説明

アシスタントユニット

【課題】アシスタント用インスツルメントホルダを楽な姿勢で作業できる最適位置に移動可能とし、更には、アシスタントユニットが人の通行の邪魔にならないようにする。
【解決手段】アシスタントユニット100は、歯科治療器材を収納するキャビネット14と、該キャビネット14の上部に配設され、歯科治療に必要な器材が載置されるテーブル15と、非使用時、該テーブルの下部に収納可能なインスツルメントホルダ6とを備えている。インスツルメントホルダは回動可能で、作業時、回動によってテーブルの下部より外方に移動されて座位にて作業可能にされ、更には、高さ位置が調整可能であって、立位での作業が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療ユニット、より詳細には、歯科治療において、アシスタントが使用するインスツルメントを懸架するインスツルメントホルダを搭載したアシスタントユニットに係り、特に、該アシスタントユニットをカート(可動)式として、アシスタントが楽に移動させ、患者の口腔から目を離すことなく作業しやすい正対する位置に設置することができ、しかも、インスツルメントホルダを回動可能にかつ高さ調整可能に取り付け、非使用時、インスツルメントをユニットテーブルの下部の領域内に収納し、使用時、該テーブルの下部領域外に張り出し可能とし、かつ、該領域外において、インスツルメントを作業しやすい高さ位置に調整可能としたアシスタントユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の歯科治療ユニットの一例を示す全体構成図で、該歯科治療ユニットは、歯科治療用椅子1,ワークテーブル2,スピットン3,ドクタ(術者)用インスツルメントホルダ4,フットスイッチ5,アシスタント用インスツルメントホルダ6,ドクター用インスツルメント(ハンドピース)7,ドクター用インスツルメントホース8,アシスタント用インスツルメント(ハンドピース)9,アシスタント用インスツルメントホース10等から成り、ドクター用インスツルメントホルダ4には、歯科治療において術者が使用する種々のインスツルメント、例えば、エアータービン、マイクロエンジン、超音波スケーラ、マルチシリンジ等のインスツルメント7が収納されており、周知のように、歯科治療に当り、患者は治療椅子1に座り、頭を安頭台に固定して治療を受ける。治療中、術者は治療椅子1を上下動,倒起動,傾斜動等させて、患者を治療しやすい姿勢にして治療を行う。また、アシスタント用インスツルメントホルダ6には、歯科治療の途中等において、アシスタントが患者の口腔内を清掃又は術者のアシスト作業をするのに使用するインスツルメント、例えば、バキューム管,排唾管,マルチシリンジ等のインスツルメント8が装備されている。
【0003】
前記アシスタント用インスツルメントホルダ6は、通常、歯科治療ユニット1の基台部にアーム等11を介して回動可能に、更には、上下動可能に連結されており、インスツルメントホース10の図示しない端部は、スピットン3に連結され、該スピットン3内に配設されている水圧源、空気圧源、バキューム装置等に連結され、使用時、患者の口腔内に、水,エアー,水とエアーを混合したスプレー等を噴射して口腔内を清掃し、清掃後の口腔内の汚水、汚物等をバキューム装置にて吸引、排出するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のごとき歯科治療ユニットにおいて、例えば、歯科治療椅子1を寝状態にし、ドクターが患者の背後に座り(図5のA部)、アシスタントがドクターの左側(図5のB部)に座ってアシストする場合、アシスタントは、インスツルメントを(右手で)取るためには、体を捻って取らなければならず、また、作業中、インスツルメントホース10が自分の前を通って引き出されているため、体を捻った状態で作業をすることになり、患者の口腔から目を離すことになり作業が非常にしにくかった。
【0005】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、特に、アシスタント用インスツルメントホルダを、アシスタントが楽な姿勢で作業できる最適位置(正対位置)に移動可能とし、更には、アシスタントが歯科治療椅子1のサイドから作業位置に出入りする際にアシスタント用インスツルメントホルダが邪魔にならないようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、歯科治療器材を収納するキャビネットと、該キャビネットの上部に配設され、歯科治療に必要な器材が載置されるテーブルと、前記キャビネットの側方に回動可能に取り付けられたアシスタント用インスツルメントホルダとを備えたアシスタントユニットにおいて、前記インスツルメントホルダの回動によって前記テーブルの下部より外方に移動可能であり、該外方において前記インスツルメントホルダに懸架されたインスツルメントの上端部が前記テーブルの高さを越えて伸長可能であることを特徴としたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記アシスタントユニットは、該ユニットを移動するためのキャスタを有し、かつ、前記インスツルメントホルダに装備される各種インスツルメントに対する給排水ホース、給排エアーホース、リード線等を内装する可撓性のケーブルを有し、該ユニットを所望の位置に移動し、該移動した位置にて前記各種インスツルメントを作動可能としたことを特徴としたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記アシスタントユニットの下部に上下方向に移動可能なパッドを有し、該パッドをエアー又は電気アクチュエータにて床面に押し付け、該ユニットを固定するようにしたことを特徴としたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記アシスタントユニットの下部側方にフットサポートを具備し、該フットサポートは、前記アシスタントユニットの側壁に対して並行の位置と直角の位置との間で回動可能であって、使用時、前記側壁に対して直角に保持され、アシスタントの足が載置されるものであることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、アシスタント用インスツルメントホルダをアシスタントが楽な姿勢でアシスト作業をすることができる正対位置に配置することができる。そうすることにより診療中に患者の口腔内から目を離すことが無く医療事故の発生を未然に防ぐことが出来る。また、歯科治療椅子のサイドからアシスタントがアシスト位置へアプローチするのに、アシスタント用インスツルメントホルダが邪魔になるようなことがない。更には、歯科治療器材を収納するためのキャビネットを一体的に有するので、通常、診療室で使用しているモービルキャビネットを不要にすることができる等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明によるアシスタントユニットの一実施例を説明するための斜視図、図2は、その使用形態の一例を説明するための平面配置図で、図中、100は、本発明によるアシスタントユニットを示し、該アシスタントユニット100は、歯科治療椅子1或いはスピットン3に対して移動可能に構成され、アシスタントがアシスト作業をする際に、アシスト作業しやすい所望の位置に移動可能になっている。すなわち、本発明によるアシスタントユニット100は、キャスタ12を有し、歯科治療椅子1に対して移動自在に構成され、スピットン3に対しては、内部に給排水ホース、給排エアーホース、リード線等が収納された可撓性のジャバラホース13にて連結され、アシスタントが使用しやすい所望の位置へ移動できるようになっている。
【0012】
本発明によるアシスタントユニット100は、アシスト時、図2に示すように、アシスタントAssの真正面に配置することができ、アシスタントAssは、患者口腔内から目を離すことがなくインスツルメントホルダ6から容易に(つまり、体を捻ったりする必要なく)インスツルメント8を取り出すことができる。また、アシスタントユニット100は、カート式の為、アシスタントが移動する際には、簡単に動かせるので動線の妨げにならず、アシスタントの移動が容易である。
【0013】
アシスタントユニット100とスピットン3とは、可撓性のジャバラホース13で連結できるようになっており、ユニット導入時、診療室内の設置工事が不要となり、導入し易い。場合によっては、ジャバラホース13を床下に通し、ユニット100の可動に問題が無い場所から該ジャバラホースを床上に立ち上げて該ユニット100に連結し、立ち上げた位置から所望の範囲でアシスタントユニット100を移動するようにすれば、ジャバラホース13が床上に出ている範囲を少なくすることができ、診療室が整然とし、術者やアシスタントの動線の妨げにならず、ジャバラホース13に躓くような危険も少なくなる。
【0014】
本発明によるアシスタントユニット100は、薬品,ワッテ,小物器材,スライド板,診療器材,タオル等、歯科治療においてアシスタントが使用する物品を収納する引き出しを有するキャビネット14と、該キャビネット14の上部に設けられ、診療時に使用する薬剤、器材等を一時的に載置するのに好適なテーブル(天板)15とを有する。
【0015】
アシスタントユニット100(キャビネット14)の側部とは、インスツルメントホルダ6が回動可能に設けられており(図1に破線に示す位置)、非使用時、該インスツルメントホルダ6は、テーブル15の下に収納されており、アシスタントその他の人が移動する際に邪魔にならないようになっている。使用時、回転されて(キャビネット14の前面に位置されるとともにテーブル15の外側に張り出され、その状態で、インスツルメント8をインスツルメントホルダ6より上方に引き出して使用することが可能になる。
【0016】
アシスタントが立位で作業を行う場合等において、インスツルメントホルダ6が低い位置にある状態では、アシスタントがインスツルメント8をインスツルメントホルダ6から取り出したり、戻したりするのに、その都度、腰を屈めなければならず、余計な労力を必要とする。そのため、インスツルメントホルダ6を上下動可能に取り付けるようにし、アシスタントの作業位置に高さ調整可能としておけば(図1の実線位置)、アシスタントが、あまり腰を屈めることなく、インスツルメント8を取り出さすことができ、アシスタントの作業が楽になる。
【0017】
本発明によるアシスタントユニット100は、キャスタ12により移動可能になっているため、作業中、該ユニット100自体が動いてしまうことがあり、作業がしにくいことがある。そのような不都合を避けるために、本発明においては、ユニット100の底部に、エアー又は電動アクチュエータにて上下動するパッドを設け、該アクチュエータをボタン操作にて作動させて該パッドを床に押し付けてユニット100が移動しないようにしている。
【0018】
図3は、前記パッドを床に押し付ける機構を説明するための簡略構成図で、図中、100’はアシスタントユニット100の底板、12は該ユニット100を移動させるためのキャスタ、20はエアー又は電動アクチュエータ、21は該アクチュエータ20の下部に該アクチュエータ20によって矢印方向に移動可能に設けられたパッドで、アシスタントユニット100を床に固定しようとする時は、アクチュエータ20を作動させて、パッド21を図示のように、床面に押し付けて、ユニット100を固定するようにしている。
【0019】
アシスタントは、上述のように、アシスタントユニット100を固定して、種々のアシスト作業をするが、そのアシスト作業を楽な姿勢で行うことができるようにするために、ユニット100(キャビネット14)の下部側方にフットサポート16を設け、該フットサポート16をユニット100(キャビネット14)の側壁に対して並行の位置と直角の位置(図示位置)との間で回動可能に設け、アシスト作業時は、ユニット100(キャビネット14)の側壁に対して直角の図示位置にし、このフットサポート16の上に足を乗せて作業をする等、楽な姿勢で作業が出来る。作業をしない時は、ユニット100(キャビネット14)の側壁に対して並行な状態とし、該フットサポート16が通行(アシスタントの移動)の邪魔にならないようにしている。
【0020】
また、本発明によるアシスタントユニット100には、無影灯を設置することも可能であり、該ユニット100に無影灯を付けることにより、コンパクトなアーム構成で、安価に無影灯を設置することができ、しかも、無影灯がよりアシスタントの近傍に位置することになり、照射位置の変更や患者うがい時の移動作業等の操作がより簡単になる。
【0021】
なお、以上には、本発明によるアシスタントユニットをアシスタントが使用して好適である例について説明したが、本発明によるアシスタントユニットは、アシスタントばかりではなく、ドクターが使用することも可能であり、ドクターが2ハンドで使用する場合においても、上述の例と全く同様に、好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるアシスタントユニットの一例を説明するための斜視図である。
【図2】本発明によるアシスタントユニットの使用形態の一例を説明するための平面配置図である。
【図3】アシスタントユニットを固定する機構を説明するための簡略構成図である。
【図4】従来の歯科治療ユニットの一例を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1…歯科治療椅子、2…ワークテーブル、3…スピットン、4…ドクタ用インスツルメントホルダ、5…フットスイッチ、6…アシスタント用インスツルメントホルダ、7…ドクタ用インスツルメント、8…アシスタント用インスツルメント、9…ドクタ用インスツルメントホース、10…アシスタント用インスツルメントホース、11…アシスタントインスツルメントホルダ用アーム、12…キャスタ、13…ジャバラホース、15…テーブル(天板)、16…フットサポート、20…アクチュエータ、21…パッド、100…アシスタントユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科治療器材を収納するキャビネットと、該キャビネットの上部に配設され、歯科治療に必要な器材が載置されるテーブルと、前記キャビネットの側方に回動可能に取り付けられたアシスタント用インスツルメントホルダとを備えたアシスタントユニットにおいて、前記インスツルメントホルダの回動によって前記テーブルの下部より外方に移動可能であり、該外方において前記インスツルメントホルダに懸架されたインスツルメントの上端部が前記テーブルの高さを越えて伸長可能であることを特徴とするアシスタントユニット。
【請求項2】
前記アシスタントユニットは、該ユニットを移動するためのキャスタを有し、かつ、前記インスツルメントホルダに装備される各種インスツルメントに対する給排水ホース、給排エアーホース、リード線等を内装する可撓性のケーブルを有し、該ユニットを所望の位置に移動し、該移動した位置にて前記各種インスツルメントを作動可能としたことを特徴とする請求項1に記載のアシスタントユニット。
【請求項3】
前記アシスタントユニットの下部に上下方向に移動可能なパッドを有し、該パッドをエアー又は電気アクチュエータにて床面に押し付け、該ユニットを固定するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアシスタントユニット。
【請求項4】
前記アシスタントユニットの下部側方にフットサポートを具備し、該フットサポートは、前記アシスタントユニットの側壁に対して並行の位置と直角の位置との間で回動可能であって、使用時、前記側壁に対して直角に保持され、アシスタントの足が載置されるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアシスタントユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−17400(P2010−17400A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181660(P2008−181660)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】