説明

アクリルフィルム及びその製造方法

【課題】
建材用、装飾表示用、マーキングシート用等に好適に適用することができ、コイル状に製膜した際の巻き戻し性やカレンダー加工性に優れ、かつフィルム表面の汚染が充分に抑制されたアクリルフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
アクリル樹脂、並びに、脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物を含有し、上記脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物の含有量は、上記アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜3.0質量部であるアクリルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建材用、装飾表示用等に利用され得るシート等の基材フィルムとして塩化ビニル(PVC)系樹脂が主に使用されていた。しかし、近年、環境保護の観点から、PVC系樹脂から非塩素化材料への代替が行われてきている。このような代替材料のなかでも、アクリル系樹脂は耐候性が良く、PVCに近い物性が得られることから候補材料として注目されている。
【0003】
しかしながら、アクリル樹脂フィルムにおける配合において、軟〜半硬質のPVCフィルムの物性に近づける場合、軟質樹脂成分、又は、可塑剤の添加が通常不可欠である。このため、軟質樹脂成分を添加することによってフィルムの軟化温度が低くなったり、可塑剤の添加部数を比較的多量添加する必要がある。このような配合でフィルムを製膜した場合、コイル状態に製膜したフィルムを巻き戻す(引き剥がす)と、フィルムが剥がれず後の加工を行いにくい等の問題があった。また、カレンダー加工で製膜する場合、従来の配合ではカレンダーロールからフィルムを剥離する際、金属滑性が悪いため、カレンダー最終(No.4)ロールに巻きとられる不具合が頻繁に発生し、カレンダー加工性に劣っていた。
【0004】
フィルム等の巻き戻し性等を改善する方法として、特許文献1には、接着シート又はテープの支持体又は感圧接着剤層の少なくとも一方に脂肪酸アマイドを含むことで、剥離処理を施すことなく適正な巻き戻し力特性を有し得ることが開示されている。
【0005】
特許文献2には、接着シート又はテープの支持体に配合される脂肪酸アマイドの一部と置換して紫外線吸収剤を配合することにより、脂肪酸アマイドの配合量を抑制して被着物の汚染を防止しながら、適正な巻き戻し力を維持し、かつ耐候性を改善した接着シート又はテープが、開示されている。また、特許文献3及び4には、PVC系樹脂に尿素化合物を添加することで、被着物の汚染を防止しながら、フィルムの適正な巻き戻し力を維持し得ることが、開示されている。
【0006】
しかし、上記の特許文献はいずれも、PVC系樹脂を材料としたフィルムの巻き戻し力を向上するためのフィルム等の開示であり、アクリル樹脂を材料としたフィルムについては、検討されていない。また、上記特許文献は、接着剤層を有するシートとして検討されているものである。従って、巻き戻し力が適正で、金属滑性も良好であり、かつブリード等によるフィルム表面の汚染が起こらず、後の加工を容易にし得るアクリル系フィルムの開発が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特公昭57−139163号公報
【特許文献2】特開平6−172717号公報
【特許文献3】特開平7−276516号公報
【特許文献4】特開平7−292326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、建材用、装飾表示用、マーキングシート用等に好適に適用することができ、コイル状に製膜した際の巻き戻し性やカレンダー加工性に優れ、かつフィルム表面の汚染が充分に抑制されたアクリルフィルム及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アクリル樹脂、並びに、脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物を含有し、上記脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物の含有量は、上記アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜3.0質量部であることを特徴とするアクリルフィルムである。
【0010】
上記アクリル樹脂は、メタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル共重合体Aであることが好ましい。
上記アクリル樹脂は、メタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル共重合体A及びメタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル−スチレン共重合体Bからなるものであることが好ましい。
【0011】
上記アクリルフィルムは、更に可塑剤を含有するものであり、上記可塑剤の含有量は、上記アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましい。
上記アクリルフィルムは、コイル状に製膜したものであることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上述したアクリルフィルムの製造方法であって、上記アクリルフィルムは、カレンダー加工により製造されることを特徴とするアクリルフィルムの製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のアクリルフィルムは、例えば、建材用、装飾表示用、マーキングシート用等に好適に適用され得るものである。上記アクリルフィルムは、樹脂成分としてアクリル樹脂を含有し、更に、添加剤として特定量の脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物を含有するものであるため、ブロッキングが起きることを充分に防止することができる。このため、コイル状に製膜したフィルムを巻き戻す際、フィルムを容易に剥がすことができ、後の加工を容易に行うことができる。
【0014】
また上記アクリルフィルムは、上述したような構成であるため、カレンダー加工による製造時、優れたカレンダー加工性を発揮する。このため、カレンダー加工において、カレンダーロールからフィルムを剥離する際、金属滑性が良好となり、カレンダー最終ロールに巻き取られてしまうという不具合の発生を防止することができる。
【0015】
更に上記アクリルフィルムは、上述したような構成であるため、コイル状に製膜したフィルムを巻き戻した場合に、添加剤のブリードにより上記フィルム表面及び裏面が汚染されてしまうという不具合の発生も防止することができる。
【0016】
本発明のアクリルフィルムは、アクリル樹脂、並びに、脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物を含有するものである。
上記アクリル樹脂としては、従来公知のものを用いることができるが、メタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル共重合体Aであること、又は上記共重合体A及びメタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル−スチレン共重合体Bからなるものであることが好ましい。
【0017】
上記共重合体Aは、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとを共重合させることにより得られるものであり、また上記共重合体Bは、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとスチレンとを共重合させることにより得られるものであることが好ましい。これらを共重合する方法としては、例えば、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を挙げることができる。また、重合の際には、必要に応じて、連鎖移動剤、その他の重合助剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、従来より知られている各種のものを使用することができ、特にメルカプタン類が好ましい。
【0018】
上記共重合体A及び共重合体Bのモノマー成分であるメタクリル酸アルキルとしては特に限定されず、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等を挙げることができる。なかでも、上記共重合体A及び共重合体Bのモノマー成分はいずれも、カレンダー加工性が有利である観点から、メタクリル酸メチルを用いることが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
上記共重合体A及び共重合体Bのモノマー成分であるアクリル酸アルキルとしては特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を挙げることができる。なかでも、上記共重合体A及び共重合体Bのモノマー成分はいずれも、柔軟性をより良好なものにすることができる観点から、アルキル部分の炭素数が大きいアクリル酸アルキルであるアクリル酸2−エチルヘキシルを用いることが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
上記共重合体Aのモノマー成分のメタクリル酸アルキルと、上記共重合体Bのモノマー成分のメタクリル酸アルキルとは、同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。同様に上記共重合体Aのモノマー成分のアクリル酸アルキルと、上記共重合体Bのモノマー成分のアクリル酸アルキルとは、同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。なお、上記アクリル樹脂が、上記共重合体Aである場合や、共重合体A及び共重合体Bからなるものである場合、上記アクリル樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で他のアクリル樹脂を含むものであってもよい。
【0021】
上記共重合体Aの市販品としては、例えば、スミペックスFA、スミペックスHT−01X(商品名、住友化学工業社製)等が挙げられる。上記共重合体Bの市販品としては、メタブレンW−341(商品名、三菱レイヨン社製)等が挙げられる。
【0022】
上記アクリルフィルムにおいて、上記アクリル樹脂が上記共重合体A及び上記共重合体Bからなる場合、上記共重合体Aと上記共重合体Bとの配合比(A/B)は、質量基準で80/20〜20/80であることが好ましい。より好ましくは、70/30〜30/70である。
【0023】
上記脂肪酸アマイドとしては、ステアリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、リシノール酸アマイド、リシノール酸アマイド、オキシステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ラウリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等が挙げられる。なかでも、優れた巻き戻し力やカレンダー加工性をフィルムに付与し得る点から、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記尿素化合物は、尿素結合を有する化合物である。好ましくは、下記一般式(I)
−NHCONH−R (I)
(式中、Rは炭素数7〜23のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜23のアルキル基又はフェニル基を示す。)
で表される尿素化合物であるか、又は下記一般式(II)
−NHCONH−R−NHCONH−R (II)
(式中、Rは炭素数7〜23のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキレン基又は芳香族基を示す。)
で表される尿素化合物である。上記一般式(II)において、2価の芳香族基とは、例えば、キシリレン基、トルイレン基、ジフェニルメタン基等を挙げることができる。
【0025】
上記一般式(I)で表される尿素化合物としては、例えば、N−ブチル−N’−ラウリル尿素、N−フェニル−N’−ステアリル尿素、N−ステアリル−N’−ステアリル尿素、N−ステアリル−N’−ベヘニル尿素等を挙げることができる。
また、上記一般式(II)で表される尿素化合物としては、例えば、エチレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスベヘニル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスラウリル尿素、キシリレン・ジ・ステアリルウレア等を挙げることができる。なかでも、優れた巻き戻し力やカレンダー加工性をフィルムに付与し得る点から、キシリレン・ジ・ステアリルウレアを用いることが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
上記アクリルフィルムにおいて、上記脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物の含有量は、上記アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、下限0.1質量部、上限3.0質量部である。0.1質量部未満であると、得られるフィルムがロールからの巻き戻し性において充分でないおそれがあり、3.0質量部を超えると、巻き戻し性は充分であるが、高速で巻き戻したときに、ブリードが生じてフィルム表面を汚染するおそれがある。上記下限は、0.5質量部であることがより好ましく、上記上限は、1.5質量部であることがより好ましい。なお、上記アクリルフィルムに脂肪酸アマイドと尿素化合物との両方が含まれる場合、上記脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物の含有量は、脂肪酸アマイドと尿素化合物との合計量である。
【0027】
上記アクリルフィルムは、可塑剤を含有するものであることが好ましい。可塑剤を含有することにより、フィルムに柔軟性を与えることができる。上記可塑剤としては、特に限定されず、例えば、従来公知のフタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、アジピン酸エステル系、リン酸エステル系、アジピン酸系ポリエステル、エポキシ化合物等が挙げられる。なかでも、アクリル樹脂の可塑剤吸収性、環境面への配慮の観点からアジピン酸系ポリエステルを用いることが好ましい。上記可塑剤の市販品としては、ポリサイザ−W−2300(商品名、大日本インキ化学工業社製)、PN−1020(旭電化工業社製)等が挙げられる。
【0028】
上記アクリルフィルムにおいて、上記可塑剤の含有量は、上記アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましい。これにより、フィルムの柔軟性を変化させることができる。50質量部を超えると、成型後のフィルムからブリードが大きくなるおそれがある。
【0029】
本発明のアクリルフィルムは、安定剤を含有するものであってもよい。安定剤を含有することにより、カレンダー加工を容易にすることができる。上記安定剤としては、特に限定されず、例えば、カルシウム−亜鉛系、バリウム−亜鉛系、スズ系等の複合安定剤が好ましく用いられる。なかでも、環境面への配慮ができる観点から、カルシウム−亜鉛系が好ましい。
【0030】
上記アクリルフィルムにおいて、上記安定剤の含有量は、上記アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、下限0.05質量部、上限3質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、カレンダー加工時のフィルム変色が大きく、3質量部を超えると、成型されたフィルム表面からのブルームが大きくなるおそれがある。上記下限は0.3質量部であることがより好ましく、上記上限は2.0質量部であることがより好ましい。
【0031】
本発明のアクリルフィルムは、滑剤を含有するものであってもよい。滑剤を含有することにより、更にカレンダー加工性を容易にすることができる。上記滑剤としては、特に限定されず、例えば、ステアリン酸のような脂肪酸、ステアリン酸やラウリン酸等のバリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、カドミウム塩等の金属石ケン、ステアリルアミド、パルミチルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸アミド、種々のワックス類等を挙げることができる。
【0032】
上記アクリルフィルムにおいて、上記滑剤の含有量は、上記アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、下限0.05質量部、上限2.0質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、効果が現れないおそれがある。2.0質量部を超えると、カレンダー加工時の滑性過多となり、フィルムが引き出せないおそれがある。上記下限0.2質量部であることがより好ましく、上記上限1.0質量部であることがより好ましい。
【0033】
本発明のアクリルフィルムは、酸化防止剤を含有するものであってもよい。酸化防止剤を含有することにより、カレンダー加工時のフィルム変色をより抑えることができる。上記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、有機硫黄系又はホスファイト系のもの等が挙げられる。
【0034】
上記アクリルフィルムにおいて、上記酸化防止剤の含有量は、上記アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、下限0.1質量部、上限3.0質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、効果が現れないおそれがある。3.0質量部を超えると、成型されたフィルム表面からブルームが発生するおそれがある。上記下限は0.5質量部であることがより好ましく、上記上限は1.5質量部であることがより好ましい。
【0035】
本発明のアクリルフィルムは、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に、着色剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有するものであってもよい。上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等が挙げられる。
【0036】
本発明のアクリルフィルムは、更に、本発明の効果を阻害しない範囲で、ハイドロタルサイトを含有するものであってもよい。ハイドロタルサイトは、一般に、次の組成式
Mg1−X Al (OH) (COX/2・mH
で表わされる不定比化合物の塩基性炭酸マグネシウムアルミニウムであって、通常、x=0.33、m=0〜0.5の範囲である。
【0037】
上記アクリルフィルムは、コイル状に製膜したものであることが好ましい。上記コイル状に製膜したものは、フィルムの巻き戻しを良好に行うことができ、後加工が容易である。また、搬送が容易である。
上記アクリルフィルムの厚みは、0.04〜1.0mmであることが好ましい。これにより、カレンダー加工での成型を容易に行うことができる。
【0038】
上記アクリルフィルムは、例えば、カレンダー加工によって得ることができる。本発明のアクリルフィルムは、カレンダー加工において、金属滑性が良好であり、ロールにとられる不具合が抑制される。また、カレンダー加工時のカレンダーロールや絞ロールへのプレートアウト(吹出し)を防止し得る。このようなアクリルフィルムの製造方法もまた本発明の一つである。
【0039】
上記アクリルフィルムのカレンダー加工は、通常の装置及び方法によればよく、例えば、アクリル樹脂、脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物、更に必要に応じてその他の添加剤とを混合した後、これを150℃程度の温度でバンバリーミキサー、連続混練機等にて混練して溶融し、次いで、カレンダーロールに供給、圧延し、フィルムを得る。上記カレンダーとしては、逆L型4本、Z型4本、M型6本等の通常使用されているものを挙げることができる。また、上記カレンダー加工において、カレンダー温度は、160〜200℃の範囲が好ましい。
【0040】
本発明のアクリルフィルムは、アクリル樹脂、並びに、脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物を含有し、上記脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物の含有量は、上記アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜3.0質量部であるため、フィルムをコイル状態に製膜した際の巻き戻し性やカレンダー加工性に優れ、かつフィルム表面の汚染が充分に抑制されたものである。
【発明の効果】
【0041】
本発明のアクリルフィルムは、上述した構成よりなるので、コイル状態のフィルムの巻き戻し性に優れ、また表面汚染を防止することができる。また、カレンダー加工性にも優れている。従って、本発明のアクリルフィルムは、建材用、装飾表示用、又はマーキングシート用等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0043】
(フィルムの作製)
実施例1
メタクリル酸メチル−アクリル酸アルキル共重合体A(商品名スミペックスFA、住友化学工業社製)100質量部、酸化防止剤としてアンチオックス10(日本油脂社製)1質量部、安定剤としてステアリン酸カルシウム0.2質量部及びステアリン酸亜鉛0.2質量部、滑剤としてLS−5(旭電化工業社製)1質量部、更に脂肪酸アマイドであるメチレンビスステアリン酸アマイド1.0質量部を配合し、バンバリーミキサーで溶融混練後、カレンダー本体の各ロール(160〜200℃)に通し、厚みが0.1mmのフィルムを作製した。
【0044】
実施例2
実施例1の配合において、メチレンビスステアリン酸アマイドの代わりにエチレンビスステアリン酸アマイド1.0質量部を配合し、他は同一処方で、実施例1と同様にフィルムを作製した。
【0045】
実施例3
アクリル樹脂としてメタクリル酸メチル−アクリル酸アルキル共重合体A(商品名スミペックスHT−01X、住友化学工業社製)50質量部と、メタクリル酸メチル−アクリル酸アルキル−スチレン共重合体B(商品名メタブレンW−341、三菱レイヨン社製)50質量部、可塑剤としてポリエステル系(商品名ポリサイザ−W−2300、大日本インキ化学工業社製)を50質量部、その他は実施例1と同一の配合で、実施例1と同様に厚みが0.1mmのフィルムを作製した。
【0046】
実施例4
実施例3の配合において、メチレンビスステアリン酸アマイドの代わりにエチレンビスステアリン酸アマイド1.0質量部を配合し、他は同一処方で、実施例1と同様にフィルムを作製した。
【0047】
実施例5
メタクリル酸メチル−アクリル酸アルキル共重合体A(商品名スミペックスFA、住友化学工業社製)100質量部、酸化防止剤としてアンチオックス10(日本油脂社製)1質量部、安定剤としてステアリン酸カルシウム0.2質量部及びステアリン酸亜鉛0.2質量部、滑剤としてLS−5(旭電化工業社製)1質量部、更に尿素化合物であるキシリレン・ジ・ステアリルウレア1.0質量部を配合し、バンバリーミキサーで溶融混練後、カレンダー本体の各ロール(160〜200℃)に通し、厚みが0.1mmのフィルムを作製した。
【0048】
実施例6
アクリル樹脂としてメタクリル酸メチル−アクリル酸アルキル共重合体A(商品名スミペックスHT−01X、住友化学工業社製)50質量部と、メタクリル酸メチル−アクリル酸アルキル−スチレン共重合体B(商品名メタブレンW−341、三菱レイヨン社製)50質量部、可塑剤としてポリエステル系(商品名ポリサイザ−W−2300、大日本インキ化学工業社製)を50質量部、その他は実施例5と同一の配合で、実施例5と同様に厚みが0.1mmのフィルムを作製した。
【0049】
比較例1
実施例1の配合において、メチレンビスステアリン酸アマイドを除き、他は同一処方で、実施例1と同様にフィルムを作製した。
【0050】
比較例2
実施例1の配合において、メチレンビスステアリン酸アマイドの添加量を5.0質量部とし、他は同一処方で、実施例1と同様にフィルムを作製した。
【0051】
比較例3
実施例2の配合において、エチレンビスステアリン酸アマイドの添加量を5.0質量部とし、他は同一処方で、実施例1と同様にフィルムを作製した。
【0052】
比較例4
実施例3の配合において、メチレンビスステアリン酸アマイドを除き、他は同一処方で、実施例1と同様にフィルムを作製した。
【0053】
比較例5
実施例3の配合において、メチレンビスステアリン酸アマイドの添加量を5.0質量部にし、他は同一処方で、実施例1と同様にフィルムを作製した。
【0054】
比較例6
実施例4の配合において、エチレンビスステアリン酸アマイドの添加量を5.0質量部にし、他は同一処方で、実施例1と同様にフィルムを作製した。
【0055】
比較例7
実施例5の配合において、キシリレン・ジ・ステアリルウレアを除き、他は同一処方で、実施例5と同様にフィルムを作製した。
【0056】
比較例8
実施例5の配合において、キシリレン・ジ・ステアリルウレアの添加量を5.0質量部とし、他は同一処方で、実施例5と同様にフィルムを作製した。
【0057】
比較例9
実施例6の配合において、キシリレン・ジ・ステアリルウレアを除き、他は同一処方で、実施例5と同様にフィルムを作製した。
【0058】
比較例10
実施例6の配合において、キシリレン・ジ・ステアリルウレアの添加量を5.0質量部にし、他は同一処方で、実施例5と同様にフィルムを作製した。
【0059】
〔評価〕
上記で作製したフィルムについて、巻き戻し力、汚染性、及びカレンダー加工性について下記の方法で評価した。結果を表1、表2に示した。
(巻き戻し力)
各フィルムについて、長さ500m巻きのコイルを作製し、23℃の雰囲気下で20m/分の速度で巻き戻しを行い、その状態を目視にて観察し以下の基準で評価した。
〇:巻き戻しができた
×:フィルム間でブロッキングが起こり、巻き戻しができなかった
(汚染性)
上記巻き戻し時に、フィルム表面又は裏面にブリードが起こっているか否かを目視にて観察し、以下の基準で評価した。
〇:ブリードが起こっていない
×:ブリードが起こっている
(カレンダー加工性)
逆L型カレンダーで加工を行い、No.4ロールからフィルムが剥がれる状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
〇:問題なし
×:トラレ(全面又は一部分がロールにくっついてフィルムが剥がれない状態)が発生
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表1、2より、脂肪酸アマイド又は尿素化合物をアクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対し1質量部添加して作製したフィルムは、巻き戻し力及びカレンダー加工性が優れ、かつフィルム表面にブリードが起こらなかった。脂肪酸アマイド又は尿素化合物の添加量が、アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対し5質量部であるとフィルム表面にブリードが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のアクリルフィルムは、建材用、装飾表示用、又はマーキングシート用等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂、並びに、脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物を含有し、
前記脂肪酸アマイド及び/又は尿素化合物の含有量は、前記アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜3.0質量部であることを特徴とするアクリルフィルム。
【請求項2】
アクリル樹脂は、メタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル共重合体Aである請求項1記載のアクリルフィルム。
【請求項3】
アクリル樹脂は、メタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル共重合体A及びメタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル−スチレン共重合体Bからなるものである請求項1記載のアクリルフィルム。
【請求項4】
更に可塑剤を含有するものであり、
前記可塑剤の含有量は、アクリル樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、50質量部以下である請求項1、2又は3記載のアクリルフィルム。
【請求項5】
アクリルフィルムは、コイル状に製膜したものである請求項1、2、3又は4記載のアクリルフィルム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載のアクリルフィルムの製造方法であって、前記アクリルフィルムは、カレンダー加工により製造されることを特徴とするアクリルフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2006−70212(P2006−70212A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257571(P2004−257571)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】