説明

アクリジン誘導体及びこれを含む有機電界発光素子

本発明は、アクリジン誘導体及びこれを含む有機電界発光素子に関し、より具体的には、アリールのモイエティまたはヘテロアリールのモイエティに、アクリジンのモイエティとアミンのモイエティが結合されているアクリジン誘導体化合物、及びアクリジン誘導体化合物を含むことで、低駆動電圧と高効率を示し、寿命が向上する有機電界発光素子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリジン誘導体及びこれを含む有機電界発光素子に関し、より具体的には、アリールのモイエティまたはヘテロアリールのモイエティに、アクリジンのモイエティとアミンのモイエティが結合されているアクリジン誘導体化合物、及び前記アクリジン誘導体化合物を含むことにより、低駆動電圧と高効率を示し、寿命が向上する有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機電界発光現象とは、有機物質を用いて電気エネルギーから光エネルギーへ変換させることをいう。有機電界発光現象を用いた有機電界発光素子は、通常、アノードとカソード、及びこれらの間に有機物層を含む構造を有する。なお、有機物層は、有機発光素子の効率と安定性を高めるため、それぞれ異なる物質で構成される多層の構造を有するものが多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含むことができる。
【0003】
このような有機電界発光素子の構造においては、両電極の間に電圧をかけると、アノードからは正孔が注入され、カソードからは電子が有機物層に注入される。注入された正孔が電子と出会ってエキシトンが生成し、このエキシトンが基底状態に戻る時に発光するようになる。
【0004】
有機電界発光素子において有機物層として使用される材料は、機能によって、発光物質、正孔注入物質、正孔輸送物質、電子輸送物質、電子注入物質とに分類することができる。
【0005】
発光物質は、発光色によって、青色、緑色、赤色の発光物質と、より良い天然色を発現するために必要な黄色及びオレンジ色の発光物質とに区分される。また、色純度の増大とエネルギー転移を通じた発光効率の増大を図るため、発光物質としてホスト/ドーパント系のものを使用することができる。その原理は、発光層を主に構成するホストに比べてエネルギーバンドの間隙が小さく且つ発光効率に優れたドーパントを発光層に少量混合すると、ホストからのエキシトンがドーパントに輸送され、効率の高い光を発するようになる。このとき、ホストの波長帯がドーパントの波長帯に移動するため、使用するドーパントの種類に応じて希望の波長帯の光を得ることができる。
【0006】
電子輸送物質としては、電子に対する安定度及び電子移動速度が相対的に優れた有機金属錯体が、有機単分子物質の好適な候補として挙げられ、特に安定性に優れかつ電子親和力の大きなAlq3が最適なものであると報告され、現在最も多く使用されている。また、従来公知の電子輸送物質としては、三洋社が発表したフラボン(flavon)誘導体またはチッソ社製のゲルマ及びシリコーンシクロペンタジエン誘導体などが知られている(例えば特許文献1または2参照)。
【0007】
また、従来の電子注入物質及び電子輸送物質としては、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基を有する有機単分子物質が多く知られている。しかし、このような物質の電子輸送用材料としての使用が報告される前に、このような物質の金属錯体化合物が有機電界発光素子の青色発光層または青緑色発光層に適用して使用したことがあると報告されている。
【0008】
前述した有機電界発光素子の優れた特徴を十分に発揮させるためには、正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などの素子内の有機物層を構成する材料が、安定的かつ効率的である必要がある。しかし、このような安定的且つ効率的な有機電界発光素子用の有機物層材料に関する現在の研究開発はまだ不十分である。従って、新しい物質の開発が ずっと要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−17860号公報
【特許文献2】特開平11−87067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、有機電界発光素子に適用することができ、色純度、発光効率、輝度、電力効率、耐熱性などが向上した新規な有機化合物を提供するにある。本発明の他の目的は、前述した新規な有機化合物を含むことにより、低駆動電圧と高効率を示し、寿命の向上した有機電界発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の新規な有機化合物として下記の化1で示される化合物を提供する。
【0012】
【化1】

【0013】
式中、R〜Rは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、直鎖または分枝鎖のC〜C40のアルキル基、C〜C40のシクロアルキル基、C〜C40のヘテロシクロアルキル基、融合(fused)または非融合のC〜C60のアリール基、融合または非融合のC〜C60のヘテロアリール基、直鎖または分枝鎖のC〜C40のアルキルオキシ基、融合または非融合のC〜C60のアリールオキシ基、及び融合または非融合のC〜C60のアリールアミン基からなる群から選択されるものであり、
〜Rは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、直鎖または分枝鎖のC〜C40のアルキル基、C〜C40のシクロアルキル基、C〜C40のヘテロシクロアルキル基、融合または非融合のC〜C60のアリール基、及び融合または非融合のC〜C60のヘテロアリール基からなる群から選択され、隣接する基と融合した環を形成し、または形成していないものであり、
Lは、C〜C60のアリーレン基またはC〜C60のヘテロアリーレン基である。
【0014】
また、本発明は、(i)アノード、(ii)カソード及び(iii)前記アノードと前記カソードとの間に介在した1層以上の有機物層を含み、
前記1層以上の有機物層のうちの少なくとも1つは、請求項1乃至3のいずれかに記載の化1で示される化合物を含む有機物層であることを特徴とする有機電界発光素子を提供する。
【0015】
好ましくは、本発明の有機電界発光素子において、前記化1で示される化合物を含む有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層からなる群から選択される少なくとも1つであることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化1で示される化合物は、輝度、電力効率、耐熱性、正孔輸送性能及び正孔注入性能に優れ、色純度及び発光効率を増大させることができるため、有機電界発光素子の正孔注入層、正孔輸送層及び発光層のうちの少なくとも1つに適用することができる。従って、前記化1で示される化合物を含む本発明の有機電界発光素子は、低駆動電圧と高効率を示し、これにより、フルカラー有機ELパネルにおいて性能の極大化及び寿命の向上に大きな効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の化1で示される化合物は、アリールのモイエティ(moiety)またはヘテロアリールのモイエティに、アクリジンのモイエティとアミンのモイエティが結合されているアクリジン誘導体である。また、本発明の化1で示される化合物は、正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質及び電子注入物質のいずれか1つ以上の物質であって、有機電界発光素子に適用することができ、好ましくは、正孔注入物質、正孔輸送物質及び発光物質のうちの少なくとも1つとして有機電界発光素子に適用することができる。
【0018】
本発明の化1で示される化合物において、R〜Rは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、直鎖または分枝鎖のC〜C40のアルキル基、C〜C40のシクロアルキル基、C〜C40のヘテロシクロアルキル基、融合または非融合のC〜C60のアリール基、融合または非融合のC〜C60のヘテロアリール基、直鎖または分枝鎖のC〜C40のアルキルオキシ基、融合または非融合のC〜C60のアリールオキシ基、或いは、融合または非融合のC〜C60のアリールアミン基であり、また、隣接する基と融合した環を形成し、または形成していないものであることができる。
【0019】
また、前記化1において、R〜Rは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、直鎖または分枝鎖のC〜C40のアルキル基、C〜C40のシクロアルキル基、C〜C40のヘテロシクロアルキル基、融合または非融合のC〜C60のアリール基、及び融合または非融合のC〜C60のヘテロアリールであり、隣接する基と融合した環を形成し、または形成していないものであることができる。
【0020】
また、前記化1において、Lは、C〜C60のアリーレン基、またはC〜C60のヘテロアリーレン基である。例えば、前記Lは、フェニレン、ビフェニレン(biphenylene)、テルフェニレン(terphenylene)、ナフチレン(naphthylene)、アントラセニレン(anthracenylene)、フェナントリレン(phenanthrylene)、ピレニレン(pyrenylene)、フルオレニレン(fluorenylene)、フルオランテニレン(fluoranthenylene)、ペリレニレン(perylenylene)、カルバゾリレン(carbazolylene)、 N−カルバゾリフェニレン、ピリジニレン(pyridinylene)、キノリニレン(quinolinylene)及びイソキノリニレン(isoquinolinylene)からなる群から選択されるC〜C60のアリーレン基またはC〜C60のヘテロアリーレン基であることができる。
【0021】
また、前記化1におけるR〜R及びLは、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C〜C40のアルキル基、C〜C40のシクロアルキル基、C〜C40のヘテロシクロアルキル基、C〜C60のアリール基、C〜C60のヘテロアリール基、C〜C40のアルキルオキシ基、C〜C60のアリールオキシ基、及びC〜C60のアリールアミン基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換または非置換のものであることができる。
【0022】
下記の化学式(化2i〜化2xxiv)の化合物は、本発明の化1で示される化合物の例であるが、本発明の化1で示される化合物は、下記の例に限定されるものではない。
【0023】
【化2i】

【0024】
【化2ii】

【0025】
【化2iii】

【0026】
【化2iv】

【0027】
【化2v】

【0028】
【化2vi】

【0029】
【化2vii】

【0030】
【化2viii】

【0031】
【化2ix】

【0032】
【化2x】

【0033】
【化2xi】

【0034】
【化2xii】

【0035】
【化2xiii】

【0036】
【化2xiv】

【0037】
【化2xv】

【0038】
【化2xvi】

【0039】
【化2xvii】

【0040】
【化2xviii】

【0041】
【化2xix】

【0042】
【化2xx】

【0043】
【化2xxi】

【0044】
【化2xxii】

【0045】
【化2xxiii】

【0046】
【化2xxiv】

【0047】
【化2xxv】

【0048】
本発明の他の側面では、前述のような本発明の化1で示される化合物を含む有機電界発光素子を提供する。
【0049】
具体的には、本発明に係る有機電界発光素子は、(i)アノード、(ii)カソード及び(iii)前記アノードと前記カソードとの間に介在した1つ以上の有機物層を含む有機電界発光素子であって、前記1層以上の有機物層のうちの少なくとも1つは、前記化1で示される化合物を含む有機物層であることを特徴とする。
【0050】
本発明に係る有機電界発光素子においては、本発明の化1で示される化合物を含む有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層からなる群から選択される少なくとも1つであることができる。好ましくは、前記化1で示される化合物を含む有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0051】
また、本発明に係る有機電界発光素子においては、本発明の化1で示される化合物を含む有機物層以外の有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び/または電子注入層であることができる。
【0052】
本発明に係る有機電界発光素子の構造としては、例えば、基板、アノード、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及びカソードが順次積層されたものであることができるが、これに限定されない。このとき、前記正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の少なくとも1つは、前記化1で示される化合物を含むものである。前記電子輸送層の上には、電子注入層が位置することもできる。
【0053】
また、本発明に係る有機電界発光素子は、前述のように、アノード、1層以上の有機物層及びカソードが順次積層される構造だけでなく、電極と有機物層との界面に絶縁層または接着層が挿入される構造を有することもできる。
【0054】
本発明に係る有機電界発光素子において、前記化1で示される化合物を含む前記有機物層は、真空蒸着法または溶液塗布法によって形成されることができる。前記溶液塗布法としては、例えば、スピンコート、ディップコート、ドクターブレード、インクジェット印刷法または熱転写法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明に係る有機電界発光素子は、有機物層のうちの少なくとも1層を、本発明の化1で示される化合物を含むように形成した以外は、当技術分野で公知の材料及び方法を用いて有機物層及び電極を形成することで製造することができる。
【0056】
例えば、基板としては、シリコンウェハ、石英またはガラス板、金属板、プラスチックフィルムまたはシートなどを使用することができる。
【0057】
アノード材料としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロール及びポリアニリンのような伝導性高分子;またはカーボンブラックなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
カソード材料としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、錫または鉛のような金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造物質などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
その他、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの材料としては、特に限定されず、当業界で公知のものを使用することができる。
【0060】
以下、本発明の実施例を挙げて詳述する。但し、下記の実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
[反応式1]
【化3】

【0062】
[反応式2]
【化4】

【0063】
[反応式3]
【化5】

【0064】
(合成例1)Cpd14化合物の合成
(合成例1−1)反応式1の9,10−ジヒドロアクリジンの合成
窒素下で、アクリジン17.19g(95.92mmol)とTHF300mlを丸底フラスコに入れた。0℃でLiAlH 14.56g(383.66mmol)を2回に分けて徐々に加えた。常温で4時間攪拌した。0℃で重炭酸ナトリウム溶液を徐々に加えた。塩化メチレンと蒸留水で層を抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥して有機溶媒をろ過し、濃縮した後、塩化メチレンとヘキサンとを用いて(n-Hexane:MC=8:2)カラムを行うことで、目的の9,10−ジヒドロアクリジン化合物として白色の固体を14g(収率82%)得た。
【0065】
H NMR:3.8(s,2H),4.0(s,1H),6.3(t,2H),6.5(dd,2H),6.8(m,4H).
【0066】
(合成例1−2)反応式1の10−(ビフェニル−4−イル)−9,10−ジヒドロアクリジンの合成
上記で得られた9,10−ジヒドロアクリジン11.8g(65.2mmol)と4−ブロモビフェニル18.2g(78.2mmol)をトルエン500mlに溶解させた。次いで、Pd(dba) 1.4g(1.3mmol)を窒素下で投入した。次いで、NaOBu9.4g(97.8mmol)を入れ、(t−Bu)P1.6ml(2.6mmol)を上記の反応液に投入した。反応混合物を5時間還流攪拌した。反応が終了したか否かをTLCで確認し、反応終了後、常温に冷却した。反応液を薄いシリカパッド上に注いで、短くクロマトグラフィを行った後、MCで洗浄した。ろ液を減圧蒸留して溶媒を除去した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(塩化メチレン/ノルマルヘキサン=1/10)を行うことで分離精製し、クリーム色の固体状の10−(ビフェニル−4−イル)−9,10−ジヒドロアクリジン化合物15.3g(収率70%)を得た。
【0067】
H NMR:3.8(s,2H),6.4(t,2H),6.6(m,4H),6.9(m,4H),7.5(m,5H),7.8(t,2H).
【0068】
(合成例1−3)反応式1の10−(ビフェニル−4−イル)−2−ブロモ−9,10−ジヒドロアクリジンの合成
上記で得られた10−(ビフェニル−4−イル)−9,10−ジヒドロアクリジン15.3g(45.9mmol)をクロロホルム500mlに入れ、ブロモスクシンイミド9.8g(55.1mmol)を加えた。反応溶液を常温で2時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を蒸留水で洗浄し、次いで、有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(塩化メチレン/ノルマルヘキサン=1/20)を行うことで分離精製し、白色の固体状の10−(ビフェニル−4−イル)−2−ブロモ−9,10−ジヒドロアクリジン化合物14.7g(収率77%)を得た。
【0069】
H NMR:3.8(s,2H),6.2(d,1H),6.3(t,1H),6.5(d,2H),6.8(m,2H),6.9(m,2H),7.6(m,5H),7.9(t,2H).
【0070】
(合成例1−4)反応式1の10−(ビフェニル−4−イル)−2−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジンの合成
10−(ビフェニル−4−イル)−2−ブロモ−9,10−ジヒドロアクリジン化合物10g(24.3mmol)を窒素雰囲気下でトルエン300mlに溶解させた。次いで、フェニルボロン酸3.6g(29.2mmol)を加えた。反応混合溶液にテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.1g(0.97mmol)と炭酸カリウム10.1g(72.9mmol)を入れた。次いで、蒸留水40mlを加えて3時間還流攪拌した。反応溶液を60℃に冷却し、シリカゲルでろ過した後、トルエン層を抽出した。抽出された有機溶媒を濃縮して除去した後、メタノールを加えて固体を生成させ、ろ過することで、黄褐色の固体を得た。これを塩化メチレンで溶かした後、メタノールを少量ずつ加え、目的の10−(ビフェニル−4−イル)−2−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジン化合物7.8g(収率78%)を薄いクリーム色の固体として得た。
【0071】
H NMR:3.8(s,2H),6.1(d,1H),6.2(t,1H),6.6(m,3H),6.8(m,2H),7.0(s,1H),7.3(d,1H),7.5(m,8H),7.7(m,4H).
【0072】
(合成例1−5)反応式1の10−(ビフェニル−4−イル)−2−ブロモ−7−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジンの合成
10−(ビフェニル−4−イル)−2−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジン7.8g(19.0mmol)をクロロホルム300mlに入れ、ブロモスクシンイミド3.7g(21.0mmol)を加えた。反応溶液を常温で2時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を蒸留水で洗浄した後、有機層を抽出して硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(塩化メチレン/ノルマルヘキサン=1/10)を行うことで分離精製し、クリーム色の固体状の10−(ビフェニル−4−イル)−2−ブロモ−7−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジン化合物6.5g(収率70%)を得た。
【0073】
H NMR:3.8(s,2H),6.2(d,1H),6.4(d,1H),6.5(d,2H),6.9(m,3H),7.3(d,1H),7.6(m,8H),7.8(t,4H).
【0074】
(合成例1−6)反応式2のN−(ビフェニル−4−イル)−N−(4−ブロモフェニル)ビフェニル−4−アミンの合成
4,4’−ビス(ビフェニルアミン)50g(0.182mol)と1−ブロモ−4−ヨードベンゼン62.6g(0.364mol)をトルエン700molに溶解させた。次いで、Pd(dba) 5g(5.4mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン2.2g(11mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド21g(0.22mol)をそれぞれ1LのRBFに入れて3時間加熱攪拌した。反応終了後、蒸留水で反応液を洗浄した後、カラムクロマトグラフィを行うことで、白色固体のN−(ビフェニル−4−イル)−N−(4−ブロモフェニル)ビフェニル−4−アミン56g(収率65%)を得た。
【0075】
H NMR:6.3(d,2H),6.5(t,4H),7.2(t,2H),7.5(m,10H),7.8(t,4H).
【0076】
(合成例1−7)反応式2のN−(ビフェニル−4−イル)−N−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ビフェニル−4−アミンの合成
N−(ビフェニル−4−イル)−N−(4−ブロモフェニル)ビフェニル−4−アミン56g(0.117mol)を2LのRBFに入れてTHF600mlに溶解させた後、−78℃で30分間維持した。次いで、n−BuLi(1.6M in Hex)90ml(0.141mol)を徐々に滴下した。1時間経過後、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン26.2g(0.141mol)を滴下した後、常温で12時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液を蒸留水及びブレインで十分に洗浄した後、カラムクロマトグラフィを行うことで、白色固体の生成物であるN−(ビフェニル−4−イル)−N−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ビフェニル−4−アミン20g(収率33%)を得た。
【0077】
H NMR:1.3(s,12H),6.5(m,6H),7.0(d,2H),7.5(m,10H),7.7(t,4H).
【0078】
(合成例1−8)反応式3のN−(ビフェニル−4−イル)−N−(4−(10−(ビフェニル−4−イル)−7−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジン−2−イル)フェニル)ビフェニル−4−アミン(Cpd−14)の合成
10−(ビフェニル−4−イル)−2−ブロモ−7−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジン14g(28.6mmol)を窒素雰囲気下でトルエン500mlに溶解させた。次いで、N−(ビフェニル−4−イル)−N−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ビフェニル−4−アミン15g(28.6mmol)を入れた。反応混合溶液にテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.32g(1.14mmol)と炭酸カリウム9.9g(71.5mmol)を加えた。次いで、蒸留水70mlを加えて4時間還流攪拌した。反応溶液を60℃程度に冷却した後、シリカゲルでろ過してトルエン層を抽出した。抽出された有機溶媒を濃縮して除去した後、メタノールを加えて固体を生成させ、ろ過することで、黄褐色の固体を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ(塩化メチレン/ノルマルヘキサン=1/10)を行うことで分離精製し、N−(ビフェニル−4−イル)−N−(4−(10−(ビフェニル−4−イル)−7−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジン−2−イル)フェニル)ビフェニル−4−アミン(Cpd−14)化合物15g(収率65%)を薄いクリーム色の固体として得た。
【0079】
H NMR:3.8(s,2H),6.4(d,2H),6.6(t,8H),7.0(d,2H),7.3(d,2H),7.6(m,20H),7.9(t,8H).
【0080】
Elemental Analysis for C6144:calcd C 91.01,H 5.51,N 3.48,found C 91.11,H 5.46,N 3.43;HRMS for C6144 [M]:calcd 804.35,found 804.35
【0081】
(合成例2)Cpd3化合物の合成
合成例1におけるCpd14化合物の合成と同様にして、薄いクリーム色の固体を得た。
【0082】
Elemental Analysis for C5540:calcd C 90.63,H 5.53,N 3.84,found C 90.42,H 5.77,N 3.81;HRMS for C5540 [M]:calcd 728,found 728.
【0083】
(合成例3)Cpd36化合物の合成
合成例1におけるCpd14化合物の合成と同様にして、薄いクリーム色の固体を得た。
【0084】
Elemental Analysis for C4734:calcd C 90.06,H 5.47,N 4.47,found C 90.47,H 5.34,N 4.19;HRMS for C4734 [M]:calcd 626,found 626.
【0085】
(合成例4)Cpd48化合物の合成
合成例1におけるCpd14化合物の合成と同様にして、薄いクリーム色の固体を得た。
【0086】
Elemental Analysis for C5740:calcd C 90.92,H 5.35,N 3.72,found C 90.65,H 5.40,N 3.95;HRMS for C5740 [M]:calcd 752,found 752.
【0087】
(合成例5)Cpd61化合物の合成
合成例1におけるCpd14化合物の合成と同様にして、薄いクリーム色の固体を得た。
【0088】
Elemental Analysis for C4734:calcd C 90.06,H 5.47,N 4.47,found C 89.86,H 5.38,N 4.76;HRMS for C4734 [M]:calcd 626,found 626.
【0089】
(合成例6)Cpd81化合物の合成
合成例1におけるCpd14化合物の合成と同様にして、薄いクリーム色の固体を得た。
【0090】
Elemental Analysis for C3726:calcd C 89.13,H 5.26,N 5.62,found C 89.42,H 5.33,N 5.25;HRMS for C3726 [M]:calcd 498,found 498.
【0091】
(合成例7)Cpd102化合物の合成
合成例1におけるCpd14化合物の合成と同様にして、薄いクリーム色の固体を得た。
【0092】
Elemental Analysis for C5336:calcd C 90.83,H 5.18,N 4.00,found C 90.91,H 5.18,3.91;HRMS for C5336 [M]:calcd 701,found 700.
【0093】
(合成例8)Cpd106化合物の合成
合成例1におけるCpd14化合物の合成と同様にして、薄いクリーム色の固体を得た。
【0094】
Elemental Analysis for C5336:calcd C 90.83,H 5.18,N 4.00,found C 90.91,H 5.18,3.91;HRMS for C5336 [M]:calcd 701,found 700.
【0095】
(合成例9)Cpd113化合物の合成
合成例1におけるCpd14化合物の合成と同様にして、薄いクリーム色の固体を得た。
【0096】
Elemental Analysis for C4934:calcd C 90.43,H 5.27,N 4.30,found C 90.66,H 5.32,N 4.02;HRMS for C4934 [M]:calcd 650,found 650.
【0097】
(合成例10)Cpd129化合物の合成
合成例1におけるCpd14化合物の合成と同様にして、薄いクリーム色の固体を得た。
【0098】
Elemental Analysis for C5142:calcd C 89.96,H 5.92,N 4.11,found C 90.09,H 5.95,N 3.96;HRMS for C5142 [M]:calcd 681,found 680.
【0099】
(合成例11)Cpd131化合物の合成
合成例1におけるCpd14化合物の合成と同様にして、薄いクリーム色の固体を得た。
【0100】
Elemental Analysis for C5744:calcd C 90.44,H 5.86,N 3.70,found C 90.58,H 5.91,N 3.51;HRMS for C5744 [M]:calcd 757,found 756.
【0101】
(実施例1)有機電界発光素子の製造
合成例1〜11で合成した化合物を、高純度の昇華精製を行った後、これらの化合物をそれぞれ使用して、下記の過程に応じて緑色の有機電界発光素子を製作した。
【0102】
ITO(アノード)上にDS−205(ドゥサン社製)を800Åの厚さに真空蒸着して正孔注入層を形成し、この正孔注入層の上に合成例2で合成したCpd3の化合物を150Åの厚さに真空蒸着することで、正孔輸送層を形成した。
【0103】
その上にホストとして化6の化合物を使用し、ドーパントとして化7の化合物を5%ドープして300Åの厚さに真空蒸着することで、発光層を形成した。前記発光層の上に電子輸送物質であるAlq3を250Åの厚さに真空蒸着して電子輸送層を形成した。その上に、電子注入物質であるLiFを10Åの厚さに蒸着して電子注入層を形成し、その上にアルミニウムを2000Åの厚さに真空蒸着することで、カソードを形成した。
【0104】
【化6】

【0105】
【化7】

【0106】
(実施例2〜11)有機電界発光素子の製造
正孔輸送層を形成する際、Cpd3化合物の代わりに、Cpd14、Cpd36、Cpd48、Cpd61、Cpd81、Cpd102、Cpd106、Cpd113、Cpd129及びCpd131をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を製作した。
【0107】
(比較例1)有機電界発光素子の製造
正孔輸送層を形成する際、Cpd3化合物の代わりに、α−NPBを使用した以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を製作した。
【0108】
(実験例)
実施例1〜11及び比較例1で製作したそれぞれの有機電界発光素子に対して、電流密度10mA/cmでの発光効率を測定し、その結果を表1に示す。
【表1】

【0109】
実施例1〜11の有機電界発光素子は、いずれも高輝度を示し、実施例2(Cpd14)と実施例11(Cpd131)では、低駆動電圧及び高輝度を示し、色純度は(x,y)が(0.27,0.63)程度で、類似していた。
【0110】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は、前述した例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1で示される化合物:
【化1】

式中、R〜Rは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、直鎖または分枝鎖のC〜C40のアルキル基、C〜C40のシクロアルキル基、C〜C40のヘテロシクロアルキル基、融合または非融合のC〜C60のアリール基、融合または非融合のC〜C60のヘテロアリール基、直鎖または分枝鎖のC〜C40のアルキルオキシ基、融合または非融合のC〜C60のアリールオキシ基、及び融合または非融合のC〜C60のアリールアミン基からなる群から選択されるものであり、
〜Rは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、直鎖または分枝鎖のC〜C40のアルキル基、C〜C40のシクロアルキル基、C〜C40のヘテロシクロアルキル基、融合または非融合のC〜C60のアリール基、及び融合または非融合のC〜C60のヘテロアリール基からなる群から選択され、隣接する基と融合した環を形成し、または形成していないものであり、
Lは、C〜C60のアリーレン基またはC〜C60のヘテロアリーレン基である。
【請求項2】
前記Lは、フェニレン、ビフェニレン、テルフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、フェナントリレン、ピレニレン、フルオレニレン、フルオランテニレン、ペリレニレン、カルバゾリレン、N−カルバゾリフェニレン、ピリジニレン、キノリニレン及びイソキノリニレンからなる群から選択されるC〜C60のアリーレン基またはC〜C60のヘテロアリーレン基であることを特徴とする請求項1に記載の化1で示される化合物。
【請求項3】
前記R〜R及びLは、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、C〜C40のアルキル基、C〜C40のシクロアルキル基、C〜C40のヘテロシクロアルキル基、C〜C60のアリール基、C〜C60のヘテロアリール基、C〜C40のアルキルオキシ基、C〜C60のアリールオキシ基、及びC〜C60のアリールアミン基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換または非置換のものであることを特徴とする請求項1に記載の化1で示される化合物。
【請求項4】
(i)アノード、(ii)カソード及び(iii)前記アノードと前記カソードとの間に介在した1層以上の有機物層を含み、
前記1層以上の有機物層のうちの少なくとも1つは、請求項1乃至3のいずれかに記載の化1で示される化合物を含む有機物層であることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項5】
前記化1で示される化合物を含む有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。

【公表番号】特表2012−530696(P2012−530696A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515966(P2012−515966)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003526
【国際公開番号】WO2010/147319
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(504408236)ドゥーサン コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】