説明

アジュバント添加されたグルカン

真菌に対する免疫処置のための抗原としてのβ−グルカンの使用が公知である。本発明によれば、β−グルカンをアジュバントとともに投与する。アジュバントにより免疫応答が改善される。グルカンは、通常、担体に結合体化させる。好適なグルカンとしては、ラミナリンおよびカードランが挙げられる。一実施形態において、(a)β−1,3−結合および/またはβ−1,6−結合を含むグルカン;ならびに(b)アジュバント(ただし、成分(b)は完全フロイントアジュバントではなく、コレラ毒素でもない)を含む免疫原性組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年11月26日に出願された米国仮出願第61/004,396号および2008年7月1日に出願された米国仮出願第61/133,738号(これらの両方は、それらの全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明はワクチンに関し、より詳しくは、真菌による感染症および疾患に対するワクチンに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
β−グルカンの抗真菌ワクチンとしての使用は、参考文献1(非特許文献1)に概説されている。
【0004】
参考文献2(特許文献1)には、免疫処置試験における種々のβ−グルカン、例えば、ラミナリン、プスツランおよび「GG−zym」(グルカンゴーストをβ−1,3−グルカナーゼで消化することにより得られる可溶性C.albicansグルカン)の使用が報告されている。GG−zymおよびラミナリングルカンは、どちらも、その免疫原性を改善するために担体タンパク質に結合体化された。結合体化したラミナリンに関する情報は、参考文献3(非特許文献2)に報告されている。
【0005】
参考文献2(特許文献1)では、GG−zym結合体は、完全フロイントアジュバントおよび不完全フロイントアジュバントの両方とともに投与された。より一般的には、β−グルカン含有組成物は、任意選択でアジュバントを含むものとして開示されている。参考文献3(非特許文献2)では、ラミナリン結合体は、完全フロイントアジュバントまたはコレラ毒素アジュバントとともに投与された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第03/097091号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】CassoneおよびTorosantucci、Expert Rev Vaccines(2006)5:859〜67
【非特許文献2】Torosantucciら、J Exp Med(2005)202:597〜606
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、感染症に対して防御的および/または治療的免疫応答を誘発するためのさらに良好なグルカン系組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、(a)β−1,3−結合および/またはβ−1,6−結合を含むグルカン;ならびに(b)アジュバント(ただし、成分(b)は完全フロイントアジュバントではなく、コレラ毒素でもない)を含む免疫原性組成物に関する。グルカンは単一の分子種であり得る。一実施形態において、グルカンを担体タンパク質に結合体化させる。特定の実施形態では、グルカンを担体タンパク質に直接結合体化させる。別の特定の実施形態では、グルカンを担体タンパク質にリンカーによって結合体化させる。
【0010】
また、本発明は、β−1,3−結合および/またはβ−1,6−結合を含むグルカンを含む免疫原性組成物に関し、前記グルカンが単一の分子種であり、かつ担体タンパク質に結合体化させたものである。一実施形態において、グルカンを担体タンパク質に結合体化させる。特定の実施形態では、グルカンを担体タンパク質に直接結合体化させる。別の特定の実施形態では、グルカンを担体タンパク質にリンカーによって結合体化させる。
【0011】
本発明の免疫原性組成物における担体タンパク質は、細菌毒素もしくはトキソイド、またはその変異体であり得る。特定の実施形態では、担体タンパク質はCRM197である。
【0012】
特定の実施形態において、グルカンは、100kDa未満(例えば、80、70、60、50、40、30、25、20または15kDa未満)の分子量を有する。他の実施形態において、グルカンは60個以下のグルコース単糖単位を有するものである。
【0013】
グルカンは、一部β−1,6分枝を有するβ−1,3グルカンであり得る。特定の実施形態では、グルカンはラミナリンである。別の特定の実施形態では、グルカンのβ−1,3−結合グルコース残基およびβ−1,6−結合グルコース残基において、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3結合グルコース残基の比が少なくとも8:1である、および/またはβ−1,3結合のみによって他の残基に連結された少なくとも5つの隣接する非末端残基の配列が1つ以上存在する。例えば、グルカンは、β−1,3−結合グルコース残基とβ−1,6−結合グルコース残基との両方を含み、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3結合グルコース残基の比は少なくとも8:1である。
【0014】
グルカンは、排他的にβ−1,3結合を有するものであってもよい。特定の実施形態では、グルカンは、カードランである。本発明の免疫原性組成物に薬学的に許容され得る担体を含めてもよい。
【0015】
アジュバントは、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩;水中油型乳剤;免疫刺激性オリゴヌクレオチド;および/またはα−グリコシルセラミドの1種類以上を含み得る。アジュバントは、外膜小胞(OMV)を含むものであってもよい。アジュバントは、免疫刺激性オリゴヌクレオチドとポリカチオンオリゴペプチドとを含むものであってもよい。
【0016】
また、本発明は、哺乳動物に本発明の組成物を投与することを含む、哺乳動物の免疫応答を惹起するための方法に関する。
【0017】
また、本発明は、フロロタンニンをグルカンから分離する工程を含むグルカンの精製プロセス、およびフロロタンニン夾雑物を減少させたグルカンに関する。
【0018】
また、本発明は、結合体化工程が、>10mMのリン酸塩を含むリン酸緩衝液中で行なわれる、担体タンパク質に結合体化させたグルカンの作製方法;およびこのような方法によって得られる結合体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、糖および結合体のSDS−PAGEを示す。レーンは:(1)CRM197;(2)CRM197に結合体化したラミナリン;(3)CRM197に結合体化させた水解型カードラン;(4)破傷風トキソイド単量体、Tt;(5)Ttに結合体化させたラミナリン;(6)Ttに結合体化させた水解型カードランである。
【図2】図2は、結合体のSEC−HPLCプロフィールを示す。図2Aは、CRM197結合体のプロフィールを示し、図2Bは、Tt結合体のプロフィールを示す。両方の場合において、最も右側のピークは、結合体化されていない担体のプロフィールである。最小ピークはカードラン結合体である。第3のピークはラミナリン結合体である。
【図3】図3は、ラミナリンに対する結合体化前および結合体化後のCRM197のHPLC−SEC解析を示す。
【図4】図4は、合成グルカンの結合体化の概要である。
【図5】図5は、合成グルカンの結合体のSDS−PAGE解析を示す。
【図6】図6は、ラミナリン結合体のロット9および10のSEC−HPLCプロフィールを示す。
【図7】図7は、アジュバントとして左から右に:(1)水酸化アルミニウム;(2)水酸化アルミニウム+CpGオリゴ;(3)MF59;(4)IC31、高用量(1000nmol/mlを超えるオリゴデオキシヌクレオチドおよび40nmol/mlのペプチドを有する49.5μlの試料);(5)IC31、低用量(100nmol/mlを超えるオリゴデオキシヌクレオチドおよび4nmol/mlのペプチドを有する90μlの試料);(6)α−ガラクトシルセラミド;または(7)α−ガラクトシルセラミド+水酸化アルミニウムを加えたラミナリン結合体に対するIgG GMTを示す。
【図8】図8は、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせて腹腔内投与によって投与した、CRM197または破傷風トキソイドのいずれかに結合体化させたラミナリンに対するIgG GMTを示す。
【図9】図9は、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせて皮下投与によって投与した、CRM197または破傷風トキソイドのいずれかに結合体化させたラミナリンに対するIgG GMTを示す。
【図10】図10は、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせて腹腔内投与によって投与した、CRM197または破傷風トキソイドのいずれかに結合体化させたカードランに対するIgG GMTを示す。
【図11】図11は、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせて皮下投与によって投与した、CRM197または破傷風トキソイドのいずれかに結合体化させたカードランに対するIgG GMTを示す。
【図12】図12は、種々の糖用量のラミナリン結合体に対するIgG GMTを示す。
【図13】図13は、種々の糖用量のカードラン結合体単独または個々のアジュバントと合わせたカードラン結合体に対するIgG GMTを示す。
【図14】図14は、種々の糖用量のラミナリン結合体単独または個々のアジュバントと合わせたラミナリン結合体に対するIgG GMT(抗GGZymおよび抗ラミナリン)を示す。
【図15】図15は、腹腔内、皮下または筋肉内投与によって投与した種々の個々のアジュバントと合わせたラミナリン結合体に対するIgG GMT(抗GGZym)を示す。
【図16】図16は、腹腔内、皮下または筋肉内投与によって投与した種々の個々のアジュバントと合わせたラミナリン結合体に対するIgG GMT(抗ラミナリン)を示す。
【図17】図17は、種々の個々のアジュバントと合わせたラミナリン結合体で処置したマウス由来の免疫処置前および免疫処置後の血清で処置したマウスの腎臓におけるC.albicansの蓄積を示す。
【図18】図18は、MF59アジュバントと合わせたラミナリン結合体で処置したマウス由来の免疫処置前および免疫処置後の血清で処置したマウスの腎臓におけるC.albicansの蓄積を示す。
【図19】図19は、Laminaria digitataから抽出した市販のラミナリンのUVスペクトルおよびデプスフィルタを用いて1回、2回または3回の濾過工程後の同じ物質のスペクトルを示す。
【図20】図20は、種々のアジュバントと合わせた37℃におけるグルカン結合体の液状製剤の安定性を示す。
【図21】図21は、種々のアジュバントと合わせた2〜8℃におけるグルカン結合体の液状製剤の安定性を示す。
【図22】図22は、4、25または37℃におけるグルカン結合体の凍結乾燥製剤の安定性を示す。
【図23】図23は、腹腔内投与によって投与した、合成グルカンならびにラミナリン結合体単独または種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせたラミナリン結合体に対するIgG GMT(抗ラミナリン)を示す。
【図24】図24は、C.albicansでの抗原刺激(challenge)前の、MF59と合わせたCRM197に結合体化したラミナリンまたはCRM197およびMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。
【図25】図25は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせたCRM197に結合体化したカードランまたはMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。
【図26】図26は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせた2種類の合成グルカン結合体またはMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明によれば、β−1,3−結合および/またはβ−1,6−結合を含むグルカンが、1種類以上のアジュバントと組み合わせて投与される。アジュバントの使用により、アジュバントがない場合よりも強力な免疫応答がもたらされることが示された。グルカンは、好ましくは結合体の形態で使用される。アジュバントは、好ましくは、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩;水中油型乳剤;免疫刺激性オリゴヌクレオチド;および/またはα−グリコシルセラミドの1種類以上を含むものである。
【0021】
グルカンがラミナリンならば、アジュバントは完全フロイントアジュバントではない。さらに、グルカンがラミナリンであり、鼻腔内または膣内投与のためのものならば、アジュバントはコレラ毒素ではない。より一般的には、アジュバントは、好ましくは完全フロイントアジュバントでもコレラ毒素でもない。
【0022】
したがって、本発明は、(a)β−1,3−結合および/またはβ−1,6−結合を含むグルカン;ならびに(b)アジュバントを含む免疫原性組成物を提供する。
【0023】
また、本発明は、β−1,3−結合および/またはβ−1,6−結合を含むグルカンを含む免疫原性組成物を提供し、前記グルカンが単一の分子種であり、かつ担体タンパク質に結合体化させたものである。本発明者らは、単一の分子種であるグルカンは、特に、該組成物がアジュバントもまた含む場合、より多分散系のグルカンよりも免疫原性が大きいことを見い出した。したがって、好ましくは、該組成物はグルカンに加えてアジュバントを含む。
【0024】
また、本発明は、フロロタンニンをグルカンから分離する工程を含むグルカンの精製プロセス、およびフロロタンニン夾雑物を減少させたグルカンに関する。グルカンは、本明細書に記載の任意のグルカンであり得る。本発明者らは、既知の方法によって精製したグルカンには、フロロタンニンが混入していることがあり得ることを見い出した。フロロタンニンは、褐藻類および海藻類に見られるポリフェノール化合物である。フロロタンニンは、典型的には、ジベンゾ−1,4−ジオキシン骨格を含むものであるが、多くの異なる形態のフロロタンニンも知られている。フロロタンニンは、さまざまな生物学的効果、例えば、放射線防護効果および抗酸化効果を有することが示されている([4]および[5])。特に、フロロタンニンは、免疫機構に対する効果、例えば、抗炎症性効果および抗アレルギー効果を有することが示されている([5]および[6])。フロロタンニンの抗免疫効果は、特に、グルカンが免疫原としての使用のためのものである場合、これがグルカン中の望ましくない夾雑物であり得ることを意味する。本発明は、フロロタンニンをグルカンから分離する工程を含むグルカンの精製プロセス、およびフロロタンニン夾雑物を減少させたグルカンを提供する。
【0025】
また、本発明は、結合体化工程が、>10mMのリン酸塩を含むリン酸緩衝液中で行なわれる、担体タンパク質に結合体化させたグルカンの作製方法;およびこの方法によって得られる結合体を提供する。グルカンは、本明細書に記載の任意のグルカンであり得る。本発明者らは、このような方法によって結合体化させたグルカンは、ワクチンとして使用した場合、先行技術の方法(例えば、参考文献2および3に記載の方法)によって結合体化させたグルカンよりも大きな防御がもたらされ得ることを見い出した。理論に拘束されることを望まないが、この効果は、得られる結合体の凝集の低減のためであり得ると考えられる。
【0026】
グルカン
グルカンは、とりわけ真菌の細胞壁に見られるグルコース含有多糖類である。α−グルカンは、グルコースサブユニット間に1つ以上のα−結合を含むものであり、β−グルカンは、グルコースサブユニット間に1つ以上のβ−結合を含むものである。本発明に従って使用されるグルカンはβ結合を含むものであり、β結合のみを含むもの(すなわち、α結合を含まない)であってもよい。
【0027】
グルカンは1つ以上のβ−1,3−結合および/または1つ以上のβ−1,6−結合を含み得る。また、1つ以上のβ−1,2−結合および/またはβ−1,4−結合を含むものであってもよいが、通常、β結合のみがβ−1,3−結合および/またはβ−1,6−結合である。
【0028】
グルカンは、分枝状であっても線状であってもよい。
【0029】
完全長の天然β−グルカンは不溶性であり、メガダルトン範囲の分子量を有する。本発明の免疫原性組成物には、可溶性グルカンを使用することが好ましい。可溶化は、長い不溶性グルカンを断片化することにより達成され得る。これは加水分解によっても行なわれ得、より簡便には、グルカナーゼ(例えば、β−1,3−グルカナーゼまたはβ−1,6−グルカナーゼ)での消化によっても行なわれ得る。代替法として、短いグルカンを、単糖構成ブロックを連接することにより合成によって調製することもできる。
【0030】
低分子量グルカンが好ましく、特に、100kDa未満(例えば、80、70、60、50、40、30、25、20または15kDa未満)の分子量を有するものが好ましい。また、例えば、60個以下(例えば、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40 39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4個)のグルコース単糖単位を含むオリゴ糖を使用することも可能である。この範囲において、10〜50個または20〜40個の単糖単位を有するオリゴ糖が好ましい。
【0031】
グルカンは真菌グルカンであり得る。「真菌グルカン」は、一般的には真菌から得られるものであるが、特定のグルカン構造が真菌および非真菌(例えば、細菌、下等植物または藻類)の両方に見られる場合は、非真菌生物体を代替供給源として使用してもよい。したがって、グルカンは、カンジダ属(C.albicansなど)の細胞壁、あるいはCoccidioides immitis、Trichophyton verrucosum、Blastomyces dermatidis、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Saccharomyces cerevisiae、Paracoccidioides brasiliensis、またはPythiumn insidiosumに由来するものであり得る。
【0032】
真菌β−グルカンには種々の供給源が存在する。例えば、純粋なβ−グルカンは市販されており、例えば、プスツラン(Calbiochem)は、Umbilicaria papullosaから精製されたβ−1,6−グルカンである。β−グルカンは、真菌の細胞壁から種々の様式で精製され得る。例えば、参考文献7には、細胞壁マンナンを含まないカンジダ属由来の水溶性β−グルカン抽出物を調製するための、NaClO酸化とDMSO抽出を伴う2工程手順が開示されている。得られる生成物(「カンジダ属可溶性β−D−グルカン」または「CSBG」)は、主として線状β−1,3−グルカンで構成されており、線状β−1,6−グルカン部分を有する。同様に、参考文献2には、Calbicans由来のGG−zymの作製が開示されている。かかるC.albicans由来グルカンとしては、(a)β−1,3−グルカン側鎖を有し、平均重合度が約30のβ−1,6−グルカン、および(b)β−1,6−グルカン側鎖を有し、平均重合度が約4のβ−1,3−グルカンが挙げられる。
【0033】
本発明の一部の実施形態において、グルカンは、例えばラミナリンに見られるような、一部β−1,6分枝を有するβ−1,3グルカンである。ラミナリンは褐藻類および海藻類に見られる。ラミナリンのβ(1−3):β(1−6)比は、種々の供給源の間で変動し、例えば、Eisenia bicyclisのラミナリンでは3:2と小さいが、Laminaria digititataのラミナリンでは7:1と大きい[8]。したがって、本発明で使用されるグルカンは1.5:1〜7.5:1、例えば、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1または7:1のβ(1−3):β(1−6)比を有し得る。任意選択で、グルカンは、末端マンニトールサブユニット、例えば1,1−α−結合マンニトール残基を有するものであってもよい[9]。また、グルカンはマンノースサブユニットを含むものであってもよい。
【0034】
他の実施形態において、グルカンは、カードランに見られるように、β−1,3結合を排他的に、または主として有するものである。本発明者らは、このようなグルカンの免疫原性が、他の結合を含むグルカンよりも、特に、β−1,3結合を含み、β−1,6結合の割合がより高いグルカンよりも大きくなり得ることを見い出した。したがって、グルカンは、β−1,3−結合グルコース残基のみ(例えば、排他的に1,3結合を有する線状β−D−グルコピラノース)で構成されたものであってもよい。とはいえ、任意選択で、グルカンは、β−1,3−結合グルコース残基ではない単糖残基を含むものであってもよく、例えば、β−1,6−結合グルコース残基を含むものであってもよい。このような他の残基に対するβ−1,3−結合グルコース残基の比は、少なくとも8:1(例えば、≧9:1、≧10:1、≧11:1、≧12:1、≧13:1、≧14:1、≧15:1、≧16:1、≧17:1、≧18:1、≧19:1、≧20:1、≧25:1、≧30:1、≧35:1、≧40:1、≧45:1、≧50:1、≧75:1、≧100:1など)であるのがよい、および/またはβ−1,3結合のみによって他の残基に連結された少なくとも5つ(例えば、≧5、≧6、≧7、≧8、≧9、≧10、≧11、≧12、≧13、≧14、≧15、≧16、≧17、≧18、≧19、≧20、≧30、≧40、≧50、≧60など)の隣接する非末端残基の配列が1つ以上(例えば、≧1、≧2、≧3、≧4、≧5、≧6、≧7、≧8、≧9、≧10、≧11、≧12など)存在する。「非末端」により、該残基が、グルカンの遊離端に存在しているものではないことを意図する。一部の実施形態において、隣接する非末端残基は、担体分子、リンカーまたは他のスペーサー(後述)にカップリングされた残基を全く含まないものであってもよい。本発明者らは、β−1,3結合のみによって他の残基に連結された隣接する5つの非末端残基の存在により、例えば、C.albicansに対する防御的抗体応答がもたらされ得ることを見い出した。
【0035】
さらなる実施形態において、組成物は、2種類の異なるグルカンを含むものであり得、例えば、第1のグルカンは1.5:1〜7.5:1のβ(1−3):β(1−6)比を有するものであり、第2のグルカンはβ−1,3結合を排他的に、または主として有するものである。例えば、組成物は、ラミナリングルカンとカードラングルカンの両方を含み得る。
【0036】
β−グルカンが、β−1,3結合とβ−1,6結合の両方を所望の比および/または配列で含むものである場合、このグルカンは、天然に見られるものであってもよく(例えば、ラミナリン)、人工的に作製したものであってもよい。例えば、これは、全部または一部が化学合成によって作製されたものであり得る。β−1,3/β−1,6グルカンの化学合成のための方法は、例えば参考文献10〜20により当該分野において周知である。また、β−1,3結合とβ−1,6結合の両方を所望の比で含むβ−グルカンは、利用可能なグルカンから出発して、これを、β−1,6−グルカナーゼ(グルカンエンド−1,6−β−グルコシダーゼ、1,6−β−D−グルカングルカノヒドロラーゼなどとしても知られる;EC 3.2.1.75)、またはβ−1,3−グルカナーゼ(エキソ−1,3−グルカナーゼ(EC 3.2.1.58)など、またはエンド−1,3−グルカナーゼ(EC 3.2.1.39)で、所望の比および/または配列に達するまで処理することにより作製され得る。
【0037】
β−1,3−結合グルコースのみを含むグルカンが所望される場合、β−1,6−グルカナーゼにより最終的に純粋なβ−1,3グルカンが得られるため、β−1,6−グルカナーゼ処理を最後まで遂行してもよい。しかしながら、より簡便には、純粋なβ−1,3−グルカンを使用するのがよい。これは、例えば、(1→3)−β−D−グルカンシンターゼ(そのいくつかは既知であり、多くの生物体(例えば、細菌、酵母、植物および真菌)に由来のものである)を使用し、化学的および/または酵素的合成による合成によって作製され得る。β−1,3グルカンの化学合成のための方法は、例えば参考文献21〜24により当該分野で周知である。有用な代替的合成例として、天然のβ−1,3−グルカン、例えば、カードラン(以前はAlcaligenes faecalis var.myxogenesとして知られていたアグロバクテリウム属由来の線状β−1,3−グルカン;例えば、Sigma−Aldrichから市販(カタログC7821))またはパラミロン(ユーグレナ属由来のβ−1,3−グルカン)などが使用され得る。高レベルのβ−1,3−グルカンをもたらす生物体は当該技術分野で知られており、例えば、参考文献25および26のアグロバクテリウム属、または参考文献27のEuglena gracilisである。
【0038】
ラミナリンおよびカードランは、典型的には、天然で、例えば少なくとも100kDaの分子量を有する高分子量ポリマーとして見られる。これらは、多くの場合、水性媒体に不溶性である。したがって、これらは、その天然形態では免疫処置にあまり適していない。したがって、本発明では、より短いグルカン、例えば、60個以下のグルコース単糖単位(例えば、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40 39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4個)を含むオリゴ糖が使用され得る。2〜60の範囲の数のグルコース残基、例えば、10〜50個または20〜40個のグルコース単位を有するグルカンが使用され得る。25〜30個のグルコース残基を有するグルカンが特に有用である。好適なグルカンは、例えば、天然グルカンの酸加水分解によって、または例えば、グルカナーゼ(β−1,3−グルカナーゼなど)での酵素的消化によって形成され得る。11〜19個、例えば13〜19個、特に15個または17個のグルコース単糖単位を有するグルカンもまた有用である。特に、下記の構造(A)または(B):
【0039】
【化1】

(式中、n+2は、2〜60、例えば10〜50または2〜40の範囲である。好ましくは、n+2は、25〜30または11〜19、例えば13〜17の範囲である。本発明者らは、n+2=15が好適であることを見い出した)
【0040】
【化2】

(式中、nは、0〜9、例えば1〜7または2〜6の範囲である。好ましくは、nは、3〜4または1〜3の範囲である。本発明者らは、n=2が好適であることを見い出した)
を有するグルカンが、本発明における使用に具体的に想定される。
【0041】
グルカン(上記に規定のもの)は、好ましくは単一の分子種である。この実施形態において、グルカン分子はすべて、配列に関して同一である。したがって、グルカン分子はすべて、その構造的特性(例えば、分子量など)に関して同一である。典型的には、この形態のグルカンは、例えば、上記の方法を用いて化学合成によって得られる。例えば、参考文献22には、単一のβ−1,3結合種の合成が記載されている。あるいはまた、他の実施形態では、グルカンは、天然グルカンから、例えば、上記のようなL.digitata、アグロバクテリウム属またはユーグレナ属由来のグルカンから、必要とされる単一の分子種が得られるまでグルカンを精製して得られるものであり得る。このようにして精製された天然グルカンは市販されている。単一の分子種であるグルカンは、グルカン試料の多分散性(Mw/Mn)を測定することにより確認され得る。このパラメーターは、SEC−MALLSによって、例えば参考文献28に記載のようにして簡便に測定され得る。本発明のこの実施形態における使用に好適なグルカンは、約1の(例えば、1.01またはそれより小さい)多分散性を有するものである。
【0042】
天然グルカン(カードランなど)の溶解度は、イオン性基を導入することにより増大させることができる(例えば硫酸化によって、特にカードランのO−6に)。かかる修飾を本発明で使用してもよいが、グルカンの抗原性が改変されることがあり得るので、理想的には回避する。
【0043】
グルカンを天然供給源から単離する場合、夾雑物と一緒に単離されることがあり得る。例えば、本発明者らは、グルカンにフロロタンニンが混入していることがあり得ることを見い出した。これは、紫外・可視(UV/VIS)分光法によって確認され得る。この問題は、グルカンを褐藻または海藻から単離する場合、特によく見られる。例えば、Laminaria digitataから抽出された市販のラミナリンのUVスペクトルは、フロロタンニン夾雑物の存在に起因する吸収ピークを含む(図16)。同様に、Artic laminarialis、Saccorhiza dermatodeaおよびAlaria esculentaから抽出されたグルカンは、フロロタンニン夾雑物に起因する吸収ピークを含むUVスペクトルを有する。
【0044】
グルカン試料中のフロロタンニンの存在は、グルカンの生物学的特性に影響を及ぼし得る。したがって、特に、グルカンが医療または栄養学的用途のためのものである場合は、フロロタンニンを試料から除去することが望ましくあり得る。
【0045】
別の態様において、本発明は、フロロタンニンをグルカンから分離する工程を含む、グルカンの精製プロセスを提供する。グルカンは上記の任意のグルカンであり得る。本発明のこのプロセスにより、フロロタンニン夾雑物を減少させたグルカンが得られる。したがって、別の態様において、本発明はまた、フロロタンニン夾雑物を減少させたグルカンを提供する。本発明のグルカンは、本発明の該プロセスによって取得されているか、または取得可能であり得る。また、本発明の該プロセスは、他の夾雑物、例えば、グルカン中に存在し得る他の有機分子をグルカンから分離するためにも使用され得る。
【0046】
フロロタンニンをグルカンから分離する工程は、グルカンを使用のために処理する前に行なわれ得る。例えば、この工程は、担体タンパク質とのグルカンの結合体化(後述)前に行なわれ得る。特に、この工程は、結合体化前にグルカンを活性化または官能性付与する前に行なわれ得る。別の例では、この工程は、グルカンを栄養製品に加工する前に行なわれる。
【0047】
本発明のこのような態様のグルカンは、フロロタンニン夾雑物を減少させた。典型的には、フロロタンニン夾雑物はUV/VIS分光法によって測定される。約270nmにおけるUV吸光度ピークは、一般的にフロロタンニン夾雑物を示す。このフロロタンニン夾雑物が存在すると、本発明の方法では、約270nmにおける吸光度が小さくなる。同様に、グルカンは、約270nmにおける吸光度が小さくなる。好ましくは、グルカンは、270nmにおけるUV吸光度がほとんど示されない。これは、約270nmにおいて吸収ピークが示される先行技術のグルカンと比べて、特別な利点である。例えば、グルカンは水中1mg/mlで、270nmにおいて0.17未満のUV吸光度を有する。<0.15、<0.10、さらには<0.05の吸光度が好ましい。グルカンのUV吸光度スペクトルは、他の様式でも特徴付けられ得る。例えば、220nm〜300nmのUVスペクトルは、270nm付近にショルダーもピークも示さない;250nm〜275nmのUVスペクトルは増大しない;および/または250nm〜275nmのUVスペクトルは、最大点も変曲点も有しない。また、280〜320領域(例えば、約310nm)におけるUV吸光度ピークもフロロタンニン夾雑物を示すものであり得る([29])。このフロロタンニン夾雑物が存在すると、本発明の方法では、280〜320領域における吸光度が小さくなる。同様に、グルカンは、280〜320領域における吸光度が小さくなる。好ましくは、グルカンは、この領域におけるUV吸光度がほとんど示されない。例えば、グルカンは水中1mg/mlで、310nmにおいて0.10未満のUV吸光度を有する。
【0048】
UV/VIS分光法を行なう任意の適当な方法を用いて、グルカンのフロロタンニン夾雑物が測定され得る。例えば、本発明者らは、適当なUV/VISスペクトルが、Perkin−Elmer LAMBDATM25分光測光器を使用し、室温および室内圧で、水中1mg/mlのグルカンを内包する1cmの光路長を有する石英セルを用いて得られ得ることを見い出した。当業者であれば、UV/VISスペクトルを得るための他の適当な方法および条件を選択することができよう。
【0049】
フロロタンニンの他の測定方法は、当該技術分野で知られている。例えば、参考文献30では、フロロタンニンの検出および定量に高速液体クロマトグラフィーが使用された。当業者であれば、本発明におけるフロロタンニン夾雑物の測定に適した方法を選択することができよう。
【0050】
本発明のこの態様のプロセスは、さらに、グルカンの残留フロロタンニン夾雑物を測定する後続の工程を含んでいてもよい。このようにして、グルカンのフロロタンニン夾雑物が減少したことが確認され得る。フロロタンニン夾雑物は、任意の適当な方法、例えば、上記の方法によって測定され得る。
【0051】
フロロタンニンはグルカンから、任意の適当な方法によって分離され得る。例えば、濾過法が使用され得る。当業者であれば、フロロタンニンをグルカンから分離するのに適した特性を有するフィルタを選択することができよう。典型的には、フロロタンニンをグルカンから分離するために使用されるフィルタは、デプスフィルタである。デプスフィルタは当業者に周知である。好適なデプスフィルタとしてはCunoTMSPフィルタが挙げられ、これは、無機フィルタ助剤、セルロースおよびフィルタマトリックスに正の電荷を付与する樹脂で構成されたフィルタ媒体を有するものである。例えば、本発明者らは、CunoTM10SPフィルタが特に有効であることを見い出した。しかしながら、他のデプスフィルタおよび他の濾過方法もまた使用され得る。例えば、ゲル濾過が使用され得る。また、炭素系フィルタも好適であり得る。炭素系フィルタは、当業者に周知である。このフィルタは、典型的には、試料精製のためのフィルタとしての機能を果たすゆるい顆粒状活性炭素床(loose granular activated carbon bed)または圧縮型もしくは押出型活性炭素ブロック(activated carbon block)で構成されている。あるいはまた、クロマトグラフィー手順を用いてフロロタンニンをグルカンから分離してもよい。例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーが使用され得、この場合、フロロタンニンまたはグルカンが樹脂上に保持される。
【0052】
グルカンからのフロロタンニンの分離は、1回(もしくは2、3、4、5、6、7、8、9、10回など)またはそれ以上の下位工程(sub−step)で行なわれ得る。例えば、本発明者らは、デプスフィルタ(例えば、CunoTM10SPフィルタ)を用いた3回の濾過下位工程がフロロタンニン夾雑物を減少させるのに特に有効であることを見い出した。
【0053】
当業者は、必要とされるフロロタンニン夾雑物の低減がもたらされる他の分離手法および条件を特定することができよう。例えば、分離手法および条件は、試験分離工程を行ない、次いで、上記の方法によって残留フロロタンニン夾雑物を測定することにより最適化され得る。
【0054】
結合体
純粋なβ−グルカンは免疫原として不充分である。したがって、防御的有効性のため、本発明で使用されるβ−グルカンは、好ましくは、担体タンパク質に結合体化させる。炭水化物抗原の免疫原性を高めるための担体タンパク質との結合体化の使用は、よく知られており[例えば、参考文献31〜39などに概説]、特に、小児科用ワクチンに使用される[40]。
【0055】
本発明は、(a)(i)上記規定のグルカンと(ii)担体分子の結合体;ならびに(b)上記規定のアジュバントを含む組成物を提供する。
【0056】
担体分子はグルカンに、直接またはリンカーを介して共有結合により結合体化され得る。任意の適当な結合体化反応が使用され得、必要に応じて任意の適当なリンカーが使用され得る。
【0057】
担体に対するグルカン抗原の結合は、好ましくは、例えば、担体タンパク質のリジン残基の側鎖内、またはアルギニン残基の側鎖内の−NH基によるものである。グルカンが遊離アルデヒド基を有する場合、これは該担体内のアミンと反応し、還元的アミノ化によって結合体が形成され得る。また、担体に対する結合は、例えば、システイン残基の側鎖内の−SH基によるものであってもよい。あるいはまた、グルカン抗原は担体に、リンカー分子を介して結合され得る。
【0058】
グルカンは、典型的には、結合体化前に活性化または官能性付与させる。活性化は、例えば、シアニル化試薬(CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート[41,42など])など)を伴うものであり得る。他の適当な手法は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−NHS、EDC、TSTU(参考文献43の序論も参照のこと)を使用するものである。
【0059】
タンパク質との直接結合は、例えば、参考文献44および45に記載のような、グルカンの酸化、続いてタンパク質の還元的アミノ化を含み得る。
【0060】
リンカー基を介した結合は、任意の既知の手順(例えば、参考文献46および47に記載の手順)を用いて行なわれ得る。典型的には、リンカーは、グルカンのアノマー炭素を介して結合される。好ましい型の結合はアジピン酸リンカーであり、これは、遊離−NH基(例えば、アミノ化によってグルカンに導入)にアジピン酸をカップリングさせ(例えば、ジイミド活性化を使用)、次いで、得られた糖−アジピン酸中間体にタンパク質をカップリングさせることにより形成され得る[35,48,49]。同様に好ましい型の結合はグルタル酸リンカーであり、これは、遊離−NH基にグルタル酸を同様にしてカップリングさせることにより形成され得る。また、アジピン酸(Adipid)およびグルタル酸リンカーは、グルカンとの直接カップリングによって、すなわち、事前に遊離基(例えば、遊離−NH基)をグルカンに導入せずに、続けて、得られた糖−アジピン酸/グルタル酸中間体にタンパク質をカップリングさせることによっても形成され得る。別の好ましい型の結合はカルボニルリンカーであり、これは、修飾グルカンの遊離ヒドロキシル基とCDIとの反応[50,51]後、タンパク質との反応によってカルバメート結合を形成することによっても形成され得る。他のリンカーとしては、β−プロピオンアミド[52]、ニトロフェニルエチルアミン[53]、ハロゲン化ハロアシル[54]、グリコシド結合[55]、6−アミノカプロン酸[56]、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP)[57]、アジピン酸ジヒドラジド ADH[58]、C〜C12部分[59]などが挙げられる。また、カルボジイミド縮合を使用することもできる[60]。
【0061】
二官能性リンカーを使用し、グルカン内のアミン基(例えば、アミノ化によってグルカンに導入)にカップリングさせるための第1の基と、担体にカップリングさせる(典型的には、担体内のアミンにカップリングさせる)ための第2の基を提供してもよい。あるいはまた、第1の基は、グルカンに直接(すなわち、事前に基(例えば、アミン基)をグルカンに導入せずに)カップリングできるものである。
【0062】
一部の実施形態において、二官能性リンカー内の第1の基は、このように、グルカン上のアミン基(−NH)と反応できるものである。この反応は、典型的にはアミン水素の求電子性置換を伴う。他の実施形態において、二官能性リンカー内の第1の基は、グルカンと直接反応できるものである。どちらの組の実施形態も、二官能性リンカー内の第2の基は、典型的には、担体上のアミン基と反応できるものである。この場合も、この反応は、典型的にはアミンの求電子性置換を伴う。
【0063】
グルカンと担体の反応がともにアミンを伴う場合、二官能性リンカーを使用することが好ましい。例えば、式X−L−Xであって、式中、2つのX基は、互いに同じであり、アミンと反応することができ、Lは、リンカー内の連結部分であるホモ二官能性リンカーが使用され得る。同様に、式X−L−Xであって、式中、2つのX基は異なっており、アミンと反応することができ、Lは、リンカー内の連結部分であるヘテロ二官能性リンカーが使用され得る。好ましいX基はN−オキシスクシンイミドである。Lは、好ましくは、式L’−L−L’(式中L’はカルボニルである)を有するものである。好ましいL基は、1〜10個の炭素原子(例えば、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10)を有する直鎖アルキル、例えば、−(CH−または−(CHである。
【0064】
同様に、グルカンとの反応が直接カップリングを伴い、担体との反応がアミンを伴う場合も、二官能性リンカーを使用することが好ましい。例えば、式X−L−Xであって、式中、2つのX基は、互いに同じであり、グルカン/アミンと反応することができ、Lは、リンカー内の連結部分であるホモ二官能性リンカーが使用され得る。同様に、式X−L−Xであって、式中、2つのX基は異なっており、一方はグルカンと反応でき、他方はアミンとでき、Lは、リンカー内の連結部分であるヘテロ二官能性リンカーが使用され得る。好ましいX基はN−オキシスクシンイミドである。Lは、好ましくは、式L’−L−L’(式中L’はカルボニルである)を有するものである。好ましいL基は、1〜10個の炭素原子(例えば、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10)を有する直鎖アルキル、例えば、−(CH−または−(CH−である。
【0065】
先の2つの段落で記載した二官能性リンカーにおける使用のための他のX基は、HO−L−OHと結合させるとエステルを形成するもの、例えば、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、およびスルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドである。
【0066】
本発明での使用のためのさらなる二官能性リンカーとしては、アクリロイルハロゲン化物(例えば、塩化物)およびハロアシルハライドが挙げられる。
【0067】
リンカーは、一般的に、グルカンとのカップリング中に、グルカンに対してモル過剰で添加する。
【0068】
好ましい担体タンパク質は、細菌毒素(ジフテリアあるいは破傷風毒素など)もしくはトキソイドまたはその変異体である。これらは、結合体ワクチンに一般的に使用されている。CRM197ジフテリア毒素変異体が特に好ましい[61]。
【0069】
他の適当な担体タンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質複合体[62]、合成ペプチド[63,64]、熱ショックタンパク質[65,66]、百日咳タンパク質[67,68]、サイトカイン[69]、リンホカイン[69]、ホルモン[69]、増殖因子[69]、種々の病原体由来の抗原由来の多数のヒトCD4 T細胞エピトープを含む人工タンパク質[70](N19[71]など)、H.influenzae由来のプロテインD[72〜74]、ニューモリシン[75]またはその非毒性誘導体[76]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[77]、鉄分取込みタンパク質[78]、C.difficile由来の毒素AまたはB[79]、組換え緑膿菌エキソプロテインA(rEPA)[80]などが挙げられる。担体タンパク質の混合物を使用することも可能である。単一の担体タンパク質が多数の異なるグルカンを担持していてもよい[81]。
【0070】
結合体は、過剰の担体(w/w)または過剰のグルカン(w/w)を有するもの、例えば、1:5〜5:1の比で有し得る。過剰の担体タンパク質を有する結合体が典型的であり、例えば、0.2:1〜0.9:1の範囲であるか、または等重量である。結合体には、少量の遊離(すなわち、結合体化されていない)担体が含まれていてもよい。所与の担体タンパク質が本発明の組成物中に、遊離形態と結合体化形態の両方で存在する場合、結合体化されていない形態は、好ましくは、組成物全体の担体タンパク質の総量の5%以下であり、より好ましくは2%未満(重量基準)で存在する。
【0071】
結合体が本発明の免疫原性組成物のグルカン成分を構成する場合、該組成物に、免疫原として遊離担体タンパク質も含まれることがあり得る[82]。
【0072】
結合体化後、遊離グルカンと結合体化グルカンを分離してもよい。多くの適当な方法があり、例えば、疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル限外濾過(tangential ultrafiltration)、ダイアフィルトレーション(diafiltration)などがある[参考文献83,84などもまた参照のこと]。タンジェンシャルフロー限外濾過が好ましい。
【0073】
結合体内のグルカン部分は、好ましくは、上記規定の低分子量グルカンである。オリゴ糖は、典型的には、結合体化前にサイズ調整する。
【0074】
タンパク質−グルカン結合体は、好ましくは、水および/または生理学的緩衝液に可溶性である。
【0075】
本発明者らは、グルカンと担体タンパク質間にスペーサーが存在させると、免疫原性が改善され得ることを見い出した。これに関連して、「スペーサー」は、単一の共有結合よりも長い部分である。このスペーサーは、上記のようなリンカーであってもよい。あるいはまた、これは、グルカンとリンカーの間に共有結合された部分であってもよい。典型的には、該部分はグルカンに、リンカーまたは担体とのカップリング前に共有結合させる。例えば、スペーサーは、1〜10個の炭素原子(例えば、C、C、C3、C、C、C、C、C、C、C10)、典型的には1〜6個の炭素原子(例えば、C、C、C、C、C、C)を有する直鎖アルキルを含むY部分である。本発明者らは、6個の炭素原子を有する直鎖アルキル(すなわち、−(CH)が特に好適であり、短鎖(例えば、−(CH)のものよりも大きな免疫原性がもたらされ得ることを見い出した。典型的には、Yはグルカンのアノマー炭素に、通常、−O-結合を介して結合される。しかしながら、Yは、グルカンの他の部分に連結されていてもよい、および/または他の結合を介して連結されていてもよい。Yの他端は、任意の適当な結合によってリンカーに結合させる。典型的には、Yは、上記のような二官能性リンカーに対する結合が容易になるようにアミン基で終結させたものである。したがって、このような実施形態では、Yはリンカーに−NH−結合によって結合される。したがって、下記の構造:
【0076】
【化3】

(式中、n+2は、2〜60、例えば10〜50または2〜40の範囲である。好ましくは、n+2は、25〜30または11〜19、例えば13〜17の範囲である。本発明者らは、n+2=15が好適であることを見い出した。Yは、上記のとおりである。「LINKER」は、上記のような任意選択のリンカーであり、「CARRIER」は、上記のような担体分子である)
を有する結合体が、本発明における使用に具体的に想定される。
【0077】
本発明における使用に具体的に想定される別の結合体は、下記の構造:
【0078】
【化4】

(式中、nは、0〜9、例えば1〜7または2〜6の範囲である。好ましくは、nは、3〜4または1〜3の範囲である。本発明者らは、n=2が好適であることを見い出した。Yは、上記のとおりである。「LINKER」は、上記のような任意選択のリンカーであり、「CARRIER」は、上記のような担体分子である)
を有するものである。
【0079】
一態様において、本発明は、結合体化工程が、>10mMのリン酸塩を含むリン酸緩衝液中で行なわれる、担体タンパク質に結合体化させたグルカンの作製方法;およびこの方法によって得られる結合体を提供する。本発明者らは、リン酸ナトリウムが、該緩衝液のリン酸塩の好適な形態であることを見い出した。緩衝液のpHは、7.0〜7.5、特に7.2に調整され得る。結合体化工程は、典型的には、20〜200mM、例えば50〜150mMのリン酸塩を含むリン酸緩衝液中で行なわれる。特に、本発明者らは、90〜110mM、例えば約100mMのリン酸塩を含むリン酸緩衝液が好適であることを見い出した。結合体化工程は、通常、室温で行なわれる。同様に、結合体化工程は、通常、室内圧で行なわれる。典型的には、グルカンを上記のようなリンカーに、結合体化工程前に結合させる。特に、グルカンを上記のような二官能性リンカーに結合させるのがよい。リンカーの遊離端は、担体タンパク質との結合体化を容易にする基を含むものであってもよい。例えば、本発明者らは、リンカーの遊離端にエステル基、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基を含めるのがよいことを見い出した。
【0080】
アジュバント
β−グルカンそれ自体がアジュバントであると報告されているが、免疫原性組成物は、この組成物を受ける患者において誘起される免疫応答(体液性および/または細胞性)を増強する機能を果たし得る別のアジュバントを含んでいてもよい。本発明で使用され得るアジュバントとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0081】
・無機質含有組成物、例えば、カルシウム塩およびアルミニウム塩(またはその混合物)。カルシウム塩としては、リン酸カルシウム(例えば、参考文献85に開示された「CAP」粒子)が挙げられる。アルミニウム塩としては、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられ、該塩には、任意の適当な形態(例えば、ゲル、結晶性、非晶質など)が採用される。このような塩への吸着が好ましい。また、無機質含有組成物は、金属塩の粒子として製剤化され得る[86]。水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして知られるアジュバントが使用され得る。これらの名称は慣用的であるが、便宜上のためだけに使用され、存在している実際の化合物の正確な記述でもない(例えば、参考文献170の第9章参照)。本発明では、アジュバントとして一般に使用されている任意の「水酸化物」または「リン酸塩」アジュバントが使用され得る。「水酸化アルミニウム」として知られているアジュバントは、典型的にはアルミニウムのオキシ水酸化物塩であり、これは、通常、少なくとも部分的に結晶性である。「リン酸アルミニウム」として知られているアジュバントは、典型的にはヒドロキシリン酸アルミニウムであり、多くの場合、少量の硫酸塩も含まれている(すなわち、ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩)。このアジュバントは、沈降によって得られ得、沈降時の反応条件および濃度は、該塩中のヒドロキシルのリン酸塩の置換の程度に影響を及ぼす。本発明では、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムの混合物を使用してもよい。この場合、水酸化アルミニウムよりもリン酸アルミニウムを多く、例えば、少なくとも2:1、例えば≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などの重量比で存在させるのがよい。患者に投与するための組成物中のAl+++の濃度は、好ましくは、10mg/ml未満、例えば、≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなどである。好ましい範囲は、0.3〜1mg/mlである。最大0.85mg/用量が好ましい。
【0082】
・サポニン[参考文献170の第22章]、これは、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根、さらには花にも見られるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群である。Quillaia saponaria Molina樹木の樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。また、サポニンは、Smilax ornata(sarsaprilla)、Gypsophilla paniculata(brides veil)、およびSaponaria officianalis(soap root)から商業的に入手することもできる。サポニンアジュバント製剤としては、QS21などの精製製剤、ならびにISCOMなどの脂質製剤が挙げられる。QS21は、StimulonTMとして市販されている。サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製されている。このような手法が使用された具体的な精製画分が同定されており、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の作製方法は、参考文献87に開示されている。サポニン製剤には、ステロール(コレステロールなど)が含まれることがあり得る[88]。サポニンとコレステロールの組合せは、免疫刺激複合体(ISCOM)と称される特殊な粒子を形成するために使用され得る[参考文献170の第23章]。また、ISCOMは、典型的にはリン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどを含むものである。任意の既知のサポニンがISCOMに使用され得る。好ましくは、ISCOMは、QuilA、QHAおよびQHCの1種類以上を含むものである。ISCOMは、参考文献88〜90にさらに説明されている。任意選択で、ISCOMSは、さらなる洗剤を含まないものであり得る[91]。サポニン系アジュバントの開発の概説は、参考文献92と93を見るとよい。
【0083】
・細菌ADP−リボシル化毒素(例えば、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン「LT」、コレラ毒素「CT」、または百日咳毒素「PT」)ならびに、特に、その無毒化誘導体(参考文献3参照)、例えば、LT−K63およびLT−R72[94]またはCT−E29H[95]として知られている変異体毒素など。粘膜アジュバントとしての無毒化ADP−リボシル化毒素の使用は、参考文献96に記載されており、非経口アジュバントとしての使用は、参考文献97に記載されている。
【0084】
・生体接着剤および粘膜接着剤、例えば、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア[98]またはキトサンおよびその誘導体[99]など。
【0085】
・生分解性で非毒性である物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)で形成されたミクロ粒子(すなわち、約100nm〜約150μmの直径、より好ましくは約200nm〜約30μmの直径、または約500nm〜約10μmの直径の粒子)。ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が好ましく、任意選択で処理して、負の電荷を有する表面(例えば、SDSで)または正の電荷を有する表面(例えば、CTABなどのカチオン性洗剤)を有するようにしたもの。
【0086】
・リポソーム(参考文献170の第13章および14章)。アジュバントとしての使用に適したリポソーム製剤の例は、参考文献100−102に記載されている。
【0087】
・ムラミルペプチド、例えば、N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(「thr−MDP」)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソglu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(「DTP−DPP」、または「TheramideTM」)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(「MTP−PE」)など。
【0088】
・ポリオキシドニウムポリマー[103,104]または他のN−酸化型ポリエチレン−ピペラジン誘導体。
【0089】
・メチルイノシン5’−モノリン酸塩(「MIMP」)[105]。
【0090】
・ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物[106]、例えば、式:
【0091】
【化5】

(式中、Rは、水素、直鎖または分枝状の非置換または置換飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含む群から選択される)
を有するもの、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは誘導体。例としては、限定されないが、カスアリン、カスアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリンなどが挙げられる。
【0092】
・CDldリガンド、例えば、α−グリコシルセラミド[107〜114](例えば、α−ガラクトシルセラミド)、フィトスフィンゴシン含有α−グリコシルセラミド、OCH、KRN7000[(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−1,3,4−オクタデカントリオール]、CRONY−101、3”−O−スルホ−ガラクトシルセラミドなど。
【0093】
・γイヌリン[115]またはその誘導体、例えば、アルガムリンなど。
【0094】
・水中油型乳剤。種々のかかる乳剤が知られており、典型的には、少なくとも1種類の油と、少なくとも1種類の界面活性剤を含むものであり、油類(1種類または複数種)および界面活性剤(1種類または複数種)は生分解性(代謝性)および生体適合性である。乳剤中の油滴は、一般的には5μm未満の直径であるが、さらにはサブミクロン直径を有するものであってもよい。このような小サイズは、マイクロフルイダイザーにより得られ、安定な乳剤が得られる。濾過滅菌に供することができるため、220nm未満のサイズを有する液滴が好ましい。
【0095】
・免疫刺激性オリゴヌクレオチド、例えば、CpGモチーフ(リン酸結合によってグアノシン残基に連結された非メチル化シトシン残基を含むジヌクレオチド配列)、またはCpIモチーフ(イノシンに連結されたシトシンを含むジヌクレオチド配列)、または二本鎖RNA、またはパリンドローム配列を含むオリゴヌクレオチド、またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチドを含むものなど。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド修飾/類似体(ホスホロチオエート修飾)を含むものであってもよく、二本鎖(RNAを除く)であっても、単鎖であってもよい。参考文献116、117および118には、可能な類似体置換(例えば、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンでのグアノシンの置換)が開示されている。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献119〜124にさらに論考されている。CpG配列はTLR9に対するものである(モチーフGTCGTTまたはTTCGTTなど)[125]。CpG配列は、Th1免疫応答の誘発に特異的であり得(CpG−A ODN(オリゴデオキシヌクレオチド)、あるいは、B細胞応答の誘発に対してより特異的であり得る(CpG−B ODNなど)。CpG−AおよびCpG−B ODNは、参考文献126〜128に論考されている。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体の認識に利用可能となるように構築される。任意選択で、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列をその3’末端で結合させ「イムノマー」を形成してもよい。例えば、参考文献125および129〜131を参照のこと。有用なCpGアジュバントはCpG7909であり、ProMuneTM(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)としても知られている。他には、CpG 1826がある。CpG配列の使用の代替法として、あるいはさらに、TpG配列が使用され得[132]、このオリゴヌクレオチドには、非メチル化CpGモチーフが含まれていないものであり得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ピリミジンリッチであり得る。例えば、これは、1つより多くの連続チミジンヌクレオチドを含み得る(例えば、参考文献132に開示されたTTTT)、および/または>25%のチミジン(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)のヌクレオチド組成を有し得る。例えば、1つより多くの連続シトシンヌクレオチドを含み得る(例えば、参考文献132に開示されたCCCC)、および/または>25%のシトシン(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)のヌクレオチド組成を有し得る。このようなオリゴヌクレオチドは、非メチル化CpGモチーフが含まれていないものであり得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、典型的には少なくとも20個のヌクレオチドを含む。これは、100個より少ないヌクレオチドを含むものであるのがよい。
【0096】
特に有用な免疫刺激性オリゴヌクレオチド系アジュバントは、IC31TM[133]として知られているものである。したがって、本発明で使用されるアジュバントは、(i)少なくとも1つ(好ましくは多数の)CpIモチーフを含むオリゴヌクレオチド(例えば、15〜40ヌクレオチド)と、(ii)少なくとも1つ(好ましくは多数の)Lys−Arg−Lysトリペプチド配列を含むポリカチオンポリマー、例えばオリゴペプチド(例えば、5〜20アミノ酸)の混合物を含み得る。オリゴヌクレオチドは、26mer配列5’−(IC)13−3’(配列番号1)を含むデオキシヌクレオチドであり得る。ポリカチオンポリマーは、11merアミノ酸配列KLKLLLLLKLK(配列番号2)を含むペプチドであり得る。
【0097】
・3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(「3dMPL」、「MPLTM」としても知られている)[134〜137]。水性条件では、3dMPLは、異なるサイズ(例えば、<150nmまたは>500nmの直径)を有するミセル状の凝集物または粒子を形成し得る。これらのいずれかまたは両方が本発明で使用され得、常套的なアッセイによって、良い方の粒子が選択され得る。より小さい粒子(例えば、3dMPLの透明な水性懸濁液が得られるのに充分に小さい)の方が、活性が優れるため、本発明による使用に好ましい[138]。好ましい粒子は220nm未満、より好ましくは200nm未満または150nm未満または120nm未満の平均直径を有するものであり、さらには、100nm未満の平均直径を有するものであってもよい。しかしながら、ほとんどの場合、平均直径は50nmより小さくない。
【0098】
・イミダゾキノリン化合物、例えば、イミキモド(「R−837」)[139,140]、レシキモド(「R−848」)[141]など、およびその類似体;ならびにその塩(例えば、塩酸塩)。免疫刺激性イミダゾキノリンに関するさらなる詳細は、参考文献142〜146を見るとよい。
【0099】
・チオセミカルバゾン化合物(参考文献147に開示されたものなど)。また、活性化合物の製剤化、製造およびスクリーニングのための方法も参考文献147に記載されている。チオセミカルバゾンは、TNF−αなどのサイトカイン生成のためのヒト末梢血単核球の刺激に特に有効である。
【0100】
・トリプタントリン化合物(参考文献148に開示されたものなど)。また、活性化合物の製剤化、製造およびスクリーニングのための方法も参考文献148に記載されている。チオセミカルバゾンは、TNF−αなどのサイトカイン生成のためのヒト末梢血単核球の刺激に特に有効である。
【0101】
・ヌクレオシド類似体、例えば:(a)イサトラビン(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0102】
【化6】

およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参考文献149〜151に開示された化合物ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)[152]など。
【0103】
・参考文献153に開示された化合物、例えば:アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドライソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物[154,155]、ヒドラフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソオキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン化合物、ピロール化合物[156]、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラザロピリミジン化合物、およびベンズアゾール化合物[157]。
【0104】
・アミノアルキルグルコサミニドリン酸塩誘導体(RC−529[158,159]など)。
【0105】
・ホスファゼン(例えば、参考文献160および161に記載のポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」)など)
・置換型尿素あるいは式I、IIもしくはIIIの化合物、またはその塩:
【0106】
【化7】

(参考文献162に規定、「ER803058」、「ER803732」、「ER804053」、ER804058)、「ER804059」、「ER804442」、「ER804680」、「ER804764」、ER803022または「ER804057」など、例えば:
【0107】
【化8】

・OM−174などの大腸菌由来のリピドAの誘導体(参考文献163および164に記載)。
【0108】
・リン酸基含有非環式主鎖に連結された脂質を含む化合物(TLR4アンタゴニストE5564[165,166]:
【0109】
【化9】

など)。
【0110】
このようなおよび他のアジュバント活性物質は、参考文献170および171に、より詳細に論考されている。
【0111】
本発明で有用な具体的な水中油型乳剤アジュバントとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0112】
・スクアレン、Tween80およびSpan85のサブミクロン乳剤。この乳剤の組成は、容量基準で、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.5%のSpan85であり得る。重量の観点からは、これらの比は、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80および0.48%のSpan85となる。このアジュバントは、「MF59」として知られており[167〜169]、参考文献170の第10章および参考文献171の第12章に、より詳細に記載されている。MF59乳剤は、好都合には、クエン酸イオンを含むもの(例えば、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液)である。
【0113】
・スクアレン、トコフェロールおよびTween80の乳剤。この乳剤は、リン酸緩衝生理食塩水を含み得る。また、これは、Span85(例えば、1%で)および/またはレシチンを含み得る。この乳剤は、2〜10%のスクアレン、2〜10%のトコフェロールおよび0.3〜3%のTween80を有し得、スクアレン:トコフェロールの重量比は、より安定な乳剤が得られるため、好ましくは≦1である。スクアレンおよびTween80は、約5:2の容量比で存在し得る。かかる乳剤の一例は、Tween80をPBSに溶解させて2%溶液を得、次いで、90mlのこの溶液を(5gのDL−α−トコフェロールと5mlのスクアレン)の混合物と混合し、次いでこの混合物を微小流動化することにより作製され得る。得られる乳剤は、例えば、100〜250nm、好ましくは約180nmの平均直径のサブミクロン油滴を有し得る。
【0114】
・スクアレン、トコフェロールおよびTriton洗剤(例えば、Triton X−100)の乳剤。この乳剤は、3d−MPL(下記参照)もまた含み得る。この乳剤は、リン酸緩衝液を含み得る。
【0115】
・ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton洗剤(例えば、Triton X−100)およびトコフェロール(例えば、α−トコフェロールスクシネート)を含む乳剤。この乳剤は、これらの3種類の成分を、約75:11:10の質量比で含むもの(例えば、750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTriton X−100および100μg/mlのα−トコフェロールスクシネート)を含み得、これらの濃度は、抗原由来のこれらの成分の任意の寄与を含むはずである。また、この乳剤は、スクアレンを含み得る。また、この乳剤は、3d−MPL(下記参照)も含み得る。水相には、リン酸緩衝液が含まれ得る。
【0116】
・スクアラン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「PluronicTML121」)の乳剤。この乳剤は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で製剤化され得る。この乳剤は、ムラミルジペプチドのための有用な送達ビヒクルであり、トレオニル−MDPとともに「SAF−1」アジュバント[172](0.05〜1%のThr−MDP、5%のスクアラン、2.5%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)に使用されている。また、「AF」アジュバント[173](5%のスクアラン、1.25%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)の場合のように、Thr−MDPなしで使用することもできる。微小流動化が好ましい。
【0117】
・0.5〜50%の油類、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン系界面活性剤を有する乳剤。参考文献174に記載のように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロン液滴のサイズが好都合である。
【0118】
・非代謝性の油類(軽鉱油など)と、少なくとも1種類の界面活性剤(レシチン、Tween80またはSpan80など)とのサブミクロン水中油型乳剤。QuilAサポニン、コレステロール、サポニン脂肪親和性結合体(例えば、GPI−0100(参考文献175に記載、グルクロン酸のカルボキシル基を介したデスアシルサポニンへの脂肪族アミンの付加によって作製))、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドおよび/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンなどの添加剤を含めてもよい。
【0119】
・サポニン(例えば、QuilAまたはQS21)とステロール(例えば、コレステロール)がらせん状ミセルとして会合している乳剤[176]。
【0120】
好ましい乳剤アジュバントは、≦lμm、例えば、≦750nm、≦500nm、≦400nm、≦300nm、≦250nm、≦220nm、≦200nmまたはより小さい平均液滴サイズを有するものである。このような液滴サイズは、微小流動化などの手法によって簡便に得られ得る。
【0121】
一部の実施形態において、特に、β−グルカンがラミナリン型である場合、該組成物は、好ましくは、アジュバントとして完全フロイントアジュバントまたは野生型コレラ毒素を加えたものではない。
【0122】
組成物中の抗原およびアジュバントは、典型的には混合された状態である。
【0123】
アルミニウム塩が結合体のアジュバントとして使用される場合、組成物中の結合体の少なくとも50質量%、例えば、>60%、>70%、>80%、>90%、>95%、>98%、>99%または100%が塩に吸着されることが好ましい。>99%の吸着は、水酸化物塩を用いて容易に達成され得る。
【0124】
該組成物は、2種類以上の前記アジュバントを含むものであってもよい。実施例に示されるように、かかる併用により、グルカン結合体によって誘起される免疫応答が改善され得る。個々のアジュバントは、Th1応答またはTh2応答のいずれかを優先的に誘導するものであり得、有用なアジュバントの組合せは、Th2アジュバント(例えば、水中油型乳剤またはアルミニウム塩)と、Th1アジュバント(例えば、3dMPL、サポニン、または免疫刺激性オリゴヌクレオチド)の両方を含み得る。例えば、該組成物は、好都合には:アルミニウム塩と免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドの両方;アルミニウム塩と式I、IIまたはIIIの化合物の両方;水中油型乳剤と式I、IIまたはIIIの化合物の両方;水中油型乳剤と免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドのの両方;アルミニウム塩とα−グリコシルセラミドの両方;水中油型乳剤とα−グリコシルセラミドの両方;水中油型乳剤と3dMPLの両方;水中油型乳剤とサポニンの両方;などを含み得る。
【0125】
医薬組成物
本発明は、(a)本発明のグルカンまたは結合体、(b)上記のようなアジュバント、および(c)薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。かかる担体の充分な論考は、参考文献177において入手可能である。
【0126】
微生物感染症は、身体の種々の領域を侵すため、本発明の組成物は種々の形態で調製され得る。例えば、該組成物は注射用剤として、液状の液剤または懸濁剤のいずれかとして調製され得る。また、液状ビヒクル中の液剤または懸濁剤に適した注射前の固形形態を調製してもよい。該組成物は、局所投与のためには、例えば、軟膏、クリーム剤または粉末剤として調製され得る。該組成物は、経口投与のためには、例えば、錠剤もしくはカプセル剤として、またはシロップ剤(任意選択でフレーバーを添加)として調製され得る。該組成物は、肺内投与のためには、例えば、微粉末またはスプレーを使用し、吸入剤として調製され得る。該組成物は、坐剤または膣坐薬として調製され得る。該組成物は、経鼻、経耳または経眼投与のためには、例えば、滴剤、スプレー剤または粉末剤として調製され得る[例えば、178]。
【0127】
医薬組成物は、好ましくは滅菌されたものである。好ましくは発熱物質を含まない。
【0128】
該組成物は、好ましくは、例えばpH6〜pH8、一般的にはpH7前後に緩衝化したものである。該組成物は、水性であってもよく、凍結乾燥させたものであってもよい。本発明者らは、本発明の医薬組成物の液状製剤は不安定であり得ることを見い出した(図17および18)。したがって、凍結乾燥製剤が好ましかろう。他方において、本発明者らはまた、水中油型乳剤アジュバント、特にMF59によって医薬組成物の液状製剤の安定性が改善され得ることを見い出した(図17および18)。したがって、医薬組成物を液状製剤として調製する場合、アジュバントに水中油型乳剤を含めることが好ましい。
【0129】
また、本発明は、本発明の医薬組成物を内包する送達デバイスを提供する。デバイスは、例えば、シリンジまたは吸入器であり得る。
【0130】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、免疫学的有効量のグルカン免疫原を含む免疫原性組成物である。「免疫学的有効量」により、単回用量または一連のものの一部としての個体への該量の投与が、処置または予防に有効であることを意図する。この量は、処置対象の個体の健康状態および体調、処置対象の個体(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)の年齢、分類群、個体の免疫機構が抗体を合成する能力、所望される防御の程度、ワクチンの配合、病状に対する処置担当医師の評価、ならびに他の関連要素に応じて異なる。この量は、常套的な治験によって決定され得る比較的広い範囲を含むことが予測される。
【0131】
製剤化したら、本発明の組成物を被験体に直接投与してもよい。処置対象の被験体は動物であり得る;特に、ヒト被験体が処置され得る。
【0132】
本発明の免疫原性組成物は、治療的(すなわち、既に存在する感染を処置するため)または予防的(すなわち、将来的な感染を予防するため)に使用され得る。治療的免疫処置は、免疫無防備状態の被験体におけるカンジダ感染の処置に特に有用である。
【0133】
医療処置および用途
また、本発明は、医薬における使用のための、例えば、哺乳動物の抗体応答を惹起することにおける使用のための、本発明のアジュバント添加グルカンまたは結合体を提供する。
【0134】
また、本発明は、本発明のアジュバント添加グルカン、結合体または医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の免疫応答を惹起するための方法を提供する。
【0135】
また、本発明は、哺乳動物において微生物感染を予防または処置するための医薬の製造における(i)本発明のグルカンまたは結合体および(ii)アジュバントの使用を提供する。
【0136】
これらの方法および使用によってもたらされる免疫応答としては、一般的に抗体応答、好ましくは防御的抗体応答が挙げられる。糖免疫処置後の抗体応答の評価方法は、当該分野で周知である。抗体応答は、好ましくはIgAまたはIgG応答である。免疫応答は、予防的および/または治療的であり得る。哺乳動物は、好ましくはヒトである。
【0137】
グルカン(特に、β−グルカン)は、ほぼすべての病原性真菌(特に、免疫無防備状態の被験体の感染症に関与するもの)、また細菌病原体および原生動物の必須かつ主要な多糖構成成分であるため、抗グルカン免疫は、広範な病原体および疾患に対して有効性を有し得る。例えば、S.cerevisiaeでの免疫処置に生成される抗グルカン血清は、C.albicansと交差反応性である。このようなヒト感染性真菌因子には化学療法が不充分であるため、抗真菌薬耐性が生じるため、ならびに予防用および治療用ワクチンの必要性の認識が増大しているため、広域スペクトル免疫は特に有用である。
【0138】
本発明の使用および方法は、カンジダ属種(C.albicansなど);クリプトコックス属種(C.neoformansなど);エンテロコッカス属種(E.faecalisなど);連鎖球菌属種(S.pneumoniae、S.mutans、S.agalactiaeおよびS.pyogenesなど);リーシュマニア属種(L.majorなど);アカントアメーバ属種(A.castellaniなど);アスペルギルス属種(A.fumigatusおよびA.flavusなど);ニューモシスティス属種(P.cariniiなど);ミコバクテリウム属種(M.tuberculosisなど);シュードモナス属種(P.aeruginosaなど);ブドウ球菌属種(S.aureusなど);サルモネラ属種(S.typhimuriumなど);コクシジオイデス属種(C.immitisなど);白癬菌属種(T.verrucosumなど);ブラストミセス属種(B.dermatidisなど);ヒストプラスマ属種(H.capsulatumなど);パラコクシジオイデス属種(P.brasiliensisなど);フィチウム属種(P.insidiosumなど);ならびにエシェリキア属種(大腸菌など)の感染症の処置/防御に特に有用である。
【0139】
該使用および方法は、限定されないが:カンジダ症(例えば、肝脾カンジダ症、浸潤性カンジダ症、慢性粘膜皮膚カンジダ症および播種性カンジダ症);カンジダ血症;アスペルギルス症、クリプトコックス症、皮膚真菌症、スポロトリクス症および他の皮下真菌症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症、コクシジウム症、パラコクシジオイデス症、ニューモシスティス症、鵞口瘡、結核症、ミコバクテリア症、呼吸器系感染症、猩紅熱、肺炎、膿痂疹、リウマチ熱、セプシス、敗血症、皮膚および内臓リーシュマニア症、角膜アカントアメーバ症、嚢胞性線維症、腸チフス、胃腸炎ならびに溶血性尿毒症症候群などの疾患の予防/処置に特に有用である。抗C.albicans活性は、AIDS患者の感染症の処置に特に有用である。
【0140】
免疫処置の有効性は、該組成物の投与後のβ−グルカン(例えば、抗β−グルカン抗体)に対する免疫応答をモニタリングすることにより試験することができる。治療的処置の有効性は、本発明の組成物の投与後の微生物感染をモニタリングすることにより試験することができる。
【0141】
本発明の組成物は、一般的には患者に直接投与する。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、もしくは組織の間隙空間に)、または直腸内、経口、膣内、局所、経皮、皮内、経眼、経鼻、耳内もしくは肺内投与によって行なわれ得る。注射または鼻腔内投与が好ましい。皮下または腹腔内投与が特に好ましい。また、筋肉内投与も好ましい。
【0142】
本発明は、全身性および/または粘膜免疫を誘起するために使用され得る。
【0143】
本発明に従って調製されるワクチンは、小児および成人両方の処置に使用され得る。したがって、被験体は、1歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、または少なくとも55歳であり得る。ワクチン接種に好ましい被験体は、高齢者(例えば、≧50歳、≧60歳、好ましくは≧65歳)、または若年齢者(例えば、≦5歳)である。ワクチンは、これらの群のみに適しているのではなく、集団において、より一般的に使用され得る。
【0144】
処置は、単回用量スケジュールであってもよく、複数用量スケジュールであってもよい。複数用量は、初回刺激免疫処置スケジュールおよび/または追加刺激免疫処置スケジュールにおいて使用され得る。複数用量スケジュールでは、種々の用量を同じ経路で与えてもよく、異なる経路で与えてもよく、例えば、非経口で初回免疫刺激し、経粘膜で追加免疫刺激する、経粘膜で初回免疫刺激し、非経口で追加免疫刺激するなどである。免疫未処置患者には1回より多くの投与(典型的には2回の投与)が特に有用である。複数用量は、典型的には少なくとも1週間空けて投与する(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間など)。複数用量スケジュールを使用する場合、少なくとも1回の用量にはアジュバント添加グルカンを含めるが、他の用量(典型的には後の方の用量)は、アジュバントなしのグルカンを含むものであってもよい。同様に、少なくとも1回の用量には、結合体化グルカンを含めるのがよいが、他の用量(典型的には後の方)は、結合体化されていないグルカンを含むものであってもよい。
【0145】
本発明の結合体を非グルカン抗原と併用し、多様な病原体に対する同時免疫処置のための単一の組成物にしてもよい。併用ワクチンの作製の代替法として、結合体を患者に、他のワクチンと実質的に同時(例えば、同じ医療診察中または健康管理従事者もしくはワクチン接種施設への訪問時)に投与してもよい。このような併用ワクチンにおける使用のため、または同時投与のための抗原としては、例えば、Streptococcus agalactiae、黄色ブドウ球菌および/または緑膿菌免疫原が挙げられる。
【0146】
本発明の組成物は、特に患者が既に感染している場合、抗真菌薬とともに使用され得る。抗真菌薬により即時性の治療効果がもたらされ、一方、免疫原性組成物により長期持続性効果がもたらされる。好適な抗真菌薬としては、限定されないが、アゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール)、ポリエン(例えば、アンフォテリシンB)、フルシトシン、およびスクアレンエポキシダーゼインヒビター(例えば、テルビナフィン)が挙げられる[参考文献179も参照のこと]。抗真菌薬と免疫原性組成物は、別々に投与してもよく、併用して投与してもよい。別々に投与する場合、典型的には互いに7日以内に投与する。免疫原性組成物を最初に投与した後、抗真菌薬を1回より多く投与するのがよい。
【0147】
定義
用語「を含む(comprising)」は、「を含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、X「を含む」組成物は、排他的にXからなるものであってもよく、何か付加的なものを含むもの(例えば、X+Y)であってもよい。
【0148】
文言「実質的に」は「完全に」を除外せず、例えば、Yが「実質的にない」組成物は、Yが完全にないものであり得る。必要に応じて、文言「実質的に」は、本発明の定義で省略されていることがあり得る。
【0149】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0150】
特に記載のない限り、2つ以上の成分を混合する工程を含むプロセスは、なんら特定の混合順序を必要としない。したがって、成分は、任意の順序で混合され得る。3つの成分が存在する場合は、2つの成分を互いに合わせ、次いで、この組合せを第3の成分と合わせてもよいなどである。
【0151】
動物(特にウシ)由来の物質を細胞の培養に使用する場合、感染性海綿状脳症(TSE)のない、特にウシ海綿状脳症(BSE)のない供給源から得られたものであるべきである。全般的には、動物由来物質の完全非存在下で細胞を培養することが好ましい。
【0152】
化合物を身体に組成物の一部として投与する場合、該化合物を、代替的に、適当なプロドラッグに置き換えてもよい。
【実施例】
【0153】
発明を実施するための形態
カードラン結合体化(1)
>100kDaの初期MWを有するカードランを、DMSO中HCl(0.5M)を用いた酸加水分解により、85℃で10分間処理した。この加水分解生成物は、25単位前後のDPを有していた。
【0154】
加水分解された物質をリン酸ナトリウム緩衝液(400mM,pH6.8)で中和し、水で希釈して、出発物質の10:1希釈液を得た。最終濃度を1mg/mlとした。希釈後、一部沈降が検出され得た。この沈殿物は、おそらく高MW糖である。
【0155】
酢酸アンモニウムを添加し、次いでナトリウムシアノボロヒドリドを添加した。pHを7.0に調整した後、混合物を37℃で3〜5日間インキュベートした。この処理により、第1級アミノ基がカードラン断片の還元末端に導入された。次いで、このアミノ糖を、3kDaカットオフ膜を用いた限外濾過によって精製した。アミノ基をHabeeb法によって概算した。
【0156】
乾燥させたアミノオリゴ糖を蒸留水中で、40mMのアミノ基濃度で可溶化させ、次いで9容量のDMSOを添加した後、トリエチルアミンを200mMの最終濃度で添加した。得られた溶液に、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステルを、480mMの最終濃度で添加した。このようにして生成したエステル基を、放出されたN−ヒドロキシスクシンイミド基の解析によって概算した。
【0157】
乾燥させた活性化オリゴ糖を、CRM197含有10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に添加した。反応液を攪拌下、室温で一晩維持した。最終物質は、タンパク質1molあたりのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルのmolに関して約50:1の比を有していた。
【0158】
次いで、この結合体を、30kDaカットオフ膜を用いた限外濾過によって精製した。結合体を、SDS−Page、SEC−HPLCおよびNMRによって特徴付けた。また、この糖(全体および結合体化されていない糖)ならびにタンパク質の含有量を概算した。
【0159】
担体としてCRM197の代わりに破傷風トキソイドを使用し、同様の作業を行なった。
【0160】
調製した5種類の結合体のロットについて、糖:タンパク質の比は以下のとおりであった(過剰の担体):
【0161】
【数1】

図1は、実施例の結合体のSDS−PAGEを示し、図2は、そのSEC−HPLCプロフィールを示す。
【0162】
ラミナリン結合体化および吸着(2)
ラミナリン結合体を、CRM197担体を使用し、参考文献2および3に開示されたようにして調製した。1つのそのような結合体は、糖:タンパク質質量比0.4:1を有するものであった。精製後、0.7%の遊離グルカン(結合体化されていない)が残存していた。図3は、結合体化前の担体タンパク質、および最終結合体のHPLC−SEC解析を示す。
【0163】
担体としてCRM197ではなく破傷風トキソイドを使用し結合体を同様にして調製した。
【0164】
5種類の結合体の他のロットでは、糖:タンパク質の比は以下のとおりであった(過剰の担体):
【0165】
【数2】

CRM197結合体(「CRM−Lam」)を水酸化アルミニウム塩と、最終アジュバント濃度2mg/mlで合わせた。塩化ナトリウムを9mg/mlで、およびリン酸ナトリウムを10mMで含めた。最終組成物はpH7.0を有し、46.6μg/mlのグルカンを含んでおり、したがって、150μlの投与容量で7μg/用量を与えた(マウス試験に適する)。
【0166】
最終組成物をSDS−PAGEによって解析した。また、吸着の程度を調べるため、遠心分離し、上清みを並行して解析した。また、TCA沈降も使用し、この場合も上清みを解析した。比較のため、非吸着物質も解析し、これは、遊離形態および吸着形態両方の結合体化されていないCRM197であった。アジュバントの存在下では、CRM−Lamおよびまたは結合体化されていないCRMいずれの上清みにおいても、バンドは検出されなかった。
【0167】
また、HPLC−SECによって上清みを解析することにより、吸着を評価した。214nmにピークが測定され、CRM−Lamの吸着の程度は99.7%と算出された。
【0168】
結合体化(3)
合成カードラン(15mer)およびラミナリン(17mer)の結合体を、図4に記載の方法に従って調製した。簡単には、表示した合成オリゴ糖を蒸留水中で、40mMのアミノ基濃度で可溶化させた。次いで、9容量のDMSOを添加した後、トリエチルアミンを最終濃度200mMまで添加した。15mer−C6β(1−3)−CRM結合体では、グルタル酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステルを、最終濃度240mMまで添加した。15mer−C6β(1−3)−CRMおよび17mer−C6β(1−3)−CRMの結合体では、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステルを、最終濃度480mMまで添加した。次いで、この活性化オリゴ糖を、80%v/vジオキサンを用いた沈降によって精製した。各反応で生成したエステル基の数を、放出されたNヒドロキシスクシンイミド基の量を測定することにより概算した。次いで、乾燥させた活性化オリゴ糖を、30mg/mLのCRM197溶液(10mMリン酸緩衝液(pH7.2)中)に添加した。反応液を攪拌下、室温で一晩維持した。最終物質は、タンパク質1molあたりのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルのmolに関して約50:1の比を有していた。
【0169】
次いで、結合体をSDS−PageおよびSEC−HPLCによって特徴付けた。糖およびタンパク質の含有量は、以下のとおりに概算された。
【0170】
【数3】

図5は、これらの結合体の7%tris−酢酸ゲル(20μg負荷/ウェル)上でのSDS−PAGE解析を示す。
【0171】
ラミナリン結合体化(4)
ラミナリン結合体のさらなるロットを、緩衝液中のリン酸塩の濃度を、a)10mM(参考文献2および3のとおり、以下、本明細書において「ロット9」);b)25mM;c)50mMまたはd)100mM(「ロット10」)のいずれかとしたこと以外は、参考文献2および3に開示されたようにして調製した。次いで、結合体をSEC−HPLCによって特徴付けた。ロット9では、その他のロットよりも大きな凝集が観察され、ロット10では凝集は検出され得なかった(図6)。
【0172】
免疫原性試験(1)
免疫原性を試験するため、ラミナリン結合体化および吸着(2)で記載のようにして調製したラミナリン結合体を、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせ、マウスにおいて試験した。
【0173】
CD2F1マウス(4〜6週齢)を、10匹の12の群にて試験した。結合体を糖用量7μgで投薬容量150μlにて使用し、第1、7および21日目に投与した。血液試料を第0、21および35日目に採取し、抗GGZym抗体レベルをELISAによって評価した[2,3]。
【0174】
第2群および第3群は、単に比較の目的で、完全フロイントアジュバント(CFA)と組み合わせた結合体を用いて初回抗原刺激した(第1日)。第1群には、CFA−アジュバント添加ラミナリンとCRM197を与えたが、これらは結合体化させたものではなかった。第4群は、結合体化されていないラミナリン+CFAで初回抗原刺激した。第5群にはCFA単独を与えた。次いで、これらの5つの群に、アジュバントなしのラミナリンとCRM197の混合物(第1群)、アジュバントなしの結合体(第2群)、アジュバントなしのラミナリン(第3群および第4群)またはPBS(第5群)を、第7日および第21日に与えた。
【0175】
第7群と第8群および第9群〜第12群には、3回の同一用量の結合体化したラミナリンを、以下のアジュバント:(a)水酸化アルミニウムアジュバント;(b)MF59水中油型乳剤アジュバント;(c)CpGオリゴデオキシヌクレオチド、CpG 1826;(e)(a)と(c)の組み合わせ;(f)(b)と(c)の組み合わせとともに与えた。第6群と第9群には、それぞれ、第7群と第8群と同様に与えたが、ラミナリンとCRM197を結合体化させなかった。
【0176】
抗グルカン抗体(GMT)および第35日目の応答マウス(%)の数を表1に報告する。
【0177】
【表1】

Lam−CRM=CRM197に結合体化したラミナリン
Lam+CRM=ラミナリンとCRM197の併用、結合体化なし
Lam=結合体化されていないラミナリン、CRM197なし
CFA=完全フロイントアジュバント
PBS=リン酸緩衝生理食塩水
この結果は、至適免疫応答には、結合体化と、少なくとも1種類のアジュバントの存在の両方が必要とされることを示す。Th1アジュバントとTh2アジュバントの併用で、良好な結果が得られた。
【0178】
第2群と第11群のマウスのIgG応答を、より詳細に試験した。3つの場合すべてにおいて、IgGサブクラス1と3が存在したが、サブクラス2aと2bは存在しなかった。
【0179】
免疫原性試験(2)
さらなる研究において、それぞれ、カードラン結合体化(1)と、ラミナリン結合体化および吸着(2)に記載のようにして調製したカードラン結合体とラミナリン結合体の両方を、マウスに投与した。1つより多くのカードラン結合体のロットを試験した。
【0180】
実験は、結合体を5μgの糖用量で使用したこと以外は、本質的に最初の試験と同じとした。結合体は、アジュバントなし、または以下のアジュバント:(a)水酸化アルミニウムアジュバント;(b)MF59水中油型乳剤アジュバント;(c)(a)と10μgのCpGオリゴデオキシヌクレオチドCpG 1826の併用;(e)(b)とCpGオリゴデオキシヌクレオチドの併用とともにのいずれかで投与した。
【0181】
抗グルカン抗体(GMT)および第35日目の応答マウス(%)の数を表2に報告する。
【0182】
【表2】

個々のアジュバントでも、ラミナリンおよびカードランの両方の場合で、GMTと応答マウスの割合の両方が増大され得たが、アジュバントの併用が特に有効であった。Th1アジュバントとTh2アジュバントの併用で、良好な結果が得られた。
【0183】
すべての群においてIgG応答は、上記のように、主にサブクラス1および3におけるものであった。
【0184】
免疫原性試験(3)
さらなる実験では、それぞれ、ラミナリン結合体化および吸着(2)と、カードラン結合体化(1)に記載のようにして調製したラミナリン結合体とカードラン結合体に、アジュバントとしてα−ガラクトシルセラミド(100ng)またはLT−K63(2μg)もまた、単独または他のアジュバントとの併用のいずれかで加えた。また、CpGアジュバントも、3つの異なる用量(0.5μg、5μgおよび10μg)で試験した。詳細は、1群あたり8匹のマウスとしたこと以外は、先の免疫原性試験の場合と同様にした。結果を表3に示す。
【0185】
【表3】

この場合も、アジュバントの併用により最良の結果が得られたが、α−GalCerがそれ自体でカードラン結合体に対して有用であったことが例外であった。CpGアジュバントによる最良の結果は、中程度の用量で得られた。
【0186】
免疫原性試験(4)
16匹の群のマウスに、CRM197に結合体化したラミナリン(Lam−CRM、ラミナリン結合体化および吸着(2)に記載のようにして調製)で、異なるアジュバントと組み合わせて3回、腹腔内(IP)にて免疫処置した。結合体を糖用量5μgで投薬容量150μlにて使用し、第1、14および28日目に投与した。血液試料を第0、28および42日目に採取し、抗GGZym抗体レベルをELISAによって評価した。また、抗ラミナリン抗体レベルも、ELISAにおいてGG−Zymをラミナリンに置き換えることにより、参考文献3に記載のようにして測定した。
【0187】
第35日目におけるカンジダ細胞壁グルカンに対するIgG GMTを、図7(抗GGZym抗体レベル)と表4(抗GGZymおよび抗ラミナリン抗体レベル)に示す。
【0188】
【表4】

この結果は、いくつかの異なるアジュバント製剤での糖結合体化ワクチンLam−CRMの免疫原性を示す。
【0189】
免疫原性試験(5)
さらなる研究において、CRM197または破傷風トキソイドのいずれかに結合体化させたラミナリンまたはカードランを、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせ、マウスに皮下または腹腔内投与によって投与した。結合体は、それぞれ、ラミナリン結合体化および吸着(2)と、カードラン結合体化(1)に記載のようにして調製した。
【0190】
CD2F1マウス(4〜6週齢)を、10匹の12の群にて試験した。結合体を糖用量5μgで投薬容量150μlにて使用し、第1、14および28日目に皮下または腹腔内投与によって投与した。血液試料を第0、28および42日目に採取し、抗GGZym抗体レベルをELISAによって評価した。
【0191】
第1群〜第3群には、それぞれ、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを、以下のアジュバント:(a)水酸化アルミニウムアジュバント(300μg);(b)(a)とCpGオリゴデオキシヌクレオチドCpG 1826(10μg)の組み合わせ;および(c)MF59水中油型乳剤アジュバント(75μl)とともに与えた。第4群〜第6群は、それぞれ、グルカンをラミナリンではなくカードランとしたこと以外は第1群〜第3群と同様に処置した。第7群〜第9群は、それぞれ、ラミナリンをCRM197ではなく破傷風トキソイドに結合体化させたこと以外は、第1群〜第3群と同様に処置した。同様に、第10群〜第12群は、それぞれ、カードランをCRM197ではなく破傷風トキソイドに結合体化させたこと以外は、第4群〜第6群と同様に処置した。
【0192】
マウスへのラミナリン結合体の腹腔内投与後、第42日目の抗グルカン抗体(GMT)を図8に示す。皮下投与後の対応する結果を図9に示す。結果は、一般的に、結合体を皮下投与によって投与した場合の方が良好な応答が見られたことを示す。さらに、一般的に、CRM197を担体タンパク質として使用した方が良好な結果が得られた(特に、結合体を皮下投与によって投与した場合)。
【0193】
同様に、カードラン結合体の腹腔内投与後、第42日目の抗グルカン抗体(GMT)を図10に示す。皮下投与後の対応する結果を図11に示す。CRM197を担体タンパク質として使用した場合、結合体を皮下投与によって投与した場合の方が良好な応答が見られた。
【0194】
免疫原性試験(6)
別の試験において、CRM197に結合体化したラミナリンまたはカードランを、異なる用量の糖を用いてマウスに投与した。結合体は、それぞれ、ラミナリン結合体化および吸着(2)と、カードラン結合体化(1)に記載のようにして調製した。
【0195】
CD2F1マウス(4〜6週齢)を、8匹の12の群にて試験した。結合体を糖用量10μg、5μg、1μgまたは0.1μgで投薬容量150μlにて使用し、第1、14および28日目に投与した。血液試料を第0、28および42日目に採取し、抗GGZymおよび抗ラミナリン抗体レベルをELISAによって評価した。
【0196】
第1群には、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを、アジュバントなし、および糖用量5μgで与えた。第2群には、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを、水酸化アルミニウムアジュバント(300μg)とともに糖用量5μgで与えた。この群に投与した結合体の精製時には、リン酸緩衝液を使用した。第3群〜第6群には、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを水酸化アルミニウムアジュバント(300μg)とともに、それぞれ、糖用量10μg、5μg、1μgまたは0.1μgで与えた。これらの群に投与した結合体の精製時には、参考文献180に記載のように、ヒスチジン緩衝液を使用した。
【0197】
第7群〜第12群は、グルカンをラミナリンではなくカードランとしたこと以外は、第1群〜第6群と同様に処置した。
【0198】
種々の糖用量のラミナリン結合体の投与後、第42日目の抗グルカン抗体(GMT)を図12に示す。結果は、すべての用量で応答が見られ、最良の応答は糖用量5μgで得られたことを示す。
【0199】
カードラン結合体の投与後、第42日目の抗グルカン抗体(GMT)を図13に示す。この場合も、結果は、すべての糖用量で応答が見られたことを示す。最良の応答は、糖用量10μgと5μgで得られた。
【0200】
ラミナリン結合体投与後、第42日目の抗グルカン抗体(GMT)を図14に示す。抗GGZym抗体ELISAを用いて得られた結果を、抗ラミナリン抗体ELISAのものと比較する。抗ラミナリン抗体ELISAを使用した方が高力価が観察された。
【0201】
免疫原性試験(7)
さらなる研究において、CRM197に結合体化したラミナリンを種々の個々のアジュバントと合わせ、マウスに腹腔内、皮下または筋肉内投与によって投与した。結合体は、ラミナリン結合体化および吸着(2)に記載のようにして調製した。
【0202】
CD2F1マウス(4〜6週齢)を、16匹の8つの群にて試験した。結合体を5μgの糖用量で投薬容量150μlにて使用し、第1、14および28日目に腹腔内、皮下または筋肉内投与によって投与した。血液試料を第0、28および42日目に採取し、抗GGZymおよび抗ラミナリン抗体レベルをELISAによって評価した。
【0203】
第1群と第2群には、それぞれ、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを腹腔内投与によって、以下のアジュバント:(a)MF59水中油型乳剤アジュバント(75μl);ならびに(b)(4)高用量のIC31(1000nmol/mlを超えるオリゴデオキシヌクレオチドおよび40nmol/mlのペプチドを有する49.5μlの試料)とともに与えた。第3群と第4群は、それぞれ、結合体を皮下投与によって投与したこと以外は、第1群と第2群と同様に処置した。第5群と第6群は、それぞれ、結合体を筋肉内投与によって投与したこと以外は、第1群と第2群と同様に処置した。
【0204】
ラミナリン結合体の投与後、第42日目の抗グルカン(抗GGZym)抗体(GMT)を図15に示す。結果は、一般的に、結合体をMF59アジュバントとともに投与した場合の方が良好な応答が見られたことを示す。さらに、結合体をこのアジュバントとともに投与した場合に見られた応答では、投与様式に対して低い依存性が示された:試験した投与様式ではすべて、このアジュバントでは、ほぼ同じ応答が得られた。抗ラミナリン抗体ELISAを用いても同様の結果が得られた(図16)。
【0205】
受動防御試験
別の試験において、水酸化アルミニウム、IC31またはMF59アジュバントと合わせたCRM197に結合体化したラミナリンによって誘導された抗体が、C.albicansの増殖をインビボで抑止する能力を試験した。結合体は、ラミナリン結合体化および吸着(2)に記載のようにして調製した。
【0206】
別々の血清プールを、上記の免疫原性試験(1)、免疫原性試験(4)および免疫原性試験(7)で用いたマウスから採取した。免疫前マウスからさらなる血清プールを採取した。使用前、血清を56℃で30分間の処理によって不活化した。
【0207】
CD2F1マウス(4〜6週齢)を、4〜5匹の群にて試験した。0.5mlのプール血清を、各マウスに腹腔内投与によって投与した。2時間後、各マウスを0.2mlの培養C.albicansに、尾静脈からの静脈内投与によって、各マウスが5×10CFUを受けるように感染させた。2日後、各マウスを致死させ、左の腎臓を取り出した。各腎臓を、0.1%のTriton Xを含む0.5mlのPBSの存在下でホモジナイズした。ホモジネートの連続希釈液をSabouradの寒天上で平板培養し、28℃で48時間インキュベートした。
【0208】
免疫処置前および免疫処置後の血清で処置したマウスの腎臓内のC.albicansの蓄積を図17および18に示す。少なくともIC31またはMF59アジュバントと合わせたCRM197に結合体化したラミナリンで免疫処置したマウス由来の免疫処置後の血清で処置したマウス群では、少ない蓄積が観察され得た。したがって、これらのアジュバントと合わせたCRM197に結合体化したラミナリンに対して生成される抗体は、受動免疫を誘発し得る。この効果は、MF59アジュバントと合わせたCRM197に結合体化したラミナリンに対して生成された抗体で特に明白であった。
【0209】
ラミナリン精製
Laminaria digitataから抽出された市販のラミナリン(L−9634、Sigma)の1mg/ml水溶液を、UV/VIS分光法によって解析した。UV/VISスペクトルは、Perkin−Elmer LAMBDATM25分光測光器を使用し、室温および室内圧で取得した(1.00cmの光路長を有する石英セルを使用)。同じ物質を、デプスフィルタ(CunoTM10SPフィルタ)を用いた1回、2回または3回の濾過工程後に解析した。結果を図19に示す。
【0210】
フロロタンニン夾雑物(約270nmにおけるUV吸光度ピークによって表示)は、各濾過工程後、減少していた。
【0211】
安定性解析
種々のアジュバントを用いて液体に製剤化したグルカン結合体の安定性を比較した。結合体は、ラミナリン結合体化および吸着(2)に記載のようにして調製した。試料を37℃で4週間(図20)および2〜8℃で6ヶ月間(図21)保存した。グルカンの放出を、種々の時点での遊離糖%を測定することによりモニターした。遊離糖の測定は、固相抽出(SPE)による結合体からの遊離グルカンの分離、続いて高速アニオン交換クロマトグラフィーパルス型電流滴定検出による全グルカンおよび遊離グルカンの定量的測定に基づいたものとする。以下の製剤:
Lam−CRM 20μg/mL(10mMのヒスチジン緩衝液(pH7)中)、0.9%NaCl、2mg/mLのAl(OH)、0.05%Tween20;
Lam−CRM 20μg/mL(10mMのリン酸緩衝液(pH7)中)、0.9%NaCl、2mg/mLのAl(OH)0.05%Tween20;
Lam−CRM 20μg/mL(MF59中);および
Lam−CRM 20μg/mL(10mMのリン酸緩衝液(pH7)中)、0.9%NaCl
を試験した。
【0212】
結果は、MF59と合わせたグルカン結合体は、水酸化アルミニウム(リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液中)と合わせたグルカン結合体よりも安定であることを示す。
【0213】
また、グルカン結合体の凍結乾燥製剤の安定性も測定した。試料は、4、25または37℃で3ヶ月間まで保存した(図22)。以下の単位用量製剤:
Lam−CRM 10μg/mL、塩化ナトリウム3.5mg、第一リン酸ナトリウム一水和物0.092mg、第二リン酸ナトリウム二水和物0.48mg、マンニトール7.3mg
を試験した。
【0214】
免疫原性試験(8)
別の試験において、結合体化(3)に記載のようにして調製した結合体およびCRM197に結合体化したラミナリンを、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせ、マウスに腹腔内投与によって投与した。CRM197に結合体化したラミナリンは、結合体化前にアミノ化工程なしで調製したCRM197に対するラミナリンの代替ロット(ロット11AD)以外は、ラミナリン結合体化および吸着(2)に記載のようにして調製した。
【0215】
CD2F1マウス(4〜6週齢)を、16匹の11の群にて試験した。結合体を5μgの糖用量で投薬容量150μlにて使用し、腹腔内投与によって第1、14および28日目に投与した。血液試料を第0、28および42日目に採取し、抗ラミナリン抗体レベルをELISAによって評価した。
【0216】
第1群〜第3群には、それぞれ、3回の同一用量のa)17mer−C2β(1−3)−CRM結合体;b)15mer−C6β(1−3)−CRM結合体;またはc)15mer−C2β(1−3)−CRM結合体を、すべてアジュバントなしで与えた。第4群〜第6群には、それぞれ、3回の同一用量のa)17mer−C2β(1−3)−CRM結合体;b)15mer−C6β(1−3)−CRM結合体;またはc)15mer−C2β(1−3)−CRM結合体を、すべてMF59水中油型乳剤アジュバント(75μl)とともに与えた。第7群と第8群には、それぞれ、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを、a)アジュバントなし;またはb)MF59水中油型乳剤アジュバント(75μl)とともに与えた。第9群と第10群には、それぞれ、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを、a)高用量のIC31(1000nmol/mlを超えるオリゴデオキシヌクレオチドおよび40nmol/mlのペプチドを有する49.5μlの試料)と合わせたMF59水中油型乳剤アジュバント(75μl);またはb)水酸化アルミニウムアジュバント(300μg)とともに与えた。第11群には、3回の同一用量の異なるCRM197に結合体化したラミナリン調製物をMF59水中油型乳剤アジュバント(75μl)とともに与えた。
【0217】
結合体の投与後、第42日目の抗ラミナリン抗体(GMT)を図23に示す。結果は、合成カードランおよびラミナリンの結合体は、その他の結合体と同様の免疫原性を有することを示す。アジュバントを存在させた場合、免疫原性は、当該グルカンの合成型を使用することにより改善され得る(17mer−C2β(1−3)−CRM/MF59の投与後に見られた応答(バー4)を、CRM197に結合体化したラミナリン/MF59の投与後に見られた応答(バー7および11)と比較)。合成グルカンの免疫原性は、より長鎖のスペーサーをグルカンと担体タンパク質の間に使用することにより改善され得る(15mer−C6β(1−3)−CRMおよび15mer−C6β(1−3)−CRM/MF59の投与後に見られた応答(バー2および5)を、15mer−C2β(1−3)−CRMおよび15mer−C2β(1−3)−CRM/MF59の投与後に見られた応答(バー3および6)と比較)。アジュバントの非存在下では、合成グルカンに対する免疫原性は、β−1,6−分枝を存在させないことによって改善され得る(15mer−C2β(1−3)−CRMの投与後に見られた応答(バー3)を、17mer−C2β(1−3)−CRMの投与後に見られた応答(バー1)と比較)。対照的に、アジュバントの存在下では、合成グルカンに対する免疫原性は、β−1,6−分枝を存在させることによって改善され得る(17mer−C2β(1−3)−CRM/MF59の投与後に見られた応答(バー4)を、15mer−C2β(1−3)−CRM/MF59の投与後に見られた応答(バー6)と比較)。CRM197に結合体化したラミナリンでは、結合体化前のアミノ化工程の省略によって免疫原性は抑制されなかった(バー8と11とを比較)。
【0218】
能動防御試験(1)
別の試験において、MF59アジュバントと合わせたCRM197結合体化グルカンを受けたマウスが、C.albicansでの抗原刺激に対して生存する能力を試験した。結合体は、ラミナリン結合体化(4)(ロット9と10)およびカードラン結合体化(1)に記載のようにして調製した。
【0219】
雌の4週齢のCD2F1マウス(Harlan)を、3回の用量にて、CRM197に結合体化したラミナリンまたはカードランで免疫処置した。各用量は、マウス1匹あたり10μgの多糖(0.2mlのPBS中):MF59(1:1 v/v)からなるものとした。
【0220】
免疫処置スケジュールは:
・第0日目−皮下投与による初回用量
・第14日目−腹腔内投与による2回目の用量
・第28日目−腹腔内投与による3回目の用量
・第35日目−採血
・第40日目−マウス1匹あたり、静脈内投与による5.0×l0(ラミナリン結合体での免疫処置後)または2.5×10(カードラン結合体での免疫処置後)のC.albicans菌株BP細胞(0.2mlのPBS中)の真菌抗原刺激
とした。
【0221】
防御エンドポイントを、死亡率(メジアン生存期間(MST)および死亡例/全抗原刺激マウスの比)に関して測定した。
【0222】
図24は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせたCRM197に結合体化したラミナリンまたはCRM197およびMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。表5においても、MSTに関して、結合体で処置したマウスで、長い生存期間が示されている。
【0223】
【表5】

生存期間は、ロット9を受けたマウスよりもロット10を受けたマウスの方が長かった。
【0224】
図25は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせたCRM197に結合体化したカードランまたはMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。表6においても、MSTに関して、結合体で処置したマウスで、長い生存期間が示されている。
【0225】
【表6】

生存期間は、CRM197に結合体化したラミナリンを受けたマウスよりも、CRM197に結合体化したカードランを受けたマウスの方が長かった。
【0226】
能動防御試験(2)
同様の試験において、MF59アジュバントと合わせたCRM197に結合体化された合成グルカンを受けたマウスが、C.albicansでの抗原刺激に対して生存する能力を試験した。結合体は、結合体化(3)に記載のようにして調製した。この試験では、真菌抗原刺激は、5.0×l0細胞の静脈内投与によるものとした。
【0227】
図26は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせた15mer−C2β(1−3)−CRM、MF59と合わせた17mer−C2β(1−3)−CRMまたはMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。表7においても、MSTに関して、15mer−C2β(1−3)−CRM結合体で処置したマウスで、長い生存期間が示されている。
【0228】
【表7】

15mer−C2β(1−3)−CRMでの処理により生存期間が長くなったが、17mer−C2β(1−3)−CRMでの処置は、なんら効果を有しないようであった。この結果は、グルカン内の防御的抗体応答の誘導を担うエピトープが、β−1,3結合のみによって他の残基に連結された隣接する少なくとも5つの非末端残基を含むことを示唆する。理論に拘束されることを望まないが、この効果が、能動防御試験(1)において、CRM197に結合体化したラミナリンを受けたマウスよりもCRM197に結合体化したカードランを受けたマウスで見られた防御的抗体応答が大きかったことに寄与している可能性があると考えられる。CRM197に結合体化したカードラン(この場合、グルカンはβ−1,3−結合残基のみを含む)は、CRM197に結合体化したラミナリン(この場合、グルカンは、β−1,3−結合残基とβ−1,6−結合残基を含む)よりも多くの割合の防御的エピトープを含んでいる可能性がある。
【0229】
本発明は、一例として説明したにすぎず、本発明の範囲および精神の範囲内で変形が行われ得ることは理解されよう。
【0230】
【数4】

【0231】
【数5】

【0232】
【数6】

【0233】
【数7】

【0234】
【数8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)β−1,3−結合および/またはβ−1,6−結合を含むグルカン;ならびに(b)アジュバントを含む免疫原性組成物であって、ただし、成分(b)は完全フロイントアジュバントではなく、コレラ毒素でもない、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記グルカンが単一の分子種である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
β−1,3−結合および/またはβ−1,6−結合を含むグルカンを含む免疫原性組成物であって、該グルカンが単一の分子種であり、かつ担体タンパク質に結合体化されている、免疫原性組成物。
【請求項4】
さらにアジュバントを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記グルカンが担体タンパク質に結合体化されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記グルカンが前記担体タンパク質に直接結合体化されている、請求項3〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記グルカンが前記担体タンパク質にリンカーによって結合体化されている、請求項3〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記担体タンパク質が、細菌毒素もしくはトキソイド、またはその変異体である、請求項3〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記担体タンパク質がCRM197である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記グルカンが、100kDa未満(例えば、80、70、60、50、40、30、25、20または15kDa未満)の分子量を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記グルカンが、60個以下のグルコース単糖単位を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記グルカンが、一部β−1,6分枝を有するβ−1,3グルカンである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記グルカンがラミナリンである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記グルカンのβ−1,3−結合グルコース残基およびβ−1,6−結合グルコース残基において、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3結合グルコース残基の比が少なくとも8:1である、ならびに/またはβ−1,3結合のみによって他の残基に連結された少なくとも5つの隣接する非末端残基の配列が1つ以上存在する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記グルカンがβ−1,3−結合グルコース残基とβ−1,6−結合グルコース残基との両方を含み、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3結合グルコース残基の比が少なくとも8:1である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記グルカンが排他的にβ−1,3結合を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記グルカンがカードランである、請求項14〜16いずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
薬学的に許容され得る担体を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記アジュバントが、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩;水中油型乳剤;免疫刺激性オリゴヌクレオチド;および/またはα−グリコシルセラミドの1種類以上を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記アジュバントが、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびポリカチオンオリゴペプチドを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
哺乳動物に請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、哺乳動物の免疫応答を惹起するための方法。
【請求項22】
フロロタンニンをグルカンから分離し、水中1mg/mlで、270nmにおいて0.17未満のUV吸光度を有するグルカンを得る工程を含む、グルカンの精製プロセス。
【請求項23】
前記フロロタンニンが前記グルカンからデプスフィルタを用いた濾過によって分離される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記グルカンの前記フロロタンニン夾雑物を測定する後続の工程をさらに含む、請求項22または23に記載のプロセス。
【請求項25】
水中1mg/mlで、270nmにおいて0.17未満のUV吸光度を有するグルカン。
【請求項26】
請求項22〜24いずれか1項に記載のプロセスによって取得された、または取得可能なグルカン。
【請求項27】
結合体化工程が、>10mMのリン酸塩を含むリン酸緩衝液中で行なわれる、担体タンパク質に結合体化されたグルカンの作製方法。
【請求項28】
前記結合体化工程が、90〜110mMのリン酸塩を含むリン酸緩衝液中で行なわれる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記結合体化工程前に前記グルカンをリンカーに結合させる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記リンカーの遊離端がエステル基を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項27〜30いずれか1項に記載の方法によって得られる結合体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図4】
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【図6】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2011−504487(P2011−504487A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534565(P2010−534565)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003582
【国際公開番号】WO2009/077854
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】