アクチュエータ
【課題】軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、軸受に搭載された搭載物に微振動が伝達しにくいアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータは、駆動プーリ１と、従動プーリ２と、両プーリ１，２の間に掛け渡された無端ベルト３と、ガイドレール４と、無端ベルト３に接続されガイドレール４に沿って直線移動する軸受５とを備える。軸受５は、軸方向に並んだ４個の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄよりなる。ベルト接続用軸受部材５Ｂ，５Ｃは、第１の連結部材によって無端ベルト３に接続される。搭載物用軸受部材５Ａ，５Ｄは、搭載物を搭載する。軸受部材５Ａ及び軸受部材５Ｂ、並びに軸受部材５Ｃ及び軸受部材５Ｄは、それぞれ、第３の連結部材によって連結される。一方、第２の連結部材によって相互に連結される軸受部材５Ａ及び軸受部材５Ｄは無端ベルト３には直接連結されていない。
【解決手段】アクチュエータは、駆動プーリ１と、従動プーリ２と、両プーリ１，２の間に掛け渡された無端ベルト３と、ガイドレール４と、無端ベルト３に接続されガイドレール４に沿って直線移動する軸受５とを備える。軸受５は、軸方向に並んだ４個の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄよりなる。ベルト接続用軸受部材５Ｂ，５Ｃは、第１の連結部材によって無端ベルト３に接続される。搭載物用軸受部材５Ａ，５Ｄは、搭載物を搭載する。軸受部材５Ａ及び軸受部材５Ｂ、並びに軸受部材５Ｃ及び軸受部材５Ｄは、それぞれ、第３の連結部材によって連結される。一方、第２の連結部材によって相互に連結される軸受部材５Ａ及び軸受部材５Ｄは無端ベルト３には直接連結されていない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明はアクチュエータに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、製造装置には、ワークを移動させるために直線案内軸受装置が備えられており、このような直線案内軸受装置に好適に用いられるアクチュエータが、特許文献１，２に開示されている。
特許文献１，２に開示のアクチュエータは、駆動装置により回転駆動される駆動プーリと、回転自在に支持された従動プーリと、駆動プーリと従動プーリとの間に掛け渡された無端ベルトと、ワーク等の搭載物を搭載して直線移動する軸受と、軸受の直線移動を案内するガイドレールと、軸受のカウンタウェイトとして機能するカウンタ軸受と、カウンタ軸受の直線移動を案内するカウンタガイドレールと、を備えている。軸受及びカウンタ軸受は無端ベルトに接続されているが、カウンタ軸受は、軸受が取り付けられた側とは前記両プーリを挟んで反対側に接続されている。
【０００３】
このようなアクチュエータにおいては、軸受とカウンタ軸受とを逆方向に移動させることにより、加速時，減速時などに生じる軸受の反力が抑制されるので、それにより振動の抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００８−１０１６４２号公報
【特許文献２】特開２００１−２４８７０３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、上記のような従来のアクチュエータは、前記のような振動抑制が図られていても、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合には、微振動が発生するおそれがあった。そのため、直線移動する軸受の運動精度が若干低下する場合があった。
通常の用途であれば、運動精度が若干低下しても大きな悪影響が生じない場合が多いが、高精度用途のアクチュエータの場合は、無端ベルトを介して軸受に伝わる微振動が搭載物に悪影響を及ぼすおそれがあった。そのため、振動抑制のさらなる向上が求められていた。
【０００６】
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、軸受に搭載された搭載物に微振動が伝達しにくいアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記課題を解決するための請求項１に係る発明は、駆動装置により回転駆動される駆動プーリと、
回転自在に支持された従動プーリと、
前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に掛け渡され前記駆動プーリの回転に伴って回転する無端ベルトと、
軸方向に延びるガイドレールと、
前記無端ベルトに接続され且つ前記無端ベルトの回転に伴って前記ガイドレールに沿って前記軸方向に直線移動する軸受とを備え、前記軸受に搭載物を搭載して直線移動させるアクチュエータにおいて、
前記軸受は、前記軸方向に並んだ３個以上の軸受部材を有してなり、
該軸受部材は、第１の連結部材によって前記無端ベルトに連結される１個以上のベルト接続用軸受部材と、
該ベルト接続用軸受部材を前記軸方向に挟むように２個以上配置されると共に第２の連結部材によって相互に連結され、前記軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能である第３の連結部材によって前記ベルト接続用軸受部材に連結され、前記第２の連結部材に前記搭載物を搭載する搭載物用軸受部材とを有することを特徴としている。
【０００８】
このような構成であれば、無端ベルトからの微振動は、ベルト接続用軸受部材には伝わるが、搭載物用軸受部材に直接伝わることはない。ベルト接続用軸受部材に伝わった微振動は、連結部材を介して搭載物用軸受部材に伝わるが、前記のように変形可能な連結部材の変形によって微振動が緩衝されるので、搭載物用軸受部材に伝わる微振動は大幅に抑制される。よって、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、無端ベルトから搭載物に伝わる微振動は僅かであり、したがって軸受に搭載された搭載物に微振動が悪影響を及ぼすおそれはほとんどない。
【０００９】
また、請求項２に係る発明は、請求項１に記載のアクチュエータにおいて、第１の連結部材及び第２の連結部材の少なくともいずれか一方が前記軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能であることを特徴としている。
また、請求項３に係る発明は、請求項１又は２に記載のアクチュエータにおいて、第１の連結部材が、平板を曲げ加工した板ばねであることを特徴としている。
また、請求項４に係る発明は、請求項１〜３のいずれかに記載のアクチュエータにおいて、第２の連結部材及び第３の連結部材の少なくともいずれか一方が平板状をなすことを特徴としている。
また、請求項５に係る発明は、請求項１〜４のいずれかに記載のアクチュエータにおいて、前記ベルト接続用軸受部材と前記搭載物用軸受部材とが、前記軸受の重心位置において連結されていることを特徴としている。
【００１０】
このような構成であれば、加減速時に無端ベルトの駆動力により軸受に無用なモーメントが発生することが抑制されるので、軸受の振動がより一層抑制される。なお、軸受に搭載物が搭載されている場合は、搭載物が搭載された軸受の重心位置（すなわち、軸受と搭載物とを組み合わせたものの重心位置）を、「軸受の重心位置」というものとする。
また、請求項６に係る発明は、請求項１〜５のいずれかに記載のアクチュエータにおいて、前記ガイドレールの形状は断面略Ｕ字状であり、前記ガイドレールの凹部内に前記無端ベルトの少なくとも一部が配されていることを特徴としている。
このような構成であれば、ガイドレールの凹部と搭載物とが対向しないようにして、無端ベルトから発生する塵埃が搭載物に付着することを抑制することができる。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、軸受に搭載された搭載物に微振動が伝達しにくいアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明に係るアクチュエータの一実施形態における構成を示す平面図である。
【図２】本発明に係るアクチュエータの一実施形態における構成を示す側面図である。
【図３】本発明に係るアクチュエータの一実施形態における軸受の構成を示す平面図である。
【図４】本発明に係るアクチュエータの一実施形態における軸受の構成を示す軸方向に沿う断面図である。
【図５】図３を軸方向から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１３】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図１は、本発明に係るアクチュエータの一実施形態における構成を示す平面図である。また、図２は、本発明に係るアクチュエータの一実施形態における構成を示す側面図である。また、図３は、本発明に係るアクチュエータの一実施形態における軸受の構成を示す平面図である。また、図４は、本発明に係るアクチュエータの一実施形態における軸受の構成を示す軸方向に沿う断面図である。また、図５は、図３を軸方向からみた正面図である。
【００１４】
（アクチュエータの構成）
図１及び図２に示すように、本実施形態のアクチュエータは、モータ１０により回転駆動される駆動プーリ１と、回転自在に支持された従動プーリ２と、駆動プーリ１と従動プーリ２との間に掛け渡された環状の無端ベルト３と、軸方向に延びるガイドレール４と、無端ベルト３の回転に伴ってガイドレール４に沿って軸方向に直線移動する軸受５とを備えている。
ここで、ガイドレール４の一方の端部には、モータ１０が取り付けられている。このモータ１０の回転軸１０ａは、水平且つガイドレール４の軸線（軸方向）に直交する方向に延びており、その先端には駆動プーリ１が取り付けられている。さらに、ガイドレール４の他方の端部には、従動プーリ２を回転自在に支持するプーリハウジング１１が取り付けられている。
【００１５】
そして、駆動プーリ１と従動プーリ２との間には、ガイドレール４に沿う方向（軸方向）に無端ベルト３が掛け渡されている。無端ベルト３の表面（内側面）には、周方向に沿って並ぶ複数の歯（図示せず）が形成されており、駆動プーリ１及び従動プーリ２の外周面に形成された歯（図示せず）と噛み合わされている。そのため、無端ベルト３は、駆動プーリ１の回転により回転駆動されるようになっている。
また、軸受５はその一部が無端ベルト３に接続されているとともに、ガイドレール４に係合されているので、無端ベルト３の回転に伴って軸受５はガイドレール４に案内されて軸方向に直線移動可能となっている。
【００１６】
＜ガイドレール＞
ガイドレール４の形状は特に限定されるものではないが、図５に示すように、略Ｕ字状であることが好ましい。すなわち、ガイドレール４は、帯状の底壁４ａと該底壁４ａの両側部から垂直に立設された一対の側壁４ｂ，４ｂとからなり、軸方向に直交する面で切断した断面は略Ｕ字状をなしている。
＜軸受＞
軸受５は、軸方向に並んだ３個以上（本実施形態においては４個）の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄより構成される。そして、各軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄはほぼ同形状である。軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄの形状は、ガイドレール４に係合する形状であれば特に限定されるものではないが、ガイドレール４が上記のような断面略Ｕ字状である場合は、ガイドレール４を内包できるような矩形筒状の部材である。
すなわち、各軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄは、ガイドレール４の底壁４ａに対向する底板５ａと、ガイドレール４の側壁４ｂ，４ｂの側面にそれぞれ対向する側板５ｂ，５ｂと、ガイドレール４の側壁４ｂ，４ｂの平面にそれぞれ対向する頂板５ｃと、が連結してなる矩形筒状の部材である。このように、軸受５は、ガイドレール４を内包するようにして、ガイドレール４に係合されている。
【００１７】
［軸受部材］
４個の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄのうち、軸方向中央の軸受部材５Ｂ，５Ｃは、第１の連結部材７によって無端ベルト３を連結されるベルト接続用軸受部材である。すなわち、軸受部材５Ｂ，５Ｃには、搭載物は搭載されない。なお、ベルト接続用軸受部材は１個以上であればよく、本実施形態においては２個の軸受部材５Ｂ、５Ｃをベルト接続用軸受部材として採用したが、これらが一体とされてもよい。
【００１８】
一方、軸方向両端の軸受部材５Ａ，５Ｄは、搭載物を搭載するための搭載物用軸受部材である。これら軸受部材５Ａ，５Ｄは、軸受部材５Ｂ，５Ｃを軸方向に挟むように配置されるため、２個以上設けられる。そして、これら軸方向両端の軸受部材５Ａ，５Ｄは、無端ベルト３とは直接的には接続されていない。搭載物Ｏは、搭載物用軸受部材（本実施例においては軸受部材５Ａ，５Ｄ）のみを相互に連結する第２の連結部材８に搭載される。また、第２の連結部材８に搭載物Ｏを搭載したことにより、軸受５の質量バランスが崩れる場合には、搭載物のモーメントを相殺するバランスウェイトＢＷを搭載するとよい。図５の例では、軸受５の左側面に搭載物Ｏを搭載したので、右側面にバランスウェイトＢＷを搭載している。
また、搭載物用軸受部材５Ａ，５Ｄは、軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能である第３の連結部材９によってベルト接続用軸受部材５Ｂ,５Ｃにそれぞれ連結される。
【００１９】
＜連結部材＞
以下、上記各連結部材について説明する。
［第１の連結部材］
第１の連結部材７は、無端ベルト３と軸受５（ベルト接続用軸受部材５Ｂ，５Ｃ）とを連結する部材である。すなわち、第１の連結部材７を介して、無端ベルト３の一部分が軸受部材５Ｂ，５Ｃに固定されている。より詳細に説明すると、第１の連結部材７は、例えば、平板を中央部７ａが両端部７ｂ，７ｂよりも一段高くなるように曲げ加工された金属製の板ばねである。そして、この板ばね形状の第１の連結部材７を、折曲方向を軸方向と略平行にして、中央部７ａを軸受部材５Ｂ，５Ｃの頂板５ｃの内面に、例えばボルト１５の慣用の固着手段により取り付けると共に、両端部７ｂ，７ｂもボルト、接着等の慣用の固着手段により無端ベルト３に固定されている。すなわち、無端ベルト３と第１の連結部材７との連結位置は、ガイドレール４の側壁４ｂ，４ｂの上端よりも低い位置に、すなわちガイドレール４の凹部内に配されている。このように、無端ベルト３と第１の連結部材７との連結位置を、軸受５の重心位置と一致させることにより、無端ベルト３により軸受５が駆動されるときに、軸受５に無用なモーメントが発生することが抑制される。
また、第１の連結部材７は、軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能に設けられることが好ましい。
【００２０】
［第２の連結部材］
第２の連結部材８は、図３に示すように、搭載物用軸受部材５Ａ,５Ｄを相互に連結する部材である。
また、第２の連結部材８は、軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能に設けられることが好ましい。さらに、第２の連結部材８の形状としては、例えば、搭載物用軸受部材５Ａ,５Ｄのそれぞれの側板５ｂ，５ｂ同士を連結する金属製の平板状をなすことが好ましい。
【００２１】
［第３の連結部材］
第３の連結部材９は、ベルト接続用軸受部材５Ｂ,５Ｃと、搭載物用軸受部材５Ａ，５Ｄとを軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能に連結する部材である。
このような第３の連結部材９による連結の態様としては、例えば、搭載物用軸受部材５Ａの底板５ａとベルト接続用軸受部材５Ｂの底板５ａとが連結されると共に、搭載物用軸受部材５Ｄの底板５ａとベルト接続用軸受部材５Ｃの底板５ａとが連結される。
また、この第３の連結部材９によるベルト接続用軸受部材５Ｂ,５Ｃと搭載物用軸受部材５Ａ,５Ｄとの連結は、前記軸受の重心位置において連結されていることが好ましい。
【００２２】
さらに、第３の連結部材９の形状としては、金属製の平板状をなすことが好ましい。
ここで、第３の連結部材９が平板状の部材である場合は、撓む方向によって振動を緩衝する特性が異なり、振動が緩衝されやすい方向とされにくい方向とがある。アクチュエータを実際に使用する場合においては、ローリング方向の振動が最も問題となるので、ヨーイング方向には変形が若干生じにくいものの、ローリング方向及びピッチング方向に変形可能なように、平板状の第３の連結部材９が取り付けられている。その結果、ローリング方向及びピッチング方向の振動が十分に抑制されるようになっている。
【００２３】
このように、無端ベルト３の軽量、且つ、無端ベルト３の蛇行等から生じうるミスアライメントや微振動は、第３の連結部材９によって緩衝され、軸受の高速移動及び急激な加速又は減速に耐えられるという効果を奏する。
このように、本実施形態のアクチュエータは、軸受５を構成する３個以上の軸受部材が、１個以上のベルト接続用軸受部材とその両側に配置される２個以上の搭載物用軸受部材とにより機能分離され、上述したように第１〜第３の連結手段により連結されている。そして、少なくとも第３の連結部材は軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能である。このような構成によって、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、軸受に搭載された搭載物に微振動が伝達しにくいアクチュエータを提供することができる。
【００２４】
［噴出口］
ここで、各軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄの底板５ａと、側板５ｂ，５ｂと、頂板５ｃのガイドレール４に対向する各内面には、気体を噴出する噴出口が設置されている。すなわち、軸受５とガイドレール４との間に気体軸受が形成されている。気体の種類は特に限定されるものではないが、空気が好ましい。また、本実施形態とは逆に、ガイドレール４の外面に気体を噴出する噴出口を設置してもよい。本実施形態においては、図５に示すように、グラファイト多孔質で形成された板状の静圧パッドＳＰが、噴出口として配置されている。
【００２５】
静圧パッドＳＰには、図示しない空気源から圧縮空気が供給されるため、静圧パッドＳＰからガイドレール４の外面に向かって噴出された空気の圧力によって、ガイドレール４に対し軸受５がわずかに離隔するようになる。そのため、軸受５は殆ど摩擦なく移動できるようになっている。なお、気体軸受を設ける代わりに、軸受５とガイドレール４との間にすべり軸受や転がり軸受を設けてもよい。
【００２６】
（アクチュエータの動作）
次に、本実施形態のアクチュエータの動作について説明する。
まず、図示しない空気源から各静圧パッドＳＰに供給された圧縮空気によって、ガイドレール４に対し軸受５がわずかに離隔した状態に維持される。
ここで、モータ１０が駆動プーリ１を駆動すると、無端ベルト３を介して、ガイドレール４に沿って軸受５が殆ど摩擦なく移動される。そして、駆動プーリ１の駆動を制御することにより、ガイドレール４の両端間で軸受５を往復直線運動させることができる。
【００２７】
さらに、本実施形態においては、軸受部材５Ａ，５Ｄを介して搭載物Ｏを搭載する第２の連結部材８と無端ベルト３に連結された軸受部材５Ｂ，５Ｃとが別体であるが、従来品は一体であり、搭載物Ｏを搭載した軸受に無端ベルトを接続し駆動力を伝達している。よって、従来品においては、無端ベルトからの振動が搭載物に伝わり、搭載物に悪影響が出るおそれがあった。しかしながら、本実施形態においては、軸受部材５Ａ，５Ｄを介して搭載物Ｏを搭載する第２の連結部材８と無端ベルト３に連結された軸受部材５Ｂ，５Ｃとが別体であり、これらを連結する第３の連結部材９により、無端ベルト３からの振動が緩衝されるので、無端ベルト３からの振動が搭載物に伝わりにくい。
【００２８】
詳述すると、無端ベルト３からの振動は軸受部材５Ｂ，５Ｃに伝わるが、第３の連結部材９は平板状の部材であり、軸方向には弾性変形せず、軸方向以外の方向には弾性変形可能であるという性質を有しているので、伝達された振動によって第３の連結部材９が軸方向に弾性変形することはなく、軸方向以外の方向（径方向）には撓む（弾性変形する）こととなる。厳密に言えば、第３の連結部材９は軸方向に僅かに伸縮するが、径方向の撓みと比較すると無視できるレベルの変形量であるので、実質的には軸方向に変形することは無いと言える。
【００２９】
よって、無端ベルト３からの振動のうち軸方向の振動は第３の連結部材９を介して軸受部材５Ａ，５Ｄに若干伝わるものの、軸方向以外の方向の振動は第３の連結部材９の変形によって緩衝され、軸受部材５Ａ，５Ｄにはほとんど伝わらない。その結果、軸受５が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、移動中の軸受５の微振動は抑制され、高い真直性が得られる。また、軸受５に搭載された搭載物Ｏに微振動が伝達しにくいので、無端ベルト３からの振動により搭載物Ｏに悪影響が出るおそれがほとんどない。そして、第３の連結部材８は平板状の部材であるため、径方向であればどの方向に撓む場合でも、振動を緩衝する特性は同一であり、撓む方向によって振動の緩衝されやすさが異なるということがない。
【００３０】
さらに、ガイドレール４は断面略Ｕ字状であり、したがって側壁４ｂ，４ｂと底壁４ａの外表面は平面からなるので、加工精度（特に真直精度）を向上させ易いという利点がある。
このようなアクチュエータは、製造装置，検査装置，搬送装置等において好適に使用可能であり、特に、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される条件で直線案内軸受装置が運転されても、軸受の高精度な直線移動が求められる各種装置に対して好適である。
【００３１】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。例えば、本実施形態においては、軸受５は４個の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ、５Ｄが連結されてなるものであったが、軸受部材の個数は３個以上であれば特に限定されるものではない。
また、４個の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ、４Ｄのうち、２個がベルト接続用軸受部材であり、２個が搭載物用軸受部材であったが、ベルト接続用軸受部材が１個以上であり、搭載物用軸受部材が軸方向にベルト接続用軸受部材を挟む態様で配置される２個以上の軸受部材であれば、これらの個数は特に限定されるものではない。さらに、４個の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄのうち、軸方向中央の軸受部材５Ｂ，５Ｃをベルト接続用軸受部材としたが、軸方向中央以外の軸受部材５Ａ，５Ｄをベルト接続用軸受部材とし、かつ軸方向中央の軸受部材５Ｂ，５Ｃを搭載物用軸受部材としてもよい。すなわち、３個以上の軸受部材がベルト接続用軸受部材及び搭載物用軸受部材に機能分離されていれば各軸受部材の軸方向位置は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【００３２】
１ 駆動プーリ
２ 従動プーリ
３ 無端ベルト
４ ガイドレール
５ 軸受
５Ｂ，５Ｃ ベルト接続用軸受部材（軸受部材）
５Ａ，５Ｄ 搭載物用軸受部材（軸受部材）
７ 第１の連結部材（ベルト連結用板ばね）
８ 第２の連結部材（軸受連結用板ばね）
９ 第３の連結部材（連結板）
１０ モータ
【技術分野】
【０００１】
本発明はアクチュエータに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、製造装置には、ワークを移動させるために直線案内軸受装置が備えられており、このような直線案内軸受装置に好適に用いられるアクチュエータが、特許文献１，２に開示されている。
特許文献１，２に開示のアクチュエータは、駆動装置により回転駆動される駆動プーリと、回転自在に支持された従動プーリと、駆動プーリと従動プーリとの間に掛け渡された無端ベルトと、ワーク等の搭載物を搭載して直線移動する軸受と、軸受の直線移動を案内するガイドレールと、軸受のカウンタウェイトとして機能するカウンタ軸受と、カウンタ軸受の直線移動を案内するカウンタガイドレールと、を備えている。軸受及びカウンタ軸受は無端ベルトに接続されているが、カウンタ軸受は、軸受が取り付けられた側とは前記両プーリを挟んで反対側に接続されている。
【０００３】
このようなアクチュエータにおいては、軸受とカウンタ軸受とを逆方向に移動させることにより、加速時，減速時などに生じる軸受の反力が抑制されるので、それにより振動の抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００８−１０１６４２号公報
【特許文献２】特開２００１−２４８７０３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、上記のような従来のアクチュエータは、前記のような振動抑制が図られていても、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合には、微振動が発生するおそれがあった。そのため、直線移動する軸受の運動精度が若干低下する場合があった。
通常の用途であれば、運動精度が若干低下しても大きな悪影響が生じない場合が多いが、高精度用途のアクチュエータの場合は、無端ベルトを介して軸受に伝わる微振動が搭載物に悪影響を及ぼすおそれがあった。そのため、振動抑制のさらなる向上が求められていた。
【０００６】
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、軸受に搭載された搭載物に微振動が伝達しにくいアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記課題を解決するための請求項１に係る発明は、駆動装置により回転駆動される駆動プーリと、
回転自在に支持された従動プーリと、
前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に掛け渡され前記駆動プーリの回転に伴って回転する無端ベルトと、
軸方向に延びるガイドレールと、
前記無端ベルトに接続され且つ前記無端ベルトの回転に伴って前記ガイドレールに沿って前記軸方向に直線移動する軸受とを備え、前記軸受に搭載物を搭載して直線移動させるアクチュエータにおいて、
前記軸受は、前記軸方向に並んだ３個以上の軸受部材を有してなり、
該軸受部材は、第１の連結部材によって前記無端ベルトに連結される１個以上のベルト接続用軸受部材と、
該ベルト接続用軸受部材を前記軸方向に挟むように２個以上配置されると共に第２の連結部材によって相互に連結され、前記軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能である第３の連結部材によって前記ベルト接続用軸受部材に連結され、前記第２の連結部材に前記搭載物を搭載する搭載物用軸受部材とを有することを特徴としている。
【０００８】
このような構成であれば、無端ベルトからの微振動は、ベルト接続用軸受部材には伝わるが、搭載物用軸受部材に直接伝わることはない。ベルト接続用軸受部材に伝わった微振動は、連結部材を介して搭載物用軸受部材に伝わるが、前記のように変形可能な連結部材の変形によって微振動が緩衝されるので、搭載物用軸受部材に伝わる微振動は大幅に抑制される。よって、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、無端ベルトから搭載物に伝わる微振動は僅かであり、したがって軸受に搭載された搭載物に微振動が悪影響を及ぼすおそれはほとんどない。
【０００９】
また、請求項２に係る発明は、請求項１に記載のアクチュエータにおいて、第１の連結部材及び第２の連結部材の少なくともいずれか一方が前記軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能であることを特徴としている。
また、請求項３に係る発明は、請求項１又は２に記載のアクチュエータにおいて、第１の連結部材が、平板を曲げ加工した板ばねであることを特徴としている。
また、請求項４に係る発明は、請求項１〜３のいずれかに記載のアクチュエータにおいて、第２の連結部材及び第３の連結部材の少なくともいずれか一方が平板状をなすことを特徴としている。
また、請求項５に係る発明は、請求項１〜４のいずれかに記載のアクチュエータにおいて、前記ベルト接続用軸受部材と前記搭載物用軸受部材とが、前記軸受の重心位置において連結されていることを特徴としている。
【００１０】
このような構成であれば、加減速時に無端ベルトの駆動力により軸受に無用なモーメントが発生することが抑制されるので、軸受の振動がより一層抑制される。なお、軸受に搭載物が搭載されている場合は、搭載物が搭載された軸受の重心位置（すなわち、軸受と搭載物とを組み合わせたものの重心位置）を、「軸受の重心位置」というものとする。
また、請求項６に係る発明は、請求項１〜５のいずれかに記載のアクチュエータにおいて、前記ガイドレールの形状は断面略Ｕ字状であり、前記ガイドレールの凹部内に前記無端ベルトの少なくとも一部が配されていることを特徴としている。
このような構成であれば、ガイドレールの凹部と搭載物とが対向しないようにして、無端ベルトから発生する塵埃が搭載物に付着することを抑制することができる。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、軸受に搭載された搭載物に微振動が伝達しにくいアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明に係るアクチュエータの一実施形態における構成を示す平面図である。
【図２】本発明に係るアクチュエータの一実施形態における構成を示す側面図である。
【図３】本発明に係るアクチュエータの一実施形態における軸受の構成を示す平面図である。
【図４】本発明に係るアクチュエータの一実施形態における軸受の構成を示す軸方向に沿う断面図である。
【図５】図３を軸方向から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１３】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図１は、本発明に係るアクチュエータの一実施形態における構成を示す平面図である。また、図２は、本発明に係るアクチュエータの一実施形態における構成を示す側面図である。また、図３は、本発明に係るアクチュエータの一実施形態における軸受の構成を示す平面図である。また、図４は、本発明に係るアクチュエータの一実施形態における軸受の構成を示す軸方向に沿う断面図である。また、図５は、図３を軸方向からみた正面図である。
【００１４】
（アクチュエータの構成）
図１及び図２に示すように、本実施形態のアクチュエータは、モータ１０により回転駆動される駆動プーリ１と、回転自在に支持された従動プーリ２と、駆動プーリ１と従動プーリ２との間に掛け渡された環状の無端ベルト３と、軸方向に延びるガイドレール４と、無端ベルト３の回転に伴ってガイドレール４に沿って軸方向に直線移動する軸受５とを備えている。
ここで、ガイドレール４の一方の端部には、モータ１０が取り付けられている。このモータ１０の回転軸１０ａは、水平且つガイドレール４の軸線（軸方向）に直交する方向に延びており、その先端には駆動プーリ１が取り付けられている。さらに、ガイドレール４の他方の端部には、従動プーリ２を回転自在に支持するプーリハウジング１１が取り付けられている。
【００１５】
そして、駆動プーリ１と従動プーリ２との間には、ガイドレール４に沿う方向（軸方向）に無端ベルト３が掛け渡されている。無端ベルト３の表面（内側面）には、周方向に沿って並ぶ複数の歯（図示せず）が形成されており、駆動プーリ１及び従動プーリ２の外周面に形成された歯（図示せず）と噛み合わされている。そのため、無端ベルト３は、駆動プーリ１の回転により回転駆動されるようになっている。
また、軸受５はその一部が無端ベルト３に接続されているとともに、ガイドレール４に係合されているので、無端ベルト３の回転に伴って軸受５はガイドレール４に案内されて軸方向に直線移動可能となっている。
【００１６】
＜ガイドレール＞
ガイドレール４の形状は特に限定されるものではないが、図５に示すように、略Ｕ字状であることが好ましい。すなわち、ガイドレール４は、帯状の底壁４ａと該底壁４ａの両側部から垂直に立設された一対の側壁４ｂ，４ｂとからなり、軸方向に直交する面で切断した断面は略Ｕ字状をなしている。
＜軸受＞
軸受５は、軸方向に並んだ３個以上（本実施形態においては４個）の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄより構成される。そして、各軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄはほぼ同形状である。軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄの形状は、ガイドレール４に係合する形状であれば特に限定されるものではないが、ガイドレール４が上記のような断面略Ｕ字状である場合は、ガイドレール４を内包できるような矩形筒状の部材である。
すなわち、各軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄは、ガイドレール４の底壁４ａに対向する底板５ａと、ガイドレール４の側壁４ｂ，４ｂの側面にそれぞれ対向する側板５ｂ，５ｂと、ガイドレール４の側壁４ｂ，４ｂの平面にそれぞれ対向する頂板５ｃと、が連結してなる矩形筒状の部材である。このように、軸受５は、ガイドレール４を内包するようにして、ガイドレール４に係合されている。
【００１７】
［軸受部材］
４個の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄのうち、軸方向中央の軸受部材５Ｂ，５Ｃは、第１の連結部材７によって無端ベルト３を連結されるベルト接続用軸受部材である。すなわち、軸受部材５Ｂ，５Ｃには、搭載物は搭載されない。なお、ベルト接続用軸受部材は１個以上であればよく、本実施形態においては２個の軸受部材５Ｂ、５Ｃをベルト接続用軸受部材として採用したが、これらが一体とされてもよい。
【００１８】
一方、軸方向両端の軸受部材５Ａ，５Ｄは、搭載物を搭載するための搭載物用軸受部材である。これら軸受部材５Ａ，５Ｄは、軸受部材５Ｂ，５Ｃを軸方向に挟むように配置されるため、２個以上設けられる。そして、これら軸方向両端の軸受部材５Ａ，５Ｄは、無端ベルト３とは直接的には接続されていない。搭載物Ｏは、搭載物用軸受部材（本実施例においては軸受部材５Ａ，５Ｄ）のみを相互に連結する第２の連結部材８に搭載される。また、第２の連結部材８に搭載物Ｏを搭載したことにより、軸受５の質量バランスが崩れる場合には、搭載物のモーメントを相殺するバランスウェイトＢＷを搭載するとよい。図５の例では、軸受５の左側面に搭載物Ｏを搭載したので、右側面にバランスウェイトＢＷを搭載している。
また、搭載物用軸受部材５Ａ，５Ｄは、軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能である第３の連結部材９によってベルト接続用軸受部材５Ｂ,５Ｃにそれぞれ連結される。
【００１９】
＜連結部材＞
以下、上記各連結部材について説明する。
［第１の連結部材］
第１の連結部材７は、無端ベルト３と軸受５（ベルト接続用軸受部材５Ｂ，５Ｃ）とを連結する部材である。すなわち、第１の連結部材７を介して、無端ベルト３の一部分が軸受部材５Ｂ，５Ｃに固定されている。より詳細に説明すると、第１の連結部材７は、例えば、平板を中央部７ａが両端部７ｂ，７ｂよりも一段高くなるように曲げ加工された金属製の板ばねである。そして、この板ばね形状の第１の連結部材７を、折曲方向を軸方向と略平行にして、中央部７ａを軸受部材５Ｂ，５Ｃの頂板５ｃの内面に、例えばボルト１５の慣用の固着手段により取り付けると共に、両端部７ｂ，７ｂもボルト、接着等の慣用の固着手段により無端ベルト３に固定されている。すなわち、無端ベルト３と第１の連結部材７との連結位置は、ガイドレール４の側壁４ｂ，４ｂの上端よりも低い位置に、すなわちガイドレール４の凹部内に配されている。このように、無端ベルト３と第１の連結部材７との連結位置を、軸受５の重心位置と一致させることにより、無端ベルト３により軸受５が駆動されるときに、軸受５に無用なモーメントが発生することが抑制される。
また、第１の連結部材７は、軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能に設けられることが好ましい。
【００２０】
［第２の連結部材］
第２の連結部材８は、図３に示すように、搭載物用軸受部材５Ａ,５Ｄを相互に連結する部材である。
また、第２の連結部材８は、軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能に設けられることが好ましい。さらに、第２の連結部材８の形状としては、例えば、搭載物用軸受部材５Ａ,５Ｄのそれぞれの側板５ｂ，５ｂ同士を連結する金属製の平板状をなすことが好ましい。
【００２１】
［第３の連結部材］
第３の連結部材９は、ベルト接続用軸受部材５Ｂ,５Ｃと、搭載物用軸受部材５Ａ，５Ｄとを軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能に連結する部材である。
このような第３の連結部材９による連結の態様としては、例えば、搭載物用軸受部材５Ａの底板５ａとベルト接続用軸受部材５Ｂの底板５ａとが連結されると共に、搭載物用軸受部材５Ｄの底板５ａとベルト接続用軸受部材５Ｃの底板５ａとが連結される。
また、この第３の連結部材９によるベルト接続用軸受部材５Ｂ,５Ｃと搭載物用軸受部材５Ａ,５Ｄとの連結は、前記軸受の重心位置において連結されていることが好ましい。
【００２２】
さらに、第３の連結部材９の形状としては、金属製の平板状をなすことが好ましい。
ここで、第３の連結部材９が平板状の部材である場合は、撓む方向によって振動を緩衝する特性が異なり、振動が緩衝されやすい方向とされにくい方向とがある。アクチュエータを実際に使用する場合においては、ローリング方向の振動が最も問題となるので、ヨーイング方向には変形が若干生じにくいものの、ローリング方向及びピッチング方向に変形可能なように、平板状の第３の連結部材９が取り付けられている。その結果、ローリング方向及びピッチング方向の振動が十分に抑制されるようになっている。
【００２３】
このように、無端ベルト３の軽量、且つ、無端ベルト３の蛇行等から生じうるミスアライメントや微振動は、第３の連結部材９によって緩衝され、軸受の高速移動及び急激な加速又は減速に耐えられるという効果を奏する。
このように、本実施形態のアクチュエータは、軸受５を構成する３個以上の軸受部材が、１個以上のベルト接続用軸受部材とその両側に配置される２個以上の搭載物用軸受部材とにより機能分離され、上述したように第１〜第３の連結手段により連結されている。そして、少なくとも第３の連結部材は軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能である。このような構成によって、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、軸受に搭載された搭載物に微振動が伝達しにくいアクチュエータを提供することができる。
【００２４】
［噴出口］
ここで、各軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄの底板５ａと、側板５ｂ，５ｂと、頂板５ｃのガイドレール４に対向する各内面には、気体を噴出する噴出口が設置されている。すなわち、軸受５とガイドレール４との間に気体軸受が形成されている。気体の種類は特に限定されるものではないが、空気が好ましい。また、本実施形態とは逆に、ガイドレール４の外面に気体を噴出する噴出口を設置してもよい。本実施形態においては、図５に示すように、グラファイト多孔質で形成された板状の静圧パッドＳＰが、噴出口として配置されている。
【００２５】
静圧パッドＳＰには、図示しない空気源から圧縮空気が供給されるため、静圧パッドＳＰからガイドレール４の外面に向かって噴出された空気の圧力によって、ガイドレール４に対し軸受５がわずかに離隔するようになる。そのため、軸受５は殆ど摩擦なく移動できるようになっている。なお、気体軸受を設ける代わりに、軸受５とガイドレール４との間にすべり軸受や転がり軸受を設けてもよい。
【００２６】
（アクチュエータの動作）
次に、本実施形態のアクチュエータの動作について説明する。
まず、図示しない空気源から各静圧パッドＳＰに供給された圧縮空気によって、ガイドレール４に対し軸受５がわずかに離隔した状態に維持される。
ここで、モータ１０が駆動プーリ１を駆動すると、無端ベルト３を介して、ガイドレール４に沿って軸受５が殆ど摩擦なく移動される。そして、駆動プーリ１の駆動を制御することにより、ガイドレール４の両端間で軸受５を往復直線運動させることができる。
【００２７】
さらに、本実施形態においては、軸受部材５Ａ，５Ｄを介して搭載物Ｏを搭載する第２の連結部材８と無端ベルト３に連結された軸受部材５Ｂ，５Ｃとが別体であるが、従来品は一体であり、搭載物Ｏを搭載した軸受に無端ベルトを接続し駆動力を伝達している。よって、従来品においては、無端ベルトからの振動が搭載物に伝わり、搭載物に悪影響が出るおそれがあった。しかしながら、本実施形態においては、軸受部材５Ａ，５Ｄを介して搭載物Ｏを搭載する第２の連結部材８と無端ベルト３に連結された軸受部材５Ｂ，５Ｃとが別体であり、これらを連結する第３の連結部材９により、無端ベルト３からの振動が緩衝されるので、無端ベルト３からの振動が搭載物に伝わりにくい。
【００２８】
詳述すると、無端ベルト３からの振動は軸受部材５Ｂ，５Ｃに伝わるが、第３の連結部材９は平板状の部材であり、軸方向には弾性変形せず、軸方向以外の方向には弾性変形可能であるという性質を有しているので、伝達された振動によって第３の連結部材９が軸方向に弾性変形することはなく、軸方向以外の方向（径方向）には撓む（弾性変形する）こととなる。厳密に言えば、第３の連結部材９は軸方向に僅かに伸縮するが、径方向の撓みと比較すると無視できるレベルの変形量であるので、実質的には軸方向に変形することは無いと言える。
【００２９】
よって、無端ベルト３からの振動のうち軸方向の振動は第３の連結部材９を介して軸受部材５Ａ，５Ｄに若干伝わるものの、軸方向以外の方向の振動は第３の連結部材９の変形によって緩衝され、軸受部材５Ａ，５Ｄにはほとんど伝わらない。その結果、軸受５が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される場合でも、移動中の軸受５の微振動は抑制され、高い真直性が得られる。また、軸受５に搭載された搭載物Ｏに微振動が伝達しにくいので、無端ベルト３からの振動により搭載物Ｏに悪影響が出るおそれがほとんどない。そして、第３の連結部材８は平板状の部材であるため、径方向であればどの方向に撓む場合でも、振動を緩衝する特性は同一であり、撓む方向によって振動の緩衝されやすさが異なるということがない。
【００３０】
さらに、ガイドレール４は断面略Ｕ字状であり、したがって側壁４ｂ，４ｂと底壁４ａの外表面は平面からなるので、加工精度（特に真直精度）を向上させ易いという利点がある。
このようなアクチュエータは、製造装置，検査装置，搬送装置等において好適に使用可能であり、特に、軸受が高速で移動し且つ急激に加速又は減速される条件で直線案内軸受装置が運転されても、軸受の高精度な直線移動が求められる各種装置に対して好適である。
【００３１】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。例えば、本実施形態においては、軸受５は４個の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ、５Ｄが連結されてなるものであったが、軸受部材の個数は３個以上であれば特に限定されるものではない。
また、４個の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ、４Ｄのうち、２個がベルト接続用軸受部材であり、２個が搭載物用軸受部材であったが、ベルト接続用軸受部材が１個以上であり、搭載物用軸受部材が軸方向にベルト接続用軸受部材を挟む態様で配置される２個以上の軸受部材であれば、これらの個数は特に限定されるものではない。さらに、４個の軸受部材５Ａ，５Ｂ，５Ｃ，５Ｄのうち、軸方向中央の軸受部材５Ｂ，５Ｃをベルト接続用軸受部材としたが、軸方向中央以外の軸受部材５Ａ，５Ｄをベルト接続用軸受部材とし、かつ軸方向中央の軸受部材５Ｂ，５Ｃを搭載物用軸受部材としてもよい。すなわち、３個以上の軸受部材がベルト接続用軸受部材及び搭載物用軸受部材に機能分離されていれば各軸受部材の軸方向位置は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【００３２】
１ 駆動プーリ
２ 従動プーリ
３ 無端ベルト
４ ガイドレール
５ 軸受
５Ｂ，５Ｃ ベルト接続用軸受部材（軸受部材）
５Ａ，５Ｄ 搭載物用軸受部材（軸受部材）
７ 第１の連結部材（ベルト連結用板ばね）
８ 第２の連結部材（軸受連結用板ばね）
９ 第３の連結部材（連結板）
１０ モータ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
駆動装置により回転駆動される駆動プーリと、
回転自在に支持された従動プーリと、
前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に掛け渡され前記駆動プーリの回転に伴って回転する無端ベルトと、
軸方向に延びるガイドレールと、
前記無端ベルトに接続され且つ前記無端ベルトの回転に伴って前記ガイドレールに沿って前記軸方向に直線移動する軸受と、を備え、前記軸受に搭載物を搭載して直線移動させるアクチュエータにおいて、
前記軸受は、前記軸方向に並んだ３個以上の軸受部材を有してなり、
該軸受部材は、第１の連結部材によって前記無端ベルトに連結される１個以上のベルト接続用軸受部材と、
該ベルト接続用軸受部材を前記軸方向に挟むように２個以上配置されると共に第２の連結部材によって相互に連結され、前記軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能である第３の連結部材によって前記ベルト接続用軸受部材に連結され、前記第２の連結部材に前記搭載物を搭載する搭載物用軸受部材とを有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項２】
第１の連結部材及び第２の連結部材の少なくともいずれか一方が前記軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能であることを特徴とする請求項１に記載のアクチュエータ。
【請求項３】
第１の連結部材が、平板を曲げ加工した板ばねであることを特徴とする請求項１又は２に記載のアクチュエータ。
【請求項４】
第２の連結部材及び第３の連結部材の少なくともいずれか一方が平板状をなすことを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項５】
前記ベルト接続用軸受部材と前記搭載物用軸受部材とが、前記軸受の重心位置において連結されていることを特徴とする請求項１〜４のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項６】
前記ガイドレールの形状は断面略Ｕ字状であり、前記ガイドレールの凹部内に前記無端ベルトの少なくとも一部が配されていることを特徴とする請求項１〜５のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項１】
駆動装置により回転駆動される駆動プーリと、
回転自在に支持された従動プーリと、
前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に掛け渡され前記駆動プーリの回転に伴って回転する無端ベルトと、
軸方向に延びるガイドレールと、
前記無端ベルトに接続され且つ前記無端ベルトの回転に伴って前記ガイドレールに沿って前記軸方向に直線移動する軸受と、を備え、前記軸受に搭載物を搭載して直線移動させるアクチュエータにおいて、
前記軸受は、前記軸方向に並んだ３個以上の軸受部材を有してなり、
該軸受部材は、第１の連結部材によって前記無端ベルトに連結される１個以上のベルト接続用軸受部材と、
該ベルト接続用軸受部材を前記軸方向に挟むように２個以上配置されると共に第２の連結部材によって相互に連結され、前記軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能である第３の連結部材によって前記ベルト接続用軸受部材に連結され、前記第２の連結部材に前記搭載物を搭載する搭載物用軸受部材とを有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項２】
第１の連結部材及び第２の連結部材の少なくともいずれか一方が前記軸方向以外の方向にのみ弾性変形可能であることを特徴とする請求項１に記載のアクチュエータ。
【請求項３】
第１の連結部材が、平板を曲げ加工した板ばねであることを特徴とする請求項１又は２に記載のアクチュエータ。
【請求項４】
第２の連結部材及び第３の連結部材の少なくともいずれか一方が平板状をなすことを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項５】
前記ベルト接続用軸受部材と前記搭載物用軸受部材とが、前記軸受の重心位置において連結されていることを特徴とする請求項１〜４のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項６】
前記ガイドレールの形状は断面略Ｕ字状であり、前記ガイドレールの凹部内に前記無端ベルトの少なくとも一部が配されていることを特徴とする請求項１〜５のいずれかに記載のアクチュエータ。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１３−９２２１４（Ｐ２０１３−９２２１４Ａ）
【公開日】平成２５年５月１６日（２０１３．５．１６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−２３５２５５（Ｐ２０１１−２３５２５５）
【出願日】平成２３年１０月２６日（２０１１．１０．２６）
【出願人】（０００００４２０４）日本精工株式会社 (8,378)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年５月１６日（２０１３．５．１６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年１０月２６日（２０１１．１０．２６）
【出願人】（０００００４２０４）日本精工株式会社 (8,378)
【Ｆターム（参考）】
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