説明

アクリルゾル組成物用(メタ)アクリル系重合体粒子、アクリルゾル組成物及びこれを用いた物品

【課題】発泡性と粘度特性が良好はアクリルゾル組成物用(メタ)アクリル系重合体粒子及びこれを用いたアクリルゾル組成物を提供する。
【解決手段】 架橋性単量体(Mc)を全単量体成分に対して、0.001モル%以上2.0モル%未満と、窒素含有単量体(Mb)を全単量体成分に対して、0.01モル%以上10モル%以下と、その他の単量体とを共重合して得られるアクリルゾル組成物用(メタ)アクリル系重合体粒子(a)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリルゾル組成物用(メタ)アクリル系重合体粒子、アクリルゾル組成物及びこれを用いた物品に関し、詳しくは、発泡性と粘度特性が良好なアクリルゾル組成物及びこれを用いた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチゾルは、熱可塑性樹脂の微粒子(パウダー)を可塑剤に分散したゾル状の材料であり、常温で高い流動性を有し加熱すると短時間でゲル化するため、常温で塗布や注型等を行った後、加熱して塗膜や成形体を容易に成形することができ、自動車アンダーコート、自動車ボディーシーラー、壁紙、カーペットバッキング材、床材、塗料、玩具等、多岐に亘る産業分野で使用されている。
【0003】
この種のプラスチゾルとして、環境への配慮から、塩化ビニルを用いた塩ビゾルから(メタ)アクリル系重合体粒子を用いた(メタ)アクリル系プラスチゾル(以下、「アクリルゾル」という。)へ移行が図られている。特に、自動車アンダーコートや自動車ボディーシーラーの分野では、リサイクルする際、シュレッダーダスト溶融工程で塩化水素が発生し、装置を損傷させることから、アクリルゾルが求められている。これらの分野では塗膜をボディーへ密着させるため、アクリルゾルに接着剤を配合するが、接着剤を多量に配合すると、塗布時に糸引きやタレ等が生じる。このため、接着剤の配合量を減少させ、又は削減できるアクリルゾルが要請されている。
【0004】
例えば、官能基として塩基性窒素原子を有する単量体を共重合し、その組成や製造方法を選択することにより、アクリル樹脂に接着機能とその他の必要な物性を両立する実用性の高い技術が報告されている(特許文献1)。しかしながら、発泡性が要求される用途においては、接着剤の減量、削除に伴い、発泡性も低下する場合がある。この理由として、接着剤が発泡体の形成を促進させる機能を有し、接着剤の削減に伴い、発泡性が低下することが考えられる。
【0005】
発泡性を有するアクリルゾルとしては、重量平均分子量が10万以下の分子を10質量%以上含有する(メタ)アクリル系重合体粒子を用いることにより、発泡倍率の高い成形体が得られるアクリルゾル組成物(特許文献2)が報告されている。しかしながら、このアクリルゾル組成物は高い柔軟性を得るため可塑剤の含有比率を高くした自動車アンダーコート用では、充分な効果が得られない傾向がある。
【0006】
また、多官能単量体或いは自己架橋性を有する単量体を共重合した(メタ)アクリル系重合体粒子(特許文献3)が報告されているが、発泡性の改善を図ったものではない。
【特許文献1】WO07/097428
【特許文献2】特開2006−316098
【特許文献3】特開2002−226596
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、発泡性と粘度特性が良好なアクリルゾル組成物及びこれを用いた物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、架橋性単量体(Mc)を全単量体成分に対して、0.001モル%以上2.0モル%未満と、
窒素含有単量体(Mb)を全単量体成分に対して、0.01モル%以上10モル%以下と、その他の単量体とを共重合して得られるアクリルゾル組成物用(メタ)アクリル系重合体粒子に関する。
【0009】
また、本発明は、上記(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と、可塑剤(b)と、発泡剤(c)と、その他の配合剤(d)とを含むアクリルゾル組成物であって、
(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を10質量%以上、40質量%未満、
可塑剤(b)を(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の質量の1.2倍以上、
発泡剤(c)を0.1質量%以上、5.0質量未満、
その他の配合剤(d)を0質量%以上、60質量%未満で、
(a)から(d)の合計が100質量%となるように含有するアクリルゾル組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアクリルゾル組成物は、発泡性と粘度特性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、架橋性単量体(Mc)を全単量体成分に対して0.001モル%以上2.0モル%未満と、窒素含有単量体(Mb)を全単量体成分に対して0.01モル%以上10モル%以下と、その他の単量体とを共重合して得られるものである。
【0012】
上記架橋性単量体(Mc)としては、(メタ)アクリル系重合体粒子(a)中に架橋構造を形成可能なものであれば、いずれであってもよい。かかる架橋性単量体(Mc)としては、例えば、不飽和結合を2以上有する単量体(Mc1)又は架橋性の官能基を有する単量体(Mc2)を挙げることができる。不飽和結合を2以上有する単量体(Mc1)としては、重合性不飽和結合を2以上有する単量体であり、具体的には、アリル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0013】
不飽和結合を2以上有する単量体(Mc1)は全単量体成分中、0.001モル%以上1.0モル%未満の範囲で含まれることが好ましい。不飽和結合を2以上有する単量体(Mc1)が全単量体成分中0.001モル%以上含有されることにより、得られるアクリルゾル組成物は、発泡剤の分解ガスの抜けを減少させ、発泡倍率を上昇させ、発泡セルのパンクによる外観不良を抑制し、均一且つ微細な発泡セルを有する物品(塗膜、成形体等)の成形を可能とする。また、不飽和結合を2以上有する単量体(Mc1)が全単量体成分中1.0モル%未満の範囲で含有されることにより、得られるアクリルゾル組成物は、発泡剤(c)の添加量が少量でも高い発泡倍率の物品の形成を可能とする。
【0014】
また、架橋性の官能基を有する単量体(Mc2)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−メチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−メチロール含有(メタ)アクリレート;γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等の加水分解性シリル基;2−[(3,5―ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、2−[0−(1‘−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート等のブロックイソシアネート基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのうちで、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、N−メチロール基含有(メタ)アクリレートが少量添加で、アクリルゾル組成物が良好な発泡性を有することから好ましく、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレートやN−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドを挙げることができる。架橋性の官能基を有する単量体(Mc1)を用いることにより、得られるアクリルゾル組成物は成膜時に塗膜が3次元架橋するため、塗膜の耐熱性を向上させることができる。
【0015】
これらの架橋性単量体(Mc)は、全単量体成分中、0.001モル%以上2.0モル%未満の範囲で含まれる。架橋性単量体(Mc)が全単量体成分中0.001モル%以上含有されることにより、得られるアクリルゾル組成物は、発泡剤の分解ガスの抜けを減少させ、発泡倍率を上昇させ、発泡セルのパンクによる外観不良を抑制し、均一且つ微細な発泡セルを有する物品(塗膜、成形体等)の成形を可能とする。また、架橋性単量体(Mc)が全単量体成分中2.0モル%未満の範囲で含有されることにより、得られるアクリルゾル組成物は、発泡剤(c)の添加量が少量でも高い発泡倍率の物品の形成を可能とする。架橋性の官能基を有する単量体(Mc2)の使用量は全単量体成分中1.0モル%未満がより好ましい。
【0016】
上記窒素含有単量体(Mb)はアクリルゾル組成物を基材に塗布する際に、基材への密着性を向上させる成分である。窒素含有単量体(Mb)としては、塩基性窒素原子を有する単量体又はブロックイソシアネートを官能基として有する単量体を挙げることができる。塩基性窒素原子を有する単量体は、非共有電子対由来の塩基性を示す窒素原子を有する単量体である。具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族アミノ(メタ)アクリレート;脂環式アミノ(メタ)アクリレート、N−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルイミダゾリン、N−ビニルピロリドン等の複素環を有するビニル化合物;ビニルアニリン、ビニルベンジルアミン、アリルアミン、アミノスチレン等を挙げることができる。これらのうち、複素環を有するビニル化合物は、アクリルゾル組成物を用いて形成した塗膜において、基材との密着性を向上させる点で好ましい。特に、窒素原子上の非共有電子対の立体障害が小さい複素環化合物である、N−ビニルイミダゾール等が好ましい。
【0017】
また、ブロックイソシアネートを官能基として有する単量体は、アクリルゾル組成物の成形時にイソシアネート基同士が結合し架橋が形成され、耐溶剤性に優れる塗膜を形成することができることから、好ましい。プロックイソシアネートを官能基として有する単量体としては、低温(50℃〜120℃)で脱ブロックが可能な化合物が好ましい。具体的には、2−[(3,5―ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、2−[0−(1‘−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0018】
窒素含有単量体(Mb)は全単量体成分中、0.01モル%以上10モル%以下である。窒素含有単量体(Mb)が全単量体成分中0.01モル%以上であれば、得られるアクリルゾル組成物を用いて形成した塗膜において、基材との密着強度に優れ、更に、1.0モル%以上であれば、アクリルゾル組成物の成形時の温度が低くても、密着強度に優れた塗膜を形成することができる。窒素含有単量体(Mb)が全単量体成分中5.0モル%以下であれば、重合時に発生する異物が少なくなる傾向があり、原料コストの削減を図ることができるため、好ましい。
【0019】
上記その他の単量体としては、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系単量体を挙げることができる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tーブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類;メタクリル酸、アクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタレート、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート等のカルボキシル基含有単量体;アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有(メタ)アクリレート類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等のリン酸基含有(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有(メタ)アクリレート類;ベンジルメタクリレート等の芳香族アルコールの(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0020】
上記(メタ)アクリル系単量体は、全単量体成分中50.0モル%以上、99.9モル%以下であることが好ましく、70モル%以上99.9モル%以下であることがより好ましい。
【0021】
上記その他の単量体として、上記(メタ)アクリル系単量体の他、必要に応じてこれらの単量体の機能を阻害しない範囲において、上記単量体と共重合可能な単量体を挙げることができる。かかる単量体としては、例えば、アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン誘導体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル、トリアリールイソシアヌレート等の多官能単量体;イタコン酸;クロトン酸;マレイン酸、マレイン酸エステル、無水マレイン酸、フマル酸、フマル酸エステル等の不飽和酸及びその誘導体等の単量体を挙げることができる。
【0022】
これらの単量体を共重合して(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を得る方法としては、乳化重合法、シード重合法、ソープフリー重合法、分散重合法、微細懸濁重合法等を挙げることができる。これらの重合方法により(メタ)アクリル系重合体粒子の分散液を得て、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、酸凝固や塩凝固とそれに続く乾燥プロセス、凍結乾燥法、遠心分離法を用いて粉体化する方法を適用することができる。
【0023】
(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の分子量は質量平均分子量30万〜500万が好ましい。アクリルゾル組成物の貯蔵安定性とこれを用いて得られる物品の強度の観点から50万以上が好ましく、加熱成膜時のゲル化を抑制することから400万以下が好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、その粒子構造は均一の組成を有する単一構造であってもよいが、各層の組成が異なる多層構造やグラディエント構造が好ましい。特に、3層以上の多層構造であって、最も内側の層を可塑剤と相溶性を有する層とし外層側をそれより相溶性が低い層とした構造は、アクリルゾル組成物の貯蔵安定性と可塑剤保持性及びこれを用いて得られる物品の柔軟性を両立させることができるので好ましい。
【0025】
粒子の状態としては、例えば、重合で得られた一次粒子が多数凝集した二次粒子構造や、それ以上の高次粒子構造等を形成していても使用可能である。その場合には、アクリルゾル組成物の混練時にかかる剪断でこれら凝集状態が破壊されアクリルゾル組成物中に一次粒子が微細に均一分散されるように、一次粒子同士が強固に結合せず緩く凝集している状態が好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の一次粒子径は0.01〜30μmが好ましい。0.01μm以上であると重合体粒子を多層構造としたときに、可塑剤の吸収を抑制する層の厚みを十分とることができ、アクリルゾル組成物の貯蔵安定性が良好となるので好ましい。また、アクリルゾル組成物の成形時のゲル化を抑制できることから30μm以下であることが好ましい。更に、(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の二次粒子径は5〜500μmが好ましい。5μm以上であると作業時の取り扱い性が良好となる。また、500μm以下であると、コーティング用途や薄膜成形物用途において、分散できていない二次粒子に起因するブツ等が少なくなり製品外観が良好となる傾向にある。
【0027】
本発明のアクリルゾル組成物は、上記(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と、可塑剤(b)と、発泡剤(c)と、その他の配合剤(d)とを含む。
【0028】
アクリルゾル組成物に用いる可塑剤(b)は、加熱により上記(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を可塑化するものである。可塑剤(b)としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジヘキシルアジペート、ジー2−エチルヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート等のアジピン酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル系可塑剤;ポリ−1,3−ブタンジオールアジペート等の脂肪族系ポリエステル可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ジブチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸系可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル系可塑剤;アルキルスルホン酸フェニルエステル等のアルキルスルホン酸フェニルエステル系可塑剤;脂環式二塩基酸エステル系可塑剤;ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル系可塑剤;クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸系可塑剤を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
これらのうち(メタ)アクリル系重合体粒子(a)との相溶性、経済性、安全性、入手のし易さの観点から、ジイソノニルフタレートを主成分として用いることが好ましい。
【0030】
可塑剤(b)は、アクリルゾル組成物中に(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の質量の1.2倍以上の質量で含有される。(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の1.2倍以上の質量で含有されることによって、得られる塗膜が柔軟になり、アクリルゾル組成物の流動性も良好である。
【0031】
上記アクリルゾルに用いる発泡剤(c)は、加熱によりガスを発生させる発泡剤が好ましい。かかる発泡剤としては、加熱分解型発泡剤や、熱可塑性樹脂からなる殻内に低沸点炭化水素等を内包した熱膨張型マイクロカプセル等を用いることができる。
【0032】
上記加熱分解型発泡剤としては、具体的に、アゾジカーボンジアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスヘキサヒドロベンゾニトリル、アゾビスホルムアミド等のアゾ系加熱分解型発泡剤、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などのヒドラジン系加熱分解型発泡剤、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'−ジニトロソ−N,N'−ジメチルテレフタルアミド等のニトロソ系加熱分解型発泡剤を挙げることができる。
【0033】
上記熱膨張型マイクロカプセルとしては、具体的に、松本油脂製薬工業(株)のマイクロバルーン、エクスパンセル社のエクスパンセル、ダウケミカル社のサランマイクロスフィア等を挙げることができる。
【0034】
これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、加熱分
解型発泡剤の分解温度を下げる目的で、酸化亜鉛を使用することができる。
【0035】
更に、発泡剤には、必要に応じて発泡助剤を含有していてもよい。発泡助剤としては、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化等の作用を有する添加剤を用いることができ、具体的には、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸などの有機酸等を挙げることができる。
【0036】
上記発泡剤(c)は、アクリルゾル組成物中に0.1質量%以上5.0質量%未満の範囲で含有される。発泡剤(c)のアクリルゾル組成物中の含有量が0.1質量%以上であれば、所望の発泡倍率の物品を成形することができ、5.0質量%以下であれば、得られるアクリルゾル組成物を用いて外観の優れた物品を成形することができる。
【0037】
上記アクリルゾル組成物にはその他配合剤(d)を含有させることができる。
【0038】
具体的には、エポキシ化合物、ウレタン化合物、ブロックイソシアネート化合物、メラミン化合物等の熱硬化性化合物を挙げることができる。熱硬化性化合物を含有することにより、アクリルゾル組成物を用いて得られる物品の硬度を上昇させることができる。熱硬化性化合物のアクリルゾル組成物中の含有量は4質量%未満であることが好ましい。含有量を4質量%未満にすることによってアクリルゾル組成物の粘度を低く抑えることができる。
【0039】
その他、炭酸カルシウム等の充填剤、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、更に消泡剤、防黴剤、防臭剤、抗菌剤、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、香料、発泡剤、レベリング剤、接着剤、減粘剤、希釈剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
【0040】
上記配合剤(d)の含有量としては、アクリルゾル組成物中、0質量%以上、60質量%以下である。記配合剤(d)の含有量が、アクリルゾル組成物中60質量%以下であれば、(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の機能が阻害されるのを抑制することができる。
【0041】
上記(メタ)アクリル系重合体粒子(a)、可塑剤(b)、発泡剤(c)、その他の配合剤(d)は合計が100質量%で、各成分が上記範囲の含有量となるように調整する。
【0042】
本発明のアクリルゾル組成物は、上記(メタ)アクリル系重合体粒子(a)、可塑剤(b)、発泡剤(c)、その他の配合剤(d)を混合して得ることができる。各成分の混合には公知の混練機器を適宜使用すればよい。具体例として、ポニーミキサー(Pony mixer)、チェンジキャンミキサー(Change−can mixer)、ホバートミキサー(Hobert mixer)、プラネタリーミキサー、バタフライミキサー、らいかい機、ニーダー等を挙げることができる。
【0043】
本発明のアクリルゾル組成物を用いて得られる物品としては、自動車アンダーコート、自動車ボディーシーラー、壁紙、カーペットバッキング材、床材、塗料等の被覆材料用途や、玩具等の成形品用途等を挙げることができる。
【0044】
上記物品が被覆である場合、上記アクリルゾル組成物の塗布方法としては、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、カーテンフローコーティング法、刷毛塗り塗装法、静電塗装法等を挙げることができる。その後、得られた塗膜を、例えば、60〜250℃、0.1〜120分、加熱して、例えば、厚さ0.01mm〜50mmの被覆を成形することができる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例により本発明を説明する。実施例中の評価方法と評価基準は以下の通りである。
(1)発泡倍率
25mm×140mm×0.8mmのカチオン電着版(日本ルートサービス(株)製)に約1.0mmの厚みでアクリルゾル組成物を塗布し、150℃で30分間加熱して発泡塗膜を得た。加熱後の発泡塗膜の膜厚(α)と加熱前のwet膜厚(β)を測定し、それらの値を基に、式(1)を用いて発泡倍率(%)を求め、発泡倍率を下記の基準により評価した。
発泡倍率(%)=α/β×100 (1)
◎:155%以上
○:140%以上155%未満
×:140%未満。
【0046】
(2)塗膜の耐熱性
加熱後の発泡塗膜を160℃で30分加熱し、塗膜の外観を目視で評価した。評価は下記の基準に従った。
○:セルの異常フクレ、セルのパンクが見られない。
×:セルの異常フクレ、セルのパンクが見られる。
【0047】
(3)初期粘度
アクリルゾル組成物を25℃の恒温槽で2時間保温した後、BH型粘度計((株)東京計器製、製品名:BH型粘度計、ローター:No.7)を用いて、回転数20rpmにおいて1分後の粘度(α)(単位:mPa・s)を測定した。評価は下記の基準に従った。
○:20mPa・s以上180mPa・s未満
×:180mPa・s以上。
【0048】
[実施例1]
表1に示す単量体混合物(M1)〜(M5)を準備した。
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに、純水408gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、メチルメタクリレート(MMA)20g、n−ブチルメタクリレート(nBMA)15g(単量体(M1)及び過硫酸カリウム0.3gを一括添加した。引き続きメチルメタクリレート250g、t−ブチルメタクリレート(tBMA)152g、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)0.07g、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:ペレックスO−TP)4.2g及び純水201gの混合物(単量体(M2))を3.5時間かけて滴下し、重合を実施した。その後メチルメタクリレート81g、i−ブチルメタクリレート(iBMA)39g、エチレングリコールジメタクリレート0.02g、ペレックスO−TP1.2g及び純水60gの混合物(単量体(M3))を1.0時間かけて滴下して重合体粒子を製造した。その後メチルメタクリレート30g、エチレングリコールジメタクリレート0.01g、ペレックスO−TP0.6g及び純水60gの混合物(単量体(M4))を0.5時間かけて滴下して重合体粒子を製造した。更に、メチルメタクリレート10.3g、i−ブチルメタクリレート6.3g、N−ビニルイミダゾール(NVIMD)(BASF社製)1.4g、n−オクチルメルカプタン0.018g、ペレックスO−TP0.2g及び純水9.0gの単量体混合物(M5)を0.2時間かけて滴下した。その後、80℃にて1時間攪拌を継続して重合を完了させ(メタ)アクリル系重合体粒子の分散液を得た。
【0049】
(メタ)アクリル系重合体粒子の分散液をL−8型スプレードライヤー(大河原化工機(株)製)を用いて噴霧乾燥し(入口温度/出口温度=150/60℃、ディスク回転数25000rpm)、(メタ)アクリル系重合体粒子(P1)を得た。架橋性単量体(Mc)として不飽和結合を2以上有する単量体(Mc1)と、窒素含有単量体(Mb)とを、全単量体に対するモル比率としてそれぞれ表2に示す。
【0050】
次いで、
炭酸カルシウム250部(CCR:白石カルシウム(株)製を150部、NS200:日東粉化工業(株)製を100部)、
可塑剤180部(ジイソノニルフタレート:(株)ジェイプラス製)、
発泡剤6部(ビニホールST#70:永和化成工業(株)製)、
発泡助剤0.6部(酸化亜鉛)
を計量し、真空ミキサー(製品名:ARV−200、(株)シンキー製)にて10秒間大気圧(0.1MPa)で混合した後、2.7kPaに減圧して170秒間混合して炭酸カルシウムと可塑剤の予備混練物を得た。
【0051】
続いてこれに(メタ)アクリル系重合体粒子(P1)100部を真空ミキサーにて10秒間大気圧(0.1MPa)で混合した後、2.7kPaに減圧して110秒間混合しアクリルゾル組成物を得た。このアクリルゾル組成物は発泡性・粘度特性ともに良好であった。評価結果を表3に示す。
[実施例2〜7並びに比較例1]
単量体(M1)から(M5)の組成を表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体粒子(P2〜P8)を得た。重合体P2、P3、P6、P7は単量体混合物として(M1)、(M2)、(M3)、(M5)の4種類の単量体混合物を用いた。また、P2、P3調製時の(M2)、(M3)、(M5)の滴下時間は、それぞれ4.5時間、0.5時間、0.2時間とした。P6、P7調製時の(M2)、(M3)、(M5)の滴下時間は、それぞれ4.5時間、0.5時間、0.4時間とした。
【0052】
得られた(メタ)アクリル系重合体粒子(P2〜P8)を用いて実施例1と同様にしてアクリルゾル組成物を得た。得られたアクリルゾル組成物の評価結果を表3に示す。
【0053】
比較例1は、窒素含有単量体(Mb)を含むが架橋性単量体(Mc)を含まない例(P8)であり、発泡性は不良であった。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性単量体(Mc)を全単量体成分に対して、0.001モル%以上2.0モル%未満と、
窒素含有単量体(Mb)を全単量体成分に対して、0.01モル%以上10モル%以下と、その他の単量体とを共重合して得られるアクリルゾル組成物用(メタ)アクリル系重合体粒子(a)。
【請求項2】
請求項1記載の(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と、可塑剤(b)と、発泡剤(c)と、その他の配合剤(d)とを含むアクリルゾル組成物であって、
(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を10質量%以上、40質量%未満、
可塑剤(b)を(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の質量の1.2倍以上、
発泡剤(c)を0.1質量%以上、5.0質量未満、
その他の配合剤(d)を0質量%以上、60質量%未満で、
(a)から(d)の合計が100質量%となるように含有するアクリルゾル組成物。
【請求項3】
架橋性単量体(Mc)が、不飽和結合を2以上有する単量体(Mc1)であって、全単量体成分に対して、0.001モル%以上1.0モル%未満で共重合するアクリルゾル組成物。
【請求項4】
請求項2又は3記載のアクリルゾル組成物を用いて得られる物品。

【公開番号】特開2009−280703(P2009−280703A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134264(P2008−134264)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】