説明

アジュバント及びその使用方法

NKT細胞アゴニスト化合物と生理学的に許容しうるビヒクルを含んでなる組成物を提供する。NKT細胞を刺激する方法及び免疫応答を増強する方法をも開示する。さらに、NKT細胞アゴニスト化合物を含んでなるワクチン製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願に対するの相互参照〕
この出願は、2006年6月30日提出の米国仮特許出願第60/806,330号の利益を主張する。この仮特許出願を参照によって本明細書に援用する。
〔連邦支援研究に関する供述〕
この発明は、承認番号PO1 AI053725のもと、国立衛生研究所によって授与された米国政府の支援によって為された。米国は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
〔発明の背景〕
〔発明の分野〕
本発明は、一般的に免疫学の分野に関する。特に、本発明は、NKT細胞を刺激するか又は疾患若しくは障害に対する免疫応答を高めるのに有用な組成物及び方法に関する。
〔緒言〕
脂質種は、全ての真核生物膜及び病原性微生物の遍在する構成要素である。生体系内の多量の脂質にかかわらず、抗-脂質免疫応答は抗-ペプチド応答と同程度には研究されていない。例えば、脂質抗原の非トール様(non-toll-like)受容体(非-TLR)認識の現象についてはほとんど未知である。ペプチド抗原と異なり、脂質は、β2ミクログロブリン関連分子のCD1ファミリーによってプロセシングされ、かつ免疫系に提示される。ペプチド抗原をそれぞれCD8+及びCD4+T細胞に提示するクラスI及びクラスIIの主要組織適合複合体(MHC)分子と対照的に、CD1分子は進化してT細胞の特定サブセットへの表示のため外来及び自己の両脂質抗原を捕獲かつプロセシングしている。
異なる構造を有する種々の脂質が、CD1分子の2つの各疎水性結合ポケット(A'とF)内で脂肪酸鎖を蓄積するユニークな様式でCD1分子に結合することが分かっている。CD1分子と結合できる脂質種として、ミコール酸、ジアシルグリセロール、スフィンゴ脂質、ポリイソプレノインド、リポペプチド、ホスホミコケチド(phosphomycoketide)及び小型疎水性化合物が挙げられる。
CD1の提示経路は、2つの相補的なCD1-制限T細胞サブセット;アジュバント機能を果たすNKT細胞、及びヘルパー又は細胞溶解機能が可能な非-NKT T細胞を活性化することによって、生得免疫応答と適応免疫応答の両方を誘発する。
マウスではナチュラルキラー(NK)細胞表面マーカーと保存型の半-インバリアントT-細胞受容体(TCR)、Vα14-Jα18/Vβ8の両方及びヒトではVα24-Jα18/Vβ11を発現するNKT細胞は、自己脂質の反応性と迅速なエフェクター応答によって特徴づけられる。従って、NKT細胞は、抗菌応答、抗腫瘍免疫性及び耐性と自己免疫性とのバランスの調節といった多くの免疫機能で重要な役割を果たす。
NKT細胞の明白な多分化能は、樹状細胞(DC)と相互作用してT細胞応答のTH1又はTH2極性を決定し、かつ適切な状況内でT細胞アネルギーを惹起するその能力に特異的に依存する。その機能にとってDC細胞の成熟及び補充プロセスが中心である。実際、DCは、静止状態及び低代謝活性から、抗原の活発な摂取、分化シグナルを受信後のプロセシングと組織移動へ迅速に進行させることができる。
多くの天然及び合成脂質分子はDCによってプロセシングされ、CD1分子によってNKT細胞に提示される。NKT細胞のin vitro及びin vivo活性化を研究するために使用される原型化合物はKRN7000、海綿Agelas mauritianus由来のα-ガラクトシルセラミド(「αGalCer」又は「PBS-57」)である。さらなるアゴニストとして、内因性スフィンゴ糖脂質であるイソグロボトリヘキシルセラミド(「iGb3」又は「PBS-47」)、並びに微生物由来のα-グリクロノシルセラミド(glycuronosylceramide)クラスのメンバーが挙げられる。しかし、抗-脂質応答に関しては一般的にほとんど解明されていない。特にワクチン接種の文脈では、脂質のアジュバント活性の機構についてはさらに少ししか知られていない。
【0003】
抗菌及び抗腫瘍ワクチン接種プロトコル、並びに実験的免疫学では、アジュバントを用いて免疫応答を増強する。アジュバントの化学的性質、その作用機序及びその副作用のプロフィールは非常に有益である。場合によっては、副作用が不適切な免疫応答の結果とみなされることがあり、或いは他の場合には、有害な薬理学的反応の結果でありうる。現在のところ、ヒトワクチン接種用のアジュバントの選択は、アジュバント活性の要求と許容できるレベルの副作用との間の妥協を反映する。
【0004】
〔発明の概要〕
一局面では、本発明は、下記構造式(I):
【0005】
【化1】

【0006】
(式中:Xは-O-、-CH2-又は-S-であり;R1は-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H、-COOH又は下記構造式(II):
【0007】
【化2】

【0008】
(式中:Yは-O-、-CH2-又は-S-であり;R9、R10、R11及びR12は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO3H及び-COOHから独立に選択される)で表される基であり;
R2は、-H、OSO3H、-SO3H及び-PO4から選択され;R7及びR8は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H及び-COOHから独立に選択され;R3は、約7〜約25個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり;R4は-H、-OHであり、又はR6と共に炭素-炭素二重結合を形成し;R5は、約5〜約15個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり、かつR6は-H、-OHであり、又はR4と共にC-C二重結合を形成し、
但し、R1、R2、R7、R8、R9、R10、R11又はR12の少なくとも1つは-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H又は-COOHである)
で表される化合物;及び生理学的に許容しうるビヒクルを含んでなる組成物を提供する。
【0009】
別の局面では、本発明は、下記構造式(I):
【0010】
【化3】

【0011】
(式中:Xは-O-、-CH2-又は-S-であり;R1は-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H、-COOH又は下記構造式(II):
【0012】
【化4】

【0013】
(式中:Yは-O-、-CH2-又は-S-であり;R9、R10、R11及びR12は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO3H及び-COOHから独立に選択される)で表される基であり;
R2は-H、-OH、OSO3H、-SO3H及び-PO4から選択され;R3は、約7〜約25個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり;R4は-H、-OHであり、又はR6と共に炭素-炭素二重結合を形成し;R5は、約5〜約15個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり;R6は-H、-OHであり、又はR4と共にC-C二重結合を形成し;R7は、-H、-OH、-OSO3H、SO3H、-PO4、-PO4H及び-COOHから選択され;かつR8は、-H、-OH、-PO4、-PO4H及び-COOHから選択され;但し、R1、R2、R7、R8、R9、R10、R11又はR12の少なくとも1つは-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H又は-COOHである)
で表される化合物;及び生理学的に許容しうるビヒクルを含んでなる組成物を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、任意に抗原を含んでよい。本発明のいくつかの実施形態は、ワクチン製剤として製剤化された組成物を提供する。
さらなる局面では、本発明は、NKT細胞を刺激する方法であって、NKT細胞を式(I)で表される構造式を有する化合物と接触させる工程を含んでなる方法を提供する。いくつの実施形態では、NKT細胞をin vitro培養し、他の実施形態では、NKT細胞は対象内、つまり「in vivo」にある。
別の局面では、本発明は、対象内における免疫応答を増強する方法を提供する。本方法は、式(I)の化合物を対象に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を抗原と共投与する。
なおさらなる局面では、本発明は、式(I)の化合物と生理学的に許容しうるビヒクルを含めて製剤化されたワクチン製剤を提供する。
【0015】
〔実例となる実施形態の説明〕
発明者らは、「PBS-32」と命名された内因性スルホグルコシルセラミドと、「PBS-31」と命名されたそのフィトセラミド対応物がNKT細胞の強力なアゴニストであることを発見した。これらの化合物は、それ自体、適切な環境下、対象内で免疫応答を増強させることができる。これらの化合物は内因性化合物なので、外因性アジュバントに比べて副作用の可能性が減少する。同様に、例えば、in vivo送達に適した特性を導入するために修飾されたこれらの化合物の変形も、副作用の可能性が低いと予想される。さらに後述するように、適切な変形は、PBS-32の硫酸基、セラミド頭基、糖連鎖、脂肪酸及びスフィンゴシン側鎖の修飾を含む。本明細書では、NKT細胞アゴニスト活性を示すPBS-32とこの化合物の変形を一括して「NKT細胞アゴニスト化合物」と称する。
NKT細胞アゴニスト化合物は下記式(I)で表される構造を有する。
【0016】
【化5】

【0017】
(式中:
Xは-O-、-CH2-又は-S-であり;
R1は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H、-COOH又は下記構造式(II):
【0018】
【化6】

【0019】
(式中:
Yは-O-、-CH2-又は-S-であり;
R9、R10、R11及びR12は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO3H及び-COOHから独立に選択される)で表される基であり;
R2、R7及びR8は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H、及び-COOHから独立に選択され;
R3は、約7〜約25個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり;
R4は-H、-OHであり、又はR6と共に炭素-炭素二重結合を形成し;かつ
R5は、約5〜約15個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり、
但し、R1、R2、R7、R8、R9、R10、R11又はR12の少なくとも1つは-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H、又は-COOHである)
で表される構造を有する。
本明細書では、用語「飽和若しくは不飽和炭化水素」は、指定した長さの直鎖アルキル又はアルケニル基を意味する。アルケニル基は1個以上の二重結合を含む。好適には、式(I)の化合物のアルケニル基は約1〜3個の炭素-炭素二重結合を含みうる。
適切なNKT細胞アゴニスト化合物として、限定するものではないが、PBS-32及びPBS-31が挙げられる。修飾されグリコシド結合及び/又は硫酸基を有するさらなる適切なNKT細胞アゴニスト化合物の非限定例を以下に示す。
【0020】
【化7】

【0021】
修飾された脂質鎖を有する適切なNKT細胞アゴニスト化合物の非限定例を以下に示す。
【0022】
【化8】

【0023】
修飾されたセラミド鎖を有する適切なNKT細胞アゴニスト化合物の非限定例を以下に示す。
【0024】
【化9】

【0025】
修飾された炭化水素基を有する適切なNKT細胞アゴニスト化合物の非限定例を以下に示す。
【0026】
【化10】

【0027】
技術上周知のいずれの方法を利用しても、天然スクロースから内因性NKT細胞アゴニスト化合物を精製しうる。或いは、NKT細胞アゴニスト化合物を化学的に合成しうる。NKT細胞アゴニスト化合物の合成に適した一スキームを実施例1で後述する。Zhou, D et al., Science 306: 1786-1789 (2004);Goff, R. D. et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 13602-13603 (2004);及びMarshall, R. L. et al. Tetrahedron Lett., 39: 3923-3926 (1998)から誘導されるような方法の修正によって、変形化合物を合成することができる。前記各文献の内容全体を参照によって本明細書に引用したものとする。
【0028】
〔組成物〕
上述したようなNKT細胞アゴニスト化合物は、好適には生理学的に許容しうるビヒクルとの組成物に含まれる。「生理学的に許容しうる」ビヒクルとは、in vivo投与(例えば、経口、経皮又は非経口投与)又はin vitro用途、すなわち細胞培養に適したいずれのビヒクルでもある。in vivo投与に好適な生理学的に許容しうるビヒクルとして、とりわけ、水、緩衝溶液及びグルコース溶液が挙げられる。細胞培養に好適なビヒクルは商業的に入手可能な細胞培地である。生理学的に許容しうるビヒクルとNKT細胞アゴニスト化合物に加えて、組成物のさらなる成分として、好適には、安定剤、保存剤、希釈剤、乳化剤又は潤沢剤などの賦形剤が挙げられる。特に、好適な賦形剤として、限定するものではないが、Tween 20、DMSO、スクロース、L-ヒスタジン(histadine)、ポリソルベート20及び血清が挙げられる。
好適には、in vivo用途、すなわち対象への治療的又は予防的投与のため、NKT細胞アゴニスト化合物を含む組成物を製剤化しうる。いくつかの実施形態では、非経口投与用に組成物を製剤化する。非経口投与に適した剤形は注射剤である。注射用剤形は等張溶液又は懸濁液でよく、かつ技術上周知なように、適切な分散剤、湿潤剤又は懸濁剤を用いて調製しうる。他の実施形態では、経口投与用に組成物を製剤化する、好適な剤形として、とりわけ、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤及びウェハー剤が挙げられる。経口剤形は、好適にはラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、グリコール等を含む。本発明の組成物はいずれの特定の例示剤形にも限定されないが、当該技術分野で、例えば、参照によってその内容をここに引用したものとするRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., (2000)に開示されているいずれの方法によっても本発明の組成物を製剤化することができる。
【0029】
NKT細胞アゴニスト化合物と生理学的に許容しうるビヒクルに加え、本発明のいくつかの実施形態はさらに抗原を含み、かつ好適にはワクチン製剤として製剤化される。ワクチン製剤に含まれる抗原はポリペプチド若しくは炭水化物成分、又はその組合せ、例えば、糖タンパク質でよい。抗原は感染因子(infectious agent)(例えば、病原性微生物)、腫瘍、内因性分子(例えば「自己」分子)、又は研究目的のため、微量抗原、例えば卵白アルブミン由来でよい。当業者に既知の種々の調製方法を用いてワクチンを製剤化しうる。参照によってその内容をここに引用したものとするRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., (2000)を参照されたい。
いくつかの実施形態では、本発明の組成物に含めるための抗原は、好適には弱毒化又は不活化感染因子由来である。微生物全体又はその一部(例えば、ゴースト膜;粗製膜標本、ライセート及び微生物の他の標本)が抗原として好適に含めうることが分かるだろう。抗原を誘導しうる好適な感染因子として、限定するものではないが、病原性ウイルス及び微生物が挙げられる。状況によっては、好適な抗原がヒト疾患に関連するウイルス病原から得られ又は誘導される。前記ヒト疾患として、限定するものではないが、HIV/AIDS(レトロウイルス科(Retroviridae)、例えば、HIV-1及びHIV-2アイソレート、HTLV-I、HTLV-11のgp120分子)、インフルエンザウイルス(オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、例えば、A、B及びC型)、ヘルペス(例えば、単純ヘルペスウイルス、HSV-1及びHSV-2糖タンパク質gB、gD及びgH)、ロタウイルス感染(レオウイルス科(Reoviridae)、呼吸器感染(パラインフルエンザ及びRSウイルス)、灰白髄炎(ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、例えば、ポリオウイルス、ライノウイルス)、麻疹及び流行性耳下腺炎(パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae))、風疹(トガウイルス科(Togaviridae)、例えば、風疹ウイルス)、肝炎(例えば、A、B、C、D、E及び/又はG型肝炎ウイルス)、サイトメガロウイルス(例えば、gB及びgH)、胃腸炎(カリチウイルス科(Caliciviridae))、黄熱病と西ナイル熱病(フラビウイルス科)、狂犬病(ラブドウイルス科(Rhabdoviridae))、韓国型出血熱(ブニヤウイルス科(Bunyaviridae))、ベネズエラ熱(アレナウイルス科(Arenaviridae))、いぼ(パピローマウイルス(Papillomavirus))、サル免疫不全症ウイルス、脳炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、EBウイルス、及び他のウイルス科、例えば、コロナウイルス科、ビルナウイルス科(Birnaviridae)及びフィロウイルス科(Filoviridae)が挙げられる。
【0030】
疾患に応答性の既知細菌因子からも適切な細菌及び寄生抗原を得、又は誘導することもできる。この疾患として、限定するものではないが、ジフテリア、百日咳、破傷風、結核、細菌性若しくは真菌性肺炎、中耳炎、淋病、コレラ、腸チフス、髄膜炎、単核細胞増加症、疫病、シゲラ症又はサルモネラ症、レジオネラ病、ライム病、ハンセン病、マラリア、鉤虫症、回施糸状虫症、住血吸虫症、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、ランブル鞭毛虫症、アメーバ症、フィラリア症、ボレリア症、及び旋毛虫症が挙げられる。なおさらなる抗原をクールー病、クロイツフェルト-ヤーコプ病(CJD)、スクラピー、伝播性ミンク脳症、及び慢性萎縮病などの原因物質のような慣例に従わない病原、又は狂牛病と関連するプリオンのようなタンパク質性感染粒子から得、又は誘導することができる。
抗原を誘導できる特異的病原として、結核菌、クラミジア、淋菌、シゲラ、サルモネラ、ビブリオコレラ、トレポネーマパリダム、シュードモナス、百日咳菌、ブルセラ、野兎病菌、ピロリ菌、レプトシピラ・インターロガンス、レジュネラ・ニューモフィラ、エルシニアペスティス、ストレプトコッカス(A及びB型)、肺炎球菌、髄膜炎菌、ヘモフィルスインフルエンゼ(b型)、トキソプラズマ原虫、モラクセラカタラーリス、鼠径肉芽種腫症(donovanosis)、及び放線菌症が挙げられ;真菌病原として、カンジダ症及びアスペルギルス症が挙げられ;寄生病原として、条虫、吸虫、回虫、アメーバ症、ランブル鞭毛虫症、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、住血吸虫(Schistosoma)、ニューモシスチスカリニ(Pneumocystis carinii)、トリコモナス症及び旋毛虫症が挙げられる。本発明を用いて多くの獣医疾患、例えば口蹄疫、コロナウイルス、パスツレラ・マルトシダ、ヘリコバクター、普通円虫、アクチノバチルス・プルロニューモニア、ウシウイルス性下痢症ウイルス(Bovine Viral Diarrhea Virus)(BVDV)、クレブシエラ・ニューモニエ、大腸菌、及びボルデテラ・パータシス、ボルデテラ・パラパータシス及びボルデテラ・ブロンキセブチカに対する適切な免疫応答を提供することもできる。
いくつかの実施形態では、本発明の組成物に含めるための抗原は、好適には、腫瘍由来抗原又は自家性若しくは同種異系の全腫瘍細胞である。好適には、腫瘍抗原は腫瘍特異性抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)である。いくつかの腫瘍抗原とその発現パターンは技術上周知であり、治療すべき腫瘍タイプに基づいて選択される。腫瘍抗原の非限定例として、cdk4(メラノーマ)、β-カテニン(メラノーマ)、カスパーゼ-8(扁平上皮癌)、MAGE-1及びMAGE-3(メラノーマ、乳癌、グリオーム)、チロシナーゼ(メラノーマ)、表面Igイディオタイプ(例えば、BCR)(リンパ腫)、Her-2/neu(乳癌、卵巣癌)、MUC-1(乳癌、膵癌)及びHPV E6及びE7(子宮頚癌)が挙げられる。さらなる好適な腫瘍抗原として、前立腺特異性抗原(PSA)、シアリルTn(STn)、熱ショックタンパク質及び随伴腫瘍ペプチド(例えば、gp96)、ガングリオシド分子(例えば、GM2、GD2、及びGD3)、癌胎児性抗原(CEA)及びMART-1が挙げられる。
【0031】
〔NKT細胞を刺激する方法〕
本明細書では「NKT細胞を刺激する」及び「NKT細胞を活性化する」という表現を相互交換可能に用いて、NKT細胞のTCRと、CD1dの文脈で提示した抗原との会合に対する細胞応答と一致する、NKT細胞で観察できる作用を誘発することを意味する。NKT細胞の刺激の観察できる作用として、サイトカインの分泌、クローン増幅並びに細胞表面マーカー、例えば、CD69分子、IL-12受容体及び/又はCD40L分子の発現の上方制御が挙げられる。本発明に従ってNKT細胞を刺激するため、NKT細胞を、上掲の観察できるいずれの作用をも誘発するのに十分な量のNKT細胞アゴニスト化合物と接触させる。
本明細書では、「NKT細胞を接触させる」は、培養内で(任意に固定化された可溶性若しくは不溶性のCD1d分子又はCD1d分子を発現しているAPCの存在下で)NKT細胞アゴニスト化合物のNKT細胞へのin vitro添加、或いは対象へのNKT細胞アゴニスト化合物のin vivo投与を意味する。NKT細胞アゴニスト化合物は、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)の表面上のCD1d分子によって、NKT細胞のTCRに提示される。或いは、CD1d分子を蒔き、NKT細胞とNKT細胞アゴニスト化合物をCD1d分子にin vitro添加することができる。いくつかのin vitro実施形態では、脂質伝達分子、例えば、サポシンBを用いて、CD1d分子にNKT細胞アゴニスト化合物を負荷するのを促進しうる。
【0032】
本発明に従って刺激されたNKT細胞によって分泌されうるサイトカインの例として、限定するものではないが、IL-10、IL-4、及びIL-12、IL-13、GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-1、IL-6、IL-8、TNF-α、及びTGF-βが挙げられる。上述したいずれのサイトカインの組合せも、活性化されたNKT細胞によって分泌されうることは明らかである。分泌されたサイトカインのレベルを検出及び測定する方法は技術上周知である。
NKT細胞増殖は、NKT細胞アゴニスト化合物との接触による刺激によっても誘発される。好適には、標準的方法、例えば3H-チミジン又はBrdU取込みアッセイで増殖をin vitro測定する。
NKT細胞の活性化によっても好適に細胞表面マーカーの上方制御が観察される。例えば、CD69、CD25、CD40L及びIL-12受容体はNKT細胞の活性化によって上方制御される。FACS等の免疫学的方法のみならず、他の技術上常用されている方法を用いて細胞表面マーカーの上方制御を検出できる。例えば、DCについてCD80及び/又はCD86の上方制御を測定することによって、NKT細胞活性化の下流作用、例えばDC成熟の誘導をも観察できる。
in vitro活性化に加え、NKT細胞のin vivo及びex vivo活性化を具体的に検討する。NKT細胞へのNKT細胞アゴニスト化合物の提示は、NKT細胞の活性化と樹状細胞の成熟をもたらす。結果として、これらの化合物は、微量抗原並びに感染因子及び固形腫瘍や血液学的腫瘍などの新生物悪性腫瘍に対する免疫応答を刺激する。NKT細胞アゴニスト化合物を投与することによって、細胞性免疫と体液性免疫の両方を刺激しうる。
NKT細胞をin vivo、すなわち対象内で刺激する方法は、対象にNKT細胞アゴニスト化合物を投与する工程を含む。本発明のいくつかの方法による対象への投与は、まずNKT細胞アゴニスト化合物を生理学的に許容しうるビヒクル及び/又は賦形剤と製剤化して、所望の薬用量、安定性などを与える工程を含む。ワクチン製剤及び治療化合物に好適な製剤形態は技術上周知である。
NKT細胞をex vivo刺激する方法は、NKT細胞アゴニスト化合物とex vivo接触させた細胞を投与して、対象内でNKT細胞を刺激することに基づく養子免疫細胞移入法の使用を含みうる。いくつかの実施形態では、細胞は、ex vivo刺激され、かつ対象内に注射されるNKT細胞でよい。他の実施形態では、細胞は、NKT細胞アゴニスト化合物とex vivo接触させて、NKT細胞への提示のため、CD1d分子にNKT細胞アゴニスト化合物を負荷するのを許容するAPCでよい。次に、ex vivo刺激されたNKT細胞又は負荷されたAPCを、例えば対象内への注射によって投与することができる。
【0033】
〔免疫応答を増強する方法〕
本発明のいくつかの実施形態は、対象内において免疫応答を増強する方法を提供する。「対象」は脊椎動物、好適には哺乳動物、さらに好適にはヒトである。明らかなように、研究目的のためには、対象は動物モデル、例えばマウスが好適である。「免疫応答を増強する」とは、限定するものではないが、対象の免疫系によって媒介される治療効果又は予防効果を生じさせることが挙げられる。さらに詳細には、本発明の文脈において免疫応答を増強するとは、NKT細胞アゴニスト化合物を投与することによって、対象内におけるNKT細胞応答を誘発し、ひいては抗体の産生、抗体重鎖のクラススイッチ、APCの成熟、並びに細胞溶解性T細胞、Tヘルパー細胞及びTとBの両記憶細胞の刺激などの下流作用を生じさせることを意味する。
いくつかの実施形態では、本発明によって増強される免疫応答は、抗菌性免疫応答でよい。このような免疫応答は、好適には、感染因子のクリアランスを促すか又は疾患の症状が軽減又は回復されるように、該因子、例えば、持続性又は潜在的感染の免疫制御を可能にする。
他の実施形態では、増強される免疫応答は抗癌又は抗腫瘍免疫応答でよい。このような免疫応答は、好適には、腫瘍の拒絶を促し、腫瘍体積を減らし、腫瘍量を減らし、転移を阻止し、及び/又は腫瘍の再発を阻止する。腫瘍はいずれの固形腫瘍又は血液学的腫瘍でもよく、限定するものではないが、白血病、リンパ腫、AIDS関連癌、骨、脳、乳房、胃腸系、内分泌系、眼、泌尿生殖器管、生殖細胞、生殖器、頭頚部、筋骨格系、皮膚、神経系又は呼吸器系の癌が挙げられる。技術的に分かるように、いくつかの方法で癌特異性免疫応答をモニターしうる。この方法として、1)例えば、クロム遊離アッセイを用いてエフェクター細胞の細胞毒性を測定する方法;2)エフェクター細胞のサイトカイン分泌を測定する方法;3)例えば、MHC-ペプチド多量体を用いてT細胞受容体(TCR)特異性を評価する方法;4)T細胞応答のクローン組成を測定する方法;及び/又は5)T細胞の脱顆粒を測定する方法が挙げられる。
【0034】
以下の実施例で述べるアッセイによっても、増強された免疫応答が適切に評価される。特に、実施例は、いくつかの実施形態において、NKT細胞アゴニスト化合物は、NKT細胞を活性化でき、サイトカインの産生を誘発でき、APCの成熟を誘発でき、細胞溶解性及びヘルパーT細胞の機能を増強でき、CD8+T細胞及びCD4+T細胞の補充を促進でき、抗体産生を促進でき、抗体のクラススイッチを誘発でき、かつ耐性を破壊できることを実証する。
本発明による対象内の免疫応答の増強は、前記対象に、NKT細胞アゴニスト化合物を含み、実施形態によっては、抗原をも含む組成物を投与することによって達成される。対象に独立にNKT細胞アゴニスト化合物と抗原を投与した場合、NKT細胞アゴニスト化合物と抗原は検出可能に増強された免疫応答を誘発できるか又は誘発できない。しかし、本発明によれば、NKT細胞アゴニスト化合物と抗原の共投与は、未ワクチン接種又は未処置対象に比べてワクチン接種又は処置対象において増強された免疫応答をもたらす。
好適には、NKT細胞アゴニスト化合物と抗原を共投与する。用語「共投与」とは、NKT細胞アゴニスト化合物と抗原を対象に投与するいずれの投与プロトコルをも指すことを意味する。NKT細胞アゴニスト化合物と抗原が同じ剤形内にあっても別々の剤形内にあってもよい。NKT細胞アゴニスト化合物と抗原が別々の剤形内にある場合、対象内で両方とも治療的又は予防的に有効な量を達成できるのに十分な様式でそれらを与える限り、それらを同時発生的に、同時に又は逐次的にに投与してよい(すなわち、一方の投与が他方の投与の直後でよく、或いはそれらを偶発的に与えてよく、すなわち、一方を一度与えた後、他方をその後の時点、例えば、1週間以内に与えてよい)。NKT細胞アゴニスト化合物と抗原を異なる経路で投与してもよい。例えば、一方を静脈内投与し、他方を筋肉内、静脈内又は経口投与してよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、好適には、NKT細胞アゴニスト化合物をワクチン組成物に添加するか又はワクチン組成物と共投与する。NKT細胞アゴニスト化合物のワクチン組成物への添加又はワクチン組成物との共投与は、抗原がワクチンとして低率の効力を有する場合及び/又は副作用、コスト及び/又は抗原のアベイラビリティ等のため理想的とみなされるより多い量又は薬用量で投与しなければらならない場合に特に適するだろう。このようなワクチンの例として、限定するものではないが、ヒトパピローマウイルスワクチン、急性中耳炎ワクチン(PREVNAR(登録商標))、インフルエンザワクチン、コレラワクチン及びテロメラーゼ癌ワクチンが挙げられる。
とりわけ、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、経口、鼻咽頭若しくは経粘膜吸収などのいずれの適切な方法によっても、患者への投与を行いうる。好適には、対象内で予防効果又は治療効果、例えば、抗腫瘍免疫応答又は抗菌免疫応答が達成されるようにNKT細胞を活性化するのに十分な量でNKT細胞アゴニスト化合物を投与する。
対象への投与は、対象内での免疫応答を刺激又は増強するため、NKT細胞アゴニスト化合物とex vivo接触させた細胞の投与に基づく養子免疫細胞移入法の使用をも含む。いくつかの実施形態では、細胞は、ex vivo活性化されて対象内に注射され、例えば、癌細胞若しくは感染因子に対する免疫応答を与えるか又は増強するNKT細胞でよい。いくつかの実施形態では、細胞は、NKT細胞アゴニスト化合物とex vivo接触させたAPCでよく、該APCによって発現されるCD1d分子との複合化を可能にする。次に、例えば、患者内への注射によって、抗原提示細胞を投与して、適切な免疫応答を与えることができる。この投与方法は、NKT細胞アゴニスト化合物への対象又は対象の細胞の最小曝露による免疫応答の刺激を斟酌する。
【0036】
本発明による対象へのNKT細胞アゴニスト化合物の投与は、用量依存様式で有益な効果を示すようだ。従って、広い制限内で、より多量のNKT細胞アゴニスト化合物の投与は、小量の用量投与より、多数のNKT細胞を活性化するか又はNKT細胞を高度に活性化すると予測される。さらに、毒性が見られるレベル未満の薬用量での効力も考慮される。さらに、実際には、疾患状態の治療処置が所望の目標である場合は一般的に高用量を使用し、予防目的では、一般的により低量を用いる。
当然のことながら、いずれの所定ケースで投与される特有の薬用量も、当業者には周知なように、投与される特有のNKT細胞アゴニスト化合物、治療又は予防すべき疾患、対象の状態、並びにNKT細胞アゴニスト化合物の活性又は該対象の応答を変更しうる他の関連医学的因子に従って調整される。例えば、特定患者に特有の用量は、年齢、体重、全身の健康状態、食事制限、投与のタイミングと態様、排泄の速度、併用薬物及び該療法を適用する特定の障害の重症度によって決まる。例えば、適切な通常の薬理学的若しくは予防的プロトコルを利用して、例えばNKT細胞アゴニスト化合物の差次活性とαGalCer等の既知因子の差次活性の慣例の比較により、通常の考慮を払って所定患者の薬用量を決定することができる。
対象にとって最大の薬用量は、望ましくないか又は耐えられない副作用を引き起こさない最高の薬用量である。個々の予防若しくは治療計画に関する変量の数は多く、かつ相当範囲の用量が予測される。本発明のNKT細胞アゴニスト化合物の薬用量は、治療前の症状に比べて少なくとも50%症状を予防するか又は減らすであろうと期待される。特に、本発明のワクチン製剤及び組成物は、治癒をもたらさないが、疾患の症状を和らげるか又は軽減しうるか、或いはいくつかの実施形態では、本発明のワクチン製剤及び組成物を用いて疾患又は障害を治療又は予防しうると考えられる。
【0037】
NKT細胞アゴニスト化合物を投与するのに適した有効な投薬量は当業者によって決定されるが、典型的に1週間に体重1kg当たり約1μg〜約10,000μgの範囲であり、典型的に1週間に体重1kg当たり約1,000μg以下である。いくつかの実施形態では、有効な投薬量は1週間に体重1kg当たり約10〜約5,000μgの範囲である。別の実施形態では、有効な投薬量は1週間に体重1kg当たり約50〜約1,000μgの範囲である。別の実施形態では、有効な投薬量は1週間に体重1kg当たり約75〜約500μgの範囲である。本明細書で述べる有効な投薬量は、投与される全量を指す。すなわち、1種より多くのNKT細胞アゴニスト化合物を投与する場合、有効な投薬量は、投与される全量に相当する。単一の週用量として又は分割用量としてNKT細胞アゴニスト化合物を投与することができる。
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原とNKT細胞アゴニスト化合物を対象に共投与して、該対象内で抗腫瘍免疫応答を生じさせる。好適には、上述したように、抗原とNKT細胞アゴニスト化合物の共投与が抗腫瘍応答を増強し、結果として腫瘍増殖の阻害、腫瘍量の減少及び癌の治療をもたらす。
本発明のワクチン製剤又は組成物の投与は、好適には、感染疾患又は感染因子に関連する疾患の治療的又は予防的処置をもたらしうる。感染疾患の「治療」又は「処置」は、以下の1つ以上を包含する:(1)感染を阻害すること、すなわち感染因子が感染を定着させるのを阻止すること、(2)感染因子の伝播、すなわち該対象の他の領域又はある患者から別の患者への伝播を阻止すること、(3)疾患の重症度を抑えること、(4)再発する感染を防止すること、すなわち潜在的又は持続性感染の再活性化を抑えること、及び(5)感染症の症状を和らげること。
特に、本発明のいずれの方法又は組成物のいずれの実施形態も、本発明のいずれの他の方法又は組成物と共に使用しうると考えられる。
【0038】
この明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つ」、及び「その」は、その文脈が明白に別の意味に特定しない限り、複数の対象を包含する。従って、例えば、「1つのウイルス」を含有する組成物との言及は、2つ以上のウイルスの混合物を包含する。また、「又は」という用語は、その文脈が明白に別の意味に特定しない限り、一般的に「及び/又は」を包含するその意味で利用されることに留意すべきである。
特に、本明細書で羅列されるいずれの数値もその最低値から最高値の全ての値を包含すること、すなわち、列挙される最低値と最高値の間の数値の全ての可能な組合せをこの出願で明白に述べたものとみなすことも分かる。例えば、ある範囲を1%〜50%と述べた場合、2%〜40%、10%〜30%、又は1%〜3%等の値をこの出願で明白に羅列したことを意図する。
全ての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願を具体的かつ個々に参照によって指定した場合と同程度に参照によって本明細書に明白に引用したものとする。本開示と引用した特許、刊行物及び参考文献とが矛盾する場合、本開示が支配するものとする。
本発明のさらなる理解を助けるため以下の実施例を提供する。利用する特定の材料及び条件は、本発明のさらなる例示であることを意図しており、添付の特許請求の範囲の正当な範囲を制限するものでない。
【0039】
〔実施例〕
実施例1 (PBS-32の合成)
図1に示されるようにPBS-32を合成した。合成で用いた試薬は以下のとおりだった(括弧内は収率):a)TrocCl、ピリジン、CH2Cl2(77%)、b)TFA、H2O、c)BzCl、ピリジン、DMAP(2工程で60%)、d)1)HBr、AcOH、H2O、2)Ag2Co3、アセトン、H2O(51%)、e)1)K2CO3、CCl3CN、2)保護されたセラミド、BF3OEt2、MS AW300、CH2Cl2(56%)、f)Zn/Cd、AcOH(67%)、g)SO3-ピリジン、DMF(83%)、h)NaOMe、THF、MeOH(87%)。
ジアセトングルコースから出発し、トリクロロエトキシカーボネート(「Troc」)保護基を付加し、該アセタールを加水分解して糖のピラノース形を得た。残存ヒドロキシル基をベンゾエートとして保護し、かつアノマーヒドロキシル基を2工程プロセス(アノマーブロミドを加水分解で取り込む)で遊離させた。トリクロロアセトイミデート化学を用いて、保護された炭水化物と保護されたセラミドのカップリングを達成した。次に、Troc基を選択的に除去し、C3''のところにスルフェートを取り込んだ。メトキシドで脱保護してPBS-32を白色固体として得た。
【0040】
実施例2 CD1d分子に合成NKT細胞アゴニスト化合物を負荷する
PBS-31とPBS-32を効率的にCD1d分子上に負荷できるかを、サポシンBの存在下と非存在下で未変性の等電点電気泳動(IEF)ゲルアッセイを用いて試験した。比較のため、PBS-41とPBS-46(スルホ-β-ガラクトシルセラミド)、PBS-36とPBS-58(スルホ-α-グルコシルセラミド)及びPBS-35とPBS-40(β-グルコシルセラミド)をもこのアッセイで評価した。これらの化合物の構造式を図2に示す。
各5μlの反応は2μMのCD1d、20μMの脂質及び10μMのサポシンBを含有した。ゲルの装填前に反応を37℃で1時間インキュベートした。
図3に星印で負荷種を表示する。図3のレーンは以下のように負荷された:1、脂質なし;2、αGalCer;3、PBS-31;4、PBS-32;5、脂質なし;6、iGB3;7、PBS-40;8、PBS-41;9、PBS-35;10、PBS-46;11、PBS-58;12、PBS-25(正コントロール)。図3に示されるように、正コントロールであるPBS-58とPBS-25を除き、試験した全脂質種を効率的にCD1d分子に負荷するのにサポシンBが必要だった。前記正コントロールはサポシンBの非存在下でわずかに負荷された。PBS-58のフィトセラミド形であるPBS-36も、サポシンBの非存在下でCD1d上に負荷された(データ示さず)。
【0041】
実施例3 NKT細胞ハイブリドーマのPBS-31及びPBS-32による刺激
Lantz, et al., J. Exp. Med. 180: 1097-1106 (1994)に記載されているアッセイで、化合物PBS-31、PBS-32、及びコントロール脂質を、正準のCD1d-制限Vα14 NKTハイブリドーマ細胞、DN32.D3を刺激するその能力について評価した。放射線照脾細胞に漸減濃度の脂質とコントロール化合物を律動的に送り、DN32.D3細胞と24時間インキュベートした。上清を収集し、Cantu, et al., J. Immunol. 170:4673-4682 (2003)に記載されているように、IL-2依存性細胞系による[3H]-チミジン取込みアッセイを用いてIL-2の放出を測定した。
図4に示されるように、脾細胞は効率的にPBS-31とPBS-32を提示し、典型的な用量反応曲線を生成した。成熟DCをAPCとして使用した場合に同様の結果が得られた(データ示さず)。CD1dの細胞質側末端の破壊を有するCD1-TDマウスから単離されたDCはPBS-31とPBS-32の両方を提示するのに不十分だった(データ示さず)。従って、PBS-31とPBS-32の提示及びNKT細胞の同時刺激は、CD1dのリソソームのターゲティングに依存性である。
PBS-31とPBS-32のNKT細胞への提示がDCによるプロセシングに依存性かどうかを決定するため、マウスCD1dを96ウェルプレート上にコートするDC-フリーアッセイを使用した。サポシンBの存在下と非存在下でPBS-31、PBS-32及びコントロール化合物を種々濃度で添加した。DN32.D3細胞を添加し、24時間後に上清を収集し、IL-2の生産量を測定した。このアッセイは、サポシンBが負荷に必要であることを確証し、さらに以下のことを実証した:1)PBS-31とPBS-32によるNKT細胞の刺激は、DCによるプロセシングを要しない;及び2)セラミドPBS-32は、一貫してフィトセラミドPBS-31より強力だった(データ示さず)。
【0042】
実施例4 PBS-31及びPBS-32刺激NKT細胞によるサイトカインの産生
プレート-結合CD1d、脾細胞若しくは精製成熟DCによって提示されたPBS-32又はコントロール化合物でNKT細胞を刺激した。IFN-γ、IL-4、IL-10及びGM-CSFの生産量をELISAで測定した。図5に示されるように、脾細胞と24時間インキュベーション後、PBS-32はIFN-γ、IL-4及びGM-CSFの分泌を誘発したが、IL-10の分泌を誘発せず、PBS-31はGM-CSFの分泌だけを誘発した。コントロール脂質(グルコシルとガラクトシル)は同アッセイでネガティブだった。サイトカインの誘発は、抗-CD1d抗体によって誘発が遮断され、かつCD1d-/-マウス由来のDCを使用した場合サイトカインの誘発が観察されないことから(データ示さず)、CD1d-依存性だった。
in vivoでは、1μgの正コントロール化合物、αGalCer、又はPBS-32の静脈内注射後、C57Bl/6マウスの血清中のIFN-γの生産量をELISAで測定すると、両化合物で非常に類似していた(24時間でそれぞれ2500pg/ml及び1500pg/ml)。PBS-32の注射後、IL-4は検出されなかった。また、PBS-32はα-GalCerより早いIFN-γ産生を誘発した。注射後8時間で、PBS-32は600pg/mlのIFN-γを生じさせた。
【0043】
実施例5 PBS-32-CD1d四量体のVα14 NKT細胞への結合性
PBS-32-負荷CD1d四量体、並びにコントロールαGalCer四量体を、その全体を参照によってここに引用したものとするBenlagha et al., J. Exp. Med. 191: 1895-1903 (2000)に記載されている通りに調製した。結果の四量体を用いてマウスVα14 NKT細胞系を染色した。洗浄後、細胞をFACSCalibur(BD Biosciences)でFlowJoソフトウェアを用いて解析した。PBS-32-CD1d四量体の染色は、CD1d-αGalCer四量体より強度が低いが均一であり、最も正準のNKT細胞がこの試薬で染色されたことを示唆している(データ示さず)。
BIAcore2000機器でSPRによって25℃でCD1d-PBS-32複合体のVα14/2CβT細胞受容体(TCR)に対する親和性を直接測定した。TCRをセンサーチップ上に固定し、PBS緩衝液中10、5、2.5、1.25、0.625、0.3125μMでCD1d-PBS-32複合体を注射した。全実験で、負コントロールとして同濃度(10、5、2.5、1.25、0.625、0.3125μM)で空のCD1dを使用し、対応する実験群から取り去った。1:1のラングミュア結合モデルとBIAevaluation 3000ソフトウェアを用いて非線形曲線フィッティングによってオン率とオフ率を得た。Chi2は0.48だった。図6に示されるように、Vα14/2CβTCRに対するCD1d-PBS-32複合体の親和性は0.3mMであることが分かった。以前に報告されているように、このTCRはコントロールCD1d-αGalCerに対して30nMの親和性を有する。その全体を参照によってここに引用したものとするCantu et al., J. Immunol. 170: 4673-82 (2003)を参照されたい。
【0044】
実施例6 ヒトNKT細胞の活性化
PBS-31とPBS-32のアゴニスト活性をヒトNKT細胞について調べた。PBS-31、PBS-32及びコントロール脂質、iGB3の存在下、放射線照射末梢血リンパ球(PBL)又はin vitro成熟DCでヒトNKT細胞系を刺激した(その全体を参照によってここに引用したものとするMattner et al., Nature 434: 525-529 (2005)参照)。24時間のインキュベーション後、上清を収集し、IL-4とIFN-γの存在についてELISAでアッセイした。図7に示されるように、PBS-32はIFN-γとIL-4の分泌を誘発することができた。PBS-32、PBS-31及びiGB3は、ほとんど等価な量のIL-4を誘発できたが、PBS-31は有意に少ないIFN-γを誘発した。
【0045】
実施例7 DC成熟のin vivo誘発
マウスにα-GalCer、PBS-31及びPBS-32を注射し、細胞表面マーカー発現を分析することによって、DCの分化を脾臓DCで調査した。
各群3匹のマウスに1μgの脂質又はビヒクルのみを静脈内注射した。注射後24時間に、脾臓B細胞(B220+)、マクロファージ(CD11b+)及びDC(CD11c+)について、FACScalibur機械とFlowJo解析ソフトウェアを用いてFACS解析でCD1d発現を調べた。
各動物において、CD1d発現は、マクロファージについてはコントロール群の平均蛍光強度と比較した場合に増加した(MFIが-20から200になる)。調査した他のいずれの細胞サブセットでもCD1d発現の差異は観察されなかった。
CD11c+/CD8+及びCD11c+/CD8-細胞についてCD40、CD80、CD86、及びMHCクラスIIの発現を測定することによって、DCの成熟を解析した(図8)。DCの両サブセットはPBS-32、PBS-31又はαGalCerの注射後の細胞表面マーカー発現によって決定されるような成熟表現型を示した。成熟のプロフィールは、PBS-32とαGalCerについて同様だった。NKT細胞の活性化アッセイで得られた結果と同様、PBS-31は、PBS-32又はαGalCerが有するより顕著に少ない効果を有した。PBS-31この低い効力は、マウス1匹当たり50μgまで用量を増やしても克服できなかった(データ示さず)。PBS-32とαGalCerは、0.1〜1μgで最大誘発に達した(データ示さず)。
DC成熟の誘発は、トール様受容体経路がそれぞれ部分的、又は全体的に損なわれているMyD88-/-及びMyD88-I-TRIF-/-ノックアウト動物では影響を受けなかった(データ示さず)。CD1d-/-マウスに脂質を注射することによって、CD1d-依存性を確認した。予測されるように、脂質の注射後のCD1d-/-マウスではDC成熟が起こらなかった。
【0046】
実施例8 アジュバントの能力の分析
その全体を参照によってここに引用したものとするFujii et al., J. Exp. Med. 198: 267-279 (2003)及びHermans et al., J. Immunol. 171: 5140-5147 (2003)のプロトコルと同様のプロトコルに従って、微量タンパク質抗原、卵白アルブミンと併用したPBS-31及びPBS-32の潜在的なアジュバント活性を導いた。卵白アルブミンを単独又は1μgのPBS-31、PBS-32若しくはα-GalCer(PBS-57)と併用して静脈内注射した。図9は代表的実験の結果を示す。MHCクラスII応答の後に続くために働く四量体の非存在下では、CD8+応答とB細胞応答だけを評価した。
注射後7日で抹消血内のH-2Kb/ova257-264四量体ポジティブ細胞を数え、かつCD8+T細胞プール中のH-2Kb/ova257-264ポジティブ細胞のパーセンテージとして表すことによってCD8+T細胞応答を評価した。注射後7日で、PBS-32注射群では抗原特異性H-2Kb/ova257-264四量体ポジティブ細胞が約3%まで増加したが、α-GalCer処置群ではそれらがほとんど6%まで拡大した(図9A)。両群で、IgG抗-卵白アルブミン応答は、抗-IgG特異性二次抗体を用いてELISAで測定した場合にコントロール群に比し、用量依存様式で劇的に増強された(図9B)。これらの強力なIgG応答は、卵白アルブミン特異性CD4+Tヘルパー画分の有意な増強も同様に間接的に反映しうる。
CD1d-l-マウスに同プロトコルに従って注射した場合、抗-卵白アルブミンIgG又は抗-卵白アルブミンCD8+T細胞のどちらの増加も気づかなかった(データ示さず)。これらの結果は、PBS-32は、精製タンパク質抗原と併用した場合にアジュバント活性を有することを確証した。
【0047】
実施例9 LCMVモデルにおいてPBS-32がT-細胞を補充する
マウスのリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)感染のモデル感染系で、NKT細胞/DC協同作用を利用して適応免疫を刺激する能力をさらに試験した。LCMVの天然宿主はマウスであり、最終的に抗-ウイルスのMHCクラスI-制限T細胞応答とMHCクラスII-制限T細胞応答の両方をマッピングした。7種のエピトープが、ヌクレオタンパク質(NP)と糖タンパク質(GP)についてH-2Kb(NP205-212、GP34-43、GP118-125)及びH-2 Db(NP396-404、GP33-41、GP92-101、GP276-286)上で同定され、2種のエピトープがI-Ab(GP61-80、NP309-328)上で制限される。
PBS-32又はコントロールαGalCerの注射が抗-LCMV T細胞応答の動態を変えられるかを評価するため、C57BI/6マウスに1μgのPBS-32、αGalCer又はビヒクルを静脈内注射した後、106PFUの感染性LCMVArmを腹腔内接種した。注射後8日に、GP33、NP396及びGP276に特異性のCD8+T細胞の頻度と、GP61及びNP309に特異性のCD4+T細胞の頻度を、ペプチドとAPCによる5時間のin vitroパルス後のINF-γについての細胞内FACS染色法で決定した。図10に示されるように、全試験エピトープに対してLCMV単独で強力な抗-LCMVクラスI及びクラスII制限応答を誘発した(黒色棒)。しかし、この強力な基本応答にもかかわらず、α-GalCerは有意にCD8+応答を高めることができ(白色棒)、かつPBS-32も同様だった(灰色棒)。さらに驚くべきことに、CD4+応答はα-GalCerの注射で変化せず、PBS-32は、抗-GP61及び抗-NP309 I-Ab-制限応答の有意な増加を誘発できた。従って、タンパク質抗原で得られた結果とは対照的に、αGalCerとPBS-32は、このウイルス感染モデルにおいてCD4+及びCD8+T細胞を補充するための異なる能力を有する。
【0048】
実施例10 PBS-32は病原性微生物による感染に対するワクチン接種を促進する
NKT細胞アゴニスト化合物の、記憶免疫応答刺激し、病原性微生物による感染に対してワクチン接種する能力をマウス感染モデルで試験する。マウスに以下の1つを腹腔内又は静脈内注射する:生理学的に許容しうるビヒクル中のPBS-32と感染因子抗原、例えば結核菌由来のリポアラビノマンナンを含んでなる組成物;生理学的に許容しうるビヒクル中に抗原のみ;又はビヒクルのみ。免疫化後少なくとも1週間で、脾臓を収集し、回収した細胞を抗原でin vitro刺激し、ELISA及びFACS解析を行ってサイトカインの誘発、活性化-関連細胞表面マーカーの発現並びにNKT細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、APC及びB細胞といった種々の免疫細胞型について抗体産生を評価することによって、免疫応答を評価する。
第二セットの免疫化動物を漸減用量の感染因子で実験的に感染させて、用量反応曲線を作成してLD50(50%の動物を殺すのに必要な感染因子の量)とID50(感染を定着させるのに必要な感染因子の量)を決定した。疾患症状の重症度について1〜5の尺度で動物を採点した(1は疾患症状がなく、5は死亡又は安楽死させた動物を表す)。抗原投与後毎日ベースで動物を採点して、免疫化が疾患の重症度を下げたかを評価する。感染の経過にわたってサンプル組織を種々の時点で収集し、当業者に周知の方法で感染因子の存在について検定する。結果は、免疫化手順がアジュバントとしてPBS-32を含める場合、抗原に対する免疫応答が増強され、LD50がより高く、かつID50がより高い(すなわち、動物を殺すか又は動物に感染を定着させるためにさらに微生物が必要である)ことを実証するだろう。
本発明を種々の特有の実施形態及び技術を参照して説明した。しかし、本発明の精神と範囲内に留まりながら、多くの変更及び修正を為しうることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本明細書ではPBS-32とも称するスルホグルコシルセラミド(SuGC)に適した合成スキームを示す。
【図2】PBS-32並びにPBS-31(フィトセラミド)、PBS-46、PBS-41(スルファチド)、PBS-36、PBS-58、PBS-35及びPBS-40と命名された修飾セラミド化合物を含む、本明細書で言及するいくつかの化合物の構造式を示す。
【図3】脂質伝達糖タンパク質であるサポシンBの存在下及び非存在下におけるCD1d分子のPBS-31、PBS-32、PBS-41、PBS-46、PBS-36、PBS-58、PBS-35及びPBS-40による負荷を示す等電点電気泳動ゲルの写真である。
【図4】PBS-32、PBS-31、αGalCer及びビヒクルによるVα14 NKT細胞ハイブリドーマDN32.D3の差動活性化及び用量応答性を示すグラフである。
【図5】PBS-47、PBS-32、PBS-31及びαGalCerによる脾細胞の24時間の刺激後にIFN-γ、IL-10、IL-4及びGM-CSFの生産量を測定するエンザイム-リンクドイムノソルベントアッセイ(ELISA)の結果を示すグラフである。
【図6】PBS-32-CD1d複合体の組換えVα14/2CβTCRへの結合性の表面プラズモン共鳴(SPR)測定の結果を示すグラフである。
【図7】αGalCer、PBS-47、PBS-32及びPBS-31の濃度を減らすことによって波動する、相同性DCによるヒトNKT細胞系の活性化を示すグラフであり、NKT細胞の活性化をIFN-γ及びIL-4についてELISAで測定した。
【図8】PBS-31、PBS-32、αGalCer及びビヒクルの注射後24時間での脾臓のDC(CD11c+、CD8a+及びCD11c+/CD8a-)によるCD40、CD80、CD86及びMHCクラスIIの細胞表面発現についての蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorting)(FACS)分析の結果を示すグラフである。
【図9A】卵白アルブミン微量抗原を投与した場合のPBS-32がアジュバントとして作用する能力を示すグラフであり、ビヒクルのみ、OVAのみ、 OVA+αGalCer(PBS-57)及びOVA+PBS-32の投与後のH-2Kb/ova257-264応答性CD8+T-細胞(四量体染色及びFACS分析によって示した場合)のパーセンテージを示す。
【図9B】卵白アルブミン微量抗原を投与した場合のPBS-32がアジュバントとして作用する能力を示すグラフであり、ELISAで測定した場合の抗-卵白アルブミンIgG抗体の相対量を示す。
【図10】LCMV抗原及び抗原提示細胞による5時間のin vitro波動後のIFN-γ-産生性CD8+及びCD4+T-細胞についてのFACS染色の結果を示すグラフである。
【図11A】脂質伝達タンパク質(LBP、CD14、ApoH、NPC-2、GM2A又はサポシンBのどれか)及びαGalCerと組み合わせたGM3による二週間の免疫化後、ELISAで測定した場合のIgM及びIgG抗-GM3抗体濃度を示すグラフであり(各棒は個々の採血を示す)、hGM2aとmNPC2を用いた場合である。
【図11B】脂質伝達タンパク質(LBP、CD14、ApoH、NPC-2、GM2A又はサポシンBのどれか)及びαGalCerと組み合わせたGM3による二週間の免疫化後、ELISAで測定した場合のIgM及びIgG抗-GM3抗体濃度を示すグラフであり(各棒は個々の採血を示す)、mSapBとmCD14を用いた場合である。
【図11C】脂質伝達タンパク質(LBP、CD14、ApoH、NPC-2、GM2A又はサポシンBのどれか)及びαGalCerと組み合わせたGM3による二週間の免疫化後、ELISAで測定した場合のIgM及びIgG抗-GM3抗体濃度を示すグラフであり(各棒は個々の採血を示す)、hLBPとhApoHを用いた場合である。
【図12】リポソーム被覆ガラズビーズのELISA及びFACS分析によって測定した場合の脂質で免疫化されたマウスによって産生された抗-GM3モノクロナール抗体の特異性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I):
【化1】

(式中:
Xは-O-、-CH2-又は-S-であり;
R1は-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H、-COOH又は下記構造式(II):
【化2】

(式中:
Yは-O-、-CH2-又は-S-であり;
R9、R10、R11及びR12は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO3H及び-COOHから独立に選択される)
で表される基であり;
R2は、-H、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H及び-COOHから選択され;
R3は、約7〜約25個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり;
R4は-H、-OHであり、又はR6と共に炭素-炭素二重結合を形成し;
R5は、約5〜約15個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり、
R6は-H、-OHであり、又はR4と共にC-C二重結合を形成し;
R7及びR8は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H及び-COOHから独立に選択され;
但し、R1、R2、R7、R8、R9、R10、R11又はR12の少なくとも1つは-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H又は-COOHである)
で表される化合物;
及び生理学的に許容しうるビヒクルを含んでなる組成物。
【請求項2】
下記構造式(I):
【化3】

(式中:
Xは-O-、-CH2-又は-S-であり;
R1は-H、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H、-COOH又は下記構造式(II):
【化4】

(式中:
Yは-O-、-CH2-又は-S-であり;
R9、R10、R11及びR12は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO3H及び-COOHから独立に選択される)
で表される基であり;
R2は-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H及び-COOHから選択され;
R3は、約7〜約25個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり;
R4は-H、-OHであり、又はR6と共に炭素-炭素二重結合を形成し;
R5は、約5〜約15個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり;
R6は-H、-OHであり、又はR4と共にC-C二重結合を形成し;
R7は、-H、-OH、-OSO3H、SO3H、-PO4、-PO4H及び-COOHから選択され;かつ
R8は、-H、-OH、-PO4、-PO4H及び-COOHから選択され;
但し、R1、R2、R7、R8、R9、R10、R11又はR12の少なくとも1つは-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H又は-COOHである)
で表される化合物;
及び生理学的に許容しうるビヒクルを含んでなる組成物。
【請求項3】
in vivo投与のために製剤化された、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに抗原を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗原が感染因子由来である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗原が腫瘍由来である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
対象内における免疫応答を増強する方法であって、前記対象に請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を含んでなる方法。
【請求項8】
前記免疫応答が抗体の産生を含むか又はヘルパー、細胞溶解若しくは記憶応答を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
培養細胞にin vitro適用するために製剤化された、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
NKT細胞を刺激する方法であって、前記NKT細胞を下記式(I):
【化5】

(式中:
Xは-O-、-CH2-又は-S-であり;
R1は-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H、-COOH又は下記構造式(II):
【化6】

(式中:
Yは-O-、-CH2-又は-S-であり;
R9、R10、R11及びR12は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO3H及び-COOHから独立に選択される)
で表される基であり;
R2は、-H、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H及び-COOHから選択され;
R3は、約7〜約25個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり;
R4は-H、-OHであり、又はR6と共に炭素-炭素二重結合を形成し;
R5は、約5〜約15個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり、
R6は-H、-OHであり、又はR4と共にC-C二重結合を形成し;かつ
R7及びR8は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H及び-COOHから独立に選択され;
但し、R1、R2、R7、R8、R9、R10、R11又はR12の少なくとも1つは-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H又は-COOHである)
で表される構造式を有する化合物と接触させる工程を含んでなる方法。
【請求項11】
NKT細胞を刺激する方法であって、前記NKT細胞を下記式(I):
【化7】

(式中:
Xは-O-、-CH2-又は-S-であり;
R1は-H、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H、-COOH又は下記構造式(II):
【化8】

(式中:
Yは-O-、-CH2-又は-S-であり;
R9、R10、R11及びR12は、-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO3H及び-COOHから独立に選択される)
で表される基であり;
R2は、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H及び-COOHから選択され;
R3は、約7〜約25個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり;
R4は-H、-OHであり、又はR6と共に炭素-炭素二重結合を形成し;
R5は、約5〜約15個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基であり、
R6は-H、-OHであり、又はR4と共にC-C二重結合を形成し;かつ
R7は、-H、-OH、-OSO3H、SO3H、-PO4、-PO4H及び-COOHから選択され;かつ
R8は、-H、-OH、-PO4、-PO4H及び-COOHから選択され;
但し、R1、R2、R7、R8、R9、R10、R11又はR12の少なくとも1つは-H、-OH、-OSO3H、-SO3H、-PO4、-PO4H又は-COOHである)
で表される構造式を有する化合物と接触させる工程を含んでなる方法。
【請求項12】
前記NKT細胞をCD1d単量体又は四量体の存在下で前記組成物と接触させる工程をさらに含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物を前記CD1d単量体又は四量体に結合する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記CD1d単量体又は四量体が可溶性である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記CD1d単量体が細胞表面上で発現される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が抗原提示細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記NKT細胞をin vitro培養する、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記NKT細胞が対象内にある、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含んでなるワクチン製剤。
【請求項20】
請求項10〜16のいずれか1項に記載の前記NKT細胞を含んでなるワクチン製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【公表番号】特表2009−542712(P2009−542712A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518567(P2009−518567)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/072451
【国際公開番号】WO2008/005824
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(593052785)ザ スクリップス リサーチ インスティテュート (91)
【出願人】(501242712)ザ ユニヴァーシティー オヴ シカゴ (19)
【出願人】(507069771)ブリガム ヤング ユニヴァーシティー (3)
【Fターム(参考)】