アクチュエータ
【課題】 高出力・高信頼性のアクチュエータを提供する。
【解決手段】 本発明のアクチュエータは、一端部が固定端とされ、他端部が自由端とされた片持ち梁状であって、他端部側に摩擦駆動部4が設けられた振動体6と、振動体6の摩擦駆動部4が内面に対して遊びを設けた状態で挿入される孔部3aを有し、振動体6の周囲に回転可能に保持された可動部材3とを具備する。そして、振動体6を振動させたときに、摩擦駆動部4が、可動部材3の孔部3aの内面に当接するとともに、他端部側から平面透視したときに当接した箇所が一端部を中心とする円周と重なる軌跡を描くように駆動されて、可動部材3を振動体6の周囲で回転させる。
【解決手段】 本発明のアクチュエータは、一端部が固定端とされ、他端部が自由端とされた片持ち梁状であって、他端部側に摩擦駆動部4が設けられた振動体6と、振動体6の摩擦駆動部4が内面に対して遊びを設けた状態で挿入される孔部3aを有し、振動体6の周囲に回転可能に保持された可動部材3とを具備する。そして、振動体6を振動させたときに、摩擦駆動部4が、可動部材3の孔部3aの内面に当接するとともに、他端部側から平面透視したときに当接した箇所が一端部を中心とする円周と重なる軌跡を描くように駆動されて、可動部材3を振動体6の周囲で回転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子などを用いて発生する振動を直進運動や回転運動に変換して駆動するアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の高性能化、小型・軽量化が進むにつれて、小型で高い出力を有するアクチュエータへの要望が高まっている。これに対して、圧電素子などの微小な変位を繰り返し利用することで大きな変位または高トルクを得る圧電アクチュエータや超音波モータが考案されている。例えば特許文献1には、円形状の振動体の周方向に進行性振動波を発生させ、この振動体と接触する接触体を設け、振動体と接触体とを雄ねじと雌ねじの関係とすることで直進運動するアクチュエータが提案されている。このようなアクチュエータは、カメラのオートフォーカス機構でレンズを駆動させるアクチュエータなどに利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−225182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電アクチュエータや超音波モータは、電磁モータと比較して体積当たりあるいは重量当たりに発生するエネルギーが大きいとされる。さらに、高速応答性や位置保持性に優れ、磁気の影響を受けないといった利点もある。しかしながら、特許文献1に示されている圧電セラミックスを振動リングに接着する構造では、圧電セラミックスの応力限界が低いため、大きな振動・振幅の発生が困難であり、大出力を得ることが難しかった。したがって、このような圧電アクチュエータの応用用途としては、時計、カメラ、プリンタなどの小型機器への適用に留まっている。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、高トルクの出力が可能なアクチュエータを得ることを目的とする。また、高信頼性のアクチュエータを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータは、一端部が固定端とされ、他端部が自由端とされた片持ち梁状であって、前記他端部側に摩擦駆動部が設けられた振動体と、該振動体の前記摩擦駆動部が内面に対して遊びを設けた状態で挿入される孔部を有し、前記振動体の周囲に回転可能に保持された可動部材とを具備する。そして、前記振動体を振動させたときに、前記摩擦駆動部が前記可動部材の前記孔部の内面に当接するとともに、前記他端部側から平面透視したときに当接した箇所が前記一端部を中心とする円周と重なる軌跡を描くように駆動されて、前記可動部材を前記振動体の周囲で回転させる。
【0007】
上記の構造によれば、振動体の摩擦駆動部が可動部材の孔部の内面に対して、連続的に位置を変えながら当接を繰り返しつつ、首振り運動することとなる。その結果、可動部材は、振動体の摩擦駆動部によって駆動力が与えられて、振動体の周囲を回転する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータによれば、振動体から可動部材への駆動
力の伝達ロスが少なく、大きなトルクの駆動力を与えるアクチュエータとすることができる。また、高信頼性を有するので、長寿命のアクチュエータとすることができる。これにより、例えば、ロボットの腰部や関節のように、高い駆動力および高い信頼性を必要とする用途へ適用可能なアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータを示す図であり、(a)は側面図、(b)は断面図である。
【図2】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの振動子の構造を示す図であり、(a)は振動子を中心軸方向から見たときの電極領域を示す図であり、(b)は(a)の電極部分を模式的に示したA−A’線の矢視断面図である。
【図3】図2に示す振動子に印加する電圧の波形(電圧−時間特性)を示す図である。
【図4】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータにおいて、図3のT2の時点における振動体の状態を示す図である。
【図5】図4に示すアクチュエータのB−B’線の矢視断面図を用いて摩擦駆動部の動きを説明する模式図であり、(a)は振動していないとき、(b)は(1)〜(6)の順に振動しているときの状態を示す。
【図6a】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの固有振動周波数を求めたシミュレーション結果であり、第一次モードの固有振動を示す。
【図6b】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの固有振動周波数を求めたシミュレーション結果であり、高次モードの固有振動を示す。
【図7】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの組み立て方法を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの組み立て方法を示す模式図であり、キャップの組付け方法を示す。
【図9】本発明の実施形態の別の例に係るアクチュエータを示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態のさらに別の例に係るアクチュエータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の例について図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
ただし、以下で参照する各図では、説明の便宜上、本発明の一実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示すことがある。したがって、本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータは、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備えていてもよい。また、各図中の部材の寸法は、模式的なものであり、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータを示す図であり、(a)は側面図、(b)はその断面図である。
【0013】
本実施形態に係るアクチュエータ10は、振動体6と、その周囲に回転可能に保持された可動部材3とを有している。
【0014】
本実施形態において、振動体6は、弾性体1a、振動子2、弾性体1bおよび摩擦駆動部4がこの順に積み重ねられたものとなっている。あるいは振動子2、弾性体1bおよび摩擦駆動部4がこの順に積み重ねられたものとなっている。各部材の中央には、締結部材であるボルト5を通すための貫通穴が設けられており、このボルト5で基台(不図示)に
締め付けられて一体とされている。具体的には、ボルト締めランジュバン型振動子の形態をなしている。したがって、振動体は、ボルト5で締め付けられた一端部側が固定端となり、摩擦駆動部4が設けられた他端部側が自由端となった片持ち梁状となっている。
【0015】
可動部材3は円筒形状を有し、この円筒の内壁が孔部3aの内面を構成して、振動体6を収容しうる大きさとなっている。詳細は後述するが、振動体6の摩擦駆動部4と孔部3aの内面とは一定の遊び(クリアランス)を設けた状態とされ、振動体6を振動させたときに、摩擦駆動部4の側部が可動部材3の孔部3aの内面に当接して、振動体6の周囲を回転するための駆動力を付与するような構成となっている。
【0016】
可動部材3は、振動体6の周囲に回転可能に保持されている。本実施形態では、振動体6の外側面および可動部材3の孔部3aの内面の表面に、互いに嵌合し得るように螺旋形状を成す凸部と凹部が形成されている。具体的には、振動体6側の螺旋形状(第1の螺旋形状)として、弾性体1aの側面にネジ溝14、弾性体1bの側面にネジ溝16が形成されている。また、可動部材3側の螺旋形状(第2の螺旋形状)として、孔部3aの内側面にネジ溝15,17が形成されている。そして、これら第1および第2の螺旋形状同士が互いに嵌め合わされた形態となっている。この構成によれば、可動部材3を振動体6の周囲に回転させる運動が振動体6の軸方向の直線運動に変換される。この可動部材3の動きを被駆動体(不図示)に伝達することにより、この被駆動体を駆動することができる。さらに、振動体6の振動を止めて可動部材3の回転を止めた状態としたときに、例えば、被駆動体の自重などによって、軸方向に力がかかったとしても、螺旋形状同士が係止し合って回転が阻害されるので、アクチュエータ10が軸方向に対して静止し、位置が保持される。
【0017】
なお、上述の機構により、可動部材3を振動体6の軸方向に駆動させる場合、図1に示すように、可動部材3の先端に、先端方向に向かって突出するキャップ7を設けることができる。このキャップ7の突出する先端部が凸面または半球面からなるようにしておくことにより、可動部材3が振動体6の軸周りに回転しながら軸方向に移動して被駆動体に当接したときに、被駆動体との接触面積が小さくなり摩擦を低減させる効果がある。キャップ7は可動部材3に対して、回転自在に保持することもできる。この場合、可動部材3に対してキャップ7が空転し、被駆動体との相対的な回転が抑えられるので、最も応力の集中するキャップ7の先端部の摩耗を抑えることができる。
【0018】
弾性体1a,1bおよび締結部材(ボルト)5としては、公知の弾性体を用いることができるが、一般的には金属が用いられる。また、振動子2は、電気−機械エネルギー変換素子であり、例えば、積層型圧電素子を用いて構成される。振動子2の構成の詳細は後述する。
【0019】
可動部材3は加工が容易なことから、金属が用いられる。ここで可動部材3の孔部3aの内面に対しては、駆動力を付与するために摩擦駆動部4が当接するため、摩擦駆動部4と当接する部分を、セラミックスなどの耐摩耗性が優れた材料によって形成してもよい。あるいは耐摩耗性に優れたコーティングを行なってもよい。また、摩擦駆動部4も側部が、可動部材3と当接して駆動力を付与するので、この部分の材質としては、セラミックスなどの耐摩耗性に優れた材料とすることが望ましい。また、摩擦駆動部4と可動部材3とが当接する部分の相互の摩擦係数が大きい材料を選択することにより、動力伝達時のエネルギーロスが少なくなるので好ましい。
【0020】
次に、本実施形態に係る振動子の構造について説明する。図2において、(a)は振動子を中心軸方向から見たときの電極領域を示す図であり、(b)は(a)の電極部分を模式的に示したA−A’線の矢視断面図である。
【0021】
振動子2は、電気−機械エネルギー変換素子であり、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などのセラミックスからなる圧電素子(ピエゾ素子)を用いることができる。圧電素子は厚み方向(図2(b)の上下方向)に分極しており、振動子2には、可動部材3の回転方向(軸方向の周囲)に複数の電極が分割して設けられている。図2(a)に示す例では、点線で示すように、I,II,IIIおよびIVの4つの領域に分割されており、これ
らの領域に対して異なる位相の電圧を独立して印加可能となっている。
【0022】
これらの電極領域の構造を、図2(b)の断面図に示す。振動子2は、その内部が分割した電極領域I〜IVのそれぞれに複数の電極層が形成された積層型圧電素子となっている。電極領域IIの例で説明すれば、領域の側面に、正極側の外部電極201および負極側の外部電極203がそれぞれ設けられている。なお、正極および負極は極性の違いを示すものであって、印加電圧の正負を示すものではない。そして、外部電極201,203をそれぞれ共通の電極として複数の内部電極205が、圧電体層を挟んで交互に積層するように設けられている。外部電極201,203にはそれぞれ正極側の引出配線202、負極側の引出配線204が接続され、電源装置(不図示)から分割した各電極領域に対して独立して位相の異なる電圧を印加することができるようになっている。このような積層型圧電素子を用いることにより、高い圧力下で大きな変位量を得ることができるので、圧電素子の脆性破壊が抑えられ、高トルクのアクチュエータとすることができる。なお、積層型圧電素子は弾性体1a、1bに接着されず、ボルトによって固定されるため、接着部の破壊による機能劣化が発生しにくい。
【0023】
このような積層型圧電素子は、例えば、以下のような製造方法によって提供される。Pb(Zr−Ti)O3系セラミックスグリーンシートに、Ag、Pd、Pt、Ni、Auあるいはこれらの少なくとも1種を含む合金粉からなる導電ペーストを印刷、あるいは蒸着などにより内部電極を形成する。これらのシートを交互に重ね合わせて積層し、これを振動子2の形状(本実施形態ではリング形状)に切断または打ち抜く。脱バインダー、焼成を行なった後、Ag、Pd、Pt、Ni、Auあるいはこれらの少なくとも一種を含む合金粉からなる導電ペーストを端面に塗り、さらに焼結させて外部電極を作製する。
【0024】
リング形状である振動子2の外壁の外部電極と内壁の外部電極をそれぞれ、正極と負極に接続し、正極と負極間に所定の直流電圧を印加して、電界を印加し、所定時間処理を行なうことにより、圧電体層を分極させて、本実施形態の振動子2を得ることができる。
【0025】
なお、正極、負極とも一方を各電極領域で共通の電極とし、他方を各電極領域の個別の電極としてもよい。この場合、各電極領域で電極の形成領域が共通化されるため、小型化に適する。
【0026】
次に、本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの駆動原理について説明する。
【0027】
図3は、振動子2に印加する電圧の波形(電圧−時間特性)を示したものであり、図4は、図3のT2の時点における振動体6の状態を示す模式図である。
【0028】
図3において、(a)〜(d)は位相の異なる正弦波であり、V=Asin(ωT−θ)なる関係(A:振幅、ω:角周波数、−θ:初期位相)において、Aは(a)〜(d)で一定、θは(a)が0°とすると(b)は90°、(c)は180°、(d)は270°となり、90°ごとに位相がずれている。
【0029】
図2に示す電極領域I〜IVの正極に印加する電圧波形がそれぞれ(a)〜(d)であるとすると、T=T2である瞬間には振動子2の電極領域II(図4の右側)で厚みが増すよ
うに変位し、振動子2の電極領域IV(図4の左側)では厚みが減ずるように変位する。
【0030】
この結果、T=T2の瞬間に振動子は、振動体6が電極領域IIから電極領域IVの方向に向かって屈曲した状態になる。ここで各電極領域に、V=Asin(ωT−θ)となるように同期させた正弦波電圧が印加されると、電極領域I→電極領域II→電極領域III→電極領域IV→電極領域I→・・・の順に圧縮運動を繰り返す。振動体6は、ボルト5により下端部が固定されているため、振動体6の屈曲運動は、摩擦駆動部4を首振り運動させる動きとなる。図2〜図4では、積層型圧電素子の電極領域を4つに分割した例を用いて説明を行なっているが、少なくとも3つ以上の分割数とすればよい。また、分割数を4つよりも多くなるようにしてもよく、これにより、首振り運動をさらに滑らかにすることができる。
【0031】
次に、振動体6の屈曲運動によって摩擦駆動部4が可動部材3に回転するための駆動力を与える原理について説明する。ここでは、さらに電極領域の分割数を増やして6つに分割した場合で説明する。
【0032】
図5は、図4に示すアクチュエータのB−B’線の矢視断面図を用いて摩擦駆動部の動きを説明する模式図であり、(a)は振動していないときを示す。また、(b)は、6分割した電極領域に60°の位相差を有する正弦波電圧を印加して、(1)〜(6)の順に振動させたときの状態を示している。
【0033】
図5(a)に示すように、振動体6の摩擦駆動部4と可動部材3の孔部3aの内面とは一定のクリアランスが設けられている。ここで、図5(b)の(1)に示すように、分割された電極領域の1つの方向に屈曲するように振動体6を振動させると、摩擦駆動部4の側面が可動部材3の孔部3aの内面に当接する。その後、順次分割された隣の電極領域を屈曲振動させることによって、(2)〜(6)に示すように、振動体6自体は回転することなく、摩擦駆動部4の側面が可動部材3の孔部3aの内面に次々と位置を変えて当接する。
【0034】
振動体6は、弾性復元力によって図5(a)の位置に戻ろうとするが、分割数と電極領域に印加する正弦波電圧の周波数を十分高くしてやることにより、振動体6の摩擦駆動部4が当接した箇所は、振動体6の固定端(一端部)を中心とする円周と重なる軌跡を描き、摩擦駆動部4が可動部材3の孔部3aの内面に連続的に位置を変えながら当接を繰り返しつつ、首振り運動することとなる。その結果、可動部材3は、振動体6の摩擦駆動部4によって駆動力が与えられ、振動体6の周囲を回転するようになる。
【0035】
従来の超音波モータは、ステータに対して楕円振動を行なわせる進行波を発生させることにより、このステータの面に加圧接触されたロータに回転駆動力を与えていたが、本実施形態に係るアクチュエータは、摩擦駆動部4の首振り運動により可動部材3の孔部3aの内面に回転駆動力を与えるようにしたので、従来の超音波モータと比較して、エネルギー効率の点で優れている。
【0036】
なお、上述の例では、積層型圧電素子の電極領域を4つと6つに分割した例を用いて説明を行なっているが、可動部材3の孔部3aの内面に回転駆動力を与えるような首振り運動を振動体6に対して起こさせるためには、積層型圧電素子の電極領域が最低3つの電極領域に分割されていればよい。
【0037】
さらに、上述の例では、振動子2の分割した電極領域に対して印加する交流電圧の位相として、4分割したときに位相を90°ずらした交流電圧を印加し、6分割したときに位相を60°ずらした交流電圧を印加している。このように分割した電極領域に対して、中
心を挟んで対向する電極領域同士が180°の位相差となるように交流電圧を印加することにより、中心を挟んで対向する位置で振動子が互いに反対方向に向かって伸縮する動きをさせることができ、振動体6をさらに大きく変位させることができる。
【0038】
また、可動部材3を逆方向に回転させたい場合には、分割された電極領域に対して、逆方向に、所定の位相差を有する正弦波電圧を印加すればよい。例えば、図5(b)の場合、(6)→(1)の順に振動させることとなる。
【0039】
次に、本実施形態に係るアクチュエータを設計するための方法の一例について説明する。
【0040】
まず、振動体6の固有振動周波数と、図3で示す電圧V=Asin(ωT−θ)の周波数ωとを一致させて共振現象を利用することにより、振動体が大きな変位を得られるようにすることが望ましい。固有振動の周波数は、振動体を構成する振動子2、弾性体1a、弾性体1b、ボルト5および摩擦駆動部4の構造と材質とにより決定される。
【0041】
例として、図1に示す構造を有する振動体において、有限要素法のシミュレーションツールを使用して固有振動周波数を求めた結果を図6aに示す。ここで、振動子2がPZT、摩擦駆動部4がアルミナ、弾性体1a、1bとボルトが鋼鉄であると仮定し、それぞれの寸法については、振動子2および弾性体1a、1bによって構成される円筒形の直径40mm・高さ62.5mm、摩擦駆動部4の直径45mm・高さ5mm、ボルト5の直径14mmと仮定した。以上の値を与えてシミュレーションを行なったところ、固有振動周波数ω=4.768kHzとなった。
【0042】
図6bでは、同じモデルにおける高次モードでの固有振動を示し、固有振動周波数ω=14.96kHzが得られた。このように固有振動は、複数の振動モードが存在しているが、どのモードを利用するかについては、得られる変位量と与える周波数とを勘案しながら、適切なものを選択すればよい。
【0043】
次に、可動部材3と摩擦駆動部4が適正に接するための摩擦駆動部4と可動部材3の孔部3aの内面とのクリアランスを数値化する。振動子2の変位量ΔZは、ΔZ/Z0=d33・Vで決まる。(Z0:素子厚み、d33:圧電定数、V:印加電圧)d33は材料によって決定される。この値はd33=50〜800×10−12m/Vと広い範囲を取りうるので、必要な変位量が得られるように材料を選択すればよい。
【0044】
積層型圧電素子を用いれば、十分に大きな変位量を得ることができるので望ましい。本発明者が実験したところ、約130層積層した総厚み10mmの積層型圧電素子では100V印加時に厚みが約9μm変位した。この実験結果を踏まえ、図1に示す構造を用いて圧電材料定数を計算に加えて有限要素法のシミュレーションにより振動体6の首振り運動による摩擦駆動部4の変位量を算出したところ、少なくとも0.1mmの値が得られることがわかった。図6aに示す第1次モード、図6bに示す高次モードともに0.1mm以上の変位量が得られている。このように摩擦駆動部4と可動部材3との嵌め合いの設計精度(例えば、可動部材3の孔部3aの内径公差が+0.05mm、摩擦駆動部4の外径公差が−0.05mm)に対して、十分に大きな変位量を得ることができ、摩擦駆動部4によって可動部材3を駆動可能であることがわかった。
【0045】
なお、振動体6と可動部材3に回転運動を直線運動に変換する螺旋形状を設ける場合は、図4の破線部DおよびEに示すように、屈曲させたときに、互いに嵌め合わされた箇所の嵌合状態が解除されない寸法としておくのがよい。
【0046】
さらに、以上のように設計されたアクチュエータでの発生力を見積もるため、第1次モードの振動を使用したときのトルクを算出したところ、平均トルクとして2.5N・mの値が得られた。これは同サイズの電磁モータと比較して100倍以上の高トルク値であり、本実施形態の優位性が確認された。
【0047】
次に、本実施形態に係るアクチュエータの組立て方法について説明する。図7は、本実施形態に係るアクチュエータの組立て方法を示す模式図であり、図8は、キャップの組付け方法の一例を示す。
【0048】
まず、弾性体1a,1bの間に振動子2を配置してこれらを積み上げる。可動部材3を上方あるいは下方からこれらを挿入するように組み込む。このとき振動子2に通電するための導線(不図示)は、弾性体1aの側壁もしくは内部に穴などを設けて通すことができる。弾性体1a,1bと振動子2との間に不図示のフレキシブル基板を挟み込むことによって配線してもよい。摩擦駆動部4を弾性体1bの上部に置いた後、ボルト5によって弾性体1a、1b、振動子2および摩擦駆動部4を所定の把持力で挟持して、振動体6が構成される。可動部材3の内壁に形成されている螺旋形状であるネジ山の内径は摩擦駆動部4の径よりも小さくなるために、上述した組み立て順とすることが望ましい。また、振動体6を設ける対象物にボルト5をねじ込むためのネジ山があらかじめ設けられていることが望ましい。
【0049】
キャップ7は、耐摩耗性および強度の高いセラミックスなどの材料が用いられる。可動部材3に対して、キャップ7を回転可能に保持するためには、図8に示すように、キャップ7の外周に突起を設けておき、あらかじめ可動部材3の内壁に形成された溝に突起をはめ込むようにするとよい。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。
【0051】
例えば、上述の説明では、振動子2として積層型圧電素子を用いた例によって説明したが、これに限るものではなく、単層の振動子を複数重ねたものを用いてもよい。また、振動子2の材料としては、PZTを用いた例によって説明したが、その他にも強誘電体単結晶や圧電性を持つ高分子材料を用いることができる。
【0052】
また、振動子2を得るための製造方法としては、セラミックグリーンシートを焼成する方法によって説明したが、これに限るものではなく、スパッタリング法などの薄膜法を用いても構わない。
【0053】
さらに、分割した電極領域に対して正弦波の交流電圧を印加した例によって説明したが、これに限るものではなく、三角波、鋸歯状波あるいはパルス波などを用いても構わない
次に、図を用いて変形例について具体的に説明する。
【0054】
図9は本発明の実施形態の別の例に係るアクチュエータ20を示す断面図である。この実施形態は、図1に示した実施形態に対して、弾性体1aが省略されて可動部材13の長さも短く、構造が簡略化されている。このような構成とすることにより、アクチュエータをさらに小型化することができる。
【0055】
図10は、本発明の実施形態のさらに別の例に係るアクチュエータ30を示す断面図である。この実施形態では、図1に示した実施形態と比較すると、振動体と可動部材23との間に互いに螺合する螺旋形状が設けられていない。そのため、振動体(弾性体11a,11b,振動子2およびボルト5)の屈曲振動は、可動部材23が振動体の軸周りに回転
する回転運動へと変換され、可動部材23に設けられた回転軸部21を経て、回転運動として外部に取り出すことができる。ボールベアリング19は、振動体と可動部材23との間に設けられており、可動部材23の回転を円滑にする効果を有する。ナット9は、ボルト5の端部と螺合して振動体の固定端となるものである。
【0056】
ここで、可動部材23の孔部23aの内周下方と振動体の下方外周とをそれぞれ取り巻くように周設された凸状部18a,18bを設け、可動部材23を振動体に挿入したときに、可動部材23側の凸状部18aが振動体側の凸状部18bの下方側になるように係止してもよい。このような互いに係止し合う凸状部18a,18bを設けることにより、可動部材23を摩擦駆動部4によって回転させたときに、可動部材23が振動体から外れることを防止して、安定した回転を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1a,1b 弾性体
2 振動子
3,13,23 可動部材
3a,13a,23a 孔部
4 摩擦駆動部
5 ボルト(締結部材)
6 振動体
7 キャップ
9 ナット
10,20,30 アクチュエータ
11a,11b, 弾性体
14,16 ネジ溝(第1の螺旋形状)
15,17 ネジ溝(第2の螺旋形状)
18a,18b 凸状部
19 ボールベアリング
21 回転軸部
201,203 外部電極
202,204 引出配線
205 内部電極
I,II,III,IV 電極領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子などを用いて発生する振動を直進運動や回転運動に変換して駆動するアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の高性能化、小型・軽量化が進むにつれて、小型で高い出力を有するアクチュエータへの要望が高まっている。これに対して、圧電素子などの微小な変位を繰り返し利用することで大きな変位または高トルクを得る圧電アクチュエータや超音波モータが考案されている。例えば特許文献1には、円形状の振動体の周方向に進行性振動波を発生させ、この振動体と接触する接触体を設け、振動体と接触体とを雄ねじと雌ねじの関係とすることで直進運動するアクチュエータが提案されている。このようなアクチュエータは、カメラのオートフォーカス機構でレンズを駆動させるアクチュエータなどに利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−225182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電アクチュエータや超音波モータは、電磁モータと比較して体積当たりあるいは重量当たりに発生するエネルギーが大きいとされる。さらに、高速応答性や位置保持性に優れ、磁気の影響を受けないといった利点もある。しかしながら、特許文献1に示されている圧電セラミックスを振動リングに接着する構造では、圧電セラミックスの応力限界が低いため、大きな振動・振幅の発生が困難であり、大出力を得ることが難しかった。したがって、このような圧電アクチュエータの応用用途としては、時計、カメラ、プリンタなどの小型機器への適用に留まっている。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、高トルクの出力が可能なアクチュエータを得ることを目的とする。また、高信頼性のアクチュエータを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータは、一端部が固定端とされ、他端部が自由端とされた片持ち梁状であって、前記他端部側に摩擦駆動部が設けられた振動体と、該振動体の前記摩擦駆動部が内面に対して遊びを設けた状態で挿入される孔部を有し、前記振動体の周囲に回転可能に保持された可動部材とを具備する。そして、前記振動体を振動させたときに、前記摩擦駆動部が前記可動部材の前記孔部の内面に当接するとともに、前記他端部側から平面透視したときに当接した箇所が前記一端部を中心とする円周と重なる軌跡を描くように駆動されて、前記可動部材を前記振動体の周囲で回転させる。
【0007】
上記の構造によれば、振動体の摩擦駆動部が可動部材の孔部の内面に対して、連続的に位置を変えながら当接を繰り返しつつ、首振り運動することとなる。その結果、可動部材は、振動体の摩擦駆動部によって駆動力が与えられて、振動体の周囲を回転する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータによれば、振動体から可動部材への駆動
力の伝達ロスが少なく、大きなトルクの駆動力を与えるアクチュエータとすることができる。また、高信頼性を有するので、長寿命のアクチュエータとすることができる。これにより、例えば、ロボットの腰部や関節のように、高い駆動力および高い信頼性を必要とする用途へ適用可能なアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータを示す図であり、(a)は側面図、(b)は断面図である。
【図2】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの振動子の構造を示す図であり、(a)は振動子を中心軸方向から見たときの電極領域を示す図であり、(b)は(a)の電極部分を模式的に示したA−A’線の矢視断面図である。
【図3】図2に示す振動子に印加する電圧の波形(電圧−時間特性)を示す図である。
【図4】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータにおいて、図3のT2の時点における振動体の状態を示す図である。
【図5】図4に示すアクチュエータのB−B’線の矢視断面図を用いて摩擦駆動部の動きを説明する模式図であり、(a)は振動していないとき、(b)は(1)〜(6)の順に振動しているときの状態を示す。
【図6a】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの固有振動周波数を求めたシミュレーション結果であり、第一次モードの固有振動を示す。
【図6b】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの固有振動周波数を求めたシミュレーション結果であり、高次モードの固有振動を示す。
【図7】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの組み立て方法を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの組み立て方法を示す模式図であり、キャップの組付け方法を示す。
【図9】本発明の実施形態の別の例に係るアクチュエータを示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態のさらに別の例に係るアクチュエータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の例について図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
ただし、以下で参照する各図では、説明の便宜上、本発明の一実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示すことがある。したがって、本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータは、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備えていてもよい。また、各図中の部材の寸法は、模式的なものであり、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータを示す図であり、(a)は側面図、(b)はその断面図である。
【0013】
本実施形態に係るアクチュエータ10は、振動体6と、その周囲に回転可能に保持された可動部材3とを有している。
【0014】
本実施形態において、振動体6は、弾性体1a、振動子2、弾性体1bおよび摩擦駆動部4がこの順に積み重ねられたものとなっている。あるいは振動子2、弾性体1bおよび摩擦駆動部4がこの順に積み重ねられたものとなっている。各部材の中央には、締結部材であるボルト5を通すための貫通穴が設けられており、このボルト5で基台(不図示)に
締め付けられて一体とされている。具体的には、ボルト締めランジュバン型振動子の形態をなしている。したがって、振動体は、ボルト5で締め付けられた一端部側が固定端となり、摩擦駆動部4が設けられた他端部側が自由端となった片持ち梁状となっている。
【0015】
可動部材3は円筒形状を有し、この円筒の内壁が孔部3aの内面を構成して、振動体6を収容しうる大きさとなっている。詳細は後述するが、振動体6の摩擦駆動部4と孔部3aの内面とは一定の遊び(クリアランス)を設けた状態とされ、振動体6を振動させたときに、摩擦駆動部4の側部が可動部材3の孔部3aの内面に当接して、振動体6の周囲を回転するための駆動力を付与するような構成となっている。
【0016】
可動部材3は、振動体6の周囲に回転可能に保持されている。本実施形態では、振動体6の外側面および可動部材3の孔部3aの内面の表面に、互いに嵌合し得るように螺旋形状を成す凸部と凹部が形成されている。具体的には、振動体6側の螺旋形状(第1の螺旋形状)として、弾性体1aの側面にネジ溝14、弾性体1bの側面にネジ溝16が形成されている。また、可動部材3側の螺旋形状(第2の螺旋形状)として、孔部3aの内側面にネジ溝15,17が形成されている。そして、これら第1および第2の螺旋形状同士が互いに嵌め合わされた形態となっている。この構成によれば、可動部材3を振動体6の周囲に回転させる運動が振動体6の軸方向の直線運動に変換される。この可動部材3の動きを被駆動体(不図示)に伝達することにより、この被駆動体を駆動することができる。さらに、振動体6の振動を止めて可動部材3の回転を止めた状態としたときに、例えば、被駆動体の自重などによって、軸方向に力がかかったとしても、螺旋形状同士が係止し合って回転が阻害されるので、アクチュエータ10が軸方向に対して静止し、位置が保持される。
【0017】
なお、上述の機構により、可動部材3を振動体6の軸方向に駆動させる場合、図1に示すように、可動部材3の先端に、先端方向に向かって突出するキャップ7を設けることができる。このキャップ7の突出する先端部が凸面または半球面からなるようにしておくことにより、可動部材3が振動体6の軸周りに回転しながら軸方向に移動して被駆動体に当接したときに、被駆動体との接触面積が小さくなり摩擦を低減させる効果がある。キャップ7は可動部材3に対して、回転自在に保持することもできる。この場合、可動部材3に対してキャップ7が空転し、被駆動体との相対的な回転が抑えられるので、最も応力の集中するキャップ7の先端部の摩耗を抑えることができる。
【0018】
弾性体1a,1bおよび締結部材(ボルト)5としては、公知の弾性体を用いることができるが、一般的には金属が用いられる。また、振動子2は、電気−機械エネルギー変換素子であり、例えば、積層型圧電素子を用いて構成される。振動子2の構成の詳細は後述する。
【0019】
可動部材3は加工が容易なことから、金属が用いられる。ここで可動部材3の孔部3aの内面に対しては、駆動力を付与するために摩擦駆動部4が当接するため、摩擦駆動部4と当接する部分を、セラミックスなどの耐摩耗性が優れた材料によって形成してもよい。あるいは耐摩耗性に優れたコーティングを行なってもよい。また、摩擦駆動部4も側部が、可動部材3と当接して駆動力を付与するので、この部分の材質としては、セラミックスなどの耐摩耗性に優れた材料とすることが望ましい。また、摩擦駆動部4と可動部材3とが当接する部分の相互の摩擦係数が大きい材料を選択することにより、動力伝達時のエネルギーロスが少なくなるので好ましい。
【0020】
次に、本実施形態に係る振動子の構造について説明する。図2において、(a)は振動子を中心軸方向から見たときの電極領域を示す図であり、(b)は(a)の電極部分を模式的に示したA−A’線の矢視断面図である。
【0021】
振動子2は、電気−機械エネルギー変換素子であり、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などのセラミックスからなる圧電素子(ピエゾ素子)を用いることができる。圧電素子は厚み方向(図2(b)の上下方向)に分極しており、振動子2には、可動部材3の回転方向(軸方向の周囲)に複数の電極が分割して設けられている。図2(a)に示す例では、点線で示すように、I,II,IIIおよびIVの4つの領域に分割されており、これ
らの領域に対して異なる位相の電圧を独立して印加可能となっている。
【0022】
これらの電極領域の構造を、図2(b)の断面図に示す。振動子2は、その内部が分割した電極領域I〜IVのそれぞれに複数の電極層が形成された積層型圧電素子となっている。電極領域IIの例で説明すれば、領域の側面に、正極側の外部電極201および負極側の外部電極203がそれぞれ設けられている。なお、正極および負極は極性の違いを示すものであって、印加電圧の正負を示すものではない。そして、外部電極201,203をそれぞれ共通の電極として複数の内部電極205が、圧電体層を挟んで交互に積層するように設けられている。外部電極201,203にはそれぞれ正極側の引出配線202、負極側の引出配線204が接続され、電源装置(不図示)から分割した各電極領域に対して独立して位相の異なる電圧を印加することができるようになっている。このような積層型圧電素子を用いることにより、高い圧力下で大きな変位量を得ることができるので、圧電素子の脆性破壊が抑えられ、高トルクのアクチュエータとすることができる。なお、積層型圧電素子は弾性体1a、1bに接着されず、ボルトによって固定されるため、接着部の破壊による機能劣化が発生しにくい。
【0023】
このような積層型圧電素子は、例えば、以下のような製造方法によって提供される。Pb(Zr−Ti)O3系セラミックスグリーンシートに、Ag、Pd、Pt、Ni、Auあるいはこれらの少なくとも1種を含む合金粉からなる導電ペーストを印刷、あるいは蒸着などにより内部電極を形成する。これらのシートを交互に重ね合わせて積層し、これを振動子2の形状(本実施形態ではリング形状)に切断または打ち抜く。脱バインダー、焼成を行なった後、Ag、Pd、Pt、Ni、Auあるいはこれらの少なくとも一種を含む合金粉からなる導電ペーストを端面に塗り、さらに焼結させて外部電極を作製する。
【0024】
リング形状である振動子2の外壁の外部電極と内壁の外部電極をそれぞれ、正極と負極に接続し、正極と負極間に所定の直流電圧を印加して、電界を印加し、所定時間処理を行なうことにより、圧電体層を分極させて、本実施形態の振動子2を得ることができる。
【0025】
なお、正極、負極とも一方を各電極領域で共通の電極とし、他方を各電極領域の個別の電極としてもよい。この場合、各電極領域で電極の形成領域が共通化されるため、小型化に適する。
【0026】
次に、本発明の実施形態の一例に係るアクチュエータの駆動原理について説明する。
【0027】
図3は、振動子2に印加する電圧の波形(電圧−時間特性)を示したものであり、図4は、図3のT2の時点における振動体6の状態を示す模式図である。
【0028】
図3において、(a)〜(d)は位相の異なる正弦波であり、V=Asin(ωT−θ)なる関係(A:振幅、ω:角周波数、−θ:初期位相)において、Aは(a)〜(d)で一定、θは(a)が0°とすると(b)は90°、(c)は180°、(d)は270°となり、90°ごとに位相がずれている。
【0029】
図2に示す電極領域I〜IVの正極に印加する電圧波形がそれぞれ(a)〜(d)であるとすると、T=T2である瞬間には振動子2の電極領域II(図4の右側)で厚みが増すよ
うに変位し、振動子2の電極領域IV(図4の左側)では厚みが減ずるように変位する。
【0030】
この結果、T=T2の瞬間に振動子は、振動体6が電極領域IIから電極領域IVの方向に向かって屈曲した状態になる。ここで各電極領域に、V=Asin(ωT−θ)となるように同期させた正弦波電圧が印加されると、電極領域I→電極領域II→電極領域III→電極領域IV→電極領域I→・・・の順に圧縮運動を繰り返す。振動体6は、ボルト5により下端部が固定されているため、振動体6の屈曲運動は、摩擦駆動部4を首振り運動させる動きとなる。図2〜図4では、積層型圧電素子の電極領域を4つに分割した例を用いて説明を行なっているが、少なくとも3つ以上の分割数とすればよい。また、分割数を4つよりも多くなるようにしてもよく、これにより、首振り運動をさらに滑らかにすることができる。
【0031】
次に、振動体6の屈曲運動によって摩擦駆動部4が可動部材3に回転するための駆動力を与える原理について説明する。ここでは、さらに電極領域の分割数を増やして6つに分割した場合で説明する。
【0032】
図5は、図4に示すアクチュエータのB−B’線の矢視断面図を用いて摩擦駆動部の動きを説明する模式図であり、(a)は振動していないときを示す。また、(b)は、6分割した電極領域に60°の位相差を有する正弦波電圧を印加して、(1)〜(6)の順に振動させたときの状態を示している。
【0033】
図5(a)に示すように、振動体6の摩擦駆動部4と可動部材3の孔部3aの内面とは一定のクリアランスが設けられている。ここで、図5(b)の(1)に示すように、分割された電極領域の1つの方向に屈曲するように振動体6を振動させると、摩擦駆動部4の側面が可動部材3の孔部3aの内面に当接する。その後、順次分割された隣の電極領域を屈曲振動させることによって、(2)〜(6)に示すように、振動体6自体は回転することなく、摩擦駆動部4の側面が可動部材3の孔部3aの内面に次々と位置を変えて当接する。
【0034】
振動体6は、弾性復元力によって図5(a)の位置に戻ろうとするが、分割数と電極領域に印加する正弦波電圧の周波数を十分高くしてやることにより、振動体6の摩擦駆動部4が当接した箇所は、振動体6の固定端(一端部)を中心とする円周と重なる軌跡を描き、摩擦駆動部4が可動部材3の孔部3aの内面に連続的に位置を変えながら当接を繰り返しつつ、首振り運動することとなる。その結果、可動部材3は、振動体6の摩擦駆動部4によって駆動力が与えられ、振動体6の周囲を回転するようになる。
【0035】
従来の超音波モータは、ステータに対して楕円振動を行なわせる進行波を発生させることにより、このステータの面に加圧接触されたロータに回転駆動力を与えていたが、本実施形態に係るアクチュエータは、摩擦駆動部4の首振り運動により可動部材3の孔部3aの内面に回転駆動力を与えるようにしたので、従来の超音波モータと比較して、エネルギー効率の点で優れている。
【0036】
なお、上述の例では、積層型圧電素子の電極領域を4つと6つに分割した例を用いて説明を行なっているが、可動部材3の孔部3aの内面に回転駆動力を与えるような首振り運動を振動体6に対して起こさせるためには、積層型圧電素子の電極領域が最低3つの電極領域に分割されていればよい。
【0037】
さらに、上述の例では、振動子2の分割した電極領域に対して印加する交流電圧の位相として、4分割したときに位相を90°ずらした交流電圧を印加し、6分割したときに位相を60°ずらした交流電圧を印加している。このように分割した電極領域に対して、中
心を挟んで対向する電極領域同士が180°の位相差となるように交流電圧を印加することにより、中心を挟んで対向する位置で振動子が互いに反対方向に向かって伸縮する動きをさせることができ、振動体6をさらに大きく変位させることができる。
【0038】
また、可動部材3を逆方向に回転させたい場合には、分割された電極領域に対して、逆方向に、所定の位相差を有する正弦波電圧を印加すればよい。例えば、図5(b)の場合、(6)→(1)の順に振動させることとなる。
【0039】
次に、本実施形態に係るアクチュエータを設計するための方法の一例について説明する。
【0040】
まず、振動体6の固有振動周波数と、図3で示す電圧V=Asin(ωT−θ)の周波数ωとを一致させて共振現象を利用することにより、振動体が大きな変位を得られるようにすることが望ましい。固有振動の周波数は、振動体を構成する振動子2、弾性体1a、弾性体1b、ボルト5および摩擦駆動部4の構造と材質とにより決定される。
【0041】
例として、図1に示す構造を有する振動体において、有限要素法のシミュレーションツールを使用して固有振動周波数を求めた結果を図6aに示す。ここで、振動子2がPZT、摩擦駆動部4がアルミナ、弾性体1a、1bとボルトが鋼鉄であると仮定し、それぞれの寸法については、振動子2および弾性体1a、1bによって構成される円筒形の直径40mm・高さ62.5mm、摩擦駆動部4の直径45mm・高さ5mm、ボルト5の直径14mmと仮定した。以上の値を与えてシミュレーションを行なったところ、固有振動周波数ω=4.768kHzとなった。
【0042】
図6bでは、同じモデルにおける高次モードでの固有振動を示し、固有振動周波数ω=14.96kHzが得られた。このように固有振動は、複数の振動モードが存在しているが、どのモードを利用するかについては、得られる変位量と与える周波数とを勘案しながら、適切なものを選択すればよい。
【0043】
次に、可動部材3と摩擦駆動部4が適正に接するための摩擦駆動部4と可動部材3の孔部3aの内面とのクリアランスを数値化する。振動子2の変位量ΔZは、ΔZ/Z0=d33・Vで決まる。(Z0:素子厚み、d33:圧電定数、V:印加電圧)d33は材料によって決定される。この値はd33=50〜800×10−12m/Vと広い範囲を取りうるので、必要な変位量が得られるように材料を選択すればよい。
【0044】
積層型圧電素子を用いれば、十分に大きな変位量を得ることができるので望ましい。本発明者が実験したところ、約130層積層した総厚み10mmの積層型圧電素子では100V印加時に厚みが約9μm変位した。この実験結果を踏まえ、図1に示す構造を用いて圧電材料定数を計算に加えて有限要素法のシミュレーションにより振動体6の首振り運動による摩擦駆動部4の変位量を算出したところ、少なくとも0.1mmの値が得られることがわかった。図6aに示す第1次モード、図6bに示す高次モードともに0.1mm以上の変位量が得られている。このように摩擦駆動部4と可動部材3との嵌め合いの設計精度(例えば、可動部材3の孔部3aの内径公差が+0.05mm、摩擦駆動部4の外径公差が−0.05mm)に対して、十分に大きな変位量を得ることができ、摩擦駆動部4によって可動部材3を駆動可能であることがわかった。
【0045】
なお、振動体6と可動部材3に回転運動を直線運動に変換する螺旋形状を設ける場合は、図4の破線部DおよびEに示すように、屈曲させたときに、互いに嵌め合わされた箇所の嵌合状態が解除されない寸法としておくのがよい。
【0046】
さらに、以上のように設計されたアクチュエータでの発生力を見積もるため、第1次モードの振動を使用したときのトルクを算出したところ、平均トルクとして2.5N・mの値が得られた。これは同サイズの電磁モータと比較して100倍以上の高トルク値であり、本実施形態の優位性が確認された。
【0047】
次に、本実施形態に係るアクチュエータの組立て方法について説明する。図7は、本実施形態に係るアクチュエータの組立て方法を示す模式図であり、図8は、キャップの組付け方法の一例を示す。
【0048】
まず、弾性体1a,1bの間に振動子2を配置してこれらを積み上げる。可動部材3を上方あるいは下方からこれらを挿入するように組み込む。このとき振動子2に通電するための導線(不図示)は、弾性体1aの側壁もしくは内部に穴などを設けて通すことができる。弾性体1a,1bと振動子2との間に不図示のフレキシブル基板を挟み込むことによって配線してもよい。摩擦駆動部4を弾性体1bの上部に置いた後、ボルト5によって弾性体1a、1b、振動子2および摩擦駆動部4を所定の把持力で挟持して、振動体6が構成される。可動部材3の内壁に形成されている螺旋形状であるネジ山の内径は摩擦駆動部4の径よりも小さくなるために、上述した組み立て順とすることが望ましい。また、振動体6を設ける対象物にボルト5をねじ込むためのネジ山があらかじめ設けられていることが望ましい。
【0049】
キャップ7は、耐摩耗性および強度の高いセラミックスなどの材料が用いられる。可動部材3に対して、キャップ7を回転可能に保持するためには、図8に示すように、キャップ7の外周に突起を設けておき、あらかじめ可動部材3の内壁に形成された溝に突起をはめ込むようにするとよい。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。
【0051】
例えば、上述の説明では、振動子2として積層型圧電素子を用いた例によって説明したが、これに限るものではなく、単層の振動子を複数重ねたものを用いてもよい。また、振動子2の材料としては、PZTを用いた例によって説明したが、その他にも強誘電体単結晶や圧電性を持つ高分子材料を用いることができる。
【0052】
また、振動子2を得るための製造方法としては、セラミックグリーンシートを焼成する方法によって説明したが、これに限るものではなく、スパッタリング法などの薄膜法を用いても構わない。
【0053】
さらに、分割した電極領域に対して正弦波の交流電圧を印加した例によって説明したが、これに限るものではなく、三角波、鋸歯状波あるいはパルス波などを用いても構わない
次に、図を用いて変形例について具体的に説明する。
【0054】
図9は本発明の実施形態の別の例に係るアクチュエータ20を示す断面図である。この実施形態は、図1に示した実施形態に対して、弾性体1aが省略されて可動部材13の長さも短く、構造が簡略化されている。このような構成とすることにより、アクチュエータをさらに小型化することができる。
【0055】
図10は、本発明の実施形態のさらに別の例に係るアクチュエータ30を示す断面図である。この実施形態では、図1に示した実施形態と比較すると、振動体と可動部材23との間に互いに螺合する螺旋形状が設けられていない。そのため、振動体(弾性体11a,11b,振動子2およびボルト5)の屈曲振動は、可動部材23が振動体の軸周りに回転
する回転運動へと変換され、可動部材23に設けられた回転軸部21を経て、回転運動として外部に取り出すことができる。ボールベアリング19は、振動体と可動部材23との間に設けられており、可動部材23の回転を円滑にする効果を有する。ナット9は、ボルト5の端部と螺合して振動体の固定端となるものである。
【0056】
ここで、可動部材23の孔部23aの内周下方と振動体の下方外周とをそれぞれ取り巻くように周設された凸状部18a,18bを設け、可動部材23を振動体に挿入したときに、可動部材23側の凸状部18aが振動体側の凸状部18bの下方側になるように係止してもよい。このような互いに係止し合う凸状部18a,18bを設けることにより、可動部材23を摩擦駆動部4によって回転させたときに、可動部材23が振動体から外れることを防止して、安定した回転を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1a,1b 弾性体
2 振動子
3,13,23 可動部材
3a,13a,23a 孔部
4 摩擦駆動部
5 ボルト(締結部材)
6 振動体
7 キャップ
9 ナット
10,20,30 アクチュエータ
11a,11b, 弾性体
14,16 ネジ溝(第1の螺旋形状)
15,17 ネジ溝(第2の螺旋形状)
18a,18b 凸状部
19 ボールベアリング
21 回転軸部
201,203 外部電極
202,204 引出配線
205 内部電極
I,II,III,IV 電極領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が固定端とされ、他端部が自由端とされた片持ち梁状であって、前記他端部側に摩擦駆動部が設けられた振動体と、
該振動体の前記摩擦駆動部が内面に対して遊びを設けた状態で挿入される孔部を有し、前記振動体の周囲に回転可能に保持された可動部材とを具備するアクチュエータであって、前記振動体を振動させたときに、前記摩擦駆動部が、前記可動部材の前記孔部の内面に当接するとともに、前記他端部側から平面透視したときに当接した箇所が前記一端部を中心とする円周と重なる軌跡を描くように駆動されて、前記可動部材を前記振動体の周囲で回転させる、アクチュエータ。
【請求項2】
前記振動体の表面に第1の螺旋形状の凸部または凹部が形成されているとともに、前記可動部材の前記孔部の内面に前記第1の螺旋形状の凸部または凹部と嵌合しうる第2の螺旋形状の凸部または凹部が形成されており、
前記振動体および前記可動部材は、前記第1および第2の螺旋形状の凸部または凹部同士が互いに嵌め合わされて、前記可動部材を前記振動体の周囲で回転させる運動が前記可動部材を前記振動体の軸方向に移動させる直線運動に変換される、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記振動体は、
電気−機械エネルギー変換素子を含む振動子と、
該振動子に接する弾性体と、
該弾性体に接する前記摩擦駆動部と、
前記振動子、前記弾性体および前記摩擦駆動部を一体的に締め付ける締結部材とを含む、請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記振動子は、1枚の圧電素子からなる単層型、または複数枚の圧電素子が積層された積層型であって、前記可動部材の回転方向に少なくとも3つに分割された電極を有し、該電極のそれぞれに位相の異なる交流電圧が与えられる、請求項1乃至3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記可動部材の先端に、先端方向に向かって突出する凸面または半球面を有するキャップが設けられている、請求項1乃至4のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項1】
一端部が固定端とされ、他端部が自由端とされた片持ち梁状であって、前記他端部側に摩擦駆動部が設けられた振動体と、
該振動体の前記摩擦駆動部が内面に対して遊びを設けた状態で挿入される孔部を有し、前記振動体の周囲に回転可能に保持された可動部材とを具備するアクチュエータであって、前記振動体を振動させたときに、前記摩擦駆動部が、前記可動部材の前記孔部の内面に当接するとともに、前記他端部側から平面透視したときに当接した箇所が前記一端部を中心とする円周と重なる軌跡を描くように駆動されて、前記可動部材を前記振動体の周囲で回転させる、アクチュエータ。
【請求項2】
前記振動体の表面に第1の螺旋形状の凸部または凹部が形成されているとともに、前記可動部材の前記孔部の内面に前記第1の螺旋形状の凸部または凹部と嵌合しうる第2の螺旋形状の凸部または凹部が形成されており、
前記振動体および前記可動部材は、前記第1および第2の螺旋形状の凸部または凹部同士が互いに嵌め合わされて、前記可動部材を前記振動体の周囲で回転させる運動が前記可動部材を前記振動体の軸方向に移動させる直線運動に変換される、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記振動体は、
電気−機械エネルギー変換素子を含む振動子と、
該振動子に接する弾性体と、
該弾性体に接する前記摩擦駆動部と、
前記振動子、前記弾性体および前記摩擦駆動部を一体的に締め付ける締結部材とを含む、請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記振動子は、1枚の圧電素子からなる単層型、または複数枚の圧電素子が積層された積層型であって、前記可動部材の回転方向に少なくとも3つに分割された電極を有し、該電極のそれぞれに位相の異なる交流電圧が与えられる、請求項1乃至3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記可動部材の先端に、先端方向に向かって突出する凸面または半球面を有するキャップが設けられている、請求項1乃至4のいずれかに記載のアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図6a】
【図6b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図6a】
【図6b】
【公開番号】特開2012−100513(P2012−100513A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292487(P2010−292487)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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