説明

アクリレートコポリマーを含有する水性組成物の製造においてポリマー被膜を取り除く方法

本発明は、陰イオン性アクリレートコポリマーを含有する組成物から溶媒が蒸発することによって生じる付着性ポリマー被膜を硬質表面から除去するのを促進する方法に関し、この方法は、組成物中にリン酸エステル界面活性剤を導入し、前記被膜が付着した表面から前記被膜を洗浄することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリレートコポリマーを含有する組成物から溶媒が蒸発することによって生じる付着性ポリマー被膜を硬質表面から除去するのを促進する方法に関し、この方法は、組成物中にリン酸エステル界面活性剤を導入し、前記被膜が付着した表面から前記被膜を洗浄することを含む。特に本発明は、酸化剤;アクリレートコポリマー及び1以上のリン酸エステル界面活性剤を含有する組成物に関し、この組成物はステンレススチール設備を使用して製造される。
【背景技術】
【0002】
酸化染料前駆体は、過酸化水素の存在下で酸化カップリングを起こし、繊維の外表面に着色分子を形成する無色化合物である。このような前駆体、すなわち主要中間体及びカップラーは、毛髪を永久に着色するための化粧品のベースとなる。
【0003】
実際には酸化毛髪染料製品は、2つの部分−溶媒系に染料前駆体を含有する毛髪染料組成物、及び酸化剤、とりわけ過酸化水素を含む顕色剤組成物で構成される。第1及び第2の部分は毛髪に適用する直前に混合され、その際に酸化剤の存在によって前駆体が酸化的カップリングをすることができる。
【0004】
毛髪に適用される時の最終混合物は、毛髪に留まり、適用の間に流れたり、滴ったりすることがないように、好ましくはチキソトロピー粘性を有する増粘化液体でなければならない。多くの種々の増粘系がこの目的のために使用されている。この目的に使用される濃厚剤の1つの部類は、アクリレートコポリマー、例えば酸性過酸化水素顕色剤組成物に包含され得る商品名アクリン(Aculyn)33で販売されるアニオン性ポリマーである。(アクリレートコポリマーは国際化粧品成分辞書によってアクリル酸/メタクリル酸コポリマーに使用される化学表記である。)酸性pHにおいて、前記陰イオン性アクリレートコポリマーは酸性形態であり、前記過酸化物顕色剤組成物は薄い自由流動液体である。前記毛髪染料及び過酸化物顕色剤組成物を混合すると前記混合物のpHはアルカリ性になり、ポリマーは中和されて、増粘化が起こる。
【0005】
このようなポリマーを増粘化酸化染料に使用することを記載した多数の特許が登録されており、それには次のものが挙げられる:米国特許第4,776,855号;米国特許第5,393,305号;米国特許第5,376,146号;米国特許第5,976,195号;米国特許第5,988,295号;米国特許第6,074,439号;及び米国再発行特許第33,786号、前述の特許は本明細書に参考として組み込まれる。
【0006】
酸化毛髪染料製品組成物、すなわち第1部分としての毛髪染料組成物及び第2部分としての顕色剤組成物の混合物を含む組成物を増粘化するこの方法は、個々の第1部分毛髪染料組成物及び第2部分顕色剤組成物がそれぞれ極めて水性であることができ、すなわち高粘度であることも特定のレオロジーを有することも必要とされないので有利である。それ故に、得られる極めて水性の増粘化した毛髪染料製品組成物は、高い染色効率を有することを特徴とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
不利益なことに、本発明の陰イオン性アクレートコポリマーは製造に使用される装置(例えば、混合槽、保存槽、など)に付着性のポリマー被膜を形成する傾向にあり、これは除去するのが困難であり、広範囲の洗浄の手法を必要とする。例えば、熱アルカリ溶液の使用は、ある程度の成果を出している。例えば過酸化水素組成物を配合するのにステンレススチール容器を使用する場合、このような容器を擦り洗いすると容器表面に傷ができるため次に使用する前に容器表面を再び保護しなければならず、とりわけやっかいな問題になる。
【0008】
顕色剤組成物は、様々な界面活性剤、例えばセテアレス−20及びノノキシノール−4のようなポリエトキシレート化アルコール類及びフェノール類、並びにスルフェート化ヒマシ油のような陰イオン性界面活性剤を含有することが知られている。かかる界面活性剤が前記陰イオン性のアクリレートコポリマー含有組成物中に存在する場合であっても、前記ポリマーは付着性のポリマー被膜を形成する傾向にあり、製造容器の洗浄が深刻な問題になっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づき、陰イオン性のアクリレートコポリマーを含有する組成物の製作過程でこのようなポリマーと接触し、ポリマー被膜が形成された硬質表面、例えばガラス及び金属の洗浄を促進するための方法を提供する。被膜は、前記陰イオン性のアクリレートコポリマーが導入されている組成物を製作する過程で溶媒、通常は、水又は水溶性の有機溶媒混合物が蒸発する際に、表面に付着するポリマー残渣が残留することによって形成される。製造される前記組成物は混合工程を常に必要とするため、ポリマー溶液又は分散液は混合容器の壁と接触することになり、容器が洗浄される前にポリマー被膜が形成されることが多い。同様に、配管、攪拌器、保存槽、ポンプ及び化学製造プラントに通例見られるその他の設備は、溶解又は分散の際にポリマーと接触し、続いて溶媒が蒸発すると残留性のポリマー被膜が残る。さらに、ポリマー含有組成物を使用中、例えばポリマー溶液をマンホールを通して容器にこぼしながら移すと起こる可能性のある流出によって、外部表面及び土台などにポリマー被膜が生じる。これは、陰イオン性のアクリレートコポリマー自体を製造中、とりわけ販売前の陰イオン性ポリマーの水溶液又は水性分散液の保存中にも起こり得る。
【0010】
驚くべきことに発明者らは、前記陰イオン性のアクリレートコポリマーが、ポリマーの溶液及び分散液と接触する表面上に付着性のポリマー被膜を形成する傾向を、前記溶液又は分散液中にリン酸エステル界面活性剤を存在させることで顕著に低下できることを見出した。
【0011】
前記陰イオン性のアクリレートコポリマーはホモポリマー又はコポリマーであってもよく、及び直鎖、非直鎖であってもよく、又は架橋していてもよい。
【0012】
前記リン酸エステル界面活性剤は次の一般構造を有する:
【0013】
【化1】



式中R、R1及びR2は水素、1〜約22個の炭素、好ましくは約12〜約18個の炭素を有するアルキル、又は1〜約22個の炭素、好ましくは約12〜18個の炭素を有し、1以上、好ましくは約2〜約25、最も好ましくは2〜12モルのエチレンオキサイドを有するアルコキシル化アルキルであってもよいが、ただしR、R1及びR2の少なくとも1つは、前に定義したようなアルキル又はアルコキシル化アルキルであるが、このアルキル又はアルコキシル化アルキル基中においては少なくとも6個のアルキル炭素を有する。
【0014】
本発明によれば、アクリレートポリマーを含有する組成物、特に水性組成物の製造、移送、保存中に使用され、前記ポリマーが付着性被膜を形成している表面、とりわけ金属表面、特に槽、配管、攪拌器、ポンプなどを洗浄する方法を提供し、この方法は、前記組成物中にリン酸エステル界面活性剤を含むこと、及び表面を洗浄してポリマー被膜を実質的に取り除くことを含む。
【0015】
本発明の別の態様においては、アクリレートコポリマー(国際化粧品成分辞書の専門用語)が濃厚剤として使用される水性組成物を提供し、この水性組成物はさらにリン酸エステル界面活性剤を含み、それによって組成物の蒸発乾燥によって硬質表面上に生じるポリマーの付着性被膜を前記表面からより容易に除去できる。それ故に、好適な組成物はアクリレートコポリマー;前記リン酸エステル界面活性剤及び水を含む。特に前記リン酸エステル界面活性剤が存在すると、金属、最も具体的にはステンレススチール表面からの前記組成物の除去が促進される。
【0016】
ステンレススチールが、アクリレートコポリマー含有組成物を製造する施設における処理設備用の構築材料として使用される場合本発明は最も有利である。これは、アクリレートコポリマーの除去し難い被膜を激しく除去すると、設備、とりわけ混合槽のステンレスチール表面を損傷し得るからである。かかる損傷により、表面を再び保護することが必要となる場合がある。それ故に、アクリレートコポリマー含有組成物中に前記リン酸エステル界面活性剤を導入することにより組成物の製造プロセス中又はプロセス後に形成されるいかなるポリマー被膜の除去をも促進させ、ステンレススチール表面を損傷する傾向を低下させる。
【0017】
かかる利益は、前記被膜形成性のアクリレートコポリマーを含有するいかなる製品組成物の製造にも重要であり、ステンレススチールを使用する場合にはとりわけ重要である。1つのかかる例としては、前記酸化染料前駆体の毛髪染料組成物及び、酸化剤、最も通常的には過酸化水素を含有する顕色剤組成物とを含む酸化毛髪染料製品を製造する場合が挙げられる。ステンレススチールが過酸化水素及び多くの他の酸化剤用に選択された構築材料である場合に、前記顕色剤組成物の製造に陰イオン性のアクリレートコポリマーを導入してよい。
【0018】
本発明はさらに、適切な溶媒中に溶液又は分散液として、被膜形成性のアクリレートコポリマーを含有する組成物に関する。特に本発明は、酸化毛髪染料製品用の非結合型増粘剤としてアクリレートコポリマーを含有するような組成物に関し、このコポリマーは前記製品の顕色剤組成物中に存在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、ガラス又は金属のような硬質表面、特に金属表面、及びとりわけステンレススチール表面を洗浄する方法に関し、この表面上には、ポリマーが溶解又は分散した溶媒の蒸発によって生じるアクリレートコポリマーのポリマー被膜が形成されている。本発明によれば、組成物の製造過程でリン酸エステル界面活性剤を導入することにより、前記被膜の除去を促進できる。
特に本発明の方法は、激しい洗浄中に損傷され、それによって表面の再保護が必要となるステンレススチール表面の洗浄に関する。
【0020】
(アニオン性アクリレートコポリマー)
アクリレートコポリマーは、本明細書に参考として組み入れる国際化粧品成分辞書及び便覧(第8編、2000年)で使用される化学表記であり、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの単純なエステル類のコポリマーであり、及びかかるコポリマーのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩であってよい。アクリレートコポリマーの実例はローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)により販売されているアクリン(Aculyn)33;セピック(Seppic)より販売されているカピゲル(Capigel)98;BASFより販売されているルビマー(Luvimer)30E;及びアライド・コロイズ(Allied Colloids)より販売されているサルケア(Salcare)SC833である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、酸化毛髪染料製品に使用するための酸化剤を含有するポリマー増粘化酸性顕色剤組成物である。もちろん酸性組成物においては、ポリマー塩を利用しない。
【0022】
本明細書で使用する時、用語「毛髪染料組成物」は、前記顕色剤組成物と混合される前の、主要中間体及びカップラー酸化染料を含有する組成物のことを言う。用語「顕色剤組成物」は、前記毛髪染色組成物と混合する前の、酸化剤、特に過酸化水素を含有する組成物のことを言う。用語「毛髪染料製品」又は「毛髪染料系」は、混合前の毛髪染色組成物及び顕色剤組成物の組み合わせのことを互換的に言い、コンディショナー製品及び使用説明書をさらに含んでもよく、このような製品又は系は、キットとして包装された状態で提供されることが多い。用語「毛髪染料製品組成物」は、毛髪染料組成物と顕色剤組成物とを混合することによって形成される組成物のことを言う。
【0023】
かかる酸性毛髪染料製品に濃厚剤として使用されるアクリレートコポリマーは顕色剤組成物に組み込まれ、それは酸性pHを有する。酸性pHにおいて、前記ポリマーは前記組成物中に溶解又は組成物中に分散するが、アルカリpHにおいて前記ポリマーは組成物を濃厚化する。これは、顕色剤組成物をアルカリ毛髪染料組成物と混合して毛髪染料製品組成物を形成する際に起こる。ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)からのアクリン(Aculyn)33はこの目的のために好ましい。参考として組み込む技術パンフレットFC−310a、パーソナル・ケアのためのアクリン(Aculyn)増粘剤及び安定剤(Aculyn Thickeners and Stabilizers For Personal Care)、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)(1996年、5月)を参照されたい。
【0024】
(リン酸エステル界面活性剤)
本発明の組成物の第2の必須成分は、前記リン酸エステル界面活性剤である。アクリレートコポリマーを含有する組成物中に前記リン酸エステル界面活性剤を導入することによって、溶媒が蒸発する際に硬質表面に形成される前記ポリマーの被膜をより容易に除去できることを見出した。
【0025】
本発明の組成物中に導入するのに好適なリン酸エステルは、次の式を有する。
【0026】
前記リン酸エステル界面活性剤は次の一般構造を有する:
【0027】
【化2】



式中R、R1及びR2は水素、1〜約22個の炭素、好ましくは約12〜約18個の炭素を有するアルキル、又は1〜約22個の炭素、好ましくは約12〜18個の炭素を有し、1以上、好ましくは約2〜約25、最も好ましくは2〜12モルのエチレンオキサイドを有するアルコキシル化アルキルであってもよいが、ただしR、R1及びR2の少なくとも1つは、前に定義したようなアルキル又はアルコキシル化アルキルであるが、このアルキル又はアルコキシル化アルキル基中においては少なくとも6個のアルキル炭素を有する。
【0028】
式中R1及びR2が水素であり、及びRが10〜18個の炭素を有するアルキル及び10〜18個の炭素を有し、2〜12モルのエチレンオキサイドを有するアルコキシル化脂肪族アルコールから選択されるようなモノエステルが好ましい。好ましいリン酸エステル界面活性剤のうち、例としてはC12〜16パレス−6ホスフェート、C8〜10アルキルエチルホスフェート、C9〜15アルキルホスフェート、セテアレス−2ホスフェート、セテアレス−4ホスフェート、セテアレス−5ホスフェート、セテアレス−10ホスフェート、セテス−8ホスフェート、セテス−10ホスフェート、セチルホスフェート、C6〜10パレス−4ホスフェート、C12〜13パレス−10ホスフェート、C12〜15パレス−2ホスフェート、C12〜15パレス−3ホスフェート、C12〜15パレス−6ホスフェート、C12〜15パレス−8ホスフェート、C12〜15パレス−10ホスフェート、C12〜16パレス−6ホスフェート、DEA−セテアレス−2ホスフェート、DEA−セチルホスフェート、DEA−オレス−3ホスフェート、DEA−オレス−5ホスフェート、DEA−オレス−10ホスフェート、DEA−オレス−20ホスフェート、デセス−9ホスフェート、デセス−4ホスフェート、及びデセス−6ホスフェートが挙げられる。
【0029】
(溶媒)
本発明の組成物は水性であり、単独溶媒として水を含んでいてもよく、又は一価アルコール又は多価アルコールのような本質的に水溶性の有機溶媒と組合わせて水を含んでいてもよい。前記組成物は十分な量の溶媒を含有するので、前記ポリマーは前記組成物中に溶解又は組成物中に分散する。好ましくは水は前記溶媒系の主要な構成成分である。好ましくは、溶媒は重量に基づいた組成物の約60重量%〜約93重量%、最も好ましくは約70重量%〜約85重量%から構成される。
【0030】
有用な有機溶媒は、C1〜C6アルコール、及びC2〜C8ポリオールである。本発明の溶媒系に使用するのにとりわけ有用なアルコールは、エチルアルコール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールである。とりわけ有用な本発明の多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール及びグリセリンである。
アルコール類は、通常は、組成物の約0重量%〜約25重量%含まれる。
【0031】
(好ましい組成物)
本発明の好ましい組成物は過酸化水素を含有し、酸化毛髪染料製品において顕色剤組成物として使用される。
【0032】
前記顕色剤組成物は組成物の重量を基準として次のものを含む:(a)約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは0.2重量%〜5重量%、最も好ましくは0.5重量%〜2.5重量%のアクリレートコポリマー;(b)約1重量%〜約15重量%、好ましくは3重量%〜12重量%、最も好ましくは3重量%〜9重量%の過酸化水素;(c)約0.1重量%〜約15重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%、最も好ましくは0.5重量%〜5重量%のリン酸エステル界面活性剤、及び(d)溶媒。
【0033】
過酸化水素酸化剤を含有する前記顕色剤組成物の製造において、過酸化水素によって生じる腐食を防止するためにステンレススチール設備、特にステンレススチール混合槽を使用する必要性がある。
【0034】
さらに、酸性pH、通常約2.5〜約6.5のpHを有する顕色剤組成物は、組成物の均一性を確保するために必要な、混合中に発泡する傾向がある。結果として、混合終了時に素早く乾燥する顕色剤組成物の薄層で槽の側壁が被覆される。結果的なポリマー被膜は取り除くのが極めて困難であることが認められており、高アルカリ洗浄製品とともに用いることが多い、高圧力洗浄スプレーに曝す必要がある。かかる処理は、混合槽のステンレススチール表面に損傷を引き起こす場合があり、再保護が必要となる。これは、顕色剤組成物が通常、ノノキシノール−2、ノノキシノール−4、C11〜C15パレス−7、C12〜C15パレス−9及びC12〜C15パレス−3のような非イオン性界面活性剤を含有する場合であっても変わらない。
【0035】
前記顕色剤組成物への前記リン酸エステルの導入が、ステンレススチール側壁へのポリマー被膜の靭性を低減するのに有効であることを見出した。
【0036】
顕色剤組成物は、好適ないずれかの酸化剤、特に過酸化水素、及びその付加化合物を含有する。そのため、好適な酸化剤としては、過酸化尿素、過硫酸、過ホウ酸及び過カルバミン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、特にナトリウム塩、並びに過酸化メラミンが挙げられる。酸化剤は、好ましくは3%〜12%(10〜40体積)、最も具体的には6%の過酸化水素水溶液として存在する。例えば、デナベル(deNavarre)の「化粧品の化学及び製造(The Chemistry and Manufacture of Cosmetics)」、第IV巻、847〜850頁(第2版、1975年)を参照のこと。
【0037】
本発明の顕色剤組成物はまた、陰イオン性のアクリレートコポリマー、過酸化水素、リン酸エステル界面活性剤及び水の他に1以上の追加成分を含有していてもよい。
それ故に顕色剤組成物は、酸性pH、好ましくは約3〜約5.5、最も好ましくは約3.5〜約4.5の範囲のpHを提供するために酸性化剤を含有していてもよい。このpHにおいて顕色剤組成物は、好ましくは本質的にニュートン流体レオロジーを有し、約1000cps未満、好ましくは約500cps未満、最も好ましくは100cps未満の粘度を有する。好ましいポリマー濃厚剤はアクリン(Aculyn)33、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)から販売されるアクリル酸、メタクリル酸又はそれらの単純なエステルの1つの2つ以上のモノマーのコポリマーである。pHを上昇させて中和することにより、この高分子増粘剤が透明な粘稠溶液に変化する。かかる増粘化は、前記顕色剤が前記アルカリ性毛髪染料組成物と混合されて、約8〜約11、好ましくは約9〜10.5のpHを有する毛髪染料製品組成物を調整する際に起こる。有利なことに、アクリン(Aculyn)33ポリマーは酸化物に対して安定している。。最も好ましくは結合性及び非結合性ポリマーの混合物が使用される。米国特許第5,376,146号を参照のこと。
【0038】
前記顕色剤組成物は、前記リン酸エステル界面活性剤以外の界面活性剤も含んでいてもよく、この界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性、及び両性(双性イオンを含む)界面活性剤から成る群から選択される。本明細書で使用する時、「界面活性剤」は陽イオン性界面活性剤又はリン酸エステル界面活性剤以外の界面活性剤を意味する。
【0039】
(一般にヘアコンディショニング物質として含まれる陽イオン界面活性剤は、以下に別々に考慮される。)陽イオン界面活性剤以外の適切な界面活性剤としては、脂肪族アルコールサルフェート、エトキシル化脂肪族アルコールサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベタイン、エトキシル化脂肪族アルコール、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化アルキルフェノール、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールのブロックコポリマー、グルセロールエステル、リン酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド及びエトキシル化脂肪酸エステル、アルキルサルフェート、エトキシル化アルキルサルフェート、アルキルグリセリルエーテルスルホネート、メチルアシルタウレート、アシルイセチオネート、アルキルエトキシカルボキシレート、脂肪酸モノ−及びジエタノールアミドなどが挙げられる。
【0040】
前記顕色剤組成物中の界面活性剤の量は、通常約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約1重量%〜約15重量%である。
【0041】
顕色剤組成物はまたコンディショニング剤を含んでもよい。コンディショニング剤として好適な物質としては、シリコーン及びシリコーン誘導体;炭化水素油;モノマー性四級化合物である陽イオン性界面活性剤及び四級化されたポリマーが挙げられる。モノマー性四級化合物は、通常は陽イオン化合物であるが、ベタイン類、及びコンディショニング効果を提供する他の両性及び双性イオン物質を挙げることもできる。好適なモノマー性四級化合物としては、塩化ベヘントリモニウム、塩化ステアラルコニウム及び多くの他の化合物が挙げられる。参考として組み込まれるPCT国際公開特許WO98/27941を参照のこと。四級化ポリマーは、通常は陽イオン性ポリマーであるが、両性及び双性イオンのポリマーも挙げられる。有用なポリマーとしては、ポリクアテルニウム−4、ポリクアテルニウム−6、ポリクアテルニウム−7、ポリクアテルニウム−8、ポリクアテルニウム−9、ポリクアテルニウム−10、ポリクアテルニウム−22、ポリクアテルニウム−32、ポリクアテルニウム−39、ポリクアテルニウム−44、及びポリクアテルニウム−47が挙げられる。毛髪のコンディショニングに好適なシリコーンは、ジメチコーン、アモジメチコーン、ジメチコーンコポリオール及びジメチコノールである。
【0042】
好適なシリコーンについては参考として組み込まれたPCT国際公開特許WO99/34770(1999年7月15日発行)も参照のこと。適切な炭化水素油には鉱油が挙げられる。
【0043】
コンディショナーは、通例では、前記毛髪顕色剤組成物中に、前記毛髪染料組成物の約0.01〜約5重量%の量で存在する。
【0044】
他の任意構成成分としては、それらの機能目的を達成するのに有効な濃度にてEDTAのようなキレート剤及び金属イオン封鎖剤、分散剤、浸透剤などが挙げられる。
【0045】
(硬質表面を洗浄する方法)
本発明の陰イオン性の両親媒性である被膜形成性ポリマー含有組成物が蒸発する際に形成されるポリマー被膜を、洗浄性組成物を用いて表面を洗浄することによって取り除く。
本明細書で使用する時、洗浄性組成物は表面をすすぐための媒質としての水を含んでいてもよいが、好ましくは洗浄性活性物質の水溶液である。洗浄性活性物質には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム(匂いのために好ましくはない)、モノ−、ジ−及びトリエタノールアミン類のようなアルカリ物質;本発明のリン酸エステルを含む陰イオン性、非イオン性及び両性界面活性剤、及びこれらの相溶性混合物が含まれ得る。好ましくは、洗浄性組成物のpHは、アルカリ性又は中性であり、最も具体的に約8〜約10のpHを有するアルカリ性である。具体的に有用な洗浄液は、5%〜15%、好ましくは10%水溶液の形態の市販の腐食剤含有洗浄液であるDuBoisT−Offである。DuBoisT−Off溶液は、好ましくは高温、特に約45℃〜65℃にて使用される。好ましくは前記洗浄性組成物は、約15〜約65psig、最も好ましくは約20〜約40psigの穏やかな圧力下で被膜が除去されるまでスプレーされる。洗浄時間は、洗浄性溶液の特性、洗浄温度、洗浄の間の時間、及び被膜の経年数に応じて変わる。一般に洗浄時間は、1〜数分から長期間に蓄積された被膜の場合の2時間までである。通例では、被膜は1時間未満の間に実質的に、例えば90%以上の被膜が取り除かれる。洗浄性組成物の適用は、ハケ、ブラシ又はその他の装置を用いる擦り洗いによって行われてもよい。擦り洗いは、洗浄される表面がステンレススチールの場合には好ましくない。
【0046】
以下の実施例により本発明を説明する。本願においてパーセンテージは、特に指示がない限り全組成物の重量を基準とする。
【実施例1】
【0047】
(実施例1及び2)
6.15%の過酸化水素(約20体積H22);陰イオン性のアクリレートコポリマー濃厚剤、pHを2.5〜5にするために十分な酸性化剤を含有し、及び前記リン酸エステル界面活性剤ラウレス−4ホスフェートの濃度を変化させた2つの顕色剤組成物の実施例を以下の表1に示す。
【0048】
【表1】



1.アクリン22は、30%活性ポリマー分散液であり、アクリンは28%活性ポリマー分散液である。
2.濃度は、「到達」基準である。
【0049】
陰イオン性のアクリレートコポリマーを含有するこのような顕色剤中リン酸エステル界面活性剤を有する利益は、金属表面上のポリマー被膜の付着性及び除去性をシミュレートする次の実験によって示される。ある量(0.5g)の顕色剤溶液をステンレスプレート(7cm×2cm)に均一にスプレーし、室温にて一晩乾燥させて厚いポリマー残渣を形成する。0.2gの顕色剤溶液を使用する時は、薄いポリマー残渣が製造される。次いでポリマー残渣を流速2リットル/分の水道水(30℃)ですすぐ。すすぎを、ポリマー被膜がプレートから完全に取り除かれるまで続ける。それにかかる時間(又はすすぎ時間)を記録する。種々の顕色剤組成物におけるすすぎ時間を以下の表2に示す。リン酸エステルを含まない組成物からポリマー残渣を取り除くのにかかる時間は、120秒を超える。
【0050】
リン酸エステルを含むように配合された時、約2秒〜30秒未満の範囲のより短時間に取り除かれる。
【0051】
【表2】



【0052】
本発明は酸化毛髪染色顕色剤配合物と関連させて記載されているが、本発明は、陰イオン性のアクリレートコポリマーを用い、所望でない被膜残渣を形成する潜在的な問題のあるあらゆる種類の配合物に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレートコポリマーを含有する水性組成物から溶媒が蒸発する際に表面上にこのポリマーのポリマー被膜が形成された表面を洗浄する方法であって、該方法が次の工程:
(a)前記組成物の調製の際に前記組成物中にリン酸エステル界面活性剤を導入すること、及び
(b)前記硬質表面を洗浄性組成物で洗浄して実質的に前記ポリマー被膜を取り除くこと、を含む。
【請求項2】
前記表面が、ガラス及び金属から成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面が金属である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面がスチールである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記表面がステンレスチールである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が過酸化水素を含み、酸性pHを有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アクリレートコポリマー及び酸化剤を含有する水性の酸性組成物を製造、移送及び保存する際に使用されるステンレス表面であって、この上に前記ポリマーが付着性被膜を形成している表面を洗浄する方法であって、前記方法が次の工程:
【化1】



(a)式Iのリン酸エステル界面活性剤を導入すること:
式中R、R1及びR2は、水素、1〜約22個の炭素を有するアルキル、又は1〜約22個の炭素及び1又は約25モルまでのエチレンオキサイドを有するアルコキシル化アルキルであってよく、ただしR、R1及びR2の少なくとも1つは前に定義したようなアルキル又はアルコキシル化アルキルであるが、前記アルキル又はアルコキシル化アルキル基に少なくとも6個のアルキル炭素を有することを条件とし、並びに
(b)前記金属表面を洗浄性組成物で洗浄して実質的に前記ポリマーを取り除くこと、を含む方法。
【請求項8】
前記酸化剤が過酸化水素である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記洗浄性組成物が、約8〜約10のpHを有するアルカリ性溶液である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄性組成物を、約20〜40psigの穏やかな圧力下で適用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
組成物の重量を基準として:
(a)約1%〜約15%の過酸化水素酸化剤;
(b)約0.1重量%〜15重量%のリン酸エステル界面活性剤;
(c)約0.1%〜約10%のアクリレートコポリマー;及び
(d)水、
を含む顕色剤組成物であって、前記組成物が酸性pHを有し、前記組成物の蒸発時に形成されるポリマー被膜が、この被膜が付着した表面からより容易に取り除かれる顕色剤組成物。
【請求項12】
前記pHが約2.5〜約6.5である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
2〜C6一価アルコール及び多価アルコールから成る群から選択される有機共溶媒をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記リン酸エステル界面活性剤が、C12〜16パレス−6ホスフェート、C8〜10アルキルエチルホスフェート、C9〜15アルキルホスフェート、セテアレス−2ホスフェート、セテアレス−4ホスフェート、セテアレス−5ホスフェート、セテアレス−10ホスフェート、セテス−8ホスフェート、セテス−10ホスフェート、セチルホスフェート、C6〜10パレス−4ホスフェート、C12〜13パレス−10ホスフェート、C12〜15パレス−2ホスフェート、C12〜15パレス−3ホスフェート、C12〜15パレス−6ホスフェート、C12〜15パレス−8ホスフェート、C12〜15パレス−10ホスフェート、C12〜16パレス−6ホスフェート、DEA−セテアレス−2ホスフェート、DEA−セチルホスフェート、DEA−オレス−3ホスフェート、DEA−オレス−5ホスフェート、DEA−オレス−10ホスフェート、DEA−オレス−20ホスフェート、デセス−9ホスフェート、デセス−4ホスフェート、及びデセス−6ホスフェートから成る群から選択される、請求項11に記載の組成物。

【公表番号】特表2005−506395(P2005−506395A)
【公表日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−568669(P2002−568669)
【出願日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2002/005399
【国際公開番号】WO2002/068572
【国際公開日】平成14年9月6日(2002.9.6)
【出願人】(502371141)ピーアンドジー−クレイロール・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】P&G−Clairol, Inc.
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, Ohio 45202, U.S.A.
【Fターム(参考)】