のピン5aがホイールギヤ4と共に回転することによって、該ホイールギヤ4の回転を他方のピン5bを介してスライダ7の直線運動に変換させるものである。また、スライダ7は両方のピン5a,5bに係止された戻しばね9によりホイールギヤ4側に付勢されている。尚、アクチュエータ本体2の開口部2bは図示しないカバーにより覆われるようになっている。
【0015】
図1〜図3に示すように、ケーブル10は、アクチュエータ本体2のケーブル取付部2aに取り付けられる所定長の標準ケーブル11と、図示しないディーゼルエンジンの噴射ポンプに内蔵された燃料カット弁(被駆動体)40に連結される可変長の調整ケーブル21とで分割構成されており、これら標準ケーブル11と調整ケーブル21の相対向する各端部同士は中間ジョイント30にて結合されるようになっている。
【0016】
標準ケーブル11は、インナケーブル12と、インナケーブル12を移動自在に挿入したアウタケーシング15とから構成されている。このインナケーブル12の一端部12aの一端にはスライダ7の係止凹部7aに係止される鉤状の係止部13を固定してあると共に、他端部12bの他端にはニップル14を固定してある。また、アウタケーシング15の一端部15aにはゴム製の取付嵌入部16を嵌合してあると共に、該一端部15aの一端にはインナケーブル12の係止部13が当たるストッパ17を取り付けてある。
【0017】
調整ケーブル21は、インナケーブル22を移動自在に挿入したアウタケーシング25とから構成されている。このインナケーブル22の一端部22aの一端にはニップル23を固定してあると共に、他端部22bの他端にはニップル24を固定してある。このインナケーブル22の他端部22bのニップル24は燃料カット弁40に連結されていて、スライダ7の往復動により燃料カット弁40が開閉されるようになっている。アウタケーシング25の他端部25bの他端にはインナケーブル22の他端部22bのニップル24がが当たるストッパ27を取り付けてある。この調整ケーブル21は長さの異なるもの(可変長のもの)が複数用意されるようになっている。
【0018】
図3に示すように、中間ジョイント30は、標準ケーブル11のインナケーブル12の他端部12bに固定されたニップル14と調整ケーブル21のインナケーブル22の一端部22aに固定されたニップル23とを結合するジョイントピース31と、標準ケーブル11のアウタケーシング15の他端部15bに嵌合されると共に、ジョイントピース31を収容する合成樹脂製で円筒状のケース32と、調整ケーブル21のアウタケーシング25の一端部25aに嵌合されると共に、円筒状のケース32の他端部32bに嵌合される合成樹脂製で段差円筒状のキャップ33とで構成されている。
【0019】
図3に示すように、円筒状のケース32の一端部32a内には円環状の仕切壁32cを一体突出形成してある。この円筒状のケース32の一端部32a側の仕切壁32cに標準ケーブル11のアウタケーシング15の他端部15bが当接している共に、該円筒状のケース32の一端部32aから他端部32b内の仕切壁32cにかけてジョイントピース31が摺動するようになっている。また、円筒状のキャップ33の一端部33aと他端部33bとの境には円環状の仕切壁33cを一体突出形成してある。この円筒状のキャップ33の一端部33a側の仕切壁33cに円筒状のケース32の他端部32bが当接している共に、該円筒状のキャップ33の他端部33b側の仕切壁33cにアウタケーシング25の一端部25aが当接している。
【0020】
以上実施形態のエンジンストップアクチュエータ1によれば、図示しないイグニッションスイッチがオンされてモータ軸3aのウォーム3bを介してホイールギヤ4が図1に示す位置まで回転すると、スライダ7の往動を介してケーブル10の標準ケーブル11のインナケーブル12の他端部12bと調整ケーブル21のインナケーブル22の一端部22aを結合したジョイントピース31が図3にて実線で示す位置まで移動して、ディーゼルエンジンの噴射ポンプに内蔵された燃料カット弁40が開き、ディーゼルエンジンに燃料が供給されてディーゼルエンジンが始動する。
【0021】
また、イグニッションスイッチがオフされると、モータ軸3aのウォーム3bを介してホイールギヤ4が図1に示す位置から半回転する。これにより、スライダ7が復動してケーブル10の標準ケーブル11のインナケーブル12がアクチュエータ本体2側へ引っ張られ、該インナケーブル12の他端部12bと調整ケーブル21のインナケーブル22の一端部22aを結合したジョイントピース31が図3にて点線で示す位置まで移動し、燃料カット弁40が閉じ、ディーゼルエンジンへの燃料の供給が停止されてディーゼルエンジンの作動が停止する。
【0022】
このように、ケーブル10を、アクチュエータ本体2のケーブル取付部2aに取り付けられた標準ケーブル11と、燃料カット弁40に連結された調整ケーブル21とで分割構成し、これら標準ケーブル11のインナケーブル12と調整ケーブル21のインナケーブル22の相対向する各端部12b,22a同士を中間ジョイント30のジョイントピース31にて結合したことにより、仕様毎に長さの異なる調整ケーブル21を複数用意することで、アクチュエータ本体2から燃料カット弁40までの距離が異なる全ての車種に簡単かつ安価に対応させることができる。これにより、従来のように、仕様毎にアクチュエータ本体2内を往復動するスライダ7の係止凹部7aに標準ケーブル11のインナケーブル12の一端部12aの鉤状の係止部13を係止片8を介して取り付けたり、取り外す煩雑な組付作業が不要となり、その分、低コスト化を図ることができる。
【0023】
また、中間ジョイント30を、標準ケーブル11のインナケーブル12の他端部12bに固定されたニップル14と調整ケーブル21のインナケーブル22の一端部22aに固定されたニップル23とを結合するジョイントピース31と、標準ケーブル11のアウタケーシング15の他端部15bに嵌合されると共に、ジョイントピース31を収容する合成樹脂製で円筒状のケース32と、調整ケーブル21のアウタケーシング25の一端部25aに嵌合されると共に、円筒状のケース32の他端部32bに嵌合される合成樹脂製で円筒状のキャップ33とで構成したことにより、アクチュエータ本体2側の標準ケーブル11と燃料カット弁40側の調整ケーブル21とを安価なジョイント構造にて簡単かつ確実に結合することができる。
【0024】
尚、前記実施形態によれば、ディーゼルエンジンの噴射ポンプに内蔵された燃料カット弁を開閉するアクチュエータについて説明したが、ディーゼルエンジン以外のエンジンに内蔵された燃料カット弁を開閉するものに前記実施形態を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態のエンジンストップアクチュエータの内部を示す平面図である。
【図2】上記エンジンストップアクチュエータに取り付けられるケーブルの平面図である。
【図3】上記ケーブルを中間ジョイントで結合した状態の要部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 エンジンストップアクチュエータ(アクチュエータ)
2 アクチュエータ本体
2a ケーブル取付部
3 モータ
3a モータ軸
7 スライダ
10 ケーブル
11 標準ケーブル
12 インナケーブル
12a 一端部
12b 他端部
14 ニップル
15 アウタケーシング
15b 他端部
21 調整ケーブル
22 インナケーブル
22a 一端部
23 ニップル
25 アウタケーシング
25a 一端部
30 中間ジョイント
31 ジョイントピース
32 円筒状のケース
32b 他端部
33 円筒状のキャップ
40 燃料カット弁(被駆動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル取付部を有したアクチュエータ本体と、このアクチュエータ本体内に収容され、通電により回転するモータ軸を有したモータと、このモータのモータ軸の回転により前記アクチュエータ本体内を往復動するスライダと、前記ケーブル取付部に取り付けられると共に、前記スライダに一端部が連結されるインナケーブル及び該インナケーブルを移動自在に挿入したアウタケーシングを有したケーブルとを備えたアクチュエータにおいて、
前記ケーブルを、前記ケーブル取付部に取り付けられる所定長の標準ケーブルと、被駆動体に連結される可変長の調整ケーブルとで分割構成し、これら標準ケーブルと調整ケーブルの相対向する各端部同士を中間ジョイントにて結合自在にしたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のアクチュエータであって、
前記中間ジョイントを、前記標準ケーブルのインナケーブルの他端部に固定されたニップルと前記調整ケーブルのインナケーブルの一端部に固定されたニップルとを結合するジョイントピースと、前記標準ケーブルのアウタケーシングの他端部に嵌合されると共に、前記ジョイントピースを収容する合成樹脂製で円筒状のケースと、前記調整ケーブルのアウタケーシングの一端部に嵌合されると共に、前記円筒状のケースの他端部に嵌合される合成樹脂製で円筒状のキャップとで構成したことを特徴とするアクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate