説明

アクリル酸亜鉛コポリマーの合成

亜鉛エステル官能性ポリマーと粒子状の銅ピリチオンとを含有する組成物であって、この粒子が約8から約15の範囲内の平均アスペクト比を有し、亜鉛エステル官能性ポリマー及び銅ピリチオンが酸官能性ポリマーと亜鉛ピリチオン及び銅塩又はカルボン酸銅とを反応させることによって得られる組成物が開示される。そのような組成物を含有する防汚コーティングも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属エステル官能性ポリマー及び銅ピリチオンを含む組成物と、そのような組成物を生成するための方法と、そのような組成物を含有する塗料とに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、魚網、又はその他の水中構造物若しくは設備は、フジツボ、イガイ、及び藻などの水生生物を侵襲する傾向がある。生物が成長し増殖し、最終的には重大な問題を引き起こす可能性がある。例えば、船舶の船体の場合、船体上での海洋生物の成長は、船体と水との間の摩擦抵抗を増大させる可能性があり、したがって燃料消費量が増加し且つ船舶の速度が低下する。
【0003】
この問題に対する1つの手法は、構造物の表面を、金属含有ポリマーが存在する防汚コーティングでコーティングすることである。これらのポリマーは、通常、ポリマー主鎖に結合された加水分解可能な基を有する。時間と共に、コーティングの最外層のポリマーは加水分解し、水浸食性残留物になる。この残留物は、水によって引き続き除去されて、滑らかな、汚れのない表面を提供する。そのような作用を、一般に「自己研磨」効果と呼ぶ。
【0004】
金属含有自己研磨コポリマーは、何年にもわたり商業的に使用されてきた。IMOによる自己研磨アクリル酸トリブチルスズの禁止により、アクリル酸銅及び亜鉛が、自己研磨防汚コーティングで使用される一般的なポリマーになっている。
【0005】
金属アクリレート及びその調製方法は、文献に記載されている。
【0006】
例として、米国特許第4,774,080号は、コポリマーと、1価の有機酸及び金属酸化物、塩化物、又は水酸化物とを反応させることによって得られる金属アクリレート自己研磨ポリマーを開示する。或いは、有機酸及び金属塩は、金属カルボキシレートによって置換することができる。反応で使用されるコポリマーは、不飽和有機酸モノマーとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合から得ることができる。第‘080号特許は、不飽和金属エステルを最初に調製した後に、その他の不飽和重合性モノマーと共重合させて、金属アクリレートポリマーを提供することができることも開示する。
【0007】
米国特許第6,177,530号は、2つの不飽和基を有する金属含有重合性モノマーと金属含有重合性モノマーとの共重合から得られる金属含有加水分解性コポリマーを開示する。その他の重合性モノマーが存在することもできる。
【0008】
自己研磨ポリマーは、単独で又はその他の殺生物剤と組み合わせて使用して、防汚性能をさらに高めることができる。ポリマーがその他の殺生物剤と共に使用される場合、現行の実務では、ポリマーと、主要な及び補助的な殺生物剤とを別々に調製し、次いでこれらを個々に防汚塗料組成物に添加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
防汚塗料の分野では、金属含有自己研磨ポリマーの混合物とブースター殺生物剤とを同時に生成することができる、費用効果のある方法が必要とされている。本発明は、その必要性に対する1つの答えを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本発明は、亜鉛エステル官能性ポリマーと銅ピリチオンの粒子とを含有する組成物であって、この粒子が約8から約15の範囲内の平均アスペクト比を有する組成物を提供する。亜鉛エステル官能性ポリマー及び銅ピリチオンは、酸官能性ポリマーと、亜鉛ピリチオン、並びに銅塩、カルボン酸銅、水酸化銅、元素の銅、及びこれらの組合せからなる群から選択される銅化合物とを反応させることによって得られる。
【0011】
別の態様では、本発明は、亜鉛エステル官能性ポリマーと銅ピリチオンの粒子とを含む防汚コーティング組成物であって、この粒子が約8から約15の範囲である平均アスペクト比を有する防汚コーティング組成物を提供する。亜鉛エステル官能性ポリマー及び銅ピリチオンは、酸官能性ポリマーと、亜鉛ピリチオン、並びに銅塩、カルボン酸銅、水酸化銅、元素の銅、及びこれらの組合せからなる群から選択される銅化合物とを反応させることによって得られる。防汚組成物は、水溶性又は僅かに水溶性の樹脂をさらに含有することができる。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、亜鉛エステル官能性ポリマーと銅ピリチオンの粒子とを含有し、この銅ピリチオンの粒子が約8から約15の平均アスペクト比を有する組成物を作製するための方法に関する。この方法は、酸官能性ポリマーと、亜鉛ピリチオン、並びに銅塩、カルボン酸銅、水酸化銅、元素の銅、及びこれらの組合せからなる群から選択される銅化合物とを溶媒中で反応させるステップを含む。
【0013】
特許又は出願ファイルは、カラーで実現された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面(単数又は複数)を含むこの特許又は特許出願公報のコピーは、申立て及び必要な料金の支払い後に、当局により提供されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の方法によって調製された銅ピリチオン、サンプル507Cの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2】本発明の方法によって調製された銅ピリチオン、サンプル508Dの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0015】
【図3】市販されている銅ピリチオン、サンプル513の、SEM画像である。
【0016】
【図4】サンプルを調製してから1時間後に撮影したサンプルA、C、及びDの写真である。
【0017】
【図5】サンプルを調製してから1日後に撮影したサンプルA、C、及びDの写真である。
【0018】
【図6】パネル試験結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
出願人は、驚くべきことに、亜鉛含有自己研磨ポリマー及び銅ピリチオンを、酸官能性ポリマーと、亜鉛ピリチオンと、銅塩、カルボン酸銅、水酸化銅、元素の銅、及びこれらの組合せからなる群から選択される銅化合物との反応から同時に生成できることを見出した。自己研磨亜鉛含有ポリマー及びこれとは別に添加された共殺生物剤が別々に生成される方法と比較すると、本発明の方法は、効率的であり費用効果がある。さらに、本発明の方法によって生成された銅ピリチオンは、ミリングされていない亜鉛ピリチオンのウェットケークを反応の出発材料として用いる場合であっても、微粒子の形態である。この特徴は、塗料級の銅ピリチオンを生成するための従来の方法により通常なら必要とされる銅ピリチオンの乾燥及び研削又はミリングの必要性を回避することにより、費用の節約をもたらす。
【0020】
また出願人は、驚くべきことに、本発明により生成された銅ピリチオン粒子が、銅ピリチオンをミリングすることにより得ることが可能な平均アスペクト比の範囲とは異なった、平均アスペクト比の独自の範囲に包含されることも見出した。平均アスペクト比の独自の範囲内にある銅ピリチオン粒子は、市販のミリング済みの銅ピリチオンに比べて、銅ピリチオン粒子を含有する組成物から凝集及び/又は沈降する可能性が低い。
【0021】
本発明の方法により生成された組成物は、防汚コーティング組成物に組み込むことができる。この防汚コーティング組成物は、市販の自己研磨ポリマー及びミリング済みの銅ピリチオンの組合せを含有する防汚コーティングに比べてより良好な効果を示す。
【0022】
したがって、一実施形態では、本発明は、亜鉛エステル官能性ポリマー及び銅ピリチオンの粒子を含有する組成物であって、この粒子が約8から約15の範囲である平均アスペクト比を有する組成物を提供する。亜鉛エステル官能性ポリマーは特に限定されず、アクリル酸亜鉛、亜鉛ポリエステル、亜鉛アルキド、又はこれらの組合せであることができる。好ましい亜鉛エステル官能性ポリマーは、アクリル酸亜鉛である。本発明による亜鉛エステル官能性ポリマーは、自己研磨効果を有する。適切な亜鉛エステル官能性ポリマーは、例えば米国特許第4,774,080号に記載されている。
【0023】
好ましくは、本発明の組成物に含有される銅ピリチオンは、約3から5ミクロンのD50を有する微粒子である。本明細書で使用されるD50は、銅ピリチオン粒子の50重量%がD50数以下の直径を有し、一方、銅ピリチオンの重量の50%足らずがD50数よりも大きい直径を有する粒子に存在する、直径である。粒径は、好ましくは、Horiba LA−910粒度分布分析器を使用するレーザー光散乱によって決定される。
【0024】
本発明による銅ピリチオン粒子は、約8から約15、好ましくは約9から約12の範囲である平均アスペクト比を有することが有利である。一実施形態では、粒子の少なくとも5%が20以上の平均アスペクト比を有する。本明細書で使用されるアスペクト比は、最長粒子寸法と最短粒子寸法との比を意味する。本発明による銅ピリチオンは、市販のミリング済みの銅ピリチオンの凝集又は沈降よりも少ない程度の凝集又は沈降を有する。いかなる理論にも拘泥するものではないが、銅ピリチオン粒子は、本発明の方法の最中に形成されるときにポリマーに湿潤され、したがってファンデルワール力により粒子の凝集及び/又は集合の危険性が最小限に抑えられると仮定する。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、亜鉛エステル官能性ポリマーと銅ピリチオンの粒子とを含有し、この銅ピリチオンの粒子が約8から約15の平均アスペクト比を有する組成物を生成する方法を提供する。この方法は、酸官能性ポリマーと、亜鉛ピリチオン、並びに銅塩、カルボン酸銅、水酸化銅、元素の銅、及びこれらの組合せからなる群から選択される銅化合物とを溶媒中で反応させるステップを含む。
【0026】
本発明に適した酸ペンダントポリマーは、特に限定されない。好ましい実施形態では、このポリマーは、10,000より少ない、好ましくは2,000から6,000の間の数平均分子量(Mn)を有する酸官能性アクリレートコポリマーである。アクリレートコポリマーは、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。典型的には、これらのコポリマーは、不飽和有機酸モノマーとその他の不飽和モノマーとを重合することによって得ることができる。不飽和有機酸モノマーには、酸官能性を提供するために少なくとも1個のカルボキシル基を有するような化合物、例えばアクリル酸又はメタクリル酸が含まれる。適切なその他の不飽和モノマーの例には、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸エトキシエトキシエチル、アクリル酸2−フェニオキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸イソブチル、tert−ブチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
共重合されてもよいその他の非アクリレートモノマーには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、フマル酸ブチル、フマル酸オクチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、アクリルアミド、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル、無水マレイン酸、酪酸ビニル、ビニルメチルエーテル、ビニルアルコール、ビニルピリジン、ビニルトルエン、及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
モノマーは、典型的には、防汚塗料が使用される条件に適切な、必要とされる柔軟性、硬さ、親水性、及びTgを有する非晶質ポリマーが得られるように選択される。研磨速度は、重合したアクリル酸又はメタクリル酸モノマーの量によって制御される。酸モノマーが多いほど、金属アクリレートポリマーが有することになる潜在的な金属エステル官能基は多くなる。他の条件が全て同じなら、金属エステル官能基が多いほど、加水分解が多くなり、したがって研磨速度が速くなる。ベースポリマーの酸官能性は、酸価としても知られる酸性指数に関して測定される。約60及び約140の範囲内の酸価を有する金属エステル官能性ポリマーは、防汚塗料で使用される自己研磨コポリマーの代表例である。
【0029】
反応で使用される亜鉛ピリチオンの形態は、特に限定されない。亜鉛ピリチオンはミリングされていないウェットケークの形態であることができる。亜鉛ピリチオンを生成する方法は、当業者に公知であり、例えば、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,396,766号に開示されている。
【0030】
反応で使用される例示的な銅塩には、炭酸銅、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
使用される銅化合物が銅塩、水酸化銅、又は元素の銅である場合、任意選択で有機酸を反応混合物に添加して、架橋度を制御することができる。より多くの有機酸を使用することは、より多くの金属エステル基が、架橋されるのではなくペンダント状態になることを意味し、このことによりひいてはより多くの亜鉛ピリチオン及び銅化合物が反応に必要とされる。
【0032】
例示的な有機酸には、酢酸、クロロ酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、ベルサチン酸、エチルへキサン酸、安息香酸、ナフテン酸、パルメチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又は任意の脂肪酸、アビエチン酸などのロジン酸、及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。好ましい有機酸は、酢酸、ナフテン酸、及びこれらの組合せである。
【0033】
或いは、カルボン酸銅を、銅塩、水酸化銅、又は元素の銅、及び有機酸の組合せの代わりに使用することができる。カルボン酸銅の代表的且つ非限定的な例には、酢酸銅、ナフテン酸銅、銅キノリノレート、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エチルヘキサン酸銅、ロジン酸銅、及びこれらの組合せが含まれる。好ましい実施形態では、使用されるカルボン酸銅は、酢酸銅、ナフテン酸銅、及びこれらの組合せから選択される。
【0034】
典型的には、反応は、溶媒の存在下で実施される。好ましくは、溶媒は、反応から且つ/又は亜鉛ピリチオンウェットケークからの水がポリマー溶液と混和するように、少なくとも水混和性成分を含有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、水混和性成分及び水不混和性成分を含有する。ペンダント金属エステルを形成するのに使用される有機酸に応じて、溶媒の約25%から約50%が水混和性になることが有利である。例示的な水混和性成分には、メトキシプロパノール、メトキシブタノール、メトキシ−メチルエトキシプロパノール、ブトキシエタノール、エトキシエタノール、及びプロパノールが含まれるが、これらに限定されない。例示的な水不混和性成分には、キシレン、トルエン、エチルベンセン、ナフサ、メチルイソブチルケトン、及びクメンが含まれるが、これらに限定されない。メチルエチルケトン又はブタノールなどの部分的に水混和性の溶媒を使用してもよい。本発明の方法で使用するのに適した例示的な溶媒は、メトキシプロパノール及びキシレンの組合せである。
【0035】
反応は、室温で又は高温で、標準大気圧下で実施することができる。反応では、所望の生成物を得るために、化学量論量の反応物を使用することが常に必要とは限らない。いくつかの実施形態では、モル当量比に関して、亜鉛ピリチオン:酸官能性ポリマー中の酸官能性モノマー:銅化合物=1:1.8〜3.0:0.8〜1.5、好ましくは1:2.0〜2.5:1.0〜1.2、より好ましくは1:2:1を使用することが適切である。有機酸を反応で使用する場合、亜鉛ピリチオン:有機酸及び酸官能性ポリマー中の酸官能性モノマーの合計:銅化合物のモル当量比は、1:1.8〜3.0:0.8〜1.5、好ましくは1:2.0〜2.5:1.0〜1.2、より好ましくは1:2:1である。
【0036】
さらに別の実施形態では、本発明は、亜鉛エステル官能性ポリマーと、銅ピリチオンの粒子とを含有する防汚コーティング組成物であって、この粒子が約8から約15の範囲である平均アスペクト比を有する防汚コーティング組成物を提供する。亜鉛エステル官能性ポリマー及び銅ピリチオンは、酸官能性ポリマーと、亜鉛ピリチオン、並びに銅塩、カルボン酸銅、水酸化銅、及びこれらの組合せから選択される銅化合物とを反応させることによって得られる。好ましくは、組み合わせた亜鉛エステル官能性ポリマー及び銅ピリチオンは、コーティング組成物の全重量に対して約5から約30、より好ましくは約10から約25の量で存在する。
【0037】
本発明の防汚コーティング組成物は、1種又は複数の水溶性樹脂又は僅かに水溶性の樹脂、例えばロジン、ポリビニルエステル、キトサン、又はこれらの組合せをさらに含有してもよい。これらの樹脂の配合量は、好ましくは、コーティング組成物の全重量に対して約1から約20%、より好ましくは約4から約15%の範囲内である。
【0038】
防汚コーティング組成物は、いくつかのその他の添加剤を含んでもよい。例えば、銅金属、亜酸化銅、チオシアン酸銅、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、トリフェニルホウ素ピリジン、トリフェニルホウ素オクチデシルアミン、トラロピリル、クロルフェナピル、トリルフルアニド、又はジクロフルアニドなどの、硬質の汚れを防止する毒素並びに;亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチルチオ4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、ジネブ、ジラム、ポリカルバメート、マネブ、クロロタロニル、及びこれらの任意の混合物などの、軟質の汚れを制御する毒素である。
【0039】
本発明による防汚コーティングは、例えば、亜鉛エステル官能性ポリマーと、銅ピリチオンの粒子と含有し、この銅ピリチオンの粒子が約8から約15の範囲である平均アスペクト比を有する組成物に、樹脂及び/又はその他の毒素を添加することと、これらを任意の従来の手段により混合することとによって、調製することができる。
【0040】
防汚コーティングは、従来の技法によって基板表面上にコーティングされたときに乾燥被膜を形成し、その溶媒は、周囲温度又は高温で蒸発除去される。
【0041】
本発明を、下記の実施例を用いてさらに詳述する。他に明示しない限り、全ての部及びパーセンテージは重量によるものであり、全ての温度は摂氏温度である。
実験
【0042】
(例1)
自己研磨ポリマー及び銅ピリチオンを含有する組成物の調製
A.酸官能性コポリマーの調製
【0043】
添加漏斗、還流冷却器、撹拌子、及び温度計を備えた1リットルの反応フラスコに、メトキシプロパノール89.0グラム、キシレン100.0グラム、及びアクリル酸エチル16.0グラムを添加した。反応混合物を、窒素ブランケットの下で低速で撹拌しながら、95±5℃に上昇させた。
【0044】
下記のモノマー及び開始剤:メタクリル酸メチル40.0グラム、アクリル酸エチル244.0グラム、アクリル酸2−メトキシエチル40.0グラム、メタクリル酸60.0グラム、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)10.0グラム、2,2−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)28.0グラム、メチルスチレンダイマー4.0グラム、及びメトキシプロパノール40.0グラムを、別のフラスコ内で完全に予備混合した。モノマー/開始剤混合物を、反応フラスコに取り付けられた添加漏斗に移し;連続的に撹拌しながら、95±5℃で6時間にわたり一定の速度で反応フラスコに添加した。
【0045】
次に、添加漏斗に、予備混合したメトキシプロパノール(40.0グラム)及びt−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート(2.0グラム)を充填した。このチェイサー混合物を、95±5℃で半時間にわたり、反応フラスコに添加した。反応混合物を、95±5℃でさらに1 1/2時間撹拌した。メトキシプロパノール(32.0グラム)を添加し、反応混合物を、連続的に撹拌しながら室温まで冷ました。
【0046】
ゲル透過クロマトグラフィーを使用して、ポリマーの分子量を測定した。数分子量平均(Mn)は約3,000と測定され、重量平均分子量(Mw)は約7,000と測定された。酸価は、約90であると計算された。
【0047】
B.アクリル酸亜鉛ポリマー及び銅ピリチオンを含有する組成物の調製
【0048】
1/2パイントの混合容器に、上記にて調製された酸官能性アクリルポリマー溶液93.0グラムを添加した。混合溶液を、1’ブレードを有する高速カウルズ型分散器の下に配置した。混合器を1000rpmまで回転させた。混合容器に、60%固形分の亜鉛ピリチオンウェットケーク25.9グラム、メトキシプロパノール26.3グラム、及び酢酸3.0グラムを添加した。混合器の速度を2000rpmに上昇させた。混合容器に、水酸化銅(58%銅)1.45グラムを添加し、その後10分間混合し、引き続き、さらに3バッチの水酸化銅(各バッチ1.45グラム)を添加した。反応混合物が濃い緑色に変化したら、NHOH(29.6%)2.50グラムを混合容器に添加し、撹拌を30分間継続して、アクリル酸亜鉛ポリマー及び銅ピリチオンを含有する組成物を得た。
【0049】
(比較例1)
米国特許第4,774,080号の技術を使用したアクリル酸亜鉛ポリマーの調製
【0050】
本発明と比較するために使用されるアクリル酸亜鉛ポリマーを、米国特許第4,774,080号の技術を使用して作製した。例1の調製で記述された酸官能ポリマーから出発して、アクリル酸亜鉛は、酸化亜鉛14.6グラムを、還流冷却器、窒素入口、添加漏斗、及び温度プローブを備えた反応フラスコ中の酸官能性ポリマー(53.0%不揮発性)100.0グラム、メトキシプロパノール80.0グラム、水3.3グラム、及びナフテン酸5.05グラムに添加することによって作製された。混合物を、100±5℃にした。これとは別に、ナフテン酸15.0グラムを酸官能性ポリマー300.0グラムと混合し、添加漏斗に注いだ。この混合物を、窒素ブランケットの下で6時間にわたり反応フラスコに滴下し、さらに2時間反応させて、46.3%の固形分であるアクリル酸亜鉛コポリマーを得た。
【0051】
(例2)
本発明の方法から形成された銅ピリチオンの分析
【0052】
A.サンプル調製
【0053】
3つのサンプルを、以下に示すように調製した:
【0054】
サンプル:507C、例1、ステップBから調製された銅ピリチオン、メトキシプロパノールを溶媒として使用した;
【0055】
508D、例1、ステップBから調製された銅ピリチオン、メトキシプロパノール/キシレンを溶媒として使用した;
【0056】
513、Arch Chemicals,Inc.から市販されているACM銅ピリチオン。
【0057】
B.顕微鏡画像
【0058】
サンプル507C、508D、及び513の顕微鏡画像を、図1〜3に示す。全ての画像は、Hitachi S−300N走査型電子顕微鏡を使用して得られた。
【0059】
B.アスペクト比の分析
【0060】
手順:アスペクト比は、ミクロンスケールを粒子画像上に重ね、粒子の幅及び長さとスケールとを視覚的に比較することによって決定した。長さを幅で割ることによりアスペクト比が決定される。画像は、Hitachi S−300N走査型電子顕微鏡を使用して得られた。
【0061】
結果:表1に示される結果は、本発明の方法から調製された粒子状の銅ピリチオンが、市販のミリング済みの銅ピリチオンの平均アスペクト比に比べて非常に高い平均アスペクト比を有することを実証する(12.2及び9.1対4.3)。さらに、本発明の銅ピリチオンサンプルの両方に関しては、20以上のアスペクト比を有する粒子が少なくとも5%あるのに対し、市販のミリング済みの銅ピリチオンでは、15よりも大きいアスペクト比を有する粒子がない。
【表1】

【0062】
C.凝集−沈降データ
【0063】
例2、パートBに記述される、同じ重量のサンプル507C、508D、及び513を、同じ重量のキシレンに混合して、サンプルC、D、及びAを得た。サンプルを、その沈降に関して1時間後(図4)及び24時間後(図5)に測定した。その場で形成された粒子のサンプル(C及びD)は両方とも、従来の方法による銅ピリチオン(A)よりも少ない量で沈降した。より高いアスペクト比を有するサンプル(C)が、最も少ない量で沈降した。
【0064】
(例3)
防汚コーティング組成物
【0065】
本発明によるコーティング組成物(P)は、高速混合器を使用して、例1から得られた組成物を、表2に詳述されるその他の材料と共にブレンドすることによって調製した。
【0066】
比較コーティング組成物(J)は、高速混合器を使用して、比較例1から調製されたアクリル酸亜鉛、市販の銅ピリチオン、及び表2に示されるその他の材料をブレンドすることによって得られた。
【表2】

【0067】
次に、上記コーティング組成物J及びFのそれぞれを、2部のエポキシで予めプライム処理した2枚のガラス繊維強化ポリエステル(GRP)パネルの表面上に、合計で2つの防汚コーティングを得ることを目的としてローラーによって2回塗布した。各パネルの乾燥防汚コーティングの全重量は、下記の通りである:
J−1 J−2 P−1 P−2
35.85 36.36 33.86 35.41
【0068】
次いで上記試験パネルを、2”×6”×8’の圧力処理されたサザンイエローパインのボードに固定し、海水中に1年間、垂直に吊るした。試験は、Rybovich Marina、West Palm Beach、FLで実施し、その結果を図6に示した。
【0069】
結果は、アクリル酸亜鉛ポリマーとその場で生成した銅ピリチオンとを含有する本発明のコーティング組成物が、アクリル酸亜鉛ポリマーと従来の方法によって調製されたミリング済みの銅ピリチオンとを含むコーティング組成物よりも、その防汚効率に関してより良好に機能することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛エステル官能性ポリマーと、銅ピリチオンの粒子とを含む組成物であって、前記粒子が約8から約15、好ましくは約9から約12の範囲内の平均アスペクト比を有する上記組成物。
【請求項2】
前記亜鉛エステル官能性ポリマーがアクリル酸亜鉛ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記亜鉛エステル官能性ポリマー及び前記銅ピリチオンが、酸官能性ポリマーと、亜鉛ピリチオン、並びに銅塩、カルボン酸銅、水酸化銅、元素の銅、及びこれらの組合せからなる群から選択される銅化合物とを反応させることによって得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸官能性ポリマーが酸官能性アクリレートコポリマーである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
酸官能性アクリレートコポリマーが、10,000よりも低い、好ましくは2,000から6,000の間の数平均分子量を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
酸官能性アクリレートコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される不飽和有機酸モノマーから誘導される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記銅塩が、炭酸銅、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記銅化合物が水酸化銅である、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
酢酸、クロロ酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、ベルサチン酸、エチルヘキサン酸、安息香酸、ナフテン酸、パルメチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、脂肪酸、ロジン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される有機酸をさらに含む、請求項7又は請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記有機酸が酢酸又はナフテン酸である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記カルボン酸銅が、酢酸銅、ナフテン酸銅、銅キノリノレート、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エチルヘキサン酸銅、ロジン酸銅、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
前記カルボン酸銅が酢酸銅又はナフテン酸銅である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
銅ピリチオンの前記粒子が、約3から約5ミクロンのD50を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載の組成物を含有する防汚コーティング組成物。
【請求項15】
水溶性又は僅かに水溶性の樹脂をさらに含み、前記樹脂が、コーティング組成物の全重量に対して約4から約15%の量で存在する、請求項14に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項16】
樹脂が、ロジン、ポリビニルエーテル、キトサン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項17】
銅金属、酸化銅、チオシアン酸銅、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、トリフェニルホウ素ピリジン、トリフェニルホウ素オクチデシルアミン、トラロピリル、クロルフェナピル、トリフルアニド、ジクロフルアニド、亜鉛ピリチオン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、ジネブ、ジラム、ポリカルバメート、マネブ、クロロタロニル、及びこれらの組合せからなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項14に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項18】
酸官能性ポリマーと、亜鉛ピリチオン、並びに銅塩、カルボン酸銅、水酸化銅、元素の銅、及びこれらの組合せから選択される銅化合物とを、溶媒中で反応させるステップを含む、請求項1に記載の組成物を生成するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−520417(P2013−520417A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553932(P2012−553932)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/023865
【国際公開番号】WO2011/102983
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512214568)アーチ ケミカルズ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】