説明

アゴニスト抗trkC抗体および該抗体を用いる方法

本発明は、アゴニスト抗trkC抗体、ポリペプチド、およびこれらをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明はさらに、ニューロパシー、例えばタキソール誘導性感覚性ニューロパシー、シスプラチン誘導性感覚性ニューロパシー、およびピリドキシン誘導性感覚性ニューロパシーを含む感覚性ニューロパシーの治療および/または予防における、こうした抗体、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロス・リファレンス
本出願は、仮出願米国第60/532,592号、2003年12月23日出願に優先権を請求し、該出願は完全に本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、アゴニスト抗trkC抗体およびポリペプチドに関する。本発明は、感覚性ニューロパシーなどの疾患の治療および/または予防における、こうした抗体およびポリペプチドの使用にさらに関する。
【0003】
連邦政府が資金援助した研究または開発に関する説明
該当なし。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ニューロトロフィンは、小型ホモ二量体タンパク質のファミリーであり、神経系の発生および維持に重大な役割を果たす。ニューロトロフィン・ファミリーのメンバーには、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、ニューロトロフィン−4/5(NT−4/5)、ニューロトロフィン−6(NT−6)、およびニューロトロフィン−7(NT−7)が含まれる。ニューロトロフィンは、他のポリペプチド増殖因子と同様、細胞表面受容体との相互作用を通じて、ターゲット細胞に影響を及ぼす。現在の知識によると、2種類の膜貫通糖タンパク質がニューロトロフィン類の受容体として働く。ニューロトロフィン応答性ニューロンは、p75NTRまたはp75とも称され、2x10−9MのKDでNGF、BDNF、NT−3およびNT−4/5に結合する、共通の低分子量(65〜80kDa)低親和性受容体(LNGFR);並びに高分子量(130〜150kDa)高親和性(10−11M範囲のKD)受容体を所持し、これらは受容体チロシンキナーゼのtrkファミリーのメンバーである。trk受容体ファミリーの同定されたメンバーは、trkA、trkB、およびtrkCである。
【0005】
TrkCは中枢神経系で、そして末梢神経系のニューロンのサブセット上で広く発現される。TrkCはまた、いくつかの副交感腸ニューロン、およびいくつかの非神経組織上でも発現される。TrkCは、交感ニューロン、およびDRG一次感覚ニューロンのサブセットであるDRGの大径線維(large fiber)感覚ニューロン上で発現される。大径線維感覚ニューロンは、末梢へと伸びる巨大な有髄軸索を有し、該軸索を通じて、自己受容、並びに繊細な触角および振動の感覚に関する情報を運ぶ。
【0006】
全長天然trkA、trkBおよびtrkC受容体の細胞外ドメインは、5つの構造ドメインを有し、これらのドメインは、多様な他のタンパク質において同定された相同な構造またはそうでなければ類似の構造に関連して定義されてきている。これらのドメインは、成熟trk受容体のアミノ酸配列のN末端から始まって、1)第一のシステインリッチドメイン;2)ロイシンリッチドメイン;3)第二のシステインリッチドメイン;4)第一の免疫グロブリン様ドメイン;および5)第二の免疫グロブリン様ドメインと称されている。例えば、PCT公報第WO 0198361号;Urferら J. Biol. Chem. 273:5829−5840(1998)を参照されたい。
【0007】
ニューロトロフィン類は、多様な神経変性疾患および神経学的疾患の潜在的な療法剤として重要である。NGFおよびNT−3などのニューロトロフィンは、ピリドキシン治療またはシスプラチン治療と関連する感覚性ニューロパシーを治療するため、動物モデルにおいて試験された。米国特許第5,604,202号;PCT公報第WO 0198361号。神経変性疾患および神経学的疾患の治療におけるニューロトロフィンの使用には、いくつかの欠点があった。1つの重大な欠点は、特異性が欠如していることである。大部分のニューロトロフィンは、1より多い受容体と交差反応する。例えば、NT−3は、trkC受容体チロシンキナーゼの好ましいリガンドであるが、trkAおよびtrkBにもまた結合し、そしてこれらも活性化する(Barbacid, J. Neurobiol. 25:1386−1403, 1994;Barbarcid, Ann. New York Aced. Sci. 766:442−458, 1995;RydenおよびIbanez, J. Biol, Chem. 271:5623−5627, 1996, Belliveauら, J. Cell. Biol. 136:375−388, 1997;Farinasら, Neuron 21:325−334, 1998)。その結果、ニューロンの特定の集団をターゲットとする療法を考案するのが困難である。ニューロトロフィン療法の別の制限は、NT−3を含むニューロトロフィンが、痛覚過敏を引き起こすことが知られることである(Chaudhryら, Muscle and Nerve 23:189−192, 2000)。さらに、NT−3などのいくつかのニューロトロフィンは、げっ歯類において、劣った薬物動態学的特性および生物学的利用能特性を有することから、ヒトの臨床適用に関して深刻な疑問が生じる(Haaseら, J. Neurol. Sci. 160:S97−S105, 1998、Helgrenら, J. Neurosci. 17(1):372−82, 1997で用いられる投薬量)。したがって、ニューロトロフィンの既知の欠点を回避する、神経変性障害および神経学的疾患を治療するための新規療法剤の開発が必要である。
【0008】
げっ歯類アゴニスト抗trkC抗体が報告されてきている。PCT公報第WO 01/98361号を参照されたい。しかし、げっ歯類抗体がヒトにおいて療法的に用いられる場合、治療される個体のかなりの数で、ヒト抗ネズミ抗体反応が発展する。さらに、マウス抗体のエフェクター機能は、ヒトの状況においては、より効率的でないことが立証されている。したがって、ヒト化アゴニスト抗trkCアゴニスト抗体を含む、改善されたアゴニスト抗trkC抗体に関する重大な必要性がある。
【0009】
本明細書に開示するすべての参考文献、刊行物および特許出願は、完全に本明細書に援用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の簡単な概要
本明細書に開示する発明は、trkC受容体に対するアゴニスト抗体に関する。したがって、1つの側面において、本発明は、ヒトおよびげっ歯類のtrkC受容体(「trkC」)に特異的に結合する、ヒト化し、そして親和性成熟させた抗体、A5である。A5の重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ、図1A(配列番号1)および図1B(配列番号2)に示す。抗体A5の相補性決定領域(CDR)部分(ChothiaおよびKabatのCDRを含む)を、図1Aおよび図1Bに図式的に示す。A5重鎖および軽鎖のアミノ酸配列、並びに個々の拡張(extended)CDRのアミノ酸配列もまた、以下に示す(以下の「抗体配列」を参照されたい)。
【0011】
本発明はまた、アゴニスト抗trkC抗体(いくつかの態様において、ポリペプチド)であって:(a)式GYTFTSYXaaXaaH(配列番号16)のCDR1、式中、8位のXaaはRまたはWであり、そして9位のXaaはI、L、R、またはMである;(b)式EIYPSNXaaRTNYNEKFXaaS(配列番号17)のCDR2、式中、7位のXaaはA、T、SまたはGであり;そして16位のXaaはKまたはEである;および(c)式KYYYGNXaaXaaRSWYFDV(配列番号18)のCDR3、式中、7位のXaaはTまたはSであり;8位のXaaはR、Q、K、S、またはYである、を含む重鎖CDRを含み;配列番号22のCDR1領域、配列番号23のCDR2領域、および配列番号24のCDR3領域を含む重鎖CDRを含む抗体ではない、前記アゴニスト抗trkC抗体も提供する。いくつかの態様において、CDR1は、式GYTFTSYXaaXaaH(配列番号16)、式中、8位のXaaはRであり、そして9位のXaaはI、L、またはRである、を有する。いくつかの態様において、CDR2は、式EIYPSNXaaRTNYNEKFXaaS(配列番号17)、式中、7位のXaaはA、T、またはSであり;そして16位のXaaはKまたはEである、を有する。いくつかの態様において、CDR3は、式KYYYGNXaaXaaRSWYFDV(配列番号18)、式中、7位のXaaはTであり;8位のXaaはR、Q、K、またはSである、を有する。いくつかの態様において、抗体は軽鎖可変領域を含む。
【0012】
本発明はまた、アゴニスト抗trkC抗体(いくつかの態様において、ポリペプチド)であって:(a)式RASESXaaDXaaYGISFXaaXaa(配列番号19)のCDR1、式中、6位のXaaはIまたはVであり;8位のXaaはNまたはSであり;14位のXaaはLまたはMであり;15位のXaaはA、TまたはNである;(b)式AASNXaaGS(配列番号20)のCDR2、式中、5位のXaaはR、L、またはQである;および(c)式QQSKXaaVPRT(配列番号21)のCDR3、式中、5位のXaaはT、A、S、またはEである、を含む軽鎖CDRを含み;配列番号25のCDR1領域、配列番号26のCDR2領域、および配列番号27のCDR3領域を含む軽鎖CDRを含む抗体ではない、前記アゴニスト抗trkC抗体も提供する。いくつかの態様において、CDR1は、式RASESXaaDXaaYGISFXaaXaa(配列番号19)の配列、式中、6位のXaaはIであり;8位のXaaはNまたはSであり;14位のXaaはLであり;15位のXaaはAまたはTである、を有する。いくつかの態様において、CDR2は、式AASNXaaGS(配列番号20)の配列、式中、5位のXaaはRまたはLである、を有する。いくつかの態様において、CDR3は、QQSKXaaVPRT(配列番号21)の配列、式中、5位のXaaはT、A、またはSである、を有する。いくつかの態様において、抗体は、重鎖可変領域を含む。
【0013】
本発明はまた、アゴニスト抗trkC抗体(いくつかの態様において、ポリペプチド)であって:(a)重鎖CDRであって:(i)式GYTFTSYXaaXaaH(配列番号16)のCDR1、式中、8位のXaaはRまたはWであり、そして9位のXaaはI、L、R、またはMである;(ii)式EIYPSNXaaRTNYNEKFXaaS(配列番号17)のCDR2、式中、7位のXaaはA、T、SまたはGであり;そして16位のXaaはKまたはEである;および(iii)式KYYYGNXaaXaaRSWYFDV(配列番号18)のCDR3、式中、7位のXaaはTまたはSであり;8位のXaaはR、Q、K、S、またはYである、を含む前記重鎖CDR;並びに(b)軽鎖CDRであって:(i)式RASESXaaDXaaYGISFXaaXaa(配列番号19)のCDR1、式中、6位のXaaはIまたはVであり;8位のXaaはNまたはSであり;14位のXaaはLまたはMであり;15位のXaaはA、TまたはNである;(ii)式AASNXaaGS(配列番号20)のCDR2、式中、5位のXaaはR、L、またはQである;および(iii)式QQSKXaaVPRT(配列番号21)のCDR3、式中、5位のXaaはT、A、S、またはEである、を含む前記軽鎖CDRを含み;(a)配列番号22のCDR1領域、配列番号23のCDR2領域、および配列番号24のCDR3領域を含む重鎖CDR;並びに(b)配列番号25のCDR1領域、配列番号26のCDR2領域、および配列番号27のCDR3領域を含む軽鎖CDRを含む抗体ではない、前記アゴニスト抗trkC抗体も提供する。
【0014】
別の側面において、本発明は、抗体A5(本明細書において、交換可能に「A5」とも称される)の断片または領域を含む抗体である。1つの態様において、断片は、配列番号29に示すような抗体A5の軽鎖である。別の態様において、断片は、配列番号28に示すような抗体A5の重鎖である。さらに別の態様において、断片は、抗体A5の軽鎖および/または重鎖由来の1以上の可変領域を含有する。さらに別の態様において、断片は、図1Aおよび図1Bに示すような抗体A5の軽鎖および/または重鎖由来の1以上のCDRを含有する。
【0015】
別の側面において、本発明は、ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つ宿主細胞に産生されるポリヌクレオチドにコードされる軽鎖を含む抗体である。別の側面において、本発明は、ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つ宿主細胞に産生されるポリヌクレオチドにコードされる重鎖を含む抗体である。別の側面において、本発明は、(a)ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つ宿主細胞に産生されるポリヌクレオチドにコードされる軽鎖;および(b)ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つ宿主細胞に産生されるポリヌクレオチドにコードされる重鎖を含む抗体である(本明細書において、便宜上、寄託された宿主細胞に産生されるポリヌクレオチド(単数または複数)は、ATCC番号PTA−5682号およびPTA−5683号の寄託番号を有すると称される)。別の側面において、本発明は、ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つ宿主細胞に産生されるポリヌクレオチドにコードされる軽鎖可変領域を含む抗体である。別の側面において、本発明は、ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つ宿主細胞に産生されるポリヌクレオチドにコードされる重鎖可変領域を含む抗体である。別の側面において、本発明は、(a)ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つ宿主細胞に産生されるポリヌクレオチドにコードされる重鎖可変領域;および(b)ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つ宿主細胞に産生されるポリヌクレオチドにコードされる軽鎖可変領域を含む抗体である。さらに別の側面において、本発明は、(a)ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つ宿主細胞に産生されるポリヌクレオチドにコードされる1以上のCDR(単数または複数);および/または(b)ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つ宿主細胞に産生されるポリヌクレオチドにコードされる重鎖を含む抗体である。
【0016】
いくつかの態様において、抗体は、免疫学的に不活性な定常領域、例えば補体仲介性溶解を誘発せず、また抗体依存性細胞仲介性細胞傷害(ADCC)を刺激しない定常領域などの、修飾定常領域を含む。他の態様において、定常領域は、Eur. J. Immunol.(1999)29:2613−2624;PCT出願第PCT/GB99/01441号;および/または英国特許出願第9809951.8号に記載されるように修飾される。さらに他の態様において、抗体は、以下の突然変異:A330P331からS330S331(アミノ酸番号付けは野生型IgG2a配列に準拠している)を含む、ヒト重鎖IgG2a定常領域を含む。Eur. J. Immunol.(1999)29:2613−2624。
【0017】
別の側面において、本発明は、以下のいずれか1以上:a)図1Aおよび図1Bに示す抗体A5の1以上のCDR(単数または複数);b)図1Aに示す抗体A5の重鎖由来のCDR H3;c)図1Bに示す抗体A5の軽鎖由来のCDR L3;d)図1Bに示す抗体A5の軽鎖由来の3つのCDR;e)図1Aに示す抗体A5の重鎖由来の3つのCDR;並びにf)図1Aおよび図1Bに示す抗体A5の軽鎖由来の3つのCDRおよび重鎖由来の3つのCDRを含むポリペプチド(抗体であることもまた抗体でないことも可能である)を提供する。本発明は、以下のいずれか1以上:a)図1Aおよび図1Bに示す抗体A5由来の1以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ)のCDR(単数または複数);b)図1Aに示す抗体A5の重鎖由来のCDR H3由来のCDR;および/またはc)図1Bに示す抗体A5の軽鎖由来のCDR L3由来のCDRを含むポリペプチド(抗体であることもまた抗体でないことも可能である)をさらに提供する。
【0018】
本発明はまた、以下のいずれか1以上:(a)式GYTFTSYXaaXaaH(配列番号16)の配列、式中、8位のXaaはRまたはWであり;そして9位のXaaはI、L、R、またはMである、であって、GYTFTSYWMH(配列番号22)の配列でない、前記配列;(b)式GYTFTSYXaaXaaH(配列番号16)の配列、式中、8位のXaaはRであり;そして9位のXaaはI、L、またはRである;(c)式EIYPSNXaaRTNYNEKFXaaS(配列番号17)の配列、式中、7位のXaaはA、T、SまたはGであり;そして16位のXaaはKまたはEである、であって;EIYPSNGRTNYNEKFKS(配列番号23)でない、前記配列;(d)式EIYPSNXaaRTNYNEKFXaaS(配列番号17)の配列、式中、7位のXaaはA、T、またはSであり;そして16位のXaaはKまたはEである;(e)式KYYYGNXaaXaaRSWYFDV(配列番号18)の配列、式中、7位のXaaはTまたはSであり;8位のXaaはR、Q、K、S、またはYである、であって;KYYYGNSYRSWYFDV(配列番号24)でない、前記配列;(f)式KYYYGNXaaXaaRSWYFDV(配列番号18)の配列、式中、7位のXaaはTであり;8位のXaaはR、Q、K、またはSである;(g)式RASESXaaDXaaYGISFXaaXaa(配列番号19)の配列、式中、6位のXaaはIまたはVであり;8位のXaaはNまたはSであり;14位のXaaはLまたはMであり;15位のXaaはA、TまたはNである、であって;RASESVDNYGISFMN(配列番号25)でない、前記配列;(h)式RASESXaaDXaaYGISFXaaXaa(配列番号19)の配列、式中、6位のXaaはIであり;8位のXaaはNまたはSであり;14位のXaaはLであり;15位のXaaはAまたはTである;(i)式AASNXaaGS(配列番号20)の配列、式中、5位のXaaはRまたはLである;(j)式QQSKXaaVPRT(配列番号21)の配列、式中、5位のXaaはT、A、またはSである、を含むポリペプチド(抗体であることもまた抗体でないことも可能である)も提供する。
【0019】
いくつかの態様において、本発明は、上述の抗体のいずれかであって、さらにヒト抗体である抗体を提供する。他の態様において、本発明は、上述の抗体のいずれかであって、さらにヒト化抗体である抗体を提供する。いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの態様において、抗体はヒトtrkCに結合する。いくつかの態様において、抗体は、ヒトtrkCに優先的に結合する。いくつかの態様において、抗体は、約5nM未満のKでヒトtrkCに結合する。いくつかの態様において、抗体はげっ歯類trkCにさらに結合する。
【0020】
マウス・モノクローナル抗体、2256の配列に同一の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)からなる態様(ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)は、特に排除されることが理解される。2256可変領域(CDR領域を含む)のアミノ酸配列を図2Aおよび図2Bに示す。
【0021】
別の側面において、本発明は、抗体A5(本明細書において、交換可能に「A5」とも称される)の断片または領域をコードするポリヌクレオチドを含む、単離ポリヌクレオチドを提供する。1つの態様において、断片は、図1Bに示すような抗体A5の軽鎖である。別の態様において、断片は、図1Aに示すような抗体A5の重鎖である。さらに別の態様において、断片は、抗体A5の軽鎖および/または重鎖由来の1以上の可変領域を含有する。さらに別の態様において、断片は、図1Aおよび図1Bに示すような抗体A5の軽鎖および/または重鎖由来の1以上の相補性決定領域(CDR)を含有する。
【0022】
別の側面において、本発明は、抗体A5をコードするポリヌクレオチドを含む、単離ポリヌクレオチドである。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号11および配列番号13に示すポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。別の態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号10および配列番号12に示すポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
【0023】
別の側面において、本発明は、ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つA5軽鎖をコードする、単離ポリヌクレオチドである。別の側面において、本発明は、ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つA5重鎖をコードする、単離ポリヌクレオチドである。さらに別の側面において、本発明は、(a)ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる可変領域、および(b)ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる可変領域を含む、単離ポリヌクレオチドである。別の側面において、本発明は、(a)ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる1以上のCDR;および/または(b)ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる1以上のCDRを含む、単離ポリヌクレオチドである。
【0024】
別の側面において、本発明は、本明細書に記載する抗体(抗体断片を含む)またはポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。
別の側面において、本発明は、本明細書に開示するポリヌクレオチドのいずれかを含むベクター(発現ベクターおよびクローニングベクターを含む)および宿主細胞を提供する。
【0025】
別の側面において、本発明は、A5軽鎖をコードするポリヌクレオチドおよびA5重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞であって、A5軽鎖をコードするポリヌクレオチド(単数または複数)がATCC番号PTA−5682号の寄託番号を有し、そしてA5重鎖をコードするポリヌクレオチドがATCC番号PTA−5683号の寄託番号を有する、前記宿主細胞である(本明細書において、便宜上、寄託された宿主細胞に産生されるポリヌクレオチド(単数または複数)は、ATCC番号PTA−5682号およびPTA−5683号の寄託番号を有すると称される)。いくつかの態様において、宿主細胞は、(a)ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる可変領域、および/または(b)ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる可変領域を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、宿主細胞は、(a)ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる1以上のCDR;および/または(b)ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる1以上のCDRをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、宿主細胞は哺乳動物細胞である。
【0026】
別の側面において、本発明は、寄託番号ATCC PTA−5683号としてATCCに寄託されるポリヌクレオチドを提供する。別の側面において、本発明は、寄託番号ATCC PTA−5682号としてATCCに寄託されるポリヌクレオチドを提供する。
【0027】
別の側面において、本発明は、抗体A5が結合しているtrkCの複合体である。いくつかの側面において、複合体は単離されている。いくつかの態様において、trkCはヒトtrkCである。
【0028】
別の側面において、本発明は、本明細書記載の抗体またはポリペプチドのいずれかが結合しているtrkCの複合体である。いくつかの側面において、複合体は単離されている。
【0029】
別の側面において、本発明は、本明細書記載のポリペプチド(抗体A5などの抗体を含む)またはポリヌクレオチドのいずれかを含む薬剤組成物、例えば抗体A5または抗体A5の断片を含む抗体、および薬学的に許容しうる賦形剤を含む、薬剤組成物である。
【0030】
別の側面において、本発明は、抗体A5を生成する方法であって、抗体A5をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を調製し;抗体A5の産生を可能にする条件下で、宿主細胞またはその子孫を培養し;そして抗体A5を精製することを含む、前記方法である。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号11および配列番号13に示すポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。別の態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号10および配列番号12に示すポリヌクレオチドのいずれかまたは両方を含む。
【0031】
別の側面において、本発明は、抗体A5を生成する方法であって、A5軽鎖をコードするポリヌクレオチドおよびA5重鎖をコードするポリヌクレオチドを、適切な細胞において発現させ、ここでA5軽鎖をコードするポリヌクレオチドはATCC番号PTA−5682号の寄託番号を有し、そしてA5重鎖をコードするポリヌクレオチドはATCC番号PTA−5683号の寄託番号を有する;一般的に、その後、抗体を回収し、そして/または単離することを含む、前記方法である。
【0032】
別の側面において、本発明は、抗体をコードする1以上のポリヌクレオチドを適切な細胞において発現させ(単一軽鎖または単一重鎖として別個に発現させることも可能であるし、あるいは1つのベクターから軽鎖および重鎖の両方を発現させる)、一般的に、その後、目的の抗体またはポリペプチドを回収し、そして/または単離することによって、本明細書記載の抗体のいずれかを生成する方法を提供する。
【0033】
別の側面において、本発明は、本明細書開示のポリペプチド(抗体A5などの抗体を含む)のいずれかを用いて、ヒトtrkCまたは他の哺乳動物trkCの生物学的活性を活性化する方法である。1つの態様において、該方法は、ヒトtrkCを本明細書記載のポリペプチド(抗体A5を含む)のいずれかと接触させ、それによってヒトtrkC活性を活性化することを含む。
【0034】
別の側面において、本発明は、本明細書記載のポリペプチド(抗体A5などの抗体を含む)のいずれかを用いて、trkCを検出する方法である。trkCの存在は、trkCおよび本明細書記載のポリペプチド(抗体A5など)のいずれかの間の複合体を検出することによって、検出される。用語「検出」は、本明細書において、対照と比較した、または比較しない、定性的および/または定量的検出(レベルを測定する)を含む。
【0035】
別の側面において、本発明は、本明細書記載の抗体A5またはポリペプチド(抗体を含む)いずれかあるいはポリヌクレオチド態様を含む、有効量の組成物を投与することによって、大径線維感覚性ニューロパシーなどの感覚性ニューロパシーを治療する方法である。いくつかの態様において、感覚性ニューロパシーは、タキソール誘導性感覚性ニューロパシーである。いくつかの態様において、感覚性ニューロパシーは、シスプラチン誘導性感覚性ニューロパシーである。いくつかの態様において、感覚性ニューロパシーは、ピリドキシン誘導性感覚性ニューロパシーである。
【0036】
別の側面において、本発明は、本明細書記載の1以上の組成物いずれかを含むキットおよび組成物を提供する。これらのキットは、一般的に適切なパッケージングがなされ、そして適切な使用説明書とともに提供され、本明細書記載の方法のいずれかに有用である。
【0037】
本発明はまた、(例えば)薬剤および/または薬剤の製造としての使用の状況においてであってもなくても、本明細書記載の使用のいずれかのための、本明細書記載の組成物いずれか(抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチドなど)も提供する。
【0038】
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドまたは抗体は、本明細書記載の除外を含まない。本明細書の式を参照した際、当業者には明らかであるように、各アミノ酸置換基は、独立に選択可能である。本発明はまた、1以上のアミノ酸置換基が除去された式も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0039】
発明の詳細な説明
本明細書開示の本発明は、trkCに結合する抗体およびポリペプチド(A5など)、およびこれらの抗体を作成し、そして用いる方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、trkC受容体(「trkC」)に結合するヒト化抗体、A5、およびこの抗体を作成し、そして用いる方法を提供する。本発明はまた、trkCに結合するA5ポリペプチド(抗体を含む)、並びにA5抗体および/またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。
【0040】
本明細書に開示する本発明はまた、療法的有効量のアゴニスト抗trkC抗体の投与によって、個体における感覚性ニューロパシー(タキソール誘導性感覚性ニューロパシーなど)を予防し、そして/または治療する方法も提供する。
【0041】
一般的な技術
本発明の実施は、別に示さない限り、当該技術分野の技術内にある、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の慣用的技術を使用するであろう。こうした技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版(Sambrookら, 1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J. Gait監修、1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E. Cellis監修, 1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I. Freshney監修、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P. MatherおよびP.E. Roberts, 1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A. Doyle, J.B. Griffiths、およびD.G. Newell監修, 1993−1998)J. Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M. WeirおよびC.C. Blackwell監修);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M. MillerおよびM.P. Calos監修, 1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M. Ausubelら監修, 1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら監修, 1994);Current Protocols in Immunology(J.E. Coliganら監修, 1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons, 1999);Immunobiology(C.A. JanewayおよびP. Travers, 1997);Antibodies(P. Finch, 1997);Antibodies:a practical approach(D. Catty監修, IRL Press, 1988−1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P. ShepherdおよびC. Dean監修, Oxford University Press, 2000);Using antibodies:a laboratory manual(E. HarlowおよびD. Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies(M. ZanettiおよびJ.D. Capra監修, Harwood Academic Publishers, 1995)などの文献に、完全に説明されている。
【0042】
定義
「抗体」は、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等のターゲットに特異的に結合することが可能な免疫グロブリン分子であり、該免疫グロブリン分子の可変領域に位置する、少なくとも1つの抗原認識部位を通じて、ターゲットに結合する。本明細書において、該用語は、損なわれていない(intact)ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけでなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他のいずれかの修飾立体配置も含む。抗体には、IgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などのいかなるクラスの抗体も含まれ、そして抗体は特定のクラスのものである必要はない。重鎖定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることも可能である。免疫グロブリンには、5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、そしてこれらのいくつかをサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けることも可能である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと称される。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置が周知である。
【0043】
本明細書において、「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体集団から得た抗体を指し、すなわち集団を構成する個々の抗体は、少量で存在することも可能な、ありうる天然存在突然変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的で、単一の抗原性部位に向けられる。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体の特性を示し、そして特定の方法いずれかによる抗体の産生を必要とするとは見なされないものとする。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されるものなどの組換えDNA法によって作成可能である。モノクローナル抗体はまた、例えばMcCaffertyら, 1990, Nature, 348:552−554に記載される技術を用いて生成されるファージライブラリーからも単離可能である。
【0044】
本明細書において、「ヒト抗体」は、ヒトに産生される抗体のものに対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味し、そして/または当該技術分野に知られるかまたは本明細書に開示するヒト抗体作成技術のいずれかを用いて作成されている。ヒト抗体のこの定義には、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。1つのこうした例は、ネズミ軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。当該技術分野に知られる多様な技術を用いて、ヒト抗体を産生することも可能である。1つの態様において、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される(Vaughanら, 1996, Nature Biotechnology, 14:309−314;Sheetsら, 1998, PNAS, (USA) 95:6157−6162;HoogenboomおよびWinter, 1991, J. Mol. Biol., 227:381;Marksら, 1991, J. Mol. Biol., 222:581)。ヒト抗体はまた、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されているトランスジェニック動物、例えばマウスに、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによっても作成可能である。このアプローチは、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;および第5,661,016号に記載されている。あるいは、ターゲット抗原に対して向けられる抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することによって、ヒト抗体を調製可能である(こうしたBリンパ球を個体から回収することも可能であるし、またin vitroで免疫しておくことも可能である)。例えば、Coleら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77(1985);Boernerら, 1991, J. Immunol., 147(1):86−95;および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0045】
本明細書において、用語「A5」および「抗体A5」は交換可能に用いられ、図1Aおよび図1Bに示す重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を含む抗体を指す。抗体A5のCDR部分(ChothiaおよびKabatのCDRを含む)を図1Aおよび図1Bに図式的に示す。配列番号11および配列番号13は、それぞれ、A5の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドを示す。A5の性質決定を実施例に記載する。限定されるわけではないが、trkC受容体に結合し、そして該受容体を活性化し、そして/またはtrkCシグナル伝達機能によって仲介される下流経路を活性化する能力を含む、異なる生物学的機能がA5と関連付けられる。いくつかの態様において、用語「A5」は、(a)ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を有するA5軽鎖をコードするポリヌクレオチド、および(b)ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を有するA5重鎖をコードするポリヌクレオチドにコードされる免疫グロブリンを指す。
【0046】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書において交換可能に用いられ、いずれかの長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖であることもまたは分枝していることも可能であり、修飾アミノ酸を含むことも可能であり、そして非アミノ酸によって中断されることも可能である。該用語はまた、天然にまたは介入によって;例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、あるいは他の操作または修飾いずれか、例えば標識構成要素とのコンジュゲート化で修飾されているアミノ酸ポリマーも含む。この定義内にやはり含まれるのは、例えば、1以上のアミノ酸類似体(例えば非天然アミノ酸などを含む)、並びに当該技術分野に知られる他の修飾を含有するポリペプチドである。本発明のポリペプチドは、抗体に基づくため、ポリペプチドは、一本鎖または会合鎖として存在することも可能であることが理解される。
【0047】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書において交換可能に用いられ、いずれかの長さのヌクレオチドのポリマーを指し、そしてDNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基、および/またはその類似体、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによってポリマーに取り込まれることも可能な基質いずれかであることも可能である。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびその類似体などの修飾ヌクレオチドを含むことも可能である。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立て前または組み立て後に行うことも可能である。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断可能である。重合後、標識構成要素とのコンジュゲート化によるなどで、ポリヌクレオチドをさらに修飾することも可能である。他の種類の修飾には、例えば、「キャップ」、1以上の天然存在ヌクレオチドの類似体での置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結を持つもの(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カバメート(cabamate)など)および荷電連結を持つもの(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リジンなど)を含有するもの、挿入剤(intercalator)(例えばアクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾連結を持つもの(例えばアルファ・アノマー核酸など)、並びにポリヌクレオチド(単数または複数)の非修飾型での修飾が含まれる。さらに、糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれかが、例えばホスホネート基、ホスフェート基によって置換されるか、標準的保護基によって保護されるか、またはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結に備えるため活性化されていることも可能であるし、あるいは固体支持体にコンジュゲート化されていることも可能である。5’末端および3’末端のOHをリン酸化するか、あるいは1〜20炭素原子のアミンまたは有機キャッピング基部分で置換することも可能である。他のヒドロキシルを誘導体化して、標準的保護基にすることもまた可能である。ポリヌクレオチドはまた、例えば2’−O−メチル、2’−O−アリル、2’−フルオロ−または2’−アジド−リボース、炭素環糖類似体、α−アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環類似体および無塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドを含む、当該技術分野に一般的に知られるリボース糖またはデオキシリボース糖の類似の型を含有することもまた可能である。別の連結基によって、1以上のホスホジエステル連結を置換することも可能である。これらの代替連結基には、限定されるわけではないが、ホスフェートが、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH(「ホルムアセチル」)、式中、各RまたはR’は、独立にH、あるいは所望によってエーテル(−O−)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジルを含有する、置換または非置換アルキル(1〜20C)である、に置換されている態様が含まれる。ポリヌクレオチド中のすべての連結が同一である必要はない。先行する説明は、RNAおよびDNAを含む、本明細書で言及するすべてのポリヌクレオチドに適用される。
【0048】
抗体の「可変領域」は、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を、単独でまたは組み合わせて指す。重鎖および軽鎖の可変領域は、各々、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)に連結される4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによって近接して一緒に保持され、そして他の鎖由来のCDRと一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するには、少なくとも2つの技術:(1)異種間配列可変性に基づくアプローチ(すなわちKabatら Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版, 1991, National Institutes of Health, メリーランド州ベセスダ));および(2)抗原−抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al−lazikaniら(1997)J. Molec. Biol. 273:927−948))がある。本明細書において、CDRは、いずれかのアプローチによって、または両方のアプローチの組み合わせによって定義されるCDRを指すことも可能である。
【0049】
抗体の「定常領域」は、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を、単独でまたは組み合わせて指す。
本明細書において、「trkC」は、チロシンキナーゼ・スーパーファミリーのメンバーである、trkC受容体ポリペプチドを指す。trkCは、限定されるわけではないが、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、霊長類、およびげっ歯類(マウスおよびラットを含む)を含む哺乳動物種いずれかの天然trkC受容体を含む。全長天然trkCの細胞外ドメインは、多様な他のタンパク質において同定された相同な構造またはそうでなければ類似の構造に関連して定義されてきている。これらのドメインは、成熟trkC受容体のN末端から始まって:1)アミノ酸1〜アミノ酸48に渡る第一のシステインリッチドメイン;2)アミノ酸49〜アミノ酸120に渡るロイシンリッチドメイン;3)アミノ酸121〜アミノ酸177に渡る第二のシステインリッチドメイン;4)およそアミノ酸196〜アミノ酸257に渡る第一の免疫グロブリン様ドメイン;および5)およそアミノ酸288〜アミノ酸351に渡る第二の免疫グロブリン様ドメインと称されている。例えば、PCT公報第WO 0198361号を参照されたい。trkC受容体の細胞外ドメインのドメイン構造もまた、結晶構造を参照することによって、以下のように称されてきている:アミノ酸1〜アミノ酸47のドメイン1;アミノ酸48〜アミノ酸130のドメイン2;アミノ酸131〜アミノ酸177のドメイン3;アミノ酸178〜アミノ酸165のドメイン4;およびアミノ酸166〜アミノ酸381のドメイン5。例えば、PCT WO 01/98361;Urferら J. Biol. Chem. 273:5829−5840(1998)を参照されたい。やはり含まれるのは、trkCの変異体であり、この例には、限定されるわけではないが、キナーゼドメインを欠く変異体(Sheltonら, J. Neurosci. 15(1):477−491, 1995)、および修飾キナーゼドメインを含む変異体(Sheltonら, J. Neurosci. 15(1):477−491, 1995)が含まれる。
【0050】
「アゴニスト抗trkC抗体」(「抗trkCアゴニスト抗体」または「抗trkC抗体」と交換可能に称される)は、trkC受容体に結合し、そして該受容体を活性化し、そして/またはtrkCシグナル伝達機能によって仲介される下流経路(単数または複数)を活性化することが可能な抗体を指す。例えば、アゴニスト抗体は、trkC受容体の細胞外ドメインに結合し、そしてそれによって受容体の二量体化を引き起こし、細胞内触媒性キナーゼドメインの活性化を生じることも可能である。その結果、これは、in vitroおよび/またはin vivoで受容体を発現する細胞の増殖および/または分化の刺激を生じることも可能である。いくつかの態様において、アゴニスト抗trkC抗体は、trkCに結合し、そしてtrkC生物学的活性を活性化する。いくつかの態様において、本発明の方法で有用なアゴニスト抗体は、trkCのドメインVおよび/またはドメインIVを認識する。Urferら J. Biol. Chem. 273:5829−5840(1998)を参照されたい。アゴニスト抗trkC抗体の例を本明細書に提供する。
【0051】
「生物学的活性」は、本発明のアゴニスト抗trkC抗体と組み合わせて用いた場合、一般的に、trkC受容体に結合し、そして該受容体チロシンキナーゼを活性化し、そして/またはtrkCシグナル伝達機能によって仲介される下流経路を活性化する能力を有することを指す。本明細書において、「生物学的活性」は、trkCの天然リガンドであるNT−3の作用によって誘導されるものと共通の、trkC発現細胞に対する、1以上のエフェクター機能を含む。trkCの「生物学的活性」はまた、NT−3の作用によって誘導されるものとは異なる下流シグナル伝達経路(単数または複数)またはエフェクター機能も含むことも可能である。限定なしに、生物学的活性には、1以上の以下が含まれる:trkCに結合し、そしてこれを活性化する能力;trkC受容体二量体化を促進し、そしてtrkCを活性化する能力;細胞(損傷を受けた細胞を含む)、特に末梢(交感、感覚、および腸)ニューロン、および中枢(脳および脊髄)ニューロンを含む、in vitroまたはin vivoのニューロン、並びに非ニューロン細胞、例えば末梢血白血球の発生、生存、機能、維持および/または再生を促進する能力。本開示によって、当業者に明らかであるように、これらの原理は、ポリペプチド態様に適用される。
【0052】
抗体またはポリペプチドに「優先的に結合する」かまたは「特異的に結合する」(本明細書において交換可能に用いられる)エピトープは、当該技術分野においてよく理解されている用語であり、そしてこうした特異的結合または優先的結合を測定する方法もまた、当該技術分野によく理解されている。分子は、別の細胞または物質とよりも、特定の細胞または物質と、より頻繁に、より迅速に、より長い期間そして/またはより強い親和性で反応するかまたは会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも、より強い親和性、アビディティーで、より容易に、そして/またはより長い期間ターゲットに結合する場合、ターゲットに「特異的に結合する」かまたは「優先的に結合する」。例えば、trkCエピトープに特異的にまたは優先的に結合する抗体は、他のtrkCエピトープまたは非trkCエピトープに結合するよりも、より高い親和性、アビディティーで、より容易に、そして/またはより長い期間、このtrkCエピトープに結合する抗体である。この定義を読むと、例えば、第一のターゲットに特異的にまたは優先的に結合する抗体(あるいは部分またはエピトープ)は、第二のターゲットに特異的にまたは優先的に結合することもまたしないことも可能であることもまた理解される。こうしたものとして、「特異的結合」または「優先的結合」は、必ずしも排他的な結合を必要としない(が含むことも可能である)。必ずしもではないが、一般的に、結合への言及は優先的な結合を意味する。
【0053】
本明細書において、抗体の「免疫特異的」結合は、抗体の抗原結合部位およびその抗体に認識される特異的抗原の間に起こる、抗原特異的結合相互作用を指す(すなわち、抗体はELISAまたは他のイムノアッセイにおいて、該タンパク質と反応し、そして関連しないタンパク質とは検出可能に反応しない)。
【0054】
本明細書において、「実質的に純粋な」は、少なくとも50%純粋(すなわち混入物質を含まない)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、より好ましくは少なくとも98%純粋、より好ましくは少なくとも99%純粋である物質を指す。
【0055】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物を取り込むベクター(単数または複数)のレシピエントであることが可能であるか、またはレシピエントである、個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、そして子孫は、天然の、偶発的な、または意図的な突然変異のため、必ずしも、元来の親細胞と(形態においてまたはゲノムDNA相補体において)完全に同一でないことも可能である。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチド(単数または複数)でin vivoでトランスフェクションされた細胞が含まれる。
【0056】
本明細書において、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好ましいFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、そしてFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体のアレル変異体および選択的スプライシング型を含む。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)が含まれ、これらは、細胞質ドメインが主に異なる、類似のアミノ酸配列を有する。FcRは、RavetchおよびKinet, 1991, Ann. Rev. Immunol., 9:457−92;Capelら, 1994, Immunomethods, 4:25−34;およびde Haasら, 1995, J. Lab. Clin. Med., 126:330−41に概説される。「FcR」にはまた、新生受容体、FcRnが含まれ、該受容体は、胎児への母性IgGの輸送に関与する(Guyerら, 1976, J. Immunol., 117:587;およびKimら, 1994, J. Immunol., 24:249)。
【0057】
「補体依存性細胞傷害」および「CDC」は、補体の存在下でのターゲットの溶解を指す。同族(cognate)抗原と複合体化した分子(例えば抗体)への補体系(C1q)の第一の構成要素の結合によって、補体活性化経路が開始される。補体活性化を評価するため、例えばGazzano−Santoroら, J. Immunol. Methods, 202:163(1996)に記載されるようなCDCアッセイを行うことも可能である。
【0058】
「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を所持する。典型的な「エフェクター機能」には、C1q結合;補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞仲介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体;BCR)の下方制御などが含まれる。こうしたエフェクター機能は、一般的に、Fc領域が結合性ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、そしてこうした抗体エフェクター機能を評価するために当該技術分野に知られる多様なアッセイを用いて、こうした機能を評価することも可能である。
【0059】
「天然配列Fc領域」は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾のため、天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含むが、なお天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を保持する。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域に、または親ポリペプチドのFc領域に比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば天然配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に、約1〜約10のアミノ酸置換、そして好ましくは約1〜約5のアミノ酸置換を有する。本明細書の変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域と、そして/または親ポリペプチドのFc領域と、少なくとも約80%の配列同一性を、そして最も好ましくはこれらと少なくとも約90%の配列同一性を、より好ましくはこれらと少なくとも約95%の配列同一性を所持するであろう。
【0060】
本明細書において、「抗体依存性細胞仲介性細胞傷害」および「ADCC」は、Fc受容体(FcR類)を発現する非特異性細胞傷害細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が、ターゲット細胞上に結合した抗体を認識し、そして続いて、ターゲット細胞の溶解を引き起こす、細胞仲介性反応を指す。米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されるものなどのin vitro ADCCアッセイを用いて、目的の分子のADCC活性を評価することも可能である。こうしたアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびNK細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、Clynesら, 1998, PNAS(USA), 95:652−656に開示されるものなどの動物モデルにおいて、目的の分子のADCC活性をin vivoで評価することも可能である。
【0061】
本明細書において、「治療」は、有益なまたは望ましい臨床的結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のため、有益なまたは望ましい臨床的結果には、限定されるわけではないが、検出可能であってもまたは検出不能であっても、症状の軽減、疾患の度合いの縮小、疾患の安定化された(すなわち悪化しない)状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的または完全いずれであっても)が含まれる。「治療」はまた、治療を受けていなかった場合に予期される生存に比較した際、生存を延長することを意味することも可能である。「治療」は、障害の病状の発展を予防するかまたは病状を改変することを意図して行われる介入である。したがって、「治療」は、療法的治療および予防的または防止的手段の両方を指す。治療の必要なものには、すでに障害を持つもの、並びに障害が予防されるべきであるものが含まれる。具体的には、治療は、損傷の細胞性変性の病状、例えば神経細胞の病状を予防するか、遅延させるかまたは別の方式で減少させることも可能であるし、あるいは細胞、例えばニューロンを、他の療法剤による治療により感受性にすることも可能である。
【0062】
「タキソール誘導性感覚性ニューロパシー」は、化学療法剤タキソールまたは他のタキサン類での治療から生じる神経学的障害である。本明細書において、「タキソール誘導性感覚性ニューロパシー」は、この神経学的障害と関連する1以上の症状のいずれかを指し、そしてこれらを含む。タキソール誘導性感覚性ニューロパシーは、多様な種類の一次感覚ニューロン、交感ニューロンを含む自律ニューロン、並びに特殊化された感覚、例えば味覚、嗅覚、聴覚、および前庭のニューロンに影響を及ぼすことも可能である。本明細書において、「タキソール誘導性感覚性ニューロパシー」は、剤、タキソールまたは関連タキサン類の投与中または投与後に、個体において関連するかまたは個体に存在する感覚ニューロンに影響を及ぼす神経学的障害を指す。いくつかの態様において、「タキソール誘導性感覚性ニューロパシー」は、末梢感覚ニューロン(大径線維感覚ニューロンを含む)の変性によって特徴付けられる。いくつかの態様において、「タキソール誘導性感覚性ニューロパシー」は、以下のいずれかによって特徴付けられる:遠位対称性感覚異常、振動覚減退、関節位置感覚の欠失、疼痛性異常感覚、レールミット徴候、疼痛、進行性遠位および/または近位不全麻痺、筋痛症、麻痺性イレウス、起立性血圧降下症、および不整脈;並びに末梢感覚ニューロン(大径線維感覚ニューロンを含む)の変性。標準的神経学的検査、患者インタビュー、またはより特殊化された定量的試験によって、これらを決定することも可能である。これらのより特殊化された定量的試験には、限定されるわけではないが、例えば微小神経記録法または他の電気生理学的試験の使用による、影響を受けたニューロンの伝導速度の測定;限定されるわけではないが、熱、軽い接触、振動、または2点識別を含む皮膚刺激を感じる能力の定量的および/または定量的測定;聴覚試験;平衡の特殊化試験;自己受容または運動感覚の特殊化試験;限定されるわけではないが、血圧コントロールの試験を含む自律機能試験;並びに多様な生理学的刺激および薬理学的刺激に対する心拍反応試験が含まれる。これらの試験はまた、運動技能の試験を含むことも可能である。
【0063】
本明細書において、「タキソール」は、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology、ニュージャージー州プリンストン)、ドセタキセル(タキソテール(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer、フランス・アントニー)、および他のタキサンを指す。タキソール(他のタキサンを含む)を単独で、または他の薬剤と併用して投与することも可能である。タキソールは、カポジ肉腫、並びに乳房、卵巣、および肺の肉腫を含む、多様な悪性腫瘍を治療するのに認可され、そして一般的に用いられている。タキソールはまた、前立腺、頭部および首部の他の悪性腫瘍、並びに多様な血液学的悪性腫瘍を治療するのにも用いられる。タキソールはまた、骨髄移植中にも投与される。
【0064】
「有効量」(例えばタキソール誘導性感覚性ニューパシーの状況において)は、臨床的結果または疾患開始の遅延を含む、有益なまたは望ましい臨床的結果を達成するのに十分な量である。1以上の投与で、有効量を投与することも可能である。本発明の目的のため、本明細書記載のアゴニスト抗trkC抗体の有効量は、感覚性ニューロパシー、例えば大径線維感覚性ニューロパシー、例えばタキソール誘導性感覚性ニューロパシーを改善し、安定化し、逆転させ、その進行を減速させ、そして/または遅延させるのに十分な量である。有効量のアゴニスト抗trkC抗体はまた、本明細書に記載するように、癌のタキソール治療(療法的効果)を増進するのに十分な量のアゴニスト抗trkC抗体も含む(これは次に、タキソール投薬量を増加させ、そして/またはタキソール治療の副作用の減少など、何らかの他の有益な効果が観察されることを意味することも可能である)。当該技術分野に理解されるように、有効量のアゴニスト抗trkC抗体は、とりわけ、患者病歴、並びに、用いるアゴニスト抗trkC抗体の種類(および/または投薬量)などの他の要因に応じて、多様であることも可能である。本開示により、当業者には明らかであるように、これらの原理は、ポリペプチド態様に適用される。
【0065】
本明細書において、「組み合わせ」投与には、同時投与および/または異なる時点での投与が含まれる。組み合わせ投与はまた、共配合物(例えば同一組成物中に、アゴニスト抗trkC抗体およびタキソールが存在する)としての投与、または別個の組成物としての投与も含む。本明細書において、組み合わせ投与は、同時におよび/または別個に起こることも可能な、個体にアゴニスト抗trkC抗体およびタキソールを投与するいかなる状況も含むと意味される。本明細書にさらに論じるように、アゴニスト抗trkC抗体およびタキソールを異なる投薬頻度または間隔で投与することも可能であることが理解される。例えば、アゴニスト抗trkC抗体を毎週投与し、一方、タキソールをより頻繁でなく投与することも可能であることが理解される。同じ投与経路または異なる投与経路を用いて、アゴニスト抗trkC抗体およびタキソールを投与することも可能であることが理解される。
【0066】
「生物学的試料」は、個体から得られる多様な試料種を含み、そして診断アッセイまたは監視アッセイで使用可能である。該定義は、血液および生物学的起源の他の液体試料、固形組織試料、例えば生検標本または組織培養物またはそこから得られる細胞、およびその子孫を含む。該定義はまた、入手後、試薬での処理、可溶化、または特定の構成要素、例えばタンパク質またはポリヌクレオチドの濃縮、あるいは切片作成目的のための半固体マトリックスまたは固体マトリックス中での包埋によるなどのいずれかの方式で操作されている試料も含む。用語「生物学的試料」は、臨床試料を含み、そして培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生物学的液体および組織試料もまた含む。
【0067】
「個体」は脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、限定されるわけではないが、農場動物(ウシなど)、スポーツ用動物、ペット(ネコ、イヌ、およびウマなど)、霊長類、マウスおよびラットが含まれる。
【0068】
本明細書において、「ベクター」は、目的の1以上の遺伝子(単数または複数)または配列(単数または複数)を搬送し、そして好ましくは宿主細胞において発現することが可能な構築物を意味する。ベクターの例には、限定されるわけではないが、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、陽イオン凝縮剤と会合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム中に被包されたDNAまたはRNA発現ベクター、および生成細胞などの特定の真核生物細胞が含まれる。
【0069】
本明細書において、「発現調節配列」は、核酸の転写を指示する核酸配列を意味する。発現調節配列は、プロモーター、恒常性または誘導性プロモーター、あるいはエンハンサーであることも可能である。発現調節配列は、転写される核酸配列に機能可能であるように連結される。
【0070】
本明細書において、「薬学的に許容しうるキャリアー」には、活性成分と組み合わせた際、該成分が生物学的活性を保持することを可能にし、そして搬送された際、被験者の免疫系と非反応性であり、そして被験者に対して非毒性である、いかなる物質も含まれる。例には、限定されるわけではないが、標準的薬学的キャリアー、例えばリン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、および多様な種類の湿潤剤が含まれる。エアロゾルまたは非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水または通常の(0.9%)生理食塩水である。
【0071】
周知の慣用的方法によって、こうしたキャリアーを含む組成物を配合する(例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, A.Gennaro監修, Mack Publishing Co., ペンシルバニア州イーストン, 1990;およびRemington, The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing, 2000を参照されたい)。
【0072】
用語「koff」は、本明細書において、抗体/抗原複合体からの抗体の解離の解離速度定数を指すよう意図される。
用語「K」は、本明細書において、抗体−抗原相互作用の解離定数を指すよう意図される。
【0073】
組成物および組成物を作成する方法
本発明は、薬剤組成物を含む組成物であって、本明細書記載の抗trkCアゴニスト抗体(A5抗体など)またはポリペプチド;並びに該抗体(A5抗体など)またはポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含む。本明細書において、組成物は、trkCに結合する1以上の抗体またはポリペプチド(抗体であることもまたないことも可能である)、および/またはtrkCに結合する1以上の抗体またはポリペプチドをコードする配列を含む1以上のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、当該技術分野に周知の、緩衝剤を含む薬学的に許容しうる賦形剤などの適切な賦形剤をさらに含むことも可能である。
【0074】
本発明はまた、単離抗体、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド態様も含む。本発明はまた、実質的に純粋な抗体、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド態様も含む。
本発明の抗体およびポリペプチドは、以下の特性のいずれか(1以上)によって特徴付けられる:(a)trkC受容体に結合する;(b)trkC受容体の1以上のエピトープに結合する;(c)trkC受容体に結合してtrkC受容体を活性化し、そして/またはtrkCシグナル伝達機能によって仲介される1以上の下流経路を活性化する;(d)trkC受容体に結合して、trkC受容体を活性化し、そして感覚性ニューロパシー(タキソール誘導性感覚性ニューロパシーなど)の1以上の症状を治療するか、予防するか、逆転させるか、または改善する;(e)trkBまたはtrkAに結合せず、そして/またはこれらを活性化しない;(f)好ましい薬物動態学的特性および生物学的利用能特性を示す。
【0075】
ネズミ抗trkC抗体2256(「Mab 2256」)に比較して、高い親和性および緩慢な解離速度でヒトtrkCに結合する、抗体A5の結合特性を以下に要約する。A5重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を図1に示す。Mab 2256重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を図2に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表中の「me」は:mx10を意味する。
A5抗体および関連抗体(本明細書記載)はまた、Sadickら, Exp. Cell Res.(1997)234:354−361に記載されるようなキナーゼ受容体活性化アッセイ(KIRA)によって評価した際、ヒトtrkCを活性化し、そしてin vitroニューロン生存アッセイによって評価した際、ラットtrkCを活性化する強い能力も示す。図3および図4に示すように、A5は、ヒトおよびげっ歯類両方のtrkCの強力なアゴニストである。
【0078】
したがって、いくつかの態様において、本発明の抗体およびポリペプチドは、以下によってさらに同定され、そして性質決定される:(g)緩慢な解離反応速度でのヒトtrkCへの高親和性結合(いくつかの態様において、約10nM未満のKおよび/または約0.01s−1より遅いkoff)および/または(h)約100pM以下のEC50でラットE12三叉神経のtrkC依存性生存を活性化する能力。
【0079】
いくつかの態様において、本発明は、ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つ宿主細胞によって産生されるポリヌクレオチドにコードされる軽鎖を含む抗体である。別の側面において、本発明は、ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つ宿主細胞によって産生されるポリヌクレオチドにコードされる重鎖を含む抗体である。本発明はまた、A5および同等の抗体断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)、Fv、Fcなど)、一本鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および必要な特異性の抗原(trkC)認識部位を含むA5の他のいずれかの修飾立体配置の多様な配合物も含む。A5の抗体およびポリペプチド断片(抗体であることもまたないことも可能である)、並びにA5のポリペプチド断片を含むポリペプチドを含む、A5の同等抗体が、上述の基準のいずれか(1以上)によって同定され、そして性質決定されている。
【0080】
したがって、本発明は、以下のいずれか、または以下のいずれかを含む組成物(薬剤組成物を含む)を提供する:(a)抗体A5;(b)抗体A5の断片または領域;(c)配列番号29に示すような抗体A5の軽鎖;(c)配列番号28に示すような抗体A5の重鎖;(d)抗体A5の軽鎖および/または重鎖由来の1以上の可変領域(単数または複数);(e)図1Aおよび図1Bに示す抗体A5の1以上のCDR(単数または複数)(1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDR);(f)図1Aに示す抗体A5の重鎖由来のCDR H3;(g)図1Bに示す抗体A5の軽鎖由来のCDR L3;(h)図1Bに示す抗体A5の軽鎖由来の3つのCDR;(i)図1Aに示す抗体A5の重鎖由来の3つのCDR;(j)図1Aおよび図1Bに示す抗体A5の軽鎖由来の3つのCDRおよび重鎖由来の3つのCDR;並びに(k)(b)〜(j)のいずれか1つを含む抗体。本発明はまた、(a)〜(j)のいずれか1以上のポリペプチドも提供する。いくつかの態様において、抗体A5は、以下の突然変異:A330P331からS330S331(アミノ酸番号付けは野生型IgG2a配列に準拠している;Eur. J. Immunol.(1999)29:2613−2624を参照されたい)を含有する、ヒト重鎖IgG2a定常領域;およびヒト軽鎖カッパ定常領域をさらに含む。
【0081】
抗体A5のCDR部分(ChothiaおよびKabatのCDRを含む)を図1Aおよび図1Bに図式的に示す。CDR領域の決定は、十分に当該技術分野の技術の範囲内である。いくつかの態様において、CDRはKabatおよびChothiaのCDRの組み合わせであることも可能である(「組み合わせCDR」または「拡張CDR」とも称される)ことが理解される。いくつかの態様において、CDRはKabat CDRである。他の態様において、CDRはChothia CDRである。
【0082】
いくつかの態様において、本発明は、A5の少なくとも1つのCDR、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つのCDRに実質的に相同な(またはいくつかの態様において、A5の6つのCDRすべてに実質的に相同な、あるいはA5由来の)、少なくとも1つのCDRを含む抗体を提供する。他の態様には、A5の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRに実質的に相同な、あるいはA5由来の、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDR(単数または複数)を有する抗体が含まれる。本発明の目的のため、結合特異性および/または全体の活性(感覚性ニューロパシー(例えば大径線維感覚性ニューロパシー、例えばタキソール誘導性感覚性ニューロパシー)を治療し、そして/または予防する、あるいはE12ラット三叉ニューロンのtrkC依存性生存を活性化する観点であることも可能である)は、一般的に保持されるが、活性の度合いはA5に比較して多様であることも可能である(より大きいかまたはより小さいことも可能である)ことが理解される。いくつかの態様において、A5の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つのCDRに実質的に相同な1以上のCDRは、A5の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つのCDRに、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、同一である。
【0083】
本発明はまた、以下のいずれかを有するA5のアミノ酸配列(図1Aおよび図1Bに示す)を含むポリペプチド(抗体であることもまたないことも可能である)も提供する:A5の配列の少なくとも5つの隣接アミノ酸、少なくとも8つの隣接アミノ酸、少なくとも約10の隣接アミノ酸、少なくとも約15の隣接アミノ酸、少なくとも約20の隣接アミノ酸、少なくとも約25の隣接アミノ酸、少なくとも約30の隣接アミノ酸であって、アミノ酸の少なくとも3つはA5の可変領域由来であり、マウス・モノクローナル抗体、2256のアミノ酸配列に同一のアミノ酸配列からなる態様は、特に排除されることを理解するものとする。2256可変領域(CDR領域を含む)のアミノ酸配列を図2Aおよび図2Bに示す。1つの態様において、可変領域は、A5の軽鎖由来である。別の態様において、可変領域は、A5の重鎖由来である。別の態様において、5(以上)の隣接アミノ酸が、図1Aおよび図1Bに示すA5の相補性決定領域(CDR)由来である。
【0084】
別の態様において、本発明は、以下のいずれかを有する、A5のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する:A5の配列の少なくとも5つの隣接アミノ酸、少なくとも8つの隣接アミノ酸、少なくとも約10の隣接アミノ酸、少なくとも約15の隣接アミノ酸、少なくとも約20の隣接アミノ酸、少なくとも約25の隣接アミノ酸、少なくとも約30の隣接アミノ酸であって、A5配列が、以下のいずれか1以上を含む:CDR H1のアミノ酸残基R33および/またはI34;CDR H2のA56;CDR H3のT105および/またはR106;CDR L1のI29、L37および/またはA38;CDR L2のR58;並びに/あるいはCDR L3のT97。
【0085】
trkC(htrkCなど)への抗trkC抗体の結合親和性は、約0.10〜約0.80nM、約0.15〜約0.75nMおよび約0.18〜約0.72nMであることも可能である。いくつかの態様において、結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pMであるか、または約40pMを超える。1つの態様において、結合親和性は約2pM〜22pMの間である。他の態様において、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pM未満である。いくつかの態様において、結合親和性は約10nMである。他の態様において、結合親和性は約10nM未満である。他の態様において、結合親和性は、約0.1nMまたは約0.07nMである。他の態様において、結合親和性は、約0.1nM未満または約0.07nM未満である。他の態様において、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pMのいずれかから、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、または約40pMのいずれかまでである。いくつかの態様において、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pMのいずれかである。さらに他の態様において、結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pMであるか、または約40pMを超える。
【0086】
当該技術分野に周知の方法を用いて、trkCへの抗体の結合親和性を決定することも可能である。trkCへの抗体の結合親和性を決定する1つの方法は、実施例に記載するように、抗体の単一官能性Fab断片の親和性を測定することによる。単一官能性Fab断片を得るため、抗体(例えばIgG)をパパインで切断するかまたは組換え的に発現することも可能である。実施例に記載するように、表面プラズモン共鳴(BIAcore 3000TM表面プラズモン共鳴(SPR)系、BIAcore、Inc、ニュージャージー州ピスカタウェイ)によって、抗体の抗trkC Fab断片の親和性を決定することも可能である。このプロトコルは、ヒトtrkC、別の脊椎動物(いくつかの態様において、哺乳動物)のtrkC(マウスtrkC、ラットtrkC、または霊長類trkCなど)を含む、いかなる種のtrkCへの抗体の結合親和性を決定する際の使用にも適している。
【0087】
本発明の他のポリペプチドおよび抗体態様を、発明の概要を含めて、本明細書に提供する。本発明のポリペプチドを合成中間体として使用することもまた可能である。
本発明はまた、これらの抗体またはポリペプチドのいずれかを作成する方法も提供する。当該技術分野に知られる方法によって、本発明の抗体を作成することも可能である。抗体のタンパク質分解的分解または他の分解によって、上述のように組換え法によって(すなわち単一または融合ポリペプチド)、あるいは化学合成によって、ポリペプチドを産生することも可能である。抗体のポリペプチド、特に約50アミノ酸までのより短いポリペプチドは、化学合成によって、好都合に作成される。化学合成法は、当該技術分野に知られ、そして商業的に利用可能である。例えば、固相法を使用する自動化ポリペプチド合成装置によって、A5抗体を産生することも可能である。米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;および第6,331,415号も参照されたい。
【0088】
別の代替法において、当該技術分野に周知の方法を用いて、抗体を組換え的に作成することも可能である。1つの態様において、抗体A5の可変領域および軽鎖領域をコードするポリヌクレオチド(配列番号10および配列番号12)を、発現または増殖のため、ベクターにクローニングする。別の態様において、配列番号11および配列番号13に示すポリヌクレオチド配列を、発現または増殖のため、1以上のベクターにクローニングする。宿主細胞中のベクターにおいて、目的の抗体をコードする配列を維持することも可能であり、そして次いで、宿主細胞を増殖させ、そして将来の使用のために凍結することも可能である。ベクター(発現ベクターを含む)および宿主細胞は、本明細書にさらに記載される。
【0089】
本発明は、ヒト化抗体を含み、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有する、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、または抗体の他の抗原結合性下位配列)である、非ヒト(例えばネズミ)抗体の型を指す。大部分、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、この中で、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、望ましい特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基と交換されている、前記ヒト免疫グロブリンである。いくつかの場合、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基と交換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体、または取り込まれたCDRもしくはフレームワーク配列のいずれにも見られないが、抗体の性能をさらに精緻化し、そして最適化するために含まれる残基を含むことも可能である。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、そして典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、この中で、すべてまたは実質的にすべてのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、そしてすべてまたは実質的にすべてのFR領域は、ヒト免疫グロブリン・コンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適にはまた、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部も含むであろう。好ましいのは、WO 99/58572に記載されるように修飾されたFc領域を有する抗体である。ヒト化抗体の他の型は、元来の抗体に対して改変された、1以上(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)のCDRを有し、これらもまた、元来の抗体由来の1以上のCDRに「由来する」1以上のCDRと称される。
【0090】
本発明はまた、本発明の抗体、例えばA5の一本鎖可変領域断片(「scFv」)も含む。短い連結ペプチドを用いることにより軽鎖および/または重鎖の可変領域を連結することによって、一本鎖可変領域断片を作成する。Birdら(1988)Science 242:423−426。連結ペプチドの例は、(GGGGS)(配列番号3)であり、該ペプチドは、一方の可変領域のカルボキシ末端およびもう一方の可変領域のアミノ末端の間をおよそ3.5nmで架橋する。他の配列のリンカーが設計され、そして用いられてきている。Birdら(1988)。さらなる機能、例えば薬剤の付着または固体支持体への付着などのため、リンカーを続いて修飾することも可能である。一本鎖変異体を組換え的または合成的に産生することも可能である。scFvの合成産生のため、自動化合成装置を使用することも可能である。scFvの組換え産生のため、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する適切なプラスミドを、酵母、植物、昆虫または哺乳動物細胞などの真核細胞、あるいは大腸菌(E. coli)などの原核細胞のいずれかの、適切な宿主細胞に導入することも可能である。ポリヌクレオチドの連結などの日常的な操作によって、目的のscFvをコードするポリヌクレオチドを作成することも可能である。当該技術分野に知られる標準的タンパク質精製技術を用いて、生じたscFvを単離することも可能である。
【0091】
一本鎖抗体の他の型、例えばディアボディもまた、含まれる。ディアボディは、二価の二重特異性抗体であり、単一ポリペプチド鎖上にVHドメインおよびVLドメインが発現されるが、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするにはあまりに短いリンカーを用いるため、ドメインが別の鎖の相補ドメインと対形成することを余儀なくされ、そして2つの抗原結合部位が生成されるものである(例えばHolliger, P.ら(1993)Proc. Natl. Acad Sci. USA 90:6444−6448;Poljak, R.J.ら(1994)Structure 2:1121−1123を参照されたい)。
【0092】
例えば、本明細書開示の抗体を用いて、二重特異性抗体、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体を調製することも可能である。二重特異性抗体を作成する方法が当該技術分野に知られる(例えばSureshら, 1986, Methods in Enzymology 121:210)。伝統的には、二重特異性抗体の組換え産生は、異なる特異性を有する2つの重鎖を用いた、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいた(MillsteinおよびCuello, 1983, Nature 305, 537−539)。
【0093】
二重特異性抗体を作成するための1つのアプローチにしたがって、望ましい結合特異性を持つ抗体可変ドメイン(抗体−抗原組み合わせ部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。融合は、好ましくは、ヒンジの少なくとも一部、CH2領域およびCH3領域を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインと行う。軽鎖結合に必要な部位を含有する、第一の重鎖定常領域(CH1)が、融合物の少なくとも一方に存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、および望ましい場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別個の発現ベクターに挿入し、そして適切な宿主生物に同時トランスフェクションする。これは、構築に用いられる3つのポリペプチド鎖が等しくない比である場合に、最適収量が得られる態様において、3つのポリペプチド断片の相互比率を調節する際に非常に柔軟性を与える。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が等しい比であることが高収量を生じるか、または比が特に有意性を持たない場合、2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を、1つの発現ベクターに挿入することも可能である。
【0094】
1つのアプローチにおいて、二重特異性抗体は、一方のアームにおける、第一の結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームにおける、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)で構成される。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在する、この非対称構造によって、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせから望ましい二重特異性化合物を分離することが容易になる。このアプローチは、PCT公報第WO 94/04690号、1994年3月3日公開に記載される。
【0095】
2つの共有結合された抗体を含む、ヘテロコンジュゲート抗体もまた、本発明の範囲内である。こうした抗体は、望ましくない細胞に免疫系細胞をターゲティングするのに用いられ(米国特許第4,676,980号)、そしてHIV感染の治療に用いられてきている(PCT出願公報第WO 91/00360号および第WO 92/200373号;およびEP 03089)。好適な架橋法いずれかを用いて、ヘテロコンジュゲート抗体を作成することも可能である。適切な架橋剤および技術が当該技術分野に周知であり、そして米国特許第4,676,980号に記載される。
【0096】
架橋剤を伴うものを含む、合成タンパク質化学反応の既知の方法を用いて、キメラ抗体またはハイブリッド抗体をin vitroで調製することもまた可能である。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築することも可能である。この目的に適した試薬の例には、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデートが含まれる。
【0097】
当該技術分野に知られるいかなる方法を用いて、抗体A5の1以上のCDRまたは抗体A5由来の1以上のCDRを含むヒト化抗体を作成することも可能である。例えば、4つの一般的な工程を用いて、モノクローナル抗体をヒト化することも可能である。これらは:(1)出発抗体軽鎖および重鎖の可変ドメインのヌクレオチドおよび予測されるアミノ酸配列を決定し、(2)ヒト化抗体を設計し、すなわちヒト化プロセス中にどの抗体フレームワーク領域を用いるかを決定し、(3)実際のヒト化方法論/技術を決定し、そして(4)ヒト化抗体をトランスフェクションし、そして発現することである。例えば、米国特許第4,816,567号;第5,807,715号;第5,866,692号;第6,331,415号;第5,530,101号;第5,693,761号;第5,693,762号;第5,585,089号;第6,180,370号;第5,225,539号;第6,548,640号を参照されたい。
【0098】
組換えヒト化抗体において、Fc部分を修飾して、Fcγ受容体および補体免疫系の相互作用を回避することも可能である。この種の修飾は、ケンブリッジ大学病理学部のMike Clark博士によって設計され、そしてこうした抗体を調製する技術は、PCT公報第WO 99/58572号、1999年11月18日公開に記載されている。
【0099】
例えば、抗体がヒトにおいて臨床試験および治療に用いられる場合、ヒト定常領域により似るように定常領域を操作して、免疫応答を回避することも可能である。例えば、米国特許第5,997,867号および第5,866,692号を参照されたい。
【0100】
本発明は、本明細書記載の抗体(抗体A5など)またはポリペプチドに対する修飾を含み、特性に有意な影響を及ぼさない機能的に同等の抗体、および増進した活性または減少した活性を有する変異体を含む。ポリペプチドの修飾は、当該技術分野において日常的な実務であり、そして本明細書に詳細に記載する必要はない。ポリペプチドの修飾を実施例に例示する。修飾ポリペプチドの例には、アミノ酸残基の保存的置換、機能活性を有意に有害に変化させない1以上のアミノ酸の欠失または付加、あるいは化学的類似体の使用を伴うポリペプチドが含まれる。
【0101】
アミノ酸配列挿入または付加には、長さ1残基から、100以上の残基を含有するポリペプチドまでの範囲のアミノ末端融合および/またはカルボキシ末端融合、並びに単一または多数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を伴う抗体またはエピトープタグに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を増加させる、抗体のN末端またはC末端への酵素またはポリペプチドの融合が含まれる。
【0102】
置換変異体は、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、そしてその代わりに異なる残基が挿入されている変異体である。置換突然変異誘発に最も重要な部位には、超可変領域が含まれるが、FR改変もまた意図される。保存的置換を表1の「保存的置換」の頭書き以下に示す。こうした置換が生物学的活性の変化を生じるならば、表1に「典型的な置換」と称する、またはアミノ酸クラスに関して以下にさらに記載するような、より実質的な変化を導入して、そして産物をスクリーニングすることも可能である。
【0103】
表1:アミノ酸置換
【0104】
【表2】

【0105】
(a)置換領域におけるポリペプチド主鎖の構造、例えばシートまたはらせんコンホメーションとしての構造、(b)ターゲット部位での分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖のかさを維持することに対する影響が有意に異なる置換を選択することによって、抗体の生物学的特性における実質的な修飾が達成される。天然存在残基は、共通の側鎖特性に基づいて、群に分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0106】
これらのクラスの1つのメンバーと別のクラスのメンバーを交換することによって、非保存的置換を行う。
抗体の適切なコンホメーションの維持に関与していないシステイン残基のいずれかを、一般的にはセリンで置換して、分子の酸化安定性を改善し、そして異常な架橋を防止することもまた可能である。逆に、システイン結合(単数または複数)を抗体に付加して、特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合に、安定性を改善することも可能である。
【0107】
アミノ酸修飾は、1以上のアミノ酸の変化または修飾から、領域、例えば可変領域の完全な再設計までの範囲にあることも可能である。可変領域中の変化は、結合親和性および/または特異性を改変することも可能である。いくつかの態様において、CDRドメイン内で、1〜5の保存的アミノ酸置換を超えない置換を作成する。他の態様において、CDR3ドメイン内で、1〜3の保存的アミノ酸置換を超えない置換を作成する。さらに他の態様において、CDRドメインは、CDRH3および/またはCDR L3である。
【0108】
修飾にはまた、グリコシル化および非グリコシル化ポリペプチド、並びに例えば異なる糖を用いたグリコシル化、アセチル化、およびリン酸化などの、他の翻訳後修飾を持つポリペプチドも含まれる。抗体は、定常領域の保存される位でグリコシル化される(JefferisおよびLund, 1997, Chem. Immunol. 65:111−128;WrightおよびMorrison, 1997, TibTECH 15:26−32)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boydら, 1996, Mol. Immunol. 32:1311−1318;WittweおよびHoward, 1990, Biochem. 29:4175−4180)、および糖タンパク質の部分間の分子内相互作用に影響を及ぼし、こうした分子内相互作用への影響は、糖タンパク質のコンホメーションおよび提示される三次元表面に影響を及ぼしうる(HefferisおよびLund、上記;WyssおよびWagner, 1996, Current Opin. Biotech. 7:409−416)。オリゴ糖はまた、特異的認識構造に基づいて、既定の糖タンパク質を特定の分子にターゲティングするようにも働くことも可能である。抗体のグリコシル化はまた、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に影響を及ぼすことも報告されてきている。特に、二分GlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼである、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のテトラサイクリンが制御する発現を伴うCHO細胞が、改善されたADCC活性を有することが報告された(Umanaら, 1999, Nature Biotech. 17:176−180)。
【0109】
抗体のグリコシル化は、典型的には、N連結またはO連結のいずれかである。N連結は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付着を指す。トリペプチド配列、アスパラギン−X−セリン、アスパラギン−X−スレオニン、およびアスパラギン−X−システイン、式中、Xはプロリン以外のアミノ酸いずれかである、は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的付着の認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在によって、潜在的なグリコシル化部位が生成される。O連結グリコシル化は、糖、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの1つがヒドロキシアミノ酸に付着することを指し、該ヒドロキシアミノ酸は、最も一般的にはセリンまたはスレオニンであるが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンを用いることもまた可能である。
【0110】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、1以上の上述のトリペプチド配列(N連結グリコシル化部位の場合)を含有するように、アミノ酸配列を改変することによって、好都合に達成される。改変はまた、元来の抗体の配列に、1以上のセリン残基またはスレオニン残基を付加するか、あるいは元来の抗体配列をこれらで置換することによっても作成可能である(O連結グリコシル化部位の場合)。
【0111】
根底にあるヌクレオチド配列を改変することなく、抗体のグリコシル化パターンを改変することもまた可能である。グリコシル化は、大部分、抗体を発現するのに用いる宿主細胞に依存する。潜在的な療法剤としての組換え糖タンパク質、例えば抗体の発現に用いる細胞種が天然細胞であることは稀であるため、抗体のグリコシル化パターンの変動を予期することも可能である(例えばHseら, 1997, J. Biol. Chem. 272:9062−9070を参照されたい)。
【0112】
宿主細胞の選択に加えて、抗体の組換え産生中のグリコシル化に影響を及ぼす要因には、増殖様式、培地配合、培養密度、酸素添加、pH、精製スキーム等が含まれる。特定の宿主生物において達成されるグリコシル化パターンを改変する、多様な方法が提唱されてきており、こうした方法には、オリゴ糖産生に関与する特定の酵素を導入するかまたは過剰発現させることが含まれる(米国特許第5,047,335号;第5,510,261号および第5,278,299号)。グリコシル化、または特定の種類のグリコシル化は、例えばエンドグリコシダーゼH(エンドH)を用いて、糖タンパク質から酵素的に除去可能である。さらに、組換え宿主細胞を遺伝子操作して、特定の種類の多糖のプロセシングを不全にすることも可能である。これらの技術および類似の技術が当該技術分野に周知である。
【0113】
修飾の他の方法には、当該技術分野に知られるカップリング技術の使用が含まれ、限定されるわけではないが、酵素的手段、酸化的置換およびキレート化が含まれる。例えばイムノアッセイ用の標識を付着するため、修飾を用いることも可能である。当該技術分野で確立された方法を用いて、修飾ポリペプチド(A5など)を作成し、そして当該技術分野に知られる標準アッセイを用いてスクリーニングすることも可能であり、こうした方法のいくつかを以下に、そして実施例に記載する。
【0114】
他の抗体修飾には、PCT公報第WO 99/58572号、1999年11月18日公開に記載されるように修飾された抗体が含まれる。これらの抗体は、ターゲット分子に向けられる結合性ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常ドメインのすべてまたは一部に実質的に相同なアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、有意な補体依存性溶解、または細胞仲介性のターゲット破壊を誘発せずに、ターゲット分子に結合することが可能である。いくつかの態様において、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγIIbに特異的に結合可能である。これらは、典型的には、2以上のヒト免疫グロブリン重鎖C2ドメイン由来のキメラドメインに基づく。この方式で修飾される抗体は、慣用的抗体療法に対する炎症反応および他の不都合な反応を回避するため、長期抗体療法における使用に特に適している。
【0115】
本発明には、親和性成熟態様が含まれる。例えば、当該技術分野に知られる方法によって、親和性成熟抗体を産生することも可能である(Marksら, 1992, Bio/Technology, 10:779−783;Barbasら, 1994, Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809−3813;Schierら, 1995, Gene, 169:147−155;Yeltonら, 1995, J. Immunol., 155:1994−2004;Jacksonら, 1995, J. Immunol., 154(7):3310−9;Hawkinsら, 1992, J. Mol. Biol., 226:889−896;およびW02004/058184)。
【0116】
抗体の親和性を調整し、そしてCDRを性質決定するため、以下の方法を用いることも可能である。抗体のCDRを性質決定し、そして/またはポリペプチド、例えば抗体の結合親和性を改変する(例えば改善する)1つの方法は、「ライブラリー・スキャニング突然変異誘発」と称される。一般的に、ライブラリー・スキャニング突然変異誘発は、以下のように働く。当該技術分野に認識される方法を用いて、CDR中の1以上のアミノ酸位を、2以上(例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸と交換する。これによって、各々が2以上のメンバー(すべての位が2以上のアミノ酸で置換される場合)の複雑性を持つ、クローンの小さいライブラリー(いくつかの態様において、解析するアミノ酸位1つにつき1つ)が生成される。一般的に、ライブラリーはまた、天然(非置換)アミノ酸を含むクローンも含む。ターゲットポリペプチド(または他の結合性ターゲット)に対する結合親和性に関して、各ライブラリー由来の少数のクローン、例えば約20〜80クローン(ライブラリーの複雑性に応じる)をスクリーニングし、そして結合が増加したか、同一か、減少したか、またはまったくない候補を同定する。結合親和性を決定する方法は、当該技術分野に周知である。約2倍以上の結合親和性の相違を検出する、BIAcore表面プラズモン共鳴解析を用いて、結合親和性を決定することも可能である。BIAcoreは、出発抗体がすでに比較的高い親和性、例えば約10nM以下のKで結合する場合、特に有用である。BIAcore表面プラズモン共鳴を用いたスクリーニングを、本明細書の実施例に記載する。
【0117】
Kinexaバイオセンサー、シンチレーション近接アッセイ、ELISA、ORIGENイムノアッセイ(IGEN)、蛍光消光、蛍光移動、および/または酵母ディスプレイを用いて、結合親和性を決定することも可能である。適切なバイオアッセイを用いて、結合親和性をスクリーニングすることもまた可能である。
【0118】
いくつかの態様において、当該技術分野で認められている突然変異誘発法(このうちいくつかを本明細書に記載する)を用いて、20の天然アミノ酸すべてで、CDR中のすべてのアミノ酸位を置換する(いくつかの態様において、一度に1つずつ)。これによって、各々が20のメンバー(すべての位が20のアミノ酸で置換される場合)の複雑性を持つ、クローンの小さいライブラリー(いくつかの態様において、解析するアミノ酸位1つにつき1つ)が生成される。
【0119】
いくつかの態様において、スクリーニングされるライブラリーは、同一CDR中または2以上のCDR中であることも可能な、2以上の位で置換を含む。したがって、ライブラリーは、1つのCDR中の2以上の位で置換を含むことも可能である。ライブラリーは、2以上のCDR中の2以上の位で置換を含むことも可能である。ライブラリーは、2、3、4、5または6のCDR中に見られる、3、4、5、またはそれより多い位で置換を含むことも可能である。重複性が低いコドンを用いて、置換を調製することも可能である。例えば、Balintら(1993)Gene 137(1):109−18の表2を参照されたい。
【0120】
CDRは、CDRH3および/またはCDRL3であることも可能である。CDRは、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2、および/またはCDRH3の1以上であることも可能である。CDRはKabat CDR、Chothia CDR、または拡張CDRであることも可能である。
【0121】
結合が改善された候補を配列決定し、それによって親和性改善を生じるCDR置換突然変異体(「改善置換」とも称される)を同定することも可能である。結合する候補を配列決定し、それによって結合を保持するCDR置換を同定することもまた可能である。どの抗体が結合を消滅させるかを知るため、非結合性変異体の配列を配列決定することもまた可能である。
【0122】
多数の周期のスクリーニングを行うことも可能である。例えば、結合が改善された候補(各々、1以上のCDRの1以上の位でアミノ酸置換を含む)はまた、改善されたCDR位(すなわち、置換突然変異体が結合改善を示す、CDR中のアミノ酸位)の各々で、少なくとも元来のアミノ酸および置換されたアミノ酸を含有する、第二のライブラリーを設計するのにも有用である。このライブラリーの調製、およびスクリーニングまたは選択を以下にさらに論じる。
【0123】
ライブラリー・スキャニング突然変異誘発はまた、結合が改善されたか、同一であるか、減少したか、またはまったくないクローンの頻度もまた、抗体−抗原複合体の安定性に対する、各アミノ酸位の重要性に関する情報を提供するという範囲で、CDRを性質決定する手段も提供する。例えば、CDRの位を20のアミノ酸すべてに変化させた際に、結合が保持されるならば、この位は抗原結合に必要である可能性が低い位と同定される。逆に、CDRの位を置換した際、低い割合でしか結合が保持されないのであれば、この位はCDR機能に重要な位と同定される。したがって、ライブラリー・スキャニング突然変異誘発法は、多くの異なるアミノ酸(20のアミノ酸すべてを含む)に変化させることも可能なCDR中の位、および変化させることが不能であるか、またはいくつかのアミノ酸にしか変化させることが可能でない、CDR中の位に関する情報を生じる。
【0124】
改善されたアミノ酸、その位の元来のアミノ酸を含み、そして望ましいスクリーニング法または選択法を用いた際に望ましいか、または許容される、ライブラリーの複雑性に応じて、その位でさらなる置換をさらに含むことも可能な、第二のライブラリー中で、親和性が改善された候補を組み合わせることも可能である。さらに、望ましい場合、隣接するアミノ酸位を少なくとも2以上のアミノ酸にランダム化することも可能である。隣接するアミノ酸のランダム化は、突然変異CDR中のさらなるコンホメーション柔軟性を許容することも可能であり、これが次に、多数の改善された突然変異の導入を許容するかまたは促進することも可能である。ライブラリーはまた、第一周期のスクリーニングにおいて、親和性改善を示さなかった位での置換を含むことも可能である。
【0125】
改善されたおよび/または改変された結合親和性を持つライブラリー・メンバーに関して、BIAcore表面プラズモン共鳴解析を用いたスクリーニング、並びにファージ・ディスプレイ、酵母ディスプレイ、およびリボソーム・ディスプレイを含む当該技術分野で知られる選択法いずれかを用いた選択を含む、当該技術分野に知られる方法いずれかを用いて、第二のライブラリーをスクリーニングするかまたは選択する。
【0126】
本発明はまた、本発明の抗体(A5など)またはポリペプチド由来の1以上の断片または領域を含む融合タンパク質も含む。1つの態様において、図1Bに示す軽鎖可変領域の少なくとも10の隣接アミノ酸および/または図1Aに示す重鎖可変領域の少なくとも10のアミノ酸を含む、融合ポリペプチドを提供する。別の態様において、融合ポリペプチドは、図1Aおよび図1Bに示すような、A5の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む。別の態様において、融合ポリペプチドは、A5の1以上のCDR(単数または複数)を含む。さらに他の態様において、融合ポリペプチドは、抗体A5のCDR H3および/またはCDR L3を含む。別の態様において、融合ポリペプチドは、以下のいずれか1以上を含む:CDR H1のアミノ酸残基R33および/またはI34;CDR H2のA56;CDR H3のT105および/またはR106;CDR L1のI29、L37および/またはA38;CDR L2のR58;並びに/あるいはCDR L3のT97。本発明の目的のため、A5融合タンパク質は、1以上のA5抗体、および天然分子では付着していない別のアミノ酸配列、例えば異種配列または別の領域由来の相同配列を含有する。典型的な異種配列には、限定されるわけではないが、FLAGタグまたは6Hisタグなどの「タグ」が含まれる。タグは当該技術分野に周知である。
【0127】
当該技術分野に知られる方法によって、例えば合成的または組換え的に、融合ポリペプチドを生成することも可能である。典型的には、本明細書記載の組換え法を用いて、本発明のA5融合タンパク質をコードする発現ポリヌクレオチドを調製することによって、該融合タンパク質を作成するが、これらはまた、例えば化学合成を含む、当該技術分野に知られる他の手段によって、調製することも可能である。
【0128】
本発明はまた、固体支持体へのカップリングを促進する剤(例えばビオチンまたはアビジン)にコンジュゲート化された(例えば連結された)、抗体(A5など)またはポリペプチドを含む組成物も提供する。簡単にするため、一般的に、A5または抗体への言及を行い、これらの方法が、本明細書記載のtrkC結合態様のいずれにも適用されることを理解するものとする。コンジュゲート化は、一般的に、本明細書に記載するようなこれらの構成要素の連結を指す。いくつかの方法のいずれかによって、連結(一般的に、これらの構成要素を、少なくとも投与のため、近接した関係に固定する)を達成することも可能である。例えば、互いに反応することが可能な置換基を各々が所持する場合、剤および抗体の間の直接反応が可能である。例えば、一方の上にアミノ基またはスルフィドリル基などの求核基があると、他方の上に、無水物または酸ハロゲン化物などのカルボニル含有基、あるいは優れた脱離基(例えばハロゲン化物)を含有するアルキル基があった場合、反応することも可能である。
【0129】
本発明の抗体またはポリペプチドを、標識剤(あるいは「標識」と称する)、例えば蛍光分子、放射性分子または当該技術分野に知られる他の標識いずれかに連結することも可能である。標識は、一般的に(直接または間接的いずれかで)シグナルを提供することが知られる。したがって、本発明には、標識抗体およびポリペプチドが含まれる。
【0130】
当該技術分野に知られる方法を用いて、本発明の抗体およびポリペプチドの能力、例えばtrkCに結合し、trkC生物学的活性を活性化し;そして/またはE12ラット三叉ニューロンのtrkC誘導性生存を増進する能力を試験することも可能であり、このうちいくつかを実施例に記載する。
【0131】
本発明はまた、抗体A5、および本開示が明らかにするように、本明細書記載の抗体および/またはポリペプチドのいずれかまたはすべてを含む、組成物(薬剤組成物を含む)およびキットも提供する。
【0132】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
本発明はまた、本発明の抗体およびポリペプチド(図1Aおよび図1Bに示す軽鎖および重鎖の可変領域のポリペプチド配列を含む抗体を含む)をコードする単離ポリヌクレオチド、並びに該ポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞も提供する。
【0133】
したがって、本発明は、以下のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチド(または薬剤組成物を含む組成物)を提供する:(a)抗体A5;(b)抗体A5の断片または領域;(c)図1Bに示すような抗体A5の軽鎖;(d)図1Aに示すような抗体A5の重鎖;(e)抗体A5の軽鎖および/または重鎖由来の1以上の可変領域(単数または複数);(f)図1Aおよび図1Bに示す抗体A5の1以上のCDR(単数または複数)(1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDR);(g)図1Aに示す抗体A5の重鎖由来のCDR H3;(h)図1Bに示す抗体A5の軽鎖由来のCDR L3;(i)図1Bに示す抗体A5の軽鎖由来の3つのCDR;(j)図1Aに示す抗体A5の重鎖由来の3つのCDR;(k)図1Aおよび図1Bに示す抗体A5の軽鎖由来の3つのCDRおよび重鎖由来の3つのCDR;あるいは(l)(b)〜(k)のいずれかを含む抗体。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号10および配列番号12に示すポリヌクレオチド(単数または複数)のいずれかまたは両方を含む。他の態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号11および配列番号13に示すポリヌクレオチド(単数または複数)のいずれかまたは両方を含む。他の態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号10および配列番号13に示すポリヌクレオチド(単数または複数)のいずれかまたは両方を含む。他の態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号11および配列番号12に示すポリヌクレオチド(単数または複数)のいずれかまたは両方を含む。
【0134】
別の側面において、本発明は、ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つA5軽鎖をコードする単離ポリヌクレオチドである。別の側面において、本発明は、ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つA5重鎖をコードする単離ポリヌクレオチドである。さらに別の側面において、本発明は、(a)ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる可変領域、および(b)ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる可変領域を含む、単離ポリヌクレオチドである。別の側面において、本発明は、(a)ATCC番号PTA−5682号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる1以上のCDR;および/または(b)ATCC番号PTA−5683号の寄託番号を持つポリヌクレオチドにコードされる1以上のCDRを含む、単離ポリヌクレオチドである。
【0135】
別の側面において、本発明は、本明細書記載の抗体(抗体断片を含む)およびポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、当該技術分野に知られる方法によって作成可能である。
【0136】
別の側面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドのいずれかを含む組成物(薬剤組成物など)を提供する。いくつかの態様において、組成物は、本明細書記載のA5抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。他の態様において、組成物は、本明細書記載の抗体またはポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。さらに他の態様において、組成物は、配列番号10および配列番号12に示すポリヌクレオチド(単数または複数)のいずれかまたは両方を含む。他の態様において、組成物は、配列番号11および配列番号13に示すポリヌクレオチド(単数または複数)のいずれかまたは両方を含む。他の態様において、組成物は、配列番号10および配列番号13に示すポリヌクレオチド(単数または複数)のいずれかまたは両方を含む。他の態様において、組成物は、配列番号11および配列番号12に示すポリヌクレオチド(単数または複数)のいずれかまたは両方を含む。発現ベクター、およびポリヌクレオチド組成物の投与を、本明細書にさらに記載する。
【0137】
別の側面において、本発明は、本明細書記載のポリヌクレオチドのいずれかを作成する方法を提供する。
こうした配列いずれかに相補的なポリヌクレオチドもまた、本発明に含まれる。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードまたはアンチセンス)または二本鎖であることも可能であるし、そしてDNA分子(ゲノム、cDNAまたは合成分子)またはRNA分子であることも可能である。RNA分子には、イントロンを含有し、そして一対一様式でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含有しないmRNA分子が含まれる。さらなるコード配列または非コード配列が、本発明のポリヌクレオチド内に存在することも可能であるが、存在する必要はなく、そしてポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持物質に結合することも可能であるが、結合する必要はない。
【0138】
ポリヌクレオチドは、天然配列(すなわち抗体またはその一部をコードする内因性配列)を含むことも可能であるし、またはこうした配列の変異体を含むことも可能である。ポリヌクレオチド変異体は、天然免疫反応性分子に比較して、コードされるポリペプチドの免疫反応性または有効性が減少しないように、1以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含有する。コードされるポリペプチドの免疫反応性に対する影響は、本明細書に記載するように、一般的に評価可能である。変異体は、好ましくは、天然抗体またはその一部をコードするポリヌクレオチド配列に、少なくとも約70%の同一性、より好ましくは、少なくとも約80%の同一性、そして最も好ましくは、少なくとも約90%の同一性を示す。
【0139】
2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、これらの2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が、以下に記載するように最大に一致させて並列した際に、同じである場合、「同一」であるという。2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウに渡って配列を比較して、配列類似性の局所領域を同定し、そして比較することによって、行われる。「比較ウィンドウ」は、本明細書において、少なくとも約20の隣接部分、通常30〜約75、40〜約50の隣接位のセグメントであって、2つの配列を最適に並列させた後、このウィンドウ中の配列を参照配列の同数の隣接位と比較することも可能な、前記セグメントを指す。
【0140】
バイオインフォマティクス・ソフトウェア(DNASTAR, Inc.、ウィスコンシン州マディソン)の一連のLasergene中のMegalignプログラムをデフォルトパラメーターで用いて、比較のため、配列の最適並列を行うことも可能である。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかの並列スキームを具現化する:Dayhoff, M.O.(1978)A model of evolutionary change in proteins−Matrices for detecting distant relationships. Dayhoff, M.O.(監修)Atlas of Protein Sequence and Structure中, National Biomedical Research Foundation, ワシントンDC Vol. 5, Suppl. 3, pp. 345−358;Hein J., 1990, Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp. 626−645 Methods in Enzymology vol. 183, Academic Press, Inc., カリフォルニア州サンディエゴ;Higgins, D.G.およびSharp, P.M., 1989, CABIOS 5:151−153;Myers, E.W.およびMuller W., 1988, CABIOS 4:11−17;Robinson, E.D., 1971, Comb. Theor. 11:105;Santou, N., Nes, M., 1987, Mol. Biol. Evol. 4:406−425;Sneath, P.H.A.およびSokal, R.R., 1973, Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy, Freeman Press, カリフォルニア州サンフランシスコ;Wilbur, W.J.およびLipman, D.J., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:726−730。
【0141】
好ましくは、少なくとも20の位の比較ウィンドウに渡って、最適に並列された2つの配列を比較することによって、「配列同一性パーセント」を決定し、ここで、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列中の部分は、2つの配列の最適並列の参照配列(付加または欠失を含まない)に比較した際、20パーセント以下、通常5〜15パーセント、または10〜12パーセントの付加または欠失(すなわちギャップ)を含むことも可能である。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも存在する位の数を決定して、マッチした位の数を得て、マッチした位の数を、参照配列中の位の総数(すなわちウィンドウサイズ)で割り、そして結果に100を乗じて、配列同一性パーセントを得ることによって、パーセントを計算する。
【0142】
変異体はまた、またはあるいは、天然遺伝子、あるいはその一部または相補体に実質的に相同であることも可能である。こうしたポリヌクレオチド変異体は、中程度のストリンジェント条件下で、天然抗体をコードする天然存在DNA配列(または相補配列)にハイブリダイズすることが可能である。
【0143】
適切な「中程度のストリンジェント条件」には、5xSSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中の前洗浄;50℃〜65℃、5xSSC、一晩のハイブリダイズ;その後、0.1%SDSを含有する2xSSC、0.5xSSC、および0.2xSSC各々での65℃または42℃で20分間、2回の洗浄が含まれる。
【0144】
本明細書において、「非常にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は:(1)洗浄に低いイオン強度および高い温度、例えば50℃で、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを使用する;(2)ハイブリダイゼーション中、42℃で、変性剤、例えばホルムアミド、例えば50%(v/v)ホルムアミドと、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝剤、pH6.5と750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを使用する;または(3)42℃で、50%ホルムアミド、5xSSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5xデンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸を使用し、0.2xSSC中42℃で、そして55℃、50%ホルムアミドで洗浄し、その後、55℃または68℃で、EDTAを含有する0.1xSSCからなる高ストリンジェンシーで洗浄する。当業者は、プローブの長さなどの要因に適応するのに必要とされるように、温度、イオン強度等を調節する方法を認識するであろう。
【0145】
一般の当業者は、遺伝暗号の縮重の結果、本明細書記載のポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列があることを認識するであろう。これらのポリヌクレオチドのいくつかは、天然遺伝子いずれかのヌクレオチド配列に最小限の相同性を所持する。にもかかわらず、コドン使用法の相違のために異なるポリヌクレオチドが、本発明に特に意図される。さらに、本明細書に提供するポリヌクレオチド配列を含む遺伝子のアレルは、本発明の範囲内である。アレルは、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換などの1以上の突然変異の結果、改変されている内因性遺伝子である。生じるmRNAおよびタンパク質は、改変された構造または機能を有することも可能であるが、そうである必要はない。標準的技術(ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較など)を用いて、アレルを同定することも可能である。
【0146】
化学合成、組換え法、またはPCRを用いて、本発明のポリヌクレオチドを得ることも可能である。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は当該技術分野に周知であり、そして本明細書に詳細に記載する必要はない。当業者は、本明細書に提供する配列および商業的DNA合成装置を用いて、望ましいDNA配列を産生することも可能である。
【0147】
本明細書にさらに論じるように、組換え法を用いてポリヌクレオチドを調製するため、望ましい配列を含むポリヌクレオチドを適切なベクターに挿入し、そして次に該ベクターを、複製および増幅のため、適切な宿主細胞内に導入することも可能である。当該技術分野に知られる手段いずれかによって、ポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入することも可能である。直接取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F交配またはエレクトロポレーションにより、外因性ポリヌクレオチドを導入することによって、細胞を形質転換する。ひとたび導入されたら、外因性ポリヌクレオチドは非組込みベクター(プラスミドなど)として細胞内に維持されることも、また宿主細胞ゲノム内に組み込まれることも可能である。当該技術分野に周知の方法によって、こうして増幅されたポリヌクレオチドを宿主細胞から単離することも可能である。例えばSambrookら(1989)を参照されたい。
【0148】
あるいは、PCRは、DNA配列の再生を可能にする。PCR技術は、当該技術分野に周知であり、そして米国特許4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号、および第4,683,202号、並びにPCR:The Polymerase Chain Reaction, Mullisら監修, Birkauswer Press, ボストン(1994)に記載される。
【0149】
適切なベクター中の単離DNAを用い、そして適切な宿主細胞に挿入することによって、RNAを得ることも可能である。細胞が複製し、そしてDNAがRNAに転写されると、例えばSambrookら(1989)に示されるような、当業者に周知の方法を用いて、RNAを単離することも可能である。
【0150】
標準的技術にしたがって、適切なクローニングベクターを構築することも可能であるし、または当該技術分野で入手可能な多数のクローニングベクターから選択することも可能である。選択されるクローニングベクターは、用いようと意図される宿主細胞にしたがって多様であることも可能であるが、有用なクローニングベクターは、一般的に、自己複製能を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼの単一のターゲットを所持することも可能であり、そして/またはベクターを含有するクローンを選択する際に使用可能なマーカーの遺伝子を所持することも可能である。適切な例には、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えばpUC18、pUC19、Bluescript(例えばpBS SK+)およびその派生物、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、並びにpSA3およびpAT28などのシャトルベクターが含まれる。これらのベクターおよび多くの他のクローニングベクターが、BioRad、Stratagene、およびInvitrogenなどの商業的業者から入手可能である。
【0151】
発現ベクターは、一般的に、本発明にしたがったポリヌクレオチドを含有する、複製可能ポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターが、エピソームとして、または染色体DNAの組み込まれた部分としてのいずれかで、宿主細胞中で複製可能でなければならないことが意味される。適切な発現ベクターには、限定されるわけではないが、プラスミドや、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、およびPCT公報第WO 87/04462号に開示される発現ベクター(単数または複数)が含まれる。ベクター構成要素には、一般的に、限定されるわけではないが、1以上の以下が含まれることも可能である:シグナル配列;複製起点;1以上のマーカー遺伝子;適切な転写調節要素(プロモーター、エンハンサーおよびターミネーターなど)。発現(すなわち翻訳)のため、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、および停止コドンなどの1以上の翻訳調節要素もまた、通常、必要である。
【0152】
いくつかの適切な手段のいずれによって、目的のポリヌクレオチドを含有するベクターを宿主細胞に導入することも可能であり、こうした手段には、エレクトロポレーションや、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、または他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えばベクターがワクシニアウイルスなどの感染性病原体である場合)が含まれる。導入ベクターまたはポリヌクレオチドの選択は、しばしば、宿主細胞の特徴に依存する。
【0153】
本発明はまた、本明細書に記載するポリヌクレオチド、あるいはポリペプチドまたは抗体のいずれかを含む宿主細胞も提供する。異種DNAを発現する(過剰発現を含む)ことが可能な宿主細胞のいずれを、目的の抗体、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子を単離する目的に用いることも可能である。哺乳動物宿主細胞の限定されない例には、限定されるわけではないが、COS、HeLa、およびCHO細胞が含まれる。PCT公報第WO 87/04462号もまた参照されたい。適切な非哺乳動物宿主細胞には、原核生物(大腸菌または枯草菌(B. subtillis)など)および酵母(S.セレビシエ(S. cerevisae)、S.ポンベ(S. pombe);またはK.ラクティス(K. lactis)など)が含まれる。好ましくは、宿主細胞に、対応する抗体またはタンパク質が内因性に存在する場合、宿主細胞は、対応する内因性のものより、約5倍高いレベル、より好ましくは10倍高いレベル、さらにより好ましくは20倍高いレベルで、該cDNAを発現する。trkCに特異的に結合するポリペプチドを産生する宿主細胞のスクリーニングは、イムノアッセイまたはFACSによって達成される。目的の抗体またはタンパク質を過剰発現する細胞を同定することも可能である。
【0154】
抗体またはポリペプチドを用いる方法
trkCに結合する抗体A5を用いて、trkCまたはtrkC断片の存在または非存在を同定するかまたは検出することも可能である。簡単にするため、一般的に、A5または抗体への言及を行い、これらの方法が、本明細書記載のtrkC結合態様(ポリペプチドなど)のいずれにも適用されることを理解するものとする。検出は、一般的に、trkCに結合する本明細書記載の抗体と、生物学的試料を接触させ、そしてtrkCおよびtrkCに特異的に結合する抗体(例えばA5)の間で複合体を形成させることを伴う。こうした複合体の形成は、in vitroであることもまたはin vivoであることも可能である。用語「検出」は、本明細書において、対照と比較した、または比較しない、定性的および/または定量的検出(レベルを測定する)を含む。
【0155】
限定されるわけではないが、ポリペプチドに結合する抗体を用いたイムノアッセイ、例えば酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)など;およびコードされるポリペプチドに関する機能アッセイ、例えば結合活性または酵素アッセイを含む、多様な既知の方法のいずれを用いることも可能である。いくつかの態様において、抗体を検出可能に標識する。他の態様が当該技術分野に知られ、そして本明細書に記載される。
【0156】
抗体の診断使用
本発明の抗体およびポリペプチドを、改変されたかまたは異常なtrkC発現(いくつかの態様において、(正常試料に比較して)増加したかまたは減少したtrkC発現、並びに/あるいは不適切な発現、例えば、通常はtrkC発現を欠く組織(単数または複数)および/または細胞(単数または複数)における発現の存在、または通常trkC発現を所持する組織(単数または複数)または細胞(単数または複数)におけるtrkC発現の非存在)と関連する疾患、状態、または障害の検出、診断および監視に使用可能である。例えば、trkC発現腫瘍が当該技術分野に知られ、そしてこれには、未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)、ユーイング肉腫細胞、膵臓癌および甲状腺髄様癌が含まれる。本発明の抗体およびポリペプチドはさらに、例えば、trkCに対する、改変されたかまたは異常な感受性または反応性に関連する疾患における、trkC発現の検出にも有用である。したがって、いくつかの態様において、本発明は、改変されたかまたは異常なtrkC発現を有すると推測される個体の標本(試料)を、本発明の抗体またはポリペプチドと接触させ、そしてtrkCレベルが、対照または比較標本のものと異なるかどうかを決定することを含む。
【0157】
他の態様において、本発明は、個体の標本(試料)を接触させ、そしてtrkC発現レベルを決定することを含む。いくつかの態様において、個体は、trkC発現に対する、改変されたかまたは異常な感受性または反応性を特徴とするかまたはこれに関連する疾患、障害を有すると推測される。
【0158】
診断適用のため、限定されるわけではないが、放射性同位体、蛍光標識、および多様な酵素−基質標識を含む、検出可能部分で、抗体を標識することも可能である。抗体に標識をコンジュゲート化する方法が当該技術分野に知られる。本発明の他の態様において、本発明の抗体を標識する必要はなく、そして本発明の抗体に結合する標識抗体を用いて、本発明の抗体の存在を検出することも可能である。
【0159】
競合的結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイなどの既知のアッセイ法いずれかにおいて、本発明の抗体を使用することも可能である。Zola, Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques, pp. 147−158(CRC Press, Inc. 1987)。
【0160】
抗体をin vivo画像化などのin vivo診断アッセイに用いることもまた可能である。一般的に、免疫シンチグラフィーを用いて、目的の細胞または組織を位置決定することが可能であるように、抗体を放射性核種(111In、99Tc、14C、131I、125I、またはHなど)で標識する。
【0161】
当該技術分野に周知の技術にしたがって、病理学における染色試薬として抗体を用いることもまた、可能である。
療法目的のため、抗体またはポリペプチド(A5など)を用いる方法
抗体A5は、trkCの生物学的活性を活性化するのに有用である。このアゴニスト活性は、感覚性ニューロパシーまたは神経変性疾患と関連する病理学的状態の治療に、あるいは損傷を受けた神経細胞の修復に有用であると考えられる。ニューロパシーは、例えば、限定なしに大径線維感覚性ニューロパシーを含む、末梢ニューロパシーであることも可能である。いくつかの態様において、感覚性ニューロパシー、例えば大径線維感覚性ニューロパシー、例えばタキソール誘導性感覚性ニューロパシー、シスプラチン誘導性感覚性ニューロパシー、またはピリドキシン誘導性ニューロパシーを患う個体に、本明細書記載のA5または他の抗体あるいはポリペプチドでの治療を施す。一般的に、これらの態様において、有効量を個体に投与する。
【0162】
簡単にするため、一般的に、A5または抗体への言及を行い、これらの方法が、本明細書記載のtrkC結合態様のいずれにも適用されることを理解するものとする。
A5またはA5断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)、Fv、Fcなど)、例えば一本鎖(ScFv)、これらの突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および必要な特異性の抗原trkC認識部位を含むA5の他の修飾立体配置いずれかの多様な配合物を投与に用いることも可能である。いくつかの態様において、A5抗体またはA5の多様な配合物をそのまま(neat)投与することも可能である。他の態様において、A5またはA5の多様な配合物(本明細書記載の組成物態様いずれかを含む)および薬学的に許容しうる賦形剤が投与され、そしてこれらは多様な配合にあることも可能である。薬学的に許容しうる賦形剤は、当該技術分野に知られ、そして薬理学的有効物質の投与を容易にする、比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形またはコンシステンシーを与えるか、あるいは希釈剤として作用することも可能である。適切な賦形剤には、限定されるわけではないが、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変化させる塩、被包剤、緩衝剤、および皮膚浸透増進剤が含まれる。非経口および経口薬剤搬送のための賦形剤、並びに配合物が、Remington, The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing(2000)に示される。
【0163】
いくつかの態様において、注射(例えば腹腔内、クモ膜下内、静脈内、皮下、筋内など)による投与のために、これらの剤を配合するが、他の型の投与(例えば経口、粘膜、吸入を介するもの、舌下など)もまた、使用可能である。好ましくは、A5抗体およびその同等物を生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液等の薬学的に許容しうるビヒクルと組み合わせる。特定の投薬措置、すなわち用量、時期および反復は、特定の個体および個体の病歴に応じるであろう。一般的に、約1μg/kg体重未満、少なくとも約1μg/kg体重;少なくとも約2μg/kg体重、少なくとも約5μg/kg体重、少なくとも約10μg/kg体重、少なくとも約20μg/kg体重、少なくとも約50μg/kg体重、少なくとも約100μg/kg体重、少なくとも約200μg/kg体重、少なくとも約500μg/kg体重、少なくとも約1mg/kg体重、少なくとも約2mg/kg体重、少なくとも約5mg/kg体重、少なくとも約10mg/kg体重、少なくとも約30mg/kg体重、またはそれより多く(例えば約50mg/kg、約100mg/kg、約200mg/kgまたは約500mg/kg)の用量を投与する。数日以上に渡る反復投与には、状態に応じて、疾患症状の望ましい抑制が起こるまで、治療を持続する。典型的な投薬措置は、抗trkC抗体の約2mg/kgの最初の用量、その後、約1mg/kgの毎週の維持用量、または1週おきの約1mg/kgの維持用量の投与を含む。しかし、医師が達成を望む薬物動態学的減衰パターンに応じて、他の投薬措置が有用である可能性もある。半減期などの実験的考慮は、一般的に、投薬量の決定に寄与するであろう。この療法の進行は、慣用的技術およびアッセイによって、容易に監視される。
【0164】
ある個体においては、1回より多い用量が必要とされる可能性もある。療法経過に渡って、投与頻度を決定し、そして調節することも可能である。例えば、治療しようとする症状の種類および重症度、剤が予防目的でまたは療法目的で投与されるか、以前の療法、患者の病歴および剤に対する反応性、並びに主治医の判断に基づいて、投与頻度を決定するかまたは調節することも可能である。典型的には、医師は、投薬量が、望ましい結果を達成するに至るまで、アゴニスト抗TrkC抗体(A5など)を投与するであろう。ある場合には、A5抗体の持続性連続放出配合物が適切である可能性もある。持続性放出を達成する多様な配合物および装置が、当該技術分野に知られる。
【0165】
1つの態様において、1以上の投与(単数または複数)を与えられた個体において、A5抗体(またはポリペプチド)の投薬量を実験的に決定することも可能である。個体に、増加性でA5投薬を行う。A5または他の同等抗体の有効性を評価するため、疾患症状のマーカー(疼痛など)を監視することも可能である。
【0166】
本発明の方法にしたがった抗体(A5など)またはポリペプチドの投与は、例えばレシピエントの生理学的状態、投与目的が療法的であるかまた予防的であるか、および医師に知られる他の要因に応じて、連続性であることもまたは断続性であることも可能である。抗体の投与は、あらかじめ選択された期間に渡って、本質的に連続性であることも可能であるし、あるいは例えば症状を発展させる前、間、または後のいずれか、症状を発展させる前、間、前および後、間および後、または前、間および後など、間を空けた一連の用量であることも可能である。投与は、創傷、切開、外傷、手術、および症状を生じさせる可能性がある他の事象(例えば感覚性ニューロパシー、例えばタキソール誘導性感覚性ニューロパシー)いずれかの、前、間および/または後であることも可能である。
【0167】
他の配合物には、当該技術分野に知られる適切な搬送型が含まれ、これには限定されるわけではないが、リポソームなどのキャリアーが含まれる。例えば、Mahatoら(1997)Pharm. Res. 14:853−859を参照されたい。リポソーム調製物には、限定されるわけではないが、サイトフェクチン、多層小胞および単層小胞が含まれる。
【0168】
いくつかの態様において、1より多い抗体またはポリペプチドが存在することも可能である。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであることも可能である。こうした組成物は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの異なる抗体を含有することも可能である。抗体混合物は、当該技術分野にしばしば示されるように、集団または個体のより広い範囲を治療するのに、特に有用であることも可能である。
【0169】
本発明の抗体またはポリペプチド(抗体A5など)のいずれかをコードするポリヌクレオチドを、本発明の抗体またはポリペプチド(抗体A5など)のいずれかの搬送および望ましい細胞における発現に用いることも可能である。発現ベクターを用いて、A5抗体またはポリペプチドの発現を指示することも可能であることが明らかである。発現ベクターを、当該技術分野に知られる手段いずれかによって、投与することも可能であり、投与には例えば、腹腔内、静脈内、筋内、皮下、クモ膜下内、心室内、経口、経腸、非経口、鼻内、皮膚、舌下、または吸入によるものがある。例えば、発現ベクターの投与には、局所投与または全身性投与が含まれ、注射、経口投与、微粒子銃またはカテーテル投与、および局所的投与が含まれる。当業者は、in vivoの外因性タンパク質の発現を得るための発現ベクターの投与に精通している。例えば、米国特許第6,436,908号;第6,413,942号;および第6,376,471号を参照されたい。
【0170】
本発明の抗体またはポリペプチド(抗体A5など)のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む療法組成物のターゲティング化搬送を用いることもまた、可能である。受容体仲介性DNA搬送技術が、例えば、Findeisら, Trends Biotechnol.(1993)11:202;Chiouら, Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer(J.A. Wolff監修)(1994);Wuら, J. Biol. Chem.(1988)263:621;Wuら, J. Biol. Chem.(1994)269:542;Zenkeら, Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)(1990)87:3655;Wuら, J. Biol. Chem.(1991)266:338に記載されている。遺伝子治療プロトコルでは、局所投与のため、約100ng〜約200mgのDNAの範囲で、ポリヌクレオチドを含有する療法組成物を投与する。約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg、および約20μg〜約100μgのDNAの濃度範囲もまた、遺伝子治療プロトコルで使用可能である。遺伝子搬送ビヒクルを用いて、本発明の療法ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを搬送することも可能である。遺伝子搬送ビヒクルは、ウイルス起源であることもまた非ウイルス起源であることも可能である(一般的には、Jolly, Cancer Gene Therapy(1994)1:51;Kimura, Human Gene Therapy(1994)5:845;Connelly, Human Gene Therapy(1995)1:185;およびKaplitt, Nature Genetics(1994)6:148を参照されたい)。内因性哺乳動物プロモーターまたは異種プロモーターを用いて、こうしたコード配列の発現を誘導することも可能である。コード配列の発現は、恒常性であることもまた制御されていることも可能である。
【0171】
望ましいポリヌクレオチドを搬送し、そして望ましい細胞において発現させるためのウイルスに基づくベクターが当該技術分野に周知である。ウイルスに基づく典型的なビヒクルには、限定されるわけではないが、組換えレトロウイルス(例えば、PCT公報第WO 90/07936号;第WO 94/03622号;第WO 93/25698号;第WO 93/25234号;第WO 93/11230号;第WO 93/10218号;第WO 91/02805号;米国特許第5,219,740号;第4,777,127号;GB特許第2,200,651号;およびEP特許第0 345 242号)、アルファウイルスに基づくベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)およびベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532))、およびアデノ関連ウイルス(AAV)ベクター(例えばPCT公報第WO 94/12649号、第WO 93/03769号;第WO93/19191号;第WO 94/28938号;第WO 95/11984号および第WO 95/00655号を参照されたい)が含まれる。Curiel, Hum. Gene Ther.(1992)3:147に記載されるように、殺したアデノウイルスに連結されたDNAの投与もまた、使用可能である。
【0172】
非ウイルス搬送ビヒクルおよび方法もまた使用可能であり、これらには、限定されるわけではないが、殺したアデノウイルスのみに連結されたまたは連結されないポリカチオン性凝縮DNA(例えばCuriel, Hum. Gene Ther.(1992)3:147を参照されたい);リガンド連結DNA(例えば、Wu, J. Biol. Chem.(1989)264:16985);真核細胞搬送ビヒクル細胞(例えば米国特許第5,814,482号;PCT公報第WO 95/07994号;第WO 96/17072号;第WO 95/30763号;および第WO 97/42338号)および核酸電荷中和または細胞膜との融合が含まれる。裸のDNAもまた使用可能である。裸のDNAの典型的な導入法は、PCT公報第WO 90/11092号および米国特許第5,580,859号に記載される。遺伝子搬送ビヒクルとして作用可能なリポソームが、米国特許第5,422,120号;PCT公報第WO 95/13796号;第WO 94/23697号;第WO 91/14445号;およびEP特許第0 524 968号に記載される。さらなるアプローチが、Philip, Mol. Cell Biol.(1994)14:2411およびWoffendin, Proc. Natl. Acad. Sci.(1994)91:1581に記載される。
【0173】
本明細書記載のすべての方法に関して、アゴニスト抗trkC抗体(またはポリペプチド)への言及はまた、1以上のこれらの剤を含む組成物もまた含む。これらの組成物は、適切な賦形剤、例えば緩衝剤を含む薬学的に許容しうる賦形剤をさらに含むことも可能であり、こうした賦形剤は当該技術分野に周知である。本発明を単独で、または他の慣用的治療法と組み合わせて用いることも可能である。
【0174】
適切な経路いずれかを介して、アゴニスト抗trkC抗体(またはポリペプチド)を個体に投与することも可能である。異なる投与経路の例を本明細書に記載する。
アゴニスト抗trkC抗体の投与
適切な経路いずれかを介して、アゴニスト抗trkC抗体(またはポリペプチド)を個体に投与することも可能である。本明細書記載の実施例は、限定することを意図せず、利用可能な技術の例示を意図することが、当業者には明らかであるはずである。簡単にするため、一般的に、A5または抗体への言及を行い、これらの方法が、trkC結合態様のいずれにも適用されることを理解するものとする。したがって、いくつかの態様において、静脈内投与などの既知の方法にしたがって、例えばボーラス(bolus)として、または一定期間に渡る連続注入によって、筋内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、動脈内、舌下、滑膜内、吹送を介した、クモ膜下内、経口、吸入または局所的経路によって、アゴニスト抗trkC抗体を個体に投与する。投与は全身性、例えば静脈内投与であることも、または局所性であることも可能である。ジェット噴霧器および超音波噴霧器を含む、液体配合物用の商業的に入手可能な噴霧器は、投与に有用である。液体配合物は直接噴霧可能であり、そして凍結乾燥粉末は、再構成後、噴霧可能である。あるいは、フルオロカーボン配合物および定量吸入器を用いて、アゴニスト抗trkC抗体をエアロゾル化することも可能であるし、また凍結乾燥し、そして粉砕した粉末として吸入することも可能である。
【0175】
1つの態様において、部位特異的またはターゲット化局所搬送技術を介して、アゴニスト抗trkC抗体を投与する。部位特異的またはターゲット化局所搬送技術の例には、アゴニスト抗trkC抗体の多様な移植可能デポ供給源、あるいは局所搬送カテーテル、例えば注入カテーテル、留置カテーテル、または針カテーテル、合成移植片、外膜ラップ、シャントおよびステントまたは他の移植可能装置、部位特異的キャリアー、直接注入、または直接適用が含まれる。例えば、PCT公報第WO 00/53211号および米国特許第5,981,568号を参照されたい。
【0176】
アゴニスト抗trkC抗体の多様な配合物を投与に用いることも可能である。いくつかの態様において、アゴニスト抗trkC抗体をそのまま投与することも可能である。いくつかの態様において、アゴニスト抗trkC抗体および薬学的に許容しうる賦形剤は多様な配合にあることも可能である。薬学的に許容しうる賦形剤は、当該技術分野に知られ、そして薬理学的有効物質の投与を容易にする、比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形またはコンシステンシーを与えるか、あるいは希釈剤として作用することも可能である。適切な賦形剤には、限定されるわけではないが、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変化させる塩、被包剤、緩衝剤、および皮膚浸透増進剤が含まれる。非経口および経口薬剤搬送のための賦形剤、並びに配合物が、Remington, The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing(2000)に示される。
【0177】
いくつかの態様において、注射(例えば腹腔内、クモ膜下内、静脈内、皮下、筋内など)による投与のために、これらの剤を配合する。したがって、これらの剤を生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液等の薬学的に許容しうるビヒクルと組み合わせることも可能である。特定の投薬措置、すなわち用量、時期および反復は、特定の個体および個体の病歴に応じるであろう。
【0178】
注射(例えば腹腔内、クモ膜下内、静脈内、皮下、筋内など)によるものを含む、適切な方法いずれかを用いて、抗trkC抗体を投与することも可能である。抗trkC抗体を、本明細書に記載するような吸入を介して投与することもまた可能である。一般的に、約1μg/kg体重未満、少なくとも約1μg/kg体重;少なくとも約2μg/kg体重、少なくとも約5μg/kg体重、少なくとも約10μg/kg体重、少なくとも約20μg/kg体重、少なくとも約50μg/kg体重、少なくとも約100μg/kg体重、少なくとも約200μg/kg体重、少なくとも約500μg/kg体重、少なくとも約1mg/kg体重、少なくとも約2mg/kg体重、少なくとも約5mg/kg体重、少なくとも約10mg/kg体重、少なくとも約30mg/kg体重、またはそれより多く(例えば約50mg/kg、約100mg/kg、約200mg/kgまたは約500mg/kg)の用量を投与する。数日以上に渡る反復投与には、状態に応じて、症状の望ましい抑制が起こるまで、または症状、例えばニューロパシーを減少させるのに十分な療法レベルが達成されるまで、治療を持続する。典型的な投薬措置は、抗trkC抗体の約2mg/kgの最初の用量、その後、約1mg/kgの毎週の維持用量、または1週おきの約1mg/kgの維持用量の投与を含む。しかし、医師が達成を望む薬物動態学的減衰パターンに応じて、他の投薬措置が有用である可能性もある。例えば、いくつかの態様において、週1〜4回の投薬が意図される。この療法の進行は、慣用的技術およびアッセイによって、容易に監視される。投薬措置(用いるtrkCアゴニスト(単数または複数)を含む)は、時間に渡って多様であることも可能である。
【0179】
本発明の目的のため、アゴニスト抗trkC抗体の適切な投薬量は、使用するアゴニスト抗trkC抗体(またはその組成物)、治療しようとする症状の種類および重症度、剤が予防目的でまたは療法目的で投与されるか、以前の療法、患者の病歴および剤に対する反応性、並びに主治医の判断に応じるであろう。典型的には、医師は、投薬量が、望ましい結果を達成するに至るまで、アゴニスト抗trkC抗体を投与するであろう。用量および/または頻度は、治療の経過に渡って多様であることも可能である。
【0180】
半減期などの実験的考慮は、一般的に、投薬量の決定に寄与するであろう。例えば、ヒト免疫系に適合する抗体、例えばヒト化抗体または完全ヒト抗体を用いて、抗体の半減期を延長し、そして宿主免疫系に抗体が攻撃されるのを防止することも可能である。療法経過に渡って、投与頻度を決定し、そして調節することも可能であり、そして一般的に、投与頻度は、症状(例えばニューロパシー)の治療および/または抑制および/または改善および/または遅延に基づく。あるいは、アゴニスト抗trkC抗体の持続性連続放出配合物が適切である可能性もある。持続性放出を達成する多様な配合物および装置が、当該技術分野に知られる。
【0181】
1つの態様において、アゴニスト抗trkC抗体の1以上の投与(単数または複数)を与えられた個体において、アゴニスト抗trkC抗体の投薬量を実験的に決定することも可能である。個体に、増加性でアゴニスト抗trkC抗体投薬を行う。アゴニスト抗trkC抗体の有効性を評価するため、ニューロパシー(タキソール誘導性感覚性ニューロパシーを含む、感覚性ニューロパシーなど)の指標を追跡することも可能である。
【0182】
本発明の方法にしたがったアゴニスト抗trkC抗体の投与は、例えばレシピエントの生理学的状態、投与目的が療法的または予防的であるか、および医師に知られる他の要因に応じて、連続性であることもまたは断続性であることも可能である。アゴニスト抗trkC抗体の投与は、あらかじめ選択された期間に渡って、本質的に連続性であることも可能であるし、あるいは間を空けた一連の用量、例えば感覚性ニューロパシーを発展させる前、間、または後のいずれか;感覚性ニューロパシーを発展させる前;間;前および後;間および後;前および間;または前、間および後であることも可能である。
【0183】
いくつかの態様において、1より多いアゴニスト抗trkC抗体が存在することも可能である。少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたはそれより多くの異なるアゴニスト抗trkC抗体が存在することも可能である。一般的に、これらのアゴニスト抗trkC抗体は、互いに不都合に影響を及ぼさない、相補的活性を有する。アゴニスト抗trkC抗体を、剤の有効性を増進し、そして/または補うように作用する、他の剤と組み合わせて用いることもまた可能である。
【0184】
凍結乾燥配合物または水性溶液の形で、望ましい度合いの純度を有する抗体と、所望による薬学的に許容しうるキャリアー、賦形剤または安定化剤(Remington, The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing(2000))を混合することによって、本発明にしたがって用いられるアゴニスト抗trkC抗体の療法配合物を貯蔵用に調製する。許容しうるキャリアー、賦形剤、または安定化剤は、使用する投薬量および濃度で、レシピエントに非毒性であり、そしてリン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝剤;塩化ナトリウムなどの塩;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリン類を含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体);および/またはTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むことも可能である。
【0185】
Epsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688(1985);Hwangら, Proc. Natl Acad. Sci. USA 77:4030(1980);並びに米国特許第4,485,045号および第4,544,545号に記載されるものなど、当該技術分野に知られる方法によって、アゴニスト抗trkC抗体を含有するリポソームを調製する。循環時間が増進したリポソームが、米国特許第5,013,556号に開示される。ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって、特に有用なリポソームを生成することも可能である。定義される孔サイズのフィルターを通じてリポソームを押し出して、望ましい直径のリポソームを生じる。
【0186】
それぞれコロイド薬剤搬送系(例えば、リポソーム、アルブミン微小球体、ミクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョンにおいて、例えばコアセルベーション技術によって、または界面重合によって、調製された微小カプセル、例えばヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン微小カプセルおよびポリ−(メチルメタシレート(methylmethacylate))微小カプセルに、活性成分を被包することもまた可能である。こうした技術が、Remington, The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing(2000)に開示される。
【0187】
持続性放出調製物を調製することも可能である。持続性放出調製物の適切な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成型された物品の形、例えばフィルム、または微小カプセルである。持続性放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸および7エチル−L−グルタメートのコポリマー、分解不能エチレン−酢酸ビニル、分解可能乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドで構成される注射可能微小球体)、スクロース・アセテート・イソブチレート、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0188】
in vivo投与に用いようとする配合物は、無菌でなければならない。これは、例えば無菌ろ過膜を通じたろ過によって容易に達成される。一般的に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアル、またはあらかじめ充填したシリンジに療法アゴニスト抗trkC抗体組成物を入れる。
【0189】
本発明にしたがった組成物は、経口、非経口または直腸投与、あるいは吸入または吹送による投与のため、錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、溶液または懸濁物、あるいは座薬などの単位投薬型であることも可能である。
【0190】
錠剤などの固体組成物を調製するため、主な活性成分を薬学的キャリアー、例えば慣用的な錠剤化成分、例えばコーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはゴム質、および他の薬学的希釈物、例えば水と混合して、本発明の化合物または非毒性の薬学的に許容しうるその塩の均質な混合物を含有する、あらかじめ配合された固体組成物を形成することも可能である。これらのあらかじめ配合された組成物を均質と称する際、組成物が、錠剤、ピルおよびカプセルなどの、同等に有効な単位投薬型に容易に細分可能であるように、組成物全体に均一に活性成分が分散していることを意味する。次いで、本発明の活性成分0.1〜約500mgを含有する、上述の種類の単位投薬型に、このあらかじめ配合された固体組成物を細分する。新規組成物の錠剤またはピルをコーティングするかまたは別の方式で混合して、作用を延長する利点を提供する投薬型を提供することも可能である。例えば、錠剤またはピルは、内部投薬構成要素および外部投薬構成要素を含有することも可能であり、後者が前者のエンベロープの形であることも可能である。胃での分解に耐性であり、そして内部構成要素が損なわれずに、十二指腸へと通過するか、または放出が遅延されるのを可能にする、溶腸層によって、2つの構成要素を分離することも可能である。こうした溶腸層またはコーティングに、いくつかのポリマー酸、並びにポリマー酸とシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの物質の混合物を含む、多様な成分を用いることも可能である。
【0191】
適切な表面活性剤には、特に、非イオン性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン(例えばTweenTM20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例えばSpanTM20、40、60、80または85)が含まれる。表面活性剤を含む組成物は、都合よくは、0.01〜5%の表面活性剤を含むであろうし、そして0.1〜2.5%の間であることも可能である。他の成分、例えばマンニトールまたは必要であれば他の薬学的に許容しうるビヒクルを添加可能であることも認識されるであろう。
【0192】
商業的に入手可能な脂肪エマルジョン、例えばIntralipidTM、LiposynTM、InfonutrolTM、LipofundinTMおよびLipiphysanTMを用いて、適切なエマルジョンを調製することも可能である。活性成分を、あらかじめ混合したエマルジョン組成物に溶解することも可能であるし、あるいは油(例えば大豆油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油またはアーモンド油)に溶解し、そしてリン脂質(例えば卵リン脂質、大豆リン脂質または大豆レシチン)および水と混合してエマルジョンを形成させることも可能である。他の成分、例えばグリセロールまたはグルコースを添加して、エマルジョンの強直性を調節することも可能であることが認識されるであろう。適切なエマルジョンは、典型的には、20%までの油、例えば5〜20%の油を含有するであろう。脂肪エマルジョンは、0.1〜1.0μm、特に0.1〜0.5μmの間の脂肪小滴を含み、そして5.5〜8.0の範囲のpHを有することも可能である。
【0193】
エマルジョン組成物は、trkCアゴニスト抗体とIntralipidTMまたはその構成要素(大豆油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)を混合することによって調製したものであることも可能である。
【0194】
吸入または吹送のための組成物には、薬学的に許容しうる水性溶媒または有機溶媒中の溶液および懸濁物、あるいはその混合物、並びに粉末が含まれる。液体または固体組成物は、上述のような適切な薬学的に許容しうる賦形剤を含有することも可能である。いくつかの態様において、局所効果または全身効果のため、経口経路または鼻呼吸経路によって、組成物を投与する。好ましくは無菌の薬学的に許容しうる溶媒中の組成物を、ガスの使用によって噴霧することも可能である。噴霧化溶液を噴霧装置から直接呼吸することも可能であるし、または噴霧装置をフェイスマスク、テントまたは間欠的陽圧呼吸装置に取り付けることも可能である。適切な方式で配合物を搬送する装置から、好ましくは経口投与または鼻投与で、溶液、懸濁物または粉末組成物を投与することも可能である。
【0195】
当該技術分野に周知の方法によって、治療有効性を評価することも可能である。
本発明の抗体、ポリペプチド、およびポリヌクレオチドを含むキット
本発明はまた、検出および/または療法で使用するための抗体またはポリペプチドを含むキットも提供する。したがって、いくつかの態様において、キットは抗体A5を含む。いくつかの態様において、キットは、本明細書記載の抗体またはポリペプチドいずれかを含む。
【0196】
他の側面において、例えばタキソール誘導性感覚性ニューロパシー、ピリドキシン誘導性ニューロパシー、シスプラチン誘導性ニューロパシーなどの感覚性ニューロパシー(いくつかの態様において、大径線維感覚性ニューロパシー)の個体を治療する方法を含む、本明細書記載の方法いずれかのために、キットを用いることも可能である。本発明のキットは、適切なパッケージング中にあり、そして所望によって、本明細書記載の方法いずれかにおいて抗体を使用するための、緩衝液などのさらなる構成要素、および使用説明書を提供することも可能である。いくつかの態様において、キットは、個体において、感覚性ニューロパシー(タキソール誘導性感覚性ニューロパシー、ピリドキシン誘導性ニューロパシー、またはシスプラチン誘導性ニューロパシーなど)を治療し、そして/または予防するための、本明細書記載のアゴニスト抗trkC抗体および使用説明書を含む。いくつかの態様において、アゴニスト抗trkC抗体は、抗体A5である。
【0197】
別の側面において、本発明は、本明細書記載のA5ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドを含むキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、本明細書記載の方法いずれかにおいて、ポリヌクレオチドを使用するための使用説明書をさらに含む。
【0198】
本発明を例示するために以下の実施例を提供するが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0199】
実施例
(実施例1)
マウス・モノクローナル抗体2256のヒト化および親和性成熟
A.一般的な方法
本実施例では以下の一般的な方法を用いた。
【0200】
クローン性質決定に用いた発現ベクター
抗体の発現は、Barbas(2001)Phage display:a laboratory manual, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2.10.ページ Vector pComb3X)に記載されるものと類似のIPTG誘導性lacZプロモーターの調節下にあったが、以下のさらなるドメイン:ヒト・カッパ軽鎖定常ドメインおよびIgG2aヒト免疫グロブリンのCH1定常ドメインの付加および発現を含むように修飾した。Igガンマ−2鎖C領域、タンパク質寄託番号P01859;免疫グロブリン・カッパ軽鎖(ホモサピエンス(homosapiens))、タンパク質寄託番号CAA09181。
【0201】
小規模Fab調製
96ウェルプレート中のFabの小規模発現を以下のように行った。Fabライブラリーを形質転換した大腸菌から出発して、コロニーを摘み取って、マスタープレート(寒天LB+アンピシリン(50μg/ml)+2%グルコース)および作業プレート(2ml/ウェル、1.5mlのLB+アンピシリン(50μg/ml)+2%グルコースを含有する96ウェル/プレート)の両方に接種した。両方のプレートを30℃で8〜12時間増殖させた。マスタープレートを4℃で保存し、そして作業プレート由来の細胞を5000rpmでペレットにし、そして1mlのLB+アンピシリン(50μg/ml)+1mM IPTGに再懸濁してFabの発現を誘導した。30℃で5時間の発現時間後に遠心分離によって細胞を採取し、次いで、500μlの緩衝液HBS−P(100mM HEPES緩衝液pH7.4、150mM NaCl、0.005% P20)に再懸濁した。1周期の凍結(−80℃)、次いで37℃の融解によって、HBS−P再懸濁細胞の溶解を達成した。細胞溶解物を5000rpmで30分間遠心分離して、Fabを含有する上清から細胞破片を分離した。次いで、上清をBIAcoreプラズモン共鳴装置に注入して、各Fabの親和性情報を得た。Fabを発現するクローンをマスタープレートからレスキューして、DNAを配列決定し、そして以下に記載するように、大規模Fab産生および詳細な性質決定を行った。
【0202】
大規模Fab調製
詳細な動力学パラメーターを得るため、Fabを発現させ、そして大規模培養物から精製した。200mlのLB+アンピシリン(50μg/ml)+2%グルコースを含有する三角フラスコに、選択したFab発現大腸菌クローンからの一晩培養物5mlを接種した。1.0のOD550nmが達成されるまでクローンを30℃でインキュベーションし、そして次いで200mlのLB+アンピシリン(50μg/ml)+1mM IPTGの培地に交換することによって誘導した。30℃で5時間発現させた後、遠心分離によって細胞をペレットにし、次いで、10ml PBS(pH8.0)に再懸濁した。2周期の凍結/融解(それぞれ−80℃および37℃)によって、細胞の溶解を達成した。細胞溶解物の上清を、PBS、pH8で平衡化したNi−NTAスーパーフロー・セファロース(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)カラム上に装填し、次いで5カラム体積のPBS、pH8で洗浄した。個々のFabが、PBS(pH8)+300mMイミダゾールを用いて、異なる分画に溶出された。Fabを含有する分画をプールし、そしてPBS中で透析し、次いで、親和性性質決定前に、ELISAによって定量化した。
【0203】
全長抗体調製
全長抗体を発現するため、重鎖および軽鎖の可変領域を哺乳動物発現ベクターにクローニングし、そしてリポフェクタミンを用い、一過性発現のため、HEK293細胞にトランスフェクションした。標準法を用い、プロテインAを用いて抗体を精製した。
【0204】
Biacoreアッセイ
BIAcore 3000TM表面プラズモン共鳴(SPR)系(BIAcore, INC、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いて、抗trkC Fabおよびモノクローナル抗体の親和性を決定した。供給者の指示にしたがって、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いてCM5チップを活性化した。ヒトまたはラットのtrkC−Fc融合タンパク質を10mM酢酸ナトリウムpH5.0に希釈し、そして0.005mg/mlの濃度で活性化チップ上に注入した。個々のチップチャネルを渡る多様なフロー時間を用いて、2つの範囲の抗原密度:詳細な動力学研究用の200〜400応答単位(RU)およびスクリーニングアッセイ用の500〜1000RUを達成した。チップをエタノールアミンでブロッキングした。再生研究によって、Pierce溶出緩衝液(製品番号21004、Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード)および4M NaCl(2:1)の混合物は、結合したFabを有効に除去しながら、200回の注入に渡って、チップ上のhtrkC活性を維持することが示された。すべてのBIAcoreアッセイに関して、HBS−EP緩衝液(0.01M HEPES、pH7.4、0.15 NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性剤P20)をランニング緩衝液として用いた。精製Fab試料の連続希釈(0.1〜10x概算K)を100μl/分で1分間注入し、そして2時間までの解離時間を許容する。既知の濃度のFab(アミノ酸解析によって決定)を標準として用いて、ELISAおよび/またはSDS−PAGE電気泳動によって、Fabタンパク質の濃度を決定する。BIAevaluationプログラムを用いて、データを1:1ラングミュア結合モデルに適合させることによって(Karlsson, R. Roos, H. Fagerstam, L. Petersson, B.(1994). Methods Enzymology 6.99−110)、動力学会合速度(kon)および解離速度(koff)を同時に得る。koff/konとして、平衡解離定数(K)値を計算する。
【0205】
スクリーニングアッセイ
スクリーニングBIAcoreアッセイを最適化して、ライブラリー由来のFabクローンの親和性を決定した。小規模培養溶解物の上清を、50μl/分で2分間注入した。BIAevaluationソフトウェアを用いて、単一指数関数解離速度(koff)の決定に、5分間の解離時間を用いた。確認のため試料を注入し、そしてよりよいkoff値を得るため、45分間までの解離時間を許容した。改善された(より遅い)koff値を示すクローンを大規模に発現させ、そして精製したタンパク質に対して、完全動力学パラメーター、konおよびkoffを決定した。該アッセイは、およそ2倍以上の親和性の相違を検出可能であった。
【0206】
B.マウス・モノクローナル抗体2256のヒト化および親和性成熟
ヒト化および親和性成熟のため、マウス・モノクローナルtrkCアゴニスト抗体2256を選択した。PTC/US01/20153(WO 01/98361 A2)を参照されたい。Mab2256は、BIAcore表面プラズモン共鳴を用いて決定した際、およそ62nMのヒトtrkCに対する結合親和性を有する。Mab2256は、ヒトtrkCを用いたKIRAアッセイを用いてアッセイした際、およそ40nMのEC50を有し、そして本明細書に記載するようなラット三叉ニューロン生存アッセイを用いてアッセイした際、およそ5nMのEC50を有する。
【0207】
マウス・モノクローナルアゴニスト抗trkC抗体2256(「Mab 2256」または「2256」とも称される)の拡張CDRを図2に示す(CDR H2、H3、L1、L2、L3は、KabatおよびChothiaに対応し、これらはこれらのCDRでは100%一致する。H1はKabatおよびChotiaの間の妥協であり、そして両方の定義由来のすべての残基を含む)。図2もまた、ChothiaおよびKabatのCDRを示す。
【0208】
抗体2256のヒト化および親和性成熟には、以下のヒト生殖系列アクセプター配列を用いた:ヒト軽鎖アクセプター生殖系列配列O8(GenBank寄託番号M64855号);およびヒト重鎖アクセプター生殖系列配列VH1−46(GenBank寄託番号AB019438号)。VH1−46およびO8のフレームワーク領域の配列を図1に示す(抗体A5アミノ酸配列の関連において)。アミノ酸番号付けは連続している。以下のヒトJ配列が、ヒト化抗体に含まれる:(a)重鎖:ヒトJH4(WQGTLVTVSS(配列番号14));および(b)軽鎖:TFGQGTKLEIK(配列番号15)。
【0209】
本発明者らは、表1に示すCDRおよび/またはフレームワーク領域置換突然変異を所持する抗体クローンを調製し、そして本明細書に記載するように、BIAcore解析を用いてKおよび他の動力学パラメーターを決定した。表1に示す置換突然変異は、以下のように示される:(a)フレームワーク領域に関しては:置換突然変異(単数または複数)を軽鎖アクセプター生殖系列配列O8、またはヒト重鎖アクセプター生殖系列配列VH1−46に比較して記載し;そして(b)CDR領域に関しては:置換突然変異(単数または複数)をMab2256の対応するCDR配列に比較して記載する。表2では、突然変異体FabのヒトtrkCに対する結合親和性(Kを含む)を決定した。
【0210】
表3は、BIAcore解析を用いて決定されるような、ラットおよびヒトのtrkCに対する、Fab A5、Fab 2256(親)、および選択される突然変異体の他のクローンの動力学解析の結果を要約する。
【0211】
さらなる性質決定のため、抗体A5(クローン129(T8)(H8xE10)(10B)(A5)とも称される)を選択した。A5重鎖および軽鎖の可変領域の配列を、配列番号1および配列番号2に示す。ヒトtrkCに対するA5の親和性は、(親抗体2256の親和性に対して)200倍改善され、そしてラットTrkCに対するA5の親和性は19nMに増加し、この値は、(親抗体2256のμM範囲の親和性に比較して)動物研究に適している。
【0212】
表2.抗体2256突然変異体のアミノ酸配列および動力学データ。BIAcore解析を用いて、ヒトtrkCへの結合を試験した。
【0213】
【表3】

【0214】
1=BIAcoreで決定したkoffを用いて、そして2256kon=5E 1/Msを用いて、Kを計算した。
2=ヒト軽鎖アクセプター生殖系列配列O8のフレームワーク配列に比較して、置換突然変異体を示す。
【0215】
O8のフレームワーク領域の配列を図1に示す。アミノ酸番号付けは連続している。
3=ヒト重鎖アクセプター生殖系列配列VH1−46のフレームワーク配列に比較して、置換突然変異体を示す。
【0216】
VH1−46のフレームワーク領域の配列を図1に示す。アミノ酸番号付けは連続している。
表中の「me」は:mx10を意味する。
【0217】
表3.抗体2256突然変異体の動力学データ。ラットtrkCに対する結合親和性を試験した。
【0218】
【表4】

【0219】
表中の「mE」は:mx10を意味する。
C.ヒト化し、そして親和性成熟させた抗体A5の性質決定
抗体A5を全長IgGとして発現させ、そしてSadickら, Exp. Cell Res.(1997)234:354−361に記載されるようなKIRAによって、ヒトTrkCに対するアゴニスト活性を測定し、そして以下のプロトコルに記載するように行うニューロン生存アッセイによって、ラットTrkCに対するアゴニスト活性を測定した。図3および図4は、抗体A5がヒトおよびげっ歯類のTrkCに対して強力なアゴニストであったことを示す。ニューロン生存における、げっ歯類TrkCに対してのA5に関するEC50は0.001nMであり、一方、2256に関しては5nMであり、これらの抗体間の親和性の相違とよく一致した。
【0220】
別の実験において、trkC結合親和性に関して本質的に上に記載するようなBIAcoreアッセイを用いて、ヒトおよびラットのtrkAおよびtrkBに対するA5抗体の結合親和性を決定することによって、trkCに対する抗体A5の特異性を試験した。陽性対照(ヒトtrkAに関しては、抗ヒトtrkA抗体を用い;ラットtrkAに関してはヒトNGFを用い;ヒトtrkBに関しては抗ヒトtrkB抗体を用い;ラットtrkBに関しては、ヒトNT−4/5を用いた)とは対照的に、ヒトtrkA、ラットrtkA、ヒトtrkB、またはラットtrkBに対するA5の結合は検出されなかった。
【0221】
E12三叉ラットニューロン生存アッセイ
三叉神経節は、顔領域に神経を分布させる皮膚感覚ニューロンで構成される。これらのニューロンは、神経節形成の初期段階では、BDNFおよびNT3に補助され、そしてより後期の段階では、NGFに補助される。E12胚から得た三叉神経節ニューロンは、NT3に補助され、したがって該神経栄養因子を飽和濃度にしておくと、培養48時間まで、生存は100%近い。NT3の非存在下では、48時間までに5%未満のニューロンしか生存しない。したがって、E12三叉ニューロンの生存は、TrkCアゴニスト抗体のアゴニスト活性を評価する感受性アッセイである。
【0222】
適切な時期に交尾させた妊娠スプレーグ・ドーリーのメスラットをCO2吸入によって安楽死させた。子宮角を除去し、そして胚段階E12の胚を摘出し、そして頭部を除去した。電解によって鋭くしたタングステン針を用いて、三叉神経節を切開した。次いで、神経節をトリプシン処理し、機械的に解離させ、そしてポリ−L−オルニチンおよびラミニンでコーティングした96ウェルプレート中、定義された血清不含培地中で、ウェルあたり200〜300細胞の密度でプレーティングした。用量−反応方式、3つ組で、抗TrkC抗体のアゴニスト活性を評価した。培養48時間後、Biomek FX液体取り扱いワークステーション(Beckman Coulter)上で行う自動化免疫細胞化学プロトコルに、細胞を供した。プロトコルには、固定(4%ホルムアルデヒド、5%スクロース、PBS)、透過化(PBS中の0.3%Triton X−100)、非特異的結合部位のブロッキング(5%正常ヤギ血清、0.1%BSA、PBS)、並びにニューロンを検出するための一次抗体および二次抗体との連続インキュベーションが含まれた。確立されたニューロン表現型マーカーであるタンパク質遺伝子産物9.5(PGP9.5、Chemicon)に対するウサギ・ポリクローナル抗体を、一次抗体として用いた。培養中に存在する細胞すべての核を標識する核色素Hoechst 33342(Molecular Probes)と一緒に、二次試薬としてAlexa Fluor 488ヤギ抗ウサギ(Molecular Probes)を用いた。Discovery−1/GenII Imager(Universal Imaging Corporation)上で、画像獲得および画像解析を行った。Alexa Fluor 488およびHoechst 33342の2波長で画像を自動的に獲得し、この際、核がすべてのウェルに存在することから、Imagerの画像に基づくオートフォーカス系のため、参照点として核染色を用いた。適切な対物レンズおよびウェルあたりに画像化する部位数を選択して、各ウェルの全表面をカバーした。抗PGP9.5抗体での特異的染色に基づいて、培養48時間後、各ウェルに存在するニューロンの数を計数するように、自動化画像解析を設定した。画像を注意深く閾値設定し、そして形態、および蛍光強度に基づく選択性フィルターを適用して、ウェルあたりの正確なニューロン数を得た。
【0223】
(実施例2)
ピリドキシン誘導性ニューロパシーに対する抗体A5の影響
治療プロトコル。実験開始時に150〜200gの体重であった、成体オス・スプレーグ・ドーリーラットに対して、そして認可された研究室動物飼育および使用プロトコルにしたがって、この実験を行った。各治療群に6〜8匹の動物を用いた。注射直前に再蒸留水中100mg/mlにしたピリドキシン(PDX、Sigma、ミズーリ州セントルイス)を注射することによってニューロパシーを誘導し、そして1日2回8日間、腹腔内注射によって、400mg/kgで投与を行った。A5治療動物には、PDX治療開始3日前、腹腔内注射によってA5(5mg/kg)を投与し、そしてA5の最初の用量の1週間後、再び投与した。ベクター治療動物には、中毒開始3日前に、両後肢の足底表面に、ベクターQL2HNT3(1x10pfu/ml)25μlを単回皮下接種した。ベクターQL2HNT3は、NT−3のコード配列を含有する、複製不適合の単純疱疹ウイルスゲノムに基づくベクターであり、そしてin vivoでラット後根神経節の感覚ニューロンに形質導入することが可能であり、そしてこれらのニューロンにおいてNT−3を発現させることが可能である。Chattopadhyayら, Ann. Neurol. 51:19−27(2002)。対照には、未治療動物(対照)および他の治療はまったく受けずにPDXに中毒させた動物(PDX)が含まれた。
【0224】
電気生理学的測定値。ピリドキシンの最初の用量の15日後に、標準的臨床筋電図装置(Viking II、Nicolet Biomedical、ウィスコンシン州マディソン)およびガラス針電極を用いて、すべての記録を行った。抱水クロラール(400mg/kg IP)を用いてラットを麻酔し、体の長軸に対して後肢を30〜45度の角度に固定し、皮下温度を36〜37℃に維持し、そして接地電極を尾に挿入した。記録電極を腓腹筋に挿入して、坐骨神経の運動神経伝導速度および振幅を決定した。坐骨切痕またはひざ近位に刺激電極対を置き、そして参照−記録電極対を後肢の第五指に皮下挿入した。潜伏期および振幅の両方を決定し、そして伝導速度を計算した。坐骨切痕を刺激し、そして第五指近位に置いたクリップ電極から記録した後、H波を記録した。少なくとも8つの反応を得て、そして最大H波振幅を決定した。感覚神経記録のため、坐骨切痕に置いた電極を記録電極として用い;刺激電極をかかとに置き、そして参照電極を第一指に置いた。行った多数の事後解析にボンフェローニの補正を行い、分散分析(ANOVA)(Systat 9)によって、群間の相違の統計的有意性を決定した。
【0225】
ニューロパシーの行動評価。自己受容機能を評価するため、長さ185cmの3cm直径の細い棒を渡るように、中毒前にラットを訓練しておいた。棒の全長に渡って、幅0.6cmの黒い線1対を、中央から1.05cm側面に、各側に描いた。PDX中毒完了の8日後、各ラットに横材(beam)を渡らせる試験を5回行った。記録したビデオテープを低速で再生して、スコア線に比較した足(中足指節関節)の配置、および棒からスリップした回数を数えた。行った多数の事後解析にボンフェローニの補正を行い、ANOVA(Systat 9)によって、群間の相違の統計的有意性を決定した。
【0226】
電気生理学によって測定した、抗体A5によるニューロパシーに対する保護。図5Aおよび図5Bに示すように、誘発された感覚神経活動電位の測定によって、対照と比較して、PDXに中毒させたラットでは、振幅に顕著な減少が生じ、そして足の感覚神経伝導速度の遅延が生じることが明らかになった。感覚神経振幅は、対照動物の16.2±1μVからPDX中毒動物の6.8±0.6μVに減少し(P<0.001、ANOVA)、そして伝導速度は23.6m/秒から19.3m/秒に減少した(P<0.001、ANOVA)。PDXに中毒させる3日前に、QL2HNT3を形質導入した動物では、感覚神経振幅は、16.1±2.4μVであった(PDXのみに比較してP<0.001、ANOVA)。A5で治療した動物は、PDX群に比較して、感覚神経振幅の有意な保持を示した(11.9±3μV、P<0.005、ANOVA)。同様に、PDXに中毒させたQL2HNT3治療動物は、対照と同一の感覚神経伝導速度(23m/秒)を有した(PDXのみに比較してP<0.001、ANOVA)。A5で治療したPDX中毒動物は、PDX治療群と有意には異ならない感覚神経伝導速度(21.1m/秒)を有した。図5Cに示すように、H反射は、対照に比較して、PDXを投与したラットでひどく減弱した一方、先に報告されたように、直接M反応は減弱しなかった。PDXに中毒させた動物は、検出可能なH反射を本質的に示さなかった。PDXに中毒させ、そしてQL2HNT3で治療した動物は、H波の実質的だが不完全な保持を示す(1.84±0.8mV、P<0.001 PDXのみに比較してPDX+QL2HNT3、ANOVA)。PDXに中毒させA5で治療した動物は、H波のある程度の保持を示した(0.6±0.5mV)が、相違はPDX中毒群に比較して有意ではなかった。
【0227】
行動能力によって測定した、抗体A5による、ニューロパシーに対する保護。自己受容感覚機能を試験するため、3.0cm直径の横材上を歩くように、PDX中毒前にラットを訓練しておき、そしてPDX治療完了7日後(治療開始15日後であり、そしてベクターまたは最初の抗体接種の18日後)、同じ横材上で試験した。図5Dに示すとおり、対照動物は、スコア線より下にスリップすることがなかったことに示されるように、横材を渡る際に困難はまったくなかった。PDXに中毒させた動物は、かなりの困難を示し、試験期間中、平均16回、横材からスリップした。PDX中毒3日前にQL2HNT3を形質導入したラットは、定性的および定量的両方で、PDXのみの動物より、実質的に優れた能力を示した。QL2HNT3で治療した動物は、平均3回のスリップ(PDXのみに比較してP<0.001、ANOVA)を記録した。A5を投与した動物は、試験期間中、棒から平均6.5回スリップし、この相違は統計的に有意であったが、ベクター治療PDX中毒動物より度合いが小さかった(PDXのみに比較してP<0.001)。
【0228】
(実施例3)
シスプラチン誘導性ニューロパシーに対する抗体A5の影響
治療プロトコル。実験開始時体重180〜200gのメス・ウィスターラット(Harlan、イタリア・コッレッツァーナ)に対して実験を行った。コンピュータが生成するランダム選択によって、動物を異なる群に分け、そして各治療群に対して8匹の動物を用いた。週2回4週間の2mg/kgシスプラチン(CDDP)(Bristol Meyer Squibbs、無菌生理食塩水中0.5mg/ml)腹腔内(ip)注射によって、ニューロパシーを誘導した。第1群の動物(対照)は未治療であった。第2群の動物には、週2回4週間2mg/kgのCDDPをip注射した。第3群の動物には、週2回4週間2mg/kgのCDDPをip注射し、そして7日ごとに2mg/kgの抗体2256を皮下(sc)注射した。第4群の動物には、週2回4週間2mg/kgのCDDPをip注射し、そして7日ごとに10mg/kgの抗体2256を皮下注射した。第5群の動物には、週2回4週間2mg/kgのCDDPをip注射し、そして7日ごとに2mg/kgの抗体A5を皮下注射した。第6群の動物には、週2回4週間2mg/kgのCDDPをip注射し、そして7日ごとに10mg/kgの抗体A5を皮下注射した。
【0229】
神経生理学的測定。実験開始前および治療期間(4週間)終了時に、各動物に、尾の感覚神経伝導速度の測定を行った。これらの方法は、Pisanoら, Clin. Cancer Res. 9:5756−67(2003);およびTrediciら, Exp. Neurol. 159:551−8(1999)に記載される。簡潔には、尾の遠位に記録環電極を置き、一方、刺激環電極を記録点に対して5cmおよび10cm近位に置くことによって、尾部神経の逆行性神経伝導速度を評価した。神経刺激後、2部位で記録される電位の潜伏期間を測定し(ピークからピーク)、そしてそれによって神経伝導速度を計算した。動物飼育室に隣接した温度管理室において、標準的条件下で、すべての神経生理学的決定を行った。分散分析(ANOVA)およびテューキー・クレーマー事後検定を用いて、実験期間中、異なる群で得た神経伝導速度の相違を統計的に評価した(有意レベルをp<0.05に設定)。
【0230】
病状決定。治療期間(4週間)終了時、各群の4匹のラットから、研究部位の坐骨神経および後根神経節標本を得て、そしてTrediciら, Exp. Neurol. 159:551−8(1999)に記載されるように病理検査を行った。
【0231】
シスプラチン誘導性ニューロパシーに対するA5の影響。図6および以下の表4に示すように、CDDP注射は、対照群に比較した際、約30%、尾部神経伝導速度を有意に(P<0.001)減少させた。2mg/kgおよび10mg/kgの両方で、抗体A5は、尾部神経伝導速度を有意に改善した。CDDP投与によって、先に記載されるように、対照群に比較して、DRGニューロンの体細胞サイズ、核サイズおよび核小体面積に関して、有意な形態学的変化が誘導された。Pisanoら, Clin. Cancer Res. 9:5756−67(2003);およびTrediciら, Exp. Neurol. 159:551−8(1999)。しかし、DRGニューロンの体細胞サイズ、核サイズ、または核小体面積に関して、CDDP注射ラットに比較して、2256またはA5で治療したCDDP注射ラットでは、有意な変化は観察されなかった。
【0232】
表4.異なる治療群における尾部神経伝導速度の要約
【0233】
【表5】

【0234】
統計分析には、一方向ANOVA(テューキー事後検定)を用いた。
生物学的物質の寄託
以下の物質をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、10801 University Boulevard, Manassas, Virginia, USA(ATCC)に寄託した:
【0235】
【表6】

【0236】
ベクターEb.pur.2256.A5は、A5軽鎖可変領域およびヒト軽鎖カッパ定常領域をコードするポリヌクレオチドであり;そしてベクターDb.2256.A5は、A5重鎖可変領域、および以下の突然変異:A330P331からS330S331(アミノ酸番号付けは野生型IgG2a配列に準拠している;Eur. J. Immunol.(1999)29:2613−2624を参照されたい)を含有する、ヒト重鎖IgG2a定常領域をコードするポリヌクレオチドである。
【0237】
特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約およびそれに従う規制(ブダペスト条約)の条件下で、この寄託を行った。これによって、生存培養物の寄託日から30年間の寄託の維持が保証される。ブダペスト条約の条件下で、ATCCによって寄託物が入手可能になり、そして寄託がRinat Neuroscience Corp.およびATCCの間の合意下にあり、これによって、関連する米国特許の発行、あるいは米国または外国の特許出願いずれかの公共公開の、いずれが先であっても、これに際して、寄託培養物子孫が、永続的に、そして制限されずに公共に入手可能であることが保証され、そして35USC 122条およびそれに準拠する長官規則(886 OG 638に特に関連して、37CFR 1.14条を含む)にしたがって、米国特許庁長官によって資格があると決定された者に、子孫が入手可能になることが保証される。
【0238】
本出願の譲受人は、寄託される物質の培養物が、適切な条件下で培養されている際に死ぬか、または失われるか、または破壊された場合、告示に際してこれを別の同じものとすみやかに交換することに合意している。寄託物質が入手可能であることは、いずれかの政府の権威の下に特許法にしたがって授与される権利に違反して、本発明を実施するライセンスと見なされるものではない。
【0239】
抗体配列
【0240】
【化1−1】

【0241】
【化1−2】

【0242】
【化1−3】

【0243】
【化1−4】

【0244】
本明細書記載の実施例および態様は、例示目的のみのためであり、そしてその観点から、多様な修飾または変化が当業者に示唆され、そしてこれらは本出願の精神および範囲内に含まれると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】図1A:A5抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す(A5−Hと標示)。拡張CDRを囲み、そしてChothia CDRおよびKabat CDRを、それぞれ斜字および太字で示す。可変領域アミノ酸残基を連続して番号付けする。図1B:A5抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す(A5−Lと標示)。拡張CDRを囲み、そしてChothia CDRおよびKabat CDRを、それぞれ斜字および太字で示す。可変領域アミノ酸残基を連続して番号付けする。
【図2】図2A:マウス・モノクローナルアゴニスト抗trkC抗体2256の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す(2256Hと標示)。拡張CDRを囲み、そしてChothia CDRおよびKabat CDRを、それぞれ斜字および太字で示す。可変領域アミノ酸残基を連続して番号付けする。図2B:マウス・モノクローナルアゴニスト抗trkC抗体2256の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す(2256Lと標示)。拡張CDRを囲み、そしてChothia CDRおよびKabat CDRを、それぞれ斜字および太字で示す。可変領域アミノ酸残基を連続して番号付けする。
【図3】図3:ラットE20三叉神経ニューロン生存アッセイにおける、マウス・モノクローナルアゴニスト抗trkC抗体2256および抗体A5のアゴニスト活性を示すグラフである。
【図4】図4:KIRAを用いてアッセイした際の、マウス・モノクローナルアゴニスト抗trkC抗体2256および抗体A5の活性を比較するグラフである。
【図5A】図5A:対照、PDX、PDX+QL2HNT3、およびPDX+A5治療動物で測定した感覚神経振幅を示すグラフである。
【図5B】図5B:対照、PDX、PDX+QL2HNT3、およびPDX+A5治療動物で測定した感覚神経伝導速度を示すグラフである。
【図5C】図5C:対照、PDX、PDX+QL2HNT3、およびPDX+A5治療動物で測定したH波を示すグラフである。
【図5D】図5D:対照、PDX、PDX+QL2HNT3、およびPDX+A5治療動物で測定したスリップ数を示すグラフである。
【図6】図6:対照、CDDP、CDDP+2256(2mg/kg)、CDDP+2256(10mg/kg)、CDDP+A5(2mg/kg)、およびCDDP+A5(10mg/kg)治療動物で測定した尾部神経伝導速度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゴニスト抗trkC抗体であって:
(a)式GYTFTSYXaaXaaH(配列番号16)のCDR1、式中、8位のXaaはRまたはWであり、そして9位のXaaはI、L、R、またはMである;
(b)式EIYPSNXaaRTNYNEKFXaaS(配列番号17)のCDR2、式中、7位のXaaはA、T、SまたはGであり;そして16位のXaaはKまたはEである;および
(c)式KYYYGNXaaXaaRSWYFDV(配列番号18)のCDR3、式中、7位のXaaはTまたはSであり;8位のXaaはR、Q、K、S、またはYである
を含む重鎖CDRを含み;
配列番号22のCDR1領域、配列番号23のCDR2領域、および配列番号24のCDR3領域を含む重鎖CDRを含む抗体ではない
前記アゴニスト抗trkC抗体。
【請求項2】
軽鎖可変領域をさらに含む、請求項1のアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項3】
アゴニスト抗trkC抗体であって:
(a)式RASESXaaDXaaYGISFXaaXaa(配列番号19)のCDR1、式中、6位のXaaはIまたはVであり;8位のXaaはNまたはSであり;14位のXaaはLまたはMであり;15位のXaaはA、TまたはNである;
(b)式AASNXaaGS(配列番号20)のCDR2、式中、5位のXaaはR、L、またはQである;および
(c)式QQSKXaaVPRT(配列番号21)のCDR3、式中、5位のXaaはT、A、S、またはEである
を含む軽鎖CDRを含み;
配列番号25のCDR1領域、配列番号26のCDR2領域、および配列番号27のCDR3領域を含む軽鎖CDRを含む抗体ではない
前記アゴニスト抗trkC抗体。
【請求項4】
重鎖可変領域をさらに含む、請求項1のアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項5】
アゴニスト抗trkC抗体であって:
(a)重鎖CDRであって:
(i)式GYTFTSYXaaXaaH(配列番号16)のCDR1、式中、8位のXaaはRまたはWであり、そして9位のXaaはI、L、R、またはMである;
(ii)式EIYPSNXaaRTNYNEKFXaaS(配列番号17)のCDR2、式中、7位のXaaはA、T、SまたはGであり;そして16位のXaaはKまたはEである;および
(iii)式KYYYGNXaaXaaRSWYFDV(配列番号18)のCDR3、式中、7位のXaaはTまたはSであり;8位のXaaはR、Q、K、S、またはYである
を含む前記重鎖CDR;並びに
(b)軽鎖CDRであって:
(i)式RASESXaaDXaaYGISFXaaXaa(配列番号19)のCDR1、式中、6位のXaaはIまたはVであり;8位のXaaはNまたはSであり;14位のXaaはLまたはMであり;15位のXaaはA、TまたはNである;
(ii)式AASNXaaGS(配列番号20)のCDR2、式中、5位のXaaはR、L、またはQである;および
(iii)式QQSKXaaVPRT(配列番号21)のCDR3、式中、5位のXaaはT、A、S、またはEである
を含む前記軽鎖CDR
を含み;
(a)配列番号22のCDR1領域、配列番号23のCDR2領域、および配列番号24のCDR3領域を含む重鎖CDR;並びに(b)配列番号25のCDR1領域、配列番号26のCDR2領域、および配列番号27のCDR3領域を含む軽鎖CDRを含む抗体ではない
前記アゴニスト抗trkC抗体。
【請求項6】
ヒトtrkCに結合する、請求項1〜5のいずれかのアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項7】
約5nM未満のKでヒトtrkCに結合する、請求項6のアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項8】
げっ歯類trkCにさらに結合する、請求項6のアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項9】
モノクローナル抗体である、請求項1〜5のいずれかのアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項10】
ヒト化抗体である、請求項1〜5のいずれかのアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項11】
(a)配列番号4のCDR1領域;
(b)配列番号5のCDR2領域;および
(c)配列番号6のCDR3領域
を含む重鎖可変領域を含む、請求項1〜5のいずれかのアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項12】
重鎖可変領域が配列番号1の配列からなる、請求項11のアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項13】
(a)配列番号7のCDR1領域;
(b)配列番号8のCDR2領域;および
(c)配列番号9のCDR3領域
を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1〜5のいずれかのアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項14】
軽鎖可変領域が配列番号2の配列からなる、請求項13のアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれかのアゴニスト抗trkC抗体であって
(a)重鎖可変領域であって:
(i)配列番号4のCDR1領域;
(ii)配列番号5のCDR2領域;および
(iii)配列番号6のCDR3領域
を含む前記重鎖可変領域;並びに
(b)軽鎖可変領域であって:
(i)配列番号7のCDR1領域;
(ii)配列番号8のCDR2領域;および
(iii)配列番号9のCDR3領域
を含む前記軽鎖可変領域
を含む、前記アゴニスト抗trkC抗体。
【請求項16】
重鎖可変領域が配列番号1からなり、そして軽鎖可変領域が配列番号2の配列からなる、請求項15のアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項17】
重鎖が配列番号28の配列からなり、そして軽鎖可変領域が配列番号29の配列からなる、請求項15のアゴニスト抗trkC抗体。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかのアゴニスト抗trkC抗体をコードする核酸。
【請求項19】
アゴニスト抗trkC抗体の重鎖可変領域をコードする配列番号12の配列、およびアゴニスト抗trkC抗体の軽鎖可変領域をコードする配列番号10の配列を含む、請求項18の核酸。
【請求項20】
アゴニスト抗trkC抗体の重鎖をコードする配列番号13の配列、およびアゴニスト抗trkC抗体の軽鎖可変領域をコードする配列番号11の配列を含む、請求項19の核酸。
【請求項21】
請求項18の核酸を含むベクター。
【請求項22】
請求項18の核酸を含む宿主細胞。
【請求項23】
(a)請求項1〜17のいずれかのアゴニスト抗trkC抗体の有効量および(b)薬学的に許容しうる賦形剤を含む、薬剤組成物。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれかのアゴニスト抗trkC抗体を含むキット。
【請求項25】
アゴニスト抗trkC抗体を作成する方法であって、請求項1〜17のいずれかのアゴニスト抗trkC抗体をコードするポリヌクレオチドを、宿主細胞において発現させることを含む、前記方法。
【請求項26】
trkCに結合するポリペプチドであって:
(a)式GYTFTSYXaaXaaH(配列番号16)のCDR1、式中、8位のXaaはRまたはWであり、そして9位のXaaはI、L、R、またはMである;
(b)式EIYPSNXaaRTNYNEKFXaaS(配列番号17)のCDR2、式中、7位のXaaはA、T、SまたはGであり;そして16位のXaaはKまたはEである;および
(c)式KYYYGNXaaXaaRSWYFDV(配列番号18)のCDR3、式中、7位のXaaはTまたはSであり;8位のXaaはR、Q、K、S、またはYである
を含み;
配列番号22のCDR1領域、配列番号23のCDR2領域、および配列番号24のCDR3領域を含むCDRを含むポリペプチドではない
前記ポリペプチド。
【請求項27】
trkCに結合するポリペプチドであって:
(a)式RASESXaaDXaaYGISFXaaXaa(配列番号19)のCDR1、式中、6位のXaaはIまたはVであり;8位のXaaはNまたはSであり;14位のXaaはLまたはMであり;15位のXaaはA、TまたはNである;
(b)式AASNXaaGS(配列番号20)のCDR2、式中、5位のXaaはR、L、またはQである;および
(c)式QQSKXaaVPRT(配列番号21)のCDR3、式中、5位のXaaはT、A、S、またはEである
を含み;
配列番号25のCDR1領域、配列番号26のCDR2領域、および配列番号27のCDR3領域を含むCDRを含むポリペプチドではない
前記ポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−519401(P2007−519401A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547407(P2006−547407)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/043435
【国際公開番号】WO2005/062955
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(505129415)ライナット ニューロサイエンス コーポレイション (33)
【Fターム(参考)】